JP4096584B2 - 内燃機関のノック自動検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各気筒の筒内圧を検出する複数の筒内圧センサを備えた内燃機関のノック自動検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関としてのエンジンで発生するノック波形の周波数(ノック周波数)は、エンジン毎に異なり、シリンダのボア径で決まる。そのため、筒内圧センサの出力或いはブロック振動センサの出力からノック波形を抽出するのにバンドパスフィルタ等のフィルタを使う方法が主流である。
【0003】
例えば、従来のノック検出装置として、各気筒の筒内圧センサの出力信号から所定のノック周波数帯域(12〜14KHz程度)の振動成分をバンドパスフィルタ等のフィルタにより抽出し、抽出した振動成分の振幅最大値或いは積分値をしきい値と比較してノックかノイズの判別をするものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術では、ノックかノイズの判別をするためのしきい値が1つしかないので、ノック波形の周波数帯にノイズが乗る場合、ノック検出性が悪化するおそれがある。これは、筒内圧センサの出力信号からバンドパスフィルタ等のフィルタにより抽出したノック周波数帯域の振動成分にノイズが乗り、その振幅最大値或いはその振幅の積分値がしきい値を超えた場合、ノックと判定されてしまうからである。
【0005】
また、上記従来技術では、筒内圧センサの出力信号からノック周波数帯域の振動成分をバンドパスフィルタ等のフィルタにより抽出するので、エンジン毎にノック周波数を事前に特定し、その周波数に応じたフィルタ中心波長をもつバンドパスフィルタを選定する必要がある。このようなノック周波数の特定とバンドパスフィルタの選定は、人間が行なう必要があるため、内燃機関の点火時期、燃料増量値、VVT進角等の自動適合をする際に必須となるノックの自動検出ができない。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、ノック検出性を向上して精度の高いノック判定を可能にするとともに、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずにノックを自動検出可能にした内燃機関のノック自動検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明は、各気筒の筒内圧を検出する複数の筒内圧センサを備えた内燃機関のノック自動検出装置において、前記複数の筒内圧センサからそれぞれ出力される各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングして、気筒毎およびサイクル毎に筒内圧データを収録する高速データ収録手段と、前記筒内圧データに基づき、前記各筒内圧センサ出力に含まれる振動成分の振幅相当量を気筒毎およびサイクル毎に算出する振動成分抽出手段と、気筒毎およびサイクル毎に、前記振幅相当量の最大値を算出する振幅最大値算出手段と、1サイクル中の第1ゲート区間内での前記最大値が第1しきい値を超えるとともに、前記振幅相当量が1サイクル中の第2ゲート区間内で前記第1しきい値より低い第2しきい値を超える回数が第3しきい値を超える場合にノックと判定するノック判定手段とを備えることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、各筒内圧センサ出力を高速データ収録手段により高周波サンプリングした各気筒の筒内圧データに基づき、筒内圧波形に含まれる振動成分の振幅相当量を気筒毎およびサイクル毎に算出する。そして、振幅最大値算出手段により算出した振幅相当量の最大値と振動成分の繰り返し性の有無とに基づくノック判定をノック判定手段により気筒毎およびサイクル毎に行い、同最大値がしきい値を超えかつ前記繰り返し性が有る場合にノックと判定する。これにより、その繰り返し性が無く、ノック波形の周波数帯にノイズが乗ったために前記最大値がしきい値を超えた場合に、ノックと判定されるのを回避できる。このため、ノック周波数帯域の振動成分、つまりノック波形の周波数帯にノイズが乗る場合でも、ノックであるのかノイズであるのかの判定を精度良く行なうことができる。したがって、ノック検出性を向上することができ、精度の高いノック判定を行なうことができる。
【0009】
また、各気筒の筒内圧データに基づき、各筒内圧センサ出力(各気筒の筒内圧波形)に含まれる振動成分の振幅相当量を気筒毎およびサイクル毎に算出することにより、振動波形(ノック波形)が得られる。このため、上記従来技術のように、エンジン毎にノック周波数を事前に特定し、その周波数に応じたフィルタ中心波長をもつバンドパスフィルタ等のフィルタを選定する必要がない。換言すると、ノック波形の周波数に関係なくノック波形を抽出できる。この結果、内燃機関の点火時期、燃料増量値、VVT進角等を自動適合する際に必須となるノック波形の自動抽出が可能となる。したがって、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずにノックを自動検出することができる。
【0011】
さらに上記構成によれば、次の2つの条件が同時に成立したときにノックと判定する。(条件1)第1ゲート区間内での前記最大値が第1しきい値を超えている。(条件2)前記振幅相当量が第2ゲート区間内で第1しきい値より低い第2しきい値を超える回数が第3しきい値を超えている。
【0012】
