JP4023539B2 - 有効物質の抽出方法および精製方法 - Google Patents
有効物質の抽出方法および精製方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4023539B2 JP4023539B2 JP2002270730A JP2002270730A JP4023539B2 JP 4023539 B2 JP4023539 B2 JP 4023539B2 JP 2002270730 A JP2002270730 A JP 2002270730A JP 2002270730 A JP2002270730 A JP 2002270730A JP 4023539 B2 JP4023539 B2 JP 4023539B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- phase
- aqueous solution
- phenol derivative
- glycoside
- water
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Landscapes
- Pyrane Compounds (AREA)
- Extraction Or Liquid Replacement (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Saccharide Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、疎水基含有水溶性有機化合物を含む水溶液(例えば、動物または植物由来の抽出物ならびに酵素反応液)から疎水基含有水溶性有機化合物を高純度でかつ高収率で抽出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生薬抽出物に代表されるように、さまざまな生理活性を持った天然化合物が数多く知られている。これらの天然化合物は、生理活性物質とも呼ばれる。多くの生理活性物質は、一般に、生理活性物質を含む材料と水、お湯または低濃度のアルコール水溶液とを用いて抽出操作を行って抽出液を得て、その後、抽出液を濃縮し、濃縮された抽出液をカラムクロマトグラフィーにかけることによって精製される。しかしながら、この精製方法によって生理活性物質を大量に生産するためには、大きなカラムおよびそれに付随する設備が必要である。また、小さいカラムでは効率が非常に悪い。そのため、精製された生理活性物質は非常に高価である。
【0003】
生理活性物質を溶媒抽出方法によって精製することも試みられている。しかし、酢酸エチル、ブタノール、クロロホルム等の本来水と混ざらない有機溶媒を水溶液に添加し、攪拌し、静置して水相と有機溶媒相との2相を得たのち、有機溶媒相に移動した生理活性物質を回収する方法は、安全性の問題上食品に使用することはできない。生理活性物質を食品以外の用途に用いる場合であっても、有機溶媒相にあまり移動しないため、有機溶媒による抽出が非効率的である生理活性物質も存在する。エタノール、アセトン等の、食品に使用できる有機溶媒は水と混ざってしまうので、これらの有機溶媒を用いて生理活性物質を水溶液から抽出および精製することはできない。
【0004】
オレンジ果汁に含まれる代表的なフラボノイド類の一つにヘスペリジンがある。ヘスペリジンを代表とするフラボノイド類は、例えば、以下のような生理作用を有することが知られている。ヘスペリジンおよびルチンは、以前はビタミンPと呼ばれ、血圧を下げる作用が古くから知られている(神谷真太郎、新ビタミン学、(日本ビタミン学会)1969、p439)。ヘスペリジンはまた、以下の生理作用を有することも報告されている:抗炎症作用、抗痛み作用(E,M.Galati et al., Il Farmaco,49,709−712(1994))、抗アレルギー作用(松田英秋et al.;薬学雑誌、111、193−198(1991)、J.A.Da Silva Emim et al.;J.Pharm.Pharmacol.,46,118−712(1994))、LDL−コレステロールを減少させ血中コレステロール値を改善する作用(M.T.Monforte et al.;Il Farmaco,50,595−599(1995))、抗癌作用(T.Tanaka,et al.;Cancer Research,54,4653−4659(1994)、T.Tanaka,et al.;Cancer Research,57,246−252(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,761−769(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,957−965(1997))。さらに、最近の研究では、ヘスペリジンは前駆脂肪細胞の分化を促進し、糖尿病などの症状を改善する作用も有することが期待されている。ディオスミンは強い抗酸化活性を有する。
【0005】
ディオスミンおよびヘスペリジンを含有する薬剤は、静脈不全、痔疾などの治療薬として利用されている(C.Labrid;Angiology,45,524−530(1994))。さらに、ヘスペリジン単独、ディオスミン単独およびヘスペリジンとディオスミンとの混合物が口腔ガン、食道ガン、大腸ガンなどを抑制することも報告されている(T.Tanaka,et al.;Cancer Research,54,4653−4659(1994)、T.Tanaka,et al.;Cancer Research,57,246−252(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18, 761−769(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,957−965(1997))。
【0006】
ナリンジンおよびネオヘスペリジンは柑橘類の苦味物質として知られており、苦味の付与を目的に食品および飲料に用いられている。
【0007】
さらに最近では、イソフラボンが骨密度の向上に有効であること、乳ガンの発生を抑制することなどが明らかにされてきている(戸田et al.;FOODS and INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN,No.172,83−89(1997))。
【0008】
ヘスペリジンおよびルチンは本来アセトンに溶解しない。
【0009】
一方、ヘスペリジン、ナリンジン、ネオヘスペリジン、ルチンなどのフラボノイド類は水に難溶である。この難溶性という欠点を克服する目的で、これらの難溶性化合物を効率よく可溶化する試みがなされている。例えば、ヘスペリジン、ナリンジン、ネオヘスペリジン、ルチンなどのフラボノイド類を酵素的に配糖化し、溶解性を高める方法が知られている(日本国特許公開平7−107972)。
【0010】
上記フラボノイド以外でもカテキン、コーヒー酸、コウジ酸、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、プロトカテキュー酸、没食子酸、バニリン、ダイゼイン、ゲニステイン、α−レゾルシル酸およびフロログルシノールを同様の目的の為に酵素的に配糖化し、溶解性を高める方法が知られている(日本国特許公告平7−36758およびT.Nishimura著、J.Ferment.Bioeng.,78(1994)p37)。
【0011】
しかしながら、配糖体自身の水溶性が向上しているため水と混ざらない溶媒では効率的に抽出できなかったり、配糖化を行った酵素反応液から生成した配糖体を精製するためには、安全性上の問題から、吸着クロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーを行う必要がある。
【0012】
従来の精製法では、部分精製されたフラボノイド類、カテキン類、フェノール類およびこれらの配糖体を天然の材料から得るためには、天然の材料およびアルカリ性水溶液、有機溶媒、熱水などを用いて抽出を行った後、抽出液をカラムクロマトグラフィーで精製する方法がとられている。しかし、これらの物質を高収率で安価に大量に得るためには食品に使用できる安全な有機溶媒による抽出を行い精製する必要がある。しかしながら、食品に利用できるアセトンは水と混ざってしまうので、アセトンでこれらの物質を抽出することはできない。また食品および薬品の分野で有効な生理活性物質の多くは、水、エタノール、アセトン等の極性の高い溶媒に溶けやすく、極性の低い溶媒に溶けにくい性質を持っている。そのため、極性の低い溶媒では効率的に抽出することができない。
【0013】
【特許文献1】
特開平7−107972号公報
【特許文献2】
特公平7−36758号公報
【特許文献3】
特開平8−80177号公報
【特許文献4】
特開平6−277053号公報
【0014】
【非特許文献1】
神谷真太郎,「新ビタミン学」,(日本ビタミン学会)1969年,p.439
【非特許文献2】
E,M.Galati et al.,「Il Farmaco」,1994年,49,p.709−712
【非特許文献3】
松田英秋et al.,「薬学雑誌」、1991年,111,p.193−198
【非特許文献4】
J.A.Da Silva Emim et al.,「J.Pharm.Pharmacol.」,1994年,46,p.118−712
【非特許文献5】
M.T.Monforte et al.,「Il Farmaco」,1995年,50,595−599
【非特許文献6】
T.Tanaka,et al.,「Cancer Research」,1994年,54,p.4653−4659
【非特許文献7】
T.Tanaka,et al.,「Cancer Research」,1997年,57,p.246−252
【非特許文献8】
T.Tanaka,et al.,「Carcinogenesis」,1997,18,p.761−769
【非特許文献9】
T.Tanaka,et al.,「Carcinogenesis」,1997年,18,p.957−965
【非特許文献10】
C.Labrid,「Angiology」,1994年,45,p.524−530
【非特許文献11】
戸田et al.,「FOODS AND INGREDIENTSJOURNAL OF JAPAN」,1997年,No.172,p.83−89
【非特許文献12】
T.Nishimura,「J.Ferment.Bioeng.」,1994年,78,p.37
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
生理活性物質を簡便かつ安価に精製するための方法を提供すること。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、本来水またはお湯に混ぜた際に水相と分離しにくい有機溶媒であっても、生理活性物質を含有する水溶液中に糖質などの保水性の性質をもつ物質が存在することにより、この水溶液と有機溶媒とを混合し、攪拌した後に水相と有機相とを容易に分離できることを見出し、さらに有機相に生理活性物質が移動することを見出した。本発明者らはさらに、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムなどの塩、または有機酸をこの水溶液に添加して、この水溶液のイオン強度を上げることにより、糖質が存在しても水相から分離されない、あるいは分離されにくい有機溶媒を用いた場合であっても水相から分離され、生理活性物質を有機溶媒相に効率的に移動させることができることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0017】
本発明の方法は、疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法であって、該疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、該疎水基含有水溶性有機化合物を該有機相に移動させる工程を包含する。
【0018】
1つの実施形態では、上記水溶液中の糖質の濃度は、該水溶液100mlあたり12g以上であり得る。
【0019】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、水溶性芳香族化合物であり得る。
【0020】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、フェノール誘導体およびそれらの配糖体からなる群より選択され得る。
【0021】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、ハイドロキノン配糖体、カテキン、サリシン、ヘスペリジン、ヘスペリジン配糖体、コーヒー酸、サリシルアルコールおよびエラジタンニンからなる群より選択され得る。
【0022】
1つの実施形態では、上記水溶液は相分離補助剤をさらに含有し得る。
【0023】
1つの実施形態では、上記相分離補助剤は、塩または有機酸であり得る。
【0024】
1つの実施形態では、上記相分離補助剤は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群より選択され得る。
【0025】
1つの実施形態では、上記極性有機溶媒は、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルであり得る。
【0026】
1つの実施形態では、上記極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンまたはイソプロピルアルコールであり得る。
【0027】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、酵素反応溶液に由来し得る。
【0028】
1つの実施形態では、上記酵素反応溶液は、配糖化反応溶液であり得る。
【0029】
1つの実施形態では、上記配糖化反応溶液は、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり得る。
【0030】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、動物または植物から選択される生物に由来し得る。
