JP4037766B2 - 標的核酸の検出方法および伸長方法、並びにアッセイキット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、標的核酸の検出方法および伸長方法、並びにアッセイキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
特定の核酸配列を持った核酸鎖を検出するためには、検出対象の配列に相補的な1対の核酸プライマーを用いて増幅した後に電気泳動で確認したり(特許文献1を参照されたい)、検出対象の配列に相補的なプローブを固定化した基板を用いたりする方法が一般的に用いられている(特許文献2を参照されたい)。特定の核酸鎖を特異的に検出するためには、15塩基程度以上の連続する特異的な配列をもつプローブあるいはプライマーが必要になる。しかしながら、プライマーあるいはプローブ設計ソフトなどを利用しても、変異や多型の多い領域では必ずしも15塩基の連続する特異的な配列を選択するのが難しく、最適な検出条件が設定できない問題があった。
【0003】
さらに、合成核酸は長くなる程分離精製が難しくなり、結果として収率が悪くなることが知られている。しかし、短いプローブでは特異性が出せない、感度が低い等の問題から、価格が高くても長い配列を使わざるを得なかった。
【0004】
また、プローブ固定化電極と電気化学的に活性な挿入剤を用いた電流検出型のDNAチップが報告されている(特許文献3を参照されたい)。この方法は標識が不要なためランニングコストが安い、蛍光検出のような高価で大型の検出装置が不要などのメリットがある。また、そのような方法で使用される通常のプローブは、長い方が検出感度が高いと考えられている。しかしながら、挿入剤がプローブにも若干反応するため、長いプローブを用いるとノイズが増加してしまい、検出感度が不十分であるなどの問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特許第3171792号公報(第39−40頁)
【0006】
【特許文献2】
特表平9−507121号公報(第80−93頁)
【0007】
【特許文献3】
特開平10−146183号公報(第13−22頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プローブあるいはプライマー設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出する方法、および標的核酸を伸長する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を提供する。
【0010】
本発明の第1の態様に従うと、第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定することを具備する標的核酸の検出方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様に従うと、第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、C’−A’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、A−B−S−X(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、B−C’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定すること、
を具備する標的核酸の検出方法が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様に従うと、第1の標的配列A’、第2の標的配列C’および第3の標的配列E’を含み、A’−C’−E’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’、標的配列C’に相補的な配列Cおよび配列Dを含み、D−C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
配列Dに相補的な配列D’、標的配列E’に相補的な配列Eを含み、E−D’(5’→3’)で表される第3のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定すること、
を具備する標的核酸の検出方法が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様に従うと、少なくとも、前記第1のプローブおよび第2のプローブを具備することを特徴とする前記第1の態様から第3の態様の何れか1項に記載の標的核酸の検出方法を行うためのアッセイキットが提供される。
【0014】
本発明の第5の態様に従うと、(1)配列Bと配列Aを含み、B−A(5’→3’)で表される第1の核酸鎖と、配列Bに相補的な配列B’と配列Cを含みC−B’(5’→3’)で表される第2の核酸鎖とを含み、前記配列Bと配列B’がハイブリダイズすることによって連結してなるプライマーを、標的核酸と共に存在させることと、
(2)前記(1)に記載のプライマーと標的核酸とを適切な伸長反応が得られる条件下で反応させることと、
を具備する標的核酸の伸長方法が提供される。
【0015】
本発明の第6の態様に従うと、少なくとも前記第1の核酸鎖と第2の核酸鎖とを具備する前記第5の態様に記載の標的核酸の伸長方法を行うためのアッセイキットが提供される。
【0016】
本発明の第7の態様に従うと、第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸の検出方法であって、少なくとも前記第1の核酸鎖と第2の核酸鎖とを具備する請求項6に記載の標的核酸の伸長を行い、伸長産物の有無から標的核酸を検出する方法。
【0017】
本発明の第8の態様に従うと、第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸を検出する方法であって、
(1)検出用配列Dと配列Bおよび標的配列A’に相補的な配列Aを含み、D−B−A(5’→3’)で表される第1の核酸鎖と、配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含みC−B’(5’→3’)で表される第2の核酸鎖とを含み、前記配列Bと配列B’がハイブリダイズすることによって連結してなる第1のプライマーを、第2のプライマーと共に、前記標的核酸に対して、適切な伸長反応が得られる条件下で反応させることと、
(2) 前記(1)で生じた二本鎖反応産物を、検出用配列Dに相補的な配列を有するプローブを具備するプローブ固定化基体に対して適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させることと、
(3)前記(2)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定することと、
を具備する標的核酸を検出する方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に従うと、短い核酸鎖を組み合わせて使用し、標的核酸を検出または伸長する方法が提供される。
【0019】
1.用語の説明
ここで使用される「核酸」の語は、DNAおよびRNA、S-オリゴ、メチルホスホネートオリゴ、PNA(即ち、ペプチド核酸)およびLNA(即ち、ロック核酸)などの何れの核酸類似体など、一般的に、その一部の構造を塩基配列によって表すことが可能な物質を総括的に示す語である。また、そのような核酸は、天然に存在するものであっても、人工的に合成されたものであって、それらの混合物であってもよい。
【0020】
また、本発明の核酸は、一般的にそれ自身公知の方法により合成または産生されればよい。例えば、そのような方法は、一般的な核酸の合成に使用される核酸合成機を使用しても、一般的な大腸菌などを利用した遺伝子操作などの手段を利用してもよい。合成あるいは産生された核酸は、液体クロマトグラフィーや、マススペクトロスコーピーなどで精製することが望ましい。
【0021】
ここで使用される「標的配列」の語は、本発明の態様に従うプローブが結合するための塩基配列を示す。ここで使用される「標的核酸」の語は、標的配列を含む核酸を示す。本発明の態様に従う方法で検出対象となる標的核酸は、特に限定されるものではなく、ゲノムDNA、ゲノムRNAおよびmRNAなど、また、人工的に製造した核酸類似物であってもよい。また、本発明の態様に従って検出に供される標的核酸は、所望に応じて、未修飾でもあっても、それ自身公知の手段によって何れかの修飾が施されていてもよい。例えばCy5、Cy3、FITC等の蛍光色素で標識しておけば、蛍光検出器を用いた検出が可能であり、ハプテンや酵素で標識することにより、発色または発光での検出が可能である。
