JP4073108B2 - 可動翼水力機械の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばカプラン水車の如き可動翼水力機械の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
図12は、可動翼水力機械の一種であるカプラン水車の概略構成を示す図であり、図示しない上池からケーシング1に流入した水は、ガイドベーン2で整流された後ランナベーン3を通過し、そのランナベーン3が装着されているランナボス4を介してそのランナボス4が連結されている回転主軸5を回転させ、その後吸出し管6を経て図示しない下池に排水される。
【0003】
ランナベーン3はランナボス4に対して放射方向に複数個取り付けられてランナを構成しており、その各ランナベーン3は回転主軸5の軸線Lと直交する羽根軸の軸線Mを中心として回動し、ランナベーン3の傾斜角度が制御される。一方、上記ランナが配設される静止流水路にはランナの外周に配設され、ランナベーン3の先端部すなわちチップ側端面3aとの隙間をできるだけ狭くするため、ディスチャージリング7が設けられている。
【0004】
このディスチャージリング7は、回転主軸5に直交し、羽根軸の軸線Mを含む平面を堺に上下に分割されて、上流側ディスチャージリング7aと下流側ディスチャージリング7bによって構成されている。ところで、上述のようにランナベーン3のチップ側端面3aとディスチャージリング7との隙間を狭くするため、ランナベーン3のチップ側端面3aは前記回転主軸5の軸線Lと羽根軸の軸線Mとの交点を中心とする球面状に形成され、これに対応して下流側ディスチャージリング7bの内周面もランナベーン3のチップ側端面3aにおける球面の中心と同一点すなわち軸線LとMとの交点を中心とし半径のみが若干大きい球面状に形成されている。そして、上流側ディスチャージリング7aはランナの分解時にランナを上方に引き上げることができるように、その内面が円筒面としてある。
【0005】
しかして、このカプラン水車の作動時に、各ランナベーン3がその全閉位置から傾斜角度が大きくなると、軸線Lに直交し軸線Mを含む平面より下流側ではランナベーン3のチップ側端面3aと静止部である下流側ディスチャージリング7bとの間隔は一定になるが、上記平面より上流側ではチップ側端面3aと上流側ディスチャージリング7aとの間隔がランナベーンの先端に行く程広くなり、流水の漏れにより水車効率の低下が発生する。
【0006】
なお、図13は図12に示したカプラン水車のランナベーン3のまわりを拡大した図である。ランナベーン3のチップ側端面3aは半径Rの球面となっている。また上流側ディスチャージリング7aの内面は半径Rdの円筒面であり、下流側ディスチャージリング7bの内面は半径Rdの球面である。ここで、半径Rdは半径Rより若干大きい値である。なお、同じ符号は図12と同一の部品を示す。図13の(b)は、ランナベーン3の傾斜角度が大きくなった場合、図13の(a)の矢印Zの方向、すなわち羽根軸の軸線方向からランナベーンを見た図を示す。この図13の(b)で線Lは図13の(a)の主軸5の軸線Lに相当する。MMは軸線Mを含み軸線Lに垂直な平面を示す。ここで3aはチップ側端面でありランナベーン3のチップ側の端面を矢印Z方向から見た形状を示し、ディスチャージリング7との間隔が一定の部分を斜線でハッチィングした。線MMより上流側がハッチングされていない理由は、上流側ディスチャージリング7aが円筒面でランナベーンチップ側の端面3aとの間隔が広くなるためである。
【0007】
また、チップ側端面の最大径をD0とするとき、上流側ディスチャージリング7aの円筒面の直径は可能な限りD0に近い方が流水の漏れを低減し、効率低下を抑えることができるが、ランナの分解或は点検時にランナを上方に引き上げる場合には、ランナベーン3の外周の最大径と静止壁の最小径の差がわずかなため引き上げ作業が困難となる問題がある。
【0008】
このため、上流側ディスチャージリング7aの内面を上に向ってわずかに径が大きくなるような逆円錐状としたものもあるが、その場合にはランナを上方に引き上げることは容易となるが、チップ側端面と上流側ディスチャージリング7aとの間隔がますます広くなり、流水の漏れが増加し、水車効率の低下につながる。また、このような流水の漏れの増大はキャビテーションを発生させ、ランナベーンの表面に壊食を発生させることもある。