【0031】
1つの実施形態では、上記疎水基含有水溶性有機化合物は、果汁に由来し得る。
【0032】
1つの実施形態では、上記水溶液は、上記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する酵素反応溶液を濃縮することにより調製され得る。
【0033】
1つの実施形態では、上記酵素反応溶液は、配糖化反応溶液であり得る。
【0034】
1つの実施形態では、上記配糖化反応溶液は、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり得る。
【0035】
1つの実施形態では、上記水溶液は、上記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する生物抽出物を濃縮または希釈することにより調製され得、ここで該生物が動物または植物であり得る。
【0036】
1つの実施形態では、上記水溶液は、果汁を濃縮することにより調製され得る。
【0037】
1つの実施形態では、上記水溶液は、上記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する酵素反応溶液またはその濃縮液に上記相分離補助剤を添加することにより調製され得る。
【0038】
1つの実施形態では、上記酵素反応溶液は、配糖化反応溶液であり得る。
【0039】
1つの実施形態では、上記配糖化反応溶液は、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり得る。
【0040】
1つの実施形態では、上記水溶液は、上記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する生物抽出物またはそれらの濃縮物もしくは希釈物に上記相分離補助剤を添加することにより調製され得、ここで該生物が動物または植物であり得る。
【0041】
1つの実施形態では、上記水溶液は、果汁またはその濃縮物に上記相分離補助剤を添加することにより調製され得る。
【0042】
本発明の精製方法は、フェノール誘導体配糖体の精製方法であって、フェノール誘導体、フェノール誘導体配糖体および糖質を含有する第1の水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、第1の水相と少量の水を含む有機相とを得、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を該有機相に移動させる工程;該少量の水を含む有機相を分取する工程;該少量の水を含む有機相から該極性有機溶媒を除去して、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を含有する第2の水溶液を得る工程;該第2の水溶液と酢酸エチルとを接触させて、第2の水相と酢酸エチル相とを得、該フェノール誘導体を該酢酸エチル相に移動させる工程;該第2の水相を分取する工程;および該第2の水相を濃縮し、そして冷却することにより、該フェノール誘導体配糖体を沈殿させる工程を包含する。
【0043】
1つの実施形態では、上記フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は、該フェノール誘導体の配糖化酵素反応溶液に由来し得る。
【0044】
1つの実施形態では、上記配糖化反応溶液は、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり得る。
【0045】
1つの実施形態では、上記第1の水溶液は、相分離補助剤をさらに含有し得る。
【0046】
1つの実施形態では、上記配糖化反応溶液は、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり得る。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において、特にことわらない限り、濃度は、溶液100立方センチメートルあたりのグラム数で表される。例えば、「10%塩化ナトリウム水溶液」とは、溶液100立方センチメートル当たり10gの塩化ナトリウムが溶解している塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0048】
本発明の方法は、疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法である。本発明の方法は、疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、疎水基含有水溶性有機化合物を有機相に移動させる工程を包含する。
【0049】
(1)疎水基含有水溶性有機化合物
本明細書中では、「疎水基含有水溶性有機化合物」とは、疎水基を含有し、水に溶ける、有機化合物をいう。
【0050】
「水溶性」化合物とは、本明細書中では、20℃の水1リットルに0.01g以上溶解し得る化合物をいう。疎水基含有水溶性有機化合物は、20℃の水1リットルに好ましくは0.1g以上、より好ましくは1g以上、さらに好ましくは5g以上、最も好ましくは10g以上溶解する。溶解度に上限は特にないが、好ましくは20℃の水1リットルに300g以下である。より好ましくは溶解度は20℃の水1リットルに100g以下である。
【0051】
疎水基は、好ましくは炭素原子を3個以上含む疎水基であり、より好ましくは芳香族残基である。疎水基含有水溶性有機化合物の例としては、フラボノイド類、イソフラボン類、フェノール性化合物、フラボノイド配糖体、イソフラボン配糖体、フェノール性化合物配糖体、ハイドロキノン配糖体、アントラセン配糖体、カルコン配糖体などの水溶性芳香族化合物、テルペン配糖体、ステロイド配糖体、トリテルペノイド配糖体、アルカロイド配糖体、およびC−配糖体が挙げられる。疎水基含有水溶性有機化合物は、好ましくは水溶性芳香族化合物である。
【0052】
本明細書中では、「水溶性芳香族化合物」とは、水に溶ける化合物であって、芳香族基を有する化合物をいう。
【0053】
水溶性芳香族化合物は、好ましくはフェノール誘導体およびそれらの配糖体からなる群より選択される。
【0054】
「フェノール誘導体」とは、フェノール骨格(すなわち、ベンゼン環)またはフラボノイド骨格を含む化合物であって、フェノール骨格またはフラボノイド骨格に結合している水酸基を有する化合物、フェノールおよびコウジ酸をいう。フェノール誘導体の例としては、単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に1つのフェノール性水酸基を有する化合物、および単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。以下、本明細書中では便宜上、1つのフェノール性水酸基を単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に有する化合物をモノフェノール系(mono−phenol type)化合物と呼び、2つ以上のフェノール性水酸基を単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に有する化合物をポリフェノール系(poly−phenol type)化合物と呼ぶ。
【0055】
2つのフェノール性水酸基を単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に有する化合物をジフェノール化合物と呼ぶ。
【0056】
フェノール性水酸基を有するフェノール誘導体配糖体は、フェノール誘導体に含まれる。
【0057】
単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に1つのフェノール性水酸基を有するモノフェノール系化合物の例としては、フェノール、サリシルアルコール、コウジ酸、ジメトキシフェノール、アセトアミノフェン、バニリン、およびダイゼインが挙げられる。
【0058】
モノフェノール化合物の例としてはまた、モノフェノール系フラボノイド系化合物が挙げられる。モノフェノール系フラボノイド系化合物の例としては、モノフェノール系フラボン系化合物、モノフェノール系イソフラボン系化合物、モノフェノール系フラボノール系化合物、モノフェノール系フラバノン系化合物、モノフェノール系フラバノノール系化合物、モノフェノール系カテキン系化合物、モノフェノール系オーロン系化合物、モノフェノール系カルコン系化合物およびモノフェノール系ジヒドロカルコン系化合物が挙げられる。
【0059】
ジメトキシフェノールの例としては、2,3−ジメトキシフェノール、2,4−ジメトキシフェノール、2,5−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3,4−ジメトキシフェノールおよび3,5−ジメトキシフェノールが挙げられる。3,4−ジメトキシフェノールおよび3,5−ジメトキシフェノールが好ましい。
【0060】
単一のフェノール骨格またはフラボノイド骨格上に2つ以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール系化合物の例としては、ハイドロキノン、ヘスペレチン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、アントシアニジン系化合物、アントシアニン系化合物、コーヒー酸、カテコール、レゾルシノール、プロトカテキュー酸、没食子酸、ゲニステイン、β‐レゾルシル酸、およびフロログルシノールが挙げられる。
【0061】
ジフェノール化合物の例としてはまた、ジフェノール系フラボノイド系化合物が挙げられる。ジフェノール系フラボノイド系化合物の例としては、ジフェノール系フラボン系化合物、ジフェノール系イソフラボン系化合物、ジフェノール系フラボノール系化合物、ジフェノール系フラバノン系化合物、ジフェノール系フラバノノール系化合物、ジフェノール系カテキン系化合物、ジフェノール系オーロン系化合物、ジフェノール系カルコン系化合物およびジフェノール系ジヒドロカルコン系化合物が挙げられる。
【0062】
レゾルシル酸の例としては、α−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、およびγ−レゾルシル酸が挙げられる。本発明では、β−レゾルシル酸が好ましい。
【0063】
本明細書中では、「フェノール誘導体配糖体」とは、フェノール誘導体部分と、1以上の糖部分とがグリコシド結合によって結ばれた物質である。フェノール誘導体配糖体は、ハイドロキノン−O−α−D−グルコピラノシド、サリシン、コーヒー酸−O−α−D−グルコピラノシド、3,4−ジメトキシフェノール−O−α−D−グルコピラノシド、カテキン−O−α−D−グルコピラノシドのようなモノグルコピラノシドであってもよいし、上記のモノグルコピラノシドにさらに糖部分が結合したジグルコピラノシド(例えば、ヘスペリジン誘導体)、トリグルコピラノシドなどであってもよい。
【0064】
本明細書中では、配糖体とは、アグリコンと1以上の糖部分とがグリコシド結合によって結ばれた物質である。糖部分の重合度は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜3である。糖部分は、単糖部分であってもよく、2糖部分であってもよい。本明細書中では、グルコシドは配糖体の定義に含まれる。グルコシドは、1以上のグルコース部分がアグリコンに結合した配糖体である。
【0065】
疎水基含有水溶性有機化合物は、好ましくは、サリシン、コニフェリン、アルブチン、センノシド、ステビオサイド、ルブソサイド、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジン、ダイゼイン、ゲニスチン、バルバロイン、バニリン、サポニン、ベルベリン、ケンフェロール、バイカリン、カピラリン、カテキン、コリダリン、エスクレチン、エピカテキン、ジンゲロール、グリチルリチン、ディオスミン、ネオヘスペリジン、コーヒー酸、サリシルアルコール、エラジタンニンおよびハイドロキノンからなる群より選択される。疎水基含有水溶性有機化合物は、より好ましくは、ハイドロキノン配糖体、カテキン、サリシン、ヘスペリジン、ヘスペリジン配糖体、コーヒー酸、サリシルアルコールおよびエラジタンニンからなる群より選択される。
【0066】
疎水基含有水溶性有機化合物は、水溶液中に任意の濃度で存在し得る。疎水基含有水溶性有機化合物の濃度は、好ましくは0.01%〜50%、より好ましくは0.1%〜40%、さらに好ましくは0.5%〜30%であり、さらに好ましくは1%〜20%であり、最も好ましくは5%〜15%である。水溶液中に存在する疎水基含有水溶性有機化合物の濃度が低すぎると、精製の効率が悪い場合がある。水溶液中に存在する疎水基含有水溶性有機化合物の濃度が高すぎると、疎水基含有水溶性有機化合物が沈殿する場合がある。疎水基含有水溶性有機化合物が沈殿しない濃度が好ましい。
【0067】
疎水基含有水溶性有機化合物は、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する酵素反応溶液に由来し得る。本明細書において酵素反応溶液とは、任意の出発物質を酵素反応に供することにより得られる溶液をいう。このような酵素反応溶液の例としては、疎水基含有水溶性有機化合物の配糖化反応溶液、加水分解反応溶液、転移反応溶液および縮合反応溶液が挙げられる。酵素反応溶液は好ましくは、糖質を含む。酵素反応溶液は通常、反応が進行して、反応生成物が産生された後の反応溶液である。
【0068】
配糖化反応の例としては、代表的には、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼによって触媒される、糖転移受容体に対する糖転移反応がある。このような糖転移受容体の例としては、糖を構造中に含むフラボノイド、構造中に糖を含まないフラボノイド、フェノール化合物およびフェノール性化合物配糖体が挙げられる。代表的な糖転移受容体の例としては、ヘスペリジン、ナリンジン、ネオヘスペリジンおよびルチンが挙げられる。
【0069】
配糖化反応の別の例は、転移型アミラーゼによって触媒される、糖転移受容体に対する糖転移反応がある。このような糖転移受容体の例としては、カテキン、コーヒー酸、コウジ酸、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、プロトカテキュー酸、没食子酸、バニリン、ダイゼイン、ゲニステイン、α−レゾルシル酸およびフロログルシノールが挙げられる。