このようにして前記最大値と前記振動成分の繰り返し性の有無とに基づくノック判定を気筒毎およびサイクル毎に実行する。これにより、前記最大値が第1しきい値を超えていても、前記回数が第3しきい値未満であれば、ノック周波数帯域の振動成分にノイズが乗っているために前記最大値が大きくなっていると判定できる。このため、ノック周波数帯域の振動成分にノイズが乗り、前記最大値がしきい値を超えてノックと判定されるのを回避できる。したがって、ノック検出性をより一層向上することができ、より精度の高いノック判定を行なうことができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関のノック自動検出装置において、前記筒内圧データに基づき気筒毎およびサイクル毎に筒内圧最大値とその位置を算出する最大値算出手段を備え、前記第1ゲート区間および第2ゲート区間は、前記筒内圧最大値の位置以降の所定期間をそれぞれ含むことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、各筒内圧センサ出力に含まれる振動成分がノック波形の場合、理想的にはその振幅相当量が筒内圧最大値の位置以降に徐々に減衰することが多いという特徴を利用してノック判定を行なうようにしている。すなわち、その位置以降の所定期間を含む第1ゲート区間内での前記最大値が第1しきい値を超えるとともに、その所定期間を含む第2ゲート区間内で第2しきい値を超える回数が第3しきい値を超える場合にノックと判定する。これにより、ノック波形の理想的な形に応じたノック判定を精度良く行なうことができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関のノック自動検出装置において、前記内燃機関の点火時期等を自動適合化する自動適合用ノック自動検出装置に適用され、前記各筒内圧センサ出力を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングする前記高速データ収録手段としての高速データロガーと、前記振動成分抽出手段としての筒内圧解析用パーソナルコンピュータとを備えることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずに筒内圧を利用してノックを自動検出することができるので、内燃機関の点火時期、燃料増量値、VVT進角等の自動適合が可能になる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関のノック自動検出装置において、前記内燃機関の運転状態を制御する電子制御装置に組み込んで車両に実装されるノック自動検出装置に適用され、前記各筒内圧センサ出力を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングする前記高速データ収録手段としてのデジタル信号処理装置とを備え、前記デジタル信号処理装置は、前記ノック判定手段によるノック判定の結果を前記電子制御装置内のマイクロコンピュータへ出力するように構成したことを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、電子制御装置に組み込んで車両に実装される場合に、ノック検出性を向上することができ、精度の高いノック判定を行なうことができるとともに、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずに気筒毎およびサイクル毎にノックを自動検出することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関のノック自動検出装置を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る自動適合用ノック自動検出装置の全体構成を模式的に示している。この自動適合用ノック自動検出装置は、エンジンの点火時期、燃料増量値、VVT進角等を自動適合化するための装置であり、筒内圧を利用してノックを自動検出するものである。ここにいう「VVT」とは、エンジン21の吸気カムシャフト(図示略)のクランクシャフト(図示略)に対する相対角を連続的に変化させるための可変バルブタイミング機構をいう。
【0021】
エンジン21には、クランク角センサ22および筒内圧センサ24が取り付けられている。筒内圧センサ24は、4気筒エンジン21の各気筒に設けられている。クランク角センサ22は、クランクシャフトの1回転につき所定角度毎(例えば15度毎)にパルス状の信号(クランク角信号)を出力する。このクランク角信号は、各気筒の圧縮上死点位置TDCを算出するのに用いられる。そして、各筒内圧センサ24は、気筒毎の筒内圧(燃焼圧)をそれぞれ検出し、筒内圧信号を出力する。図8は、各気筒の筒内圧センサ24の出力(筒内圧センサ出力)が表す1/2サイクル分の筒内圧波形(指圧線)を示している。この指圧線には、筒内圧が最大値Pmaxとなる位置付近(破線65で囲んだ領域)に、ノック波形が含まれている。
【0022】
自動適合用ノック自動検出装置(以下、単に「ノック自動検出装置」という。)は、増幅回路25と、高速データ収録手段としての高速データロガー26と、筒内圧解析用パソコン(パーソナルコンピュータ)27とを備える。増幅回路25は、4つの筒内圧センサ24からそれぞれ出力される筒内圧センサ出力を増幅して高速データロガー26に出力する。
【0023】
高速データロガー26は、増幅回路25により増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングして、気筒毎およびサイクル毎に単位期間毎の筒内圧データPdata[i]を収録する。なお、高速データロガー26による高周波サンプリングは、時間ベースまたはクランク角ベースのいずれでも良い。本実施形態では、高速データロガー26は、各筒内圧センサ出力(各気筒の筒内圧波形)に含まれるノック波形(振動周波数が12〜14KHz程度の振動成分)を精度良く解析して抽出するのに十分高い周波数、例えば200KHzで各気筒の筒内圧信号をサンプリングする。
【0024】
また、高速データロガー26には、各筒内圧センサ出力の他に、クランク角センサ22から出力されるクランク角信号が入力されている。これにより、高速データロガー26は、デジタル信号に変換したクランク角信号と、各気筒の筒内圧データPdata[i]とを同期して筒内圧解析用パソコン27へ出力するようになっている。
【0025】