【0009】
さらに、図13に示すカプラン水車では、球面状の下流側ディスチャージリング7bと吸出し管6とが接続する部分は流路側に突出し、ノド部Pが形成されている。このため、流水は上記ノド部Pの上流では断面積が絞られるため増速されるが、ノド部Pを通過すると、断面積が広がるため減速される。このようにノド部Pがあると、流速が一度増速されその後減速されるため、単純に減速される場合と比較すると余分な流動損失が発生する。
【0010】
一方、チップ側端面での流水の漏れによる水車効率の低下を防ぐために、上流側ディスチャージリング7aの内面を球面にし、下流側ディスチャージリング7bの内面を円筒面または広がり角度10度以下の円錐面としたプロペラ水車も提案されている(特開昭61−61981号公報)。ランナベーンの傾斜角度が大きくなると、チップ側端面と下流の円筒面或は円錐面との間の間隔が広くなるが、ランナベーンの圧力面、負圧面の圧力差はランナベーンの下流側の方が上流側より小さいため、図13に示すようなカプラン水車より流水の漏れは少なくなり効率低下が改善されるとしているが、間隔が広がることに対する改善はなされていない。特に、下流側ディスチャージリングを円錐面とした場合は、円筒面以上にランナベーンのチップ側端面との間隔が大きくなるので、図13に示すカプラン水車よりも多量の流水の漏れが発生し、効率が低下する可能性がある等の問題がある。
【0011】
以上の図13に示した円筒形の上流側ディスチャージリングと球面の下流側ディスチャージリングによるカプラン水車の問題点を解決する方法として、図14に示した様なカプラン水車がある。すなわち、図14のカプラン水車では上流側ディスチャージリング7a、下流側ディスチャージリング7b共に内面は球面で加工されている。その半径は、図13の場合と同様ランナベーン3のチップ側端面の半径Rより若干大きい半径Rdである。ここで図14の(b)は、前記の図13の(b)と同様に、ランナベーン3の傾斜角が大きくなった場合の、図14の(a)の矢印Z方向からランナベーンを見た図を示す。ここでも、ディスチャージリング7との間隔が一定の部分を斜線でハッチィングしたが、図13の(b)と異なり、図14の(b)ではチップ側端面3aの全面がハッチングされており、ランナベーン3のチップ側端面3aとディスチャージリングとの間隔が一定になっていることが示されている。すなわち、上流側ディスチャージリング7a、下流側ディスチャージリング7b共に内面は球面のため、チップ側端面3aの全領域でランナベーンのチップ側端面3aとの距離はRd−Rに等しくなる。また、ランナベーンの傾斜角度が変化してもこの関係は変化しない。
【0012】
しかしながら、図14に示したカプラン水車では、以下の様な問題点がある。すなわち、上流側ディスチャージリング7aと下流側ディスチャージリング7bの最小半径、すなわち、これらの内面を回転主軸の軸線Lに垂直な平面に投影した際の半径は、ディスチャージリング球面の半径Rdより小さく、またランナベーン3の傾斜角度がどのような角度になっても、そのチップ側端面3aの回転主軸の軸線Lに垂直な平面へ投影した半径は、前記したディスチャージリングの最小半径より大きいので、ランナベーン3をランナボス4に組み込んだ状態で上方(すなわち発電機方向)または下方(すなわち吸出し管方向)へ移動させることは不可能である。このため通常は、ランナベーン3を上方へ抜くため、ランナベーン3の分解に先立ち、まずディスチャージリング7aを分解して上方へ取り出せる様な構造になっている。このため、図13のカプラン水車と比較すると図14のカプラン水車は上流側ディスチャージリング7aまわりの構造が複雑になり、その結果、製作コストも高騰し、かつランナベーン3の分解、組み込み時の時間も長くなる等の問題を有する。このため、こうしたカプラン水車は、従来、あまり製作されていない。
【0013】
本発明は、このような点に鑑み、ランナの分解、点検等の際に容易にランナを取り出すことができるとともに、ランナ外周部からの流水の漏れを低減し、それによる水力機械の効果の低下やキャビテーションの発生を抑制し得るようにした可動翼水力機械の製造方法を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれ羽根軸を中心として回動可能な複数のランナベーンを放射方向に設けたランナを有する可動翼水力機械の製造方法であって、
前記可動翼水力機械は、
