JP4048270B2 - MgB2超伝導膜状体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、リニアモーターカー、加速器、医療機器用高磁界マグネット、加速器用マグネット、電力貯蔵(SMES)および各種の電力システム等の幅広い分野への応用に有用なMgB2超伝導体に関するものであり、さらに詳しくは、高磁界においても臨界電流が低下しない磁界特性を有するMgB2の微結晶からなる膜状超伝導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
超伝導体に関するこれまでの技術は、大きく分けて銅の酸化物からなる銅酸化物超伝導体と銅酸化物以外からなる非銅酸化物超伝導体に大別できる。銅酸化物超伝導体は銅と酸素からなる二次元面の構造を有しており超伝導転移温度(Tc)は非銅酸化物超伝導体に比べて高いが、この銅酸化物超伝導体はいわゆるセラミックスであるため、導線に加工することはもちろん、簡単な成形・加工も難しく、これまで銅酸化物からなる超伝導体を製品化することはできなかった。
【0003】
一方、非銅酸化物超伝導体としては複数の金属元素だけからなる金属間化合物と銅を含まない金属の酸化物からなる2種類がある。非銅酸化物超伝導体の中でも金属間化合物からなる超伝導体は,それ自体が金属であるため合成・成形・加工が容易である。このように、銅酸化物超伝導体および非銅酸化物超伝導体はそれぞれが一長一短を有しているが、製品化の観点から考えた場合、合成・成形・加工が容易である金属系超伝導体の方が好ましいと考えられており、近年種々の金属を組み合わせて金属系超伝導体を製造する試みがなされてきた。
【0004】
その結果、Mg(マグネシウム)で形成される六角形の面とB(硼素)で形成される六角形の面が積層された構造を持つMgB2(二硼化マグネシウム)が金属系超伝導体としては高い超伝導転移温度を有するものであることがわかってきた。最近開発されたこのMgB2(2硼化マグネシウム)は金属系超伝導体としては最高の超伝導転移温度(Tc=39K)を持っているだけでなく、原料が安価で、かつ合成や成形・加工が比較的容易である等、産業応用上多くの長所を具備している。そのため、現在各国で本格的な実用化を視野に入れた開発競争が始められている。これまでに明らかにされているMgB2を原料とする超伝導体の製造方法としては、(イ)MgB2,Mg,B粉末を調合したものを、そのまま線状にするか、あるいは、MgB2,Mg,B粉末を調合したものをステンレス管等に充填後線引き、圧延加工する、いわゆるPIT(Powder In Tube)法と称される方法で線体に成形したものを熱処理する方法と(ロ)ボロン繊維もしくはボロン膜を基体上に作成した後それをMg蒸気中高温でMgとボロンを拡散反応させMgB2膜に変換する2種類の方法があった。しかしながら,これらの製造方法で得られた超伝導体は、何れも高い超伝導転移温度(Tc)は得られるものの、結晶粒同士の結合が不充分だったり、粒が粗大化し易くなるため高磁界での臨界電流(Jc)が劣るという問題があった。例えば、前記(イ)のPIT(Powder In Tube)法で製造した場合は無磁場では10万A/cm2台の値が予測されているが、温度が5K(絶対温度)で印加磁場を5T(テラ)にすると1000A/cm2に低下する。また上記(ロ)の場合も温度が5K(絶対温度)で印加磁場を5T(テラ)にすると1000A/cm2となり磁界電流(Jc)特性は印加磁場の上昇とともに著しく劣化していた。
【0005】
MgB2を原料とした単結晶や線材の上部臨界磁界(Hc2)や高磁界での臨界電流(Jc)特性を測定した文献が最近次々に発表されているが、フレキシブルな導体状のもので従来の超伝導体の高磁界特性を上回る物性を示すものは現在現れていない。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの問題を解消し、超伝導転移温度が高いだけでなく、高磁界での臨界電流が優れた特性を有するMgB2超伝導体とその製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するためのものとして、第1には金属基材表面に、Mg−Bと金属基材表面との化学反応を抑制するためにバッファー層を設け、そのバッファー層の表面にMg過剰のMg−Bの非晶質前駆体膜を形成した後に、該前駆体膜を不活性気体の大気圧中で、80〜150℃/minの昇温速度での加熱、10〜30分間の加熱保持、50〜150℃/minの冷却速度での冷却を経てMg−B非晶質前駆体からMgB2の超伝導膜状体を形成させることを特徴とするMgB2超伝導膜状体の製造方法を提供する。そして、第2には、上記方法において、金属基材表面にMg過剰のMg-Bの非結晶質前駆体膜を形成するに先立って、ZrO 2 、Y 2 O 3 、YSZの群から選ばれる少なくとも1種からなるバッファー層を設ける製造方法を提供するものであり、また、第3には、上記方法において、金属基材がNi基合金であることを特徴とする製造方法を提供し、第4には、金属基材表面に、ZrO 2 、Y 2 O 3 、YSZの群から選ばれる少なくとも1種からなるバッファー層が設けられ、そのバッファー層の表面にMgB 2 の超伝導膜状体が形成されていることを特徴とするMgB 2 超伝導膜状体を提供し、第5には、上記のMaB 2 超伝導膜状体において、金属基材が、Ni基合金であることを特徴とするMaB 2 超伝導膜状体を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の特徴は上記のとおり金属基体上にMgB2を膜状化することで高磁界特性を飛躍的に向上させるものであるが、この出願の発明を以下に詳細に説明する。