また、筒内圧解析用パソコン27は、高速データロガー26にデータ計測指示を与えて、同データロガーから各気筒の筒内圧データPdata[i]およびクランク角信号のデータを任意サイクル分(例えば、100サイクル分)一括して取り込むようになっている。
【0026】
また、筒内圧解析用パソコン27には、「ノック判定処理」用のプログラムが組み込まれている。このノック判定処理では、各気筒の筒内圧データとクランク角信号とに基づき、各筒内圧センサ出力に含まれるノック波形等の振動成分の振幅相当量Amp[i](図9に示す振動波形)を気筒毎およびサイクル毎に算出し、ノック判定を行なう。
【0027】
次に、この「ノック判定処理」について図2〜図13を参照して説明する。
まず、図2に示すフローチャートのステップS10で、エンジン21の運転状態を定常状態に設定し、所定の運転条件および所定の点火時期にてエンジン21を運転する。つまり、エンジン21を、エンジン回転数、吸入空気量および空燃比をそれぞれ一定に設定するとともに、点火時期を一定値に設定して運転する。
【0028】
次に、ステップS100に進み、高速データロガー26により気筒毎にそれぞれ収録された筒内圧データPdata[i]とクランク角信号を、上記任意サイクル分取り込む。ここで、高速データロガー26による1サイクル当たりの筒内圧データのサンプリングデータ数をsizeとすると、筒内圧データPdata[i]は、i=0(吸気工程下死点付近の基準点で、クランク角0度)〜i=size(クランク角720度)である。また、筒内圧解析用パソコン27は、取り込んだクランク角信号に基づき、各気筒の圧縮上死点位置TDCを算出する。
【0029】
次に、ステップS200に進み、ステップS100で取り込んだ各気筒の筒内圧データに基づき、気筒毎およびサイクル毎に筒内圧最大値Pmaxとその位置imaxを算出する。このステップS200が最大値算出手段に相当する。
【0030】
次に、ステップS300に進み、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧波形(指圧線)の形から点火時期の大遅角状態を検出する。具体的には、気筒毎およびサイクル毎に、ステップS200で算出した筒内圧最大値Pmaxと圧縮上死点位置での筒内圧P[i=TDC]との差が所定のしきい値を超えているか否かを判定する。その差がしきい値を超えている場合には大遅角状態ではないと判定されてステップS400に進み、その差がしきい値以下の場合には、大遅角状態であると判定されてステップS310に進み、分析を終了する。
【0031】
大遅角状態ではないと判定されてステップS400に進むと、筒内圧データに基づき気筒毎およびサイクル毎に筒内圧最小値Pminとその位置iminを算出する。
【0032】
次に、ステップS500に進み、気筒毎およびサイクル毎に指圧線全体の変曲点の数を算出する。ここにいう、「指圧線全体」とは、1サイクルの指圧線をいう。このステップS500では、図3に示すように、ステップS400で算出した筒内圧最小値PminとステップS100で算出した圧縮上死点位置での筒内圧P[i=TDC]を比較し、両者が等しい場合には指圧線全体の変曲点が1つであると判定し、そうでない場合には変曲点が3つであると判定する。つまり、筒内圧が圧縮上死点位置TDCの前後で上昇し続けて筒内圧最大値Pmaxに達し、この位置imaxから筒内圧が下降し続ける場合には、指圧線全体の変曲点が1つであると判定される。この判定がなされると、ステップS510に進み、1つの変曲点の位置をimaxとして設定する。
【0033】
一方、圧縮上死点位置TDCの近傍に極大値を持つ場合には、指圧線全体の変曲点が3つであると判定される。この判定がなされると、ステップS520に進み、3つの変曲点の位置をそれぞれTDC、iminおよびimaxとして設定する。なお、指圧線の圧縮上死点位置TDC近傍に極大値(変曲点)ができる場合には、その変曲点はTDCの近傍にできるので、TDCをその変曲点に代えて1つの変曲点に設定している。これにより、圧縮上死点位置TDC近傍の変曲点を算出する処理を省略でき、処理速度を早くすることができる。
【0034】
こうして気筒毎およびサイクル毎に指圧線全体の変曲点の数を算出した後、図2のステップS600に進む。このステップS600では、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データPdata[i]に基づき筒内圧波形(指圧線)に含まれる振動波形を抽出し、その振動成分の振幅相当量Amp[i]を算出する。
【0035】
次に、変曲点の数が1と判定された場合にステップS600で実行される振幅相当量Amp[i]の計算処理を図4および図5に基づいて説明する。上記ステップS500で変曲点が1つと判定された場合、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧Pの上昇中(0<i<imax)と、筒内圧Pの下降中(imax<i<size)とに分けて振幅相当量Amp[i]を計算する。
【0036】
まず、筒内圧データPdata[i]のデータ数iが0〜imaxまでの筒内圧上昇中(0<i<imax)、すなわち図8で筒内圧PがPmaxに達するまでのクランク角区間では、上記ステップS510から図4のステップS610に進み、同図に示す計算処理を実行する。
【0037】
このステップS610は、データ数iが0〜imaxまでのクランク角区間で計算処理がなされるように、ゲートをかけている。すなわち、このステップS610では、最初にiを0に設定し、iがimaxになるまでの間、ステップS614以下の処理を繰り返しつつ、データ数iを1ずつインクリメント(i←i+1)する。
【0038】
iがimaxになるまでの間はステップS610の判定結果はYESになり、ステップS614に進む。このステップS614では、筒内圧データの単位期間当たりの変化量DLP[i](DLP[i]=Pdata[i]−Pdata[i−1])を算出し、DLP[i]が負または0であるか否かを判定する。DLP[i]が正の場合、すなわち筒内圧データの今回値Pdata[i]がその前回値Pdata[i−1]より大きい場合、ステップS614の判定結果はNOになり、ステップS616に進み、振幅相当量Amp[i]およびt-ampを共に0に設定する。
