JP4061051B2 - 開放部を有する磁気シールド構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集合住宅、一般住宅、病院、工場など、出入り口や窓などの開放部を必要とする構造物内部の空間に対して、送電線磁場、および送電線磁場と同様に扱える電車線路磁場の漏洩磁場などの磁場が対象空間に与える影響を低減させるための磁気シールド構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
送電線近傍の建物は、常時大きな交流磁場の環境下にあり、人体や機器への影響が懸念されている。このうち、人体に対する影響の有無はまだ明らかとなっていないが、機器に関しては電子ビーム応用機器等で障害が生じる。例えば、ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイでは画像揺れ障害が生じる。その閾値は、画面サイズ、方式、解像度等によっても異なるが、磁場の波高値でlμT(10mG)〜2μT(20mG)である。送電線の近傍では、1μTを超える大きさの交流磁場が発生する場合もあり、ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイの周辺での磁場を低減することが求められる場合がある。
画像揺れ障害が生じる場合、従来の対策としては、簡易なものではテレビやパソコン用CRTディスプレイを磁気シールドボックスで覆う方法が採られている。この磁気シールドボックスは正面部が開放された六面体で、磁気シールド材で構成されている。
また、対象の機器が大きい場合、又は複数台設置されて広い範囲を磁気シールドする必要がある場合は、部屋全体を磁気シールドルームにするケースもある。この場合、壁・天丼・床の6面を磁気シールド材で覆うことになる。
また、集合住宅や事務所等のように対象の領域が広く、窓のため壁面に十分な磁気シールド工事が行えない場合は、性能は落ちるが屋根面のみを磁気シールド材で覆う方法も採られている。
いずれの方法においても、磁気シールド材には、パーマロイ、アモルファス、珪素鋼板、純鉄等の比較的透磁率の高い材料が使われている。これらの磁気シールド材で必要箇所を覆い、外部からの磁場の侵入を防ぐものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の磁気による障害を防ぐ方法にあっては、次のような問題点がある。
<イ>ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイが設置される空間としては、集合住宅、一般住宅など、住環境を良好に保つためには開放部が必要不可欠な空間である場合が多い。にもかかわらず、従来では、磁場を低減するための対策が充分になされない建物が多かった。また開放部のある空間を対象として十分に検討された磁気シールド構造の建物は存在しなかった。
<ロ>屋根面のみなど一部の場所に磁気シールド材を設置する方法は、磁気シールド材の端部に磁極ができ、磁場が大きくなることがある。
<ハ>磁気シールドボックスは、機器単体に近接して覆うもので、簡易かつ即効的な方法であるが、機器の操作性を損なう。また、機器ごとに磁気シールドボックスを用意する必要がある。
<ニ>磁気シールドルームは窓がない閉ざされた空間となることが多く、採光面・換気面で不利であるとともに、中の人間に与える心理的悪影響も大きい。また、シールド扉は、磁気の侵入を防ぐ特殊な機構を用いて開閉するため、出入りが大変である。そのため、磁気シールドルームは研究所等に設置される特殊な空間の趣が強い。その上建設のためのコストも高い。
<ホ>パーマロイやアモルファスは透磁率の高い材料であるが、材料費が高い。
【0004】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにする効果的な磁気シールド構造を提供することを目的とする。
また、磁気シールド殻の少なくとも一部を開放して必要な開放部を確保することにより、設置した磁気シールド構造によって対象空間の使用環境を変化させない磁気シールド構造を提供することを目的とする。特に、対象空間に設置するテレビ等の操作性を良好にし、採光・通風・出入り口を確保して部屋等の住環境を良好に保つことができる磁気シールド構造を提供することを目的とする。
さらに、パーマロイやアモルファスに比べると透磁率は低いが、材料費の比較的安い珪素鋼板などの磁気シールド材を使っても、十分な性能を低コストで実現できる磁気シールド構造を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、前記方向性磁気シールド材を床面にのみ敷設し、前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部を前記対象空間から該対象空間より大きい空間を介して配置したことを特徴とする開放部を有する磁気シールド構造を提供する。
