JP4055231B2 - インクジェット記録用インクおよびその製造方法、インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式に適用されるインクジェット記録用インク、前記インクを使用するインクジェット記録方法、および前記インクを製造する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録用インク(以下、単に「インク」という場合がある。)は、主として染料を色材としたインクが用いられているが、かかるインクにより形成された画像は耐水性、耐光性に劣る。このような問題を解決するために顔料を色材としたインクの検討が進められている。顔料は本質的に水に不溶なため、インク中に安定に分散させる方法として、分散剤を使用する方法が検討されている。
【0003】
しかし、分散剤として界面活性剤を用いた場合には、表面張力が必要以上に低下し、印字画質の悪化、泡による印字ぬけ等の問題が発生しやすい。また、高分子分散剤を用いた場合には、粘度が高くなり易くインクジェット特性と分散安定性を両立させることは難しい。また、分散剤を使用する方法の共通の問題点として、インク特性を調整する為に加える溶媒や添加剤等と、分散剤との相互作用により、分散が不安定になり易いという問題もある。
【0004】
そこで、分散剤を使用しないで、顔料を親水化処理する方法が検討されてきた。例えば、グラフト化により安定化したカーボンブラックを含む水性分散物(特公平1−49369号)、カーボンブラックと反応性を有する重合体とを反応させてたカーボンブラックを含むインク(特開平1−79278号、特開平6−128517号)、アクリルアミド誘導体をグラフト重合させて表面処理したカーボンブラックを分散させたインク(特開平5−230410号)、酸化処理により1.5mmol/g以上の表面活性水素含有量を有するカーボンブラックを使用する方法(特開平8−3498号、特開平8−31944号)、芳香族基やアルキル基を連結基としてカーボンブラック表面に親水基を導入した親水顔料を用いたインク(USP5571311号)等が提示されている。
【0005】
これらの顔料を親水化処理する方法は、顔料粒子表面の親水性を高め、顔料が水性媒体中に自己分散可能な状態を実現することで、前述の分散剤使用に起因する問題点を解決もしくは改善してきた。これらの顔料を使用することにより、従来インクジェット用の色材として専ら用いられてきた水溶性染料に近いインク特性を得ることが可能となってきている。
しかしながら、一方で分散剤を用いない事や、顔料表面の親水化処理自体(またはこれらの複合)による問題が発生し易くなる。
【0006】
顔料分散の安定性に寄与する効果としては、一般に静電反発効果と、立体効果と、顔料表面の親水性官能基の水和や溶媒和による効果(以下、「水和/溶媒和効果」という。)と、が知られているが、顔料を親水化処理した自己分散型顔料の場合は、顔料分散安定のために立体効果は活用しにくく、静電反発効果と、水和/溶媒和効果とに頼らざるをえないと考えられる。よってインク中の顔料の経時分散安定性を確保するためには、従来とは異なる制御方法の開発が必要となる。
【0007】
また、インクジェット記録用インクは、吐出ノズル先端部分で水分等のインク構成成分の一部が蒸発し、インクの組成、物性が変化する。吐出ノズル先端部分でのインクの増粘、固化トラブルは「ノズル目詰まり」としてよく知られている。同様にインク印字後、紙上においても水分等のインク構成成分の一部が蒸発し、さらにまたインク成分と用紙成分との相互作用によりインク中の顔料分散状態が変化し、画質や定着性に影響を与える。このような水分蒸発等によるインク組成変化は、親水顔料分散安定にとって重要な静電反発効果および水和/溶媒和効果を弱め、顔料凝集を誘発しやすく、種々の問題を引き起こす。例えば、長期間使用しないで吐出ノズル先端が詰まった場合に印字が回復し難い、印字後用紙上に顔料が過剰に残り耐擦過性が劣る等の問題が挙げられる。よって、この点でも自己分散型親水顔料に、ユニークな分散安定性や分散構造制御の工夫が必要となる。
【0008】
また、顔料表面の親水化は、顔料分散の点では有利であっても、顔料の利点である画像の耐水性に関しては不利な方向となる。よって親水度の調整のほかに顔料表面の化学構造選択や前述の如き顔料分散構造の制御が重要である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、親水化処理を施した顔料を色材として含有し、画像の耐水性とインクの保存安定性とを両立させ、さらに紙上でにじみ、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得られ、吐出ノズル先端でのインク乾燥による目詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出安定性が良好であり、紙上においてインクの乾燥性が良いインクジェット記録用インクを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下に示す本発明により上記目的が達成されることを見出した。即ち本発明は、
(1)少なくとも水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、および自己分散可能な顔料を含有するインクジェット記録用インクであって、
(a)前記顔料の分散粒子の数平均粒子径が15〜100nmであり、
(b)前記顔料の分散粒子の体積平均粒子径をmv、数平均粒子径をmnとしたとき、mv/mnが3以下であり、
(c)1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下であり、
(d)表面張力が35〜60mN/mであり、
(e)粘度が1.5〜5.0mPa・sであり、
(f)導電率が0.05〜0.4S/mであり、
(g)pHが6〜11
(h)尿素をインク全重量に対し1〜10wt%を含有し、
(i)エチルアルコール、2−プロパノール、ベンジルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む1価アルコールをインク全重量に対し1〜5wt%含有し、
(j)界面活性剤がアニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であり、(k)界面活性剤の総含有量がインク全重量に対し0.01〜0.2wt%
であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0013】
(2)インクジェット記録用インク中に含まれるCa,Fe,Siが、それぞれ10ppm以下であることを特徴とする(1)に記載のインクジェット記録用インクである。
(3)サーマルインクジェット記録法によるインクジェット記録に用いられることを特徴とする(1)または(2)に記載のインクジェット記録用インクである。
(4)自己分散可能な顔料が、カーボンブラックを親水化することにより得られる顔料であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1に記載のインクジェット記録用インクである。
【0014】
(5)(4)に記載のインクジェット記録用インクであって、
(a)前記顔料の分散粒子の数平均粒子径が15〜60nmであり、
(b)前記顔料の分散粒子の体積平均粒子径をmv、数平均粒子径をmnとしたとき、mv/mnが2.2以下であり、
(c)1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下であり、
(d)表面張力が40〜60mN/mであり、
(e)粘度が1.7〜3.5mPa・sであり、
(f)導電率が0.07〜0.3S/mであり、
