JP4082145B2 - 衝撃吸収部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃荷重が作用したときにそのエネルギを吸収して衝撃を緩和する衝撃吸収部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車においては、万一の衝突時に乗員を保護するために、客室へのダメージを最小限に抑えることを目的として、ボディを構造的に変形しやすくしたり、バンパや天井,ドア,側突パッド等の内部に衝撃吸収部材を設けて、衝突時の衝撃をできるだけ吸収するようにすることが行われている。
【0003】
衝撃吸収部材の衝撃エネルギ吸収能力は、衝突による衝撃吸収部材の潰れ代と、そのときの圧縮応力値の積分値であることから、許容できる圧縮応力の範囲内で、より大きい潰れ代を確保することが求められる。
一般に、自動車に用いられる衝撃吸収部材は設置スペースの関係から、衝撃吸収部材の潰れ代は限られており、おおよそ30〜100mm程度である。他方、衝撃吸収部材は衝突時の乗員保護を目的とすることから、人に加わる応力も、数10N/cm2以内に抑えなければならない。
【0004】
従来、このような衝撃吸収部材としては、熱硬化性の発泡ウレタンが多く用いられていた。
しかし、このような熱硬化性の発泡ウレタンは、リサイクルが困難である上、コスト的にも割高であるばかりでなく、初期衝撃吸収性能の維持面から耐水性、耐熱性から経時安定性に課題があった。
そこで、近年ではリサイクルが容易で、包装用の緩衝材として広く用いられている発泡ポリスチレンや発泡ポリプロピレン等の発泡熱可塑性樹脂が多く使用されるに至っている。
【0005】
しかしながら、このような発泡熱可塑性樹脂も、衝撃吸収の性能面で以下のような問題がある。
即ち、発泡ポリスチレンや発泡ポリプロピレン等の発泡熱可塑性樹脂で形成された衝撃吸収部材においては、圧縮ひずみ(衝撃吸収部材の元の厚みに対する圧縮変形の割合、以下の説明ではひずみ量(%)を用いる)が、大きくなると、例えば50%を超えると、内部に発生する応力(圧縮応力)が急激に上昇し、以後、衝撃吸収部材としての性能が著しく低下する。
従って、発泡熱可塑性樹脂の衝撃吸収部材を自動車等の用途に用いる場合は、許容される範囲の応力を示す、圧縮ひずみの範囲が狭いため、最大許容応力に至るまでに衝撃吸収部材に吸収されるエネルギ量が十分でないという問題があった。
また、多様な衝撃荷重に対応し、要求される応力の範囲内で衝撃吸収性能を発現するためには、衝撃吸収部材の肉厚を大きくする必要があり、バンパや天井,ドア,側突パッド等の各部の寸法が大きくなるといった問題があった。
【0006】
本発明者らは、先に発泡プラスチックであって、特定のリブ構造を有する発泡成形品が高い衝撃吸収性能を示すことを見いだした(特願2002−157782号等)。この方法は比較的小さな潰れ代で設計される衝撃吸収部材としては有効であった。
しかしながら、この衝撃吸収部材は、より大きな衝撃エネルギを吸収するために、より大きな潰れ代を確保しなければならない衝撃吸収部材には不向きな構造であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点にかんがみてなされたもので、衝撃荷重が作用したとき、許容される圧縮応力以下を示す、圧縮ひずみの範囲を広くすることにより、高い衝撃吸収性能を発揮する衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明者らは、主リブと、主リブと厚さの異なる副リブを組み合わせた構造が、衝撃吸収に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、第1及び第2の面を有する基部と、基部の第1の面の上に形成される主リブと、主リブと交わって、基部の第1の面の上に形成される、少なくとも1つ以上の副リブとを具備し、少なくとも1つ以上の副リブの厚さが主リブの厚さの100%以内であって、さらに、少なくとも1つ以上の副リブの厚さが異なる衝撃吸収部材が提供される。
副リブは、主リブと、直角又は斜めに交わることができる。
本発明における主リブ(縦リブ)は、衝撃荷重が、主リブの上方からかかるとき、動的及び静的な圧縮応力の強さを決定する。一方、副リブ(横リブ)は、主リブの衝撃による倒れを防止すると共に、副リブの厚さを変化させることで、厚さ方向において、主リブに複数の異なる屈曲点をもたせる働きをする。
