JP4008192B2 - ジンセノサイドRb1からなる皮膚組織再生促進剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を含有してなる生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患、より詳細には皮膚組織又は粘膜組織の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患、さらに詳細には皮膚組織又は粘膜組織の再生又は再構築の促進、又は創傷治癒の促進のための医薬組成物又は獣医薬組成物に関する。本発明は、皮膚組織再生・再構築促進剤、創傷治癒促進剤として有用なジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩にも関する。
また、本発明は、前記疾患の予防・処置又は治療用組成物の静脈内投与用製剤もしくは皮膚外用製剤に関する。さらに本発明は皮膚組織の疾患に対する予防・処置もしくは治療のための有効成分、又は皮膚組織の再生促進剤もしくは創傷治癒促進剤を探索するためのリード化合物としてのジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類又はその代謝産物の使用に関する。
また、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を含有してなる、皮膚の老化症状の予防、処置、改善に有用な化粧品組成物、発毛育毛組成物などの皮膚外用組成物に関する。
さらに、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩を含有してなる植物又は動物組織の再生・新生又は再構築の促進のための組成物、より詳細には成長調整組成物に関する。本発明の成長調整組成物は、肥料組成物や飼料組成物などとして有用である。
また、本発明は、被検物質を動物の脳室内に投与して、脳細胞又は神経細胞の保護作用を測定することからなる、生体組織の再生、新生、発根、発芽、成長、分化又は再構築を促進するための物質を探索する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚や粘膜の損傷や欠損、すなわち創傷、咬傷、熱傷、凍傷、放射線障害、紫外線照射、電撃傷、外傷、皮膚潰瘍、褥創、ならびに水疱性皮膚疾患等は、すべて皮膚組織構成細胞や粘膜組織構成細胞の変性脱落、壊死、アポトーシスもしくはアポトーシス様細胞死をもたらすことが知られているが、これら皮膚組織や粘膜組織の機械的・物理的損傷や欠損による疾患を予防もしくは治療するための有効な方法として、変性脱落した皮膚組織ならびに粘膜組織及びそれらの構成細胞を速やかに再生・再構築せしめ、創傷治癒を促進する薬剤の投与が考えられる。皮膚組織を例にとって組織の再生・再構築について以下に略記する。一般に疾病や外傷などによって皮膚組織の一部が脱落もしくは欠損すると、脱落組織周辺に生存している表皮細胞が分裂・増殖して欠損部に移動してくるが、本明細書ではこの現象を狭義に表皮細胞もしくは表皮組織の再生と定義する。その後、欠損部に移動するか移動中の再生表皮細胞は互いに接着し始めて分裂・増殖を中止し、表皮組織を再び形成するようにる。この現象を本明細書では表皮細胞もしくは表皮組織(表皮)の再構築と定義することとする。このようにして表皮細胞もしくは表皮組織の再生・再構築が起きる生命現象を一般に上皮化という。ちなみに、表皮組織に含まれる表皮細胞の多くは表皮角化細胞(表皮ケラチノサイト)もしくは角質細胞であるが、その他数は少ないものの表皮角化細胞もしくは角質細胞にまじって、メラノサイト(メラニン色素を産生する細胞)、メルケル細胞(皮膚感覚に関わる細胞)、ランゲルハンス細胞(皮膚免疫とくにリンパ球への抗原提示に関わる細胞)、幹細胞(すべての細胞種に分化できる細胞)、表皮細胞から分化する汗腺の細胞、表皮細胞から分化する皮脂腺の細胞、表皮細胞から分化する毛包の細胞、等がありこれらの細胞種もやはり皮膚組織が損傷を受けたときや皮膚疾患の際に、上皮化と相呼応して分裂・増殖・接着・分化という複雑な過程を経て、表皮組織(もしくは表皮ともいう)の中に組みこまれるか、表皮組織と連絡を保ちながら皮膚の深部(真皮や皮下組織)へ移動したのちに皮膚附属器(汗腺、皮脂腺、毛包等)を形成するのである。すなわち、皮膚組織が再生・再構築するためには、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、幹細胞、汗腺もしくは汗腺の細胞、皮脂腺もしくは皮脂腺の細胞、毛包もしくは毛包の細胞等すべての表皮由来の細胞や皮膚付属器が再生・再構築しなければならないのである。一方、真皮や皮下組織の再生・再構築現象においてもっとも中心的な役割を果たすのが、線維芽細胞と血管である。線維芽細胞も表皮細胞と同様に分裂・増殖・移動・分化という過程を経て、膠原線維(コラーゲン線維)、弾性線維、細網線維、各種細胞外基質成分を産生分泌(再生)せしめ、しかもこれらの分泌成分が真皮や皮下組織において健常組織に近い状態にまで規則正しく整然と再構築されなければ、すなわち線維芽細胞、膠原線維(コラーゲン線維)、弾性線維、細網線維、各種細胞外基質成分のすべてが確実に速やかに再生・再構築しなければ皮膚組織の再生・再構築はうまくゆかないのである。