JP4024097B2 - 参照電極及びこれを備える電解セル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、参照電極及びこれを備える電解セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
界面電荷移動反応の電気化学測定は、作用極(動作電極或いは試験電極ともいう)と溶液から成る界面の電位差を制御または測定することに基づく。しかし、界面電位差を直接に制御・測定することは不可能であり、実際には、参照電極(又は基準電極ともいう)と呼ばれる、そのターミナル電位と試験溶液の内部電位の電位差が実質上一定となるような電極を挿入し、参照電極のターミナル電位に対する作用極のターミナル電位の差、すなわち外部電位差を制御・測定することになる。
【0003】
このように、参照電極は電気化学測定に不可欠な電極である。この参照電極は電気伝導性を有する固体からなる基材と、これと速やかに電子移動反応(酸化還元反応)を行なう物質の酸化体及び還元体(酸化還元対)を共存させ、その電子移動反応を平衡(電気化学平衡)状態に保つことにより構成できる。例えば、一般には、上記基材に主として銀等の重金属を用い、これが還元体を兼ねた構成を有する電極であることが多い。
【0004】
このような参照電極としては、例えば、銀−塩化銀電極が従来から知られている。この銀−塩化銀電極は水溶液中に存在する塩化物イオンについてネルンスト応答するもので、水溶液中の塩化物イオンと、電極基材のAg+、及び、電極基材上に共存するAgClとの間に速やかに電気化学平衡が成立する電極であり、水相に可逆な参照電極として特に電気化学測定の対象となる測定溶液が電解質水溶液の場合に広く用いられている。
【0005】
また、電解質水溶液を測定溶液とする場合に作動可能な参照電極として、貴金属表面に、その酸化体及び還元体が固体であるポリアニリン又はその誘導体の塩の層を有する構成を有する参照電極(特開平7−229868号公報)も知られている。
【0006】
一方、電解質水溶液を測定溶液とする場合と異なり、測定溶液が有機溶媒とこれに溶解可能な支持電解質とを含むいわゆる非水電解質溶液(有機相)である場合、上述の電解質水溶液において使用される参照電極は非水電解質溶液と直接的に接触する状態で使用することができないため、参照電極と測定溶液との間に内部溶液や液絡を配置する構成が従来から採用されている。
【0007】
例えば、上述の銀−塩化銀電極を用いる場合も内部溶液や液絡を配置する構成が採用されている。これは、銀−塩化銀電極を構成する塩化銀がアセトニトリル等の多くの有機溶媒に可溶であるためである。
【0008】
また、非水電解質溶液に使用する際に上記のような内部溶液及び液絡を用いる構成を採用する参照電極としては、例えば、図7に示す構成を有する銀−銀イオン電極及びこれを備える参照電極が知られている。なお、本明細書において、例えば、図7に示す半電池100等のように、半電池、電気化学セルの構成を説明する際に使用する「|」とは「界面」を示し、「||」とは「液絡」(例えば、塩橋、隔膜、多孔質のガラスフィルター等)を示す。
【0009】
すなわち、図7に示す半電池100はいわゆるダブルジャンクション法に基づく構成を有するものであり、所定の有機溶媒と、これに溶解可能な支持電解質{例えば、過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(以下、「Bu4NClO4」という)等}とを含む測定溶液(非水電解質溶液)S100と、測定溶液S100中に電気的接触を保ちつつ挿入される参照電極RE100とから構成されている。
【0010】
そして、参照電極RE100は、Agからなる電極基材E100と、これに電気的に接触する第1の内部溶液(例えば、AgClO4を支持電解質とする有機相)E100と、第2の内部溶液(例えば、Bu4NClO4を支持電解質とする非水電解質溶液)E110と、第1の内部溶液E100と第2の内部溶液E110との間に配置されており両者の混合を防止しつつ両者の電気的接触を保持するための液絡J100と、第2の内部溶液E110と測定溶液S100との間に配置されており両者の混合を防止しつつ両者の電気的接触を保持するための液絡J110とから構成されている。
【0011】
また、測定溶液(非水電解質溶液)が水と混ざらず、安定な界面を形成できる場合に使用される参照電極として、例えば、図8に示すような構成を有する参電電極及びこれを備える半電池が知られている。
【0012】
すなわち、図8に示す半電池200は、所定の有機溶媒と、これに溶解可能な支持電解質{例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムジカルバボリルコバルト(III)酸(以下、「Bu4NDCC」という)等}とを含む測定溶液(非水電解質溶液)S200と、測定溶液S200中に電気的接触を保ちつつ挿入される参照電極RE200とから構成されている。
【0013】
そして、参照電極RE200は、Agからなる電極基材E200と、電極基材E200に電気的に接触しつつ電極基材E200の表面を被覆するAgClからなる層E210と、層E210に電気的に接触する測定溶液(非水電解質)中のイオンと共通のイオン及び塩化物イオンを含む内部水溶液{例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウム(以下、「Bu4NCl」という)等を支持電解質とする水溶液}E220とから構成されている。
【0014】
