JP4009418B2 - 床構造と建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は床衝撃音を低減した床構造と、この床構造を備えた建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上階の床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落としたりすると、床が振動し、この振動によって発生する衝撃音が下階に響いて、下階に居る人の迷惑になる。
かかることを防ぐために従来種々な床構造が知られている。
例えば、特開昭62−59745号公報(従来例1と称する)には、相対する床梁に床小梁を差し渡した骨格を備えた床構造であって、防振パッドを介在させた板バネで、床梁に床小梁を連結した床構造が記載されている。
【0003】
又、特公平4−139号公報(従来例2と称する)には、ウエッブとフランジとからなる鋼製の相対する床梁と、この相対する床梁の間に差し渡された鋼製の床小梁と、床梁と床小梁の端部とを連結する連結片とからなる床構造であって、床梁のウエッブ面と連結片との間にゴム等の防振材を挟んで床梁と連結片を、又、床小梁と連結片との間にゴム等の防振材を挟んで床小梁と連結片とを連結した床構造が記載されている。
【0004】
又、特開昭63−304872号公報(従来例3と称する)には、相対する床梁に複数本の床小梁を略平行に差し渡し、この略平行な隣合う床小梁の間に制振材を差し渡し、この制振材の両端部を床小梁に取り付けた床構造が記載されている。
尚、この制振材としてはパーチクルボードや、パーチクルボードの中央部に錘を取り付けた例が記載されている。
【0005】
又、特開平6−306989号公報(従来例4と称する)には、略平行な複数本の床小梁の上に床材を設け、この隣合う床小梁にブロッキング材を差し渡して取り付け、この床小梁に下面に下階の天井材を取り付け、この天井材の下面に防振補強材を、ブロッキング材と補強材とで天井材を挟む状態に、取り付けた床構造が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来例1〜4記載の床構造は床の振動を制御し、衝撃音を小さくすることができるが、建物の部屋の中は静かであるほど好ましい。そして、JISで規定されている測定方法でL−55レベルまで低下させた床構造が良好な防音性のよい床の一応の目安とされている。
そして、上記従来例1〜4記載の床構造では、軽量床衝撃音(LL)をLL=55レベルまで低減させることは、比較的簡単に達成できるが、重量床衝撃音(LH)をLH−55レベルまで低減させることは困難である。
【0007】
更に詳細に説明すると、従来例1及び従来例2では、床梁と床小梁を、この間に防振パットを介在させた板バネや防振材を挟んで、連結している。
従って、床小梁の振動が、防振パットや板バネや防振材等により吸収されて床梁に伝播し難く、その結果、この床小梁の振動が床梁を伝って下階まで達する固体伝播は少なくなるが、床小梁を骨格にした床全体の振動は減少せず、子供が飛び跳ねたり、床の上に物を落下させる等で床小梁が振動したときに発生する重量衝撃音は余り低減されないまま下階に響く。
【0008】
又、従来例3記載の床構造では、床小梁に制振材を取り付けているので、床小梁が振動し難く、重量衝撃音の発生がある程度は改善されるが、パーチクルボードや、パーチクルボードに錘を取り付けた制振材では、LL=55まで低減させることは極めて困難である。
又、従来例4記載の床構造では、床小梁にブロッキング材を取り付け、更に、天井材を挟んで補強材を取り付けているので、床全体の剛性が増加していて床が細かく振動する軽量衝撃音を低減することはできるが、床全体が大きく振動する重量衝撃音の改善は少ないし、床小梁に直接下階の天井材が取り付けられているので、上階の床の振動が直接下階の天井に固体伝播で伝わり、下階での騒音がLL=55まで減少させることは極めて困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、重量衝撃音をLH−55レベルまで低減させることのできる床構造を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになしたものであって、請求項1記載の発明は、相対する床梁に複数本の床小梁が略平行に差し渡され、この略平行な複数本の中の3本以上の床小梁に横架材が架け渡されてそれぞれの床小梁に横架材が固定され、横架材が取り付けられた床小梁の中の隣合う2本の床小梁の間にダンパー機構と錘が配置され、このダンバー機構を介して錘が横架材に吊り下げられている床構造を特徴とするものである。
