JP4103201B2 - 自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性に優れ、高湿度の環境に置かれた際の寸法安定性の優れたポリアミド樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、高耐湿性・高寸法安定性を有するポリアミド樹脂組成物に関し、自動車のコネクターやリレーボックス、ジャンクションボックスなど電装部品のハウジング用途に好適に使用されるポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車のエレクトロニクス関係部品の増大に伴い、ハーネスコネクターやリレーボックス、ジャンクションボックスなど電装部品が多く使用されている。これら部品においてはコネクター同士やコネクターとジャンクションボックス、あるいはジャンクションボックスと他の電器部品との接続性が悪いと、部品組み付け時の作業性が悪くなったり、接続が不良になる。この問題を低減するには、これらハウジングの寸法安定性、特に高温高湿下に成形品が長時間放置された後でも、寸法変化やハウジング外形の変形が無いことが要求される。
【0003】
ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックとしてすぐれた特性を有し、自動車、電気・電子など各種の工業分野において広く使用され、自動車電装部品にも使用されている。しかし汎用的に使用されるナイロン6、ナイロン66樹脂では吸水により、剛性が低下して接続機能が損なわれたり、寸法変化が大きく、寸法安定性に劣るなどの問題があった。
【0004】
このような機械的性質や寸法安定性を改良するために、ガラス繊維や無機充填剤を樹脂に配合することが従来から実施されている。しかし、これら無機フィラーを配合するだけでは、樹脂中の無機フィラーの分散や界面接着も悪く、耐衝撃性が低い、表面外観が悪いといった問題がある。さらに、成形品のそりが大きくなることや、比重が大きくなるという新たな問題も発生する場合がある。
【0005】
特開平7−292241号公報には、上記問題を解決すべくポリアミドの重合時に膨潤性フッ素雲母を添加して得られる組成物をコネクターとして使用することが開示されている。この方法によると強度・耐熱性・そりの面では改良は見られるものの、衝撃強度や引張伸度が低いという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のごとく従来の技術では、高湿度雰囲気下での寸法安定性に優れ、かつ、剛性、靭性がバランスして優れるポリアミド樹脂製自動車電装部品ハウジングを得ることは困難であった。
【0007】
そこで本発明は機械的特性に優れ、かつ、高湿度雰囲気下で長時間使用しても寸法変化が小さい自動車電装部品ハウジングの製造に好適なポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は(a)ポリアミド樹脂、(b)層状珪酸塩、(d)カルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物をポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜3重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、(b)層状珪酸塩が、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換され、かつ炭素炭素不飽和基を有するカップリング剤で処理された層状珪酸塩であることを特徴とする自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物、および前記ポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる自動車用コネクターおよび自動車用ジャンクションボックスを提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0010】
本発明で用いられるポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするナイロンである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0011】
本発明において、とくに有用なナイロン樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/610/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0012】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン610、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン6T/12/66コポリマー、ナイロン6T/12/6Iコポリマーなどのヘキサメチレテレフタラミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0013】
これらポリアミド樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0014】
本発明における(b)層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩とは(b−1)交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩の交換性の陽イオンを、(b−2)有機オニウムイオンで置き換えた包接化合物である。
【0015】