副リブにより、主リブが複数の屈曲点を持つことで、主リブのみの場合における、ひずみ途中での応力値の低下や、厚さの一定な格子リブの場合における、ひずみ後半での応力の上昇を防止できる。
従って、衝撃吸収部材を構成する部材がもつ衝撃吸収性能と、上記の格子状リブ構造が相乗的に働き、高い衝撃吸収性能を発現できる。
これにより、例えば、50mmを越える肉厚を持つ衝撃吸収部材においても、圧縮ひずみが、おおよそ20〜70%の範囲内において、主リブの設計により定められた一定の応力値を示すものとすることができる。
【0010】
また、本発明によれば、この衝撃吸収部材において、基部が無い衝撃吸収部材が提供される。
【0011】
少なくとも2つの主リブと、少なくとも1つ以上の副リブにより、格子状構成を形成することができる。格子状構成は、格子の形が四角だけでなく、三角等でもよく、一部欠けていてもよい。
本発明では、少なくとも1つ以上の副リブの厚さを変えるだけでなく、少なくとも1つ以上の副リブの厚さを、複数の主リブ間で、変えることができる。厚さは、規則的(連続的、段階的、交互)又は不規則に変えることができる。
副リブの厚さを、段階的若しくは連続的に変化させることで、衝撃吸収部材を構成する部材がもつ衝撃吸収性能と特定の格子状リブ構造が相乗的に働き、高い衝撃吸収性能を発現できる。
【0012】
本発明によれば、上記の衝撃吸収部材の組み合わせが提供できる。
2以上の衝撃吸収部材を、重ねたり又は並べたりして、組み合わせることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の衝撃吸収部材の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である衝撃吸収部材の一部の斜視図であり、図2は、図1に示す衝撃吸収部材1の平面図である。
衝撃吸収部材1は、基部11、主リブ12及び副リブ13,14,15からなる。
基部11は、平板状であり、対向する第1の面111と第2の面112を有し、さらに、対向する第1の端113及び第2の端114を有する。
主リブ12は、基部11の第1の面111に形成され、複数列をなしている。主リブ12は、基部11の第1の面111に均等間隔で平行に形成されているとともに、基部11の第1の端113から第1の端114までほぼ直線状に延びている。
副リブ13,14,15は、主リブ12に対し、格子状に直角に交差して、基部11の第1の面111に形成されている。
副リブ13,14,15の厚さt1,t2,t3は、主リブ12の厚さt4より小さく、互いに異なっている。副リブ13,14,15の厚さt1,t2,t3は、連続して減少している。即ち、t1はt4の75%の厚さ、t2はt4の50%の厚さ、t3はt4の25%の厚さである。
衝撃荷重は、矢印の方向から、衝撃吸収部材1にかかる。
【0014】
図3は、図2のA−Aに添った衝撃吸収部材1の部分断面図である。
図3に示すように、主リブ12の断面形状は台形であり、この台形の下底部121(基部11側の底辺部分)の幅w1が、上底部122(主リブ12の先端部分)の幅w2よりも大きい。
さらに、主リブ12の平均幅wa=(w1+w2)/2と、衝撃吸収部材1の全厚t5(主リブ12の上底部121から基部11の第2の面112までの厚み)との関係が、0.05×t5≦wa≦0.3×t5となるように、幅w1,w2及び全厚t5を選択することが好ましい。
0.05倍未満では主リブの幅が小さくなりすぎ、衝撃吸収部材1の発泡成形が困難になるだけでなく、衝撃荷重を加えたときに、衝撃吸収部材1の内部に十分な圧縮応力が発生しないおそれがあり、また、0.3倍を超えると、衝撃吸収部材1の内部に発生する圧縮衝撃荷重が大きくなり過ぎ、必要とする衝撃吸収性能が十分に得られないおそれがある。
【0015】
主リブ12の厚さt4は、衝撃吸収部材の全厚t5に対し、0.5×t5≦t4≦1.0×t5に設定することが好ましい。0.5倍未満では、衝撃吸収域が狭く経済的ではない。上限は、一般には0.9倍を越えると発泡成形の作業上支障をきたすため、生産性を阻害するため好ましくない。しかし、後加工等により基部11を除いてもよいし、基部11は部分的に欠けていてもよい。衝撃吸収性能と経済上の理由により、特に0.7×t3≦t4≦0.9×t3が好ましい。