ここで、方向性磁気シールド材の端部とは、磁気シールド殻の少なくとも一部を開放して形成した磁気シールド構造の開放部に接する端部をいう。例えば、帯状の方向性磁気シールド材の高透磁率方向を外部磁場方向に略一致させて配置した場合、高透磁率方向を横断する端部に磁場の増幅部が発生する場合がある。この増幅部の磁場が逆に対象物に新たな影響を与えることがないように端部の配置を考慮したものである。例えば、集合住宅などの場合には、バルコニーや開放廊下など、ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイが設置されることのない空間に、前記端部の磁場増幅部を配置する。
ここで、方向性磁気シールド材の高透磁率方向とは、例えば方向性珪素鋼板の圧延方向など同一材料内で他の方向に比べて優れた透磁率を示す方向をいう。
【0006】
また、磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、前記方向性磁気シールド材を対象空間が入り隅部に位置するように断面Lの字に配置し、前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部を前記対象空間から該対象空間より大きい空間を介して配置したことを特徴とする開放部を有する磁気シールド構造を提供する。
【0007】
また、前記方向性磁気シールド材は高透磁率方向を互い違いに変えて複数枚重ねて構成したことを特徴とする、前記請求項1又は請求項2に記載の開放部を有する磁気シールド構造を提供する。
【0008】
また、方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部に該方向性磁気シールド材よりも透磁率が低い材料を配置した前記記載の開放部を有する磁気シールド構造を提供する。端部の材料の透磁率が低ければ発生する磁場も弱くなるからである。
【0009】
さらに、前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部における高透磁率方向を前記磁場の方向と一致させないようにしてもよい。ここで、方向性磁気シールド材の高透磁率方向とは、例えば方向性珪素鋼板の圧延方向など同一材料内で他の方向に比べて優れた透磁率を示す方向をいう。また、「端部における高透磁率方向を前記磁場の方向と一致させない」とは、例えば鉛直方向の磁場の中で「Lの字」の断面をもつ方向性磁気シールド材を使い、端部での高透磁率方向を磁場の方向と略直交させることによって一致させないようにすることなどである。
【0010】
さらに、磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、前記方向性磁気シールド材は、対象空間の周囲に、一面を開放した錐形状を構成するように配置し、前記錐形状に配置した方向性磁気シールド材の各面の高透磁率方向を連続させることによって閉じた回路が形成されるように構成し、前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部が現れないようにしたことを特徴とする開放部を有する磁気シールド構造を提供する。「各面の高透磁率方向を連続させることによって閉じた回路が形成される」とは、高透磁率方向を辿っていけば元の位置に戻れるような構成をいう。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
<イ>対象空間
対象空間3は、本発明の磁気シールド構造によって磁場の影響を及ぼさないようにする対象となる空間であり、開放部を必要とする。
例えば、テレビ、パソコン用CRTディスプレイ等の磁場の影響を受けやすいものを置くための空間又は置くことが予定されている空間、部屋等の居住空間がこれに該当する。ここで開放部とは、テレビ等を磁気シールド構造の外部から見るために開放した面、採光・通風・出入りのための部屋の窓や扉等をいう。
【0013】
<ロ>磁場方向
磁場方向2とは、送電線などから発生した磁場の方向をいう。磁場方向2は磁力線の方向ともいう。
磁場方向2は、電線が1本の場合は電線を中心とする同心円の接線方向となる。しかしながら、送電線は三相交流であるため、3本の電線が120度ずつ位相をずらした形で構成されており、さらには複数の回線が様々な位相関係・電流量で存在することが多い。このため、送電線周辺の磁場方向2はまちまちである。特に、送電線のごく近傍では、条件により磁場方向2は一意に決まらない場合が多い。ただし、送電線からある程度の距離だけ離れた場所においては、磁場の強さが送電線に流れる電流の変動にともなって変動するのに対し、磁場の卓越方向をその場所の磁場方向2とすることにより、磁場方向2はほとんど変わらないとすることができる。送電線の場合、概して送電線の真下では水平方向の磁場に、送電線の側面周辺では鉛直方向の磁場になることが多い。
このため、対象空間3の磁場方向2を予め観測又は推定しておいて磁気シールド構造を構築するのが好ましい。
【0014】
<ハ>磁気シールド材
磁気シールド材4とは、磁場を低減させる効果を有する材料をいう。
磁気シールド材4は、透磁率の高い材料であれば何でもよい。例えば、パーマロイ、アモルファス、珪素鋼板、純鉄等が使用できる。
