JP4034635B2 - トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れ、良好な発色を行うことができるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真等において静電荷像を現像する方式として、乾式現像方式が多用されている。乾式現像方式において、通常、トナーはキャリアと呼ばれる鉄粉、ガラスビーズ等との摩擦によって帯電し、これが感光体上の静電潜像に電気的引力によって付着し、次に用紙上に転写され、加熱ローラ等によって定着されて永久可視像となる。
【0003】
定着の方法としては、トナーに対して離型性を有する材料で表面を形成した熱定着ローラの表面に、被定着シートのトナー画像を圧接触させながら通過せしめることにより行う加熱ローラ法が汎用されている。
【0004】
この熱定着ローラ法において、消費電力等の経済性を向上させるため、及び、複写速度を上げるため、より低温で定着可能なトナーが求められている。
しかしながら、上記の低温定着性を改善しようとすると、トナーの一部が熱定着ローラ表面に付着し、それが紙に再転写するといったオフセット現象が起こりやすくなったり、樹脂同士が様々な環境を通して受ける熱によってトナーが凝集するブロッキング現象が起こりやすくなるといった問題がある。
【0005】
これらの問題に対して、特許文献1には、トナーのバインダー樹脂として、テレフタル酸と炭素数2〜6の直鎖型アルキレングリコールから導かれる単位とを全使用モノマー単位に対して50モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂を用いることが提案されている。
しかしながら、この技術では、結晶性ポリエステル樹脂のみを用いているので、定着可能な温度幅が狭く、低温定着性を損なうことなく、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性を保つことが困難であった。
【0006】
特許文献2には、トナーのバインダー樹脂として、3価以上の多価単量体、芳香族ジカルボン酸、及び、分岐鎖を持つ脂肪族アルコールを50モル%以上含む脂肪族アルコールを重合してなる非結晶性ポリエステル樹脂を用いることが提案されている。
しかしながら、この技術では、非結晶性ポリエステル樹脂のみを用いているので、低温定着性が充分ではなかった。
【0007】
特許文献3及び特許文献4には低温定着性と高温耐高温オフセット性のバランスに優れたトナーとして、軟化点の異なる2種類のポリエステルをトナー用樹脂として含有するトナーが提案されている。
しかしながら、上記2種類のポリエステルの相溶性は充分とはいえず軟化点が低いポリエステルがブロッキングを起こしやすくしたり、定着ローラに付着しフィルミングを起こしやすくしたりするといった問題があり、また、相溶性が充分ではないので樹脂の透明性も低いという問題もあった。
【0008】
特許文献5には、トナーのバインダー樹脂として、低融点結晶性ポリエステルと高融点結晶性ポリエステルのブロック共重合体を用いることが提案されている。しかしながら、この技術では、バインダー樹脂は白濁した樹脂となるため透明な樹脂を得ることができないといった問題があった。
【0009】
また、トナー用樹脂のガラス転移点温度以上にトナーがさらされるとブロッキング現象が起こりやすいことから、ブロッキング現象を起こしにくいトナー用ポリエステル樹脂の検討も進められている。低温定着温度はそれほど低くはないがブロッキング現象を起こしにくいトナー用ポリエステル樹脂として、例えば、特許文献6にはポリエステル樹脂の組成を特定組成とすると効果があることが示されており、また、特許文献7にはポリエステル樹脂の組成を特定しガラス転移点温度を45〜70℃とすると効果があることが示されている。
【0010】
しかしながら、これらの技術では常温でのブロッキング現象は発現しにくくはなるものの、これらのトナー用樹脂を用いてもトナー用樹脂のガラス転移点温度付近の温度にトナーがさらされるとやはりブロッキング現象を起こしてしまうという問題があった。
【0011】
【特許文献1】
特許第2988703号公報
【特許文献2】
特許第2704282号公報
【特許文献3】
特開平4−97366号公報
【特許文献4】
特開平4−313760号公報
【特許文献5】
特公平5−44032号公報
【特許文献6】
特開平4−337741号公報
【特許文献7】
特開平10−36490号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れ、良好な発色を行うことができるトナーを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、融点が180〜280℃の結晶性ポリマー成分とガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有するトナーである。
【0014】
なお、本明細書において、結晶性ポリマーとは、示差走査熱量計により示差熱を測定したときに、鋭く明瞭な融点ピークを示し、結晶化度が10%を超えるポリマーを意味し、非結晶性ポリエステルとは、示差走査熱量計により示差熱を測定したときに、鋭く明瞭な融点ピークを示さず、結晶化度が10%以下であるポリエステルを意味する。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
本発明のトナーは、トナー用樹脂組成物と融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有する。
上記トナー用樹脂組成物は、融点が180〜280℃の結晶性ポリマー成分(以下、結晶性ポリマー成分ともいう)とガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステル成分(以下、非結晶性ポリエステル成分ともいう)とを含有する。
本発明者らは、このような結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物を用いれば、耐高温オフセット性に優れ、しかも低温定着性、耐ブロッキング性にも優れたトナーが得られることを見出し、また、このようなトナー用樹脂組成物に融点が70〜120℃である低融点化合物を配合することにより、更に低温定着性、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れるトナーが得られることを見出した。
【0016】