【0016】
また、副リブの幅w3(図2)は、圧縮途中での主リブ3の倒れる位置を規定できる幅なら、特に限定されないが、通常、主リブ12の幅waの50%〜100%程度に設定する。
【0017】
また、主リブ12は、基部11の垂線に対し、傾斜角度αで傾斜している。傾斜角度αが、0°〜7°の範囲となるようなテーパ状の形態が好ましい。より好ましくは、3°〜5°の範囲である。傾斜角αが0°より小さいときは、発泡樹脂の成型工程において、離型が容易ではなく、7°より大きいと、圧縮ひずみに対する応力上昇が漸増するため好ましくない。
【0018】
この衝撃吸収部材1の作用について説明する。
衝撃吸収部材1は、図1の矢印に示されるように、主リブ12に対し垂直の衝撃荷重が加わり圧縮される場合、主リブ12が、副リブ13の厚さt1、副リブ14の厚さt2、副リブ15の厚さt3で順次屈曲しながら圧縮される。
【0019】
従って、副リブを有しない場合のように、主リブ12が衝撃荷重により、不特定箇所で折れたり曲がったりすることで生じる、ひずみ途中での応力低下がない。また、厚さの一定な格子リブの場合のように、圧縮ひずみが大きくなっても、圧縮応力が急激に上昇することはなく、主リブ12の構造で規定される範囲内で推移する。本実施形態では、約70%の圧縮ひずみまで、規定された圧縮応力以下で有効に衝撃エネルギを吸収できる。
【0020】
尚、本実施形態を示す図は、衝撃吸収部材1の一部を示したものであり、主リブと副リブの数は、使用分野により要求される最大圧縮応力に応じて、適宜決定することができる。また、衝撃吸収部材1の全体の形も、用途に合わせて各形状に成形することができる。
本実施形態では、副リブの厚さは連続して変化しているが、何本かが同じ厚さで、次に何本かが異なる厚さとなるように、段階的に変化してもよい。
本実施形態では、副リブの厚さは、主リブの厚さの25%〜75%であるが、主リブの厚さの100%以内で適宜設定できるが、好ましくは、主リブの厚さの5%以上である。
【0021】
本実施形態では、図3に示すように、図2の矢印Aの方向の列の副リブ13の厚さは同じであるが、主リブ間毎に厚さの異なる副リブを設けたり、途中で副リブのない歯抜け状の構成にすることもできる。
図4は、図3において副リブ13の厚さを連続的に減少させた場合の衝撃吸収部材の部分断面図である。
このように、副リブ13は、主リブ間で、厚さの異なる部分130,131,132からなる。
また、主リブ12間毎に、副リブの幅を同じにしてもよいし、変えてもよい。同様に、主リブについても、主リブ毎に幅や厚さを変えることができる。主リブの厚さが異なるときは、副リブの厚さは隣接する主リブの厚さの100%以内にする。
【0022】
格子状の形状については、図2に示すように主リブ12と副リブ13,14,15が直角に交差する4角形状だけでなく、3角形状、6角形状等の多角形でもよい。これらは、主リブ12と副リブを明確に分けることで同様な効果を発揮することができる。但し、金型製作や最大応力値の設計等が煩雑になるため、4角形状が好ましい。また、主リブと副リブの一部が欠けていてもよい。
【0023】
主リブ12の断面形状は、台形に限らず長方形、三角形や半円形等であってもよい。また、連続的に幅が変化するものに限らず、衝撃荷重の作用方向に沿って段階的に幅が変化するものであってもよい。このようにすると、衝撃に対してリブ折れによる応力の低下を抑制でき、また、圧縮ひずみが大きくなっても急激な応力の上昇を抑制することができるという利点がある。
副リブ13,14,15の断面形状も、同様に、長方形に限らず台形、三角形や半円形等であってもよい。
【0024】
衝撃吸収部材1の基部11、主リブ12及び副リブ13,14,15を構成する部材としては、使用される用途により様々な部材を用いることができる。好ましくは、発泡熱可塑性樹脂から構成される。