(b−1)交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩は、アルミニウム、マグネシウム、リチウムなどから選ばれる元素を含む8面体シートの上下に珪酸4面体シートが重なって1枚の板状結晶層を形成している2:1型の構造を持ち、その板状結晶層の層間に交換性の陽イオンを有しているものである。その1枚の板状結晶の大きさは、通常幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームである。また、その交換性陽イオンのカチオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはカチオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
【0016】
層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましく、さらにスメクタイト系粘土鉱物がより好ましく、なかでも特にモンモリロナイトが好ましい。
【0017】
(b−2)有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良い。
【0018】
1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0019】
2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0020】
3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0021】
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0022】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
【0023】
これらのアンモニウムイオンの中でも、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、12−アミノドデカン酸から誘導されるアンモニウムイオンなどが好ましい。
【0024】
本発明における(b)層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩は(b−1)交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩と(b−2)有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0025】
本発明において、層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であるが、0.8〜1.2当量であることが好ましい。
【0026】
また、これら層状珪酸塩は上記の有機オニウム塩に加え、炭素炭素不飽和基を有するカップリング剤で予備処理して使用することが必要である。カップリング剤としては、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物などのカップリング剤が好ましい。
【0027】
好ましいカップリング剤は、有機シラン系化合物であり、その具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0028】
これらカップリング剤での層状珪酸塩の処理は、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中、あるいはこれらの混合溶媒中でカップリング剤を層状珪酸塩に吸着させる方法か、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌混合機の中で層状珪酸塩を攪拌しながらカップリング剤溶液を滴下して吸着させる方法、さらには層状珪酸塩に直接シランカップリング剤を添加して、乳鉢等で混合して吸着させることによる方法のどれを用いても良い。層状珪酸塩をカップリング剤で処理する場合には、カップリング剤のアルコキシ基の加水分解を促進するために水、酸性水、アルカリ性水等を同時に混合するのが好ましい。また、カップリング剤の反応効率を高めるため、水のほかにメタノールやエタノール等の水、カップリング剤両方を溶解する有機溶媒を混合してもかまわない。このようなカップリング剤で処理した層状珪酸塩を熱処理することによってさらに反応を促進させることも可能である。
【0029】
層状珪酸塩の有機オニウムイオンによる処理とカップリング剤による処理の順序にも特に制限はないが、まず有機オニウムイオンで処理した後、カップリング剤処理をすることが好ましい。
【0030】
本発明において(b)層状珪酸塩の含有量は本発明の組成物中の無機灰分量として0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%となる範囲である。灰分量が少なすぎると物性改良効果が小さく、灰分量が多すぎると靱性が低下する場合がある。無機灰分量は樹脂組成物2gを500℃の電気炉で3時間灰化させて求めた値である。
【0039】
本発明で(d)成分として用いられるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸などが挙げられる。これらの中で、無水マレイン酸が延性、剛性付与の効果が高く最も好ましく用いられる。これらカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物は層状珪酸塩にあらかじめ配合してポリアミドと溶融混練することも可能である。
【0040】
これらオレフィン化合物の添加量はポリアミド樹脂100重量部に対して、延性の向上効果、組成物の流動性の点から0.1〜3重量部である。
【0041】