【0022】
ここで使用される「相補」、「相補的」および「相補性」の語は、複数の配列が、互いに50%から100%の範囲で相補的あることを示す。本発明における好ましい相補性は、80%以上で相補的な場合であり、より好ましくは90%以上で相補的な場合である。
【0023】
2.第1の態様
(1)検出方法
本発明に従う第1の態様は、基本的にはプローブを使用して目的とする標的核酸を検出する方法である。図1を用いて、本発明の第1の態様を説明する。
【0024】
本発明の態様に従う方法では、第1のプローブと、第1のプローブに対して一部分でハイブリダイズする第2のプローブとを用いる。
【0025】
第1のプローブ1は、官能基Xと、スペーサーSと、配列Bと、配列Aを有する核酸である(図1A)。当該第1のプローブ1は、官能基Xを介して基体2に固定化されている。第1のプローブ1は、配列Aに相補的な配列A’を含む標的核酸3にハイブリダイズする(図1B)。
【0026】
第2のプローブ4は、配列Bに相補的な配列B’と、配列Cを含む。第2のプローブ4の配列B’は、第1のプローブ1の配列Bとハイブリダイズする(図1C)。第1のプローブ1と第2のプローブ4は、配列Bと配列B’により、一部分で連結している。また、第2のプローブ4の配列Cは、標的配列3に含まれる配列C’にハイブリダイズする(図1C)。
【0027】
従って、本発明の方法では、上述のように一部で連結している第1のプローブ1と第2のプローブ4に対してハイブリダイズしたことにより、標的配列が検出される(図1C)。
【0028】
従来使用されるプローブ固定化基体は、図1Dに示すように、プローブ5が基体2に垂直方向に固定化されている。当該プローブ5に図1Dに示すように標的核酸と1対1でハイブリダイズする。また、従来のプローブ固定化基体は、基体2の表面に対してプローブ5が垂直方向に固定化されている。従って、当該プローブ5に対してハイブリダイズした標的核酸6も、基体2の表面に対して垂直に捕捉される(図1D)。
【0029】
これに対して、上述のような本発明の態様に従うと、標的核酸3は、第1のプローブ1と第2のプローブ4の両方にハイブリダイズすることにより、基体2の表面からより遠い位置で捕捉される(図1C)。このように捕捉されることにより、従来のように垂直に捕捉される場合に比べて立体障害が生じ難い。従って、効率よく目的のハイブリダイズが達成される。例えば図1Dの従来の手段では、標的核酸6が非常に長く、特に、プローブ5とのハイブリダイズ領域よりも基体側に長い場合、標的核酸6のプローブ5へのハイブリダイゼーションは阻害されてしまう。しかしながら、本発明の態様に従えば、標的核酸3の長さに関係なく、効率よいハイブリダイゼーションが達成される。
【0030】
また、ハイブリダイゼーション反応前は各プローブは一本鎖の構造を形成しているが、標的核酸と結合することで、標的核酸とプローブとの間に二本鎖構造が形成されると共に、各プローブ間にも二本鎖が形成される。よって、本発明の態様のように複数のプローブを使用しない場合に比べ、挿入剤をたくさん結合することができる。それにより、結果的に電流信号の増大、高感度化が達成される。更に、各プローブは従来よりもその長さが短い。従って、ノイズを減少することも可能であり、最適な検出条件の設定が従来よりも容易であり、且つ低コストで製造することが可能である。
【0031】
従って、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出することが可能である。
【0032】
(2)構成
第1のプローブに含まれる配列Aおよび第2のプローブに含まれる配列Cの長さは、特に限定されるものではないが、5〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0033】
配列Bと、配列B’は上述した通り、互いに相補的な配列である。配列Bと配列B’は、特に限定されるものではないが、長さは3〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0034】
標的核酸における第1および第2のプローブに結合する領域は、各々、第1の標的配列、第2の標的配列である。これらの配列は、第1のプローブの配列Aに結合するための配列A’と、第2のプローブの配列Cに結合するための配列C’である。標的核酸上での配列A’と配列C’は、互いに隣接していてもよく、配列A’と配列C’の間に200〜1塩基が存在してもよく、好ましくは50〜1塩基、より好ましくは10〜1塩基が存在するように、プローブの設計を行う。
【0035】
本発明の第1のプローブ1の配列は、その5’末端側から3’末端側に向かい(即ち、5’→3’と示す)、官能基X、スペーサーS、配列B、配列Aと配置される、即ち、X−S−B−A(5’→3’)であってもよく、その5’末端側から配列A、配列B、スペーサーS、官能基X、即ち、A−B−S−X(5’→3’)であってもよい。但し、第1のプローブ1を構成する成分の並び方に応じて、第2のプローブ4の構成が決定される。即ち、第1のプローブ1がX−S−B−A(5’→3’)の場合、第2のプローブ4はB’−C(3’→5’)である。また、第1のプローブ1がA−B−S−X(5’→3’)の場合、第2のプローブ4はC−B’(3’→5’)である。何れの場合も、第1のプローブ1を基体2に固定化する場合には、官能基Xを介して行われることが好ましい。
【0036】
本発明の態様に従って使用されるスペーサーSには、特に限定されるものではないが、トリエチレングリコールおよびヘキサエチレングリコールなどのエチレングリコール鎖、メチレングリコール鎖、アルキル鎖並びに塩基などを用いることが可能であり、その長さは500原子程度までが好ましい。また、当該スペーサーは直鎖であることが望ましいが、枝状に分岐した分子も本発明の態様において使用することが可能である。また、分子中に芳香環などが入っていてもよい。
【0037】
本発明の態様に従って使用される官能基Xは、当該第1のプローブを基体表面に固定化するためのものである。従って、基体に固定化しないで使用する場合には、必ずしも必要ではない。本発明において使用され得る官能基Xは、これらに限定されるものではないが、例えば、メルカプト基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基およびビオチンなどを用いることが可能である。これらの官能基Xの選択は、基体または基体表面の性質または処理に応じて行ってよい。これらの官能基と基体または表面表面の選択およびプローブの固相化は、それ自身公知の手段により達成することが可能である。
【0038】
本発明の態様に従って使用され得る基体は、ガラス、シリコンおよび樹脂などから構成された担体などの基体であればよい。また、その形状は、板状、球状および棒状であってもよい。また、容器を基体として用い、その内部を構成する底面および/または壁面など、またはその一部に対してプローブを固定化してもよい。
【0039】
(3)反応の手順
本発明の第1の態様に従って、プローブと標的核酸を反応させる際の手順の例を図1を用いて以下に説明する。
【0040】
まず、第1のプローブ1を基体2の表面に固定化する(図1A)。次に、標的核酸3を第1のプローブ1に対して、ハイブリダイズさせる(図1B)。続いて、第2のプローブ4を標的核酸3と第1のプローブ1に対してハイブリダイズさせる(図1C)。
【0041】
または次のように行ってもよい。まず、標的核酸3と第2のプローブ4をハイブリダイズさせる。これを、基体2の表面に固定化された第1のプローブ1に添加して、ハイブリダイズさせる。
【0042】
或いは、次のように行ってもよい。最初に、第1のプローブ1と第2のプローブ4をハイブリダイズさせ、それに対して標的核酸3を添加してハイブリダイズさせる。
【0043】
このような反応を利用して、試料中の標的核酸の存在を検出する場合には、例えば、次のように行えばよい。まず、標的核酸の配列を基に、標的配列を選択し、第1のプローブと第2のプローブを設計し用意する。次に、第1のプローブを基体に固定化する。その一方で、試験の対象となる核酸を含有する試料を準備する。準備された試料に対して、第2のプローブを添加し、適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応を行う。次に、得られた反応産物を、適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で、基体に固定化された第1のプローブと反応させる。基体に固定化された第1のプローブと第2のプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションの存在を検出することによって、当該試料中の標的核酸を検出することが可能である。また、このような試料中の標的核酸の存在を検出する方法は、上述のプローブと標的核酸を反応させる際の手順に応じて、手順を入れ替えるなどの必要な種々の変更を行ってもよい。