上記ランナベーンのチップ側端面を、ランナの回転主軸の軸線と羽根軸の軸線との交点を中心とする球面状に形成するとともに、
ランナベーンの羽根部の軸線を、上記回転主軸の軸線に直交し且つ羽根軸の軸線を含む平面に対して通水路の高圧側または低圧側のいずれか一方に傾斜させ、
ランナベーンの全閉時にそのランナベーンのチップ側端面を、ランナの回転主軸と直交する平面に投影したときの最大半径が、上記チップ側端面における球面の半径より小さくなるようにしたものであり、
ランナベーンの羽根面もしくはチップ側端面から、羽根軸の軸線の延長線上に突起部を突出させ、上記羽根軸及び突起部の端部によってランナベーンを保持して軸対称面の加工を行い、その後上記突起部を除去して、ランナベーンを加工することを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の前提となる各参考例および本発明の実施の形態について説明する。なお、図中図13と同一部分には同一符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0016】
第1参考例
図1は、本発明の前提となる第1参考例を示す図であり、ランナベーン3がランナボス4に対して放射方向に複数個取り付けられてランナを構成しており、各ランナベーン3は水力機械の回転主軸の軸線Lと直交する羽根軸の軸線Mを中心として回動し、ランナベーン3の傾斜角度が制御される。
【0017】
上記各ランナベーン3のチップ側端面3aは回転主軸の軸線Lと羽根軸の軸線Mとの交点を中心とする半径Rの球面状に形成されている。また、上流側ディスチャージリング7aの内周面は、ランナベーン3のチップ側端面3aを形成する球面の半径Rよりわすがに大きな半径Rdの円筒に形成されており、下流側ディスチャージリング7bの内周面は半径Rdの球面に加工されている。
【0018】
ここまでは、図13に示した従来の可動翼水力機械と同一であるが、本第1参考例においては、ランナベーン3が全閉位置のときには点線3cで示すようになり、羽根外周のチップ側端面が上流側ディスチャージリング7aの方向に偏位するようにしてある。すなわち、ランナベーン3の全閉時においては、羽根部の軸線Vが回転主軸の軸線Lに直交し羽根軸の軸線Mを含む平面に対し高圧側に傾斜するようにしてある。したがって、ランナベーン3を全閉にしランナの回転主軸の軸線Lに垂直な平面に投影した際の時のランナの最大半径Rcは、チップ側端面の球面の半径Rより小さくなっている。
【0019】
ところで、図13に示す可動翼水力機械においては、ランナベーン3のチップ側端面3aがランナベーン3の羽根軸の軸線Mのほぼ延長線上にあるので、ランナベーン3の角度がとのような角度であっても、ランナベーンをランナの回転主軸の軸線Lに垂直な平面に投影した際の最大半径Rcは、常にチップ側端面の半径Rと等しくなっている。
【0020】
これに対し、この第1参考例においては、回転主軸の軸線Lに垂直な平面に投影したランナベーンの最大半径Rcはその角度により異なり、全閉位置で最も小さくなり、Rc<Rとなる。したがって、ランナベーン3とランナボス4を図において上方に引き上げる場合、半径Rに対してわずかしか大きくない半径Rdの上流側ディスチャージリング7a内を余裕をもって通過させることができ、ランナの分解組立時においてランナベーン3とランナボスを組み立てた状態のまま上方に引き上げる作業が容易となる。
【0021】
しかも、ランナベーンの角度が変化すると、ランナベーン3のチップ側端面3aは半径Rの球面上を動くので、球面状ディスチャージリングすなわち下流側ディスチャージリング7bとの隙間は、従来の可動翼水力機械と同様に一定に保たれ、流水の漏れを最小限に保持することができる。
【0022】
なお、上記説明においては、ランナベーンの全閉位置においてチップ側端面が上流側ディスチャージリング側にある場合について説明したが、チップ側端面を下流側ディスチャージリングの方に位置するようにすることもできる。
【0023】
第2参考例
図2は、本発明の第2参考例を示す図であり、図1に示すものに対して、上流側ディスチャージリング7aと下流側ディスチャージリング7bとの接続部が、ランナの回転主軸に直交し且つ羽根軸の軸線Mを含む平面に対して高圧側に偏位されている。したがって、この場合上流側ディスチャージリング7aの半径Rdminが下流側ディスチャージリング7bの球面の半径Rdより小さくなっており、その結果下流側ディスチャージリング7bの球面状部が上記羽根軸の軸線Mを含む平面より高圧側まで延びている。