所定のシールド機能を発揮させるためには、所定の厚さを確保する必要がある。これは磁場の強さと材料の磁気特性から決まるもので、磁場解析および実験等により求めることができる。純鉄であれば通常1枚で所定の厚さを確保できるが、アモルファス(厚さ30μm程度)や珪素鋼板(最大厚さ0.5mm程度)は複数枚重ねて所定の厚さとする。
【0015】
<ニ>方向性磁気シールド材
方向性磁気シールド材1は、方向によって透磁率が異なる磁気シールド材4である。
例えば、方向性珪素鋼板がこれに該当する。
磁気シールド材4である珪素鋼板には、無方向性珪素鋼板と方向性珪素鋼板がある。無方向性珪素鋼板は、すべての方向に同じ透磁率を示すが、透磁率自体は比較的小さい。これに対して、方向性珪素鋼板は、圧延方向に優れた透磁率を示すが、その他の方向の透磁率は小さい。この優れた透磁率を示す方向を、その材料の高透磁率方向11という。
方向性磁気シールド材1の高透磁率方向11と磁場方向2をほぼ一致させて配置すると、方向性磁気シールド材1を境に効果的に磁場を低減させた空間を作ることができる(図1(a)参照)。ここで、方向性磁気シールド材1の高透磁率方向11の端部6においては、磁場が増幅する増幅部22が発生するが、これと直交する方向の端部61には増幅部は発生しない。
なお、上記したように二つの方向を一致させることができない場合は、方向性磁気シールド材1の高透磁率方向11を互い違いに変えて複数枚重ねて敷設すれば良い。
【0016】
また、方向性磁気シールド材1である方向性珪素鋼板は、製造上圧延方向(高透磁率方向11)の長さに制約はないが、圧延方向と直交する幅方向については最大でも1m程度である。よって、幅が広い磁気シールド構造を構築する場合には継ぎ目が生じ、ここから磁気が侵入しないような処理が必要となる。
そこで、継ぎ目の場所を層がかわるごとにずらして継ぎ目が塞がれるように方向性磁気シールド材1を配置し、継ぎ目の問題を解決する。
または、方向性磁気シールド材1の高透磁率方向11と磁場方向2を一致させることにより、幅方向両端部の継ぎ目の問題を解決してもよい。すなわち、方向性磁気シールド材1の高透磁率方向11が磁場方向2と一致していれば、5mm程度の隙間はシールド性能にほとんど影響しない。
さらに、継ぎ目においては、補強材としてパーマロイやアモルファス等の高透磁率を有する磁気シールド材4を配置し、水平部及び垂直部の方向性磁気シールド材1と磁気的に緊結することもできる。
【0017】
<ホ>端部の処理方法
磁気シールド材4や方向性磁気シールド材1の端部6においては、磁場が増幅する増幅部22が発生する。このため、磁気シールド材4(特に方向性磁気シールド材1)で磁気シールド構造を構成する場合は、端部6の処理に注意をはらう必要がある。
以下に、端部の処理方法について実施例により説明する。
【0018】
【実施例】
以下図面を参照しながら本発明の磁気シールド構造の実施例について説明する。以下に説明する磁気シールド構造の端部の処理は、磁気シールド材4及び方向性磁気シールド材1の両方に適用できる。また、一つの磁気シールド構造に対して、後述する端部処理を単独でそれぞれ適用することも、複数組み合わせて適用することもできる。
【0019】
<イ>端部と対象空間の位置関係を考慮する場合(図1)
端部処理の最も簡単な方法は、端部6に発生する磁場の増幅部22の影響が対象空間3に及ばないように、対象空間3と端部6を離すことである。
例えば平板状の方向性磁気シールド材1で磁気シールド構造を構成する場合は、増幅部22の影響が対象空間3に及ばないように対象空間3から充分離れた位置に端部6が配置されるような磁気シールド構造を構築する(図1(a)参照)。
ここで、磁気シールド材4は、必要に応じて壁や床等に埋め込む。磁気シールド材4を露出させなければ、室内の景観を悪化させたり、テレビ等の操作性を悪化させたりすることがない。
【0020】
図10は、集合住宅31の最上階の床面のみに方向性磁気シールド材1を配置した図で、方向性磁気シールド材1の端部はバルコニーや開放廊下などに配置してある。
この集合住宅31の最上階の室内には、方向性磁気シールド材1を配置しなければ水平方向の磁場が発生している。このときの磁場の大きさを100%とし、最上階の床面に方向性磁気シールド材1を配置したときの水平方向の磁場低減率を図10の最上階に示した。この図から、最上階の室内の磁場は方向性磁気シールド材1の配置によって低減しており、その両端部で磁場の増幅部22が現れていることがわかる。しかし、これらの増幅部22は集合住宅31のバルコニーや廊下に発生するだけなので、ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイなどを置く対象空間3に影響を与えることがない。
このように、磁場を低減する必要がある階の床面のみに方向性磁気シールド材1を配置して、効果的かつ経済的な磁気シールド構造をつくることができる。
【0021】
<ロ>対象空間が連続する場合(図2)
例えば、集合住宅のように対象空間3となる部屋が上下方向又は横方向に連続する場合を考える。
この場合は、連続する部屋3a,3bの間には端部が発生しないように方向性磁気シールド材1などの磁気シールド材4を配置する。