【0039】
この後、ステップS610に戻り、筒内圧データのデータ数iを1だけインクリメントし(i←i+1)、iがimaxより小さいか否かを判定する。i<imaxでかつDLP[i]が正の間は、ステップS610の判定結果はYESでかつステップS614の判定結果はNOであるので、ステップS610,S614およびS616が繰り返し実行される。その間、ステップS610でデータ数iが1ずつインクリメントされていくとともに、Amp[i]およびt-ampは共に0のままに維持される。
【0040】
こうして、ステップS610,S614およびS616が繰り返される間に、図12の符号90で示すように筒内圧が低下すると、筒内圧データの今回値DLP[i]がその前回値Pdata[i−1]より小さくなり、DLP[i]が負になるので、ステップS614からステップS618に進む。
【0041】
このステップS618では、t-ampとDLP[i]の加算値をt-ampとして設定する。このとき、t-ampは上記ステップS616で0に設定されているので、このステップS618で設定されるt-ampはDLP[i]に等しい。
【0042】
この後、ステップS620に進み、筒内圧データの今回値と次回値の変化量DLP[i+1](DLP[i+1]=Pdata[i+1]−Pdata[i])が正であるか否かを判定する。図12の区間90で示すようにその変化量DLP[i+1]が負の場合には、ステップS622に進み、振幅相当量Amp[i]を0に維持する。
【0043】
この後、ステップS610に戻り、ステップS614に進む。このとき、ステップS614では、前回算出した変化量DLP[i]よりデータ数が1つ増えたデータ数iの筒内圧データ(今回値)とその前回値の変化量DLP[i]を算出し、その変化量が負または0であるか否かについて判定する。つまり、図12の区間90で、DLP[i+1]が負または0であるか否かを判定する。DLP[i+1]は負であるので、ステップS614の判定結果はYESになり、ステップS618に進む。このとき、t-amp=DLP[i]であるので、ステップS618で設定されるt-ampはDLP[i]にDLP[i+1]を加算した値に設定される。
【0044】
この後、ステップS620に進み、筒内圧データの今回値と次回値の変化量DLP[i+1]が正であるか否かを判定する。ここでは、図12の場合でいうと、その今回値に相当する区間90のi+1位置の筒内圧と、その次回値であるi+2位置の筒内圧の変化量が正であるか否かを判定する。同図の場合、筒内圧はi+1位置からi+2位置の間で上昇に転じているので、ステップS620の判定結果がYESになり、ステップS624に進む。
【0045】
このステップS624では、ステップS618で設定したt-amp(負の値)の絶対値を振幅相当量Amp[i]として設定する。こうして、筒内圧上昇中には(データ数iが0〜imaxまでのクランク角区間では)、図12の区間90、91、92のように筒内圧データの変化量DLP[i]が負である各区間内での同変化量の総和の絶対値を振幅相当量Amp[i]として算出する。
【0046】
そして、データ数iがimaxに達すると、ステップS610の判定結果がNOになるので、ステップS612に進み、図4の計算処理を終了する。また、i=imaxの位置では、変化量DLP[i]は0に設定される。
【0047】
次に、変曲点が1つと判定された場合、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧Pの下降中(imax<i<size)に、図5の計算処理が実行される。筒内圧データPdata[i]のデータ数iがimax〜sizeまでの筒内圧下降中、すなわち図8で筒内圧PがPmaxから低下し続けるクランク角区間では、上記ステップS510から図5のステップS630に進み、図5に示す計算処理を実行する。
【0048】
このステップS630は、データ数iがimax〜sizeまでのクランク角区間で計算処理がなされるように、ゲートをかけている。すなわち、このステップS630では、最初にiをimax+1に設定し、iがsizeになるまでの間、ステップS634以下の処理を繰り返しつつ、データ数iを1ずつインクリメント(i←i+1)する。
【0049】
iがsizeになるまでの間はステップS630の判定結果はYESになり、ステップS634に進む。このステップS634では、筒内圧データの単位期間当たりの変化量DLP[i]を算出し、DLP[i]が正または0であるか否かを判定する。DLP[i]が負の場合、ステップS634の判定結果はNOになり、ステップS636に進み、振幅相当量Amp[i]およびt-ampを共に0に設定する。
【0050】
この後、ステップS630に戻り、筒内圧データのデータ数iを1だけインクリメントし(i←i+1)、iがsizeより小さいか否かを判定する。i<sizeでかつDLP[i]が負の間は、ステップS630の判定結果はYESでかつステップS634の判定結果はNOであるので、ステップS630,S634およびS636が繰り返し実行される。その間、ステップS630でデータ数iが1ずつインクリメントされていくとともに、Amp[i]およびt-ampは共に0のままに維持される。
【0051】
こうして、ステップS630,S634およびS636が繰り返される間に、図13の符号95で示すように筒内圧が上昇すると、筒内圧データの今回値Pdata[i]がその前回値Pdata[i−1]より大きくなり、DLP[i]が正になるので、ステップS634からステップS638に進む。
【0052】
このステップS638では、t-ampとDLP[i]の加算値をt-ampとして設定する。このとき、t-ampは上記ステップS636で0に設定されているので、このステップS638で設定されるt-ampはDLP[i]に等しい。
【0053】