【0024】
すなわち、この第2参考例においても、回転軸の軸線Lに直交する平面に投影したランナの最大半径は羽根角度により異なり、全閉位置で最も小さくなる。このため、ランナがその中を通過できるために十分な上流側ディスチャージリング7aの内径Rdminは、上記全閉状態でのランナの最大半径Rcより大きければよいことになり、下流側のディスチャージリング7bの球面半径Rdよりも小さくすることができる。
【0025】
そこで、この第2参考例においては、Rd>R>Rdmin>Rcの関係となるようにしてある。
【0026】
しかして、この場合、ランナの分解組立時にランナベーン3とランナボス4とを組み立てた状態のままで、全閉位置でのランナの最大半径Rcに対してわずかしか大きくないRdminの上流側ディスチャージリング7a内を上方に引き上げることができる。しかも、内周が円筒状の上流側ディスチャージリング7aの内径を小さくできるため、結果として下流側ディスチャージリング7bによる球面部の範囲を広くすることができ、チップ側端面とディスチャージリングとの間隙に起因する流水の漏れによる効率の低下及びキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0027】
第3参考例
なお、以上の説明では、全閉位置でのチップ側端面が上流側ディスチャージリング側にある場合を示したが、それが下流側にある場合も同様の効果を奏する。
【0028】
すなわち、図3はランナベーン3が全閉位置の場合、そのチップ側端面が上記羽根軸の軸線Mを含む平面に対して低圧側に位置するようにしてものであって、その他の点では図2に示すものと同一である。
【0029】
しかして、この場合も、上流側ディスチャージリング7aの内径Rdminをランナベーン3が全閉位置にあるランナの半径Rcより若干大きくすることによって、ランナベーン3とランナボス4を組み立てた状態で上方に容易に引き上げることができる。
【0030】
しかも、球面状の下流側ディスチャージリング7bをランナベーンの羽根軸の上方まで延長でき、ランナベーンの角度が増えてその姿勢が図3の3d(一点鎖線)になるまでは、ランナベーン3のチップ側端面とディスチャージリングの間隙は、チップ側端面の全面にわたり、Rd−Rの狭い間隙のまま一定に保持される。
【0031】
すなわち、図3の(b)に示されている通り、ランナベーン3の姿勢が前記した3dの姿勢となった場合、ランナベーン3を、図3の(a)の矢印Zの方向から見た形状は、この図の様になる。ここでも、ディスチャージリング7との間隔が一定の部分を斜線でハッチィングしたが、前記した通り、姿勢3dまではランナベーン3とディスチャージリング7との間隔はRd−Rが一定なので、チップ側端面3aの全面がハッチィングされている。
【0032】
以上により図3の第3参考例では従来のものに比し流水の漏れによる効率の低下及びキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0033】
第4参考例
図4は図1の変形例である第4参考例を示す図であり、ランナベーン3の全閉時におけるチップ側端面3aが回転主軸の軸線Lに直交し羽根軸の軸線Mを含む平面より下流側に位置するようにしてある。そして、ランナベーンが全開した状態でもランナベーンが2点鎖線3dで示すようになり、その際ランナベーンのチップ側端面が上記平面より高圧側に出ないようにしてある。その他は図1に示すものと同一である。
【0034】
しかして、この場合も、回転主軸に直交する平面に投影したランナの最大半径はランナベーンの全閉位置で最も小さくなり、ランナベーンを全閉状態とすることにより、ランナベーン3とランナボス4を組み立てた状態のまま、図において上方(高圧側)に容易に引き上げることができる。しかも、ランナベーン3のチップ側端面とディスチャージリングの間隙がランナベーンの角度が全閉から全開の全範囲にわたってRd−Rの狭い間隙に保持され、チップ側端面とディスチャージリングとの間の間隙に起因する流水の漏れが規制され、その漏水による効率の低下とキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0035】
