JP4095277B2 - リニアブッシュ及びリニアブッシュ用軌道軸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道軸に外筒が組み付けられたリニアブッシュ及びリニアブッシュ用軌道軸に関する。
【0002】
【従来の技術】
リニアブッシュでは、円形断面の軌道軸に外筒が嵌め込まれ、この外筒が軌道軸に沿って直線運動する。軌道軸と外筒との間には転がり運動可能に複数のボールが設けられる。外筒には複数のボールの軌道となる、軸線方向に延びる複数列のボール転走溝が形成される。外筒の軌道軸に対する相対運動に伴って、複数のボールがボール転走溝に沿って外筒の軸線方向に転がる。外筒の一端側まで転がったボールは、外筒に一体に組み込んだ保持器によって掬い上げられ、外筒の他端側まで戻され、再び外筒と軌道軸との間を転がる。
【0003】
リニアブッシュでは軌道軸の表面が真円状に形成されているので、ボールと軌道軸とが軌道軸の表面の一点で完全に点接触する。最小の摩擦抵抗でボールが軌道軸上を転がるので、軽快な動きのリニアブッシュが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリニアブッシュにあってはボールと軌道軸とが一点で完全に点接触するので、軽快な動きが得られる反面、ラジアル方向の許容荷重を上げることができないという問題がある。また外筒を軌道軸に対して無理に回転させようとすれば外筒が回転してしまい、これにより軌道軸の表面が傷つき、直線案内にも支障をきたすおそれがある。
【0005】
一方リニアブッシュとは用途が異なるが、トルクを伝動できるボールスプラインが知られている。ボールスプラインにおいては、軌道軸及び外筒の双方に軸線方向に延びるボール転走溝が形成され、複数のボールが軌道軸及び外筒それぞれのボール転走溝上を転がる。
【0006】
このボールスプラインでは軌道軸にもボール転走溝が形成されるので、ボールと軌道軸とはある程度の接触面積をもって接触する。このためリニアブッシュに比べてラジアル方向の許容荷重を大きくすることができるという利点がある。しかしトルクを伝動する機能が必要なために、ボールスプラインの軌道軸に形成される転走溝はボール径に対して比較的深溝に形成される。一般的に、ボール及び軌道軸には強度の大きい炭素鋼が用いられ、しかもボールが転がる際の軌道となるボール転走溝の表面は滑らかに研削加工する必要がある。強度の大きい軌道軸に表面が滑らかな深溝を研削加工するのは困難で、コストがかかる要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、軽快な動きが得られるリニアブッシュの特性を維持したまま、ラジアル方向の許容荷重も上げられ、しかも安価且つ容易に製造することができるリニアブッシュを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0009】
請求項1の発明は、軌道軸(1)と、該軌道軸(1)に対して相対的に運動可能に組み付けられた外筒(2)と、前記軌道軸(1)と前記外筒(2)との間に転がり運動可能に設けられた複数のボール(5)と、を備えるリニアブッシュにおいて、前記軌道軸(1)及び前記ボール(5)は炭素鋼により構成され、前記軌道軸(1)には前記ボール(5)と一点接触する断面略円弧状のボール転走溝(3)が形成され、前記ボール転走溝(3)の曲率半径は0.52D(Dはボールの直径)であり、及び、前記ボール(5)の直径が0.8mm〜2.381mmのときに前記ボール転走溝(3)の深さは前記ボール(5)の直径の1/50以下であることを特徴とするリニアブッシュにより、上述した課題を解決した。
【0010】
この発明によれば、軌道軸に断面円弧状のボール転走溝を形成したので、ボールと転走溝との接触面を軌道軸に転走溝を形成しない場合に比べて大きくすることができる。このためラジアル方向の許容荷重を上げることができる。また溝を形成することで、外筒を軌道軸に対して無理に回転させようとしても、軌道軸に対して外筒が回転するのを防止すること(すなわち回り止め)が可能になる。
【0011】