そして、集合住宅31の屋上、地上階のエントランスホール又は地階倉庫など、ブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイなどを置く対象空間3が存在しない場所に端部6が配置されるように磁気シールド構造を構築する。このように対象空間3の有無によって磁場の大きさを制御することで、経済的に磁気シールド構造を構築することができる。
【0022】
<ハ>磁場の弱い位置に端部を配置する場合(図3)
距離減衰する磁場による影響を低減させる場合、磁場の弱い位置に端部6を配置して端部6での磁場の増幅による影響を回避することができる。
図3は、磁場中心21を中心とする同心円状の磁場を模式的に表した図である。この図では外側の同心円ほど磁場が弱くなる。
図3に示すような磁場が発生している場所に集合住宅31a,31bを建設する場合を考える。
磁場の強さは、磁場中心21からの距離によって異なるため、磁場中心21に近い部屋3cは磁気シールド構造を必要とし、磁場中心21から遠い部屋3dは磁気シールド構造を必要としない。
そこで、磁場の影響を受ける部屋3cにのみ磁気シールド構造を構築すればよいが、端部6の位置によっては磁場の増幅により余計に磁場の影響が出る部屋ができるおそれがある。
そこで、集合住宅31aの外壁に配置した方向性磁気シールド材1の端部6aを、磁場が弱くなる集合住宅31aの下層及び屋上まで延長する。集合住宅31bも同様に、屋上に配置した方向性磁気シールド材1の端部6bを屋上の端及び外壁にまで伸ばして配置する。このように断面がLの字になるように方向性磁気シールド材1を配置すると、入り隅部付近で良好な磁場の低減効果が現れる。また、このように2方向に方向性磁気シールド材1を配置することで、水平磁場が支配的な場合でも、鉛直磁場が支配的な場合でも同様に良好な効果が得られる。
【0023】
また、対象空間3を半筒型磁気シールド材1cで囲む方法も考えられる(図4参照)。
図4では、磁場は減衰方向Aにいくに従って弱くなる。このため、磁気シールド材の端部6を磁場が充分に減衰している位置まで伸ばすと、結果的に半円筒型の半筒型磁気シールド材1cとなる。
【0024】
さらに、図11に示したように、建物の一鉛直壁面および床や天井のうち一つの水平面に、Lの字になるように方向性磁気シールド材1を配置し、磁気シールド材1の端部6を、磁場が減衰して小さい場所や、端部6での磁場の増幅が対象空間3に及ばない場所に配置する。この結果、水平方向および鉛直方向の外部磁場に対して良好な性能を示す磁気シールド構造をつくることができる。
【0025】
<ニ>端部に低透磁率材を使用する場合(図5)
方向性磁気シールド材1aの高透磁率方向11の端部に低透磁率材13を配置する方法も採用できる。
低透磁率材13は、無方向性珪素鋼板等のように方向性磁気シールド材1aの高透磁率方向の透磁率よりも透磁率の低い材料をいう。このように端部に低透磁率材13を配置すれば、端部において磁場が増幅されにくい磁気シールド構造とすることができる。
【0026】
<ホ>端部の形状を加工する場合(図6)
方向性磁気シールド材1bを使用した場合、磁場方向2と高透磁率方向11を一致させて配置すると、方向性磁気シールド材1を境に効果的に磁場を低減させることができるが、端部において磁場の増幅する増幅部22が発生する。
これに対して、磁場方向2と高透磁率方向11がほぼ直交するか又は一致しない場合は、磁場を低減させる効果は少ないが、高透磁率方向11を横断する端部に増幅部が発生することもない。
そこで、端部6付近を磁場方向2とほぼ直交するように折り曲げて曲折部14を形成する。こうすることで、端部6に磁場の増幅部22が発生するのを抑えることができる。
【0027】
<ヘ>外殻
外殻5は、対象空間3の外周に配置する磁気シールド材4から構成される構造体である。
外殻5は、外形が錐状体又は柱状体であり、少なくとも一面を開放している。例えば方向性磁気シールド材1で形成する三角錐状の錐状外殻5a(図7)、円筒状の円柱状外殻5b(図8)、三角柱や四角柱などの多角柱状外殻5c(図9)が使用できる。
外殻5は少なくとも一面を開放した構造となっているため、外殻5に囲まれた対象空間3と外部との障害になることがない。例えば、外殻5内にテレビを配置した場合でもテレビの操作性を損なうこともなく、視界を遮ることもない。また、対象空間3である部屋の採光や換気を妨げることもない。
【0028】
また外殻5を方向性磁気シールド材1で形成した場合に、各面の高透磁率方向11を連続させることによって閉じた回路が形成されるように構成するのが好ましい。
図7に前面を開放した三角錐状の錐状外殻5aを、図8に上面と底面を開放した筒状の円柱状外殻5bの斜視図を示す。いずれも高透磁率方向11が連続して回路を形成している。
このように外殻5を磁気回路が形成される構造とすることで、磁気シールド構造から磁場が増幅する端部6を無くすことができる。また、外殻5内部の対象空間3への磁場の影響を大幅に低減させることができる。