【0011】
この請求項1記載の発明に使用するダンパー機構とは、弾性体と粘性体とを組み合わせて、振動を急速に低減するようにしたものであり、通常、ダンパーが使用される。
このダンパーとしては種々あるが、ゴム製の上板と金属製の側壁と金属製の下板とからなる密封容器と、この密封容器のゴム製の上板を貫通した状態にして上板に取り付けた軸と、密封容器の中に充満した粘稠な液体と、密封容器の側壁との間に小さな隙間を設けた状態にして密封容器内の軸に取り付けたダンピングプレートとからなる液封ダンバーが背丈が低く、上階の床と下階の天井との間の隙間の小さい建物等にも取り付けることができ、好ましい。
尚、ダンピングプレートに小さな通孔を設けてもよい。
【0012】
この際の粘稠な液体とは粘度の高い液体のことであって、シリコーンオイル、潤滑油、植物油等が好適であり、特にシリコーンオイルが好適である。
本発明に使用されるダンパー機構を介して横架材に吊り下げられる錘は、上記液封ダンパーと一体になったものでもよいし、別のものでもよい。
即ち、ゴム製の上板に連結されている液封ダンパーの容器の一部(例えば、容器の下板または横壁)を重くして錘としてもよいし、ダンパーの容器の一部に錘を吊り下げたものでもよい。この際、使用する錘としては、重量で10kg〜30kgが好ましい。
【0013】
この液封ダンパーは、軸を横架材に取り付けて使用する。
すると、床小梁が振動したときには、ゴム製の上板を介して取り付けられている密封容器の側壁と底板は重く直ちに振動し難いので、先ず、横架材と軸を通ってダンピングプレートのみが振動し、この振動によってダンピングプレートは、密封容器内に充満されている粘稠な液体の中を上下運動しようとするが、この上下運動しようとする力によって、ダンピングプレートと密封容器の側壁との間の小さな隙間(又はこの隙間及びダンピングプレートに設けられた小さな通孔)を粘稠な液体が移動するだけしかダンピングプレートは移動しない。しかも、この粘稠な液体は、粘度の高い粘稠な液体が小さな隙間(又はこの隙間及びダンピングプレートに設けられた小さな通孔)を通るために抵抗が大きく、少しずつしか移動できない。
【0014】
又、軸に重い側壁と底板がゴム製の上板を介して取り付けられているので、軸が振動すると、この軸と側壁と底板の間の位置を一定に保とうとするゴム製の上板の弾性によって、側壁と底板とが軸より遅れて移動する。この位相の差によって、この軸の振動と異なる振動をする側壁と底板とが床振動に従って振動する軸の振動を阻止しようとする。
このようにして、床小梁の振動は、粘稠な液体による粘性とゴム製の上板の弾性によって大きく減衰される。
即ち、上記液封ダンパーは、ゴム製の上板の弾性と粘稠な液体の粘性とがダンパー機構を構成し、重い側壁と下板とが錘を構成し、このダンパー機構に錘が吊り下げられた構造になっている。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記横架材が床小梁より大きな剛性を有するものである。
この請求項2記載の発明に使用する横架材は床小梁より大きな剛性を有するが、この剛性としては、横架材の撓み強度が床小梁の5倍以上が好ましく、更に好ましくは10倍以上である。
【0016】
請求項3記載の発明は、上階と下階とからなる複数階建ての建物であって、上記上階の床が請求項1又は2記載の床構造であり、この上階の床と下階の天井との間に吸音材が設けられている建物を特徴とするものである。
【0017】