なお、ここで用いるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物は実質的にポリアミド樹脂と溶融混練する際に無水物の構造を取ればよく、これらオレフィン化合物を加水分解してカルボン酸あるいはその水溶液の様な形態で溶融混練に供し、溶融混練の際の加熱により脱水反応させ、実質的に無水酸の形でポリアミド樹脂と溶融混練してもかまわない。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(a)ポリアミド樹脂、(b)層状珪酸塩、(d)カルボン酸無水物基を有するオレフィン化合物を配合することによって製造される。配合する方法は、(a)ポリアミド樹脂を重合する際に、(b)層状珪酸塩を重合系に存在せしめる方法でもよいが、(a)ポリアミド樹脂と(b)層状珪酸塩を溶融混練する方法が好ましい。この際、(a)ポリアミド樹脂と(b)層状珪酸塩を溶融混練する方法には特に制限はなく、ポリアミド樹脂の溶融状態下で機械的剪断を行うことができればよい。その処理方法もバッチ式または連続式のいずれでも良いが、連続的に製造できる連続式の方が作業効率の面から好ましい。具体的な混練装置にも制限はないが、押出機、特に二軸押出機が生産性の面で好ましい。また、溶融混練時に発生する水分や、低分子量の揮発成分を除去する目的で、ベント口を設けることも好んで用いられる。二軸押出機を用いる場合には、(a)ポリアミド樹脂と(b)層状珪酸塩をあらかじめブレンダー等で混合しておき、それを押出機のフィード口から供給する方法や、(a)成分を押出機の上流側のフィード口から供給し、(b)成分を下流側のフィード口から供給する方法など供給の方法にも特に制限はない。押出機のスクリューアレンジにも特に制限はないが、層状珪酸塩を微分散化させるために、ニーディングゾーンを設けることが好ましい。
【0044】
さらに(d)カルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物の添加方法に制限はなく、(a)ポリアミドと(b)層状珪酸塩を溶融混練する前にプレブレンドしておく方法や、(a)と(b)を溶融混練している最中に添加する方法などが挙げられる。
【0045】
本発明のポリアミド樹脂組成物および自動車電装部品ハウジングはマスターバッチ法により製造することも可能である。その場合は、(a)ポリアミド樹脂の一部に(b)層状珪酸塩、(d)カルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物を溶融混練してなるマスターバッチペレットに(a)ポリアミド樹脂の残部を混合して、直接溶融成形に供することができる。
【0046】
さらに、本発明の樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン化合物、イオウ化合物などの酸化防止剤、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムなどの熱安定剤、耐候剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、無機充填材などを添加することができる。
【0047】
このようにして得られた本発明のポリアミド樹脂組成物は機械的性質、耐熱性、寸法安定性に優れ、特に吸水状態で荷重がかかった状態での変形が少ないという自動車電装部品ハウジングに好適な実用特性を有しているので、自動車用コネクターや自動車用ジャンクションボックスなど自動車電装部品ハウジングの製造に好適である。また、本発明の自動車電装部品ハウジングは本発明の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物を通常の方法で射出成形することで容易に得られ、得られた自動車用コネクターや自動車用ジャンクションボックスは実用的価値が高い。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
なお、実施例および比較例中に記載されている諸特性は以下の方法で測定した。
・引張特性: ASTM D638
・曲げ特性: ASTM D790
・アイゾット衝撃強度: ASTN D256
・実用吸水時特性: 幅55mm、高さ13mm、奥行き37mm、厚さ1mmの図1に示すコネクターを射出成形によって成形し、このものを図1(B)のように置き、その上に50gの分銅を乗せた状態で、30℃、相対湿度95%の条件下48時間放置した後の成形品の変形度合いを観察した。図1(A)は、成形したコネクターの平面図であり、(B)は正面図である。分銅の荷重によって外枠1が変形する。判定基準は次の通りである。
○:変形なし
△:変形小
×:変形大
【0050】
参考例1
Na型モンモリロナイト(クニミネ工業:クニピアF、陽イオン交換容量120m当量/100g)100gを温水10リットルに攪拌分散し、ここにトリオクチルメチルアンモニウムクロライド48g(陽イオン交換容量と等量)を溶解させた温水2Lを添加して1時間攪拌した。生じた沈殿を濾別した後、温水で洗浄した。この洗浄と濾別の操作を3回行い、得られた固体を80℃で真空乾燥して乾燥した有機化層状珪酸塩(b−1)を得た。この有機化層状珪酸塩の無機灰分量を測定したところ無機灰分の割合は67重量%であった。なお無機灰分量は層状珪酸塩0.1gを500℃の電気炉で3時間灰化させて求めた値である。
【0051】
参考例2
参考例1で得られた乾燥した有機化層状珪酸塩に、その無機灰分量100gに対してγ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニングシリコーン:SZ6030)を8gを添加し乳鉢で20分間混合した。さらに500ppm塩酸水溶液2gとメタノール6gの混合溶液を添加し、乳鉢で30分混合し、乾燥して有機化層状珪酸塩(b−2)を得た。
【0053】
参考例4
参考例1と同じモンモリロナイト100gと12−アミノドデカン酸塩酸塩30.2g(陽イオン交換容量と等量)を原料として、参考例1と同様にして有機化層状珪酸塩を得た。さらにその無機灰分量100gに対して参考例2でもちいたγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを8gを添加し乳鉢で20分間混合した。さらに500ppm塩酸水溶液2gとメタノール6gの混合溶液を添加し、乳鉢で30分混合し、乾燥して有機化層状珪酸塩(b−4)を得た。