言い換えれば皮膚の真皮や皮下組織の再生・再構築現象において、線維芽細胞が果たす役割は極めて重要であり、線維芽細胞の分裂・増殖・移動・分化を抑制するかもしくは線維芽細胞におけるコラーゲン線維・弾性線維・細網線維・各種細胞外基質の産生を抑制することは、皮膚組織の再生・再構築を円滑に進めるために避けなければならない。さて、血管の重要性については言うまでもなく、皮膚組織の再生・再構築が活発に行われているときには、皮膚損傷によって断裂・破綻した血管(血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血管の中膜や外膜の線維芽細胞を含む)の再生・新生が活発に起きなければならないが、皮膚組織の再生・再構築が完了すると、余分な血管は退縮して、必要な血管だけが残るという調節機構が働き、血管の再構築がなされなければならない。その他、皮膚の損傷や疾病の際には、損傷や病変を有する皮膚に分布していた末梢神経や神経受容器(メルケル小体、パチニー小体等)なども切断もしくは破壊されるが、これらの神経組織も同時に再生・再構築することが再生皮膚組織の機能維持という観点から重要である。
【0003】
このように皮膚組織の再生・再構築という生命現象は、前述のごとく極めて複雑な生命現象が順を追って規律正しく進行しなければうまく行かないのであるが、この生命現象に関わる分子群として、EGF、TGF−β、TGF−α、FGF、VEGF、PDGF−BB、TGF−β、PDGF−AB、IGF、KGF、PDGF、TGF−β、TGF−β、FGF−2、U−PA、t−PA、インテグリン、接着因子等があげられる(Singer, A.J. and Clark, R.A.F. New Engl. J. Med., 341, 738-746, 1999)。その他、皮膚組織損傷時に血管外へ漏れた、血球成分や血漿成分なども重要なはたらきをすると言われている。
従って、前述したごとく皮膚組織の再生・再構築という生命現象は、極めて複雑なものでありそれに関わる細胞種、血管、神経、分子群は計り知れない。このように複雑な生命現象を1つの化合物がすべて制御・調節し、組織の再生・再構築を速やかにかつ確実に促進せしめるなどということは、これまでほぼ不可能と考えられてきた。これまで塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor,bFGF)や血小板由来増殖因子(platelet derived growth factor,PDGF)などの局所塗布や局所噴霧が部分的に皮膚組織の再生・再構築を促進し、皮膚潰瘍や褥創に効果・効能を示すことが知られているが、必ずしもその効果は臨床的見地からも満足すべきものであるとは言えない(Singer, A. J. and Clark, R. A. F. New Eng. J. Med., 341, 738-746, 1999)。また前述のペプチド性因子(bFGF,PDGF)は局所塗布や局所噴霧のみ可能な医薬組成物であり、静脈内投与等の全身投与ではほとんど効果・効能を期待できない。従って、今後皮膚組織のみならず、損傷や欠損を受けた粘膜組織、四肢、頭頸部、腹部、胸部の内臓器官や皮膚以外の組織の再生・再構築を促進するためにも、静脈内投与可能な皮膚組織再生促進剤ならびに内臓器官や組織の再生を促進するための医薬組成物もしくは獣医薬組成物の発明が望まれる。また、前記疾患の予防、処置もしくは治療のための優れた皮膚外用剤・粘膜外用剤又は皮膚や粘膜の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、色素沈着、乾燥等もしくは粘膜の萎縮、ひびわれ、再生不良、乾燥等)を予防、改善、処置するための優れた化粧品組成物又は健康薬組成物も必要である。さらに、前述の動物組織の再生・再構築を促進するための医薬組成物に加えて、植物組織の発根・発芽・成長・分化・再生・新生又は再構築を促進するための成長調整用組成物又は肥料添加物も、農作物栽培、水栽培、野菜栽培、フルーツ栽培、きのこ栽培、天然植物栽培、生花の保存、たばこ栽培、薬用植物栽培、植物改良、茶葉栽培のために必要不可欠である。
【0004】
一方、ジンセノサイドRbは、下記構造式
【0005】
【化1】
Figure 0004008192
【0006】
で示される化合物であり、ジンセノサイドRbは柴田ら(Shibata S. et al., Economic and medicinal plant research, World Scientific, Philadelphia, pp 217-284, 1985)などにより公知の物質である。