この後、ステップS640に進み、筒内圧データの今回値と次回値の変化量DLP[i+1](DLP[i+1]=Pdata[i+1]−Pdata[i])が負であるか否かを判定する。図13の区間95で示すようにその変化量DLP[i+1]が正の場合には、ステップS642に進み、振幅相当量Amp[i]を0に維持する。
【0054】
この後、ステップS630に戻り、ステップS634に進む。このとき、ステップS634では、前回算出した変化量DLP[i]よりデータ数が1つ増えたデータ数iの筒内圧データ(今回値)とその前回値の変化量DLP[i]を算出し、その変化量が正または0であるか否かについて判定する。つまり、図13の区間95で、DLP[i+1]が正または0であるか否かを判定する。DLP[i+1]は正であるので、ステップS634の判定結果はYESになり、ステップS638に進む。このとき、t-amp=DLP[i]であるので、ステップS638で設定されるt-ampはDLP[i]にDLP[i+1]を加算した値に設定される。
【0055】
この後、ステップS640に進み、筒内圧データの今回値と次回値の変化量DLP[i+1]が負であるか否かを判定する。ここでは、図13の場合でいうと、その今回値に相当する区間95のi+1位置の筒内圧と、その次回値であるi+2位置の筒内圧の変化量が負であるか否かを判定する。同図の場合、筒内圧はi+1位置からi+2位置の間で下降に転じているので、ステップS640の判定結果がYESになり、ステップS644に進む。
【0056】
このステップS644では、ステップS638で設定したt-amp(正の値)を振幅相当量Amp[i]として設定する。こうして、筒内圧下降中には(データ数iがi〜sizeまでのクランク角区間では)、図13の区間94、95、96のように筒内圧データの変化量DLP[i]が正である各区間内での同変化量の総和を振幅相当量Amp[i]として算出する。そして、データ数iがsizeに達すると、ステップS630の判定結果がNOになるので、ステップS632に進み、図5の計算処理を終了する。
【0057】
このようにして、指圧線全体の変曲点が1つの場合、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データPdata[i]に基づき筒内圧波形(指圧線)に含まれる振動波形を抽出し、その振動成分の振幅相当量Amp[i]を算出することができる。こうして気筒毎およびサイクル毎に算出される振幅相当量Amp[i]を、図9および図10で示してある。
【0058】
次に、上記ステップS500で変曲点の数が3と判定された場合に、ステップS600で実行される振幅相当量Amp[i]の計算処理について説明する。
(1)まず、筒内圧P上昇中のクランク角区間(0<i<TDC)では、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データの変化量DLP[i]が負である各区間内での同変化量の総和の絶対値を振幅相当量Amp[i]として算出する。
【0059】
(2)次に、圧縮上死点位置(i=TDC)では、振幅相当量Amp[i]を0に設定する。
(3)次に、筒内圧P下降中のクランク角区間(TDC<i<imin)では、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データの変化量DLP[i]が正である各区間内での同変化量の総和を振幅相当量Amp[i]として算出する。
【0060】
(4)次に、筒内圧最小値Pminの位置(i=imin)では、振幅相当量Amp[i]を0に設定する。
(5)次に、筒内圧P上昇中のクランク角区間(imin<i<imax)では、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データの変化量DLP[i]が負である各区間内での同変化量の総和の絶対値を振幅相当量Amp[i]として算出する。
【0061】
(6)次に、筒内圧最大値Pmaxの位置(i=imax)では、振幅相当量Amp[i]を0に設定する。
(7)そして、筒内圧P下降中のクランク角区間(imax<i<size)では、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データの変化量DLP[i]が正である各区間内での同変化量の総和を振幅相当量Amp[i]として算出する。
【0062】
このようにして、指圧線全体の変曲点が3つの場合、気筒毎およびサイクル毎に、筒内圧データPdata[i]に基づき筒内圧波形(指圧線)に含まれる振動波形を抽出し、図9および図10で示すその振動成分の振幅相当量Amp[i]を算出することができる。上記ステップS600が振動成分抽出手段に相当する。
【0063】
このようにして上記ステップS600で振幅相当量Amp[i]を計算した後、図2のステップS700に進む。このステップS700では、気筒毎およびサイクル毎に、1サイクル中の第1ゲート区間内での振幅相当量Amp[i]の最大値Ampmaxを算出する。その第1ゲート区間は、図8で示すように、上記ステップS200で算出したimax前後のα+βのクランク角区間である。
【0064】
ステップS700の処理を図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS710では、データ数iがimax−αからimax−βまでの第1ゲート区間で計算処理がなされるように、ゲートをかけている。すなわち、このステップS710では、最初にiをimax−αに設定し、iがimax−βになるまでの間、ステップS710、S720およびS730の処理を繰り返しつつ、データ数iを1ずつインクリメント(i←i+1)する。
【0065】
iがimax−βになるまでの間はステップS710の判定結果はYESになり、ステップS720に進む。このステップS720では、振幅相当量Amp[i]の今回値が最大値Ampmaxを超えているか否かを判定する。その今回値がAmpmax以下の場合には、ステップS710に戻る。一方、その今回値がAmpmaxを超えている場合には、ステップS720に進み、振幅相当量Amp[i]の今回値をAmpmaxとして設定する。この後、ステップS710に戻る。