また、近年、上記のような有機溶媒|水界面を用いる電気化学測定法の応用として液膜型イオン選択性電極が、例えば、日本化学会誌、p.956−964(1986)に提案されており、また、電気溶媒抽出に基づく濃縮法も、例えば、Rev.Polarogr.,45.77−91(1999)に提案されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の参照電極は、測定溶液が非水電解質溶液である場合、先に述べたように参照電極と測定溶液との間に内部溶液や液絡を配置する構成を採用する必要があったため、これらに起因する液間電位差の発生や、参照電極上の電気化学平衡に関与する酸化体又は還元体の測定溶液への溶出が発生して電極電位が不安定となり、検出される電気信号の充分な安定性が得られないという問題があった。
【0016】
また、内部溶液や液絡を配置する構成を採用するため、参照電極自体のみならずこれを含む測定システム全体の小型化、高密度集積化を容易に図ることができないという問題があった。これらの問題があると、例えば、参照電極を、非水電解質溶液を測定溶液とする液膜型イオンセンサ等の検出デバイスに応用する際に支障をきたすことになる。
【0017】
例えば、先に述べた特開平7−229868号公報に記載の参照電極は、電極上の電気化学平衡にプロトンが関与するため、非プロトン性の有機溶媒と支持電解質を含む非水電解質溶液を測定溶液とする場合には、測定溶液中に直接的に接触する状態で使用することができず、内部溶液や液絡を配置する構成を採用しなければならなかった。
【0018】
更に、本発明らは、この参照電極では、プロトン性の有機溶媒と支持電解質を含む非水電解質溶液を測定溶液に使用する場合であっても、ポリアニリン又はその誘導体の塩が測定溶液中に溶解し、充分な電極電位の安定性が得られないという問題や、充分なプロトン伝導性を得るために添加剤を測定溶液に添加しなければならず、測定溶液の組成が複雑になり、測定可能な物質や電位領域が制限されるという問題があり、内部溶液や液絡を配置する構成を採用しなければならず、非水電解質溶液における電気化学測定に利用するには未だ不充分であることを見出した。
【0019】
例えば、先に述べた図8に示した銀−銀イオン電極RE100を含む半電池100においては、液絡J100及びJ110の両側の各液相中において溶存種の拡散による移動が起こることにより、これに起因する液間電位差の変動が起こるという問題があった。また、電極基材E100と第1の内部溶液E100との間の界面電位差の変動が起こるという問題があった。そして、これらの問題により参照電極の電極電位の変動が起こるという問題があった。また、参照電極上の電極反応に関与するAg+イオン(酸化体)が使用中に測定溶液S100中に達するなどの問題があり、長時間の使用には適さないという問題があった。
【0020】
また、先に述べた図8に示す半電池200の場合、参照電極の電極電位の変動が起こるという問題に加えて、測定溶液S200及び内部水溶液E220中に存在させる共通イオンの選択、即ち、測定溶液S200の組成及び内部水溶液E220の組成が制限されるという問題があった。また、この場合、測定系によっては、測定溶液S200と内部水溶液E220との間に更に別の内部溶液或いは液絡を挿入させる構成をとる必要にせまられる場合があった。
【0021】
更に、先に述べた電気溶媒抽出に基づく濃縮法の場合は、対象イオンの内部水溶液への溶出による濃縮降下の低減が問題となっており、非水電解質溶液における電気化学測定に利用するには未だ不充分であった。また、先に述べた液膜型イオン選択性電極も、内部溶液や液絡を配置する構成を採用しなければならなかった。
【0022】
すなわち、内部溶液や液絡を用いることなく有機溶媒と支持電解質を含む非水電解質溶液(有機相)に直接的に接触した状態で使用可能であり、非水電解質溶液中において安定な電極電位を得ることのできる電気化学的に可逆な参照電極はこれまでに実現されていなかった。
【0023】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内部溶液や液絡を用いることなく非水電解質溶液に直接的に接触した状態で使用可能であり、非水電解質溶液中で安定な電極電位を得ることのできる電気化学的に可逆な参照電極と、これを備えたシンプルな構成を有する電解セルを提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、参照電極上の電気化学平衡に関与する酸化体及び還元体となる材料として、電極の外部(測定溶液である非水電解質溶液)に溶出しない不溶成分であり、かつ酸化体及び還元体の何れの状態であっても固体として基材上に固定された状態を維持することのできるものを用いれば、内部溶液や液絡を用いることなく非水電解質溶液に直接的に接触した状態で使用可能な参照電極を構成できることに着目し、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。
【0025】
そして、その結果、本発明者らは、導電性高分子のうち、電気化学的に酸化及び還元することが可能であって、その酸化体及び還元体が非水電解質溶液中で溶解せずに固体状態を維持でき、かつ、その酸化体及び還元体がブレンステッド酸又はブレンステッド塩基として機能しない性質を有するものであれば、プロトンの付加脱離反応を伴わずに、上記酸化体及び還元体のいずれか一方が、非水電解質溶液中に存在する支持電解質イオンと可逆的に結合したり解離したりすること(電気化学的なドープ反応、脱ドープ反応)が可能となり、酸化体と還元体との間の電気化学平衡が成立することを見出した。
【0026】
更に、本発明者らは、参照電極を非水電解質溶液に可逆な参照電極として機能させる観点から、導電性高分子膜を構成している導電性高分子の状態が、酸化体と還元体とが共存した状態とされていること必要であることを見出し、本発明に到達した。
【0027】
すなわち、本発明は、電気伝導性を有する固体からなる電極基材と、
電極基材と電気的接触を保ちつつ該電極基材の表面を被覆する導電性高分子からなる膜と、
を少なくとも有しており、