衝撃吸収部材1に使用される熱可塑性樹脂の材料としては、種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレンや、スチレンと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、無水マレイン酸、フェニルマレイミドシクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、アクリル酸エステル等のアクリル酸系単量体、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のメタクリル酸系単量体を共重合させたスチレン系共重合体、又はメタクリル酸系単量体の単独重合体、メタクリル酸系単量体及びアクリル酸系単量体の2種類以上の組合せによる共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記の中でも、製造コスト、リサイクル性、発泡成形性等の点から、スチレン系共重合体が好ましく、耐熱性、耐油性に優れるアクリロニトリル・スチレン共重合体が製造コストや性能の点から好適である。また、このような材料を用いることで、本発明の衝撃吸収部材を、自動車のバンパや天井,ドア,側突パッド等に適用することができる。
尚、発泡性アクリロニトリル・スチレン共重体の樹脂としては、例えば、日立化成工業(株)製の(商品名:HIBEADS GR)を用いることができる。もちろん、上記した本発明の要件を備えるものであって、自動車用の衝撃吸収部材として用いることができるのであれば、他の樹脂を用いてもよい。
【0026】
本発明の衝撃吸収部材に使用される熱可塑性樹脂の発泡剤としては、発泡性スチレン系樹脂等の製造に一般的に用いられている発泡剤を用いることができる。この発泡剤は、常温常圧下で気体又は液体であり、かつ上記熱可塑性樹脂を溶解しないような易揮発性有機化合物であるのが好ましい。例えば、ブタン、プロパン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素等が挙げられる。また、必要に応じて、熱可塑性樹脂を溶解又は膨潤させることができるエチルベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン等の有機溶剤やエポキシ化大豆油、植物油等を可塑剤として使用してもよい。
【0027】
本発明の衝撃吸収部材は、上記の熱可塑性樹脂及び発泡剤を含む発泡性熱可塑性樹脂粒子を一次発泡させて、所定の密度の発泡熱可塑性樹脂粒子を得た後、所定の形状を有する金型に充填、加熱して形成される。
熱可塑性樹脂を一次発泡させて得られる発泡熱可塑性樹脂は、衝撃荷重が作用したときに、衝撃吸収部材の用途に応じた適度な圧縮応力を生じさせるものでなければならない。
この圧縮応力が大きすぎると、衝撃加重が作用した際の反発力が大きくなりすぎて衝撃を十分に吸収することができず、また、小さすぎると、衝撃加重に耐えられず容易に破壊してしまい、所望の衝撃吸収性能を得ることができない。
【0028】
本発明の衝撃吸収部材を、自動車に適用する場合の圧縮応力の範囲は、JIS−Z0235に規定される方法に準じて測定した圧縮ひずみが0.5の下において、0.01〜2.5MPaの範囲であるのが好ましい。
これは、圧縮ひずみが0.5になったときに、圧縮応力が0.01MPa未満では、圧縮応力が小さすぎて、十分な衝撃吸収性能を得ることができず、また、2.5MPaよりも高いと、圧縮応力が大きすぎて、衝撃荷重に対する反発力が大きくなり、衝撃を吸収しにくくなって衝撃吸収性能が低下する不具合があるからである。
尚、上記の範囲内において、より好ましい圧縮応力の範囲は0.05〜2.0MPaであり、さらに好ましい圧縮応力の範囲は0.1〜1.5MPaである。
【0029】
本発明の衝撃吸収部材を構成する発泡熱可塑性樹脂の密度は、0.02g/ml〜0.2g/ml以下であることが好ましい。密度が、0.02g/ml未満では、要求される応力を達成する物性を得ることが難しい場合があり、0.2g/mlより大きいと、応力値が高くなるばかりでなく、衝撃吸収部材の重量の低減が困難になるおそれがある。より好ましくは、0.04g/ml〜0.1g/mlである。
【0030】
図5は、本発明の衝撃吸収部材の組み合わせの一実施形態を示す斜視図である。
この実施形態では、図1に示した衝撃吸収部材1を2つ準備し、衝撃荷重の作用方向に、それぞれを基部11の第2の面112で組み合わせている。
このように、衝撃荷重の作用方向に衝撃吸収部材を複数重ねることにより、より大きな衝撃荷重に対して、大きな衝撃吸収性能を発揮する衝撃吸収部材を得ることができる。