【0044】
ハイブリダイゼーションの存在の検出は、それ自身公知の何れの手段を利用して行ってもよい。例えば、ハイブリダイゼーションが生じた部位に取り込まれるインタカレータを利用しても、抗原抗体反応を利用しても、また、試料核酸を予め標識する手段を利用してもよい。
【0045】
(4)プローブ固定化基体
本発明の態様において使用されるプローブ固定化基体について、例を用いて以下に説明する。
【0046】
(a)第1の例
図2に本発明の態様に従い使用され得るプローブ固定化基体の第1の例を模式的に示した。第1の例であるプローブ固定化基体は、基体16とその表面に存在する1以上の固定化領域15に夫々1以上で固定化されたプローブ11から14を具備する(図2)。
【0047】
このようなプローブ固定化基体は、例えば、それ自身公知の手段によりシリコン基板などの基体に対してプローブを固定化することにより製造することが可能である。
【0048】
本発明に従うと、1つの基体に配置する固定化領域15の数も、そこに固定化されるプローブの数もこれに限定するものではなく、所望に応じて変更してよい。また、複数種類の塩基配列をプローブとして1つの基体に配置してもよい。複数および/または複数種類のプローブの基体への固相パターンは、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。このようなプローブ固定化基体は本発明の範囲内である。
【0049】
(b)第2の例
図3を用いて、本発明の態様において使用され得るプローブ固定化基体の第2の例を説明する。第2例であるプローブ固定化基体は、基体22に具備された1以上の電極23に夫々1以上で固定化されたプローブ17から20を具備する(図3)。電極23は、電気的情報を取り出すためのパット24に接続されている。
【0050】
このようなプローブ固定化基体は、例えば、それ自身公知の手段によりシリコン基板などの基体に電極を配置し、その電極表面に対してプローブを固定化することにより製造することが可能である。
【0051】
本態様においては、電極の数を5としたが1つの基体に配置する電極の数はこれに限定するものではない。また、電極の配置パターンも図3に示したものに限定されるものではなく、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。必要に応じて参照電極および対極を設けてもよい。そのようなプローブ固定化基体も本発明の範囲内である。
【0052】
上記の例に記載するような蛍光検出を行うためのプローブ固定化基体の場合は、上記の何れかの基体に対してプローブを固定化すればよい。また、上記の第1の例に記載するような電気化学的検出を行うためのプローブ固定化基体の場合は、上記の何れかの基体に電気化学的な検出が可能であるように電極を配置し、その電極上にプローブを固定化すればよい。
【0053】
本発明において使用され得る電極は、特に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、グラシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンペースト、カーボンファイバーのような炭素電極、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウムのような貴金属電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉛のような酸化物電極、Si、Ge、 ZnO、 CdS、 TiO2 、GaAsのような半導体電極、チタン等が挙げられる。これらの電極は導電性高分子によって被覆しても、単分子膜によって被覆してもよく、所望に応じてその他の表面処理剤を処理してもよい。
【0054】
また、異なる塩基配列を有するプローブは、それぞれ、異なる電極に対して固定化されてもよく、異なる塩基配列を有する複数種類のプローブが混合された状態で1つの電極に対して固定化されてもよい。
【0055】
(5)検出
本発明に従うプローブ固定化基体を用いる場合、前記基体に固定化されたプローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション反応の結果生じた二本鎖の存在を検知するための手段として、電気化学的方法および蛍光検出法を利用することが可能である。
【0056】
(a)電気化学的検出
電気化学的による二本鎖核酸の検出は、例えば、それ自身公知の二本鎖認識物質を用いて行えばよい。
【0057】
ここで用いられる二本鎖認識体は特に限定されるものではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーターおよびポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。また、その他の公知の何れの二本鎖認識物質も本発明において好ましく使用される。
【0058】
本発明に従うプローブ固定化基体では、プローブが電極に対して固定化されている。このような電極を用いての二本鎖核酸の検出は他の一般的な電気化学的検出法と同じように、更に対極や参照極を使用してもよい。参照極を配置する場合、例えば、銀/塩化銀電極や水銀/塩化水銀電極などの一般的な参照極を使用してよい。
【0059】
続いて、適切なハイブリダイゼーションが可能な条件下で反応を行う。そのような適切な条件は、標的配列に含まれる塩基の種類、プローブ固定化基体に具備されるプローブの種類、試料核酸の種類およびそれらの状態などの諸条件に応じて、当業者であれば適宜選択することが可能である。これに限定されるものではないが、例えば以下のような条件下で反応を行ってもよい。
【0060】
例えば、ハイブリダイゼーション反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストラン、並びに、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTAおよび界面活性剤などを添加してもよい。ここに得られた試料核酸を添加し、90℃以上で熱変性させる。熱変性された試料核酸へのプローブ固定化基体の挿入は、変性直後、あるいは0℃に急冷後に行ってもよい。また、基体上に液を滴下することでハイブリダイゼーション反応を行うことも可能である。
【0061】
反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めてもよい。反応温度は、例えば、10℃〜90℃の範囲で、反応時間は1分以上1晩程度で行えばよい。ハイブリダイゼーション反応後、電極を洗浄する。洗浄には、例えば、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いればよい。試料核酸中に標的配列を含む標的核酸が存在した場合、プローブとハイブリダイズし、それにより二本鎖核酸が生じる。
【0062】
続いて、電気化学的手段により、以下のような手順で生じた二本鎖核酸の検出を行う。一般的には、ハイブリダイゼーション反応の後に、基体を洗浄し、電極表面に形成された二本鎖部分に二本鎖認識体を作用させて、それにより生じる信号を電気化学的に測定する。
【0063】
二本鎖認識体の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/mL〜1mg/mLの範囲で使用する。この際には、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いればよい。
【0064】
例えば、電気化学的な測定は、二本鎖認識体が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、二本鎖認識体に由来する反応電流値を測定してよい。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加してもよい。測定の際に、例えば、ポテンショスタット、デジタルマルチメーターおよびファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御してもよい。例えば、得られた電流値を基に、検量線から標的核酸の濃度を算出してもよい。
【0065】
また、それ自体公知の電気化学的検出手段、例えば、以下の文献に開示されている(Hashimoto et al. 1994, Wang et al. 1998)手段なども本発明の方法において好ましく使用できる。当該文献において、橋本らは、DNAプローブで修飾された金電極と電気化学的に活性な色素を用いる配列特異的遺伝子検出を報告した。色素に由来する陽極の電流は、標的DNAの濃度に相関する。また、ワンらは、インディケーターフリーの電気化学的なDNAのハイブリダイゼーションを報告した。このバイオセンサーの構成は、カーボンペースト電極へのイノシン置換プローブ(グアニンを含まない)の固定化と、当該標識のグアニン酸化ピークの存在による二重鎖の形成のクロノポテンショメトリック検出を含む。これらの文献に記載される検出手段は好ましく本発明において使用されてよい。