図5は本発明の参考例の効果を示すための実験結果を示す。実験は実物水車と幾何学的に相似な模型カプラン水車を製作し、模型の特性を正確に測定できる試験装置を用いて行なった。
【0036】
実験は2種類のランナベーンについて実施した。一つのランナベーンは、図13に示す従来のカプラン水車と同様なランナベーンであり、全閉時のランナベーンチップ側端面がほぼ羽根軸の軸線の延長上にある。もう一つのランナベーンは本発明の第4参考例のランナベーンに相当し、全閉時のランナベーンのチップ側端面が羽根軸の軸線より下流側にある。
【0037】
図中の点は3種類のランナベーンの傾斜角度θ1、θ2、θ3について、設計回転数、設計有効落差の基で、図13で説明したガイドベーン2の姿勢を変化させた場合の特性を示す。横軸は最高効率点の流量Q0を1.0とし、測定された流量Qを無次元した流量Q/Q0、立軸は従来ランナベーンの最高効率η0を1.0とし、測定された効率ηを無次元した効率η/η0である。
【0038】
可動羽根カプラン水車の場合は、効率が最も高くなるランナベーン傾斜角度θとガイドベーンの姿勢の組み合わせで運転される。図中の点線はその時の効率の変化を示す。この図から、全ての流量で、第4参考例のランナベーンの方が効率が高いことがわかる。その程度は、最高効率点で約0.2%に相当する。
【0039】
第5参考例
図6は本発明の第5参考例を示す図であり、各ランナベーン3の外周すなわちチップ側端面は半径Rの球面に形成されており、ランナベーン3を全閉状態としたときにはそのチップ側端面が回転主軸の軸線Lに直交し羽根軸の軸線Mを含む平面より高圧側に位置するようにしてある。そして、上流側ディスチャージリング7aの内周が、ランナの半径Rより若干大きな半径Rdの球面で加工されており、下流側ディスチャージリング7bの内面が、回転主軸の軸線Lに直交する平面に投影した全閉状態のランナの半径Rcより大きく、上記半径Rdより小さな半径Rdminの円筒状に形成されている。したがって、上流側ディスチャージリング7aの球面と下流側ディスチャージリング7bの円筒状部とは、上記軸線Mを含む面より低圧側で接続されている。
【0040】
しかして、この場合もランナベーン3の全閉時におけるランナの最大半径Rcが下流側ディスチャージリング7bの半径Rdminより小さくなることにより、ランナの分解組み立てに際し、ランナベーン3とランナボス4を組み立てた状態のまま低圧側に容易に降ろすことができる。しかも、球面状に形成されているディスチャージリングを羽根軸の軸線Mを含む平面より下方すなわち低圧側に位置せしめているので、ランナベーン3の姿勢が図5の3d(一点鎖線)になるまでは、ランナベーンのチップ側端面とディスチャージリングの間隙はRd−Rの狭い間隙に保持される。
【0041】
すなわち、図6の(b)に示されている通り、ランナベーン3の姿勢が前記した3dの姿勢となった場合、ランナベーン3を、図6の(a)の矢印Zの方向から見た形状は、この図の様になる。ここでも、ディスチャージリング7との間隔が一定の部分を斜線でハッチィングしたが、前記した通り、姿勢3dまではランナベーン3とディスチャージリング7との間隔はRd−Rが一定なので、チップ側端面3aの全面がハッチィングされている。
【0042】
したがって、チップ側端面が上流側ディスチャージリング7aの下端から出ない範囲では、チップ側端面とディスチャージリングとの間隙に起因する流水の漏れが規制され、その漏水による効率の低下とキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0043】
第6参考例
図7は図6の変形例である第6参考例を示す図であって、上流側ディスチャージリング7aの球面半径とそれに接続されている下流側ディスチャージリング7bの円筒半径は互いに同じRdであり、ランナベーン3のチップ側端面の球面Rより若干大きくしてある。一方、ランナベーン3はその全閉位置で点線3cで示すようにチップ側端面3aが、羽根軸の軸線Mを含む平面より上方すなわち高圧側に位置するようにされ、しかも、ランナベーンが全開となり図の2点鎖線で示す状態になってもチップ側端面が上記軸線Mを含む平面より下方すなわち低圧側に位置しないようにしてある。
【0044】