膜中には、有機溶媒を含む非水電解質溶液と、該非水電解質溶液の支持電解質となり得るアニオンとが少なくとも含有されており、
導電性高分子は、膜中において酸化体及び還元体の両方の状態で存在しており、酸化体及び還元体の間で進行する酸化還元反応には、酸化体に対するアニオンの解離反応及び結合反応が共役しており、かつ、
酸化体、還元体及びアニオンとの間には、下記式(1)で表されるアニオンの電気化学的なドープ反応及び脱ドープ反応を伴う電気化学平衡が成立していること、
を特徴とする参照電極を提供する。
【化4】
Figure 0004024097
式(1)中、Redは前記還元体を示し、Oxは前記酸化体を示し、e-は前記還元体と前記酸化体との間を移動する電子を示し、nは前記電子の数を示す。
【0028】
ここで、本発明において、「非水電解質溶液」とは、有機溶媒と該有機溶媒に溶解可能な支持電解質とを少なくとも含む溶液(有機相)の状態の他に、例えば、該有機相にゲル化剤を添加した有機ゲルも含むものとする。また、本発明において、「導電性高分子からなる膜」とは、導電性高分子からなる多孔質の膜であり、その複数の細孔内に支持電解質を含む非水電解質溶液を保持することが可能な膜を示す。そして、この膜の複数の細孔内における導電性高分子と非水電解質溶液の界面において上記式(1)で表される電気化学平衡が成立する。
【0029】
上記導電性高分子からなる膜は、電気化学的な酸化及び還元を受けても固体状態を維持できるため、その酸化体又は還元体の測定溶液への溶出が防止される。更に、酸化体と還元体との間の電気化学平衡には支持電解質のイオンが電気化学的にドープ或いは脱ドープして関与するため、測定溶液に余分な電解質成分を添加する必要がなく測定溶液の成分組成を比較的シンプルに構成することができる。
【0030】
そして、本発明の参照電極は、このような導電性高分子からなる膜を構成要素として備えているので、塩橋、隔膜、ガラスフィルター等の内部溶液や液絡を介すことなく参照電極を非水電解質からなる測定溶液(有機相)に直接的に接触する状態で配置することができる。これらのことから、先に述べた従来の参照電極において発生していた内部溶液や液絡を使用することにより発生する液間電位差や界面電位差の変動の影響がなくなるため、参照電極の電極電位の安定性が向上する。また、本発明の参照電極を用いることにより、電気化学的な測定系(例えば、電解セル或いはこれを含む測定装置等)全体の小型化、高密度集積化及びその構成の簡素化を容易に行うことができる。
【0031】
また、本発明においては、上記の特性を得る観点から、導電性高分子が共役系の複素環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることが好ましい。
【0032】
更に、本発明においては、上記のような共役系の複素環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有している導電性高分子としては、導電性高分子が下記式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることがより好ましい。ここで、式(2)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基及びシアノ基からなる群より選択される少なくとも一種の特性基を示す。
【0033】
【化5】
Figure 0004024097
【0034】
式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子は、その酸化体(Ox)及び還元体(Red)が非水電解質溶液中で溶解せずに固体状態を維持できる。更に、この導電性高分子は、還元体(Red)が電荷を持たない電気的中性な状態となり、一方で酸化体(Ox)が正の電荷を有する状態となり、この導電性高分子の酸化体(Ox)及び還元体(Red)がブレンステッド酸又はブレンステッド塩基の性質を持たない場合は、非水電解質溶液中の支持電解質を構成する陰イオン(X-)に対して先に述べた式(1)で表されるドープ反応及び脱ドープ反応を可逆的に行うことができる{逢坂哲彌、小山昇編、電気化学測定法 応用測定マニュアル,p.138,講談社サイエンティフィック(1990)}。
【0035】
すなわち、この導電性高分子は、電極電位を決定する電気化学平衡において、酸化体(Ox)及び還元体(Red)へのプロトンの付加反応や脱離反応の関与が無いため、本発明の参照電極は、有機溶媒として非プロトン性の有機溶媒を使用する場合はもとよりプロトン性の有機溶媒を使用する場合であっても非水電解質溶液中に直接投入し内部溶液や液絡の構成を用いることなく使用することができる。
【0036】
更に、式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する重合体の他に、本発明においては、導電性高分子が下記式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることがより好ましい。ここで、式(3)中、X及びYは、それぞれ式(2)に記載のX及びYと同義である。
【0037】
【化6】
Figure 0004024097
【0038】
式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子の場合も、上述の式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子と同様に、酸化体(Ox)及び還元体(Red)が非水電解質溶液中で溶解せずに固体状態を維持でき、更に、還元体(Red)が電気的中性な状態、酸化体(Ox)が正の電荷を有する状態となり、非水電解質溶液中で上記式(1)と同様の、非水電解質溶液中の支持電解質を構成する陰イオン(X-)の酸化体(Ox)に対する可逆的なドープ反応及び脱ドープ反応を伴う電気化学平衡を成立させることができる。