【0066】
こうして、データ数iがimax−αからimax−βまでの第1ゲート区間において、振幅相当量Amp[i]の今回値が最大値Ampmaxを超える度にその今回値でAmpmaxを更新していくことで、第1ゲート区間内での最大値Ampmaxを算出する。なお、上記ステップS700が、振幅最大値算出手段に相当する。
【0067】
この後、図2のステップS800に進み、気筒毎に、第1しきい値としてのしきい値1と第2しきい値としてのしきい値2との2つのしきい値を設定する(図10参照)。
【0068】
この後、図2のステップS900に進み、気筒毎およびサイクル毎にノック判定を行なう。このステップS900では、上記ステップS700で算出した振幅相当量Amp[i]の最大値Ampmaxと、振動成分の繰り返し性の有無とに基づき、気筒毎およびサイクル毎にノック判定を行なう。
【0069】
ステップS900の処理(「ノックORノイズ判定処理」)を図7のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS910では、ステップS700で算出した振幅相当量Amp[i]の最大値AmpmaxがステップS800で設定したしきい値1を超えているか否かについて判定する。この判定結果がNOの場合、すなわち最大値Ampmaxがしきい値1以下の場合、ステップS960に進み、ノイズと判定される。こうして、気筒毎に最大値Ampmaxがしきい値1以下のサイクルについては、ノイズと判定される。
【0070】
また、ステップS910の判定結果がYESの場合、すなわち最大値Ampmaxがしきい値1を超えている場合には、振動が大きくノックである可能性が高いので、次のステップ920に進む。このステップS920では、データ数iが最大値Ampmaxの位置であるiampmaxからiampmax+γまでの第2ゲート区間(図10参照)で計算処理がなされるように、ゲートをかけている。すなわち、このステップS920では、最初にiをiampmaxに設定し、iがiampmax+γになるまでの間、ステップS920〜S970の処理を繰り返しつつ、データ数iを1ずつインクリメント(i←i+1)する。
【0071】
iがiampmax+γになるまでの間はステップS920の判定結果はYESになり、ステップS930に進む。このステップS930では、振幅相当量Amp[i]の今回値がステップS800で設定したしきい値2を超えているか否かを判定する。この判定結果がNOの場合にはステップS920に戻る。一方、その判定結果がYESの場合にはステップS940に進む。
【0072】
このステップS940では、振幅相当量Amp[i]がしきい値2を超える回数である振幅繰り返し数Nを1だけインクリメントする。なお、ステップS940では、iampmaxでの最大値Ampmaxを含めて振幅繰り返し数Nをカウントする。つまり、図7の処理が開始されときのiampmaxの位置で、ステップS940において振幅繰り返し数Nが1に設定されるようになっている。この後、ステップS920に戻る。
【0073】
こうしてiがiampmax+γになるまでの第2ゲート区間内に、最大値Ampmaxを含めて振幅相当量Amp[i]がしきい値2を超えた振幅繰り返し数Nをカウントする。
【0074】
そして、iがiampmax+γになると、ステップS920の判定結果がNOになり、ステップS950に進む。このステップS950では、ステップS940で設定した振幅繰り返し数Nがしきい値3を超えているか否かを判定する。振幅繰り返し数Nがしきい値3以下の場合には、ステップS950の判定結果がNOになり、上記ステップS960に進み、ノイズと判定される。すなわち、ノック無しサイクルであるノイズサイクルと判定される。一方、振幅繰り返し数Nがしきい値3を超えている場合には、ステップS950の判定結果がYESになり、ステップS970に進み、ノックと判定される。すなわち、ノック有りサイクルであるノックサイクルと判定される。
【0075】
このようにして、気筒毎に、次の2つの条件が成立したサイクルについては、ノックと判定される(ステップS970)。(条件1)図10で示すように、第1ゲート区間内での最大値Ampmaxがしきい値1を超えている(ステップS910でYES)。(条件2)第2ゲート区間内での振幅繰り返し数Nがしきい値3を超えている(ステップS950でYES)。すなわち、振動成分の繰り返し性が有ると判定される。なお、上記ステップS900がノック判定手段に相当する。
【0076】
このようなノック判定によりノックと判定される場合の例を図10で示してある。これに対して、図11(a)で示すように最大値Ampmaxがしきい値1以下(ステップS910でNO)となる各気筒のサイクル、或いは図11(b)で示すように振幅繰り返し数Nがしきい値3以下(ステップS950でNO)となる各気筒のサイクルは、いずれもノイズ(ノイズサイクル)と判定される。なお、上記ステップS900がノック判定手段に相当する。
【0077】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(イ)各筒内圧センサ24から出力される筒内圧センサ出力を高速データロガー26により高周波サンプリングした各気筒の筒内圧データPdata[i]に基づき、筒内圧波形に含まれる振動成分の振幅相当量Amp[i]を気筒毎およびサイクル毎に算出する。そして、図2のステップS700で算出した振幅相当量の最大値Ampmaxと振動成分の繰り返し性の有無とに基づくノック判定をステップS900により気筒毎およびサイクル毎に行い、最大値Ampmaxがしきい値1を超えかつ前記繰り返し性が有る場合にノックと判定する。これにより、その繰り返し性が無く、ノック波形の周波数帯にノイズが乗ったために最大値Ampmaxがしきい値を超えた場合に、ノックと判定されるのを回避できる。
【0078】
このため、ノック周波数帯域の振動成分、つまりノック波形の周波数帯にノイズが乗る場合でも、ノックであるのかノイズであるのかの判定を精度良く行なうことができる。したがって、ノック検出性を向上することができ、精度の高いノック判定を行なうことができる。