請求項4記載の発明は、下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとからなる複数階建ての建物であって、前記下階の建物ユニットと前記上階の建物ユニットは、矩形状の四隅に立設された柱と、この柱の下端部に設けられた床と、柱の上端部に設けられた天井とからなり、下階の建物ユニットの柱の上に上階の柱を載置した状態にして、下階の建物ユニットの上に上階の建物ユニットが据え付けられ、上階の建物ユニットの床が請求項1又は2記載の床構造であり、上階の建物ユニットの床と下階の建物ユニットの天井との間に吸音材が設けられている建物を特徴とするものである。
【0018】
この請求項3記載の発明や請求項4記載の発明に使用する吸音材とは、音を大きく吸収する性質を有する物質のことであり、ガラスウール、岩綿板、綿等の繊維を板状にしたものや、ポリスチレン発泡体やウレタン発泡体、天然ゴム発泡体等の発泡体が好適である。
【0019】
又、請求項4記載の発明では、上階の床が請求項1又は2記載の床構造となっている。即ち、建物ユニットの床小梁に横架材が架け渡され、この横架材にダンパー機構と錘が吊り下げられているが、このダンパー機構と、ダンパー機構を介して吊り下げられる錘とは、建物ユニットの床に略均等に取り付けることが好ましい。即ち、1個のダンパー機構を介して錘を吊り下げる場合には、床の振動をほぼ均等に低減するように、建物ユニットの床の略中央の床小梁が好ましく、2個以上の場合には、建物ユニットの床の中心点を中心にした対称の位置の床小梁に取り付けることが好ましい。尚、このダンパーと錘とからなる組の数は、建物ユニットの大きさによって異なるが2個以上が好ましい。
そして、このダンパー機構と錘とからなる組を取り付ける床小梁の位置は、床小梁が最も振動し易い略中央が好ましい。
【0020】
(作用)
請求項1記載の発明では、相対する床梁に床小梁が略平行に差し渡され、この床小梁に横架材が架け渡されて取り付けられ、この横架材が取り付けられた床小梁の中の隣合う2本の床小梁の間にダンパー機構と錘が配置され、このダンバー機構を介して錘が横架材に吊り下げられているので、床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落したりして床が振動して床小梁が振動すると、この床小梁に差し渡された横架材、ダンパー機構を経て錘が振動する。又、この錘の振動は、反射して、反対方向、即ち、ダンパー機構、横架材を経て床小梁を振動させる。この両方の振動はダンパー機構を通過する間に大きく減衰する。特に、このダンパー機構は、重量床衝撃を効果的に低減させることができる。
【0021】
又、床小梁は長く、しかも、両端は床梁に取り付けられているし、錘は重く、しかも、ダンパー機構を介して吊り下げられているので、両者の固有振動は大きく異なる。そして、床小梁の振動が、この異なる固有振動の両者を振動させるために大きなエネルギーを消耗し、床小梁が振動し難くなっている。
このように、床振動がダンパー機構による減衰と、床小梁とダンパー機構を介して吊り下げられている錘との異なる固有振動の2つの相乗効果で、床振動は急激に低減し、床衝撃音が小さくなる。
【0022】
又、相対する床梁に複数本の床小梁が略平行に差し渡され、この複数本の床小梁の中の3本以上の床小梁に横架材が架け渡されて取り付けられているので、この架け渡された3本以上という多くの床小梁の異なる振動を相殺させると共に、この横架材に吊り下げられている1組のダンパー機構と錘で3本以上の床小梁を振動し難くすることができる。
【0023】
このように、3本以上の床小梁に取り付けられた横架材とダンパー機構の作用によって広い範囲の床の振動が効率よく減衰され、LH−55を達成することができる。
又、横架材が取り付けられた床小梁の中の隣合う2本の床小梁の間にダンパー機構と錘が配置されているので、床と下階の天井との間の隙間の狭い建物にもダンパー機構と錘を取り付けることができる。
【0024】
請求項2記載の発明では、横架材が床小梁より大きな剛性を有するので、この剛性の大きな横架材が3本以上の床小梁を強固に連結して別々に振動できなくし、その結果、それぞれ異なった床小梁の振動を効率よく相殺すると同時に、この床小梁の振動をストレートにダンパー機構と錘に伝達し、このダンパー機構と錘の作用で床小梁を振動し難くする。
【0025】