【0039】
更に、本発明は、有機溶媒と該有機溶媒に溶解可能な支持電解質とを少なくとも含む非水電解質溶液と、非水電解質溶液中に電気的接触を保ちつつ挿入される参照電極と、を少なくとも有しており、参照電極が、上述した本発明の参照電極であること、を特徴とする電解セルを提供する。
【0040】
このように、前述した本発明の参照電極を備えることにより、非水電解質(有機相)からなる測定溶液を使用した場合であっても、精密な電気化学測定を充分に行うことができ、かつ、コンパクト化を容易に図ることのできる電解セルを構成することができる。
【0041】
ここで、「電解セル」とは、参照電極として前述した本発明の参照電極を備え、測定溶液として非水電解質溶液(有機相)を備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、参照電極と非水電解質溶液とからなる半電池の構成を有するもの(例えば、液膜型電極等)であってもよく、作用極と参照電極を兼ねる対極とから構成されるいわゆる2極系の電解セルでもよく、作用極と、参照電極と、対極とから構成されるいわゆる3極系の電解セルでもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の参照電極の好適な実施形態及びこれを備える電解セルの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図1は、本発明の参照電極の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。また、図2は、本発明の電解セルの好適な一実施形態の基本構成を示す説明図である。
【0044】
図1に示す参照電極1は、主として、電気伝導性を有する固体からなる電極基材10と、この電極基材10の表面を被覆する導電性高分子からなる膜20(以下、「導電性高分子膜20」という)と、電極基材10に電気的に接続されたリード線30とから構成されている。
【0045】
また、図2に示す電解セル2は、ポテンシオスタット22と、このポテンシオスタット22にそれぞれリード線により電気的に接続された参照電極1(図1に示した電極)と、作用極26と、対極24とを有しており、更に、参照電極1、作用極26及び対極24が、容器28に収容された測定溶液S20中に電気的接触を保ちつつ挿入されている。この測定溶液S20は有機溶媒と該有機溶媒に溶解可能な支持電解質とを少なくとも含む非水電解質である。電解セル2は、後述する参照電極1を使用することにより、非水電解質からなる測定溶液S20(有機相)を使用した場合であっても、精密な電気化学測定を充分に行うことができ、かつ、コンパクト化を容易に図ることができるものである。
【0046】
また、図2に示す電解セル2は、参照電極1の他に作用極26及び対極24を有した3極系の構成を有している。これにより参照電極1に対する作用極24の電位がより精密に制御でき、より正確な電気化学測定が可能となる。
【0047】
図1に示す電極基材10は、導電性高分子膜20を支持しその表面上に固定するためのものである。電極基材10を構成する電気伝導性を有する固体は測定物に応じて設定される測定条件において測定溶液(非水電解質)に溶解しないものであれば特に限定されず、例えば、金属材料(例えば、白金、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなど電気化学的に比較的安定な金属材料)、炭素質材料(例えば、グラファイトカーボン等)、インジウムトリオキシドなどを蒸着させた透明導電性電極(例えば、いわゆるITOガラス等)を用いることができる。この電極基材10の形状は特に限定されず、例えば、線状、板状、棒状、球状、メッシュ状、ペーパ状、クロス状、中空状などであってもよい。
【0048】
ここで、電極基材10を炭素素材から構成する場合には、メタルフリーの参照電極1を構成することができる。この場合、参照電極1の製造システムや廃棄システムを環境に負荷を与えることの無い構成とすることが容易にできる。また、この場合、メタルフリーの参照電極1を組み込んだセンサなどの電気化学デバイスをディスポーザブルにできる点でも有効である。
【0049】
導電性高分子膜20は、電極基材10と電気的接触を保ちつつ該電極基材10の表面を被覆するものである。導電性高分子膜20を構成する導電性高分子は、先に述べたように、共役系の複素環構造を有する繰り返し単位を含む分子構造を有しており、その酸化体及び還元体の間の電気化学平衡が非水電解質溶液中で成立可能であり、当該平衡において、非水電解質溶液に溶解可能でありかつプロトンと異なるイオンの酸化体又は還元体に対する電気化学的なドープ反応及び脱ドープ反応を進行させることが可能な特性を有している。
【0050】
また、先にのべたように、導電性高分子膜20は、導電性高分子からなる多孔質の膜であり、その複数の細孔内に支持電解質を含む非水電解質溶液を保持することが可能である。そして、導電性高分子膜20の複数の細孔内における導電性高分子と非水電解質溶液の界面において先に述べた式(1)で表される電気化学平衡が成立する。
【0051】
更に、この導電性高分子は、好ましくは、先に述べた式(2)又は式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有している。式(2)又は式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子は、その酸化体(Ox)及び還元体(Red)が非水電解質溶液中で溶解せずに固体状態を維持できる。更に、この導電性高分子は、還元体が電荷を持たない電気的中性な状態となり、一方で酸化体(Ox)が正の電荷を有する状態となり、非水電解質溶液中で先に述べた式(1)で表される電気化学平衡を成立させることができる。