本発明のリニアブッシュはボールスプラインのようにトルクを伝動する必要がなく、ある程度のラジアル方向の荷重を負荷できればよい。詳しくは後述するが、ボール転走溝の深さをボール直径の約1/50以下にすることで、ラジアル方向の荷重を受けるのに必要以上にボール転走溝の深さが深くなるのを防止することができる。そして、これによりボール転走溝の深さを極めて浅くできるので、ボール転走溝の研削加工も容易になり、さらには軌道軸が真円のリニアブッシュに用いられていた既存の外筒及びボールをそのまま転用することができるので、安価且つ容易にリニアブッシュを製造することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ボール転走溝(3)の深さは0.05mm以下であることを特徴とする。
【0013】
ボール転走溝はボールが転がる転走面になるので研削加工される。この研削加工は例えば、高速回転させた砥石車の外周面を軌道軸に押し当て、軌道軸を軸線方向に移動させることで行われる。本発明によれば研削加工の切込み深さが0.05mm以下に設定されるので、ボール転走溝を通常の研削条件においても1パス(軌道軸が取り付けられたテーブルを往復させることなく1回の送りですむ加工)で製作可能になる。したがって容易且つ素早くボール転走溝を製造することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2いずれかに記載のリニアブッシュにおいて、前記ボール(5)の中心(P1)と、前記ボール(5)が前記ボール転走溝に接触する点(P2)とを結んだ接触角線(L)は、前記軌道軸(1)の中心を実質的に通過することを特徴とする。また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアブッシュにおいて、前記ボール転走溝(3)は1パスにて研削加工することができる。
【0015】
本発明のリニアブッシュは上述のようにトルクを伝動する機能を有する必要がなく、若干のラジアル荷重が負荷できればよい。このため、ボールの中心とボールが前記転走溝に接触する点とを結んだ接触角線が、軌道軸の中心を実質的に通過するのが最も望ましい。
【0016】
また本発明は、請求項5に記載のように、リニアブッシュの外筒(2)が転がり運動可能な複数のボール(5)を介して相対運動可能に組み付けられるリニアブッシュ用軌道軸(1)であって、前記軌道軸(1)及び前記ボール(5)は炭素鋼により構成され、該軌道軸(1)には前記ボール(5)と一点接触する断面略円弧状のボール転走溝(3)が形成され、前記ボール転走溝(3)の曲率半径は0.52D(Dはボールの直径)であり、及び、前記ボール(5)の直径が0.8mm〜2.381mmのときに前記ボール転走溝(3)の深さは前記ボール直径の1/50以下であることを特徴とするリニアブッシュ用軌道軸(1)としても構成することができる。
【0017】
さらに請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記ボール転走溝(3)の深さは0.05mm以下であることを特徴とするリニアブッシュ用軌道軸(1)としても構成することができる。なお、上記請求項5及び6に記載のリニアブッシュ用軌道軸(1)にあっては、ボール転走溝(3)を1パスにて研削加工することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1乃至図2は、本発明の一実施形態におけるリニアブッシュを示す。リニアブッシュは軌道軸として軸線方向に細長く延びる断面略円形状の軌道軸1と、この軌道軸1に嵌め込まれる外筒2とを備える。リニアブッシュは機械部品の一つであり、機構の直線運動部分を案内することに使われる。機械産業は勿論のこと、電子、電気、医療、土木、化学、自動車などほとんど全ての産業分野で利用される。
【0019】
軌道軸1は断面略円形状をなし、その材質には軸受け鋼、ステンレス鋼等の剛性の強いものが用いられる。軌道軸1の表面にはボール5…の軌道となり、軌道軸1の軸線方向に延びる複数列のボール転走溝3が形成される。ボール転走溝3は例えば周方向に4等分して4条形成される。このボール転走溝3は断面が単一の円弧からなるサーキュラーアーク形状で、その深さhがボール5…の直径の約1/50以下、望ましくは約1/60以上1/50以下に設定される(図5参照)。ボール転走溝3の曲率半径はボール5…の曲率半径よりも若干大きく、例えば0.52D(D;ボールの直径)に設定される。このためボール転走溝3とボール5とはある程度の接触面積をもって一点で接触している。ボール転走溝3の深さをこのように極端に浅くした理由については後述する。