これは、トナー用樹脂組成物中の非結晶性ポリエステル成分及び融点が70〜120℃である低融点化合物により低温定着性を確保できる一方で、結晶性ポリマー成分が物理的架橋構造を形成し得ることから耐高温オフセット性を改善できることによると考えられる。ここで、物理的架橋構造とは、ポリマー鎖が化学結合を介して架橋しているのではなく、ポリマー鎖間の相互作用により疑似架橋を形成している状態をいう。物理的架橋は化学的架橋と異なり、温度の上昇や強い圧力等によって相互作用が弱くなることから、低温では物理的架橋構造をとって流動しないポリマー成分も、温度の上昇や強い圧力等により流動することが可能となると考えられる。
【0017】
上記結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物としては、結晶性ポリマーセグメントと非結晶性ポリエステルセグメントとのブロック共重合体を主成分とするもの、結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとの混合物を主成分とするものが挙げられる。
融点が180〜280℃の結晶性ポリマーセグメントとガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステルセグメントとのブロック共重合体を主成分とするトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有するトナーもまた、本発明の1つである。
融点が180〜280℃の結晶性ポリマーとガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステルとの混合物を主成分とするトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有するトナーもまた、本発明の1つである。
【0018】
上記トナー用樹脂組成物は、結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有する。
上記結晶性ポリマー成分の融点の下限は180℃、上限は280℃である。180℃未満であると、耐高温オフセット性に劣り、280℃を超えると、非結晶性ポリエステル成分との混合時に280℃を超える高温で溶融させる必要があることから、生産性が格段に悪化してしまう。好ましい下限は200℃、好ましい上限は240℃である。
【0019】
上記結晶性ポリマー成分の重量平均分子量の下限は3000、上限は30万である。3000未満であると、充分な耐高温オフセット性が得られず、30万を超えると、低温定着性に劣る。好ましい下限は8000、上限は25万であり、より好ましい下限は2万、より好ましい上限は20万である。
【0020】
上記結晶性ポリマー成分としては特に限定されないが、結晶性ポリエステル又は結晶性ポリアミドが好適である。
上記結晶性ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得ることができる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。なかでも、結晶性を付与するために、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び、これらの無水物及び低級アルキルエステルが好適に用いられる。
【0021】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類等が挙げられる。
【0022】
上記結晶性ポリエステルとしては、低温定着性と高温耐オフセット性のバランスに優れるトナーが得られることから、1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとテレフタル酸とを共重合させたものが好ましい。
更に高温耐オフセット性を向上するためには、高融点の結晶性ポリエステルセグメントが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が好ましい。更に非結晶性ポリエステルとの相溶性が良好で結晶化速度が速いことから、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。
【0023】
上記結晶性ポリアミドとしては、4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族ナイロン;芳香族ナイロン、脂環族ナイロン等が挙げられる。
結晶性ポリアミドは分子間の凝集力が強いため、ポリエステルに対して少量用いるだけで耐高温オフセット性を発現させることができ、樹脂自体の強度を増大することができる。
【0024】
上記非結晶性ポリエステル成分のガラス転移点温度の下限は50℃、上限は80℃である。50℃未満であると、高温耐オフセット性や耐ブロッキング性が充分に得られず、80℃を超えると、低温定着性に劣る。好ましい下限は55℃、好ましい上限は65℃である。
【0025】
上記非結晶性ポリエステル成分は、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得ることができる。
非結晶性ポリエステルのガラス転移点温度は、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸はガラス転移点温度を向上させる働きがあり、セバシン酸やアジピン酸等の長鎖の脂肪族ジカルボン酸はガラス転移点温度を低下させる働きがあるのでこれらのジカルボン酸を適宜組み合わせることにより目的のガラス転移点温度を達成することができる。しかし、芳香族ジカルボン酸と長鎖の脂肪族ジカルボン酸とを適宜組み合わせることによって目的のガラス転移点温度を達成することができたとしても、軟化温度が高くなりすぎる傾向がある。
そこで、上記非結晶性ポリエステルは、屈曲した分子構造を分子鎖中に導入できる2価の屈曲モノマー又は分岐鎖を有する2価のモノマーのいずれかを少なくとも含有する多価カルボン酸と多価アルコールを含むモノマー混合物を重合させてなることが好ましい。
これら2価の屈曲モノマーや分岐鎖を有する2価のモノマーを含有するモノマー混合物を重合してなるポリマーは、目的のガラス転移点温度と低い軟化温度をより容易に両立させることができ、結晶化を効果的に抑制することができる。
【0026】