特願平10−365560号(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)において、本発明者の一人(阪中)は、低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与がアポトーシス様神経細胞死を抑止することにより脳梗塞病巣体積を非投与群の4分の1程度に縮小せしめることを発明した。すなわち、ジンセノサイドRbは患部組織における細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下より好ましくは100fg/ml以下のときに、細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現を促進し、あらゆる細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様細胞死を抑止することにより、細胞保護作用を示すことが阪中らによって発明された。しかし、前述の発明においては、ひとたび死滅した細胞や変性脱落した組織の再生を低濃度のジンセノサイドRbが促進せしめるか否かについては明らかにされていない。また、外傷もしくは損傷を受けて変性脱落した組織が、脱落組織近傍に存在する生存細胞の分裂・増殖・移動・分化等により正常に近い状態にまで回復する現象は一般に組織再生・再構築と呼ばれているが、この組織再生・再構築を低濃度・低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与もしくは病変部局所投与が促進するかどうかについては、これまでまったく注目されていなかった。
【0007】
米国特許5,663,160において、高い細胞外液濃度のジンセノサイドRb(100μg/ml)が皮膚の表皮角化細胞もしくは角質細胞の分裂増殖を促進し、発毛・育毛作用、皮膚の保護作用、皮膚の保湿作用、表皮の再生、しわの抑止に有効であることが記述されている。また、WO99/07338において10μg/mlの細胞外液濃度のジンセノサイドRbが皮膚の線維芽細胞のエラスチン産生を促進し、皮膚のしわの抑止に有効であることが記述されている。前述の米国特許5,663,160ならびにWO99/07338においては、ジンセノサイドRbを0.001重量%以上の濃度(すなわち10μg/mlもしくは10μg/g以上の濃度)で化粧品もしくは皮膚外用剤に混入して、皮膚に外用投与すると発毛・育毛作用、皮膚の保護作用、皮膚の保湿作用、表皮の再生、しわの抑止に有効であると記述されている。しかし、本発明者(阪中)の実験結果では、特願平10−365560号、PCT/JP99/02550に記載されたごとく、高濃度のジンセノサイドRbは必ずしも細胞に好ましい効果を与えずむしろ細胞に障害を与えることもあり得る。特に、化粧品に前述のごとく高濃度のジンセノサイドRbを混入して、長期にわたり皮膚に外用投与することは副作用出現の可能性もあり好ましいとは言えない。
【0008】
本発明者らは、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの皮膚組織における細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下になるように調整した上で、低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内へ持続投与もしくは皮膚へ外用投与することにより、これまでまったく予想すらされなかった優れた皮膚組織再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用が出現することを見出し、本発明を完成した。より詳細には、低用量・低濃度のジンセノサイドRb投与により、皮膚の表皮、真皮、真皮の乳頭、皮下組織、結合組織、汗腺、脂腺、毛包、毛乳頭、血管、末梢神経、表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、メルケル細胞、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、幹細胞、間葉系細胞、線維芽細胞、汗腺の細胞、毛包の細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞等がすべて再生・再構築し、細胞外基質、コラーゲン線維、弾性線維、細網線維なども健常組織に近い状態まで再生・再構築することが発明された。すなわち皮膚組織の損傷や欠損による疾患もしくは皮膚の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患(創傷、熱傷、放射線障害、凍傷、紫外線障害、電撃症、外傷、皮膚潰瘍、褥創、接触性皮膚炎、水疱性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾皮症、糖尿病性皮膚潰瘍、自家感作性皮膚炎、紅皮症、剥脱性皮膚炎、表皮水疱症、光線過敏症、慢性色素性紫斑(シャンバーグ病)、ストロフルス、虫刺され、痒疹、多形滲出性紅斑、環状紅斑、結節性紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、乾癬、扁平苔癬、魚鱗癬、毛孔性苔癬、黄色腫症、皮膚アミロイドーシス、単純疱疹、ウイルス性いぼ、伝染性軟属腫、膿皮症、皮膚結核、皮膚非定型抗酸菌症、白癬、皮膚・口腔カンジダ症、疥癬、毛虱症、梅毒、ケロイド、肥厚性瘢痕、血管腫、リンパ腫、母斑、尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、黒皮症、汗疱、あせも、にきび、酒査皮(しゅさ)、酒査皮(しゅさ)様皮膚炎、口腔粘膜損傷、口内炎、口囲皮膚炎、皮膚の老化症状、脱毛症、爪囲炎、嵌入爪等)に対して、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは皮膚組織の再生・再構築促進作用を介して効果・効能を発揮することが見出された。
