JP4095431B2 - スローアウェイチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳鉄や鉄鋼の切削に用いるスローアウェイタイプの切削チップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋳鉄や鉄鋼の切削ではスローアウェイタイプの切削チップが用いられており、中には、切りくずによるすくい面の損傷を防止する目的でチップのすくい面にチップブレーカを形成したものや、切削抵抗大による切刃の損傷等を防ぐためにすくい面外周部の切刃近傍にランドを設けたもの等、チップのすくい面形状に変化を持たせたチップが知られている。
【0003】
ここで、チップブレーカおよびランドを形成した両面使いのスローアウェイチップでは、一般的にチップを裏返して用いる際に、切刃部がホルダー側着座面と接触して欠損することを防止するため、図4のようにランド面25の高さをすくい面中央部27(すわり面)の高さよりも低くなるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ただし、上記従来のスローアウェイチップでは、特に衝撃が大きい切削条件で加工すると、チップの固定(すわり)に最も影響を与えるすくい面の周縁部、特にチップコーナー部の高さがすくい面中央部の高さよりも低いことから、ホルダー取付時にチップ下面(すわり面)に位置する切刃部とホルダー側着座面との間にうきが生じてしまう結果、チップのすわりが安定せず、切削時にチップが振動し、チップ下面に位置する切刃部がホルダー側着座面に断続的に衝突して欠損(裏欠け)したり、切削時のチップのビビリ振動によって切削に関与する切刃にチッピングが発生する等の不具合が生じていた。
【0005】
そこで、ランドと、該ランドとの相似形状からなる中央面とを設けた、いわゆる全周ブレーカにおいて、ランドと中央面の高さを同じにしてチップのすわりを安定させ、切削時のチップの振動を抑制して切刃の損傷を防止しようとするスローアウェイチップも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−39306号公報
【特許文献2】
特開平11−277307号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この全周ブレーカタイプのスローアウェイチップにおいても、最初の切削時に刃先の欠損やクレータ摩耗によってすくい面のランドが損傷してしまうと、そのチップを裏返して使用した際にチップのすわりに最も影響を与えるコーナー部のランドが損傷しているので接地面とならなくなるため、すわりの安定性が低下してしまい、切削中のチップの振動による切刃の損傷や加工面の悪化等の問題点が十分に改善されなかった。
【0008】
また、主面の1辺のランド面が長いので剛性が不十分となり、たわみ易くなるため、特に衝撃が大きい切削条件で加工した場合、ランド面のたわみにより微振動が発生し、切刃の損傷が生じる等の不具合もあった。特に主面の1辺の長さが比較的長い菱形形状をなすスローアウェイチップにおいて、その現象が顕著に表れた。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、加工時のすわり安定性に優れるとともに、切刃が損傷しにくく、且つ平滑な加工面が得られるスローアウェイチップを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題について検討した結果、略平板状をなし、切削を行うノーズとなる鋭角な角部と辺部とからなる菱形形状をなす2つの主面がすくい面と着座面を、側面が逃げ面をなし、前記両主面と前記逃げ面の交差稜線に切刃を有し、ホルダに装着して用いられる両面使用可能なスローアウェイチップにおいて、前記両主面の全周縁部に形成されたランド面と、前記両主面の中央部に形成された中央面と、前記ランド面と前記中央面との間に形成された凹部と、を有し、前記中央面は、上面視において前記ランド面に向かって伸びる少なくとも1つ以上の突起部と、前記中央面と同一面上に位置し前記突起部の少なくとも1つと前記ランド面の辺部とを部分的に連結する連結部と、を有し、前記主面の辺部の全長に渡って形成された前記ランド面は、前記連結部によって前記凹部と接する側のランド面の辺部が複数に分断されるとともに、前記連結部は、少なくとも前記鋭角な角部に近接する順に第一連結部と第二連結部の2つの連結部を有しており、前記第二連結部の幅が第一連結部の幅よりも大きいことによって、加工時のすわり安定性が向上するとともに、前記ランド面を補強することができ、切削によるランド面の微振動の発生を抑制して切削に関与する切刃の欠損を防止でき、平滑な仕上げ面が得られることを知見した。