【0070】
配糖化反応溶液は、好ましくはヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液である。
【0071】
酵素反応を触媒する酵素の例としては、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼおよび転移型アミラーゼ以外に、α−アミラーゼ、プルラナーゼ、アミロマルターゼ、D−酵素、ネオプルラナーゼ、サイクロデキストリナーゼ、α−グルコシダーゼ、セルラーゼ、β−グルコシダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0072】
疎水基含有水溶性有機化合物を含有する酵素反応溶液は、当業者に公知の方法によって設計および入手され得る。
【0073】
疎水基含有水溶性有機化合物はまた、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する任意の天然材料に由来し得る。疎水基含有水溶性有機化合物は例えば、生物(例えば、動物または植物)に由来し得る。あるいは、動物抽出物または植物抽出物を用いることもできる。動物抽出物とは、動物から抽出される任意の物質をいい、植物抽出物とは、植物から抽出される任意の物質をいう。例えば、植物の葉、茎、根、花、実などから得られる任意の疎水基含有水溶性有機化合物が使用可能である。植物材料の例としては、大豆、大豆加工品、ナマコ、五倍子、黄ごん、アロエ、地黄、薬用人参、芍薬、クチナシ、甘草、柴胡、大黄、ドクダミ、クマコケモモ、茶、甜茶および柑橘類(例えば、オレンジの実)が挙げられる。また、動物の体内に存在する任意の疎水基含有水溶性有機化合物が使用可能である。
【0074】
(2)糖質
本明細書中では、糖質とは、Cn(H2O)mという一般式を有する化合物をいう。糖質は、構成要素である糖単位の数によって単糖、オリゴ糖、および多糖に分けられる。本発明では、単糖およびオリゴ糖が好ましい。本発明では、水に溶解する糖質または水に溶解しないが保水性を有する糖質が好ましい。
【0075】
単糖の例としては、D−グルコース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ラムノースが挙げられる。単糖は、D−グルコースであることが好ましい。
【0076】
オリゴ糖とは、本明細書中では、2〜10個の単糖が脱水縮合して生じた物質をいう。オリゴ糖は、好ましくは2〜9個の糖単位、より好ましくは2〜8個の糖単位、さらに好ましくは2〜7個の糖単位を有する。オリゴ糖の例としては、スクロース、ラクトース、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトオリゴ糖およびフルクトオリゴ糖が挙げられる。マルトオリゴ糖の例としては、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオース、マルトノナオースおよびマルトデカオースが挙げられる。オリゴ糖は、直鎖状のオリゴ糖であってもよいし、分枝状のオリゴ糖であってもよい。オリゴ糖は、その分子内に、環状部分を有し得る。
【0077】
多糖とは、本明細書中では、11個以上の単糖が脱水縮合して生じた物質をいう。多糖は、好ましくは少なくとも1つのα−1,4結合を有する。多糖の例としては、デキストリン、アミロース、アミロペクチン、デンプン、デキストランおよびセルロースが挙げられる。
【0078】
デキストリンとは、デンプンを化学的または酵素的方法で低分子化した物質をいう。デキストリンの例としては、ブリティシュガム、黄色デキストリン、白色デキストリン、パインデクス(松谷化学工業株式会社)、サンデック(三和澱粉株式会社)、テトラップ(林原商事株式会社)が挙げられる。
【0079】
アミロースとは、α−1,4結合によって連結されたグルコース単位から構成される直鎖分子である。アミロースは、天然のデンプン中に含まれる。
【0080】
アミロペクチンとは、α−1,4結合によって連結されたグルコース単位に、α−1,6結合でグルコース単位が連結された、分枝状分子である。アミロペクチンは天然のデンプン中に含まれる。アミロペクチンとしては、例えば、アミロペクチン100%からなるワキシーコーンスターチが用いられ得る。
【0081】
デンプンは、アミロースとアミロペクチンとの混合物である。デンプンとしては、通常市販されているデンプンであればどのようなデンプンでも用いられ得る。デンプンに含まれるアミロースとアミロペクチンとの比率は、デンプンを生産する植物の種類によって異なる。モチゴメ、モチトウモロコシなどに含まれるデンプンは、そのほとんどがアミロペクチンである。デンプンは、天然のデンプン、デンプン分解物および化工デンプンに区分される。
【0082】
天然のデンプンは、原料により、いも類デンプンおよび穀類デンプンに分けられる。いも類デンプンの例としては、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、くずデンプン、およびわらびデンプンなどが挙げられる。穀類デンプンの例としては、コーンスターチ、小麦デンプン、および米デンプンなどが挙げられる。
【0083】
化工デンプンは、天然のデンプンに加水分解、エステル化、またはα化などの処理を施して、より利用しやすい性質を持たせたデンプンである。糊化開始温度、糊の粘度、糊の透明度、老化安定性などを様々な組み合わせで有する幅広い種類の化工デンプンが入手可能である。化工デンプンの種類には種々ある。このようなデンプンの例は、デンプンの糊化温度以下においてデンプン粒子を酸に浸漬することにより得られる、デンプン分子は切断するが、デンプン粒子は破壊していないデンプンである。
【0084】
デンプン分解物は、デンプンに酵素処理または加水分解などの処理を施して得られる、処理前よりも分子量が小さいオリゴ糖もしくは多糖である。デンプン分解物の例としては、デンプン枝切り酵素分解物、デンプンホスホリラーゼ分解物およびデンプン部分加水分解物が挙げられる。
【0085】
デンプン枝切り酵素分解物は、デンプンに枝切り酵素を作用させることによって得られる。枝切り酵素の作用時間を種々に変更することによって、任意の程度に分岐部分(すなわち、α−1,6−グルコシド結合)が切断されたデンプン枝切り酵素分解物が得られ得る。デンプン枝切り酵素分解物の例としては、糖単位数4〜10000のうちα−1,6−グルコシド結合を1個〜20個有する分解物、糖単位数3〜500のα−1,6−グルコシド結合を全く有さない分解物、マルトオリゴ糖およびアミロースが挙げられる。デンプン枝切り酵素分解物の場合、分解されたデンプンの種類によって得られる分解物の分子量の分布が異なり得る。デンプン枝切り酵素分解物は、種々の長さの糖鎖の混合物であり得る。
【0086】
デキストリンおよびデンプン部分加水分解物は、デンプンを、酸、アルカリ、酵素などの作用によって部分的に分解して得られる分解物をいう。本発明では、デキストリンおよびデンプン部分加水分解物の有する糖単位数は、好ましくは約10〜約100,000、より好ましくは約50〜約50,000、さらにより好ましくは約100〜約10,000である。デキストリンおよびデンプン部分加水分解物の場合、分解されたデンプンの種類によって得られる分解産物の分子量の分布が異なり得る。デキストリンおよびデンプン部分加水分解物は、種々の長さを持つ糖鎖の混合物であり得る。
【0087】
デキストランとは、α−1,6−グルカンをいう。
【0088】
セルロースとは、β−1,4−グルコシド結合によって連結されたグルコース単位から構成される直鎖分子である。
【0089】
糖質は1種類の化合物であってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0090】
糖質は、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する水溶液中にもともと含まれていてもよいし、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する水溶液に添加されてもよい。疎水基含有水溶性有機化合物を含有する水溶液中に糖質がもともと含まれていることが好ましい。このような水溶液の例としては、上記に列挙したような配糖化反応溶液および果汁が挙げられる。
【0091】
糖質は低分子であることが好ましい。配糖化反応溶液のように、比較的高分子量の多糖を含有する溶液は、グルコアミラーゼのような、糖鎖を切断する酵素をその溶液に添加して反応させることによって、多糖を単糖またはオリゴ糖まで分解し得る。水溶液中の多糖は、有機溶媒との接触前に単糖またはオリゴ糖に分解されることが好ましい。糖質は、水溶液中にすべて溶解していることが好ましい。しかし、水溶液と有機溶媒との分離を妨げない限り、糖質は水溶液中に一部懸濁していてもよい。
【0092】
水溶液中の糖質の濃度は、任意の濃度であり得る。水溶液中の糖質の濃度は、好ましくは12%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、最も好ましくは50%以上である。糖質の濃度の上限は、糖質および疎水基含有水溶性有機化合物が沈殿しなければ任意の濃度であり得る。例えば、上限は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下または55%以下である。
【0093】
水溶液中の糖質の濃度は、当該分野で公知の方法によって測定され得る。例えば、簡便な方法としては、ブリックス糖度計による測定方法がある。ブリックス糖度計による測定方法は、簡便ではあるが、各種糖質を区別して測定することができない。各種糖質について区別して測定するためには、例えば、糖質を含有する水溶液を水:アセトニトリル=25:75(v/v)の溶液を移動相として用いて、カラムLiChrosorb NH2(Merck製;4.0×250mm)を用いたHPLCにかけ、溶出液をRI検出器を用いて測定することにより測定が可能である。
【0094】
水溶液のpHは、好ましくは2〜11であり、より好ましくは3〜9であり、さらに好ましくは4〜8である。
【0095】
(3)極性有機溶媒
本明細書中では、「極性有機溶媒」とは、アルミナに対する溶媒強度(ε0)が0.4以上であり、蒸留水と混ざる有機溶媒をいう。極性有機溶媒の溶媒強度は、好ましくは0.42〜0.98であり、より好ましくは0.44〜0.95であり、最も好ましくは0.44〜0.90である。極性有機溶媒は、20℃での誘電率が7.0以上の有機溶媒であってもよい。極性有機溶媒は、20℃での誘電率が好ましくは7.3〜40.0であり、より好ましくは7.4〜39.0であり、最も好ましくは7.5〜38.0である。
【0096】
アルミナに対する溶媒強度の例を表1に示す。誘電率の例を表2に示す。本発明で使用される極性有機溶媒の例としては、以下の表1および表2に示され、上記範囲に溶媒強度または誘電率を有する極性有機溶媒が挙げられる。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
極性有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノール、プロパノール、ピリジンまたはジメトキシスルホキシドであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトンであり、最も好ましくはテトラヒドロフランまたはアセトニトリルである。水溶液が相分離補助剤をさらに含む場合、極性有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンまたはイソプロピルアルコールであり、より好ましくはアセトンまたはイソプロピルアルコールである。
【0099】
極性有機溶媒は、1種類の化合物であることが好ましい。しかし、有機相が2相に分離しない限り、2種類以上の極性有機溶媒を混合して用い得る。当業者は、水溶液からの疎水基含有水溶性有機化合物の抽出のために適切な種類の極性有機溶媒を必要に応じて選択し得る。
【0100】
水溶液と接触させる極性有機溶媒の量は、代表的には水溶液の容積の0.1倍〜10倍であり、より好ましくは0.2倍〜2倍である。
【0101】
(4)相分離補助剤
水溶液は、相分離補助剤をさらに含有し得る。本明細書中では、「相分離補助剤」とは、水溶液と極性有機溶媒との混合物が水相と有機相とに分離するのを補助する物質をいう。ただし、相分離を補助する作用を有していても、糖質および疎水基含有水溶性有機化合物は相分離補助剤ではない。相分離補助剤は、例えば、塩析効果のある塩およびイオン強度を高めることが可能な水溶性物質であり得る。相分離補助剤は、塩または有機酸であり得る。相分離補助剤の例としては、硫安、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム等の乳酸塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、リンゴ酸等の有機酸、塩化アンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。相分離補助剤は、好ましくは塩であり、より好ましくは塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群より選択される。
【0102】
相分離補助剤は、相分離補助能を発揮するに十分な量で水溶液に含有され得る。このような量は当業者に公知である。相分離補助剤は、水溶液中に好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上含有される。相分離補助剤の量の上限は特にないが、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。
【0103】
相分離補助剤は、予め水溶液に含有させることが好ましい。しかし、水溶液と極性有機溶媒とを接触させている間に相分離補助剤を添加することも可能である。
【0104】
(疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液の調製)
疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液は、当業者に公知の方法によって調製され得る。このような水溶液は、酵素反応をさせた後、何の処理も施していない酵素反応溶液であってもよいし、酵素反応後に濃縮、希釈、濾過、pH調整などを行った酵素反応溶液であってもよい。特に、酵素反応溶液の粘度が高すぎて攪拌できない場合は希釈することが好ましい。水溶液はまた、疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する酵素反応溶液またはその濃縮液に相分離補助剤を添加することにより調製されてもよい。
【0105】
水溶液はまた、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する、動物または植物から選択される生物の抽出物であり得る。このような抽出物は、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する、動物材料または植物材料を、当該分野で公知の方法によって抽出することにより調製され得る。代表的な抽出方法は、疎水基含有水溶性有機化合物を含有する、動物材料または植物材料を、水(例えば、0℃より高く、40℃未満の水)、温水(例えば、40℃以上60℃未満の水)、熱水(例えば、60℃以上100℃未満の水)、アルコール、ピリジン、酢酸エチルまたはこれらの混合物のような抽出溶媒中に入れ、動物材料または植物材料からこれらの抽出溶媒へと疎水基含有水溶性有機化合物を移動させ、抽出溶媒から動物材料および植物材料を除去して抽出液を得て、そして必要に応じてこの抽出液を濃縮または乾固することを含む。抽出物は有機溶媒を含まないことが好ましい。抽出溶媒が有機溶媒である場合、抽出液を濃縮することによって、有機溶媒を除去することが好ましい。抽出物は、液体であっても、固体であってもよい。なお、本明細書中では、動物材料または植物材料の搾汁も、抽出物の定義に含まれる。水溶液は好ましくは、果汁である。動物材料は、動物全体であってもよいし、動物のうちの任意の器官または組織であってもよい。植物材料は、植物全体であってもよいし、植物のうちの任意の器官(例えば、花、果実、種子、根、茎および葉)または組織であってもよい。抽出に使用される動物材料および植物材料は、生の状態でも乾燥状態でもよい。抽出物が水溶液であれば、そのまま本発明で使用され得る。水溶液はまた、抽出物から、濃縮、希釈などによって調製され得る。特に、抽出物の粘度が高すぎて攪拌できない場合は希釈することが好ましい。なお、本発明の方法で使用される水溶液には、目的とする疎水基含有水溶性有機化合物が溶解している限り、他の任意の成分が懸濁していてもよい。水溶液はまた、疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する動物抽出物に、疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する植物抽出物に、またはこれらの抽出物の濃縮物もしくは希釈物に、相分離補助剤を添加することにより調製されてもよい。例えば、水溶液は、果汁またはその濃縮物に相分離補助剤を添加することにより調製されてもよい。
【0106】
抽出液には、サリシン、コニフェリン、アルブチン、センノシド、ステビオサイド、ルブソサイド、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジン、ダイゼイン、ゲニスチン、バルバロイン、バニリン、サポニン、ベルベリン、ケンフェロール、バイカリン、カピラリン、カテキン、コリダリン、エスクレチン、エピカテキン、ジンゲロールおよびグリチルリチンからなる群より選択される有効成分が溶解していることが好ましい。
【0107】
(疎水基含有水溶性有機化合物の抽出)
本発明の方法では、疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、それによって疎水基含有水溶性有機化合物を有機相に移動させる。
【0108】
水溶液と極性有機溶媒とは、例えば、水溶液と極性有機溶媒とを混合することによって接触され得る。水溶液と極性有機溶媒とを接触させることを、抽出するともいう。水溶液と極性有機溶媒とを接触させるときの温度は、好ましくは10℃〜50℃、より好ましくは25℃〜45℃、さらに好ましくは20℃〜40℃、最も好ましくは25℃〜35℃である。
【0109】
水溶液と極性有機溶媒とを混合および攪拌した後に静置することにより、水相と有機相とに分離する。一般的には、水相および有機相がそれぞれ層を形成し、水層および有機層となる。一般的には、比重の大きい溶媒層が下層となる。水よりも軽い比重の有機溶媒が使用される場合、通常、下層が水層となり、上層が有機層となる。
【0110】
通常、水相には少量の極性有機溶媒が含まれており、有機相には少量の水が含まれている。例えば、疎水基含有水溶性有機化合物(例えば、ヘスペリジンおよびルチン)を含む水溶液または懸濁液にアセトンを添加し、攪拌し、そして静置することによって水相と有機相(アセトン相)とが分離した場合、アセトン相には水が少量溶解しているために、有機相に水が含まれない場合と比較して疎水基含有水溶性有機化合物の溶解度が増し、アセトン中に疎水基含有水溶性有機化合物が効率的に溶解する。
【0111】
水溶液と極性有機溶媒とを混合して接触させている際には、その混合液を攪拌することが好ましい。攪拌の方法の例としては、回転、振とうおよびこれらの併用が挙げられるがこれらに限定されない。疎水基含有水溶性有機化合物を効率的に抽出および精製するためには、多段式向流分配装置(連続式液々抽出装置ともいう)を使用することが可能である。
【0112】
(フェノール誘導体配糖体の精製)
本発明の方法は、フェノール誘導体配糖体を精製する場合に特に有用である。フェノール誘導体配糖体の精製の場合を例にしてより詳細に説明する。
【0113】
フェノール誘導体配糖体は、例えば、糖質(例えば、マルトオリゴ糖またはデンプン)とフェノール誘導体とを酵素の存在下で反応させることによって形成され得る。通常、この反応は、ある段階で平衡化してそれ以上反応が進まなくなる。それゆえ、この酵素反応溶液中には、フェノール誘導体、フェノール誘導体配糖体および糖質が存在する。この酵素反応溶液が多糖またはオリゴ糖を含む場合、グルコアミラーゼのような糖分解酵素をこの酵素反応溶液に添加してインキュベートすることにより、酵素反応溶液中の多糖またはオリゴ糖を単糖に分解し得る。多糖またはオリゴ糖を単糖に分解すると、糖質の合計重量は変化しなくてもモル数が増加し、つまり、モル濃度が上昇して、その結果、水相と有機相との分離がより促進される。酵素反応溶液を極性有機溶媒と接触させて、第1の水相と少量の水を含む有機相とを得ると、この有機相には、フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体が移動する。上記のように、相の分離を促進するために、水相中に相分離補助剤を添加して、相分離補助剤を含有する水溶液を得て、この水溶液を極性有機溶媒と接触させてもよい。
【0114】
次いで、この少量の水を含む有機相を分取する。フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は、疎水性部分を含むので糖質よりも有機相との親和性が高い。そのため、フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は有機相に効率的に移動するが、糖質は有機相にあまり移動しない。そのため、分取された有機相の中には、フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体が抽出される。一般に、全体として同じ量の極性有機溶媒を用いて分配抽出を行う場合、全量を水溶液に1回に接触させて抽出を行うよりも、全量をいくつかのアリコートに分割して水溶液の抽出を複数回行う方が抽出効率が上がる。そのため、有機相を分取した後残った水相に極性有機溶媒を接触させて、水相と少量の水を含む有機相とを再度得て、この有機相を分取する工程を2回以上行ってもよい。有機相の分取を2回以上行った場合、得られた有機相を合わせて次の工程に用い得る。
【0115】
次いで、少量の水を含む有機相から極性有機溶媒が除去される。有機相から極性有機溶媒を除去する方法は、当業者に公知の任意の方法であり得る。このような方法の例としては、エバポレーターおよびエバポールによる濃縮が挙げられる。極性有機溶媒は、完全に除去されてもよく、この次の工程を妨害しない限り、少量残存していてもよい。極性有機溶媒を除去すると、極性有機溶媒中に含まれていた少量の水の中にフェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体が残る。この除去の工程では、水をあまり除去しないことが好ましい。この除去の工程では、フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体が沈殿しないことが好ましい。沈殿してしまった場合、水を加えてフェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を再度溶解することが好ましい。このようにして、フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を含有する第2の水溶液が得られる。
【0116】
次いで、第2の水溶液と酢酸エチルとを接触させて、第2の水相と酢酸エチル相とを得ることにより、フェノール誘導体を酢酸エチル相に移動する。
【0117】
次いで、第2の水相を分取する。フェノール誘導体は配糖体部分を含まないので、フェノール誘導体配糖体よりも酢酸エチル相との親和性が高い。そのため、フェノール誘導体は酢酸エチル相に効率的に移動するが、フェノール誘導体配糖体は酢酸エチル相にあまり移動しない。そのため、分取された水相の中には、フェノール誘導体配糖体が残存する。また、上記の第2の溶液中に糖質が微量に残存していた場合、この糖質はこの水相中に残存する。水溶液と極性有機溶媒との接触工程および有機相の分取工程と同様に、酢酸エチル相を分取した後残った水相に酢酸エチルを接触させて、水相と酢酸エチル相とを再度得て、第2の水相を分取する工程を2回以上行ってもよい。
【0118】
なお、本明細書中では、水溶液と極性有機溶媒との接触工程および有機相の分取工程の後に有機相と酢酸エチルとの接触を行う方法を記載したが、水溶液と酢酸エチルとを接触させて水相を分取した後に、この水相と極性有機溶媒との接触を行ってもよい。
【0119】
次いで、この第2の水相を濃縮し、そして冷却することにより、フェノール誘導体配糖体を沈殿させる。第2の水相中のフェノール誘導体配糖体の濃度が10%以上になるまでこの第2の水相を濃縮することが好ましい。好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、そして最も好ましくは25%以上になるまで濃縮する。これは、糖質の水中飽和濃度よりもフェノール誘導体配糖体の水中飽和濃度の方が低いことを利用している。例えば、糖質がグルコースであり、フェノール誘導体配糖体がハイドロキノン配糖体である場合、グルコースの水中飽和濃度が約18%であり、ハイドロキノン配糖体の水中飽和濃度が約10%であることを利用している。
【0120】
【実施例】
次に実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されない。
【0121】
<実験例1:相分離に対する糖の影響>
各種糖質の代表としてグルコース、スクロースおよびフルクトースを用い、水溶液と極性有機溶媒との相の分離に及ぼす影響を検討した。
【0122】
詳細には、グルコース、スクロースまたはフルクトースをそれぞれ水に溶解して、10%、15%、20%、25%、30%および50%水溶液を作製した。これらの糖の水溶液10mlに、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを10ml添加した後、分液ロートにより5分間激しく攪拌した。アセトニトリルおよびテトラヒドロフランはいずれも、水と混和する極性有機溶媒であり、水と混合した場合には水相と有機相には分離しない。攪拌終了後、混合物を30分間静置し、水相と有機相との2相に分離するかどうかを観察した。テトラヒドロフランまたはアセトニトリルを各種水溶液に添加した場合の結果を表3〜5に示す。表中THFとはテトラヒドロフラン、AcCNとはアセトニトリルを指す。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
表3〜5に示すように、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを糖の水溶液と混合した場合、ある程度の量の糖が存在することによって、相が分離することがわかった。
【0126】
これらの結果から、水溶液中に含まれる糖質の種類および濃度を調整すれば相を分離させることが容易になり、例えば、12%程度以上の濃度に糖を調整することが好ましいことがわかった。
【0127】
<実験例2:相分離に対する塩の影響>
次に、相分離に対する塩の影響について検討を行った。
【0128】
詳細には、グルコース濃度が25%または50%のグルコース水溶液に、それぞれ20%または10%となるように塩化ナトリウムを添加して、塩化ナトリウム含有グルコース水溶液を作製した。これらの水溶液10mlに、極性有機溶媒であるアセトンまたはイソプロパノールを10ml添加した後、分液ロートにより5分間激しく攪拌した。攪拌終了後、混合物を30分間静置し、2相に分離するかどうかを観察した。結果を表6に示す。
【0129】
【表6】
デキストリン濃度が25%の水溶液に、20%となるようにクエン酸ナトリウムを添加して、クエン酸ナトリウム含有デキストリン水溶液を作製した。なお、デキストリンは、DEが7〜9の松谷化学社製のパインデックス#1であった。本明細書中では、「DE」とは、デンプンの分解程度を示す指標であって、固形分中のグルコースに換算した直接還元糖百分率である。また、グルコース濃度が25%の水溶液に、10%となるように硫酸マグネシウムを添加して、硫酸マグネシウム含有グルコース水溶液を作製した。これらの水溶液10mlに、それぞれ、極性有機溶媒であるアセトンを10ml添加した後、分液ロートにより5分間激しく攪拌した。攪拌終了後、混合物を30分間静置し、混合物が2相に分離するかどうかを観察した。結果を表7に示す。