請求項3記載の発明では、上階と下階とからなる複数階建ての建物であって、上記上階の床が請求項1又は2記載の床構造であり、この上階の床と下階の天井との間に吸音材が設けられているので、上階の床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落としたりして、床が振動しても、請求項1又は2記載の作用の項で説明したように、床構造が振動し難くなっている上に、床振動によって発生した衝撃音が床と天井との間に設けられている吸音材に吸収され、下階に届き難くなっている。
従って、請求項1又は2記載の床構造より下階に衝撃音が届き難く、下階の居住性が更によくなる。
【0026】
請求項4記載の発明では、下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとからなる複数階建ての建物であって、前記下階の建物ユニットと前記上階の建物ユニットは、矩形状の四隅に立設された柱と、この柱の下端部に設けられた床と、柱の上端部に設けられた天井とからなり、下階の建物ユニットの柱の上に上階の柱を載置した状態にして、下階の建物ユニットの上に上階の建物ユニットが据え付けられ、上階の建物ユニットの床が請求項1又は2記載の床構造であり、上階の建物ユニットの床と下階の建物ユニットの天井との間に吸音材が設けられているので、上階の床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落としたりして、床が振動しても、請求項1又は2記載の作用の項で説明したように、床構造が振動し難くなっている上に、上階の床が振動しても、この床の振動は、上階の柱から、この上階の柱が載っている下階の柱を伝って天井に到達するというように、上階の柱と下階の柱との間で一旦途切れるので、2階の柱から1階の柱に伝播される固体伝播による振動が小さくなるし、この床の振動によって発生する衝撃音は、床と天井との間に設けられている吸音材に吸収され、下階に届き難くなっている。
【0027】
このように、上階の床振動が下階の天井に到達し難くなる構造が幾重にも設けられているので、下階の重量衝撃音をLH−55レベル迄低減させることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例で説明する。
図1〜図8は本発明の他の実施例を示すもので、図1(イ)はユニット建物を示す斜視図、(ロ)は(イ)のA部分(1階の天井と2階の床部分)を各構成部材に分解して示す斜視図、図2は1階の建物ユニットを示す一部切欠斜視図、図3は2階の建物ユニットを示す一部切欠斜視図、図4は図3のB部分を拡大して示す斜視図、図5は液封ダンパーの位置を示す床の平面図、図6(イ)は液封ダンパーの取付状態を示す平面図、(ロ)は(イ)の正面図、図7(イ)は液封ダンパーの垂直断面図、(ロ)と(イ)のC−C線における断面図、図8は液封ダンパーを取り付けている状態を示す斜視図である。
【0029】
図1〜図8において、Uはユニット建物であり、このユニット建物Uは、図1に示すように、基礎9の上に9個の建物ユニット1が据え付けられて1階が形成され、この1階の建物ユニット1の上に9個の建物ユニット2が据え付けられて2階が形成され、この2階の建物ユニット2の上に屋根パネル3が取り付けられたものである。
【0030】
1階の建物ユニット1は、図2に示すように、矩形の四隅に立設した4本の鋼製の四角筒体の柱11と、この4本の柱11の下端部を矩形の辺に沿って連結した4本の鋼製の断面コ字形の長尺体の床梁12と、この4本の柱11の上端部を矩形の辺に沿って連結した4本の鋼製の断面コ字形の長尺体の天井梁13とからなる骨格を備えている。
【0031】
そして、この建物ユニット1は、この骨格の相対する長辺の床梁12、12に10本の鋼製の四角筒体の床小梁15が略平行に差し渡されて取り付けられ、この床小梁15の上に複数本の木製の床根太16が取り付けられ、この上にパーチクルボードの床材14が取り付けられて床が形成され、相対する長辺の天井梁13、13に複数本の木製の天井野縁17が略平行に差し渡されて取り付けられ、この天井野縁17の下面に石膏ボードの天井材18が取り付けられ、天井野縁17の上に合板の補強板75が載せられ、この補強板75の上に仕切り板76とロックウール板の吸音材7が取り付けられて天井が形成されたものである。
【0032】