【0011】
すなわち、本発明のスローアウェイチップは、略平板状をなし、切削を行うノーズとなる鋭角な角部と辺部とからなる菱形形状をなす2つの主面がすくい面と着座面を、側面が逃げ面をなし、前記両主面と前記逃げ面の交差稜線に切刃を有し、ホルダに装着して用いられる両面使用可能なスローアウェイチップにおいて、前記両主面の全周縁部に形成されたランド面と、前記両主面の中央部に形成された中央面と、前記ランド面と前記中央面との間に形成された凹部と、を有し、前記中央面は、上面視において前記ランド面に向かって伸びる少なくとも1つ以上の突起部と、前記中央面と同一面上に位置し前記突起部の少なくとも1つと前記ランド面の辺部とを部分的に連結する連結部と、を有し、前記主面の辺部の全長に渡って形成された前記ランド面は、前記連結部によって前記凹部と接する側のランド面の辺部が複数に分断されるとともに、前記連結部は、少なくとも前記鋭角な角部に近接する順に第一連結部と第二連結部の2つの連結部を有しており、前記第二連結部の幅が第一連結部の幅よりも大きいことを特徴とするスローアウェイチップである。
【0013】
さらに、前記突起部は、前記鋭角な角部に向かって伸びるとともに前記凹部を介して前記ランド面と離間する第一突起部を有していることが望ましい。
【0014】
また、前記突起部は、前記主面の辺部に向かって伸びるとともに前記凹部を介して前記ランド面と離間する第二突起部をさらに有していることが望ましい。
【0015】
さらに、前記スローアウェイチップを載置する際に、着座面となる主面の少なくとも前記突起部および前記連結部がホルダへの設置面となるよう同一面上に連続して設けられたことが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の切削スローアウェイチップ1(以下単にチップ1と呼ぶ)について、図1の平面図および図2の断面拡大図((a)A−A断面、(b)B−B断面)を用いて説明する。図1によれば、チップ1は略平板状をなし、すくい面および着座面を形成する角部10(切削を行う角部10をノーズ12と呼ぶ)と辺部11からなる多角形状の主面2と側面に逃げ面3を有し、逃げ面3と主面2との交差稜線に切刃4を有する。さらに、主面2の周縁部に着座面と厚み方向に平行で、かつ平坦なランド面5を有する。また、図2(a)によれば、チップ1の主面2の中央部に着座面と厚み方向に平行で、かつ平坦な中央面7を有するとともに、ランド面5と中央面7の間にブレーカとして機能する凹部6を設ける。
【0017】
本発明によれば、中央面7にランド面5へ向かって伸びる1つ以上の突起部8を設けるとともに、図1および図2に示すように、ランド面5と突起部8との連結部を設けることを大きな特徴とするものであり、連結部9によってランド面5を補強し、剛性を上げられることに加えて、すくい面中央部から同一面上に連続した突起部8によりチップのすわり安定性が向上するので、切削の衝撃によるランド面の微振動の発生を抑制することができ、ランド面5の切刃4のチッピングや欠損の発生を防ぐことができる。ここで、連結部9は、図2(b)に示すようなフラットな面であり、少なくとも突起部8と同じ高さである。さらに、中央面7とランド面5を全周領域に亘って連結させてランド面5を補強するのではなく、中央面7の一部分である突起部8とランド面5を連結することでランド面5と突起部8が連結しない部分を設けることができ、主面2の辺部11の切れ味が連結部9によって低下することを抑制し、辺部11の切刃部における切れ味を維持する効果ももつ。また、ランド面5の剛性をさらに高め、チップのすわり安定性をもさらに高めるために、連結部9を複数設けてもよい。さらに、チップ1を載置する際に着座面となる主面2の少なくとも突起部8および連結部9が接地面となることでチップ1のすわりが安定し、チップ1のうきやビビリ振動を抑え、チップ1の損傷を防止できる。ここで、よりチップ1のすわりを安定させるため、中央面7、ランド面5、突起部8および連結部9をともに接地面とすることが好ましい。