【0020】
軌道軸1の表面は、ボール5…が転動するので焼き入れ等により硬化されている。砥石を用いて軌道軸1の表面を研削加工することで、ボール転走溝3が形成される。研削加工する際、ボール転走溝の深さは約0.05mm以下、望ましくは約0.01mm以上0.05mm以下に設定される。ボール転走溝の深さを約0.05mm以下に設定した理由についても後述する。
【0021】
軌道軸1には、直線案内する対象物に取り付けるべく、タップ、フライスによる平取り、ねじやキー溝等が形成される場合もあるし、重量軽減のために中空のものが用いられる場合もある。
【0022】
軌道軸1に嵌め込まれる外筒2は、図2及び図3に示すように、軌道軸1に遊嵌された外筒2と、軌道軸1に対する外筒2の相対的な直線運動に併せて転がり運動する複数のボール5…と、外筒2に一体に組み込まれ、複数のボール5…を軌道軸1の軸線方向に整列・保持する保持器6とを備える。
【0023】
外筒2は、強靭な軸受け鋼等から製造され、軌道軸1が貫通可能なように略円筒形状に形成される。外筒2の内周面には図2に示すように、ボール5…の軌道となり、軌道軸1のボール転走溝3に対応して軸線方向に延びる4条のボール転走溝7が形成される。このボール転走溝7は断面V字形に形成され、その両壁面の開き角度θは例えば略120°〜160°に設定されている。そしてボール5…と外筒のボール転走溝7とは2点で点接触する。
【0024】
なおこの実施の形態ではボール転走溝7を断面V字形に形成しているが、2つの円弧からなるゴシックアーチ溝で形成してもよい。このゴシックアーチ溝の場合も、ボール5…とボール転走溝7との接触点における接線の交差角である開き角度θは、例えば120°〜160°に設定されるのが望ましい。
【0025】
この実施形態では、ボール5…と軌道軸1のボール転走溝7とはある程度の幅を持って1点で接触し、ボール5…と外筒2のボール転走溝7ともある程度の幅を持って2点で接触しているので、合計3点でボール5…が外筒2及び軌道軸1に接触していることになる。なお本発明では、ボール5…と外筒2のボール転走溝7が1点で接触している構成も採用しうる。
【0026】
図3に示すように、外筒2にはボール5…を循環させるためのサーキット状の循環経路が形成された略円筒形状の保持器6が一体に組み込まれる。循環経路について説明する。外筒2に形成したボール転走溝7と軌道軸1に形成したボール転走溝3との間で負荷転走路Aが構成される。負荷転走路Aの隣には荷重から開放されたボール5…が転走する無負荷戻し通路Bが形成されている。直線状の負荷転走路A及び無負荷戻し通路Bの両端には、負荷転走路Aと無負荷戻し通路Bとを連結する曲線状のリターン通路Cが形成される。
【0027】
この保持器6は負荷転走路Aでは外筒2と軌道軸1との間を転がるボール5を両側から保持し、無負荷戻し通路Bでは外筒2と保持器6との間でもボール5を保持している。このため保持器6が、外筒2を軌道軸1から抜いた際にボール5…が外筒2から脱落するのを防止している。保持器6の材質には合成樹脂、ステンレス等が用いられる。
【0028】
外筒2の軸線方向の両端には図3に示すように、外筒2に保持器6を一体で組み付けるための止め輪9が設けられている。また外筒2の外周面には、外筒2を直線案内する対象物に取り付けるためのスナップリング用の外周溝2aが形成されている。なお防塵対策の必要に応じて、外筒2にシール部材を取り付けることもある。
【0029】
軌道軸1に対して外筒2を相対的に直線的に移動させると、負荷転走路Aで荷重を受けながらボール5…が軸線方向に転がり運動する。負荷転走路Aを転走したボール5…は、保持器6に形成した船底型のリップ12(図3参照)で掬い上げられ、負荷転走路Aの両端に設けた一方のリターン通路Cで徐々に方向を変えられる。そして無負荷戻し通路Bに移動する。無負荷戻し通路Bではボール5…が負荷転走路Aと逆方向に移動する。無負荷戻し通路Bを移動するボール5…は他方のリターン通路Cで再び方向を変えられ、リップ12から再び負荷転走路A内に戻される。
【0030】