(g)pHが6〜9.5
であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0015】
(6)超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーからなる群から選択された少なくとも1種以上の装置による自己分散可能な顔料の分散工程を、少なくとも1工程以上有する製造方法により製造されることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれか1に記載のインクジェット記録用インクである。
(7)遠心分離による粗大粒子除去工程を、少なくとも1工程以上有する製造方法により製造されることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれか1に記載のインクジェット記録用インクである。
(8)(1)ないし(7)のいずれか1に記載のインクを製造する工程であって、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーからなる群から選択された少なくとも1種以上の装置による自己分散可能な顔料の分散工程を、少なくとも1工程以上有することを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法である。
【0016】
(9)(1)ないし(7)のいずれか1に記載のインクを製造する工程であって、遠心分離による粗大粒子除去工程を、少なくとも1工程以上有することを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法である。
(10)記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて被記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、前記インクとして(1)ないし(7)のいずれか1に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法である。
(11)インクジェット記録用インクが被記録媒体上に到達する前、後、同時のいずれかの時、もしくはこれらを組み合わせた複数の時に、インクジェット記録用インクにより画像が形成される位置および/またはその隣接部に、定着剤を含有する1種または複数の水性液体を記録することを特徴とする(10)に記載のインクジェット記録方法である。
【0017】
(12)定着剤が、水溶性ポリマーおよび/またはポリマーエマルションであることを特徴とする(11)に記載のインクジェット記録方法である。
(13)水性液体が、さらに界面活性剤を含有し、表面張力が20〜39mN/mであり、かつ粘度が1.5〜5mPa・sであることを特徴とする(11)または(12)に記載のインクジェット記録方法である。
(14)インクジェット記録用インク中の顔料がアニオン性の親水性官能基を有し、水性液体中にノニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含有し、かつ、下記(a)および/または(b)の定着剤を含有することを特徴とする(11)に記載のインクジェット記録方法である。
(a)カチオン性基を有する水溶性ポリマーまたはポリマーエマルション
(b)無機の多価カチオン
【0018】
水、水溶性有機溶媒、親水性顔料を含むインクジェット記録用インクは、親水性顔料によりインクとしての分散安定性は確保されるが、インクジェット記録法に使用した場合、長期間印字せずに放置すると吐出ノズル先端でインクが固まってしまい、通常の回復操作を行っても回復しない問題が発生し、これは、特に高精細な印字を目的としたインク滴量の少ないインクジェット記録装置で使用される微細な吐出ノズルで顕著である。これはインク組成の変化しない(インク中の水や水溶性有機溶媒が蒸発しない)密閉された状態では、親水性顔料は安定であるが、吐出ノズル先端で水が蒸発した際、固い凝集体を形成し、吸引等の回復操作においても固まった部分を除去できないためと推定される。
【0019】
これに対し、本発明のインクジェット記録用インクは、上記の問題は発生せず、かつ良好な分散安定性を保つことができる。この理由は明らかではないが、おそらくpH調整剤を主とした電解質の添加による分散粒子の電気二重層の適度な制御と、界面活性剤が顔料の分散粒子間のスペーサーとして働き、かつ粗大粒子を一定量以下にすることによる相乗効果により、吐出ノズル先端で水が蒸発した際、緩い凝集体を形成して、強固なノズル閉塞を防止し、吸引等の回復操作において容易に除去可能なためと考えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、および自己分散可能な顔料を含有するインクジェット記録用インクであって、
(a)前記顔料の分散粒子の数平均粒子径が15〜100nmであり、
(b)前記顔料の分散粒子の体積平均粒子径をmv、数平均粒子径をmnとしたとき、mv/mnが3以下であり、
(c)1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下であり、
(d)表面張力が35〜60mN/mであり、
(e)粘度が1.5〜5.0mPa・sであり、
(f)導電率が0.05〜0.4S/mであり、
(g)pHが6〜11
(h)尿素をインク全重量に対し1〜10wt%を含有し、
(i)エチルアルコール、2−プロパノール、ベンジルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む1価アルコールをインク全重量に対し1〜5wt%含有し、
(j)界面活性剤がアニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であり、
(k)界面活性剤の総含有量がインク全重量に対し0.01〜0.5wt%
であることを特徴とする。
以下、インクの構成成分毎、インクの物性毎、インクの製造方法、および、インクが適用されるインクジェット記録方法に分けて説明する。
【0021】
〔自己分散可能な顔料〕
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、使用される顔料は、表面に親水性官能基を有し、所謂高分子分散剤を含まず、自身で溶媒中に分散可能な顔料が用いられる。
本発明において、顔料が「自己分散可能」とは、水中に測定対象となる顔料を添加し、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー、ボールミル等を用いて分散剤なしで分散させ、分散体の初期の顔料濃度が約5%になるように水で希釈し、初期の顔料濃度を測定し、該分散体100gを径40mmのガラスビンに入れて1日静置後、その上層部の顔料濃度を測定し、該上層部の顔料濃度が初期の濃度の98%以上である場合をいう(以下、この試験を「自己分散性試験」という。)。このとき、顔料濃度の測定方法は、特に限定されず、サンプルを乾燥させて固形分を測定する方法や適当な濃度に希釈して透過率から求める方法のいずれでもよく、他に顔料濃度を正確に求める方法があれば、もちろんその方法によってもよい。
【0022】
顔料が有する親水性官能基としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性のいずれの親水性官能基も使用でき、特に、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、りん酸基の単独もしくは2種以上の組み合わせが好ましく、この中でもカルボキシル基の単独、もしくはカルボキシル基を含む2種以上の組み合わせがさらに好ましい。カルボキシル基、スルホン酸基、あるいはりん酸基を有する場合、そのまま遊離酸の状態でも使用できるが、一部又は全てが塩を形成している方が分散性の点で有利であり、好ましい。塩を形成する物質としては、各種の塩基性物質が使用できるが、アルカリ金属、アンモニア、有機オニウム化合物の単独又は2種以上の組み合わせが好ましい。