【0079】
(ロ)各気筒の筒内圧データPdata[i]に基づき、各筒内圧センサ出力に含まれる振動成分の振幅相当量Amp[i]を気筒毎およびサイクル毎に算出することにより、振動波形(ノック波形)が得られる。このため、上記従来技術のように、エンジン毎にノック周波数を事前に特定し、その周波数に応じたフィルタ中心波長をもつバンドパスフィルタ等のフィルタを選定する必要がない。換言すると、ノック波形の周波数に関係なくノック波形を抽出できる。この結果、内燃機関の点火時期、燃料増量値、VVT進角等を自動適合する際に必須となるノック波形の自動抽出が可能となる。したがって、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずにノックを自動検出することができる。
【0080】
(ハ)上記2つの条件(条件1および2)が同時に成立したときにノックと判定する。このようにして最大値Ampmaxと前記振動成分の繰り返し性の有無とに基づくノック判定を気筒毎およびサイクル毎に実行する。これにより、最大値Ampmaxがしきい値1(第1しきい値)を超えていても、振幅繰り返し数Nが第3しきい値未満であれば、ノック周波数帯域の振動成分にノイズが乗っているために最大値Ampmaxが大きくなっていると判定できる。このため、ノック周波数帯域の振動成分にノイズが乗り、最大値Ampmaxがしきい値を超えてノックと判定されるのを回避できる。したがって、ノック検出性をより一層向上することができ、より精度の高いノック判定を行なうことができる。
【0081】
(ニ)ステップS200で筒内圧データPdata[i]に基づき気筒毎およびサイクル毎に筒内圧最大値Pmaxとその位置imaxを算出する。そして、図8に示す第1ゲート区間および図10に示す第2ゲート区間は、筒内圧最大値の位置imax以降の所定期間をそれぞれ含んでいる。これにより、各筒内圧センサ出力に含まれる振動成分がノック波形の場合、理想的にはその振幅相当量Amp[i]が位置imaxの位置以降に徐々に減衰することが多いという特徴を利用してノック判定を行なうようにしている。すなわち、位置imax以降の所定期間を含む第1ゲート区間内での最大値Ampmaxがしきい値1を超えるとともに、その所定期間を含む第2ゲート区間内でしきい値2を超える回数がしきい値3を超える場合にノックと判定する。これにより、ノック波形の理想的な形に応じたノック判定を精度良く行なうことができる。
【0082】
(ホ)バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずに筒内圧を利用してノックを自動検出することができるので、エンジン21の点火時期、燃料増量値、VVT進角等の自動適合が可能になる。
【0083】
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態に係るノック自動検出装置の概略構成を示している。このノック自動検出装置は、エンジン21の運転状態を制御する電子制御装置としてのエンジンコントロールユニット(以下、「ECU」という。)30に組み込んで車両に実装されるノック自動検出装置に本発明を適用したもの(ECU実装の場合)である。
【0084】
このノック自動検出装置は、4つの筒内圧センサ24からそれぞれ出力される各筒内圧センサ出力を増幅する増幅回路25と、増幅回路25で増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングするデジタル信号処理装置としてのDSP40とを備えている。増幅回路25とDSP40は、ECU30に実装されている。
【0085】
このECU30は、エンジン21の各種制御、例えば、燃焼形態の切替制御、スロットル開度制御、燃料噴射制御、ノック制御(KCS制御)を含む点火時期制御等を実行するように構成されている。ECU30は、ROM33、CPU34、RAM35、及びバックアップRAM36等からなる算術論理演算回路としてのマイクロコンピュータ31を備えている。
【0086】
ここで、ROM33は各種制御プログラムや、これらのプログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されたメモリであり、CPU34はROM33に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM35は、CPU34での演算結果や上記各種制御に必要な各種センサから入力されるデータ等を一時的に記憶するメモリである。また、バックアップRAM36は、エンジン21の停止時にその記憶されたデータ等を保存する不揮発性のメモリである。そして、ROM33、CPU34、RAM35及びバックアップRAM36は、バス37を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路38及び外部出力回路39と接続されている。
【0087】
外部入力回路38には、DSP40の他に、上記各種制御に必要な各種センサ、例えばカムポジションセンサ、アクセルポジションセンサ、バキュームセンサ及び吸気温センサ等が接続されている。また、外部出力回路39には、それぞれ図示を省略したスロットル用モータ、燃料噴射弁、及びイグナイタ等が接続されている。そして、ECU30は、点火プラグ(図示略)の一次コイルに通電を開始するクランク角(通電開始時期)と一次コイルの電流を遮断するクランク角(点火時期)を、イグナイタを介して制御する(点火時期制御を行う)ようになっている。
【0088】
DSP40は、各気筒の筒内圧データPdata[i]とクランク角信号とに基づき、図2に示す上記「ノック判定処理」を実行して気筒毎およびサイクル毎にノックであるのか否かのノック判定を実行し、その判定結果をマイクロコンピュータ31へ出力するように構成されている。
【0089】