図4及び図5は、本実施形態のリニアブッシュにおける軌道軸とボールとの接触状態を、ボールスプラインにおける軌道軸ボールとの接触状態と比較して示している。図中(A)はボールスプラインにおける軌道軸1とボール5との接触状態を示し、図中(B)はリニアブッシュにおける軌道軸1とボール5との接触状態を示す。ボールスプラインでは、ラジアル荷重を受ける機能とトルクを伝動する機能が必要とされるために、ボールスプラインの軌道軸1に形成されるボール転走溝3がボール径に対して比較的深溝に形成される。またボール5の中心点P1とボール5がボール転走溝3に接触する接触点P2とを結んだ接触角線Lは、軌道軸1の中心を通過することがない。
【0031】
これに対して本実施形態のリニアブッシュでは、若干のラジアル荷重を受ける機能が必要とされるが、トルクを伝動する機能が要求されない。このためボール転走溝3がボール径に対して極めて浅く形成される。しかも、ボール5の中心点P1とボール5がボール転走溝3に接触する接触点P2とを結んだ接触角線Lは軌道軸1の中心を実質的に通過している。
【0032】
図5はボールスプラインにおけるボール転走溝の深さSHと、本実施形態のリニアブッシュにおけるボール転走溝の深さhとを比較している。中心線よりも左半分がボールスプラインにおけるボール転走溝の深さSHを示し、中心線よりも右半分が本実施形態のリニアブッシュにおけるボール転走溝hの深さを示す。この図に示すように、ボール転走溝3の深さhをボール5の直径の約1/60以上約1/50以下に設定すると極めて浅い溝になることがわかる。なおここで、ボール転走溝3の深さとは、想定した真円状の軌道軸1からボール転走溝3の最深部までの距離をいう。
【0033】
軌道軸1のボール転走溝3の深さをボール直径の約1/50以下にした理由について説明する。軌道軸1のボール転走溝3は、転がり運動するボール5が接触する面になるので表面が滑らかになるように研削加工される。この研削加工は転走溝3の深さが浅ければ浅いほど容易になる。本発明ではボール転走溝3の深さをボール直径の約1/50以下にすることで、ラジアル方向の荷重を受けるのに必要以上にボール転走溝の深さが深くなるのを防止し、ひいては研削加工が困難になるのを防止している。
【0034】
図6はボール5とボール転走溝3とが荷重を受けて接触している状態(この図では軌道軸1と直交する方向からみている)を示す。ボールの直径はDでボール転走溝3は約0.52Dの曲率半径を有する。ボール5に荷重を加えると、ボール5と軌道溝1との接触部には弾性変形が生じて、長軸半径a、短軸半径bからなる接触だ円が形成される。これによりボール5とボール転走溝3との相互接近量がδになるとする。ボールに加えられる荷重が大きくなると、接触面及び相互接近量δも大きくなる。
【0035】
図7はボール1個当たりに加えられる荷重Qと、相互接近量δとの関係を示すグラフである。このグラフでは、HERTZの接触論により導かれた理論式を利用して、加えられる荷重から相互接近量δを算出している。この算出では、ボール5及び軌道軸1には軸受けに一般的に用いられる炭素鋼を用い、転走溝の曲率半径はボールの直径の52%に設定している。ボール径にはリニアブッシュに一般的に用いられるボールのうち、比較的小径なもの(φ0.8mm〜φ2.381mm)を用いている。
【0036】
図6に示すように相互接近量δがボール転走溝3の深さよりも大きくなると、ボール5がボール転走溝3のエッジ3a,3aに乗り上げてしまう。エッジに乗り上げると、ボール5がボール転走溝3のエッジ3a,3aと2点接触することになるので、ボール5に局部的なエッジロードが働く。このエッジロードは、ボール5及びボール転走溝3の局部的な塑性変形を招く。このためボール転走溝3の深さは、荷重が加えられてもボール5がボール転走溝3のエッジ3a,3aに乗り上げないような深さに設定されるのがよい。
【0037】
ところでリニアブッシュ等のリニアシステムでは、システムの静的な負荷能力を表すため基本静定格荷重Coが規定される。基本静定格荷重Coについて説明する。リニアシステムが静止あるいは運動している状態で過大な荷重を受けたり、大きな衝撃荷重を受けたりした場合、ボール転走溝とボールとの間に局部的な永久変形が生じる。この永久変形量がある限度を超えるとリニアシステムのスムーズな運動を妨げるようになる。このため、最大応力を受けている接触部においてボールの永久変形量と軌道面の永久変形量との和がボールの直径の1/10000倍になる荷重を基本静定格荷重Coと呼び、リニアシステムに加わる荷重が基本定格荷重Co以下になるようにリニアシステムが選択される。