【0066】
(b)蛍光検出法
蛍光標識物質を用いる方法の場合には、標的核酸を、FITC、Cy3、Cy5若しくはローダミンなどの蛍光色素などの蛍光学的な活性が得られる物質で標識しておいてもよい。或いは、そのような標識の代わりに前述の物質で標識したセカンドプローブを用いてもよい。また、複数の標識物質を同時に使用してもよい。
【0067】
幾つかの態様においては、試料から抽出した核酸成分とプローブ固定化基体に固定化されたプローブとのハイブリダイゼーション反応は、例えば、以下のように行う。例えば、ハイブリダイゼーション反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストラン、並びに、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTAおよび界面活性剤などを添加してもよい。ここに抽出した核酸成分を添加し、90℃以上で熱変性させる。プローブ固定化基体の挿入は、変性直後、あるいは0℃に急冷後に行ってよい。また、基体上に液を滴下することでハイブリダイゼーション反応を行うことも可能である。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めてもよい。反応温度は、例えば、10℃〜90℃の範囲で、反応時間は1分以上1晩程度で行えばよい。ハイブリダイゼーション反応後、洗浄を行う。洗浄には、例えば、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0068】
蛍光検出の場合、ハイブリダイゼーション反応の検出は、標識の種類に応じた適宜の検出装置を用いて、試料中の標識された塩基配列又は2次プローブ中の標識を検出することによって行う。標識が蛍光物質の場合には、例えば、蛍光検出器を用いて標識を検出すればよい。
【0069】
3.第2の態様
上述の第1の態様に使用した第1のプローブと第2のプローブに加えて、更に第3のプローブを使用して、第1の態様に記載の事項に準じて標的核酸を検出してもよい。
【0070】
(1)検出方法
図4を用いて説明する。本発明の態様に従う方法では、第1のプローブ1と、第2のプローブ7と、第3のプローブ8を用いる。
【0071】
第1のプローブ1は、官能基Xと、スペーサSと、配列Bと、配列Aを有する核酸である。当該第1のプローブ1は、官能基Xを介して基体2に固定化されている。第1のプローブ1は、標的核酸3に含まれる標的配列である配列A’にハイブリダイズする。即ち、配列Aは配列A’に相補的である。
【0072】
第2のプローブ7は、配列Bに相補的な配列B’と、配列Cと、配列Dを含む。第2のプローブ7は、標的核酸3に含まれる標的配列である配列C’にハイブリダイズする。即ち、配列Cと配列C’は相補的である。
【0073】
第3のプローブ8は、配列Dに相補的な配列D’と、配列Eを含む。第3のプローブ8は、標的核酸3に含まれる標的E’にハイブリダイズする。即ち、配列Eと配列E’は相補的である。
【0074】
(2)構成
配列A、配列Cおよび配列Eの長さは、特に限定されるものではないが、5〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0075】
配列Bと配列B’、配列Dと配列D’は互いに相補的な配列であり、これらの長さは、特に限定されるものではないが、3〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0076】
標的核酸上の配列A’、配列C’および配列E’は、互いに接していてもよく、それぞれの配列の間に200〜1塩基が存在してもよく、好ましくは50〜1塩基、より好ましくは10〜1塩基が存在するように、プローブの設計を行う。
【0077】
本発明の第1のプローブ1の構成は、その5’末端側から官能基X、スペーサーS、配列B、配列A、即ち、X−S−B−A(5’→3’)であってもよく、その5’末端側から配列A、配列B、スペーサーS、官能基X、即ち、A−B−S−X(5’→3’)であってもよい。第1のプローブ1を構成する成分の並び方に応じて、第2のプローブ7および第3のプローブ8の構成が決定される。
【0078】
以上の事項以外は、第2の態様のために、第1の態様において記載した方法および検出手段などを用いることが可能であり、また、第1の態様に記載に従って所望の変更を行ってもよい。
【0079】
また、第2の態様では3つのプローブを用いる例を示したが、本発明の趣旨に従って4以上のプローブを用いても同様に標的核酸の検出を行うことが可能である。また、連結数の多い方が検出感度をより向上させる。
【0080】
このような本態様により、効率的な検出を阻害する立体障害を抑制し、効率のよい標的核酸の検出が可能である。また、ハイブリダイゼーション反応前は各プローブは一本鎖の構造を形成しているが、標的核酸と結合することで、標的核酸とプローブとの間に二本鎖構造が形成されると共に、各プローブ間にも二本鎖が形成される。よって、本発明の態様のように複数のプローブを使用しない場合に比べ、挿入剤がたくさん結合することができる。それにより、結果的に電流信号の増大、高感度化が達成される。また、夫々のプローブは、従来よりもその長さが短い。従って、ノイズを減少することも可能であり、その製造も低コストで達成できる。
【0081】
従って、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出することが可能である。
【0082】
4.第3の態様
更に、本発明に従うと、第3の態様として図5に示すような構成の第1のプローブ26と第2のプローブ27を用いる標的核酸3を検出する方法が提供される。以下、図5を用いて説明する。
【0083】
第1のプローブ26は、官能基Xと、スペーサーSと、配列Aと、配列Bを、X−S−A−B(5’→3’)の配列で有する。第1のプローブ26は、官能基Xを介して基体2に固定されている。第1のプローブ26の配列Aは、標的配列3に含まれる配列A’にハイブリダイズする。
【0084】
第2のプローブ27は、配列Bに相補的な配列B’と配列Cを、B’−C(5’→3’)の配列で有する。第2のプローブ27は、配列B’を介して第1のプローブ26にハイブリダイズし、更に第1および第2のプローブは、配列Aと配列Cにより、標的配列3にハイブリダイズする(図5)。
【0085】
以上の事項以外は、第1の態様に記載の通りに反応および検出を行うことが可能である。また、第2の態様に記載の方法に準じて3以上のプローブを設計し、それを用いて標的配列3を検出してもよい。また、第1および第2の態様に従って、所望の事項を変更してもよい。
【0086】
本態様に従うと、従来よりも短い核酸鎖をプローブとして使用することにより、標的核酸を検出することが可能である。即ち、プローブは夫々は従来よりもその長さが短い。従って、ノイズを減少することも可能である。また、ハイブリダイゼーション反応前は各プローブは一本鎖の構造を形成しているが、標的核酸と結合することで、標的核酸とプローブとの間に二本鎖構造が形成されると共に、各プローブ間にも二本鎖が形成される。よって、本発明の態様のように複数のプローブを使用しない場合に比べ、挿入剤がたくさん結合することができる。それにより、結果的に電流信号の増大、高感度化が達成される。
【0087】
従って、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出することが可能である。
【0088】
5.第4の態様
本発明に従い、短い核酸鎖を組み合わせて使用して標的核酸を伸長する方法を第4の態様として以下に説明する。これに限定されるものではないが、ここでは第4の態様に従う本発明の2つの例を示す。
【0089】
(1)第1の例
以下、図6を用いて説明する。第1の例は、標的核酸22を鋳型として用い、短い核酸が組み合わされてなるフォワードプライマーと、リバースプライマーとを用いて、適切な伸長反応が得られる条件下で反応させ、目的とする核酸を伸長する方法である。
【0090】
図6には、フォワードプライマーに含まれる各成分が、9塩基の配列A、9塩基の配列BおよびB’、並びに9塩基の配列Cであるものを例として示したが、これに限定するものではなく、以下のように変更することが可能である。また、図6には、標的核酸として、114塩基のオリゴDNAの例を示したが、これに限定されるものではなく以下のように変更してもよい。
【0091】