そして、マイクロコンピュータ31は、DSP40から気筒毎およびサイクル毎に出力されるノック判定結果に基づき、ノック制御(KCS制御)を実行する。ここにいう、「ノック制御」とは、DSP40からのノック判定結果に基づき点火プラグの通電をイグナイタを介して制御することで、点火時期を最適点火時期より遅角させ、ノックの発生を抑制する制御である。
【0090】
以上のように構成された第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(ヘ)ECU30に組み込んで車両に実装される場合に、ノック検出性を向上することができ、精度の高いノック判定を行なうことができるとともに、バンドパスフィルタ等のフィルタを使わずに気筒毎およびサイクル毎にノックを自動検出することができる。
【0091】
[ 変形例]
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1実施形態では、本発明を4気筒のエンジン21に適用した例を示したが、本発明は多気筒の内燃機関に広く適用可能である。
【0092】
・上記第1実施形態では、指圧線の圧縮上死点位置TDC近傍に極大値(変曲点)ができる場合には、その変曲点はTDCの近傍にできるので、TDCをその変曲点に代えて1つの変曲点に設定しているが、その変曲点の位置を算出して、この変曲点を1つの変曲点として設定するようにしても良い。
【0093】
・上記第1実施形態では、高速データロガー26は、各筒内圧センサ出力を例えば200KHzでサンプリングしているが、そのサンプリング周波数は適宜変更可能である。
【0094】
・上記第1実施形態において、図8に示す第1ゲート区間を図10に示す第2ゲート区間と同じにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態に係る自動適合用ノック自動検出装置の全体を模式的に示す構成図。
【図2】 ノック判定処理を示すフローチャート。
【図3】 図2のステップS500の処理内容を示すフローチャート。
【図4】 図2のステップS600における変曲点1つの場合で筒内圧上昇中の振幅相当量の計算処理を示すフローチャート。
【図5】 図2のステップS600における変曲点1つの場合で筒内圧下降中の振幅相当量の計算処理を示すフローチャート。
【図6】 図2のステップS700の処理内容を示すフローチャート。
【図7】 図2のステップS900の処理内容を示すフローチャート。
【図8】 筒内圧波形を示すグラフ。
【図9】 図8の筒内圧波形から抽出した振動波形を示すグラフ。
【図10】 図9の破線部を拡大した図で、抽出した振動波形がノックの場合の例を示すグラフ。
【図11】 (a)は図10と同様の図で抽出した振動波形の振幅相当量の最大値Ampmaxがしきい値1以下である場合を示すグラフ、(b)は同振動波形の振幅の繰り返し性なしの場合を示すグラフ。
【図12】 変曲点1つの場合で筒内圧上昇中の振幅相当量の計算処理を示す説明図。
【図13】 変曲点1つの場合で筒内圧下降中の振幅相当量の計算処理を示す説明図。
【図14】 車両に実装した第2実施形態に係るノック自動検出装置の全体を模式的に示す構成図。
【符号の説明】
21…内燃機関としてのエンジン、24…筒内圧センサ、25…増幅回路、26…高速データ収録手段としての高速データロガー、27…筒内圧解析用パソコン、30…電子制御装置としてのエンジンコントロールユニット(ECU)、31…マイクロコンピュータ、40…デジタル信号処理装置(高速データ収録手段)としてのDSP。
Claims (4)
- 各気筒の筒内圧を検出する複数の筒内圧センサを備えた内燃機関のノック自動検出装置において、
前記複数の筒内圧センサからそれぞれ出力される各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングして、気筒毎およびサイクル毎に筒内圧データを収録する高速データ収録手段と、
前記筒内圧データに基づき、前記各筒内圧センサ出力に含まれる振動成分の振幅相当量を気筒毎およびサイクル毎に算出する振動成分抽出手段と、
気筒毎およびサイクル毎に、前記振幅相当量の最大値を算出する振幅最大値算出手段と、
1サイクル中の第1ゲート区間内での前記最大値が第1しきい値を超えるとともに、前記振幅相当量が1サイクル中の第2ゲート区間内で前記第1しきい値より低い第2しきい値を超える回数が第3しきい値を超える場合にノックと判定するノック判定手段と
を備えることを特徴とする内燃機関のノック自動検出装置。 - 前記筒内圧データに基づき気筒毎およびサイクル毎に筒内圧最大値とその位置を算出する最大値算出手段を備え、前記第1ゲート区間および第2ゲート区間は、前記筒内圧最大値の位置以降の所定期間をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のノック自動検出装置。
- 前記内燃機関の点火時期等を自動適合化する自動適合用ノック自動検出装置に適用され、
前記各筒内圧センサ出力を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングする前記高速データ収録手段としての高速データロガーと、前記振動成分抽出手段としての筒内圧解析用パーソナルコンピュータとを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のノック自動検出装置。 - 前記内燃機関の運転状態を制御する電子制御装置に組み込んで車両に実装されるノック自動検出装置に適用され、
前記各筒内圧センサ出力を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された各筒内圧センサ出力を高周波サンプリングする前記高速データ収録手段としてのデジタル信号処理装置とを備え、
前記デジタル信号処理装置は、前記ノック判定手段によるノック判定の結果を前記電子制御装置内のマイクロコンピュータへ出力するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のノック自動検出装置。
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