【0023】
顔料表面の親水性官能基の数は、親水性官能基の種類や、塩を形成している場合はその塩を形成する物質の種類によって異なり一概には言えないが、例えば−COONaの場合は0.8〜4mmol/gが好ましい。
親水性官能基を導入する顔料としては、無機および有機顔料のいずれも使用できる。
【0024】
黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料が好ましく、例えばRaven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000ULTRA、Raven3500、Raven2500ULTRA、Raven2000、Raven1500、Raven1255、Raven1250、Raven1200、Raven1190ULTRA、Raven1170、Raven1080ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven790ULTRA、Raven780ULTRA、Raven760ULTRA(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex35、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することが出来るが、これらに限定されるものではない。また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0025】
シアン色顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigmet Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:1、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.PigmentBlue−15:34、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
マゼンタ色顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red48:1、C.I.Pigment Red 57、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202等があげられが、これらに限定されるものではない。
【0027】
黄色顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1、C.I.Pigment Yellow−2、C.I.Pigment Yellow−3、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−73、C.I.PigmentYellow−74、C.I.Pigment Yellow−75、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等があげられが、これらに限定されるものではない。
【0028】
黒色と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、本発明のために、新たに合成した顔料でも良い。
これらの顔料に対し、顔料の表面に親水性官能基を導入する方法は公知の方法や新たに発明されたいずれの方法も使用できる。例えば、酸化剤例えば硝酸、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、次亜塩素酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、オゾン等による酸化処理、シラン化合物等のカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理等の公知の方法の他、新たに開発した方法も使用でき、またこれらの方法を組み合わせてもよい。
【0029】
得られた親水性顔料は、残余の酸化剤等の不純物、その他の無機不純物や有機不純物を除去し、精製することが望ましい。特に、インク中のカルシウム、鉄、珪素をそれぞれ10ppm以下、好ましくは5ppm以下にすることが望ましい。
なお、本発明において、これらの無機不純物含有量は高周波誘導結合プラズマ発光分析法により測定した。
これら不純物の除去は、例えば、水洗浄や、逆浸透膜、限外ろ過膜、イオン交換法等の方法、活性炭、ゼオライト等による吸着の方法を単独または組み合わせて行うことが出来る。
【0030】
これらの自己分散可能な親水処理顔料は、本発明の為新たに作製されたものの他、市販の親水処理顔料も使用することができる。市販の自己分散可能な親水処理顔料としては例えば、MICROJET BLACK CW−1(オリエント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200(キャボット社製)、CAB−O−JET300(キャボット社製)等が挙げられる。
【0031】
以上の自己分散可能な親水処理顔料は、「(c)インク1リットル当たりに顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下」との本発明の要件を満足させる為、水分散体の状態で予め分散処理、遠心分離、濾過等の方法により粒子径0.5μm以上の粒子の数を減らしておくことが好ましい。
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる、上記自己分散可能な顔料は、インク全重量に対し0.5〜20wt%、好ましくは2〜10wt%の範囲で使用される。顔料の含有量が多くなるとノズル先端で目詰まりし易く、また画像の耐擦過性も悪化するため好ましくない。
【0032】
インク中の顔料の分散粒子の数平均粒子径は、15〜100nm、好ましくは15〜70nm、さらに好ましくは15〜60nmの範囲に調整される。数平均粒子径が15nm未満ではインクの粘度が高くなりやすく、目詰まりが発生しやすくなる。一方、100nmを超えると、インクの保存安定性が低下しやすい。特に、自己分散可能な顔料として、親水化処理したカーボンブラックを用いた場合には、インクの保存性の点で、15〜60nmの範囲に調整されることが望ましい。
【0033】
また、インク中の顔料の体積平均粒子径mvと数平均粒子径mnとの比で表わされる粒度分布mv/mnは、3以下であることが好ましく、より好ましくは2.2以下である。粒度分布が広くなると、浸透速度が遅くなったり、耐擦過性が低下しやすい。特に、自己分散可能な顔料として、親水化処理したカーボンブラックを用いた場合には、画像の耐擦過性の点で、2.2以下とすることが望ましい。なお、粒度分布mv/mnは、単分散においては1となり、理想的にはこれに近づくことが望まれるが、現実には粒度分布mv/mn=1の単分散状態とすることは困難であり、1.1以上の値となる。
【0034】
本発明において、顔料の分散粒子の粒子径は、マイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds & Northrup社製)を用い、測定対象となる顔料が分散されたインク(以下、「被測定インク」という。)を希釈しないで測定した。なお、測定時に入力するパラメーターとして、粘度には被測定インクの粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を、それぞれ入力した。後者の密度は、例えばカーボンブラックを親水化した顔料の場合は、1.8g/cm2 とした。