【0018】
また、Sタイプの正方形をなすチップやTタイプの三角形をなすチップは、チップ中心から各コーナーまでの距離が等しいので焼成時の変形が少なくすわり安定性が良いが、ノーズ12の角度が80°以下の菱形をなすチップは、チップ中心から各コーナーまでの距離が異なるので焼成時の変形が生じ易くすわり安定性が悪いため、前述した切刃損傷等の不具合を生じやすい。特にノーズ12の角度が55°のDタイプの全周ブレーカのチップでは、前述のとおり、すわり安定性が悪いことに加えて、主面2の辺の長さaが長いため、ランド面5の剛性が不十分となって、ランド面5に微振動が発生し易い。そのため、主面2が菱形形状である場合に本発明の効果が特に発揮され易いため、主面2が菱形形状、特に頂角が55°以下の菱形形状であることが望ましい。
【0019】
さらに、ランド面5の幅をbとすると、0.2≦b≦0.5mmとすることが切刃の強度、およびランド面5の安定性を高めて裏欠けに対する強度を高めるとともに、切りくずの排出性の向上や切削抵抗の増大防止により欠損およびチッピングを防止する点で望ましい。
【0020】
また、チップ1の切れ味の低下や切削抵抗を増大させることを防ぐためにチップ1の1辺の長さをa、ノーズ12から連結部9までの距離をcとすると、0.25a≦c≦0.75aであることが望ましい。
【0021】
さらに、連結部9の強度と切刃の切れ味を高める点で連結部9の幅をdとしたとき、0.5mm≦d≦a/3、好ましくは0.5mm≦d≦a/5であることが望ましい。
【0022】
【実施例】
(実施例)
WC粉末に対してCoを11重量%添加した混合粉末を、プレス成形で焼成後の形状が図1、3および表1に示す形状(型式、大きさ)となるように成形し、真空焼成した後、試料No.1〜4は焼結体の両主面の中央面およびランド面を研磨してほぼ同じ高さに調整した。なお、No.1〜8はノーズの角度θ=55°のひし形をなして連結部を有する形状(図1)である。また、試料No.5は図3(a)のようなブレーカを設けない従来の形状、No.6は図3(b)のような突起部を持たない全周ブレーカでランド面と中央面とが同じ高さである形状、No.7,8は図3(c)のような連結部を持たない形状をそれぞれなしている。
【0023】
また、すべての試料にはランド面の周縁部にホーニング処理(刃先処理)を施した後、CVD法によって焼結体表面にTiCN−Al2O3−TiNからなる硬質膜を順にコーティングして試料No.1〜8のスローアウェイチップを作製した。
【0024】
また、得られたチップを用いて以下の条件での切削試験を行い、チップが欠損に至るまでの切削時間、被削材の加工面状態の観察を行った。結果は表1に示した。
切削条件
切削速度:250m/min
切込み :4mm
送り :0.35mm/rev
被削材 :FC250 4本溝つき
切削状態:乾式
また、表1の試料1〜8のチップ形状をCタイプに替えた試料1’〜7’によって同様の切削試験を行った。結果は表2に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1および表2より、連結部の幅dを0.5〜a/3mm、ランド面の幅bを0.2〜0.5とし、突起部とランド面の高さを同じとした試料No.1〜4、試料No.1’〜4‘では切削寿命が300秒以上と長く、また、裏欠けや切刃部分のチッピングも無く、優れた耐欠損性を示した。また、被削材の加工面を観察した結果、一様に滑らかな加工面となっていた。
【0028】
これに対して、ブレーカを設けなかった試料No.5、5’では、ビビリによって被削材の加工面が粗雑であった。また、チップの載置面に裏欠けが発生していた。
【0029】