【0130】
【表7】
表6および表7に示すように、塩化ナトリウム含有グルコース水溶液、クエン酸ナトリウム含有デキストリン水溶液および硫酸マグネシウム含有グルコース水溶液の各々とアセトンまたはイソプロパノールとを混合した場合、相が分離した。50%糖水溶液では相が分離しなかった極性有機溶媒であっても、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの塩を添加することによって相が分離した。この結果、塩化ナトリウムのような塩が相分離補助剤として作用することがわかった。塩は、水溶液に溶解した際に水溶液のイオン強度を上昇させることによって相分離補助剤として作用すると考えられるので、イオン強度を高めるものであれば相分離補助剤として使用できると考えられる。
【0131】
(実施例1:カテキン類の抽出)
(実施例1a)
カテキン類混合物(サンフェノン;太陽化学社製)1gを30%のグルコースを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、テトラヒドロフランを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたカテキン類の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でテトラヒドロフラン相に出発物質の全量の94.1%のカテキン類が抽出されたことが解った。
【0132】
(実施例1b)
テトラヒドロフラン10mlに代えてアセトニトリル10mlを用いた以外は実施例1aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でアセトニトリル相に出発物質の全量の84.4%のカテキン類が抽出されたことが解った。
【0133】
(実施例2:カテキン類の抽出)
(実施例2a)
カテキン類混合物(サンフェノン;太陽化学社製)1gを30%のグルコースおよび10%の塩化ナトリウムを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、アセトンを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたカテキン類の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に出発物質の全量の91.8%のカテキン類が抽出されたことが解った。
【0134】
(実施例2b)
アセトン10mlに代えてイソプロパノール10mlを用いた以外は実施例2aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でイソプロパノール相に出発物質の全量の93.2%のカテキン類が抽出されたことが解った。
【0135】
(実施例3:ヘスペリジン配糖体の抽出)
(実施例3a)
ヘスペリジン配糖体(東洋精糖社製)1gを30%のグルコースを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、テトラヒドロフランを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたヘスペリジン配糖体の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でテトラヒドロフラン相に出発物質の全量の50.0%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。さらにテトラヒドロフラン抽出後に分取した水相に5mlのテトラヒドロフランを添加し同様の操作および測定を再度行ったところ、合計80.0%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。
【0136】
(実施例3b)
テトラヒドロフラン10mlに代えてアセトニトリル10mlを用いた以外は実施例3aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でアセトニトリル相に出発物質の全量の27.6%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。
【0137】
(実施例4:ヘスペリジン配糖体の抽出)
(実施例4a)
ヘスペリジン配糖体(東洋精糖社製)1gを30%のグルコースおよび10%の塩化ナトリウムを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、アセトンを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたヘスペリジン配糖体の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に出発物質の全量の43.5%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。さらにアセトン抽出後に分取した水相に5mlのアセトンを添加し同様の操作および測定を2回行ったところ、合計90.0%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。
【0138】
(実施例4b)
アセトン10mlに代えてイソプロパノール10mlを用いた以外は実施例4aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でイソプロパノール相に出発物質の全量の32.0%のヘスペリジン配糖体が抽出されたことが解った。
【0139】
(実施例5:サリシンの抽出)
(実施例5a)
サリシン1gを30%のグルコースを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、テトラヒドロフランを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたサリシンの量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でテトラヒドロフラン相に出発物質の全量の96.5%のサリシンが抽出されたことが解った。
【0140】
(実施例5b)
テトラヒドロフラン10mlに代えてアセトニトリル10mlを用いた以外は実施例5aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でアセトニトリル相に出発物質の全量の98.1%のサリシンが抽出されたことが解った。
【0141】
(実施例6:サリシンの抽出)
(実施例6a)
サリシン1gを30%のグルコースおよび10%の塩化ナトリウムを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、アセトンを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたサリシンの量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に出発物質の全量の58.0%のサリシンが抽出されたことが解った。
【0142】
(実施例6b)
アセトン10mlに代えてイソプロパノール10mlを用いた以外は実施例6aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でイソプロパノール相に出発物質の全量の97.0%のサリシンが抽出されたことが解った。
【0143】
(実施例7:コーヒー酸の抽出)
(実施例7a)
コーヒー酸1gを30%のグルコースを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、テトラヒドロフランを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたコーヒー酸の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でテトラヒドロフラン相に出発物質の全量の88.6%のコーヒー酸が抽出されたことが解った。
【0144】
(実施例7b)
テトラヒドロフラン10mlに代えてアセトニトリル10mlを用いた以外は実施例7aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でアセトニトリル相に出発物質の全量の76.2%のコーヒー酸が抽出されたことが解った。
【0145】
(実施例8:コーヒー酸の抽出)
(実施例8a)
コーヒー酸1gを30%のグルコースおよび10%の塩化ナトリウムを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、アセトンを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたコーヒー酸の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に出発物質の全量の78.2%のコーヒー酸が抽出されたことが解った。
【0146】
(実施例8b)
アセトン10mlに代えてイソプロパノール10mlを用いた以外は実施例8aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でイソプロパノール相に出発物質の全量の87.2%のコーヒー酸が抽出されたことが解った。
【0147】
(実施例9:サリシルアルコールの抽出)
(実施例9a)
サリシルアルコール1gを30%のグルコースを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、テトラヒドロフランを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたサリシルアルコールの量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でテトラヒドロフラン相に出発物質の全量の98.7%のサリシルアルコールが抽出されたことが解った。
【0148】
(実施例9b)
テトラヒドロフラン10mlに代えてアセトニトリル10mlを用いた以外は実施例9aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でアセトニトリル相に出発物質の全量の98.2%のサリシルアルコールが抽出されたことが解った。
【0149】
(実施例10:サリシルアルコールの抽出)
(実施例10a)
サリシルアルコール1gを30%のグルコースおよび10%の塩化ナトリウムを含む水溶液100mlに溶解して試料水溶液を得た。この試料水溶液の280nmの吸光度を測定した。この試料水溶液10mlに、アセトンを10ml添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出されたサリシルアルコールの量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に出発物質の全量の87.7%のサリシルアルコールが抽出されたことが解った。
【0150】
(実施例10b)
アセトン10mlに代えてイソプロパノール10mlを用いた以外は実施例10aと同様の操作を行った。その結果、1回の抽出でイソプロパノール相に出発物質の全量の98.7%のサリシルアルコールが抽出されたことが解った。
【0151】
(実施例11:エラジタンニンおよびその重合物の抽出)
(実施例11a)
甜茶抽出物水溶液(サン甜茶;サントリー社製)を水で2倍希釈して2倍希釈液を得た。この2倍希釈液にグルコースを10%、塩化ナトリウムを10%となるように添加し溶解して水溶液を得た。この水溶液の280nmの吸光度を測定した。この水溶液20mlに、アセトン20mlを添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。下相(水相)を分取し、その容量および280nmの吸光度を測定した。上相(極性有機溶媒相)に抽出された有効成分(エラジタンニンおよびその重合物が有効成分である)の量を、下相の280nmの吸光度の減少および下相の溶液量から算出した。その結果、1回の抽出でアセトン相に43.1%の有効成分が抽出されたことが解った。さらに着色のレベルはアセトン相の方が水相の3分の1程度となっていた。このことから、抽出によって、有効成分が抽出され、そして脱色効果が得られたことがわかった。
【0152】
(実施例12:果汁からのヘスペリジンの抽出)
カリフォルニアオレンジ果汁濃縮液(5倍濃縮液)10mlに15%の塩化ナトリウム水を10ml添加し、均一になるように攪拌して水溶液を得た。使用したカリフォルニアオレンジ果汁濃縮液中のヘスペリジンの量を、カラムODSを用い、移動相をアセトニトリル:水=20:80とし、流速0.5ml/分でカラム温度40℃でHPLCを行い、溶出液の吸光度を280nmで検出することにより測定した。ヘスペリジン量の詳細な検出方法は、日本国特許公開平8−80177号公報に記載される。得られた水溶液20mlに、アセトン20mlを添加し、分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。上相(極性有機溶媒相)を分取し、その容量を測定し、そしてヘスペリジンの量を、上記のようにHPLCにより測定した。その結果、1回の抽出でアセトン相に75%のヘスペリジンが抽出されていた。
【0153】
(実施例13:配糖化反応溶液からのヘスペリジンの抽出)
可溶性デンプン(メルク社製)5%およびヘスペリジン0.5%が溶解している水溶液を塩酸によりpH9.0に調整し、アルカリ耐性のCGTase(日本国特許公開平7−107972号公報に記載のCGTase)を5ユニット/mlの濃度になるようにこの水溶液に添加し、次いで37℃で16時間酵素反応させた。酵素反応終了後、酵素反応溶液の一部を採取して、HPLC分析方法によってヘスペリジンおよびヘスペリジン配糖体の量を測定した。HPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相はアセトニトリル:水=20:80(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液の吸光度を280nmで検出した。ヘスペリジンおよびヘスペリジン配糖体の分析方法は、日本国特許公開平8−80177号号公報に記載される。その結果、酵素反応により、反応開始時に投入したヘスペリジンの約80%がヘスペリジン配糖体となったことがわかった。