【0035】
インク1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数は、7.5×1010個以下、好ましくは5×1010個以下に調整される。0.5μm以上の粒子が、7.5×1010個を超えると印字の信頼性が低下しやすい。
【0036】
本発明において、0.5μm以上の粒子の個数は、Accusizer TM770 Optical Particle Sizer(ParticleSizing Systems社製)を測定装置として用いた。この装置は、測定部を通過する粒子を光学的手法を用いて検出するものである。測定は、被測定インクの2μlを測定セル中に入れ、上記測定装置の所定の測定法に従って行い、1リットル中の値に換算した値を、本発明において用いている。
【0037】
〔界面活性剤〕
本発明のインクジェット記録用インクには、界面活性剤が含まれる。ここで用いる界面活性剤は、いわゆる顔料の分散剤として用いるものではなく、自己分散性の顔料の分散安定性を補助する効果や、インクを被記録媒体としての紙中に浸透させる効果等を企図する為のものである。従って、その添加量は分散剤として添加すべき量に比べ大幅に少なくでき、印字画質の悪化、泡による印字ぬけ等の問題は生じない。
本発明のインクジェット記録用インクに使用できる界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、本発明においては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を用いる。
【0038】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0039】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが挙げられる。
【0040】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0041】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤のHLBは、溶解安定性等を考慮すると7〜20の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる界面活性剤の添加量は、インク全重量に対し合計で、0.01〜0.2wt%である。界面活性剤の添加量が0.01wt%未満では、本発明の効果が得られにくい。
【0043】
〔水〕
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水は、一般の水が全て用いられるが、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが好ましい。
【0044】
〔水溶性有機溶媒〕
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒、あるいは、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルオキシド等の含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、グルコース及びその誘導体等の糖類や糖アルコール類等を用いることが出来る。
【0045】
これらの水溶性有機溶媒は単独で用いても、2種以上混合してもよい。水溶性有機溶媒の含有量は、インク全重量に対し、好ましくは1〜60wt%、より好ましくは5〜40wt%で使用される。
【0046】
〔その他のインク成分〕
本発明のインクジェット記録用インクには、印字後の記録紙上でのインクの乾燥性の点で、一価アルコールを添加することが好ましい。本発明に用いることができる一価アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールであり、これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。これら一価アルコールの含有量は、インク全重量の1〜5wt%であり、好ましくは2〜4wt%である。含有量が1wt%未満では画像の乾燥時間が長くなる場合があり、5wt%を超えると画像滲みが増え、濃度が低下しやすい。
【0047】
本発明のインクジェット記録用インクには、吐出ノズルの目詰まり防止のために、尿素を添加する。尿素の含有量は、インクの1〜10wt%、好ましくは3〜8wt%で使用される。含有量が1wt%未満では目詰まりし易くなり、10wt%を超えると画像滲みが増え、濃度が低下しやすい。
【0048】
インクのpHを調整するためには、pH調整剤が用いられる。該pH調整剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、乳酸等の酸や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア等の塩基、およびリン酸塩、シュウ酸塩、アミン塩やグッドバッファー等のpH緩衝剤が好ましい。
【0049】
その他、インク特性制御のためポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、アセトアミド等を用いることができる。
その他必要に応じ、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤さらに水溶性染料、分散染料、油溶性染料等も添加することができる。
【0050】
〔インクの物性〕
(d)表面張力
本発明のインクジェット記録用インクの表面張力としては、35〜60mN/m、好ましくは、40〜50mN/mの範囲に調整される。表面張力がこの範囲より低いと、普通紙に印字した場合、にじみが発生し易くなり、高解像の画像が得られない。一方、表面張力がこの範囲より高いと、浸透が遅くなり、画像の乾燥時間が長くなるので問題となる。特に、自己分散可能な顔料として、カーボンブラックを用いた場合には、にじみの発生がなく、高解像度の画像が得られるというの点で、40〜60mN/mの範囲とすることが望ましい。
本発明において表面張力は、23℃、55%RHの環境において、ウイルヘルミー型表面張力計を用いて測定した。
【0051】
(e)粘度
本発明のインクジェット記録用インクの粘度としては、1.5〜5.0mPa・s、好ましくは1.5〜3.5mPa・sの範囲に調整される。粘度が1.5mPa・sよりも小さい場合には、インクの保存安定性が低下する。一方、粘度が5.0mPa・sより大きい場合には、吐出力が低下し、吐出ノズルが目詰まりした場合に回復し難い等の問題が生じる。特に、自己分散可能な顔料として、親水化処理したカーボンブラックを用いた場合には、インクの吐出性の点で、1.7〜3.5mPa・sの範囲とすることが望ましい。
本発明において粘度は、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて測定した。測定は、被測定インクを測定容器に入れ、所定の方法で装置に装着して行った。測定温度は23℃、せん断速度は1400s-1で測定した。
【0052】
(f)導電率
本発明のインクジェット記録用インクの導電率は、0.05〜0.4S/m、好ましくは0.07〜0.3S/mの範囲に調整される。導電率が0.05S/m未満では、印字を停止して長期間放置し場合に吐出が回復しにくくなり、また0.4S/mを超えると、インクの保存安定性が劣化し易い。特に、自己分散可能な顔料として、親水化処理したカーボンブラックを用いた場合には、長期放置後の吐出回復性の点で、0.07〜0.3S/mの範囲とすることが望ましい。本発明において導伝率は、23℃で、導伝率計AOL−40−3302(DKK社製)を測定装置として用いて測定した。