尚、外壁を設ける場所には、床梁12と天井梁13との間に間柱19が取り付けられ、この間柱19の屋外側と屋内側にそれぞれ外壁材と内壁材とが取り付けられ、この外壁材と内壁材との間にガラスウールの断熱材が設けられて壁が形成されている。
【0033】
2階の建物ユニット2を建物ユニット1と比較すると、図3に示されているように、略平行に差し渡された4本の床小梁12に横架材4が架け渡され、この横架材4の略中央の床小梁12間に2組の液封ダンパー5と錘6が取り付けられていること、床根太26の上にパーチクルボードの床材24が取り付けられ、この床材24の上に炭酸カルシウム粉末を含有した合成ゴムの制振シート8が設けられていること、天井野縁17の上に補強板や吸音材がないことが異なる。
即ち、建物ユニット2は、建物ユニット1と同じように、矩形の四隅に立設した4本の鋼製の四角筒体の柱21と、この4本の柱21の下端部を矩形の辺に沿って連結した4本の鋼製の断面コ字形の長尺体の床梁22と、この4本の柱21の上端部を矩形の辺に沿って連結した4本の鋼製の断面コ字形の長尺体の天井梁23とからなる骨格を備えている。
【0034】
そして、この建物ユニット2は、この骨格の相対する長辺の床梁22、22に10本の鋼製の四角筒体の10本の床小梁25が略平行に差し渡されて取り付けられ、この床小梁25の上に複数本の木製の床根太26が取り付けられ、この上にパーチクルボードの床材14が取り付けられ、この略平行に差し渡された10本の中の4本からなる2組に床小梁12に横架材4が架け渡され、4本の組の略中央の隣合う2本の床小梁12の間に液封ダンパー5が配置され、この液封ダンパー5が横架材4に取り付けられ、床根太26の上に床材24が取り付けられ、この床材24の上に制振シート8が取り付けられて床が形成され、相対する長辺の天井梁23、23に複数本の木製の天井野縁27が略平行に差し渡されて取り付けられ、この天井野縁27の下面に石膏ボードの天井材28が取り付けられて天井が形成されたものである。
【0035】
尚、外壁を設ける場所には、床梁22と天井梁23との間に間柱29が取り付けられ、この間柱29の屋外側と屋内側にそれぞれ外壁材と内壁材とが取り付けられ、この外壁材と内壁材との間にガラスウールの断熱材が設けられて壁が形成されている。
この建物ユニット2に取り付けられる横架材4は、床小梁25の略10倍の撓み強度の有する板状体であり、図4及び図5に示すように、4本の床小梁25に架け渡され、この4本の床小梁25のそれぞれにビス45で固定されている。
【0036】
次に、この液封ダンパー5について説明する。
液封ダンパー5は、図7に示すように、ゴム製の上板511と金属製の円筒状の側壁512と金属製の下板513とからなる密封容器51と、この密封容器51の上板511を貫通した状態にして、上板511に取り付けられた軸52と、密封容器51の中に充填されたシリコーンオイルの粘稠な液体53と、密封容器51の軸52に取り付けられたダンピングプレート54とからなる。
このダンピングプレート54と密封容器51の側壁512との間には小さな隙間59が設けられているし、ダンピングプレート54にも小さな4個の通孔541が設けられている。又、軸52の上端部には雄ネジ521が形成されている。
【0037】
下板513と側壁512は重さが略25kgで錘6を兼用する。
そして、4本の床小梁25に架け渡された横架材4の略中央に設けられた通孔42に液封ダンパー5の軸52が挿入され、この軸52の先端に設けられた雄ネジ521に螺着されたナット55で液封ダンパー5が、床小梁25に吊りさげられた状態に、取り付けられている。
このようにして、図5に示す2箇所に液封ダンパー5が取り付けられている。
【0038】
このように液封ダンパー5が取り付けられていると、床小梁25が振動したときには、ゴム製の上板511を介して取り付けられている側壁512と下板513は重く振動し難いので、先ず、横架材4と軸52を通ってダンピングプレート54だけが振動し、この振動によってダンピングプレート54は、密封容器51内に充満されている粘稠な液体53の中を上下運動しようとするが、このダンピングプレート54の上下運動しようとする力によって、ダンピングプレート54と密封容器51の側壁512との間の小さな隙間58と、ダンピングプレート54に設けられた小さな通孔59を粘稠な液体53が移動するだけしか、ダンピングプレート54は移動しない。しかも、粘度の高い粘稠な液体53が小さな隙間58とダンピングプレート54に設けられた小さな通孔59を通るときの抵抗が大きく、この粘稠な液体53は少しずつしか移動できない。