そして、このような磁気回路が形成される構造にした場合は、対象空間3内に置かれる対象物と外殻5の密着性はあまり問題にならないため、テレビ等の操作性、外観等に影響を与えることなく磁場の影響を低減させることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の磁気シールド構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>集合住宅など、良好な住環境を保つためには開放部が不可欠な建物の内部空間において、送電線などから発生する磁場の影響がブラウン管テレビやパソコン用CRTディスプレイなどの機器を置く対象空間に及ばないようにした効果的な磁気シールド構造を提供する。この実現のために、磁気シールド構造の端部に発生する磁場の増幅部の影響が、対象空間に及ばないようにする。このため、対象空間の磁場による影響を確実に低減することができる。また、磁場の影響を低減させる領域を限定しているため、経済的に磁気シールド構造を構築することができる。
<ロ>磁場が増幅する端部を持たない開放部を有する外殻型の磁気シールド構造を構築する。このため、対象空間に置くテレビ等の操作性、部屋等の住環境を悪化させることがない。また、磁気シールド構造を建築物と一体化させることによって、良好な外観を保つことができる。
<ハ>磁場を低減させる必要のある対象空間だけに対策をするため、必要最小限の磁気シールド材を配置すればよい。このため、使用材料を減らすことができ、コストの削減につながる。
<ニ>開放部のない壁面・天井面・床面の場所が限られている建物についても、効果的な磁気シールド構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の磁気シールド構造の実施例の平面図。(b)本発明の磁気シールド構造の実施例の背面図。
【図2】対象空間が連続する場合の磁気シールド構造の斜視図。
【図3】集合住宅の外壁及び屋上に磁気シールド材を配置する場合の断面図。
【図4】半筒型の磁気シールド構造の実施例の斜視図。
【図5】端部に低透磁率材を配置した場合の磁気シールド構造の実施例の斜視図。
【図6】端部の形状を加工した場合の磁気シールド構造の実施例の平面図。
【図7】錐状外殻の実施例の斜視図。
【図8】円柱状外殻の実施例の斜視図。
【図9】多角柱状外殻の実施例の斜視図。
【図10】集合住宅の最上階の床面に磁気シールド材を配置したときの磁場低減率を示した断面図。
【図11】断面がLの字となるように磁気シールド材を配置したときの磁場低減率を示した断面図。
【符号の説明】
1・・・方向性磁気シールド材
11・・高透磁率方向
13・・低透磁率材
14・・曲折部
2・・・磁場方向
21・・磁場中心
22・・増幅部
3・・・対象空間
3a,3b,3c,3d・・部屋
31・・集合住宅
33・・床
4・・・磁気シールド材
5・・・外殻
6・・・端部
Claims (6)
- 磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、
前記方向性磁気シールド材を床面にのみ敷設し、
前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部を前記対象空間から該対象空間より大きい空間を介して配置したことを特徴とする、
開放部を有する磁気シールド構造。 - 磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、
前記方向性磁気シールド材を対象空間が入り隅部に位置するように断面Lの字に配置し、
前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部を前記対象空間から該対象空間より大きい空間を介して配置したことを特徴とする、
開放部を有する磁気シールド構造。 - 前記方向性磁気シールド材は高透磁率方向を互い違いに変えて複数枚重ねて構成したことを特徴とする、前記請求項1又は請求項2に記載の開放部を有する磁気シールド構造。
- 前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部に該方向性磁気シールド材よりも透磁率が低い材料を配置したことを特徴とする、前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の開放部を有する磁気シールド構造。
- 該方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部における高透磁率方向を前記磁場の方向と一致させないことを特徴とする、前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の開放部を有する磁気シールド構造。
- 磁場による影響が開放部を有する対象空間に及ばないようにするための方向性磁気シールド材からなる磁気シールド構造であって、
前記方向性磁気シールド材は、対象空間の周囲に、一面を開放した錐形状を構成するように配置し、
前記錐形状に配置した方向性磁気シールド材の各面の高透磁率方向を連続させることによって閉じた回路が形成されるように構成し、
前記方向性磁気シールド材の高透磁率方向を横断する端部が現れないようにしたことを特徴とする、
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