フォワードプライマーとしては、配列Aと配列Bを含む第1の核酸鎖28と、配列B’と配列Cを含む第2の核酸鎖29とを、互いに相補的な配列Bと配列B’により連結されたものを使用する。このような形態をした本発明に従うプライマーを「連結プライマー」とも称する。
【0092】
配列Aおよび配列Cの長さは、特に限定されるものではないが、5〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0093】
配列Bおよび配列B’は互いに相補的な配列である。配列Bと配列B’は、特に限定されるものではないが、長さは3〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0094】
標的核酸は、鋳型核酸として使われる。フォワードプライマーの構成要素である第1および第2の核酸鎖に結合する標的核酸の領域は、各々、第1の標的配列および第2の標的配列である。例えば、これらの配列は、第1のプローブの配列Aに結合するための配列A’と、第2のプローブの配列Cに結合するための配列C’である。標的核酸上の配列A’と配列C’の位置は、互いに隣接していてもよく、配列A’と配列C’の間に200〜1塩基が存在してもよく、好ましくは50〜1塩基、より好ましくは10〜1塩基が存在するように、プローブの設計を行ってよい。
【0095】
リバースプライマーは、それ自身公知の一般的にプライマーとして使用される何れの核酸を使用してもよい。或いは、上記のフォワードプライマーと同様な短い核酸が組み合わされてなる核酸をリバースプライマーとして使用してもよい。
【0096】
ここで使用される「核酸を伸長する」の語は、鋳型核酸と、その一部の塩基配列に相補的なプライマーとを用いて、ポリメラーゼを作用させることにより、目的とする核酸を伸長することをいい、更に、そのような伸長と、そのような伸長が繰り返し行われる増幅の両方を示す。
【0097】
本発明の態様に従って利用され得る伸長反応は、それ自体公知の一般的に核酸を伸長するために使用される手段であっても、および核酸を増幅するために使用される手段であってもよく、そのような手段で有れば何れも使用してよい。これらに限定するものではないが、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(一般的にPCRと称される、以下、PCRと記す)や逆転写PCRなどを利用した方法を用いることが可能である。また更に、Nucleic acid strand amplification(NASBA)、Transcription mediated amplification(TMA)、Ligase chain reaction(LCR)、Strand displacement amplification(SDA)、Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids(ICANN)および Rolling circle amplification(RCA)法、Loop mediated amplification (LAMP)法などの手段も本発明の態様に従って利用することが可能である。
【0098】
ここで使用される「適切に伸長反応が得られる条件」とは、ポリメラーゼが核酸鎖を合成するための各種条件、例えば、温度、pH、塩濃度およびdNTPなどの条件が、ポリメラーゼの活性を適切に得るために十分であるような状態を示す。
【0099】
上述の例では2つの核酸鎖を組み合わせてフォワードプライマーとして使用する例を示したが、3以上で核酸鎖を組み合わせてもよい。また、ここではフォワードプライマーとして、2つ以上の核酸鎖を組み合わせた核酸を用いる例を示したが、フォワードプライマーを通常のプライマーを使用し、リバースプライマーを本発明に従う2つ以上の核酸鎖を組み合わせた核酸としてもよい。或いは、フォワードプライマーとリバースプライマーの両方に、本発明に従う2つ以上の核酸鎖を組み合わせた核酸を使用してもよい。
【0100】
本態様に従うと、従来よりも短い核酸鎖を組み合わせてプライマーとして使用することにより、標的核酸に効率よく結合し、高感度に伸長反応を達成することが可能である。また、非特異的結合を減少することが可能であるので、ノイズを減少することも可能である。
【0101】
従って、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を伸長することが可能である。
【0102】
(2)第2の例
また更に、第1の例の標的核酸の伸長に続いて、その伸長反応産物を回収し、且つ伸長産物に含まれる特定の配列を検出することにより、標的核酸の存在を検出することも可能である。そのような例を図14を用いて以下に説明する。
【0103】
図14に示す方法において使用されるフォワードプライマー40(図中、Fプライマーとも記す)は、第1の核酸鎖41と第2の核酸鎖42からなる。第1の核酸鎖41は、5’側から配列Aと配列Bを含む。第2の核酸鎖42は、5’側から配列D、配列B’および配列Cを含む。第1の核酸鎖41と第2の核酸鎖42は、互いに相補的な配列Bと配列B’で連結される。本例において使用されるプライマーは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーともに、互いに相補的な配列の結合による連結部を有するので、両者とも「連結プローブ」とも称される。
【0104】
標的核酸に結合する配列は、第1の核酸鎖41の配列Aと第2の核酸鎖42の配列Cである。第2の核酸鎖42に含まれる配列Dは、検出用配列43であり、この検出用配列43の存在が、標的核酸44aが存在し、且つ適切な伸長反応が生じたことを検出するための指標となる。
【0105】
図14に示す方法において使用されるリバースプライマー45(図中、Rプライマーとも記す)は、第1の核酸鎖46と第2の核酸鎖47からなる。第1の核酸鎖46は、5’側から配列Fと配列Eを含み、5’末端にはビオチンが付与されている。第2の核酸鎖47は、5’側から配列Gと配列F’を含む。第1の核酸鎖46と第2の核酸鎖47は、互いに相補的な配列Fと配列F’で連結されてる。また、標的核酸44bに結合する配列は、第1の核酸鎖46の配列Eと第2の核酸鎖47の配列Gである。第2の核酸鎖に含まれるビオチンは、伸長された核酸を回収するために使用される。
【0106】
上述のフォワードプライマー40とリバースプライマー45と標的核酸44とを、ポリメラーゼを用い、適切な伸長反応が得られる条件下、例えば、適切なPCR反応が得られる条件下で反応を行う。反応後、アビジンに対してビオチンを特異的に結合させることによって反応産物を回収する。更に、反応産物として得られた二本鎖核酸を一本鎖に解離する。
【0107】
得られた一本鎖を、検出用配列43に相補的な配列を有する検出用プローブ48を固定化したプローブ固定化基体50上で反応を行う。その後、使用したプローブ固定化基体の種類に応じて、プローブ固定化基体50上で生じたハイブリダイゼーションの存在を検出する。これにより、標的核酸を鋳型として、当該フォワードプライマー40とリバースプライマー45を用いて伸長された二本鎖核酸のうちの一本鎖が検出される。従って、試料中の標的核酸の存在を検出できる。
【0108】
図14では、例として金電極49を具備したプローブ固定化基体50を用いて、電気化学的に検出を行う場合の略図を示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、上述した態様において示した種々のプローブ固定化基体の何れを使用してもよい。
【0109】
ここで、配列Aおよび配列Cの長さは、特に限定されるものではないが、5〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0110】
配列Bおよび配列B’は、互いに相補的な配列である。配列Bと配列B’は、特に限定されるものではないが、長さは3〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。また、配列Bおよび配列B’は必ずしも同じ長さである必要はない。
【0111】
配列Dは、フォワードプライマーおよびリバースプライマー、並びに標的核酸とは、互いにハイブリダイズし難い配列とすることが望ましい。また、配列Dの長さは、特に限定されるものではないが、5〜100塩基の範囲でよく、好ましくは10〜50塩基、更に好ましくは15〜30塩基である。配列Dの塩基配列は特に限定されるのものではないが、正規直行配列のようなミスハイブリの起こり難い配列であることが望ましい。また、上述の方法では、検出用配列である配列Dは、フォワードプライマーの第2の核酸鎖の5’端に配置した例を記載したが、それに限定するものではない。本発明の態様に従うと、検出用配列は第1の核酸鎖に配置してもよい。また、検出用配列は、目的とする当該伸長反応を妨げない限り、第1および第2の核酸鎖の3’または5’端の何れの位置に配置されてもよい。