【0154】
次いで、この酵素反応終了後の酵素反応溶液にグルコースを20%および塩化ナトリウムを10%となるように添加し、溶解してグルコースおよび塩化ナトリウムを含有する酵素反応溶液を得た。グルコースおよび塩化ナトリウムを含有する酵素反応溶液に、等容量のアセトンを添加した。分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。上相のアセトン相を分取し、その容量を測定し、そしてアセトン相に溶解しているヘスペリジン配糖体の量を、上記のようにHPLCにより測定した。その結果、酵素反応終了後の酵素反応溶液中に存在したヘスペリジン配糖体のうちの約45%のヘスペリジン配糖体がアセトン相中に抽出されていた。さらに、下相の水相に、酵素反応溶液の容量の半分量のアセトンを添加し、攪拌し、静置し、上相を分取するという、同様の抽出操作を3回行った結果、ヘスペリジン配糖体を全量回収することができた。
【0155】
(実施例14:配糖化反応溶液からのハイドロキノン配糖体の抽出)
デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるようにこの水溶液に添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。酵素反応終了後、酵素反応溶液の一部を採取して、HPLC分析方法によってハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって検出した。この酵素反応溶液を用いて、HPLC分析方法によって生成物グルコースおよびマルトオリゴ糖の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75(v/v)であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のマルトオリゴ糖をRI検出器によって検出した。その結果、この酵素反応によりハイドロキノンの約35%がハイドロキノン配糖体となっており、デキストリンはグルコースおよびマルトオリゴ糖に分解されていることがわかった。さらに、酵素反応終了後の酵素反応溶液に、グルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を8.8ユニット/mlの濃度になるように添加して45℃で3時間インキュベートすることによって、酵素反応溶液中のオリゴ糖をグルコースに分解した。
【0156】
次いで、このオリゴ糖分解後の酵素反応溶液に、酵素反応溶液と等容量のテトラヒドロフランを添加した。分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。上相のテトラヒドロフラン相を分取し、その容量を測定し、そしてテトラヒドロフラン相に溶解しているハイドロキノン配糖体の量を、上記のようにHPLCにより分析した。その結果、酵素反応終了後の酵素反応溶液中に存在したハイドロキノン配糖体のうちの約65%のハイドロキノン配糖体がテトラヒドロフラン相中に抽出されていた。さらに、下相の水相に、酵素反応溶液の容量の半分量のテトラヒドロフランを添加し、攪拌し、静置し、上相を分取するという、同様の抽出操作を3回行った結果、ハイドロキノン配糖体を全量回収することができた。
【0157】
(実施例15:配糖化反応溶液からのハイドロキノン配糖体の抽出)
デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるように添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。酵素反応終了後、酵素反応溶液の一部を採取して、HPLC分析方法によってハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって検出した。この酵素反応溶液を用いて、HPLC分析方法によって生成物グルコースおよびマルトオリゴ糖の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のマルトオリゴ糖をRI検出器によって検出した。その結果、この酵素反応によりハイドロキノンの約35%がハイドロキノン配糖体となっており、デキストリンはグルコースおよびマルトオリゴ糖に分解されていることがわかった。さらに、酵素反応終了後の酵素反応溶液に、グルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を8.8ユニット/mlの濃度になるように添加して45℃で3時間インキュベートすることによって、酵素反応溶液中のオリゴ糖をグルコースに分解した。
【0158】
次いで、このオリゴ糖分解後の酵素反応液をエバポレーターを用いて、約1.4倍に減圧濃縮した。この濃縮液に対して20%となるよう硫酸アンモニウムを添加して、硫酸アンモニウム含有濃縮液を得た。この硫酸アンモニウム含有濃縮液に対して、この濃縮液と等容量のアセトンを添加した。分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を30分間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。上相のアセトン相を分取し、その容量を測定し、そしてアセトン相に溶解しているハイドロキノン配糖体量を上記のようにHPLCにより分析した。その結果、酵素反応終了後の酵素反応溶液中に存在したハイドロキノン配糖体のうちの約60%のハイドロキノン配糖体がアセトン相中に抽出されていた。さらに、下相の水相に、濃縮液の容量の0.8容量のアセトンを添加し、攪拌し、静置し、上相を分取するという、同様の抽出操作を3回行った結果、ハイドロキノン配糖体を全量回収することができた。
【0159】
(実施例16:配糖化反応溶液からのハイドロキノン配糖体の抽出)
デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるように添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。酵素反応終了後、酵素反応溶液の一部を採取して、HPLC分析方法によってハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって検出した。この酵素反応溶液を用いて、HPLC分析方法によって生成物グルコースおよびマルトオリゴ糖の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75(v/v)であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のマルトオリゴ糖をRI検出器によって検出した。その結果、この酵素反応によりハイドロキノンの約35%がハイドロキノン配糖体となっており、デキストリンはグルコースおよびマルトオリゴ糖に分解されていることがわかった。さらに、酵素反応終了後の酵素反応溶液に、グルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を8.8ユニット/mlの濃度になるように添加して45℃で3時間インキュベートすることによって、酵素反応溶液中のオリゴ糖をグルコースに分解した。
【0160】
次いで、このオリゴ糖分解後の酵素反応液に、この酵素反応液と等容量のアセトニトリルを添加した。分液ロートにより5分間激しく攪拌した後、混合物を1時間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。上相のアセトニトリル相を分取し、その容量を測定し、そしてアセトニトリル相に溶解しているハイドロキノン配糖体量を上記のようにHPLCにより分析した。その結果、酵素反応終了後の酵素反応溶液中に存在したハイドロキノン配糖体のうちの約30%のハイドロキノン配糖体がアセトニトリル相に抽出されていた。さらに、下相の水相に、酵素反応溶液と等容量のアセトニトリルを添加し、攪拌し、静置し、上相を分取するという、同様の抽出操作を5回行った結果、酵素反応終了後の酵素反応溶液中に存在したハイドロキノン配糖体のうちの約90%のハイドロキノン配糖体を回収することができた。
【0161】
(実施例17:グルコアミラーゼ処理条件の検討)
出発物質としてデキストリンまたはデンプンを用いて配糖化酵素反応を行った場合、反応終了後の酵素反応溶液中には出発物質よりも低分子量の多量のグルコースおよびデキストリンが存在する。糖質全体の濃度が同じであっても、モル数が高い方が、有機相への糖の移動が少なくなる。そこで、配糖化酵素反応後に残存するデキストリンを効率的にグルコースへと分解するために、デキストリン分解反応の条件を検討した。
【0162】
デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるように添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。
【0163】
この反応終了後の配糖化反応溶液1mlに対して、1.4μl(1倍量)、2.1μl(1.5倍量)または2.8μl(2倍量)のグルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を加えた。この後、45℃で3時間または4時間インキュベートした。インキュベート終了後、HPLC分析方法によってこの溶液中のグルコースおよびマルトースの含量を確認した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75(v/v)であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のグルコースおよびマルトースをRI検出器によって検出した。また、HPLC分析方法によって溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって検出した。得られたハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体(HQG)の量から、ハイドロキノン配糖化率を算出した。結果を以下の表8に示す。
【0164】
【表8】
1倍量のグルコアミラーゼを用いて糖の分解を3時間または4時間行っても、グルコアミラーゼを添加する前の酵素反応溶液と糖組成がほぼ同じであった。このことから、グルコアミラーゼが1倍量である場合、反応を1、2時間延長した程度ではマルトース量は劇的には減量しない可能性が示唆された。
【0165】
また、グルコアミラーゼを増量しても配糖化率はほとんど変わらなかった。このことは、目的の生成物であるハイドロキノン配糖体を分解することなく、グルコアミラーゼがデキストリンを分解できることを示す。それゆえ、デキストリンの分解を促進するためには、分解反応の時間を延長するよりも、グルコアミラーゼを増量するほうが効果的であることがわかった。
【0166】
次いで、このグルコアミラーゼ処理の違いがTHF処理に及ぼす影響を調べた。上記で得られた(XL−4)処理液1mlとTHF1mlとを混合し、分液ロートにより1分間激しく振盪し、混合物を振盪後1時間静置した。その結果、混合物は2相に分離した。水相を分取し、この水相に水を加えて1mlにした。この水相を用いて、HPLC分析方法によってグルコースおよびマルトースの量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75(v/v)であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のグルコースおよびマルトースをRI検出器によって検出した。また、HPLC分析方法によってハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher 100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって測定した。得られた結果と、THFでの抽出前の上記のグルコース濃度、マルトース濃度およびHQG濃度とに基づいて、THF相への抽出率を計算した。結果を以下の表9に示す。
【0167】
【表9】
この結果、グルコアミラーゼ処理を行ってグルコース濃度が上昇するほど、THF相へのグルコースの抽出が抑えられる傾向が確認された。
【0168】
グルコアミラーゼ添加量が多いサンプルほど、THFとの振盪、分液後の水相の液量が少なくなる(THF相への水の流入が少なくなる)傾向もまた確認された。
【0169】
(実施例18:テトラヒドロフラン相への抽出に対する糖質濃度の影響)
テトラヒドロフラン(THF)相への抽出に対する、水溶液中のグルコース濃度の影響を検討した。
【0170】
まず、42%グルコースおよび9%ハイドロキノン配糖体を含む水溶液を調製した。この水溶液を水で段階的に希釈することによって、グルコース濃度が40%〜20%の水溶液を作製した。当然、水溶液を希釈することによって、グルコースだけでなく、ハイドロキノン配糖体も希釈されている。このようにして調製された水溶液5mlに5mlのTHFを加え、30℃にて5分間ミキサーで攪拌し、攪拌終了後、混合物を3000rpmにて5分間遠心分離を行った。上相を分取した。グルコース濃度が低くなるに従ってTHF相が少なくなっていき、20%では1回目抽出で相が分離しなかった。下相に再度5mlのTHFを加え、同様にして上相を分取した。各水溶液について得られた2つの上相をそれぞれ合わせた。HPLC分析方法によってこの溶液中のグルコースおよびマルトースの含量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrosorb NH2(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:アセトニトリル=25:75であり、流速は1.0ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のグルコースおよびマルトースをRI検出器によって検出した。また、HPLC分析方法によってハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を測定した。このHPLC分析方法においては、LiChrospher100RP18(Merck;4.0×250mm)のカラムを用い、移動相は水:メタノール:リン酸=80:19.7:0.3(v/v)であり、流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であり、溶出液中のハイドロキノンおよびハイドロキノン配糖体の量を紫外分光法によって測定した。