【0039】
又、軸52と、密封容器51の側壁512及び底板513とは、ゴム製の上板511を介して取り付けられているので、軸52が振動すると、この軸52と側壁512と軸52との間の位置を絶えず一定に保とうとする弾性によって、側壁512と底板513が軸52より遅れて移動する。この位相の差によって、この軸52の振動と異なる振動する側壁512と底板513とが床振動25に従って振動する軸52の振動を阻止しようとする。
【0040】
このように、床小梁25の振動は、粘稠な液体53と上板511の弾性からなるダンパー機構と、密封容器51の側壁512および底板513からなる錘6とによって大きく減衰される。
即ち、異なる作用するゴム製の上板511の弾性と粘稠な液体53の粘性とがダンパー機構を構成し、重い密封容器51の側壁512及び底板513が錘6を構成し、このダンパー機構に錘6が吊り下げられた構造となっている。
【0041】
しかも、この液封ダンパー5は、高さが極めて小さくコンパクトな構造になっているので、建物ユニット2の床小梁25間に配置し、床小梁25に取り付けられている横架材4に取り付けることによって、建物ユニット2をフォークリフトが運搬させたり保管する際の邪魔になる程、床小梁25の下端から液封ダンパー5を下方に突出させることなく液封ダンパー5を取り付けることができる。具体的には、床梁22より下方に突出させることなく取り付けることができる。
【0042】
99はカーペットの床仕上げ材である。
この実施例では、床仕上げ材99にカーペットを使用しているが、この床仕上げ材99は、化粧合板であってもよいし畳であってもよいし、その他の床仕上げ材でもよい。
【0043】
次に、このユニット建物Uの施工方法および作用について説明する。
工場で、1階の建物ユニット1、2階の建物ユニット2、屋根パネル3を製造する。
この際、ユニット建物2では、床小梁25に液封ダンパー5(ダンパー機構と錘6)が取り付けられているから、液封ダンパー5を工場等の設備の整った場所で速く、しかも、寸法精度よく取り付けることができる。
【0044】
このようにして製造した1階の建物ユニット1、2階の建物ユニット2、屋根パネル3を施工現場に運搬する。
施工現場では、予め設けられている基礎9の上に、9個の建物ユニット1を据え付けて1階を形成し、この1階の建物ユニット1の上に9個の建物ユニット2を据え付けて2階を形成し、この2階の建物ユニット2の上に屋根パネル3を取り付けたり、床仕上げ材99を敷いたり、種々な仕上げを行うと、ユニット建物Uが完成する。
【0045】
このようにして完成されたユニット建物Uでは、2階の建物ユニット2には、平行な床小梁25の上に床根太26が差し渡されて取り付けられ、この床根太26の上に床材24が取り付けられ、この床材の上に制振シート8が取り付けられているので、この制振シート8の上に床仕上げ材99を取り付けて使用していると、子供等が床仕上げ材99の上で飛び跳ねたり、人が歩いたり、床仕上げ材99の上に物が落下したりしても、この衝撃は、床材24と床仕上げ材99との間に設けられている制振シート8によって緩和されて床材24や、その下の床根太26、床小梁25の振動が小さくなる。
【0046】
又、2階の建物ユニット2の略平行な4本の床小梁25に横架材4が差し渡され、この横架材4にダンパー機構と錘6とからなる液封ダンパー5が取り付けられている。
従って、この床で子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落下させたりして発生した床小梁25の振動は、この床小梁25に差し渡された横架材4、液封ダンパー5(ダンパー機構を介して吊り下げられている錘6)を振動させる。又、この錘6の振動は、反射して反対方向、即ち、液封ダンパー5、横架材4を経て床小梁25を振動させる。この両方の振動は液封ダンパー5を通過する間に大きく減衰する。
【0047】