【0112】
また、配列Eおよび配列Gの長さは、特に限定されるものではないが、5〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。
【0113】
配列Fおよび配列F’は、互いに相補的な配列である。配列Fと配列F’は、特に限定されるものではないが、長さは3〜50塩基の範囲でよく、好ましくは5〜14塩基、更に好ましくは5〜9塩基である。また、配列Fおよび配列F’は必ずしも同じ長さである必要はない。
【0114】
上述の方法では、ビオチンをリバースプライマーに付与し、アビジンで回収した例を示したが、当該方法は、ビオチンとアビジンの組み合わせに限定するものではなく、ビオチンとストレプトアビジンを組み合わせて使用しても、或いは互いに特異的に結合する2つの結合子からなる結合対を使用してもよい。また、当該結合子が付与されるリバースプライマーにおける位置は、第1の核酸鎖であっても第2の核酸鎖であってもよく、また、当該伸長反応を妨げない限り、3’若しくは5’末端またはその他の位置のどの位置に付与されてもよい。また、一本鎖の増幅産物を回収する方法はビオチンを付与した核酸プライマーとアビジン化磁気ビーズを使用した方法に限定されるものでは無く、例えばS-オリゴプライマーとT7ヌクレアーゼを用いる方法や、リン酸化プライマーとλ−ヌクレアーゼを用いる方法などが利用可能である。
【0115】
また、核酸の伸長反応は、上述の第1の例に記載するのと同様に変更することが可能である。
【0116】
本例において使用するフォワードプライマーとリバースプライマーは、第1の例と同様に変更してもよい。また、本例ではフォワードプライマーに検出用配列を付与し、リバースプライマーに結合対を構成する一方の結合子を付与したが、リバースプライマーに検出用配列を付与し、フォワードプライマーに結合子を付与してもよい。
【0117】
また、複数の標的核酸について1つの反応系で伸長反応を行い、1つのプローブ固相化基体上の検出用プローブを用いて検出を行うことも可能である。その場合、標的核酸の種類毎に、少なくともフォワードプライマーの配列Dの塩基配列と、配列Aおよび/または配列Cの塩基配列とを変更すれば、標的核酸の種類毎に検出用配列が与えられる。従って、これらの複数種類の検出用配列を検出すればよい。その場合、使用される複数種類の検出用配列に対して、相補的な複数種類の検出用プローブをプローブ固定化基体に固定化しておけば、一度に複数種類の検出用配列を検出することが可能である。ここで、フォワードプライマーに加えて、リバースプライマーの配列や、そこに付与されるビオチンなどの結合子の種類を、標的核酸の種類毎に変更してもよい。また、一本鎖の増幅産物を回収する方法はビオチンを付与した核酸プライマーとアビジン化磁気ビーズを使用した方法に限定されるものでは無く、例えばS-オリゴプライマーとT7ヌクレアーゼを用いる方法や、リン酸化プライマーとλ−ヌクレアーゼを用いる方法などが利用可能である。
【0118】
本態様に従うと、当該検出は、リバースプライマー側のビオチンで回収する工程と、フォワードプライマー側の検出用配列で検出する工程の2つの工程を具備しているので、伸長反応が生じないことに由来するノイズを低く抑えることができ、且つ得られた検出が偽陽性の結果となることを防止できる。また、標的核酸の情報を検出用配列に置き換えて検出しているので、ミスハイブリが起こり難く、検出用プローブとの反応を安定して行うことも可能である。
【0119】
それに加えて、従来よりも短い核酸鎖を組み合わせてプライマーとして使用していることにより、標的核酸に効率よく結合し、高感度に伸長反応を達成することが可能である。また、非特異的結合を減少することが可能であるので、伸長反応に由来するノイズを減少することが可能である。
【0120】
また、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を伸長することが可能である。
【0121】
6.アッセイキット
本発明はまた、上述したような何れかの態様に従うプローブまたはプローブ固定化基体およびプライマー、並びにプライマーを構成する核酸鎖を、使用目的に応じて適切なアッセイキットとして提供することも可能である。
【0122】
例えば、第1のプローブと第2のプローブ、または所望の種類のプローブを組み合わせてアッセイキットとして提供してもよく、それらに基体を組み合わせてアッセイキットとして提供してもよい。また、第1のプローブを固定化したプローブ固定化基体と、第2のプローブ、または所望の種類のプローブを組み合わせてアッセイキットとして提供してもよい。更に、緩衝液用塩類および/またはその他の必要な試薬および/または標識物質などを組み合わせてアッセイキットとして提供されてもよい。
【0123】
また例えば、本発明に従うプライマーおよび/または核酸鎖の場合は、反応容器および/または緩衝液用塩類および/またはその他の必要な試薬、例えば、ポリメラーゼおよび/または基質および/またはプローブ固定化基体などと組み合わせてキットとして提供されてもよい。
【0124】
【実施例】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【0125】
実施例1
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る核酸鎖検出方法の概略構成を示す図である。当該第1のプローブ1として、C型肝炎ウイルス(HCV)の型判定を行うためのプローブを具備するプローブ固定化基体を用いて、標的核酸の検出を行う例を以下に説明する。
【0126】
第1のプローブ1は配列番号3の核酸配列からなる10merのHCVゲノム配列を含み、且つ3’末端にアミノ基を導入した合成オリゴヌクレオチドプローブである。このプローブをカルボジイミド処理したガラス基板2と反応させ、基板2上に固定化した(図1A)。次に、配列番号1のHCVのゲノム配列を含み且つCy5標識した標的核酸と、2xSSC緩衝液中で45℃でハイブリダイゼーションを行なった。このハイブリダイゼーション反応を行なう際に、10merのHCVゲノム配列を含む配列番号4の合成核酸も同時に存在させた。
【0127】
他方、コントロールとして、アミノ基を導入した配列番号5のHCV特異的配列の20merのプローブをガラス基板上に固定化し、配列番号1の標的核酸とハイブリダイゼーション反応を行なった。
【0128】
その結果、配列番号3のプローブを固定化した基板により、配列番号4の核酸を共存させた状態で特異的な信号を検出することができた。これは、20merの配列からなる配列番号5のプローブを用いた場合とほぼ同等の信号であった(図7)。ここで、図7のグラフAは配列番号3を固定化した電極のみの場合、グラフBは配列番号3を固定化した電極と配列番号1の核酸を反応させた場合、Cは配列番号3を固定化した電極と配列番号4、配列番号1の核酸を反応させた場合、Dは配列番号5を固定化した電極と配列番号1を反応させた場合である。
【0129】
以上の結果から、本発明の方法により、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的に標的核酸を検出することが可能であることが示された。
【0130】
実施例2
図8は、本発明の第2の実施形態に係る核酸鎖検出方法の概略構成を示す図である。当該検出方法を利用して、ras遺伝子の変異を検出するためのプローブ固定化基体を製造し、ras遺伝子の変異を検出した。
【0131】
ガラス基板30上には金の電極31がパターニングしてあり、プローブ固定化部位が6箇所、対極33、参照極34がそれぞれ一箇所づつの構造になっている。まず、ras Mutant set(宝酒造製)を用いてc−Ha−ras−codon 12の正常なPCR産物(変異部位がGlyである)を作製した。PCRプライマーは5’末端をリン酸化した配列番号6と配列番号7を用いた。反応後、PCR反応液中にλ−ヌクレアーゼを添加して37℃で15分反応させた。これにより、リン酸化されているプライマー側の鎖を分解して一本鎖産物を作製した。配列番号8(変異部位がGly)、配列番号10(変異部位がArg)、配列番号11(変異部位がSer)、配列番号12(変異部位がCys)を含むプローブに、予め3’末端にチオール基を導入しておき、金電極上に固定化した。ポジティブコントロールとして配列番号7の相補鎖の配列を、またネガティブコントロールとして配列番号2のrDNAの配列を固定化した。更に、比較のためにそれぞれ20merの合成プローブ、配列番号13(変異部位がGly)、配列番号14(変異部位がArg)、配列番号15(変異部位がSer)、配列番号16(変異部位がCys)も金電極上に固定化した。
【0132】