【0171】
結果を図1に示す。図1からわかるように、ハイドロキノン配糖体の移動率はグルコース濃度にそれほど依存しなかった。しかし、グルコースの移動率は、グルコース濃度が高くなるにしたがって低くなった。このことから、抽出に用いる水溶液中の糖質濃度を高めれば、疎水基含有水溶性有機化合物と比較して糖の極性有機溶媒相への移動が少なくなり、高純度の疎水基含有水溶性有機化合物が得られることがわかった。
【0172】
(実施例19:ハイドロキノン配糖体の抽出に対する、配糖化反応溶液の濃縮の影響)
上記実施例18に示すように、水溶液中の糖質の濃度を高めれば、有機相への糖質の移動が抑制されて、疎水基含有水溶性有機化合物が有機相に効率よく移動することがわかった。それゆえ、疎水基含有水溶性有機化合物を含む酵素反応溶液を濃縮することによって、有機相への糖質の移動が抑えられ、疎水基含有水溶性有機化合物の抽出効率が上がるかどうかを確認した。
【0173】
まず、デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるように添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。この反応終了後の配糖化反応溶液1mlあたり2.1μl(1.5倍量)のグルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を加えた。この後、45℃で4時間グルコアミラーゼ処理を行い、反応溶液を得た。
【0174】
この反応溶液5mlを、エバポレーターによって濃縮して、容積が80%(4.0ml)または70%(3.5ml)になるように濃縮した。未濃縮の反応溶液、80%の濃縮液または70%の濃縮液に、THFを等容量加えて、ミキサーにより1分間激しく振盪し、30℃の条件下で抽出を行い、混合物を1時間静置したところ、混合物は2相に分離した。上相のTHF相を分取した。得られたTHF相を、上記のようにHPLCによってグルコース、マルトースおよびハイドロキノン配糖体の含量について分析した。下相の水相に、水相の容量の0.5倍の容量のTHFを再度加え、振盪し、抽出し、上相のTHF相を分取することをさらに2回繰り返した。得られたTHF相を合わせた。なお、濃縮液では分液時に中間層が発生したが、中間層は水相に加えた。結果を以下の表10〜12に示す。
【0175】
【表10】
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
この結果、予想した通り、グルコアミラーゼ処理後の反応液を濃縮してからTHF抽出を行うことにより、THF相へのグルコース抽出量を、未濃縮の場合の50%〜60%程度に抑制することができた。
【0178】
(実施例20:相の分離に対する疎水基含有水溶性有機化合物の影響)
実施例17に記載されるように、配糖化反応溶液をTHFで抽出する場合、グルコース濃度が20%以下でも水相と有機相とは完全に分離し、THF相の方が水相よりも大きくなった。一方、上記実施例18では、42%グルコースおよび9%ハイドロキノン配糖体を含有する溶液(この溶液には、ハイドロキノンがほとんど入っていない)を、グルコース濃度が20%になるように水で希釈した場合、THFを添加しても相が分離しなかった。そこで、相の分離に対する疎水基含有水溶性有機化合物の影響を調べた。
【0179】
上記実施例18で調製した20%グルコース含有希釈液に、10%となるようにハイドロキノンを添加して水溶液を得た。この水溶液に、等容量のTHFを添加して、ミキサーにより5分間攪拌し、そして1時間静置した。その結果、THF相と水相とに完全に分離した。また、THF相に水が混入して、THF相の方が水相よりも大きくなった。THF相を分取し、THF中のハイドロキノン配糖体の含量を上記のようにHPLCによって測定した。その結果、ハイドロキノンを添加しない場合よりも多量のハイドロキノン配糖体が抽出されたことがわかった。これは、ハイドロキノンのようなTHF相に良く溶ける物質を水相に加えることでTHFが水相に移動しなくなるため、分離がよくなったうえ、高濃度のハイドロキノンがTHFに溶解することでハイドロキノンが配糖体の移行を促進したためと考えられる。
【0180】
(実施例21:テトラヒドロフラン相への抽出に対する温度の影響)
テトラヒドロフラン相への抽出に対する温度の影響を調べた。
【0181】
まず、デキストリン(DEが7〜9のパインデックス#1;松谷化学社製)35%およびハイドロキノン15%が溶解している水溶液を5N水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.5に調整し、配糖化酵素(日本国特許公開平6−277053号公報に記載のアミラーゼX−23)を20ユニット/mlの濃度になるように添加し、次いで45℃で40時間インキュベートしてハイドロキノンへの配糖化反応をおこなった。この反応終了後の配糖化反応溶液1mlあたり2.1μl(1.5倍量)のグルコアミラーゼ(ナガセケムテックス社製;商品名XL−4)を加えた。この後、混合物を45℃で4時間インキュベートして、グルコアミラーゼ処理後反応溶液を得た。
【0182】
5mlのグルコアミラーゼ処理後反応溶液に5mlのTHFを加え、各温度(3、10、22、または45℃)にてミキサーを用いて5分間攪拌した後、混合物を3000rpmで5分間遠心分離した。その結果、混合物は2相に分離した。水相を分取し、この水相に水を加えて5mlに調整して水溶液を得た。この調整後の水溶液を、上記のようにHPLCにてハイドロキノン、ハイドロキノン配糖体およびグルコースの濃度を測定した。
【0183】
結果を以下の表13に示す。
【0184】
【表13】
表13の結果にもとづいてハイドロキノン配糖体およびグルコースの移動率を算出した。移動率のグラフを図2に示す。
【0185】
表13および図2からわかるように、抽出温度が低い場合、THF相への糖の移動が多かった。温度の上昇に従って、ハイドロキノン、ハイドロキノン配糖体およびグルコースのTHF相への移動率は下がった。これは、温度の上昇に従ってHQGおよびグルコースの水相への溶解度が上がって、THF相への移動が減少したものと考えられる。また、温度が高いほど、ハイドロキノン配糖体とグルコースとの移動率の差が広がるので、なるべく高い温度で抽出することにより、ハイドロキノン配糖体の純度をより高めることができることがわかった。
【0186】
【発明の効果】
本発明により、疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法が提供される。本発明の抽出方法および精製方法は、各種動物および植物の有効成分を抽出および精製する手法として、あるいは各種酵素反応溶液から有効成分を抽出および精製する手法として用いることが可能である。本発明の方法により、疎水基含有水溶性有機化合物を容易でかつ安価に分離および精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、テトラヒドロフラン抽出に対するグルコース濃度の影響を示すグラフである。
【図2】図2は、ハイドロキノン配糖体およびグルコースのテトラヒドラフラン相への移動率を示すグラフである。
Claims (19)
- 疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法であって、
該疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、それにより該疎水基含有水溶性有機化合物を該有機相に移動させる工程
を包含し、
ここで、該疎水基含有水溶性有機化合物は、ハイドロキノン配糖体、カテキン、ヘスペリジン、ヘスペリジン配糖体、コーヒー酸、サリシルアルコールおよびエラジタンニンからなる群より選択され、そして
ここで、該極性有機溶媒は、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルであり、該水溶液中の該糖質の濃度は、20%〜90%である、方法。 - 疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法であって、
該疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、それにより該疎水基含有水溶性有機化合物を該有機相に移動させる工程
を包含し、
ここで、該疎水基含有水溶性有機化合物は、ハイドロキノン配糖体、カテキン、ヘスペリジン、ヘスペリジン配糖体、コーヒー酸、サリシルアルコールおよびエラジタンニンからなる群より選択され、そして
ここで、該極性有機溶媒は、アセトニトリルであり、該糖質は、グルコースであり、該水溶液中の該糖質の濃度は、15%〜90%である、方法。 - 疎水基含有水溶性有機化合物の抽出方法であって、
該疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、水相と有機相とを得、それにより該疎水基含有水溶性有機化合物を該有機相に移動させる工程
を包含し、
ここで、該疎水基含有水溶性有機化合物は、ハイドロキノン配糖体、カテキン、ヘスペリジン、ヘスペリジン配糖体、コーヒー酸、サリシルアルコールおよびエラジタンニンからなる群より選択され、そして
ここで、該極性有機溶媒は、テトラヒドロフランであり、該水溶液がグルコースおよびマルトースを含み、該水溶液中の糖質の濃度が90%以下であり、
(a)該水溶液中のグルコース濃度が12.2%以上であり、かつ該水溶液中のマルトース濃度が4.9%以上であるか;
(b)該水溶液中のグルコース濃度が14.7%以上であり、かつ該水溶液中のマルトース濃度が3.7%以上であるか;または
(c)該水溶液中のグルコース濃度が15.8%以上であり、かつ該水溶液中のマルトース濃度が2.6%以上である、
方法。 - 前記極性有機溶媒の量が、前記水溶液の容積の0.2倍〜2倍である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記疎水基含有水溶性有機化合物が、酵素反応溶液に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酵素反応溶液が、配糖化反応溶液である、請求項5に記載の方法。
- 前記配糖化反応溶液が、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液である、請求項6に記載の方法。
- 前記疎水基含有水溶性有機化合物が、動物または植物から選択される生物に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記疎水基含有水溶性有機化合物が、果汁に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記水溶液が、前記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する酵素反応溶液を濃縮することにより調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酵素反応溶液が、配糖化反応溶液である、請求項10に記載の方法。
- 前記配糖化反応溶液が、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液である、請求項11に記載の方法。
- 前記水溶液が、前記疎水基含有水溶性有機化合物および糖質を含有する生物抽出物を濃縮または希釈することにより調製され、ここで該生物が動物または植物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記水溶液が、果汁を濃縮することにより調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- フェノール誘導体配糖体の精製方法であって、
フェノール誘導体、フェノール誘導体配糖体および糖質を含有する第1の水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、第1の水相と少量の水を含む有機相とを得、それにより該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を該有機相に移動させる工程;
該少量の水を含む有機相を分取する工程;
該少量の水を含む有機相から該極性有機溶媒を除去して、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を含有する第2の水溶液を得る工程;
該第2の水溶液と酢酸エチルとを接触させて、第2の水相と酢酸エチル相とを得、それにより該フェノール誘導体を該酢酸エチル相に移動させる工程;
該第2の水相を分取する工程;および
該第2の水相を濃縮し、そして冷却することにより、該フェノール誘導体配糖体を沈殿させる工程
を包含し、
ここで、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は、該フェノール誘導体の配糖化反応溶液に由来し、該配糖化反応溶液が、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり、そして
ここで、該極性有機溶媒は、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルであり、該第1の水溶液中の該糖質の濃度は、20%〜90%である、
方法。 - フェノール誘導体配糖体の精製方法であって、
フェノール誘導体、フェノール誘導体配糖体および糖質を含有する第1の水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、第1の水相と少量の水を含む有機相とを得、それにより該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を該有機相に移動させる工程;
該少量の水を含む有機相を分取する工程;