さらに本発明者らは、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩の患部組織における細胞外液濃度が前述のごとく低濃度に維持されるように調整した上で、口腔粘膜に外用することにより、これまでまったく予想すらされなかった優れた口腔粘膜組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用、もしくは咬傷治癒促進作用が出現することを見出し、本発明を完成した。より詳細には、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの粘膜外用投与により、口腔粘膜の上皮、粘膜固有層、唾液腺、粘液腺、混合腺、結合組織、筋組織、血管、末梢神経、上皮細胞、腺細胞、筋上皮細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、筋細胞等がすべて再生・再構築し、細胞外基質、コラーゲン線維、弾性線維、細網線維なども健常組織に近い状態まで再生・再構築することが発明された。すなわち、粘膜特には口腔粘膜の創傷や欠損による疾患もしくは粘膜特には口腔粘膜の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患(う蝕、歯髄炎、辺縁性歯周組織炎、口内炎、舌炎、再発性アフタ、口腔内アフタ、口臭、口腔異常感症、歯性感染症、口腔粘膜咬傷、舌の咬傷、口腔粘膜熱傷、口腔粘膜損傷、口腔粘膜潰瘍等)に対して、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが粘膜組織の再生・再構築促進作用を介して効果・効能を発揮することが見出された。
また、本発明者らは、薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物が、思いもかけず動物組織のみならず植物組織もしくはあらゆる植物細胞の新生・再生・発根・発芽・成長・分化もしくは再構築をも促進することを見出し本発明を完成した。より詳細には、本発明は薬用人蔘の粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが、植物組織たとえばポトスの茎・枝などの挿し木もしくは水栽培の際に発根・発芽・成長・分化・再生・新生促進剤又は肥料添加物として有用であることを見出した。すなわち、薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物が、植物の栽培・育成・保存、生花の保存、水栽培、農作物栽培、農作物育成、野菜の栽培、果実の栽培・育成、植物の改良、たばこの栽培・育成、茶葉の栽培・育成等に使用できることが発明された。
さらに本発明者らは、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において記載したジンセノサイド類誘導体の1つであるジヒドロジンセノサイドRbが、ジンセノサイドRbと同様に神経細胞保護作用のみならず優れた皮膚組織再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用を示すことを見出した。すなわち前述したジンセノサイドRbの効果・効能・用途はすべてジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbにもあてはまることが発明された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、皮膚の損傷や欠損すなわち創傷、熱傷、凍傷、放射線障害、紫外線照射、電撃傷、外傷、潰瘍、褥創、ならびに皮膚もしくはその他の臓器の病理組織学的変化をきたす疾患等により皮膚組織もしくはその他の臓器・組織が変性脱落もしくは形態学的に変化した後に静脈内持続投与もしくは皮膚局所外用塗布でき、かつ優れた組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用を示す薬物を提供することである。より詳細には、本発明は、低用量・低濃度のジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を含有してなる、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療用の医薬組成物若しくは獣医薬組成物、化粧品組成物もしくは健康薬組成物などの皮膚外用組成物、粘膜外用組成物、又は、動物若しくは植物の成長調整用組成物を提供するものである。なお、本発明においては、健康薬とは狭義の健康薬のみならず健康食品、健康飲料水、健康飲料食品等を包含する。