即ち、液封ダンパー5の密封容器51の上板511の上に突出している軸52が横架材4に取り付けられ、この軸52にゴム製の上板511を介して密封容器51の側壁512と下板513とからなる錘6が取り付けられているから、床小梁25から横架材4を通って軸52に伝わった振動と反射した振動は、ダンピングプレート54と密封容器51の側壁512との間の小さな隙間59とダンピングプレート54に設けられた小さな通孔541を往復移動する粘稠な液体53の粘性と、軸52と、側壁512及び下板513とからなる錘6の位置を絶えず一定に保とうとするゴム製の上板511の弾性とからなるダンパー機構と、錘6で大きく減衰する。
【0048】
又、錘6は略25kgで重く、しかも、側壁512と下板513であるから、長く、しかも、両端が床梁に取り付けられている床小梁25とは、固有振動が大きく異なり、この固有振動の大きく異なる両者を振動させるために大きなエネルギーが消費される。
又、剛性の大きな横架材4が4本の床小梁25に架け渡されて連結されているので、この横架材4が4本の床小梁25を強固に連結して、別々に振動できなくし、その結果、それぞれ異なった床小梁の振動を相殺すると同時に、床振動をストレートに液封ダンパー5に伝達し、この液封ダンパー5の作用で床小梁を振動し難くすることで、広い面積の床を効率よく振動し難くする。
【0049】
更に、1階の天井と2階の床との間に吸音材7が設けられているので、2階の床振動によって発生する衝撃音が、この吸音材7によって吸収されて、下階に届き難くなっている。
又、1階の建物ユニット1と2階の建物ユニット2とは分離しているので、この間で固体伝播が途切れて、2階の建物ユニット2の振動が1階の建物ユニットに固体伝播によって伝わり難くなっている。
【0050】
このように2階の床に設けられた制振シート8、床小梁に取り付けられた横架材4、この横架材4に吊り下げられた液封ダンパー5、1階の床と2階の天井の間に設けられた吸音材7、1階の建物ユニット1と2階の建物ユニット2との分離というように幾重にも振動や衝撃音を低減させる構造が設けられているので、2階の床振動によって発生する衝撃音が1階まで伝わり難く、LH−55を達成することができる。
実際に、このユニット建物Uの2階の建物ユニット2の床の上に錘を落下させて重量衝撃音を発生させて、1階の建物ユニット1の部屋で衝撃音をJISに定めた測定方法で測定したところ、LH−53以下であった。
【0051】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、相対する床梁に複数本の床小梁が略平行に差し渡され、この略平行な複数本の中の3本以上の床小梁に横架材が架け渡されて取り付けられ、横架材が取り付けられた床小梁の中の隣合う2本の床小梁の間にダンパー機構と錘が配置され、このダンバー機構を介して錘が横架材に吊り下げられているから、床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落下させたりして床が振動して床小梁が振動しても、この床振動は、ダンパー機構と錘による減衰と、床小梁と錘の固有振動が異なり振動し難いこととの相乗効果で、床振動は急激に低減し、床衝撃音が小さくなるし、3本以上というように多くの床小梁の振動が1組のダンパーと錘で振動し難くなり、効率よく広い面積の床振動が低減され、LH−55を達成することができる。
又、このダンバー機構は2本の床小梁の間に配置されているので、床と下階の天井との間の隙間の小さい建物等にもダンパーを取り付けることができる。
【0052】
請求項2記載の発明は、横架材が床小梁より大きな剛性を有するから、この剛性の大きな横架材が3本以上の床小梁を強固に連結し別々に振動し難くして、3本以上の床小梁の異なった振動を効率よく相殺すると同時に、この床小梁の振動をストレートにダンパー機構と錘に伝達し、このダンパー機構と錘の作用で床小梁を振動し難くする。
【0053】
請求項3記載の発明は、上階と下階とからなる複数階建ての建物であって、上記上階の床が請求項1または2記載の床構造であり、この上階の床と下階の天井との間に吸音材が設けられているから、上階の床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落としたりして、床が振動しても、請求項1又は2記載の効果と同様に、床が振動し難くなっている上に、床振動によって発生した衝撃音が床と天井との間に設けられている吸音材に吸収され、下階に届き難くなっている。
従って、請求項1又は2記載の床構造より下階に衝撃音が届き難く、下階の居住性が更によくなる。
【0054】
請求項4記載の発明は、下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとからなる複数階建ての建物であって、前記下階の建物ユニットと前記上階の建物ユニットは、矩形状の四隅に立設された柱と、この柱の下端部に設けられた床と、柱の上端部に設けられた天井とからなり、下階の建物ユニットの柱の上に上階の柱を載置した状態にして、下階の建物ユニットの上に上階の建物ユニットが据え付けられ、上階の建物ユニットの床が請求項1又は2記載の床構造であり、上階の建物ユニットの床と下階の建物ユニットの天井との間に吸音材が設けられているから、上階の床の上を子供が飛び跳ねたり、人が歩いたり、床の上に物を落としたりして、床が振動しても、請求項1又は2記載の効果と同様に、床構造が振動し難くなっている上に、2階の床構造が振動しても、この床構造の振動は直接下階の天井に伝播せず、固体伝播も1階の柱と2階の柱と1階の柱との間で一旦途切れるし、この床の振動によって発生する衝撃音は、床と天井との間に設けられている吸音材に吸収され、下階に届き難くなっている。
このように、上階の床振動が下階の天井に到達し難くなる構造が幾重にも設けられているので、下階の重量衝撃音をLH−55レベル迄低減させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の他の実施例を示すもので、(イ)はユニット建物を示す斜視図、(ロ)は(イ)のA部分(1階の天井と2階の床部分)を各構成部材に分解して示す斜視図である。
【図2】1階の建物ユニットを示す一部切欠斜視図である。
【図3】2階の建物ユニットを示す一部切欠斜視図である。
【図4】図3のB部分を拡大して示す斜視図である。
【図5】液封ダンパーの位置を示す床の平面図である。
【図6】(イ)は液封ダンパーの取付状態を示す平面図、(ロ)は(イ)の正面図である。
【図7】(イ)は液封ダンパーの垂直断面図、(ロ)と(イ)のC−C線における断面図である。
【図8】液封ダンパーを取り付けている状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
U ユニット建物
1 1階の建物ユニット
2 2階の建物ユニット
22 床梁
24 床材
25 床小梁
3 屋根パネル
4 横架材
5 ダンパー(液封ダンパー)
51 密封容器
511 上板
512 側壁
513 下板
52 軸
53 粘稠な液体(シリコーンオイル)
54 ダンピングプレート
6 錘
7 吸音材
8 制振シート
99 床仕上げ材
Claims (4)
- 相対する床梁に複数本の床小梁が略平行に差し渡され、この略平行な複数本の中の3本以上の床小梁に横架材が架け渡されてそれぞれの床小梁に横架材が固定され、横架材が取り付けられた床小梁の中の隣合う2本の床小梁の間にダンパー機構と錘が配置され、このダンバー機構を介して錘が横架材に吊り下げられていることを特徴とする床構造。
- 前記横架材が床小梁より大きな剛性を有することを特徴する請求項1記載の床構造。
- 上階と下階とからなる複数階建ての建物であって、上記上階の床が請求項1又は2記載の床構造であり、この上階の床と下階の天井との間に吸音材が設けられていることを特徴とする建物。
- 下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとからなる複数階建ての建物であって、前記下階の建物ユニットと前記上階の建物ユニットは、矩形状の四隅に立設された柱と、この柱の下端部に設けられた床と、柱の上端部に設けられた天井とからなり、下階の建物ユニットの柱の上に上階の柱を載置した状態にして、下階の建物ユニットの上に上階の建物ユニットが据え付けられ、上階の建物ユニットの床が請求項1又は2記載の床構造であり、上階の建物ユニットの床と下階の建物ユニットの天井との間に吸音材が設けられていることを特徴とする建物。
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