【0053】
(g)pH
本発明のインクジェット記録用インクのpHは、6.0〜11.0、好ましくは7.5から9.0の範囲に調整される。pHが6.0未満では、目詰まりしやすく、11.0を超えるとヘッド構成部材を腐食あるいは溶解し易くなる。特に、自己分散可能な顔料として、親水化処理したカーボンブラックを用いた場合には、ノズルの目詰まり性の点で、6.0〜9.5の範囲とすることが望ましい。
本発明において、pHは、23℃の環境において、ガラスpH電極を用いて測定した。
【0054】
〔インクの製造方法〕
本発明のインクジェット記録用インクは、既述の各成分を混合し、溶解および分散させることにより得ることができる。特に、前記自己分散可能な顔料を本発明における所定の分散粒子の粒径に調整する為に、顔料を水性媒体に分散する工程を少なくとも1工程以上設けることが好ましい。
【0055】
顔料を水性媒体に分散する工程では、各種の攪拌、分散装置が使用できるが、ガラス、セラミック、金属等のボール或いはビーズ等のいわゆる分散メディアを使用する分散機を使用すると、顔料の粉砕、分散工程で分散メディアおよび分散容器の摩耗により、無機不純物が顔料分散液やインク中に大量に混入する場合が多い。したがって、分散メディアを用いない分散装置の使用が望ましい。特に超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーからなる群から選択された少なくとも1種以上の装置によって分散するのが好ましい。超音波ホモジナイザーで分散する際、真空引き、加温、市販の脱泡/脱気装置等により脱泡、脱気を行ってから分散するのが望ましい。分散メディアを使用する分散装置を使った場合は、必要に応じ、混入した無機不純物の除去を行う。
【0056】
インクの1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数を前記所定の値にする為に、分散後、遠心分離による粗大粒子の除去工程を少なくとも1工程以上設けることが好ましい。
必要に応じさらにろ過等により粗大粒子を除去した後に、所定の溶媒、添加剤等を加えて撹拌混合後、再びろ過を行い、インクとする、あるいは、親水化処理した顔料の水分散体と所定の溶媒、添加剤等を加えて撹拌混合後分散処理、遠心分離、ろ過等により粗大粒子を除去して、インクとする。
【0057】
〔インクジェット記録装置〕
本発明のインクジェット記録用インクは、記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて被記録媒体上に画像を形成する、いわゆる通常のインクジェット記録装置においては勿論のこと、インクの被記録媒体への定着を補助するためのヒーター等を搭載した記録装置や、中間転写機構を搭載し、中間転写体にインクを印字後、紙等の被記録媒体に転写する記録装置において用いることもできる。
【0058】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインクジェット記録用インクは、記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて被記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法に適用される。また、インクジェット記録方法に用いられる記録方法としては、静電誘引力を利用してインクを吐出させるいわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させるいわゆる圧力パルス方式、およびインクを加熱して気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインク液滴を形成するいわゆるサーマルインクジェット方式等を挙げることができる。これらの中でも特にフルカラー画像を小型で安価に提供できる点で、サーマルインクジェット方式が好ましい。
【0059】
本発明のインクジェット記録用インクを用いて、上記インクジェット記録方法により記録をする際、本発明のインクジェット記録用インク単独で画像を形成することももちろんできるが、インクにより画像が形成される位置および/またはその隣接部に、1種または複数の水性液体を記録することも可能で、インクが被記録媒体上に到達する前、後、同時のいずれかの時、もしくはこれらを組み合わせた複数の時に、前記水性液体を記録することができる。
【0060】
隣接または重ねて印字する前記水性液体には、色材を含んでいても構わないが、定着剤を含有することが好ましい。定着剤としては、各種の水溶性ポリマーおよび/またはポリマーエマルションが使用でき、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン等が好ましい。インク中に含まれる顔料の親水性官能基と結合する官能基を有するポリマーであることが、さらに好ましい。インク中の顔料がアニオン性の親水性官能基を有し、かつ、定着剤がカチオン性基を有する水溶性ポリマーである組み合わせは、特に好ましい。
【0061】
カチオン性基を有する水溶性ポリマーは、カチオン性の官能基を有するモノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等を少なくとも含有する共重合体または単独重合体やポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリアミド類等が好ましい。
【0062】
またインク中の顔料が有する親水性官能基が少なくともアニオン性基からなる場合、定着剤として無機の多価カチオンを含有することも好ましい。かかる無機の多価カチオンとしては、Ca2+、Mg2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+等が挙げられる。
【0063】
また、水性液体には界面活性剤を含有し、表面張力が20〜39mN/m、粘度が1.5〜5mPa・sとなるように調整することが画像の乾燥性の点で好ましい。かかる界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤の具体例としては、インクジェット記録用インクの項で説明したものと同様である。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
〔自己分散可能な親水性顔料分散体の製造例〕
製造例1
CAB−O−JET300(キャボット社製)を超音波ホモジナイザー(出力300W)で30分間処理し、遠心分離(7,000rpm×20分間)を行った。遠心分離した顔料分散体を5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過して親水性顔料分散体A(顔料固形分14%)を得た。得られた親水性顔料分散体Aについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0065】
製造例2
CAB−O−JET300(キャボット社製)を高圧ホモジナイザーM110−E/H(マイクロフルイデック社製)で1,500kg/cm2 の圧力下で5パス処理した後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過し親水性顔料分散体B(顔料固形分16.3%)を得た。得られた親水性顔料分散体Bについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0066】
製造例3