【0052】
そして、式(1)で表されるように、この導電性高分子は、酸化体(Ox)及び還元体(Red)はそれぞれブレンステッド酸又はブレンステッド塩基として機能せず、電気化学平衡において、非水電解質溶液中の支持電解質を構成する陰イオン(X-)の酸化体(Ox)に対するドープ反応及び脱ドープ反応を可逆的に起すことができる。
【0053】
すなわち、この導電性高分子は、電極電位を決定する電気化学平衡において、酸化体(Ox)及び還元体(Red)へのプロトンの付加反応や脱離反応の関与が無いため、参照電極1は、有機溶媒として非プロトン性の有機溶媒を使用する場合はもとよりプロトン性の有機溶媒を使用する場合であっても非水電解質溶液中に直接投入し内部溶液や液絡の構成を用いることなく使用することができる。
【0054】
また、先に述べたように、本発明者らは、参照電極1を測定溶液(非水電解質溶液)に可逆な参照電極として機能させる観点から、導電性高分子膜20を構成している導電性高分子の状態が、酸化体と還元体とが共存した状態とされていることが必須条件となることを見出した。これにより、導電性高分子膜20と測定溶液(非水電解質溶液)との界面における電位差を充分に一定とすることができる。
【0055】
例えば、導電性高分子膜20を構成する導電性高分子が式(2)又は式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する重合体である場合、酸化体と還元体とが共存した状態とし、なおかつ、式(1)で表されるように酸化体を測定溶液中の支持電解質の疎水性の陰イオンとイオン対をなすように存在させることで導電性高分子膜20と測定溶液(非水電解質溶液)との界面における電位差をより確実に一定とすることができる。
【0056】
また、式(2)又は式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子としては、式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位と式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位をそれぞれ単独で有する分子構造を有する導電性高分子であってもよく、両者を併有する分子構造を有する導電性高分子であってもよい。
【0057】
また、式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子としては、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−メチル−3−メチルピロール)、及び、ポリ(N−メチル−3−ブロモピロール)が好ましく、ポリ(N−メチルピロール)がより好ましい。
【0058】
更に、式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)及びポリ(3−ヘキシルチオフェン)が好ましく、ポリ(3−メチルチオフェン)がより好ましい。
【0059】
測定溶液S20に含まれる支持電解質としては、以下のアニオンを含む成分組成を有するものであることが好ましい。即ち、アニオンは、塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン等の半疎水アニオン、ジカルバボリルコバルト(III)酸、テトラフェニルほう酸類等の疎水性アニオンであることが好ましい。なお、参照電極の広い分極性領域を確保する観点から疎水性アニオンであることがより好ましい。なお、これらの疎水性アニオンは、導電性高分子膜20を構成する導電性高分子が式(2)又は式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を有する重合体である場合には、式(1)で表される電気化学平衡において、導電性高分子の酸化体(Ox)とイオン対を成すイオン(X-)となる。
【0060】
また、支持電解質のカチオンとしては、テトラ−n−ブチルアンモニウムなど4級アンモニウムイオン、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
更に、測定溶液S20に含まれる有機溶媒はアセトニトリル、プロピレンカーボネート、ジクロロアルカン類などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
ポテンシオスタット22には、参照電極1と作用極26とが接続された電位制御回路と、作用極26と対極24とが接続された電流測定回路とが備えられている。これにより、作用極26において進行する電極反応に対応する電流の大半が対極24に流れるとともに、電位制御回路により参照電極1に対する作用極26の電位が精密に制御される。
【0063】
電解セル2における対極24としては、使用する測定溶液中及び電気化学的な測定条件において化学的に安定であれば特に限定されず、例えば、Ptからなる電極を使用してよい。更に、電解セル2における作用極26も、使用する測定溶液中及び電気化学的な測定条件において化学的に安定であれば特に限定されず、例えば、白金電極、ニッケル電極、銅電極、鉄電極、金電極及びグラファイトカーボン電極を使用してよい。
【0064】
次に、参照電極1の製造方法について説明する。参照電極1の製造方法は特に限定されず、公知の薄膜製造技術により製造することができる。例えば、導電性高分子のモノマーを含む溶液に電極基材10を浸漬し、電極基材10を作用極として電解重合することにより電極基材10の表面に導電性高分子膜20を形成することができる。
【0065】