また、試料No.6〜8、6’、7’では、早期に切刃の欠損が発生して耐欠損性が悪く、また、チッピングやビビリの発生によって加工面の面状態も悪くなった。また、試料No.6、6’、8、7’では、チップの載置面に裏欠けが発生していた。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明に係るスローアウェイチップでは、略平板状をなし、切削を行うノーズとなる鋭角な角部と辺部とからなる菱形形状をなす2つの主面がすくい面と着座面を、側面が逃げ面をなし、前記両主面と前記逃げ面の交差稜線に切刃を有し、ホルダに装着して用いられる両面使用可能なスローアウェイチップにおいて、前記両主面の全周縁部に形成されたランド面と、前記両主面の中央部に形成された中央面と、前記ランド面と前記中央面との間に形成された凹部と、を有し、前記中央面は、上面視において前記ランド面に向かって伸びる少なくとも1つ以上の突起部と、前記中央面と同一面上に位置し前記突起部の少なくとも1つと前記ランド面の辺部とを部分的に連結する連結部と、を有し、前記主面の辺部の全長に渡って形成された前記ランド面は、前記連結部によって前記凹部と接する側のランド面の辺部が複数に分断されるとともに、前記連結部は、少なくとも前記鋭角な角部に近接する順に第一連結部と第二連結部の2つの連結部を有しており、前記第二連結部の幅が第一連結部の幅よりも大きいことで、チップのすわり安定性が向上し、前記ランド面の剛性が高められるので、前記ランド面の微振動の発生を防止して切削に関与する切刃の欠損を防止でき、かつ、平滑な仕上げ面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスローアウェイチップの例を示した概略平面図である。
【図2】(a)図1のスローアウェイチップのA−A間の概略拡大断面図である。
(b)図1のスローアウェイチップのB−B間の概略拡大断面図である。
【図3】(a)ブレーカなしのスローアウェイチップの概略平面図である。
(b)一般的な全周ブレーカの概略平面図である。
(c)連結部なしの突起部付きスローアウェイチップの概略平面図である。
【図4】従来のスローアウェイチップの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1:スローアウェイチップ
2:主面
3:逃げ面
4:切刃
5:ランド面
6:凹部
7:中央面
8:突起部
9:ランド面と突起部の連結部
10:角部
11:辺部
12:ノーズ
a:スローアウェイチップの1辺の長さ
b:ランドの幅
c:角部から連結部までの長さ
d:連結部の幅
θ:ノーズの角度
24:切刃
25:ランド面
27:中央面
h:ランド面と中央面との高さの差
Claims (4)
- 略平板状をなし、切削を行うノーズとなる鋭角な角部と辺部とからなる菱形形状をなす2つの主面がすくい面と着座面を、側面が逃げ面をなし、前記両主面と前記逃げ面の交差稜線に切刃を有し、ホルダに装着して用いられる両面使用可能なスローアウェイチップにおいて、
前記両主面の全周縁部に形成されたランド面と、前記両主面の中央部に形成された中央面と、前記ランド面と前記中央面との間に形成された凹部と、を有し、
前記中央面は、上面視において前記ランド面に向かって伸びる少なくとも1つ以上の突起部と、前記中央面と同一面上に位置し前記突起部の少なくとも1つと前記ランド面の辺部とを部分的に連結する連結部と、を有し、
前記主面の辺部の全長に渡って形成された前記ランド面は、前記連結部によって前記凹部と接する側のランド面の辺部が複数に分断されるとともに、
前記連結部は、少なくとも前記鋭角な角部に近接する順に第一連結部と第二連結部の2つの連結部を有しており、
前記第二連結部の幅が第一連結部の幅よりも大きいことを特徴とするスローアウェイチップ。 - 前記突起部は、前記鋭角な角部に向かって伸びるとともに前記凹部を介して前記ランド面と離間する第一突起部を有していることを特徴とする請求項1記載のスローアウェイチップ。
- 前記突起部は、前記主面の辺部に向かって伸びるとともに前記凹部を介して前記ランド面と離間する第二突起部をさらに有していることを特徴とする請求項1または2に記載のスローアウェイチップ。
- 前記スローアウェイチップを載置する際に、着座面となる主面の少なくとも前記突起部および前記連結部がホルダへの設置面となるよう同一面上に連続して設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスローアウェイチップ。
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