この出願の発明の概要はNi基合金の金属基体上に、Mgを過剰に含有するMg-Bの非晶質前駆体をレーザー蒸着等で形成し、この前駆体を被覆した金属基体を酸素フリーでアルゴン等の不活性気体の大気圧中で80〜150℃/minの昇温速度で350〜650℃まで加熱する。そして、加熱状態を10〜30分程度保持した後にたとえば50〜150℃/min程度で急速冷却をすることによって金属基体上にMgB2のナノサイズ微結晶を晶出させるものである。この加熱によって余剰のMgが揮発すると同時にMgB2の分解揮発も進行する。その競合状態でMgB2が生成するため350〜650℃の温度範囲にすることが必要である。なお、本願発明のMgB2ナノサイズ微結晶の製造方法においては、雰囲気中からも、また、原料中からも完全に酸素を除去することは不可能であり、この出願の発明における酸素フリーの状態とは酸素が完全に除去された状態を意味するのではなく、MgB2ナノサイズ微結晶に酸素がMgやBと結合して生じた微細な析出物が細かく分散した超伝導体が生成される状態が含まれたものであることを意味する。
【0009】
また、この出願の発明は金属基体上にMgを過剰に含有するMg-Bの非晶質前駆体をレーザー蒸着等で形成する前に予めバッファー層を形成させる。このバッファ−層を配設する理由としては、金属基体上にMg-Bの非晶質前駆体を形成後の熱処理を行うに際し熱処理条件の適正な幅を広げるためである。このバッファー層を設ける第2の発明の態様は、Ni基合金の金属基体上に、Mg-Bと反応しないZrO2,Y2O3,YSZのバッファー層を設けた後にMgを過剰に含有するMg-Bの非晶質前駆体をレーザー蒸着等で形成するものである。そして、該前駆体膜を被覆した金属基体は第1の発明と同じく、酸素フリーのアルゴン等の不活性気体の大気圧中で、昇温速度を80〜150℃/minで350〜650℃の比較的低温に加熱して、10〜30程度加熱保持した後に急速冷却をすることによって大気圧で急速加熱、短時間加熱保持、急速冷却を経て金属基体上にMgB2のナノサイズ微結晶を晶出させるものである。
【0010】
【実施例】
以下,実施例によってこの出願の発明を詳細に説明する。なお、下記の実施例1に記載されるものは、この発明の好ましい態様を示すものであるが、下記の実施例に限定されないことは言うまでもない。
<実施例1>ハステロイテープ(Ni基耐熱合金)の30mm×4.0mm×0.3mm上にスパッタリングでYSZを約1μmバッファー層として被覆した。その上にMg過剰のMgB2ターゲットを使ったレーザー蒸着法(PLD)を用い室温かつ減圧Arガス雰囲気中でMg過剰Mg-B非晶質前駆体膜を形成した。その後、不純物としてO2、H2Oを含まないArガス1気圧下で熱処理を行った。熱処理は約100℃/minで昇温して580℃に20分保持後急冷した。その結果、黒色ないし青黒色をした約0.5μmの光沢のあるMgB2超伝導導体が得られた。膜は24K(絶対温度)で零抵抗に転移した。得られた導体(1)の高磁界下での輸送法による高磁界での臨界電流(Jc)特性の結果をNb-Ti実用線材(2)、ステンレステープ(3)、キュプロニッケルコア線(4)、硼素ファイバー法で成形したものを5Kで測定したもの(5)、キュプロニッケルテープ(6)比較したのが図1である。図1から明らかなように、他の方法で成形したものは印加磁場が高まるに従って臨界電流が低下しているのに対して、この発明の方法で得られた超伝導体(1)は、10T(テラ)の高磁界でも105A/cm2台の臨界電流(Jc)が流れている。これは従来のMgB2線材に比較して顕著な高磁界での臨界電流(Jc)特性を示しているだけでなく、現在最も多く使用されているNb-Ti線材(2)が8T(テラ)から臨界電流が急激に低下しているのに比較しても高磁界特性に優れたものであることがわかる。
【0011】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明のMgB2超伝導膜状体の場合には、高磁界特性がよく、MgB2を構成するMg(マグネシウム)およびB(硼素)が資源豊富で廉価なため、従来の超伝導体の材料に比較して、製造コストが大幅に低減できる。また、冷凍機冷却のできる20Kで使用できる可能性があり冷却コストの面でも低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MgB2線材の臨界電流密度の磁場特性比較図である。
【符号の説明】
1 この発明によって製造された超伝導膜体
2 Nb-Ti実用線材
3 ステンレステープ
4 キュプロニッケル(白銅)コア線
5 ホウ素ファイバー法(5K)
6 キュプロニッケル(白銅)テープ
Claims (5)
- 金属基材表面に、Mg−Bと金属基材表面との化学反応を抑制するためにバッファー層を設け、そのバッファー層の表面にMg過剰のMg−Bの非晶質前駆体膜を形成した後に、該前駆体膜を不活性気体の大気圧中で、80〜150℃/minの昇温速度での加熱、10〜30分間の加熱保持、50〜150℃/minの冷却速度での冷却を経てMg−B非晶質前駆体からMgB2の超伝導膜状体を形成させることを特徴とするMgB2超伝導膜状体の製造方法。
- バッファー層が、ZrO 2 、Y 2 O 3 、YSZの群から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 金属基材が、Ni基合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 金属基材表面に、ZrO 2 、Y 2 O 3 、YSZの群から選ばれる少なくとも1種からなるバッファー層が設けられ、そのバッファー層の表面にMgB 2 の超伝導膜状体が形成されていることを特徴とするMgB 2 超伝導膜状体。
- 金属基材が、Ni基合金であることを特徴とする請求項4に記載のMgB 2 超伝導膜状体。
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