CAB−O−JET300(キャボット社製)を遠心分離処理(7,000rpm×20分間)して得られた顔料分散体を5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過して親水性顔料分散体C(顔料固形分13.5%)を得た。得られた親水性顔料分散体Cについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0067】
製造例4
MICROJET BLACK CW−1(オリエント化学工業(株)製)を遠心分離(5,000rpm×20分間)した後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過し親水性顔料分散体D(顔料固形分18.7%)を得た。得られた親水性顔料分散体Dについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0068】
〔実施例1、参考例1〜4、および比較例1〜6〕
実施例1
・親水性顔料分散体A 28.6 重量部
・ジエチレングリコール 15 重量部
・2−プロパノール 3 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=30モル) 0.1 重量部
・尿素 6 重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.6 重量部
・NaOH 0.12重量部
・純水 46.58重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し実施例1のインクジェット記録用インクを得た。
【0069】
参考例1
・親水性顔料分散体A 28.6 重量部
・ジエチレングリコール 15 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=30モル) 0.03重量部
・NaOH 0.07重量部
・純水 56.3 重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し参考例1のインクジェット記録用インクを得た。
【0070】
参考例2
・親水性顔料分散体B 24.5 重量部
・ジエチレングリコール 15 重量部
・エチルアルコール 3 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=15モル) 0.002重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.3 重量部
・NaOH 0.12 重量部
・純水 57.08 重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し参考例2のインクジェット記録用インクを得た。
【0071】
参考例3
・親水性顔料分散体C 29.6 重量部
・ジエチレングリコール 15 重量部
・アセチレングリコールのオキシエチレン付加物 0.1 重量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.1 重量部
・尿素 6 重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.3 重量部
・NaOH 0.12重量部
・純水 48.78重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し参考例3のインクジェット記録用インクを得た。
【0072】
参考例4
・親水性顔料分散体D 26.7 重量部
・ジエチレングリコール 10 重量部
・グリセリン 5 重量部
・トリエチレングリコール 5 重量部
・2−プロパノール 3 重量部
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマー 0.3 重量部
・尿素 6 重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.6 重量部
・NaOH 0.12重量部
・純水 43.28重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し参考例4のインクジェット記録用インクを得た。
【0073】
比較例1
CAB−O−JET300(キャボット社製)を10μmのメンブランフィルターでろ過し親水性顔料分散体(顔料固形分16%)を得た。得られた親水性顔料分散体について、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0074】
上記組成成分を混合後、5μmのメンブランフィルターでろ過し比較例1のインクジェット記録用インクを得た。
【0075】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例2のインクジェット記録用インクを得た。
【0076】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例3のインクジェット記録用インクを得た。
【0077】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例4のインクジェット記録用インクを得た。
【0078】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例5のインクジェット記録用インクを得た。
【0079】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例6のインクジェット記録用インクを得た。
【0080】
〔物性の測定〕
上記実施例1、参考例1〜4および比較例1〜6の各インクジェット記録用インクについて、以下に示す各物性の測定を実施した。なお、各物性の測定方法は既述の通りである。得られた結果を表1に示す。
(1)各インクの表面張力(mN/m)
(2)各インクの粘度(mPa・s)
(3)各インク導電率(S/m)
(4)各インクpH
(5)数平均粒子径および体積平均粒子径/数平均粒子径
(6)0.5μm以上の粒子数(個/リットル)
(7)インク中のカルシウム(Ca)、鉄(Fe)、珪素(Si)の含有量(ppm)
【0081】
【表1】
【0082】
〔各種性能試験〕
上記実施例1、参考例1〜4および比較例1〜6の各インクジェット記録用インクについて、以下に示す各種性能評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0083】
(8)分散安定性試験
上記インクを50gを蓋のついたガラス管に密閉し、70℃雰囲気で4時間放置、−20℃雰囲気で4時間放置を1サイクルとして、計4サイクルの加速テストを行った。テスト前と後のサンプルを5g採り、1μmフィルターを用いて有効濾過径が2.5cm2 のガラスホルダーを用いて減圧濾過を行い、サンプル全量を濾過するのに要した時間を測定し、以下の基準で評価した。
○:加速テスト後のフィルター通過時間の増加が20%未満
△:加速テスト後のフィルター通過時間の増加が20%以上50%未満
×:加速テスト後のフィルター通過時間の増加が50%以上
【0084】
(9)目詰まり性試験
試作したインクジェット印字装置(熱インクジェット方式、600dpi、ドロップ滴:約25ng)を用いて、吐出停止後キャップしない状態で23℃、55%RHの環境において放置し、吐出を再開した時に画像乱れを生じるまでの放置時間を測定し、以下の基準で評価した。
○:60秒以上
△:30秒以上60秒未満
×:30秒未満
【0085】
(10)目詰まり回復性試験
上記の印字装置を用いて、正常に印字できることを確認後1ヶ月間23℃、55%RHの環境にキャップしない状態で放置し、バキュームによる回復操作を正常に印字できるまで繰り返して、回数を記録し、以下の基準で評価した。