また、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物をリード化合物として、皮膚組織又は粘膜組織の疾患に対する予防・処置又は治療のための有効成分を探索する方法、及びそのためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物の使用を提供する。さらに、本発明は、被検物質を動物の脳室内に投与して、脳細胞又は神経細胞の保護作用を測定することからなる、生体組織の再生、新生、発根、発芽、成長、分化又は再構築を促進するための物質を探索する方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を含有してなる生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療用の医薬組成物又は獣医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の含有量が0.001重量%未満である低用量・低濃度での前記の医薬組成物又は獣医薬組成物に関する。即ち、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の含有量が、組成物全体の0.001重量%未満である生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療用の医薬組成物又は獣医薬組成物に関し、好ましくはジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の患部組織における細胞外液濃度が、1ng/ml以下となるように、より好ましくは患部組織における細胞外液濃度が、0.01〜100fg/mlもしくは1〜10000fg/mlである前記医薬組成物又は獣医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の好ましい投与製剤としては、単回静脈内注入製剤又は静脈内持続投与用製剤などの静脈内投与用製剤、粘膜外用製剤、又は皮膚外用製剤が挙げられる。
【0011】
また、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、組成物中の0.001重量%未満含有してなる皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物に関し、本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、化粧品組成物、ケミカルピーリングのための皮膚外用組成物、健康薬組成物、又は発毛・育毛用組成物として皮膚組織又は粘膜組織に直接的又は間接的に適用される。より詳細には、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の含有量が0.001重量%未満である低用量・低濃度での前記の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物に関し、好ましくはジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の皮膚組織又は粘膜組織における細胞外液濃度が、1ng/ml以下となる、より好ましくは当該濃度が、0.01〜100fg/mlもしくは1〜10000fg/mlである皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を含有してなる、植物又は動物の組織又は細胞の新生、再生、成長、再構築、分化、保存、育成又は栽培を促進するための成長調整用組成物に関し、本発明の成長調整用組成物は、植物に対する発根・発芽促進剤などの成長促進用組成物、肥料組成物として使用され、また動物に対する発根促進剤、成長促進剤などの成長促進用組成物、飼料組成物として使用される。より詳細には、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の含有量が0.001重量%未満である低用量・低濃度での前記の成長調整用組成物に関する。
【0013】
さらに、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物をリード化合物として、皮膚組織又は粘膜組織の疾患に対する予防・処置又は治療のための有効成分を探索する方法、及び皮膚又は粘膜の疾患に対する予防・処置又は治療のための有効成分を探索するためのリード化合物としてのジンセノサイド類又はその代謝産物の使用に関する。また、本発明は、これらの方法により探索された物質を含有してなる皮膚組織又は粘膜組織の疾患に対する予防・処置又は治療のための医薬組成物又は獣医薬組成物にも関する。
また、本発明は、被検物質を動物の脳室内に投与して、脳細胞又は神経細胞の保護作用を測定することからなる、生体組織の再生、新生、発根、発芽、成長、分化又は再構築を促進するための物質を探索する方法にも関する。本発明は、当該方法により、脳室内投与により脳細胞又は神経細胞保護作用を示た化合物又はそれらの塩を含有してなる、生体組織の再生、新生、成長、分化又は再構築を促進するための医薬組成物又は獣医薬組成物にも関する。
【0014】
そして、本発明は、ジンセノサイド類を産生する培養細胞もしくは植物株を用いて、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物を大量生産する方法にも関する。
【0015】
本発明の生体組織としては、ヒト、動物、植物、微生物などの生物の生体組織であり、例えば、皮膚組織、粘膜組織などの生体の外部の組織、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、肺、腸管や胃などの消化器官、膀胱などの泌尿器、子宮や精巣などの生殖器官などの腹部や胸部の内臓組織、頭頸部の組織、骨、関節、靱帯、筋、血管、神経などの組織が挙げられ、これらの生体組織は生体内に有る状態が好ましいが、臓器移植用などのように生体外にある状態であってもよい。
また、本発明の生体組織の病理組織学的変化としては、前記した生体組織における正常な組織が病理組織学的に変化した状態であり、例えば、損傷、創傷、外傷、創傷もしくは欠損などが挙げられ、これらの病理組織学的変化をきたす原因は特に制限さるものではなく、例えば、外部からの物理的な力によるもの、外科的処置及び手術における切断又は縫合、消化性潰瘍病変などの病的なものなどのいずれの原因による変化であってもよい。
【0016】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療に使用され、病理組織学的変化をきたした生体組織の細胞又は組織の再生及び/又は再構築を促進させることを特徴とするものである。したがって、本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の特徴は、病理組織学的変化をきたした生体組織又はその細胞の再生及び/又は再構築により、器質的疾患の治癒を促進するものである。
また、本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の含有量が、組成物全体の0.001重量%未満、より詳細には0.0001重量%以下、0.00001重量%以下、0.000001重量%以下、0.0000001重量%以下、又は0.00000001重量%以下という極めて低用量・低濃度での使用が好ましいことを特徴とするものである。このような低用量・低濃度での使用により、有効成分のジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の患部組織における細胞外液濃度が、1ng/ml以下、好ましくは0.01〜100fg/ml又は1〜10000fg/mlとなり、このような低濃度における有効成分の新たな作用を見出したことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の「ジンセノサイド類」としては、薬用人蔘の成分であるジンセノサイドRbなどのジンセノサイドとよばれている化合物、これを含有している薬用人蔘などの天然物又はその抽出物、エキス、分画成分、若しくは精製分画などであってもよく、さらに天然に存在するジンセノサイドRbなどのジンセノサイド化合物を化学的な手段で化学修飾して誘導された化合物であってもよい。
【0018】
本発明における「ジンセノサイド類」又は天然に存在しているジンセノサイド化合物としては、例えば次のものが挙げられる。
すなわち、ジンセノサイドRo(ginsenoside Ro;チクセツサポニンV;chikusetsusaponin V;サポニンA;saponin A)、ジンセノサイドRa(ginsenoside Ra)、ジンセノサイドRa(ginsenoside Ra)、ジンセノサイドRb(ginsenoside Rb;サポニンD(saponin D)、ジンセノサイドRb(ginsenoside Rb)、ジンセノサイドRb(ginsenoside Rb)、ジンセノサイドRc(ginsenoside Rc)、ジンセノサイドRd(ginsenoside Rd)、ジンセノサイドRe(ginsenoside Re);ジンセノサイドRa(ginsenoside Ra);ノトジンセノサイドR(notoginsenoside R);キンケノサイドR(kinkenoside R);ジンセノサイドRs(ginsenoside Rs);ジンセノサイドRs(ginsenoside Rs);(20s)−ジンセノサイドRg(20s-ginsenoside Rg);20−グルコジンセノサイドRf(20-glucoginsenoside Rf);ノトジンセノサイドR(notoginsenoside R);ジンセノサイドRf(ginsenoside Rf);(20R)−ジンセノサイドRg(20R-ginsenoside Rg);(20R)−ジンセノサイドRh(20R-ginsenoside Rh);ジンセノサイドRf(ginsenoside Rf);ジンセノサイドRg(ginsenoside Rg);ジンセノサイドRg(ginsenoside Rg);チクセツサポニンI(chikusetsusaponin I);ジンセノサイドRg(ginsenoside Rg);ジンセノサイドRh(ginsenoside Rh);ジンセノサイドRh(ginsenoside Rh);マロニルジンセノサイドRb(maronylginsenoside Rb);マロニルジンセノサイドRb(maronylginsenoside Rb);マロニルジンセノサイドRc(maronylginsenoside Rc);マロニルジンセノサイドRd(maronylginsenoside Rd);チクセツサポニンIa(chikusetsusaponin Ia);チクセツサポニンIb(chikusetsusaponin Ib);チクセツサポニンIII(chikusetsusaponin III);チクセツサポニンIV(chikusetsusaponin IV);サポニンB(saponin B);チクセツサポニンIVa(chikusetsusaponin IVa);サポニンC(saponin C);プロトパナキサジオール(protopanaxadiol)、プロトパナキサトリオール(protopanaxatriol)、オレアノール酸(oleanolic acid)等、又はこれらの化合物の立体異性体である。本発明において、これらのジンセノサイド類は、互いに化学構造が類似しているため共通の効果・効能・用途を有すると考えられるので、単独で用いることもできるし、あるいは、異なる複数のジンセノサイド類を組み合わせて同時に用いることもできる。
【0019】
また、本発明に「ジンセノサイド類」おけるジンセノサイド化合物を含有している薬用人蔘などの天然物又はその抽出物、エキス、分画成分、若しくは精製分画としては、前記したジンセノサイド化合物を比較的多量に含有している天然物であればよく、当該天然物そのままであっても、それからジンセノサイド化合物を含有する成分を抽出して濃縮した抽出物であってもよく、当該抽出物を液状又は個体状に製剤化したエキスまたは錠剤であってもよく、されに当該抽出物の精製分離したジンセノサイド化合物含有の分画、例えばサポニン分画などであってもよく、さらに、ジンセノサイド化合物含有分画を精製してジンセノサイド化合物が乳成分の精製物であってもよい。
好ましい、ジンセノサイド化合物を含有している薬用人蔘などの天然物又はその抽出物、エキス、分画成分、若しくは精製分画としては、例えば、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、又は薬用人蔘の粗サポニン分画などが挙げられる。
【0020】
また、天然に存在するジンセノサイドRbなどのジンセノサイド化合物を化学的な手段で化学修飾して誘導された化合物としては、前記した天然のジンセノサイド類の化学構造を以下の要領で修飾したものをいう(以下、本明細書においてはこれらの化合物を「ジンセノサイド類誘導体」という。)。
すなわち、(1)ジンセノサイド類のステロイド様骨格(ダマラン骨格)に結合している側鎖(カーボンチェーン)の二重結合を還元したもの(いわゆるジヒドロジンセノサイド類)、(2)ジンセノサイド類の水酸基をアセチル化したもの、(3)アセチル化に加えて側鎖(カーボンチェーン)の二重結合を単結合にして、同部に任意の官能基(たとえば水酸基)を結合させたもの、(4)アセチル化に加えて側鎖の二重結合を切断して末端をアルデヒド基にしたもの、(5)アセチル化に加えて側鎖の末端にアルキル基やアリル基等任意の官能基を結合させたもの、(6)アセチル化に加えて側鎖の二重結合を切断してカルボキシル基を結合させたもの、(7)側鎖の二重結合を切断してカルボキシル基を結合させたもの、(8)側鎖末端にある一方のメチル基を水素原子に置換し、他方のメチル基をアルキル基やアリル基等任意の官能基に置換したもの、(9)側鎖の二重結合を単結合にして、同部に任意の官能基たとえば水酸基を結合させたもの、(10)プロトパナキサジオール、プロトパナキサトリオール、ダマラン、オレアノール酸又はそれらの還元体を基本骨格として有する任意の化合物、である。なお、前記したジンセノサイド類(特にプロトパナキサジオール系サポニンとプロトパナキサトリオール系サポニン)の誘導体については、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)にも記載されている。さらに、PCT/JP00/04102においては、上記ジンセノサイド類誘導体の1つであるジヒドロジンセノサイドRbの神経細胞保護作用、作成法ならびにNMRチャート等が記述されている。
【0021】
また、ジンセノサイド類の中でもやや異なる化学構造を有するオレアノール酸たとえばジンセノサイドRo(チクセツサポニンV)については、以下の要領で化学修飾したものが挙げられる。すなわち(1)ジンセノサイド類(オレアノール酸)のステロイド様骨格もしくはアグリコンの化学構造に1ヶ所存在する二重結合を還元したもの(いわゆるジヒドロジンセノサイド類)、(2)(1)の還元部位の水素原子を任意の官能基(たとえば水酸基、アルキル基、アリル基等)に置換したもの、(3)カルボキシル基をエステル化したもの、(4)水酸基をアセチル化したもの、(5)ならびに(1)〜(4)の修飾法のいずれか2つ以上を組み合わせたもの、である。以上記述したジンセノサイド類誘導体又はそれらの立体異性体は、互いに化学構造が類似しているため、共通の効果・効能・用途を有すると考えられるので、本発明において単独で用いることもできるし、あるいは、異なる複数のジンセノサイド類誘導体又はジンセノサイド類と組み合わせて同時に用いることもできる。