また、導電性高分子膜20を構成している導電性高分子の状態を、予め酸化体と還元体とが共存した状態とさせる場合、例えば、以下のような電気化学的な手法を用いることができる。即ち、先ず、参照電極1を用いた電気化学測定に使用する予定の測定溶液中で参照電極1を「作用極」とし、この作用極(参照電極1)の電位を別途用意した所定の参照電極(例えば、銀−塩化銀電極)に対して掃引し、サイクリックボルタグラムを予め測定しておく。このとき、得られるサイクリックボルタグラムに導電性高分子の酸化体と還元体の生成に起因する一対の酸化ピークと還元ピーク(正電流ピークと負電流ピーク)とが観測される様に掃引する電位範囲を調節する。
【0066】
次に、サイクリックボルタグラムから正電流のピーク電位と負電流のピーク電位との間の中点電位(測定溶液中で導電性高分子の酸化体と還元体との間の電気化学平衡が成立するときの式量電位とほぼみなすことのできる電位)の値を予め測定し把握しておく。そして、測定溶液中(或いは測定溶液と同様の組成を有する別の溶液中)において、所定の参照電極(例えば、銀−塩化銀電極)に対する作用極(参照電極1)の電位を先に求めた中点電位に所定時間保持することにより、導電性高分子の状態を、予め酸化体と還元体とが共存した状態とさせることができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0068】
例えば、以上の説明においては本発明の電解セルの好適な一実施形態としてポテンシオスタットを備える構成を有する3電極式電解セルについて説明したが、本発明の電解セルは、本発明の参照電極を有する構成を有していればよく、それ以外の装置構成は特に限定されない。また、本発明の電解セルの使用方法も特に限定されず、上述したように電流−電位曲線の測定に使用してもよく、例えば、電解合成に使用してもよい。
【0069】
また、本発明の参照電極の用途は、非水電解質を用いる電気化学測定であれば特に限定されず、例えば、液膜型イオンセンサ、有機フィルム電極等に使用することができる。
【0070】
更に、本発明の参照電極は「有機溶媒(非水電解質)|水」で表される界面における電気化学測定に用いてもよい。この場合にも、試験界面の広い分極性領域を確保する観点から、有機相(非水電解質溶液)の支持電解質には極めて高い疎水性を有するイオンからなる塩を用いることが好ましい。
【0071】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
先ず、電極基材として白金円盤電極(外径:6mm,BAS社製、商品名「11−2013」)を用意し、この表面に、電解重合法によりポリ(N−メチルピロール)の膜(膜厚:約50μm)を形成し、電極(PMPy-Pt電極)を作製した。次に、有機溶媒として1,6-ジクロロヘキサン(DCH)、支持電解質としてBu4NDCCを用いて非水電解質溶液S1を調製した。なお、非水電解質溶液S1中のBu4NDCCの濃度は0.05mol/Lとした。次に、銀−塩化銀電極を参照電極RE1として準備した。また、対極CE1として準備した。
【0073】
次に、図3に示す構成を有する電解セル20を構成した。即ち、上述のPMPy-Pt電極を作用極WE1とし、この作用極WE1と、上述の参照電極RE1及び対極CE1をそれぞれ図示しないポテンシオスタット(扶桑製作所製、商品名:「HECS−311C」)に接続し、これらを非水電解質溶液S1中に浸漬して3電極方式での電解を行なうための電解セル20を構成した。このポテンシオスタットは、溶液抵抗補正の為の正帰還回路を備えたものである。
【0074】
ここで、参照電極RE1を非水電解質溶液S1中に浸漬する際には、内部溶液E3として別途調製したBu4NClを支持電解質とする水溶液を使用し、これが銀−塩化銀電極と非水電解質溶液S1との間に配置されるようにした。なお、図3においては、この内部溶液E3の層(水相)と銀−塩化銀電極(図中の銀からなる層E1及び塩化銀からなる層E2)とを合わせた部分を参照電極RE1として示す。また、この内部溶液E3中のBu4NClの濃度は、0.1mol/Lとした。更に、図3中、I1〜I5は界面を示す。
【0075】
次に、参照電極RE1の電位(ターミナル電位)に対する作用極WE1の電位(ターミナル電位)をポテンショスタットによって規制しながら掃引し、作用極WE1から対極CE1へ流れる電流(電流密度)を記録することにより、サイクリックボルタモグラムを得た。これにより1対の顕著な正電流ピークと負電流ピークを有する典型的な可逆系のサイクリックボルタモグラムが得られた。
【0076】
この正電流の値は先に述べた式(2)の反応うち、右向きの反応(正反応)の進行により移動した電子の量に対応し、負電流は左向きの反応(逆反応)の進行により移動した電子の量に対応する。そして、正電流のピーク電位と負電流のピーク電位との間の中点電位を測定した。中点電位は参照電極RE1に対して約+0.4Vであった。この中点電位付近に作用極WE1を調節すれば、作用極WE1の導電性高分子(ポリ(N−メチルピロール))の膜中に、ポリ(N−メチルピロールの還元体と酸化体とをほぼ同程度の物質量で共存させることができることが予測される。
【0077】
そこで、同じ電解セル20において、作用極WE1の電位を参照電極RE1に対して+0.4Vに10分間保持し、ポリ(N−メチルピロール)の還元体と酸化体とが等量ずつ共存した状態となるようにした。このようにして、図1に示した参照電極1と同様の構成を有する参照電極(上述の作用極WE1)を作製した。この参照電極を非水電解質溶液S1中に浸漬した場合、ポリ(N−メチルピロール)からなる膜のポリ(N−メチルピロール)の酸化体が支持電解質のアニオンであるジカルバボイルコバルト(III)酸イオン(以下、「DCC-」という)とイオン対をなして存在する。なお、この参照電極を、以下、「DCC-PMPy-Pt電極」という。
【0078】
[起電力測定試験1]