この実施形態では、潰れ代が大きい用途に使用する場合、圧縮ひずみが大きく変動しても、主リブ12の設計において予め設定した圧縮応力以下で衝撃を吸収できるため、より大きな衝撃エネルギを吸収できる。
【0031】
本発明の衝撃吸収部材は、発泡樹脂がもつ衝撃吸収性能と特定の格子状リブ構造が相乗的に働き、高い衝撃吸収性能を発現できる。
また、厚さ方向において、主リブが数種の異なる屈曲点を有することで、圧縮ひずみが大きくなっても、圧縮応力が急激に上昇することはないので、衝撃エネルギを有効に吸収できる。
本発明の衝撃吸収部材は、自動車のバンパや天井,ドア,側突パッド等に適用することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0033】
実施例1
発泡熱可塑性樹脂粒子として、発泡性アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(日立化成工業(株)製:HIBEADS GR)を使用した。この樹脂を発泡スチロール用のバッチ式発泡機(日立化成テクノプラント(株)製発泡機:HBP−500LW)を用い、嵩密度0.0556g/ml(発泡倍数:18倍)に予備発泡したのち、成形までの18時間、通気性の良いサイロに保管した。
引き続き、発泡スチロール用成形機(日立化成工業(株)製:モルデックス10VS)に所定の金型をセットし、型締めしたのち、発泡粒子の充填工程、0.08MPaのゲージ圧を有する水蒸気で25秒間加熱し、その後、水冷工程、真空冷却工程を経て、衝撃吸収部材を得た。
図6は、実施例1で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
衝撃吸収部材2は、基部11上に主リブ12を6本、副リブ21と副リブ22を各1列有し、副リブ21の厚さは主リブ12と同じ厚さに、副リブ32は主リブ12の50%の厚さにした。
【0034】
実施例2
金型を交換した他は、実施例1と同様にして、副リブ22に変えて厚さを主リブ12の75%の厚さにした副リブを有する衝撃吸収部材を作製した。
【0035】
実施例3
金型を交換した他は、実施例1と同様にして、衝撃吸収部材を作製した。
図7は、実施例3で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
衝撃吸収部材3は、主リブ12及び副リブ21の構成は実施例1と同じであるが、副リブ22に変えて、同列上に副リブ31を設けた。副リブ31は主リブ12間で、主リブ12の75%の厚さ、主リブ12の50%の厚さに、交互に変化させた。
【0036】
比較例1
金型を交換した他は、実施例1と同様にして、衝撃吸収部材を作製した。
図8は、比較例1で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
衝撃吸収部材4は、副リブ22を設けていない他は、実施例1と同じ構成とした。
【0037】
比較例2
金型を交換した他は、実施例1と同様にして、衝撃吸収部材を作製した。
図9は、比較例2で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
衝撃吸収部材5は、副リブ22に変えて、厚さを主リブ12と同じとした副リブ51にした他は、実施例1と同じ構成とした。
各実施例及び比較例で作製した衝撃吸収部材の寸法及び物性を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
評価例
得られた衝撃吸収部材を、縦140mm×横140mm×厚み70mmの試験体とし、衝撃荷重試験をおこなった。衝撃荷重試験は、試験体より広い平面をもち、質量を可変できるおもりを、試験体表面に垂直に規定速度で落下させて、おもりに生じた加速度(G値)と試験体の厚さ変化量を測定し、衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を評価した。尚、おもりは5kg、落下高さは1.3mとした。
図10は、各衝撃吸収部材の圧縮ひずみと圧縮荷重の関係を示す図である。
この結果から、比較例1及び2の衝撃吸収部材は、圧縮ひずみによって圧縮荷重が大きく変動していることが確認でき、また、本発明の衝撃吸収部材では、比較例より、圧縮ひずみの変化による圧縮荷重の変化が小さく、圧縮ひずみが大きくなっても、安定した値を示すことが確認できた。
即ち、衝撃荷重が作用したとき、圧縮応力が予め定められた値以下で、予め定められた動的圧縮ひずみの間を推移するので、より高い衝撃吸収性能を発揮できることが示唆された。
従って、本発明の衝撃吸収部材は、自動車用衝撃吸収材に適した衝撃吸収性能を有することが示された。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、衝撃荷重が作用したとき、許容される圧縮応力以下を示す、圧縮ひずみの範囲を広くすることにより、高い衝撃吸収性能を発揮する衝撃吸収部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である衝撃吸収部材の一部の斜視図である。
【図2】図1の衝撃吸収部材の平面図である。
【図3】図2のA−Aに添った衝撃吸収部材の部分断面図である。
【図4】図3において、副リブの厚さを変化させた衝撃吸収部材の部分断面図である。
【図5】衝撃吸収部材1の組み合わせを示すの斜視図である。
【図6】実施例1で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
【図7】実施例3で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
【図8】比較例1で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
【図9】比較例2で作製した衝撃吸収部材の斜視図である。
【図10】実施例1〜3及び比較例1,2の衝撃吸収部材の圧縮ひずみと圧縮荷重の関係を示す図である。
【符号の説明】
1,2,3 衝撃吸収部材
11 基部
12 主リブ
13,14,15,21,22,31,32 副リブ
111 第1の面
112 第2の面
122 上底部(主リブの先端)
t1,t2,t3 副リブの厚さ
t4 主リブの厚さ
t5 衝撃吸収部材の全厚
w1 主リブ下底部の幅(主リブの幅)
w2 主リブ上底部の幅(主リブの幅)
Claims (9)
- 発泡熱可塑性樹脂からなる基部と、
前記基部の面の上に形成される、発泡熱可塑性樹脂からなる複数の主リブと、
前記主リブと交わって、前記基部の面の上に形成される、発泡熱可塑性樹脂からなる複数の副リブとを具備し、
前記複数の副リブの基部の面から垂直方向の厚さが、前記主リブの基部の面から垂直方向の厚さの100%以内であって、さらに、前記複数の副リブの厚さが異なり、少なくとも1つ以上の副リブの厚さが、前記主リブの厚さの25%〜75%である衝撃吸収部材。 - 前記基部、前記主リブ及び前記副リブを構成する発泡熱可塑性樹脂の密度が、0.02g/ml〜0.2g/mlである請求項1に記載の衝撃吸収部材。
- 前記発泡熱可塑性樹脂が、スチレン系共重合体である請求項1又は2に記載の衝撃吸収部材。
- 前記主リブと、前記副リブにより、格子状構成が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
- 少なくとも1つ以上の副リブの厚さが、交差する主リブの前後で、変化する請求項1〜4のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
- 前記複数の副リブの厚さが、連続的又は段階的に変化する請求項1〜5のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
- 前記主リブの基部の面から垂直方向の断面形状が台形であり、下記式で表される前記主リブの平均幅が、前記衝撃吸収部材の全厚の、0.05倍〜0.3倍である請求項1〜6のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
wa=(w1+w2)/2
(式中、waは主リブの平均幅であり、w1は台形の下底部の幅であり、w2は台形の上底部の幅である。) - 前記主リブの基部の面方向の幅が、前記基部側から前記主リブの先端側までテーパ状に減少し、前記基部に対する垂線から前記主リブまでの傾斜角度αが、0°<α≦5°である請求項1〜7のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材において、前記基部が無い衝撃吸収部材。
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