一本鎖PCR産物に配列番号9の核酸鎖を添加した後、2xSSC緩衝液中で95℃で5分の熱変性を行った。その後、10分間35℃でアニーリングを行なった。このサンプルを、プローブ固定化電極に滴下し、35℃で30分ハイブリダイゼーション反応を行なった。反応後、0.2xSSCで15分間洗浄を行い、最後に、ヘキスト33258の電流応答を測定した。その結果、特異的な電流信号は配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12を固定化した本発明の態様に従う電極の方(図9)が、比較例であるコントロール(図10)よりも高い値が得られた。
【0133】
以上の結果から、本発明の方法により、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出することが可能であることが示された。
【0134】
実施例3
図4は、本発明の第3の態様に係る核酸検出方法の概略構成を示す図である。
当該検出方法を利用して、C型肝炎ウイルス(HCV)の型判定を行った。第1のプローブ1として、配列番号17の核酸配列からなる6merのHCVゲノム配列を含み、且つ3‘末端にアミノ基を導入した合成オリゴヌクレオチドプローブを用いた。この第1のプローブ1をカルボジイミド処理したガラス基板2と反応させ、基板上に固定化した。配列番号1のHCVのゲノム配列を含み、且つCy5で標識された標的核酸と2xSSC緩衝液中で、45℃でハイブリダイゼーションを行なった。このハイブリダイゼーション反応を行なう際に、19merのHCVゲノム配列を含む配列番号18の合成核酸と、13merの配列番号19の合成核酸とを同時に存在させた。
【0135】
他方、コントロールとして、アミノ基を導入した配列番号5のHCV特異的配列の20merをプローブとしてガラス基板上に固定化して、配列番号1のターゲットとハイブリダイゼーション反応を行なった。
【0136】
その結果、配列番号3のプローブを固定化した基板でも、配列番号4の核酸が共存することで特異的な信号が検出でき、20merの配列からなる配列番号5のプローブを用いた場合よりも高い信号強度が得られた(図11)。
【0137】
図11では、本発明の態様を用いて行った結果を「連結プローブ」のグラフとして示し、従来の方法を用いて行った比較例を「コントロール」のグラフとして示した。
【0138】
以上の結果から、本発明の方法により、プローブの設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出することが可能であることが示された。
【0139】
実施例4
図6は、本発明の第4の態様に係る標的核酸を伸長する方法の概要を示す模式図である。当該フォワードプライマーとして、C型肝炎ウイルス(HCV)核酸の増幅を行なうためのPCRプライマーを使用した例を以下に説明する。
【0140】
配列番号20と21をフォワードのプラーマーとしてまた配列番号23をリバースのプライマーとして用い、鋳型に配列番号22の合成オリゴを使用してPCR反応を行なった。PCR条件は図13に示した。
【0141】
コントロールとして配列番号24をフォワードプライマーとして使用して増幅を行った。その結果、コントロールと比較して高い温度まで増幅断片が確認できた(図12)。以上の結果から、本発明で使用したプライマーを用いると、高い特異性で核酸断片の増幅が可能であることが示された。
【0142】
実施例5
図14は、本発明の第4の態様に係る標的核酸を伸長する方法を用い、且つプローブ固定化基板を使って標的核酸の検出を行う方法の模式図である。2種の連結プライマーのうちの下流側の5’端に検出用の配列を導入することで、PCR産物を簡便に検出することが可能となる。C型肝炎ウイルス(HCV)核酸の増幅を行ない、増幅産物を基板検出した例を以下に説明する。
【0143】
配列番号20と配列番号25をフォワードの連結プライマーとして、また5’ビオチン標識した配列番号35と配列番号34をリバースの連結プライマーとして用い、鋳型に配列番号22の合成オリゴを使用してPCR反応を行なった。PCR条件は図13に示すもので、アニール温度は48℃とした。
【0144】
ここで、図14に示すフォワードプライマー40がフォワードの連結プライマーであり、第1の核酸鎖が配列番号20で示される核酸であり、第2の核酸鎖が配列番号25で示される核酸である。また、配列Aは、配列番号20の5’末端から9塩基までの核酸であり、配列Bは、配列番号20の残りの9塩基である。第2の核酸鎖は、配列番号25で示される核酸であり、検出用配列Dが、配列番号25の5’末端から20塩基までであり、配列B’はその次の9塩基であり、配列Cは、3’末側の9塩基である。
【0145】
また、図14に示すリバースプライマー47が、リバースの連結プライマーであり、第1の核酸鎖が配列番号35で示される核酸であり、第2の核酸鎖が配列番号34で示される核酸である。また、配列Eは、配列番号35の5’末端から9塩基までの核酸であり、配列Fは次の9塩基である。配列F’は、配列番号34の5’末端から9塩基までの核酸であり、配列Gは3’側の9塩基である。また、リバースプライマー47の第2の核酸鎖である配列番号35で示される核酸の5’末端には、ビオチンが付与されている。
【0146】
図14に示すように、コントロールとしては、連結プライマーではない、分割しない通常のプライマーの5’端に20merの検出用配列51を結合したコントロールプライマー52(配列番号26)をフォワードプライマーとして用いて増幅を行った。また、鋳型DNAを添加しないサンプルも用意し配列番号20と配列番号25をフォワードの連結プライマーとして、同様に操作した。
【0147】
次いで、PCR産物にアビジン被覆磁気微粒子を添加して、ビオチン導入されたPCR産物をビーズ上にトラップした。上清を除去しビーズを洗浄した後、0.1NのNaOHを添加してアルカリ変性で一本鎖DNAを遊離させた後、HClで中和しターゲットサンプルとした。
【0148】
さらに、配列番号27(検出用配列20merの相補配列)の3’端をチオール修飾したプローブDNAを金電極上に固定化した基板にターゲットサンプルをハイブリダイズさせた。すなわち、サンプルを2×SSC緩衝液で希釈し、95℃で5分間熱変性を行った後、基板上に滴下し、35℃で30分ハイブリダイゼーションを行った。反応後、0.2×SSC緩衝液で15分間洗浄し、最後にヘキスト33258を作用させて、その電流応答を測定した。
【0149】
その結果、コントロールと同等以上の信号が得られた。また、鋳型のないサンプルでは電流値増加が認められなかった(図15)。
【0150】
配列番号25のプライマーには検出用配列が存在するため、PCR産物をそのまま基板測定すると、この部分が反応して信号が出てしまうことが予想されるが、ビオチン−アビジン精製によりPCR産物のみを得ているので、鋳型なしのサンプルでは信号なしとなったと考えられる。以上の結果から、本発明の態様に従うプライマーを用いると、高い特異性で核酸断片の増幅が可能であることが示された。また、プライマーに検出用配列を具備することにより、基板での簡便な検出が可能となることが示された。
【0151】
実施例6
本発明の第4の態様に係る標的核酸を伸長する方法を用い、且つプローブ固定化基板を使って標的核酸の検出を行う方法でモデルHCVの型判定を行った例を以下に示す。
【0152】
表1に示す通り、配列番号20、配列番号25は1b型を、配列番号28、配列番号29は2a型を、配列番号31、配列番号32は2b型を特異的に認識するフォワード連結プライマーである。
【0153】
【表1】
【0154】
さらに配列番号22は1b型の、配列番号30は2a型の、配列番号33は2b型のそれぞれHCVモデル合成DNAである。5’ビオチン標識した配列番号35、配列番号34をリバースの連結プライマーとして用いて、上記フォワード連結プライマーおよび鋳型の各組み合わせで実施例5と同様にPCRを行い、ビオチン−アビジン法で一本鎖ターゲットPCR産物を得た。検出用配列の相補鎖プローブ(配列番号27)を固定化した金電極にハイブリダイズさせ、ヘキスト33258の電流応答を測定したところ、表2の通り、型の合致した組み合わせでのみ、信号が得られた。
【0155】
【表2】
【0156】
以上の結果から、本発明で使用したプライマーを用いると、高い特異性で核酸断片の増幅が可能であること、および、プライマーに検出用配列を具備することにより、簡便なHCV型判定が可能となることが示された。
【0157】
【発明の効果】
本発明に基づく方法を用いると、プローブあるいはプライマー設計の自由度が向上され、且つ特異的、効率的および/または高感度に標的核酸を検出すること、または標的核酸を伸長することが可能になる。
【0158】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の態様に係る標的核酸を検出する方法の概要と従来の方法とを比較して示す模式図。
【図2】 本発明の態様に従い使用され得るプローブ固定化基体の例を示す図。