【0054】
比較例1
濃硫酸中、濃度1%、25℃で測定した相対粘度2.75のナイロン6樹脂97重量部に対し、参考例1で製造した有機化層状珪酸塩(b−1)3重量部をドライブレンドして、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpmの条件で運転中の二軸押出機(池貝鉄鋼製 PCM−30)で溶融混練を行い、押し出しガットを冷却後ペレタイザーでペレット化した。これを80℃で12時間真空乾燥後、種々の試験片に射出成形して、無機灰分量、引張強度、引張伸度、曲げ弾性率、Izod衝撃強度を測定した。結果は表1に示すとおりであった。なお、組成物中の無機灰分は試験片から組成物2gを採取して500℃の電気炉で3時間灰化させて求めた値である。また、射出成形によりコネクターを成形し、実用吸水特性を評価したところ変形は見られなかった。
【0055】
実施例1、2
比較例1で用いたものと同じナイロン6、参考例2あるいは4で製造した有機化層状珪酸塩、無水マレイン酸粉末を表1に示した比率で配合し、比較例1に記載した方法と全く同様に、溶融混練で組成物を製造し、射出成形、物性測定を行った。
【0057】
実施例3
濃硫酸中、濃度1%、25℃で測定した相対粘度2.77のナイロン66樹脂と表1に示した各成分を配合し、比較例1に記載した方法と全く同様に、溶融混練で組成物を製造し、射出成形、物性測定を行った。
【0058】
比較例2
比較例1で用いたものと同じナイロン6に膨潤性フッ素雲母(コープケミカル:ME−100)を表2に示した割合で配合し、比較例1に記載した方法と全く同様に、溶融混練で組成物を製造し、射出成形、物性測定を行った。また、コネクターを成形し、実用吸水特性を評価したところ変形が大きく、自動車用コネクターとしての使用に問題があることがわかった。
【0059】
比較例3、4
参考例1で用いたモンモリロナイトあるいは比較例2で用いたものと同じ膨潤性フッ素雲母を用い表2に示した割合で各成分を配合し、比較例1に記載した方法と全く同様に、溶融混練で組成物を製造し、射出成形、物性測定を行った。コネクターを成形し、実用吸水特性を評価したところ変形が大きく、自動車用コネクターとしての使用に問題があることがわかった。
【0060】
実施例4
実施例3で得られたポリアミド樹脂組成物を射出成形して図2に示す自動車用ジャンクションボックス成形品を得た。図2(A)はジャンクションボックス成形品の側面図、(B)は平面図である。この成形品60℃、相対湿度95%の条件下で図2(A)の状態で100時間放置して、実用吸水特性の評価を行った。100時間放置後の外形の変形を観察したが、成形直後とほとんど差が無かった。
【0061】
比較例5
比較例4で得られたポリアミド樹脂組成物を射出成形して図2に示す自動車用ジャンクションボックス成形品を得た。実施例4と同様に外形の変形度合いを観察したところ、成形品の図2(A)に示すジャンクションボックス足2の部分が外側に向かって変形していた。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明で得られるポリアミド樹脂および樹脂組成物は機械的特性、耐熱性、成形性、寸法安定性にすぐれ、かつ、高湿度雰囲気下で長時間使用しても剛性低下が小さく自動車用コネクター成形品やジャンクションボックスの製造に好適であり、得られたコネクターおよびジャンクションボックス成形品は実用価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で作製したコネクター成形品の概略図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図2】 実施例で作製したジャンクションボックス成形品の概略図であり(A)は側面図、(B)は平面図である
【符号の説明】
1.コネクター外枠
2.ジャンクションボックス足
Claims (6)
- (a)ポリアミド樹脂および(b)層状珪酸塩、(d)カルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物をポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜3重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、(b)層状珪酸塩が、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換され、かつ炭素炭素不飽和基を有するカップリング剤で処理された層状珪酸塩であることを特徴とする自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
- (b)層状珪酸塩の含有量が、ポリアミド樹脂組成物中の無機灰分量として0.1〜40重量%である請求項1記載の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
- (b)層状珪酸塩が、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されたスメクタイト系粘土鉱物である請求項1または2に記載の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
- 自動車電装部品用ハウジングが自動車用コネクターまたは自動車用ジャンクションボックスである請求項1〜3いずれかに記載の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる自動車用コネクター。
- 請求項1〜4いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる自動車用ジャンクションボックス。
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