図4に示すように、実施例1で作製したDCC-PMPy-Pt電極を5つ準備し、それぞれについて、「作用極」WE2とした電解セル30を構成し、この電解セル30の起電力測定を行ない、作用極WE2(即ち、DCC-PMPy-Pt電極)の電気化学的な安定性(DCC-PMPy-Pt電極 とDCCイオンを含むDCH溶液との界面の内部電位の安定性)を評価した。
【0079】
なお、図4に示す電解セル30は、図3に示したものと同様の非水電解質溶液S1を使用した。更に、図4に示す電解セル30の参照電極RE2は、Bu4NDCCの濃度を0.05mol/LとしたDCHの非水電解質溶液を内部溶液E4として、内部溶液E3と非水電解質溶液S1との間に配置し、更に、内部溶液E4と非水電解質溶液S1との間に液絡J1を配置したこと以外は図3に示した参照電極RE1と同様の構成を有する。
【0080】
また、ここでいう「起電力」とは、参照電極RE2の電位(ターミナル電位)を基準(0V)とした場合の、これに対する作用極WE2の電位(ターミナル電位)の値を示す。更に、この測定は、ことわりのない限り、25±0.5℃、遮光条件下で行なった。
【0081】
作用極WE2を非水電解質溶液S1中に浸漬して一昼夜(約24時間)放置した後、起電力の測定を行った。その結果、測定開始後10時間内においては、起電力は、参照電極RE2に対して+0.37±0.003Vの範囲でほぼ一定値を示した。更に、測定開始後504時間の間において、起電力は、参照電極RE2に対して+0.37±0.02Vの範囲(5つの電極の平均値)でほぼ一定値を示した。
【0082】
参照電極RE1が通常用いられる非分極性の電極であることを考慮すれば、上記の結果により、作用極WE2(実施例1のDCC-PMPy-Pt電極)は、非水電解質溶液に使用する参照電極として充分な電位の安定性を有することが確認された。
【0083】
また、非水電解質溶液S1中の支持電解質(Bu4DCC)の濃度を0.005mol/Lから0.05mol/Lの範囲で増加させたところ、濃度が増加するに従って起電力が負電位側へシフトする傾向が観察された。この結果により、ポリ(N−メチルピロール)酸化体がDCC-とのイオン対として存在していることが確認された。
【0084】
以上のことから、実施例1のDCC-PMPy-Pt電極は、DCC-を含む非水電解質溶液(有機相)において可逆な参照電極として機能することが確認された。しかも、実施例1のDCC-PMPy-Pt電極を用いることにより、内部溶液や液絡を必要としないコンパクトな電解セルを構成できることが確認された。
【0085】
なお、上記の電解セル30の起電力は、温度が高くなるに連れて正電位側へシフトする傾向が顕著に認められた(例えば、5℃の温度上昇で約+5mVの変動)。また、この測定を遮光せずに行なった場合は、起電力の安定性が低下する傾向が認められた。よって、このDCC-PMPy-Pt電極は恒温及び遮光条件で用いることが望ましい。
【0086】
(実施例2)
電極基材を白金円盤電極のかわりにパイロリティックグラファイトカーボン電極(BAS社製、商品名「11−2252」,大きさ及び形状は実施例1の白金円盤電極と同様)とした以外は、実施例1と同様の製造手順及び条件により、参照電極を作製した。
【0087】
[起電力測定試験2]
起電力測定試験1と同様にして実施例2の参照電極(5つ)を作用電極とする電解セルを構成し、起電力を測定した。その結果、測定開始後504時間の間において、起電力は、参照電極RE2に対して+0.369±0.003Vの範囲(5つの電極の平均値)でほぼ一定値を示した。これにより、本発明の参照電極は、電極基材が炭素素材の場合にも、非水電解質溶液(有機相)において可逆な参照電極として使用できることが確認された。すなわち、本発明によれば、メタルフリーの参照電極、さらにはセンサを構成できることが確認された。
【0088】
(実施例3)
先ず、実施例1と同様のPMPy-Pt電極を作製した。次に、図5に示すように、PMPy-Pt電極を作用極WE1とする電解セル40を構成した。なお、電解セル40は、以下の構成以外は、図3に示した電解セル20と同様の構成とした。即ち、電解セル40の非水電解質溶液S2は、支持電解質としてテトラ−n−ペンチルアンモニウムテトラキス(4−クロロフェニル)ほう酸(以下、「Pn4NTClPB」という)を使用したこと以外は実施例1の非水電解質溶液S1と同様の製造手順及び製造条件で調製した(Pn4NTClPBの濃度:0.05mol/L)。
【0089】
また、参照電極RE3は、内部溶液E5として、図3に示した内部溶液E3のかわりに、テトラ−n−ペンチルアンモニウム(以下、「Pn4NTCl」という)を支持電解質とする水溶液(Pn4NTClの濃度:0.02mol/L)を使用したこと以外は実施例1の参照電極RE1同様の製造手順及び製造条件で調製した。
【0090】
次に、電解セル40を用いたこと以外は実施例1と同様にして中点電位を求めた。次に、電解セル40において、作用極WE1の電位を参照電極RE3に対して0.3V(中点電位)に10分間保持し、ポリ(N−メチルピロール)の還元体と酸化体とが等量ずつ共存した状態とし、同時に、その際の酸化体がテトラキス(4−クロロフェニル)ほう酸イオン(以下、「TClPB-」という)とイオン対をなして非水電解質溶液S2中に存在するようにして、参照電極(以下、「TClPB-PMPy-Pt電極」という)を作成した。
【0091】
[起電力測定試験3]
図6に示すように、起電力測定試験1と同様にして実施例3のTClPB-PMPy-Pt電極(5つ)を作用電極とする電解セル50を構成し、起電力を測定した。なお、電解セル50は以下の構成以外は、図4に示した電解セル30と同様の構成とした。
【0092】