【図3】 本発明の態様に従い使用され得るプローブ固定化基体の例を示す図。
【図4】 第2の態様に係る標的核酸を検出する方法において得られる標的核酸と第1のプローブ、第2のプローブおよび第3のプローブとの結合の様子を示す模式図。
【図5】 第3の態様に係る標的核酸を検出する方法において得られる標的核酸と第1のプローブおよび第2のプローブとの結合の様子を示す模式図。
【図6】 第4の態様に係る標的核酸を伸長する方法の概要を示す模式図。
【図7】 実施例1で得られた結果を示すグラフ。
【図8】 実施例2で用いたプローブ固定化基体を示す図。
【図9】 本発明の態様を用いて実施例2で得られた結果を示すグラフ。
【図10】 コントロールについて実施例2で得られた結果を示すグラフ。
【図11】 実施例3で得られた結果を示すグラフ。
【図12】 実施例4で得られた増幅産物を示す電気泳動の写真。
【図13】 実施例4で行ったPCRの条件を示す図。
【図14】 第4の態様に係る標的核酸を伸長した後に、検出を行う方法の概要を示す模式図。
【図15】 実施例5で行った検出の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1.第1のプローブ 2、16、22、30.基体 3、6、44.標的核酸 4.第2のプローブ 5.従来のプローブ 7、27.第2のプローブ 8.第3のプローブ 11、12、13、14、17、18、19、20、21.プローブ 15.固定化領域 23、31.電極 24、32.パット 28、41、46.第1の核酸鎖 29、42、47.第2の核酸鎖 33.対極 34.参照極 40.フォワードプライマー 43、51.検出用配列 45.リバースプライマー 48.検出用プローブ 49.金電極 50.プローブ固定化基体 52.コントロールプライマー
Claims (11)
- 第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列(ただし、前記標的核酸の第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とが隣接する)を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定すること、
を具備することを特徴とする標的核酸の検出方法。 - 第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、C’−A’(5’→3’)で表される配列(ただし、前記標的核酸の第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とが隣接する)を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、A−B−S−X(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、B−C’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定すること、
を具備することを特徴とする標的核酸の検出方法。 - 第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列(ただし、前記標的核酸の第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とが隣接する)を含む標的核酸の伸長方法であって、
(1)配列Bと、標的配列A’に相補的な配列Aを含み、B−A(5’→3’)で表される第1の核酸鎖と、配列Bに相補的な配列B’と標的配列C’に相補的な配列Cを含みC−B’(5’→3’)で表される第2の核酸鎖とを含み、前記配列Bと配列B’がハイブリダイズすることによって連結してなるプライマーを、標的核酸と共に存在させること、および
(2)前記(1)に記載のプライマーと標的核酸とを適切な伸長反応が得られる条件下で反応させること、
を具備する標的核酸の伸長方法。 - 第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列を含む標的核酸の検出方法であって、
請求項3に記載の標的核酸の伸長を行うこと、得られた伸長産物の存在を確認することにより標的核酸を検出することを具備する方法。 - 第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とを含み、A’−C’(5’→3’)で表される配列(ただし、前記標的核酸の第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とが隣接する)を含む標的核酸を検出する方法であって、
(1)検出用配列Dと配列Bおよび標的配列A’に相補的な配列Aを含み、D−B−A(5’→3’)で表される第1の核酸鎖と、配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含みC−B’(5’→3’)で表される第2の核酸鎖とを含み、前記配列Bと配列B’がハイブリダイズすることによって連結してなる第1のプライマーを、第2のプライマーと共に、前記標的核酸に対して、適切な伸長反応が得られる条件下で反応させることと、
(2) 前記(1)で生じた反応産物を、検出用配列Dに相補的な配列を有するプローブを具備するプローブ固定化基体に対して適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させることと、
(3)前記(2)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定することと、
を具備する標的核酸を検出する方法。 - 第1の標的配列A’、第2の標的配列C’および第3の標的配列E’を含み、A’−C’−E’(5’→3’)で表される配列(ただし、前記標的核酸の第1の標的配列A’と第2の標的配列C’とが隣接すること、および第2の標的配列C’と第3の標的配列E’とが隣接すること。)を含む標的核酸の検出方法であって、
(1)試料と、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’、標的配列C’に相補的な配列Cおよび配列Dを含み、D−C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
配列Dに相補的な配列D’、標的配列E’に相補的な配列Eを含み、E−D’(5’→3’)で表される第3のプローブと、
を適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させること、および
(2)前記(1)の反応させることにより生じたハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸の存在を判定すること、
を具備することを特徴とする標的核酸の検出方法。 - 請求項1、2、4、5および6の何れか1項に記載の方法であって、前記第1のプローブが前記官能基Xを介して基体に固定されていることを特徴とする標的核酸の検出方法。
- 請求項1に記載の検出方法を行うためのアッセイキットであって、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと
を具備することを特徴とするアッセイキット。 - 請求項2に記載の検出方法を行うためのアッセイキットであって、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、A−B−S−X(5’→3’)で表される第1のプローブと
配列Bに相補的な配列B’および標的配列C’に相補的な配列Cを含み、B−C’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
を具備することを特徴とするアッセイキット。 - 請求項3に記載の伸長方法を行うためのアッセイキットであって、
配列Bと、標的配列A’に相補的な配列Aを含み、B−A(5’→3’)で表される第1の核酸鎖と、
配列Bに相補的な配列B’と標的配列C’に相補的な配列Cを含みC−B’(5’→3’)で表される第2の核酸鎖と、
を具備するアッセイキット。 - 請求項6に記載の検出方法を行うためのアッセイキットであって、
標的配列A’に相補的な配列A、配列B、スペーサSおよび官能基Xを含み、X−S−B−A(5’→3’)で表される第1のプローブと、
配列Bに相補的な配列B’、標的配列C’に相補的な配列Cおよび配列Dを含み、D−C−B’(5’→3’)で表される第2のプローブと、
配列Dに相補的な配列D’、標的配列E’に相補的な配列Eを含み、E−D’(5’→3’)で表される第3のプローブと、
を具備することを特徴とするアッセイキット。
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