◎:1回以下で回復
○:2〜3回で回復
△:4〜5回で回復
×:5回で回復しない
【0086】
(11)コゲーション試験
上記の印字装置と同様のプリンターにより、1ノズル当たり1×108 パルスを連続噴射し、FX−L紙(富士ゼロックス社製)に対しドット径の変化を調べ、以下の基準で評価した。
◎:ドット径変動が、初期に対し2.5%未満
○:ドット径変動が、初期に対し2.5%以上5%未満
△:ドット径変動が、初期に対し5%以上10%未満
×:ドット径変動が、初期に対し10%以上
【0087】
(12)画質評価試験
FX−L紙(富士ゼロックス社製)、4024紙(ゼロックス社製)に対し、上記印字装置を用いで印字テストを行い、以下の基準で官能評価を実施した。
◎:滲みなし
○:わずかに滲みが認められるが許容範囲
△:滲みあり
×:多くの部分でヒゲ状の滲みあり
【0088】
(13)耐擦過性試験
上記の印字テストにおいてベタ印字部を印字してから1日後に指で擦り、以下の基準で官能評価を実施した。
◎:擦り跡が識別できない
○:わずかに擦り跡が認められるが許容範囲
△:擦り跡あり
×:擦り跡が激しい
【0089】
(14)乾燥性評価試験
上記の印字テストと同様にベタ印字部をFX−L紙(富士ゼロックス社製)に印字して、印字画像の上からFX−L紙(富士ゼロックス社製)を重ね、さらにその上から100g/cm2 の荷重をかけ、印字した時から、重ねたFX−L紙にインクが転写されなくなるまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。
○:10s未満
△:10s以上20s未満
×:20s以上
【0090】
【表2】
【0091】
〔実施例2〜6、参考例5、および、比較例7〜8〕
実施例2
CAB−O−JET300(キャボット社製)をビーズミル(メディアは0.5mmのガラスビーズ)で1時間分散処理し、メディアを除去した後、遠心分離(7,000rpm×20分間)を行った。遠心分離した顔料分散体を5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過して親水性顔料分散体E(顔料固形分13.5%)を得た。得られた親水性顔料分散体Eについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
実施例1の組成に対し、前記顔料分散体Eを29.6重量部、純水を45.58重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録用インクを得た。
【0092】
実施例3
実施例2において、親水性顔料分散体をさらに逆浸透膜で処理した以外は、実施例2と同様にして、実施例3のインクジェット記録用インクを得た。
【0093】
実施例4
・CAB−O−JET300(キャボット社製) 24.2 重量部
・ジエチレングリコール 10 重量部
・スルホラン 5 重量部
・2−プロパノール 3 重量部
・ベンジルアルコール 2.5 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=30モル) 0.1 重量部
・尿素 10 重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.6 重量部
・NaOH 0.12重量部
・純水 44.48重量部
【0094】
上記組成成分を混合後、超音波ホモジナイザー(出力300W)で30分間処理し、1μmのメンブランフィルターでろ過し実施例4のインクジェット記録用インクを得た。なお、CAB−O−JET300(キャボット社製)について、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0095】
実施例5
CAB−O−JET200(キャボット社製)を超音波ホモジナイザー(出力300W)で分散処理し、遠心分離(6,000rpm×20分間)した後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過し親水性顔料分散体F(顔料固形分18.4%)を得た。得られた親水性顔料分散体Fについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の100%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0096】
・上記親水性顔料水分散体F 24.46重量部
・チオジエタノール 15 重量部
・2−プロパノール 3 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=30モル) 0.1 重量部
・尿素 10 重量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ
エタンスルホン酸 0.3 重量部
・NaOH 0.08重量部
・純水 47.06重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し実施例5のインクジェット記録用インクを得た。
【0097】
実施例6
酸性カーボンブラック(商品名:Raven5750、コロンビアンカーボン社製、一次粒子径12nm、pH2.1)を次亜塩素酸ナトリウムで処理し、逆浸透膜で脱塩後、得られた水分散体を2NのNaOHでpH8.5に調整し、超音波ホモジナイザー(出力300W)で分散処理した後8,000rpmで30分間遠心分離し、さらに1μmのメンブランフィルターでろ過することにより親水性顔料水分散体G(顔料固形分8.5%)を得た。得られた親水性顔料分散体Gについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の99.2%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0098】
・上記親水性顔料水分散体G 56.5 重量部
・ジエチレングリコール 15 重量部
・2−プロパノール 3 重量部
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(オキシエチレン=30モル) 0.1 重量部
・NaOH 0.05重量部
・尿素 1.5 重量部
・純水 23.85重量部
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し実施例6のインクジェット記録用インクを得た。
【0099】
比較例7
実施例6の酸性カーボンブラック10重量部と,スチレン−アクリル酸共重合体Na塩(重量平均分子量約1万)2.5重量部と、純水87.5重量部と、を混合して攪拌し、超音波ホモジナイザー(出力300W)で分散処理した後8,000rpmで30分間遠心分離することにより顔料水分散体X(顔料固形分7.9%)を得た。使用したに酸性カーボンブラックついて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の0%であり、自己分散可能な顔料ではないことが確認された。
実施例10の組成に対し、前記顔料分散体Xを60.8重量部、純水を19.55重量部に変更した以外は、実施例10と同様にして、比較例7のインクジェット記録用インクを得た。
【0100】
参考例5
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue−15:1)表面にアクリル酸モノマーを重合させたグラフト化処理顔料をNaOH水溶液でNa塩とした後、超音波ホモジナイザーで分散処理し、遠心分離(7,000rpm×20分間)した後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、さらに2μmのメンブランフィルターでろ過し親水性顔料分散体H(固形分7.9%)を得た。得られた親水性顔料分散体Hについて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の98.2%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0101】
【0102】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し参考例5のインクジェット記録用インクを得た。
【0103】
比較例8
実施例6において、遠心分離の条件を5,000r.p.m.で20分間に変更したこと以外は、実施例10と同様にして親水性顔料分散体I(顔料固形分8.9%)を得た。得られた親水性顔料分散体Iついて、顔料固形分が5%になるように水で希釈し、前述の自己分散性試験により、自己分散可能か否かを測定したところ、試験後の顔料濃度が初期の濃度の99%であり、自己分散可能な顔料であることが確認された。
【0104】
上記組成成分を混合後、1μmのメンブランフィルターでろ過し比較例8のインクジェット記録用インクを得た。
【0105】
〔物性の測定、および、各種性能試験〕
上記実施例2〜6、参考例5および比較例7〜8の各インクジェット記録用インクについて、前記実施例1〜5および比較例1〜6において行ったと同様にして、(1)〜(7)の物性の測定、および、(8)〜(14)の各種性能試験を行った。結果を下記表3および表4に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【発明の効果】
本発明により、分散安定性が良く、長時間放置してもノズル閉塞が発生せず、種々の紙上においても極めて定着性が良好で、熱インクジェット方式に適用した場合のコゲーションの発生もないインクジェット記録用インクを提供できる。
Claims (14)
- 少なくとも水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、および自己分散可能な顔料を含有するインクジェット記録用インクであって、
(a)前記顔料の分散粒子の数平均粒子径が15〜100nmであり、
(b)前記顔料の分散粒子の体積平均粒子径をmv、数平均粒子径をmnとしたとき、mv/mnが3以下であり、
(c)1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下であり、
(d)表面張力が35〜60mN/mであり、
(e)粘度が1.5〜5.0mPa・sであり、
(f)導電率が0.05〜0.4S/mであり、
(g)pHが6〜11
(h)尿素をインク全重量に対し1〜10wt%を含有し、
(i)エチルアルコール、2−プロパノール、ベンジルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む1価アルコールをインク全重量に対し1〜5wt%含有し、
(j)界面活性剤がアニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であり、
(k)界面活性剤の総含有量がインク全重量に対し0.01〜0.2wt%
であることを特徴とするインクジェット記録用インク。 - インクジェット記録用インク中に含まれるCa,Fe,Siが、それぞれ10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- サーマルインクジェット記録法によるインクジェット記録に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
- 自己分散可能な顔料が、カーボンブラックを親水化することにより得られる顔料であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載のインクジェット記録用インク。
- 請求項4に記載のインクジェット記録用インクであって、
(a)前記顔料の分散粒子の数平均粒子径が15〜60nmであり、
(b)前記顔料の分散粒子の体積平均粒子径をmv、数平均粒子径をmnとしたとき、mv/mnが2.2以下であり、
(c)1リットル当たりに含まれる前記顔料の分散粒子のうち、粒子径0.5μm以上の個数が7.5×1010個以下であり、
(d)表面張力が40〜60mN/mであり、
(e)粘度が1.7〜3.5mPa・sであり、
(f)導電率が0.07〜0.3S/mであり、
(g)pHが6〜9.5
であることを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーからなる群から選択された少なくとも1種以上の装置による自己分散可能な顔料の分散工程を、少なくとも1工程以上有する製造方法により製造されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1に記載のインクジェット記録用インク。
- 遠心分離による粗大粒子除去工程を、少なくとも1工程以上有する製造方法により製造されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載のインクジェット記録用インク。
- 請求項1ないし7のいずれか1に記載のインクを製造する工程であって、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーからなる群から選択された少なくとも1種以上の装置による自己分散可能な顔料の分散工程を、少なくとも1工程以上有することを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1に記載のインクを製造する工程であって、遠心分離による粗大粒子除去工程を、少なくとも1工程以上有することを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法。
- 記録信号に応じてインクの液滴をオリフィスから吐出させて被記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、前記インクとして請求項1ないし7のいずれか1に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクジェット記録用インクが被記録媒体上に到達する前、後、同時のいずれかの時、もしくはこれらを組み合わせた複数の時に、インクジェット記録用インクにより画像が形成される位置および/またはその隣接部に、定着剤を含有する1種または複数の水性液体を記録することを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
- 定着剤が、水溶性ポリマーおよび/またはポリマーエマルションであることを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録方法。
- 水性液体が、さらに界面活性剤を含有し、表面張力が20〜39mN/mであり、かつ粘度が1.5〜5mPa・sであることを特徴とする請求項11または12に記載のインクジェット記録方法。
- インクジェット記録用インク中の顔料がアニオン性の親水性官能基を有し、水性液体中にノニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含有し、かつ、下記(a)および/または(b)の定着剤を含有することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録方法。
(a)カチオン性基を有する水溶性ポリマーまたはポリマーエマルション
(b)無機の多価カチオン
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