該少量の水を含む有機相から該極性有機溶媒を除去して、該フェノール誘導体およびフ ェノール誘導体配糖体を含有する第2の水溶液を得る工程;
該第2の水溶液と酢酸エチルとを接触させて、第2の水相と酢酸エチル相とを得、それにより該フェノール誘導体を該酢酸エチル相に移動させる工程;
該第2の水相を分取する工程;および
該第2の水相を濃縮し、そして冷却することにより、該フェノール誘導体配糖体を沈殿させる工程
を包含し、
ここで、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は、該フェノール誘導体の配糖化反応溶液に由来し、該配糖化反応溶液が、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり、そして
ここで、該極性有機溶媒は、アセトニトリルであり、該糖質は、グルコースであり、該第1の水溶液中の該糖質の濃度は、15%〜90%である、方法。 - フェノール誘導体配糖体の精製方法であって、
フェノール誘導体、フェノール誘導体配糖体および糖質を含有する第1の水溶液と、極性有機溶媒とを接触させて、第1の水相と少量の水を含む有機相とを得、それにより該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を該有機相に移動させる工程;
該少量の水を含む有機相を分取する工程;
該少量の水を含む有機相から該極性有機溶媒を除去して、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体を含有する第2の水溶液を得る工程;
該第2の水溶液と酢酸エチルとを接触させて、第2の水相と酢酸エチル相とを得、それにより該フェノール誘導体を該酢酸エチル相に移動させる工程;
該第2の水相を分取する工程;および
該第2の水相を濃縮し、そして冷却することにより、該フェノール誘導体配糖体を沈殿させる工程
を包含し、
ここで、該フェノール誘導体およびフェノール誘導体配糖体は、該フェノール誘導体の配糖化反応溶液に由来し、該配糖化反応溶液が、ヘスペリジンまたはハイドロキノンの配糖化反応溶液であり、そして
ここで、該極性有機溶媒は、テトラヒドロフランであり、該第1の水溶液がグルコースおよびマルトースを含み、該第1の水溶液中の糖質の濃度が90%以下であり、
(a)該第1の水溶液中のグルコース濃度が12.2%以上であり、かつ該第1の水溶液中のマルトース濃度が4.9%以上であるか;
(b)該第1の水溶液中のグルコース濃度が14.7%以上であり、かつ該第1の水溶液中のマルトース濃度が3.7%以上であるか;または
(c)該第1の水溶液中のグルコース濃度が15.8%以上であり、かつ該第1の水溶液中のマルトース濃度が2.6%以上である、
方法。 - 前記極性有機溶媒の量が、前記水溶液の容積の0.2倍〜2倍である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記配糖化反応溶液が、ハイドロキノンの配糖化反応溶液である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002270730A JP4023539B2 (ja) | 2001-09-20 | 2002-09-17 | 有効物質の抽出方法および精製方法 |
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001-287014 | 2001-09-20 | ||
JP2001287014 | 2001-09-20 | ||
JP2001287013 | 2001-09-20 | ||
JP2001-287013 | 2001-09-20 | ||
JP2002270730A JP4023539B2 (ja) | 2001-09-20 | 2002-09-17 | 有効物質の抽出方法および精製方法 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003171328A JP2003171328A (ja) | 2003-06-20 |
JP2003171328A5 JP2003171328A5 (ja) | 2007-07-12 |
JP4023539B2 true JP4023539B2 (ja) | 2007-12-19 |
Family
ID=27347540
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002270730A Expired - Lifetime JP4023539B2 (ja) | 2001-09-20 | 2002-09-17 | 有効物質の抽出方法および精製方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4023539B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4955928B2 (ja) * | 2005-03-01 | 2012-06-20 | 花王株式会社 | クロロゲン酸類組成物の製造方法 |
JP5184786B2 (ja) | 2007-01-19 | 2013-04-17 | サントリーホールディングス株式会社 | フラボノイド類の配糖化方法 |
EP2039676A1 (en) | 2007-09-19 | 2009-03-25 | Huntsman International Llc | Process for the production of di-and polyamines of the diphenylmethane series |
JP5806455B2 (ja) * | 2010-09-10 | 2015-11-10 | 花王株式会社 | 精製カテキン類含有茶抽出物の製造方法 |
JP6033080B2 (ja) * | 2012-12-28 | 2016-11-30 | 花王株式会社 | 茶抽出物の製造方法 |
WO2018008683A1 (ja) * | 2016-07-07 | 2018-01-11 | 日本曹達株式会社 | 1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン化合物の製造方法 |
CN115558003A (zh) * | 2022-09-30 | 2023-01-03 | 台州学院 | 柑橘皮中提取柑橘精油及橙皮苷的方法 |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002270730A patent/JP4023539B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003171328A (ja) | 2003-06-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7282150B2 (en) | Method of extracting and method of purifying an effective substance | |
EP3453766B1 (en) | Method for producing flavonoid inclusion compounds | |
Bertrand et al. | Leuconostoc mesenteroides glucansucrase synthesis of flavonoid glucosides by acceptor reactions in aqueous-organic solvents | |
Woo et al. | Synthesis and characterization of ampelopsin glucosides using dextransucrase from Leuconostoc mesenteroides B-1299CB4: glucosylation enhancing physicochemical properties | |
EP1832659A1 (en) | Quercetin glycoside composition and method of preparing the same | |
JP2006182777A (ja) | へスペレチン包接化合物およびナリンゲニン包接化合物の合成方法 | |
Aramsangtienchai et al. | Synthesis of epicatechin glucosides by a β-cyclodextrin glycosyltransferase | |
JP4023539B2 (ja) | 有効物質の抽出方法および精製方法 | |
JP6839494B2 (ja) | αモノグルコシルロイフォリン、αモノグルコシルロイフォリンの製造方法、αモノグルコシルロイフォリンを含むリパーゼ阻害剤、および抗糖化剤 | |
JP2003252895A (ja) | 味質改善された羅漢果配糖体およびその製造方法 | |
WO1998042859A1 (en) | PROCESS FOR PRODUCING α-MONOGLUCOSYLHESPERIDIN-RICH SUBSTANCE | |
JP5419366B2 (ja) | 生体吸収性に優れたヘスペレチン組成物 | |
US7713940B2 (en) | Water-soluble isoflavone composition, process for producing the same, and use thereof | |
Tian et al. | Glycosylation of flavonoids by sucrose-and starch-utilizing glycoside hydrolases: A practical approach to enhance glycodiversification | |
Nazir et al. | Enzymatic synthesis of polyphenol glycosides catalyzed by transglycosylation reaction of cyclodextrin glucanotransferase derived from Trichoderma viride | |
Liu et al. | Enzymatic glucosylation of citrus flavonoids to enhance their bioactivity and taste as new food additives | |
JP5858686B2 (ja) | 難水溶性ポリフェノール類の糖付加物の製造方法 | |
JP5985229B2 (ja) | 難水溶性ポリフェノール類の糖付加物の製造方法 | |
JPH10323196A (ja) | α−モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法 | |
Yasukawa et al. | Enzymatic synthesis of quercetin monoglucopyranoside and maltooligosaccharides | |
CHAISIN et al. | Synthesis of bioactive compounds using the transglycosylation reaction of cyclodextrin glycosyltransferase | |
KR19990076200A (ko) | 안정형 비타민씨 유도체를 함유하는 김치 제조용 첨가제 제조방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050620 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070529 |
|
A871 | Explanation of circumstances concerning accelerated examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871 Effective date: 20070529 |
|
A975 | Report on accelerated examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005 Effective date: 20070704 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070709 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070829 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070921 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20070829 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070925 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4023539 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101012 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101012 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111012 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121012 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131012 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141012 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D04 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |