JP4020528B2 - 非水系電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解液二次電池に係わり、特にサイクル特性の向上を目的とした非水系電解液の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水系電解液二次電池の電解液として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に、LiPF6やLiClO4などの電解質溶質を溶かした非水系電解液を使用した場合、溶質や溶媒の分解に起因して非水系電解液が劣化するため、電池の高温保存特性が著しく低下するという欠点があった。
【0003】
この点を改良するために、二環性三級アミンの添加(特公平6-87425号公報を参照)により、電解液の熱安定性の向上を図ることが提案されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、添加剤としての二環性三級アミンを含有した非水系電解液二次電池には、サイクル寿命が短いという課題があることが分かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来電池の課題を解決すべくなされたものであって、高温保存特性を向上させることを目的とする。また、サイクル特性に優れた非水系電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為の本発明に係わる非水系電解液二次電池は、正極と、リチウム金属又はリチウムを吸蔵放出可能な物質を主材とする負極と、これら両電極を隔離するセパレーターと、非水系電解液とを備えてなる非水系電解液二次電池(以下、「本発明電池」と称することがある。)であって、前記非水系電解液が、次の化2の一般式 (II) または (III)で示されるN−オキシル化合物
【0007】
【化2】
【0008】
[前記式 (II) 及び (III) において、R2、R3は、H、OH、NH2、CN、COOH及びNHCOCH2X(X=F、Cl、BrまたはI)からなる群の少なくとも一つの置換基]を含有していることを特徴とする。尚、前記NH2はアミノ基、前記NHCOCH2Xはアミド基から構成されている。
【0009】
このように、本発明電池においては、上記一般式 (II) または (III)で示されるN−オキシル化合物が添加された非水系電解液が使用されており、充放電サイクル時に起こる放電容量の低下及び保存後の放電容量の低下が抑制される。
【0010】
詳述すると、上記N−オキシル化合物に、溶媒分子から生成したラジカル種を捕捉させて不活性化することにより、溶媒の安定化、つまり非水系電解液の劣化防止を実現したものである。
【0011】
ここで、前記N−オキシル化合物において、置換基R1、R2、R3としては、H、OH、NH2、CN及びCOOHからなる群から選択された少なくとも一つの置換基であることが好ましい。
【0012】
本発明において使用される上式の一般式 (II) または (III) で表されるN−オキシル化合物の具体例としては、例えば、 3- ヒドロキシ -TEMPO 、3-アミノ-TEMPO、3-シアノ-TEMPO、3-(2-ブロモアセタミド)-TEMPO、3-(2-ヨードアセタミド)-TEMPO、プロキシル、β-ヒドロキシ-プロキシル、β-(2-ブロモアセタミド)-プロキシル、β-(2-ヨードアセタミド)-プロキシルなどが挙げられる。
【0013】
尚、後述の参考例として使用したTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ,フリーラジカル)は上述の化2の一般式 ( I )においてR1をHとしたもの、4-ヒドロキシ-TEMPOは前記R1をOHとしたもの、4-アミノ-TEMPOは前記R1をNH2としたもの、4-シアノ-TEMPOは前記R1をCNとしたもの、4-カルボキシ-TEMPOは前記R1をCOOHとしたもの、4-(2-ブロモアセタミド)-TEMPOは前記R1をNHCOCH2Brとしたもの、4-(2-ヨードアセタミド)-TEMPOは前記R1をNHCOCH2Iとしたものである。そして、TEMPO以外の、4位を置換したものを「4-置換TEMPO」と称することがある。これら化合物の構造式を、次の化3に示す。
【0014】
【化3】
【0015】
ここで本発明に使用する、3-ヒドロキシ-TEMPOは一般式(II)においてR2をOHとしたもの、3-アミノ-TEMPOは前記R2をNH2としたもの、3-シアノ-TEMPOは前記R2をCNとしたもの、3-(2-ブロモアセタミド)-TEMPOは前記R2をNHCOCH2Brとしたもの、3-(2-ヨードアセタミド)-TEMPOは前記R2をNHCOCH2Iとしたものである。そして、3位を置換したものを「3-置換TEMPO」と称することがある。これら化合物の構造式を、次の化4に示す。
【0016】
【化4】
【0017】
そして、プロキシルは一般式(III)においてR3をHとしたもの、β-ヒドロキシ-プロキシルは前記R3をOHとしたもの、β-(2-ブロモアセタミド)-プロキシルは前記R3をNHCOCH2Brとしたもの、β-(2-ヨードアセタミド)-プロキシルは前記R3をNHCOCH2Iとしたものである。これら化合物の構造式を、次の化5に示す。
【0018】
【化5】
【0019】
上記N−オキシル化合物の、非水系電解液への添加量は少量でもその効果を発揮するが、特に0.01〜3.0M(モル/リットル)の範囲が好ましい。
【0020】
ここで、前記非水系電解液には、LiPF6、LiBF4及びLiN(C2F5SO2)2からなる群から選ばれた少なくとも一種の電解質塩が添加、含有されているものが好ましい。
【0021】
本発明は、非水電解液に添加する添加剤の改良に関する。それゆえ、添加剤以外の他の電池材料については、非水系電解液二次電池用として従来公知の材料を特に制限なく使用することができる。
【0022】
非水系電解液の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート(BC)等の有機溶媒や、これらとジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、エトキシメトキシエタン(EME)などの低沸点溶媒との混合溶媒が例示される。
【0023】
この中でも、本発明で規定する添加剤との相性が良く、サイクル特性を向上させる上で特に好ましい溶媒は、一種又は二種以上の環状炭酸エステルと一種又は二種以上の鎖状炭酸エステルとの体積比1:4〜4:1の混合溶媒である。この環状炭酸エステルとしては、EC、PC、VC、BC、鎖状炭酸エステルとしてはDMC、DEC、EMCが列挙できる。
【0024】
正極材料としては、二酸化マンガン、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有バナジウム酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウム含有クロム酸化物、リチウム含有チタン酸化物が例示される。
【0025】
また、負極材料としては、金属リチウムや、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、リチウム−錫合金等のリチウム合金、黒鉛や、コークスや、有機物焼成体等の炭素材料、SnO2、SnO、TiO2、Nb2O3等の電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物が例示される。
【0026】
本発明電池はサイクル特性、保存特性に優れている。この理由は、次のとおりである。非水系電解液に添加したN−オキシル化合物が、溶媒分子の分解により生成したラジカル種を捕捉し、非水系電解液中の他の溶媒分子とラジカル種との接触を断ち、ラジカル種を他の溶媒分子に対して不活性化すると考えられる。これが充放電時に起こる電解液の分解反応を抑制し、充放電における可逆性が向上するためと推察される。
【0027】
また、室温下のみならず、高温下においても電解液が安定に存在しうるため、高温保存特性にも優れた非水系電解液二次電池を得ることができる。
【0028】
【実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
(実験1)
この実験1では、添加剤の種類(各種N−オキシル化合物を使用)と、電池の充放電サイクル特性の関係を調べた。そのために、添加剤の添加有無及び各種添加剤を用いて、二次電池を作製した。詳細は、以下のとおりである。
[正極の作製]
正極活物質としてのLiCoO2粉末90重量部と、人造黒鉛粉末5重量部と、ポリフッ化ビニリデン5重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混合してスラリーを調整した。このスラリーを、集電体としてのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法により塗布して、活物質層を形成した後、150℃で2時間真空乾燥して、正極を作製した。
[負極の作製]
天然黒鉛95重量部と、ポリフッ化ビニリデン5重量部のNMP溶液とを混合しスラリーを調整した。このスラリーを、銅箔の両面にドクターブレード法により塗布して炭素層を形成した後、150℃で2時間、真空乾燥して、負極を作製した。
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、電解質塩LiPF6を0.5M溶かし、更に、それぞれ参考例としてTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ,フリーラジカル)、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-シアノ-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-(2-ブロモアセタミド)-TEMPO、4-(2-ヨードアセタミド)-TEMPOを、また実施例として3-ヒドロキシ-TEMPO、3-アミノ-TEMPO、3-シアノ-TEMPO、3-(2-ブロモアセタミド)-TEMPO、3-(2-ヨードアセタミド)-TEMPO、プロキシル、β-ヒドロキシ-プロキシル、β-(2-ブロモアセタミド)-プロキシル、β-(2-ヨードアセタミド)-プロキシルを、非水電解液に対して1.0Mとなるように添加混合して、各種非水系電解液を調製した。
[電池の作製]
上記の正極、負極及び非水系電解液を用いて、AAサイズの非水系電解液二次電池(電池寸法:直径14 mm、高さ50 mm)の本発明電池 A8 〜 A16 及び参考電池 C1 〜 C7を作製した。尚、いずれの電池も、セパレータとしてポリプロピレン製の多孔膜を用いた。
【0029】
電解液に添加剤を添加しない電池を作製し、比較電池B1とした。
【0030】
また、電解液への添加剤として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを添加した比較電池B2を作製した。この比較電池B2は、特公平6-87425号公報に開示された技術思想に近い電池である。
<充放電サイクル試験>
各電池を、室温(25℃)にて、180mAで4.2Vまで定電流充電した後、180mAで3.0Vまで定電流放電する工程を1サイクルとする充放電サイクル試験を行った。この結果を、表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、本発明電池 A8 〜 A16 及び参考電池 C1 〜 C7は、添加剤を無添加の比較電池B1及び添加剤として1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンを添加した比較電池B2に比べて、サイクル後の放電容量残存率が高く、サイクル特性が良いことが分かる。
【0033】
また、4-置換TEMPO、嵩の低い置換基R2を有する3-置換TEMPOおよび嵩の低い置換基R3を有するプロキシルを電解液に添加した本発明電池 A8 〜 A10 、 A13 、 A14 及び参考電池 C1 〜 C7は、置換基NHCOCH2X(X=BrまたはI)に代表される嵩高い置換基R2、R3を有する3-置換TEMPOおよびプロキシルを添加した本発明電池A11、A12、A15およびA16に比べて、サイクル特性に優れる傾向が見られた。
【0034】
これは、嵩高い置換基R2、R3、即ち置換基NHCOCH2Iまたは置換基NHCOCH2Brを有することにより、分子内の立体障害が大きくなるためと推定される。このことから、3-置換TEMPOおよびプロキシルにおいて、置換基R2、R3は嵩の低いもの、即ちOH、NH2、CN及びCOOHから選択されたものが、好ましいと思われる。
(実験2)
この実験2では、添加剤の非水系電解液への好適な添加量を調べた。先ず、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、電解質塩LiPF6を0.5M溶かした溶液を準備する。ここに、更にTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ,フリーラジカル)を非水系電解液に対して、表2に示す濃度となるように添加混合して、非水系電解液を調製した。これらの非水電解液を使用したこと以外は、上記実験1と同じ条件のサイクル試験を行った。
【0035】
この結果を表2に示す。尚、表2には、参考電池 C 1及び比較電池B1の結果も表1より転記して示してある。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、参考電池 C1 及び C9 〜 C12のサイクル特性が特に良い。この事実から、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ,フリーラジカル)を非水系電解液に対して、0.01〜3.0Mとなるように添加混合して使用することが好ましいことが分かる。
【0038】
尚、TEMPO以外のN−オキシル類を使用する場合も、添加量が0.01〜3.0Mとなるように使用することが好ましいことを別途確認した。
(実験3)
この実験3では、電解質塩の種類とサイクル特性の関係を調べた。先ず、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、表3に示す種々の電解質塩を0.5M溶かした溶液を準備する。ここに、添加剤としてのTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニロキシ,フリーラジカル)を、非水系電解液に対して1.0Mとなるように添加混合して、非水系電解液を調製した。そして、これらの非水電解液を使用したこと以外は、上記実験1と同様にして参考電池 C14 〜 C20を作製し、次いで実験1と同じ条件のサイクル試験を行った。
【0039】
結果を表3及び図1に示す。図1は、本発明電池 A8 〜 A16 、比較電池 B1 、 B2 及び参考電池 C1 〜 C20についての、充放電サイクル特性図である。図1において、縦軸は放電容量(mAh)、横軸は充放電サイクル(回)を示してある。尚、表3には比較電池 B1 及び参考電池 C1の結果も表1より転記して示してある。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示すように、参考電池 C1 、 C14 及び C15のサイクル特性が特によい。この事実から、N - オキシル化合物と組み合わせる電解質塩としては、LiPF6、LiBF4及びLiN(C2F5SO2)2を使用することが好ましいことが分かる。
(実験4)
この実験4では、添加剤の種類と高温保存特性の関係を調べた。具体的には、本発明電池 A8 〜 A16 、比較電池 B1 、 B2 及び参考電池 C1 〜 C20を80℃で保存し、各電池の保存に伴う内部抵抗の変化を調べるというものである。
【0042】
この結果を、図2に示す。図2は、電池の保存期間(日数)と電池の内部抵抗の関係を示している。
【0043】
これより、本発明電池 A8 〜 A16 及び参考電池 C1 〜 C20は内部抵抗の上昇が、比較電池B1、B2に比べて小さく、保存特性に優れていることが分かる。
【0044】
また、更に、本発明電池 A8 〜 A16 、比較電池 B1 、 B2 及び参考電池 C1 〜 C20を80℃で保存し、各電池の保存に伴う開路電圧の変化を調べた。
【0045】
この結果を、図3に示す。図3は、電池の保存期間(日数)と電池の開路電圧の関係を示している。
【0046】
これより本発明電池 A8 〜 A16 及び参考電池 C1 〜 C20は開路電圧の降下が比較電池B1、B2に比べて小さく、N-オキシル化合物の添加が、保存時における開路電圧の降下抑制に対して効果的であることが分かる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明では特定の添加剤を含有する非水系電解液を使用することにより、非水系電解液中の溶媒の分解に起因して起こる非水系電解液の劣化が抑制され、サイクル特性に優れた非水電解液系二次電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明電池、参考電池及び比較電池の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【図2】 本発明電池、参考電池及び比較電池の高温保存に伴う内部抵抗変化を示すグラフである。
【図3】 本発明電池、参考電池及び比較電池の高温保存に伴う開路電圧変化を示すグラフである。
Claims (5)
- 正極と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な物質を主材とする負極と、これら両電極を隔離するセパレーターと、非水系電解液とを備えてなる非水系電解液二次電池において、前記非水系電解液が、次の化1における一般式 (II) または (III)で示されるN−オキシル化合物
- 前記一般式 (II) または (III)で示されるN−オキシル化合物において、
置換基R 2 、R 3 は、H、OH、NH2、CN及びCOOHからなる群から選択された少なくとも一つの置換基であることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液二次電池。 - 前記非水系電解液が、前記一般式 (II) または (III) で示されるN−オキシル化合物を、0.01〜3.0M含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非水系電解液二次電池。
- 前記非水系電解液には、LiPF6、LiBF4及びLiN(C2F5SO2)2からなる群から選ばれた少なくとも一種の電解質塩が添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の非水系電解液二次電池。
- 前記N−オキシル化合物が、 3- ヒドロキシ -TEMPO 、3-アミノ-TEMPO、3-シアノ-TEMPO、3-(2-ブロモアセタミド)-TEMPO、3-(2-ヨードアセタミド)-TEMPO、プロキシル、β-ヒドロキシ-プロキシル、β-(2-ブロモアセタミド)-プロキシル及びβ-(2-ヨードアセタミド)-プロキシルよりなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1又は請求項2又は請求項3記載の非水系電解液二次電池。
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