しかして、ランナの分解組み立てに際しては、ランナベーンを全閉状態にすることによってランナベーン3とランナボス4とを組み立てた状態のまま、きわめて容易に下方に降ろすことができる。しかも、ランナベーン3のチップ側端面3aと上流側ディスチャージリング7aとの間隙は羽根角度の全閉から全開の全範囲にわたってRd−Rの狭い間隙に維持される。したがって、チップ側端面とディスチャージリングとの間隙に起因する流水の漏れが規制され、それによる効率の低下及びキャビテーションの発生が抑制される。
【0045】
第7参考例
図8は本発明の第7参考例を示す図であり、各ランナベーン3の羽根軸の軸線Mが、回転主軸の軸線Lに直交する面に対してランナベーンのチップ側端面が上方すなわち高圧側に位置するように角度θだけ傾斜されている。そしてこのランナベーンのチップ側端面は半径Rの球面状に形成されている。一方、上流側ディスチャージリング7aの内周は半径Rdの球面に形成されており、その下流側に接続される下流側ディスチャージリング7bの内周は、回転主軸の軸線Lに直交する平面に投影した全閉状態のランナの半径Rcより若干大きい半径Rdminの円筒状に形成してある。
【0046】
しかして、この場合もランナベーン3の全閉時におけるランナの最大半径は運転時の最大半径より小さくでき、ランナの分解組み立てのためにランナベーンを全閉状態にすることによってランナベーン3とランナボスを組み立てた状態のまま下方に容易に降ろすことができる。さらに、上流側ディスチャージリング7aの球面部を下流側ディスチャージリング7bの半径Rdminの円筒状部と接続できるため、ランナベーン3の姿勢が全閉から図8の一点鎖線で示す位置になるまでチップ側端面とディスチャージリングとの間隙はRd−Rの狭い間隙のまま一定となる。したがって、チップ側端面が球面状のディスチャージリングの下端より出ない範囲では、流水の漏れをより少なくでき、漏水による効率の低下とキャビテーションの発生が抑制される。しかも、この参考例におけるランナベーンでは、羽根軸の軸線Mが回転主軸の軸線Lに直交する面に対して傾斜しているため、羽根部の基準軸線を羽根軸の軸線に対して傾ける必要がなく、上記軸線Mがチップ側端面を通るように形成でき、ランナベーンの加工時に上記軸線M上でランナベーンを保持でき、ランナベーンの加工を容易に行うことができる。
【0047】
第8参考例
図9は図7に示す第6参考例の他の例を示す図であり、上流側ディスチャージリング7aに吸出し管6の上部が直接接続され、上流側ディスチャージリング7aの球面が吸出し管6の内面に滑らかに接続されている。その他は図6のものと同一である。
【0048】
しかして、この場合も図7に示すものと同様の効果を奏する。しかもこの参考例においては、図13に示す従来の可動翼水力機械のように、球面状ディスチャージリングと吸出し管の上部との接続部に、流路内に出っ張り、流路断面積が狭くなるノド部が形成されるようなことがなく、ディスチャージリングから吸出し管上部に至る断面積変化は単調に増加するので、流路内での流速変化が単調で余分な流動損失が発生することも防止できる。
【0049】
実施の形態
また、図10は、それぞれ図1等に示すように、ランナベーンの全閉時に羽根軸3sの軸線Mに対してチップ側端面3aが高圧側或は低圧側に偏位するようにしたランナベーンの製造方法を説明するための図であって、(a)はランナベーン3の平面図、(b)は(a)における矢印Z方向から見た図である。また(c)は(a)における矢印Y方向から見た図である。
【0050】
ところで、従来の可動翼水力機械におけるランナベーンは、羽根軸3sの軸線Mがランナベーン内をその全長にわたって延びているため、上記軸線Mを対称軸とする軸線対称面の加工を行う際は、羽根軸3sの端面とチップ側端面に回転中心を設けることによってその加工を行うことができるが、本発明の第1参考例を示す図1におけるようなランナベーンでは、羽根部の基準軸線が軸線Mと同一軸線上になく、軸線Mがチップ側端面を通らないため、羽根軸3sを対称軸とする軸対称面の加工が困難となる。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、ランナベーン3のチップ側の羽根面またはチップ側端面に、軸線M上に位置する加工用突起12を設けておき、その加工用突起12と羽根軸3sの端部とを支持して軸対称面の加工を行い、軸対称面の加工が完了した後にその加工用突起12を除去する。また、この加工用突起12としては、ランナベーンのチップ側端面にキャビテーション壊蝕を防止する目的で備えられるフィレットをチップ側端面に対応するところまで延長して代用することもできる。
【0052】