即ち、図6に示す電解セル50は、図5に示した電解セル40に用いた非水電解質溶液S2を使用したこと以外は実施例1の非水電解質溶液S1と同様の製造手順及び製造条件で調製した(Pn4NTClPBの濃度:0.05mol/L)。また、図6に示す電解セル50の参照電極RE4は、Pn4NTClPBの濃度を0.05mol/LとしたDCHの非水電解質溶液を内部溶液E6として、内部溶液E5と非水電解質溶液S2との間に配置し、更に、内部溶液E5と非水電解質溶液S2との間に液絡J2を配置したこと以外は図5に示した電解セル40に用いた参照電極RE3と同様の構成を有する。
【0093】
測定の結果、起電力は参照電極RE4に対して+0.24±0.01Vの範囲(5つの電極の平均値)でほぼ一定値を示した。これより、本発明の参照電極が、Pn4NTClPBを支持電解質とする非水電解質溶液(有機相)においても可逆な参照電極として使用できることが確認された。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、内部溶液や液絡を用いることなく非水電解質溶液に直接的に接触した状態で使用可能であり、非水電解質溶液中で安定な電極電位を得ることのできる電気化学的に可逆な参照電極を提供することができる。また、これを備えることにより、測定溶液とコンパクトな電解セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参照電極の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電解セルの好適な一実施形態の基本構成を示す説明図である。
【図3】実施例1の参照電極を作製する際に構成した電解セルの基本構成を模式的に示す説明図である。
【図4】実施例1の参照電極の非水電解質溶液中における電極電位の安定性を測定するための電解セルの基本構成を模式的に示す説明図である。
【図5】実施例3の参照電極を作製する際に構成した電解セルの基本構成を模式的に示す説明図である。
【図6】実施例3の参照電極の非水電解質溶液中における電極電位の安定性を測定するための電解セルの基本構成を模式的に示す説明図である。
【図7】非水電解質溶液を測定溶液とする電気化学測定に使用される従来の参照電極の基本構成を模式的に示す説明図である。
【図8】図7に示したものとは別の従来の参照電極の基本構成を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1…参照電極、2…電解セル、10…電極基材、20…導電性高分子からなる膜(導電性高分子膜)、22・・・ポテンシオスタット、24…対極、26…作用極、28…容器、20,30,40,50…電解セル、CE1…対極、I1〜I13…界面、J1,J2・・・液絡、RE1,RE2,RE3,RE4…参照電極、S1,S2…非水電解質溶液、S20・・・測定溶液、WE1,WE2,WE3・・・作用極。

Claims (7)

  1. 電気伝導性を有する固体からなる電極基材と、
    前記電極基材と電気的接触を保ちつつ該電極基材の表面を被覆する導電性高分子からなる膜と、
    を少なくとも有しており、
    前記膜中には、有機溶媒を含む非水電解質溶液と、該非水電解質溶液の支持電解質となり得るアニオンとが少なくとも含有されており、
    前記導電性高分子は、前記膜中において酸化体及び還元体の両方の状態で存在しており、前記酸化体及び前記還元体の間で進行する酸化還元反応には、前記酸化体に対する前記アニオンの解離反応及び結合反応が共役しており、かつ、
    前記酸化体、前記還元体及び前記アニオンとの間には、下記式(1)で表される前記アニオンの電気化学的なドープ反応及び脱ドープ反応を伴う電気化学平衡が成立していること、
    を特徴とする参照電極。
    Figure 0004024097
    [式(1)中、Redは前記還元体を示し、
    Oxは前記酸化体を示し、
    は前記還元体と前記酸化体との間を移動する電子を示し、
    nは前記電子の数を示す。]
  2. 前記導電性高分子が共役系の複素環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることを特徴とする請求項1に記載の参照電極。
  3. 前記導電性高分子が下記式(2)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることを特徴とする請求項2に記載の参照電極。
    Figure 0004024097
    [式(2)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、
    X及びYは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基及びシアノ基からなる群より選択される少なくとも一種の特性基を示す。]
  4. 前記導電性高分子がポリ(N−メチルピロール)であることを特徴とする請求項3に記載の参照電極。
  5. 前記導電性高分子が下記式(3)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位を含む分子構造を少なくとも有していることを特徴とする請求項2に記載の参照電極。
    Figure 0004024097
    [式(3)中、X及びYは、それぞれ前記式(2)に記載のX及びYと同義である。]
  6. 前記アニオンが疎水性アニオンであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の参照電極。
  7. 有機溶媒と該有機溶媒に溶解可能な支持電解質とを少なくとも含む非水電解質溶液と、
    前記測定溶液中に電気的接触を保ちつつ挿入される参照電極と、
    を少なくとも有しており、
    前記参照電極が、請求項1〜6の何れかに記載の参照電極であること、
    を特徴とする電解セル。
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