上記2価の屈曲モノマーとしては、オルト位又はメタ位がカルボキシル基で置換された芳香族ジカルボン酸、オルト位又はメタ位がヒドロキシル基で置換された芳香族ジオール、非対称位置にカルボキシル基を有する多環芳香族ジカルボン酸、非対称位置にヒドロキシル基を有する多環芳香族ジオール等ポリマーの分子鎖に屈曲した分子構造を導入できるモノマーであればジカルボン酸やジオールに限定されず、例えば、ジカルボン酸の無水物や低級エステル、モノヒドロキシモノカルボン酸等であってもよく、例えば、無水フタル酸、o−フタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物や低級エステル、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸等のモノヒドロキシモノカルボン酸、カテコール等のジオールが挙げられる。
【0027】
また、分岐鎖を有する2価のモノマーは、分岐鎖の立体障害によりポリマーの結晶化を効果的に抑制する。結晶化を効果的に抑制できる分岐鎖を有するモノマーとしては、分岐アルキル鎖を有する脂肪族ジオールや、分岐アルキル鎖を有する脂環式ジオール等が挙げられる。なお、脂環式ジオールとしては、複数の脂環式ジオールが分岐アルキレン鎖により連結された脂環式ジオールが好ましい。
上記分岐鎖を有する2価のモノマーとしては特に限定されず、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2‐ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物等の脂環族ジオール類等が挙げられる。
なかでも、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール、並びに、エチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールを主成分とするモノマー混合物を重合してなる非結晶性ポリエステルは、低温定着性、透明性に優れることから好適である。
【0028】
上記結晶性ポリマー成分と上記非結晶性ポリエステル成分とは相溶するものであることが好ましい。両者が相溶することによって、得られるトナー用樹脂組成物は無色透明となり、良好な発色を行うことができるカラートナー用樹脂組成物として好適に用いることができ、また、高い樹脂強度を有しているので、耐高温オフセット性に優れたトナー用樹脂組成物として好適に用いることができる。
なお、上記相溶とは、上記結晶性ポリマー成分と上記非結晶性ポリエステル成分とが、均一に混和する状態をいい、これらは、完全に相溶しても、また一部が相溶してもよい。
【0029】
上記結晶性ポリマー成分と上記非結晶性ポリエステル成分とが相溶するためには、上記結晶性ポリマー成分と上記非結晶性ポリエステルとが構成モノマーとして、例えばテレフタル酸等の共通のモノマー成分を有することが好ましい。例えば、上記結晶性ポリマー成分が、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを主成分とするモノマー混合物を重合してなるものであり、一方、非結晶性ポリエステル成分は、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール、並びに、エチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールとを主成分とするモノマー混合物を重合してなるものであるときには、両者はよく相溶する。
【0030】
上記結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物が、結晶性ポリマーセグメントと非結晶性ポリエステルセグメントとのブロック共重合体を主成分とする場合、ブロック共重合体における結晶性ポリエステルセグメントと非結晶性ポリエステルセグメントとの配合量としては、結晶性ポリエステルセグメントの配合量の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が70重量%であり、非結晶性ポリエステルセグメントの配合量の好ましい下限が30重量%、好ましい上限が99重量%である。結晶性ポリエステルセグメントの配合量が1重量%未満であると、耐高温オフセット性が不充分となる場合があり、70重量%を超えると、低温定着性が不充分となる場合がある。結晶性ポリエステルセグメントの配合量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は70重量%であり、非結晶性ポリエステルセグメントの配合量の好ましい下限は30重量%、好ましい上限は97重量%である。
【0031】
また、上記ブロック共重合体の重量平均分子量の好ましい下限は2万であり、好ましい上限は20万である。2万未満であると、充分な耐高温オフセット性が得られないことがあり、20万を超えると、低温定着性に劣ったものとなることがある。より好ましい下限は3万、より好ましい上限は15万である。
【0032】
上記結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物が、結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとの混合物を主成分とするものである場合、結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとの含有量としては、結晶性ポリマーの含有量の好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が30重量%であり、非結晶性ポリエステルの含有量の好ましい下限が99.5重量%、好ましい上限が70重量%である。結晶性ポリエステルの含有量が0.5重量%未満であると、耐高温オフセット性が劣ることがあり、30重量%を超えると、低温定着性が劣ることがある。より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は20重量%である。
【0033】
上記トナー用樹脂組成物は、更に、重量平均分子量が2万〜30万、好ましくは3万〜20万の非結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。このような高分子量の非結晶性ポリエステルを配合することにより、本発明のトナーの耐高温オフセット性を更に向上させることができる。このような高分子量の非結晶性ポリエステルの配合量としては特に限定されないが、上記トナー用樹脂組成物全体に対して好ましい下限は2重量%、好ましい上限は30重量%である。2重量%未満であると、充分な耐高温オフセット性向上効果が得られないことがあり、30重量%を超えると、低温定着性に劣ることがある。
【0034】
上記トナー用樹脂組成物は、結晶核剤を含有することが好ましい。上記結晶核剤を含有することにより、上記結晶性ポリマー成分の結晶化を促進することができる。上記結晶核剤としては特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化鉄(III)、酸化チタン等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸鉛、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム等の無機塩;シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム等の有機酸塩;タルク、カオリン、クレイマイカ、ウオラストナイト等の粘土類等が挙げられる。また、上記結晶核剤の形状としては特に限定されず、板状、球状の他、無定形であってもよい。
【0035】
上記トナー用樹脂組成物の酸価としては特に限定されないが、酸価が10未満である場合には帯電安定性に優れたトナーを得ることができ、酸価が10〜30である場合には濡れ性が向上し、定着性、保存性に優れたトナーを得ることができる。
【0036】
上記結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物が、結晶性ポリマーセグメントと非結晶性ポリエステルセグメントとのブロック共重合体である場合、上記ブロック共重合体を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、重量平均分子量2000〜10万の結晶性ポリマーと、重量平均分子量2000〜30000の非結晶性ポリエステルとを、リン系化合物の存在下でブロック重合する方法等が挙げられる。このような分子量を有する結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとを用いることにより、反応効率を落とさずに、ブロック化を制御することができる。
【0037】
上記結晶性ポリマー成分と非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物が、結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとの混合物を主成分とするものである場合、上記トナー用樹脂組成物を作製する方法としては特に限定されず、例えば、別々に結晶性ポリマーと非結晶性ポリエステルとを作製し、結晶性ポリマーの融点以上の温度下で混合する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明のトナーは、融点が70〜120℃である低融点化合物を含有する。
上記低融点化合物の融点の下限は70℃、上限は120℃である。70℃未満であると、得られるトナーの保存性、流動性が劣り、120℃を超えると、低温定着性の向上が不充分となる。
【0039】
上記融点が70〜120℃である低融点化合物としては特に限定されないが、結晶性ポリエステル又はワックスが好適である。
上記融点が70〜120℃である低融点化合物として結晶性ポリエステルを用いる場合には、上記結晶性ポリエステルとしては特に限定されないが、脂肪族ポリエステルが好適に用いられる。脂肪族ポリエステルはポリエステル系のトナー用樹脂組成物との相溶性に優れ、トナー粉砕時の低融点化合物の脱落が起こらないため、低温定着性の向上効果に優れる。また、脂肪族ポリエステルはワックスに比較して、分子量が大きいため、トナーからのブリードが起こりにくく、トナーの保存性、流動性に優れる。
なお、上記融点が70〜120℃である低融点化合物として結晶性ポリエステルを用いる場合には、融点が70〜120℃である低融点化合物はトナー用樹脂組成物に配合されていてもよい。
【0040】
上記融点が70〜120℃である低融点化合物としてワックスを用いる場合には、上記ワックスは離型剤としての役割も果たし得る。
上記ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックスやパラフィン系ワックス;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪族エステル系ワックス;脱酸カルナバワックス;バルチミン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和脂肪族酸系ワックス;プラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪族酸系ワックス;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール系ワックスや脂肪族アルコール系ワックス;ソルビトール等の多価アルコール系ワックス;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド系ワックス;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド系ワックス;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’‐ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和酸アミド系ワックス;m‐キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’‐ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族ビスアミド系ワックス;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;スチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーをポリオレフィンにグラフト重合させたグラフト変性ワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとを反応させた部分エステルワックス;植物性油脂を水素添加して得られるヒドロキシル基を有するメチルエステルワックス;エチレン成分の含有割合が高いエチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス;アクリル酸等の飽和ステアリルアクリレートワックス等の長鎖アルキルアクリレートワックス;ベンジルアクリレートワックス等の芳香族アクリレートワックス等が挙げられる。なかでも、長鎖アルキルアクリレートワックスや芳香族アクリレートワックスは、トナー用樹脂組成物との相溶性に優れ透明性の高いトナーが得られることから好適である。これらのワックスは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、特に融点が30℃以上異なる2種以上のワックスを併用することが好ましい。また、上記ワックスのトナー中における大きさとしては特に限定されないが、長径が2μm以下であることが好ましい。
【0041】
上記融点が70〜120℃である低融点化合物は、上記トナー用樹脂組成物とのSP値の差が0.2〜3.0であることが好ましい。0.2未満であると、トナー用樹脂組成物のガラス転移温度の低下が著しく、保存性に劣ることがあり、3.0を超えるとトナー用樹脂組成物との相溶性が不十分なため、トナー粉砕時に低融点化合物が脱落しやすくなり、低温定着性が劣る。
なお、SP値は、物質の表面の親和性を示す指標であり、異なったSP値の溶剤に対する溶解性から評価することができる。
【0042】
上記融点が70〜120℃である低融点化合物の本発明のトナー中における分散径の好ましい下限は0.2μm、好ましい上限は3μmである。0.2μm未満であると、トナー用樹脂組成物のガラス転移点温度の低下が著しく、保存性に劣ることがあり、3μmを超えると、トナー用樹脂組成物との相溶性が不充分となり、トナー粉砕時に低融点化合物が脱落しやすくなり低温定着性が劣ることがある。より好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は2.0μmである。
【0043】
本発明のトナーにおける上記融点が70〜120℃である低融点化合物の配合量の好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は10重量%である。0.2重量%未満であると、低温定着性の向上効果が不充分となることがあり、10重量%を超えると、保存性に劣ることがある。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は4重量%である。
【0044】
本発明のトナーは、必要に応じて、着色剤、電荷制御剤、磁性体、ゴム状ポリマー、スチレン−アクリル酸エステル共重合体からなるトナー用樹脂、キャリア、クリーニング性向上剤、荷電調整剤、有機外添剤等を含有してもよい。
【0045】
上記着色剤としては特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローダミン−B、アゾ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、スレン系顔料、インジコ系顔料、キノフタロン、ジケトピロロピロール、キナクリドン等が挙げられる。
これらの着色剤の配合量の好ましい下限は、通常、トナー用樹脂組成物100重量部に対して1重量部、好ましい上限は10重量部である。
【0046】
上記電荷制御剤には、正帯電用と負帯電用との2種類がある。上記正帯電用電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジン等が挙げられ、負帯電用電荷制御剤としては、例えば、クロム錯体、鉄錯体等が挙げられる。なかでも、酸変性荷電制御剤が好適であり、サリチル酸変性であるとトナー用樹脂組成物と架橋してゴム弾性を発現する。ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム錯体ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛錯体等のアルキル置換サルチル酸の金属錯体は、無色又は淡色であるためトナーの色調に影響を与えないので好ましい。また、上記電荷制御剤としては、荷電制御樹脂(CCR)も好適に用いることができる。上記荷電制御樹脂としては、例えば、4級アンモニウム塩を含むモノマー、有機フッ素系モノマー、スルホン酸基含有モノマー、フェニルマレイミド系モノマー等を共重合したスチレンアクリルポリマー等が挙げられる。
これらの電荷制御剤の配合量の好ましい下限は、通常、トナー用樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。
【0047】
上記磁性体としては、例えば、商品名「TAROX BLシリーズ」(チタン工業社製)、商品名「EPTシリーズ」、商品名「MATシリーズ」、商品名「MTSシリーズ」(いずれも戸田工業社製)、商品名「DCMシリーズ」(同和鉄粉社製)、商品名「KBCシリーズ」、商品名「KBIシリーズ」、商品名「KBFシリーズ」、商品名「KBPシリーズ」(いずれも関東電化工業社製)、商品名「Bayoxide Eシリーズ」(Bayer AG社製)等が挙げられる。
【0048】
上記ゴム状ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル‐ブタジエン共重合体)、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロスルフィン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム等の合成ゴム、ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー等のエラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体等の芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体が挙げられる。なお、ブロック共重合体にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体等が混合されてあってもよく、これらの水素添加物が混合されてあってもよい。
また、末端に水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基等の極性基を有する芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体からなるゴム状ポリマーは、トナーとの親和性に優れるので好ましい。これら末端に極性基を有するブロック共重合体はリビング重合により得ることができる。
ゴム状ポリマーは、トナーに含まれる樹脂の樹脂強度を向上させることができる。よって、ゴム状ポリマーを含有するトナーは、トナーのフィルミング現象を防止することができ、また、高い樹脂強度が必要な非磁性1成分トナーに好適なトナーが得られる。
【0049】
上記キャリアとしては、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属単体、合金、酸化物、フェライト等が挙げられる。キャリアは表面が酸化されていてもよい。また、キャリア表面がポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレンポリマー、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンポリマー、ポリエステル、ジ−tert−ブチルサリチル酸の金属錯体、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン塩基性染料、シリカ粉末、アルミナ粉末等で被覆されていてもよい。キャリアを被覆することにより好ましい摩擦帯電性をキャリアに付与することができる。
【0050】
上記クリーニング性向上剤としては、トナー粒子と混合することによりトナーの流動性が向上するものであれば特に限定されない。トナーの流動性が向上するとトナーがクリーニングブレードに付着しにくくなる。例えば、フッ化ビニリデンポリマー等のフッソ系ポリマー粉末、アクリル酸エステルポリマー等のアクリル系ポリマー粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の脂肪酸金属塩粉末、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末等の金属酸化物粉末、微粉末シリカ粉末、シランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコンオイル等により表面処理が施されたシリカ粉末、ヒュームドシリカ等が挙げられる。また、上記クリーニング性向上剤としては、アクリル系ポリマーやスチレン系ポリマー等からなる粒径0.05〜0.5μmの球体も好適に用いることができる。
【0051】
本発明のトナーは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定したときに、重量平均分子量が2000以下の位置にピークが認められることが好ましい。これにより定着性が向上する。また、本発明のトナーは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定したときに、重量平均分子量が1万以上の位置にピークが認められることが好ましい。これにより耐水性が向上する。
【0052】
本発明のトナーの粒径としては特に限定されないが、5μm以下である場合には特に高い画質が得られる。
本発明のトナーの含水分量としては特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は0.2重量%である。0.01重量%未満であると、製造上の問題から製造が困難となり、0.2重量%を超えると、充分な帯電安定性が得られないことがある。
本発明のトナーの安息角としては特に限定されないが、23℃、湿度60%における安息角の好ましい下限は1度、好ましい上限は30度である。1度未満であると、トナーのハンドリングが困難となることがあり、30度を超えると、トナーの流動性が不足することがある。なお、上記トナーの安息角は、例えば、パウダーテスター(例えば、ホソカワミクロン社製PT−N型等)等により測定することができる。
【0053】
本発明のトナーの表面粗さとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は2μmである。0.01μm未満であると、印字を行うことが困難となることがあり、2μmを超えると得られる画像の表面光沢が不充分となることがある。なお、上記表面粗さは、本発明のトナーを用いて印字した画像の印字部をJIS B 0601に算術平均粗さ(Ra)の測定方法として規定される方法により測定することができる。
【0054】
本発明のトナーを、特に表面光沢に優れることが要求される用途に用いる場合には、本発明のトナーの粘度としては、150℃における溶融粘度の好ましい下限が100mPa・s、好ましい上限が5万mPa・sである。100mPa・s未満であると、保存性が劣ることがあり、5万mPa・sを超えると、充分な表面光沢が得られないことがある。より好ましい上限は1万mPa・sである。
【0055】
本発明のトナーは、離型オイルが塗布された定着ローラにより定着されてもよいが、定着ローラに離型オイルが塗布されていなくても良好な定着性を発現することができる。
【0056】
本発明のトナーは、低温から高温にわたる広い範囲で良好な定着性を発現することができ、低温定着性と耐高温オフセット性、耐ブロッキング性との両方に優れる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
<高融点結晶性ポリエステル(共重合用)の製造>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル、ジオール成分として1,4−ブタンジオール120モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、220℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、高融点結晶性ポリエステルを得た。
【0059】
<非結晶性ポリエステル(共重合用)の製造>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル95モル、屈曲モノマー成分としてイソフタル酸ジメチル5モル、分岐モノマー成分としてネオペンチレングリコール70モル、他のジオールとしてエチレングリコール50モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、200℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、非結晶性ポリエステルを得た。
【0060】
<ポリエステルブロック共重合体の製造>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、得られた高融点結晶性ポリエステル30重量%、非結晶性ポリエステル70重量%、及び亜リン酸を結晶性ポリエステルと非結晶性ポリエステルの製造に際して使用されたTTBの合計量の等モルよりやや過剰となる0.11モル仕込み、反応容器中の結晶が熔融したところで温度を一定に保ち、系内を5mmHg以下に減圧し、攪拌回転数60rpmで反応させ、当初濁っていた反応容器内の溶融体が透明になったところで反応を終了し、ポリエステルブロック共重合体を得た。
【0061】
<非結晶性ポリエステル(A)の製造(ブレンド用)>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル、屈曲モノマー成分としてイソフタル酸5モル、無水フタル酸5モル、分岐モノマー成分としてネオペンチレングリコール60モル、他のジオールとしてエチレングリコール60モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、200℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、非結晶性ポリエステル(A)を得た。
【0062】
<トナー樹脂組成物およびトナーの製造>
得られたポリエステルブロック共重合体30重量部、非結晶性ポリエステル(A)70部を溶融混練してトナー用樹脂組成物を得た。
得られたトナー用樹脂組成物100重量部に荷電制御剤(TN−105:保土谷化学社製)1重量部、カーミン6Bに属するマゼンダ顔料5重量部および脂肪族ポリエステル(ODX1055:大日本インキ社製)1重量部をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、130℃で溶融混練し、冷却、粗粉砕した。その後、ジェットミル(ラボジェット:日本ニューマチック社製)で微粉砕して、平均粒径約8〜12μmのトナー粉末を得た。更に、このトナー粉末を分級機(MDS−2:日本ニューマチック社製)で分級して、平均粒径約10μmのトナー微粉末を得た。このトナー微粉末100重量部に、疎水性シリカ(R972:日本アエロジル社製)1.0重量部を均一に混合(外添)してトナーを製造した。
【0063】
(実施例2)
<結晶性ポリエステルの製造>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル、ジオール成分として1,4−ブタンジオール120モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、220℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、高融点結晶性ポリエステルを得た。
【0064】
<非結晶性ポリエステル(A)の製造(ブレンド用)>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル、屈曲モノマー成分としてイソフタル酸5モル、無水フタル酸5モル、分岐モノマー成分としてネオペンチレングリコール60モル、他のジオールとしてエチレングリコール60モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、200℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、非結晶性ポリエステル(A)を得た。
【0065】
<非結晶性ポリエステル(B)の製造(ブレンド用)>
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル、屈曲モノマー成分としてイソフタル酸10モル、分岐モノマー成分としてネオペンチレングリコール60モル、他のジオールとしてエチレングリコール60モル、エステル化縮合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBB)0.05モルを仕込み、200℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、非結晶性ポリエステル(B)を得た。
【0066】
<トナー樹脂組成物およびトナーの製造>
得られた高融点結晶性ポリエステル10重量部、非結晶性ポリエステル(A)70重量部及び非結晶性ポリエステル(B)30重量部を溶融混練してトナー用樹脂組成物を得た。
得られたトナー用樹脂組成物100重量部に荷電制御剤(TN−105:保土谷化学社製)1重量部、カーミン6Bに属するマゼンダ顔料5重量部及びカルナバワックス1重量部をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、130℃で溶融混練し、冷却、粗粉砕した。その後、ジェットミル(ラボジェット:日本ニューマチック社製)で微粉砕して、平均粒径約8〜12μmのトナー粉末を得た。更に、このトナー粉末を分級機(MDS−2:日本ニューマチック社製)で分級して、平均粒径約10μmのトナー微粉末を得た。このトナー微粉末100重量部に、疎水性シリカ(R972:日本アエロジル社製)1.0重量部を均一に混合(外添)してトナーを製造した。
【0067】
(実施例3)
トナー用樹脂組成物の製造において、結晶性ポリエステルの配合量を30重量部とした以外は、実施例2と同様にしてトナー用樹脂組成物およびトナーを得た。
【0068】
(比較例1)
60Lの反応容器に蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌措置を常法に従い設置し、窒素ガス雰囲気下にて、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸99モル、トリメリット酸1モル、ジオール成分としてビスフェノールAプロピレンオキシド付加物105モル、エステル化縮合触媒としてジブチル錫オキシド0.05モルを仕込み、200℃で、生成する水及びメタノールを蒸留塔より留出させながらエステル化反応を行なった。蒸留塔より水及びメタノールが留出しなくなった時点でエステル化反応を終了した。
エステル化反応終了後、60Lの反応容器の蒸留塔への開口部を閉鎖すると共に、真空ポンプからのラインを開き、反応系内を5mmHg以下に減圧し、240℃、攪拌回転数60rpmで縮合反応を行なうとともに縮合反応で生じた遊離ジオールを反応系外へ留出させて、非結晶性ポリエステルを得た。
得られた非結晶性ポリエステルのみをトナー用樹脂として用いた以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0069】
(評価)
各実施例及び比較例で作製したトナーについて、以下の方法により評価を行った。結果は表1及び表2に示した。
【0070】
[分子量及び分子量分布]
(1)結晶性ポリエステル
GPC測定装置として、日本ミリポアリミテッド社製のHTR−Cを用い、カラムには昭和電工社製のHFIP−806M(2本)を直列につないで使用し、重量平均分子量を測定した。測定条件は、温度は40℃、試料は0.1重量%ヒドロキシフルオロイソプロパノール(HFIP)溶液(0.45μmのフィルターを通過したもの)、注入量は100μL、キャリア溶媒としては1L当たりTFAを0.68g含むHFIPを用いた。校正試料として標準ポリスチレンを用いた。
(2)非結晶性ポリエステルおよびポリエステルブロック共重合体
GPC測定装置として、日本ミリポアリミテッド社製のHTR−Cを用い、カラムには昭和電工社製のKF−800P(1本)、KF−806M(2本)、KF−802.5(1本)を直列につないで使用し、重量平均分子量を測定した。測定条件は、温度は40℃、試料は0.2重量%THF溶液(0.45μmのフィルターを通過したもの)、注入量は100μLキャリア溶媒はTHF、校正試料として標準ポリスチレンを用いた。
(3)トナー用樹脂組成物およびトナー
GPC測定装置として、日本ミリポアリミテッド社製のHTR−Cを用い、カラムには昭和電工社製のKF−800P(1本)、KF−806M(2本)、KF−802.5(1本)を直列につないで使用し、分子量及び分子量分布を測定した。測定条件は、温度は40℃、試料は0.2重量%THF溶液(0.45μmのフィルターを通過したもの)、注入量は100μLキャリア溶媒はTHF、校正試料として標準ポリスチレンを用いた。
【0071】
[ガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計としてセイコー電子工業社製のDSC−6200Rを用いて、昇温速度10℃/分で、JIS K 7121に準拠して測定し、該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)に記載されている中間ガラス転移温度を求めた。
【0072】
[結晶融点(Tm)]
示差走査熱量計としてセイコー電子工業社製のDSC−6200Rを用いて、昇温速度10℃/分で試料の10mgを加熱し、JIS K 7121に準拠して測定し、該規格(9.1「融解温度の求め方」)に記載されている融解ピーク値を求め、これを結晶融点Tmとした。
【0073】
[色調]
各実施例及び比較例で得られたトナー用樹脂の色を目視にて観察した。
【0074】
[ブロッキング]
得られたトナー10gを100mLサンプル瓶に取り、50℃の恒温槽中に8時間放置した後、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用いて250μmのフィルターでふるいにかけフィルター上に凝集物が残存するかを観察し、凝集物がある場合には、トナー重量に対する凝集物の重量(重量%)を求めた。
【0075】
[フィルミング評価]
1万枚印刷を行い、定着ローラにトナーが付着していないかを目視で観察し、トナーの付着が見られないものをフィルミングなしと評価した。
【0076】
[グロス評価]
グロスメータ(光沢度計、スガ試験機社製、UGV−50)を用い、本発明のトナー用樹脂を用いて調製した黒色トナーで黒く塗りつぶされた試験紙をグロスメータに取りつけ反射角が75度となるよう光路を設定し光沢度を測定した。
【0077】
[高温オフセット温度及び低温オフセット温度]
各実施例及び比較例で得たトナー6.5重量部を平均粒径50〜80μmの鉄粉キャリア93.5重量部と混合して現像剤を作製した。電子写真複写機としてコニカ社製のUBIX4160AFを熱定着ローラの設定温度が最大240℃まで変えられるように改造したものを用いた。
熱定着ローラの設定温度を段階的に変化させて、各設定温度の熱定着ローラによって未定着トナー像を転写紙に定着させた複写物を得た。
得られた複写物の余白部分や定着画像がトナーにより汚されているか否かを観察し、汚れが生じない温度領域を非オフセット温度領域とした。また、非オフセット温度領域の最大値を高温オフセット温度とし、最小値を低温オフセット温度とした。
【0078】
[トナーの最低定着温度]
電子写真複写機の熱定着ローラの設定温度を段階的に変えて複写を行ない、余白部分や定着画像にかぶりが発生することなく余白部分や定着画像がトナーにより汚されておらず、得られた複写物の定着画像をタイプライター用砂消しゴムで擦ったとき、定着画像の濃度の低下が10%未満である場合を定着良好と判定し、その時の最低温度を求めた。
なお、画像の濃度はマクベス光度計を用いて測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れ、良好な発色を行うことができるトナーを提供できる。
Claims (7)
- 融点が180〜280℃の結晶性ポリマー成分とガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステル成分とを含有するトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有することを特徴とするトナー。
- 融点が180〜280℃の結晶性ポリマーセグメントとガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステルセグメントとのブロック共重合体を主成分とするトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有することを特徴とするトナー。
- 融点が180〜280℃の結晶性ポリマーとガラス転移点温度が50〜80℃の非結晶性ポリエステルとの混合物を主成分とするトナー用樹脂組成物と、融点が70〜120℃である低融点化合物とを含有することを特徴とするトナー。
- 結晶性ポリマーは、結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のトナー。
- 結晶性ポリマーは、ポリアミドであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のトナー。
- 低融点化合物は、結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のトナー。
- 低融点化合物は、ワックスであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のトナー。
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