【0038】
下記の表は、基本静定格荷重Coの計算式を用い、上述の条件でボール一つあたりの基本静定格荷重Coを算出した値を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
また比較のために、従来の軌道軸が真円のリニアブッシュの基本静定格荷重を以下の表2に示す。従来のボール転走溝が形成されないリニアブッシュではボールが軌道軸の外表面に一点接触するので、基本静定格荷重が極めて小さいのがわかる。
【0041】
【表2】
【0042】
表1で求めた基本静定格荷重を図7のグラフ上に●としてプロットし、ボール径毎に基本静定格荷重が加わったときの相互接近量δ、相互接近量δ/ボール径Dを求めると、以下の表3のようになる。
【0043】
【表3】
【0044】
この表3から相互接近量/ボール径の値はボール径にかかわらず、約1/50になることがわかる。
【0045】
ボール5に加えられる荷重は最大でも基本静定格荷重Coとなる。基本静定格荷重Co以上にボール5に荷重が加えられることがないことを考慮すると、ボール転走溝3の深さを最大でも基本静定格荷重Coが加えられたときの相互接近量δとすれば、必要以上に溝深さが深く設定されないことになる。すなわち、本実施形態ではボール径にかかわらず、ボール転走溝の深さはボール径の約1/50よりも大きくする必要がない。実際には安全率を考慮してボール5に加えられる荷重は基本静定格荷重の1/10程度に設定されるので、通常の使用状態においては基本静定格荷重以上の荷重が加えられることはまずありえない。
【0046】
またボール転走溝3の深さをボール径の1/50以上に設定すると、負荷転走路を転がるボールを無負荷戻し通路に戻すために掬い上げる距離も極めて短くなる。このためボール転走溝が形成されない真円の軌道軸に用いられていた既存の外筒及びボールをそのまま転用することもできる。
【0047】
次にボール転走溝3の研削深さを0.05mm以下に設定した理由について説明する。図8は軌道軸1の表面を砥石車13で研削加工している例を示す。ボール転走溝の研削加工は例えば、高速回転させた砥石車3の外周面を軌道軸に押し当て、軌道軸3を軸線方向に移動させる所謂平面研削により行われる。本実施形態のリニアブッシュでは、切込み量及び送り速度を所定の値に設定して、1パス(すなわち、軌道軸が取り付けられたテーブルを往復させることなく1回の送りですむ加工)で平面研削が行われる。
【0048】
図9は平面研削の種類(出典;精密工作便覧)を示す。平面研削は切込み量を比較的大きく設定し(切込み量;例えば0.1〜0.5mm)、送り速度を比較的小さく設定する重研削、切込み量を比較的小さく設定し(切込み量;例えば0.001〜0.005mm)、送り速度を比較的大きく設定するスピードストローク研削、切込み量及び送り速度が重研削とスピードストローク研削との間(切込み量;例えば0.01mm〜0.05mm、送り速度)に設定される通常研削とに分類される。最近では、砥石の切込み用を大きく設定し(例えば1.0mm〜5.0mm)、送り速度を小さく設定し、1回あるいは数回のテーブル送りで研削加工するクリープフィード研削も知られている。
【0049】
本実施形態では、研削加工の切込み深さを0.05mm以下に設定することで、通常研削でもボール転走溝を1パス加工(軌道軸が取り付けられたテーブルを往復させることなく1回の送りですむ加工)で製作可能になる。したがって容易且つ素早くボール転走溝を製造することができる。
【0050】
【実施例】
以下の表4は実際に製作されたボール径と、軌道軸の軸径と、ボール転走溝の深さと、溝深さ/ボール径との関係を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
この表に示すようなボール径及びボール転走溝の深さを設定することで、既存のリニアブッシュと同様な軽快な動きが得られると共にラジアル荷重も受けられるリニアブッシュが得られた。また既存のボール転走溝が形成されない真円のリニアブッシュをそのまま本発明のリニアブッシュに適用することも可能であった。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、軌道軸に断面円弧状のボール転走溝を形成したので、ボールと転走溝との接触面を軌道軸に転走溝を形成しない場合に比べて大きくすることができる。このためラジアル方向の許容荷重を上げることができる。また溝を形成することで、外筒を軌道軸に対して無理に回転させようとしても、軌道軸に対して外筒が回転するのを防止すること(すなわち回り止め)ができる。
【0054】
本発明のリニアブッシュはボールスプラインのようにトルクを伝動する必要がなく、ある程度のラジアル方向の荷重を負荷できればよい。ボール転走溝の深さをボール直径の約1/50以下にすることで、ラジアル方向の荷重を受けるのに必要以上にボール転走溝の深さが深くなるのを防止することができる。そして、これによりボール転走溝の深さを極めて浅くできるので、ボール転走溝の研削加工も容易になり、また軌道軸が真円のリニアブッシュに用いられていた既存の外筒及びボールをそのまま転用することもできるので、安価且つ容易にリニアブッシュを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるリニアブッシュを示す斜視図。
【図2】上記リニアブッシュの軸線と直交する方向の断面図。
【図3】上記リニアブッシュの外筒及び保持器を示す斜視図(一部断面を含む)。
【図4】スプライン軸と本実施形態のリニアブッシュの接触角線を比較する図。
【図5】スプライン軸と本実施形態のリニアブッシュのボール転走溝の深さを比較する図。
【図6】ボールとボール転走溝の接触状態を示す図。
【図7】ボール1個当たりの荷重Qと相互接近量との関係を示すグラフ。
【図8】平面研削を示す概略図。
【図9】平面研削の種々の態様を示すグラフ。
【符号の説明】
1…軌道軸
2…外筒
3…ボール転走溝
5…ボール
P1…ボールの中心
P2…ボールがボール転走溝に接触する点
L…接触角線
Claims (7)
- 軌道軸と、
該軌道軸に対して相対的に運動可能に組み付けられた外筒と、
前記軌道軸と前記外筒との間に転がり運動可能に設けられた複数のボールと、
を備えるリニアブッシュにおいて、
前記軌道軸及び前記ボールは炭素鋼により構成され、
前記軌道軸には前記ボールと一点接触する断面略円弧状のボール転走溝が形成され、
前記ボール転走溝の曲率半径は0.52D(Dはボールの直径)であり、及び、前記ボールの直径が0.8mm〜2.381mmのときに前記ボール転走溝の深さは前記ボールの直径の1/50以下であることを特徴とするリニアブッシュ。 - 請求項1に記載のリニアブッシュにおいて、
前記ボール転走溝の深さは0.05mm以下であることを特徴とするリニアブッシュ。 - 請求項1又は2に記載のリニアブッシュにおいて、
前記ボールの中心と、前記ボールが前記ボール転走溝に接触する点とを結んだ接触角線は、前記軌道軸の中心を実質的に通過することを特徴とするリニアブッシュ。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアブッシュにおいて、
前記ボール転走溝は1パスにて研削加工されることを特徴とするリニアブッシュ。 - リニアブッシュの外筒が転がり運動可能な複数のボールを介して相対運動可能に組み付けられるリニアブッシュ用軌道軸であって、
前記軌道軸及び前記ボールは炭素鋼により構成され、
該軌道軸には前記ボールと一点接触する断面略円弧状のボール転走溝が形成され、
前記ボール転走溝の曲率半径は0.52D(Dはボールの直径)であり、及び、前記ボールの直径が0.8mm〜2.381mmのときに前記ボール転走溝の深さは前記ボール直径の1/50以下であることを特徴とするリニアブッシュ用軌道軸。 - 請求項5に記載のリニアブッシュ用軌道軸において、
前記ボール転走溝の深さは0.05mm以下であることを特徴とするリニアブッシュ用軌道軸。 - 請求項5又は6に記載のリニアブッシュ用軌道軸において、
前記ボール転走溝は1パスにて研削加工されることを特徴とするリニアブッシュ用軌道軸。
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