しかして、加工用突起12の端面と羽根軸3sの端面を用いてランナベーン用ワークを支持することによって羽根軸3sの軸線Mを対称軸とする軸対称面の加工を容易に行うことができる。そして、この突起は加工後に除去するため、水力機械が完成した時点では性能等に影響を及ぼすことはない。
【0053】
第9参考例
図11は、本発明の第1参考例等に使用するランナベーンの一部断面図であり、ランナベーン3は、羽根部3fとランナベーンスピンドルである羽根軸3sが互いに分離可能に別々に加工されている。
【0054】
すなわち、羽根部3fの基端面には、羽根部の基準軸線Nに対して直交する端面を有する円柱状突起13が突設されている。一方、羽根軸3sの先端面にはその軸線Mに対する傾斜する羽根部の基準軸線Nに対して直交する底面aを有し、上記円柱状突起13に対応する凹部14が形成されている。しかして、上記円柱状突起13を凹部14に挿入しボルト15によって両者を締結することによって一つのランナベーン3が構成されている。
【0055】
しかして、このランナベーン3の加工においては、羽根軸3sとは別個に個々の羽根部3fを基準軸線Nを基準にして加工することができ、全閉時のランナベーンのチップ側端面が羽根軸の軸線Mの位置とほぼ一致している従来のランナベーンの加工方法と全く同じになり、その加工を容易に行うことができる。ただし、ランナベーン3の羽根軸部の加工では、その軸線Mに対して傾いた面や孔の加工が必要であるが、回転支持部の大きさはランナベーン一枚の大きさより小さいため、その加工は容易となる。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、上述のように構成したので、加工用突起の端面と羽根軸の端面を用いてランナベーン用ワークを支持することによって羽根軸の軸線を対称軸とする軸対称面の加工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可動翼水力機械の第1参考例を示す図。
【図2】本発明の可動翼水力機械の第2参考例を示す図。
【図3】(a)は本発明の可動翼水力機械の第3参考例を示す図、(b)は(a)のZ方向矢視図。
【図4】本発明の可動翼水力機械の第4参考例を示す図。
【図5】本発明の参考例の実験結果を示す図。
【図6】(a)は本発明の可動翼水力機械の第5参考例を示す図、(b)は(a)のZ方向矢視図。
【図7】本発明の可動翼水力機械の第6参考例を示す図。
【図8】本発明の可動翼水力機械の第7参考例を示す図。
【図9】本発明の可動翼水力機械の第8参考例を示す図。
【図10】(a)(b)(c)は本発明の可動翼水力機械のランナベーンの製造方法を示す図。
【図11】本発明の各参考例に使用し得るランナベーンの一部断面図。
【図12】従来の可動翼水力機械の概略構成を示す図。
【図13】(a)は図12のランナベーンまわりの拡大図、(b)は(a)のZ方向矢視図。
【図14】従来の可動翼水力機械の他の例を示す図。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 ガイドベーン
3 ランナベーン
4 ランナボス
5 回転主軸
6 吸出し管
7 ディスチャージリング
8 凹部
9 リング
10 ピン
11 軸受
12 加工用突起
13 円柱状突起
14 凹部
Claims (1)
- それぞれ羽根軸を中心として回動可能な複数のランナベーンを放射方向に設けたランナを有する可動翼水力機械の製造方法であって、
前記可動翼水力機械は、
上記ランナベーンのチップ側端面を、ランナの回転主軸の軸線と羽根軸の軸線との交点を中心とする球面状に形成するとともに、
ランナベーンの羽根部の軸線を、上記回転主軸の軸線に直交し且つ羽根軸の軸線を含む平面に対して通水路の高圧側または低圧側のいずれか一方に傾斜させ、
ランナベーンの全閉時にそのランナベーンのチップ側端面を、ランナの回転主軸と直交する平面に投影したときの最大半径が、上記チップ側端面における球面の半径より小さくなるようにしたものであり、
ランナベーンの羽根面もしくはチップ側端面から、羽根軸の軸線の延長線上に突起部を突出させ、上記羽根軸及び突起部の端部によってランナベーンを保持して軸対称面の加工を行い、その後上記突起部を除去して、ランナベーンを加工することを特徴とする、可動翼水力機械の製造方法。
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