【0022】
本発明のジンセノサイド類の代謝産物としては、本発明のジンセノサイド類が生体内において代謝を受けた結果生産される化合物であり、本発明の有効成分は前記したジンセノサイド類に限定されるものではなく、これらの生体内での代謝産物であって、本発明の目的を達成することができる化合物である。
【0023】
次に本発明の低用量・低濃度のジンセノサイド類の静脈内投与、粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与の創傷治癒促進作用又は組織再生・再構築促進作用について具体例に基づいて詳細に説明する。このため、本発明のジンセノサイド類として代表的なジンセノサイドの1種であるジンセノサイドRbならびにその化学修飾された誘導体であるジンセノサイド類誘導体の1つであるジヒドロジンセノサイドRbを用いた実験結果に基づいて説明する。
まず、本発明者らは低用量、低濃度のジンセノサイドRbが皮膚組織の再生・再構築に与える効果を調べるため、たとえば組織や細胞の再生現象が容易に観察される皮膚の切開創に対するジンセノサイドRbの静脈内持続注入の効果を検討した。このために、雄性ウィスターラット(体重300g程度)を使用した。同動物は12時間ごとの明暗サイクル室で飼育し、水ならびに餌は自由摂取とした。吸入麻酔下で同動物の背部に長さ3cm程度の切開創を作成し、ナイロン糸で縫合後、約1時間経過してからジンセノサイドRb(60μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内注入した。その後アルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを7日間静脈内へ持続注入した(60μg/日)。
なお、同様の切開創を作成してナイロン糸で縫合した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0024】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、切開縫合部位を含む皮膚組織を採取し、後固定後常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図1に示す。図1は図面に変わる写真である。図1AはジンセノサイドRb投与例、図1Bは生理食塩水投与例を示している。また“s”は瘢痕(scar)を示す。
図1Aに示されるごとく、ジンセノサイドRb投与例では、図1Bの生理食塩水投与例と比較して、切開創局部の直近に汗腺、脂腺、毛包等の皮膚付属器が多数観察された。このことは、低用量のジンセノサイドRb静脈内投与により汗腺、脂腺、毛包ならびにそれらを構成する細胞が速やかに再生・再構築を完了したことを物語っている。また、低用量のジンセノサイドRb投与例では、生理食塩水投与例と異なり創傷局部を除いては、表皮、真皮、皮下組織がほぼ正常に近い状態にまで再生・再構築、もしくは回復していた。すなわち、ジンセノサイドRb静脈内投与により創傷を受けた皮膚組織がすみやかに再生・再構築し、その結果明らかに創傷治癒が促進されたと言える。
【0025】
一方、図1Bの生理食塩水投与例では、瘢痕(scar)、いわゆる傷跡が大きく成長してきているが、損傷を受けた組織の再生はあまり見られない。即ち、従来の創傷治癒においては瘢痕(scar)が大きくなるだけで、損傷を受けた組織が系統的に再生・再構築することはなかったのであるが、図1Aにみられるように本発明では、ジンセノサイドRb投与により、瘢痕(scar)部分が縮小するのみならず創傷を受けた各々の組織の再生・再構築が行われることが大きな特徴である。
【0026】
従って、ジンセノサイドRbの静脈内投与により、このように皮膚組織の深部に至るまで組織の再生・再構築が進行し、創傷治癒が順調に進むことから判断すると、縫合不全を生じやすい高齢者、低栄養患者、糖尿病患者、免疫不全病患者、エイズ患者もしくは癌患者の術前術後にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与しておけば、優れた効果・効能を発揮するものと期待される。また、形成外科手術(いわゆる美容形成外科手術を含む)の前後にあるいは皮膚の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患の発生後にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与しても、すぐれた創傷治癒促進効果と組織再生再構築促進作用を介して、“より傷が早く確実に治る”ものと思われる。図1Aに示すごとくジンセノサイドRb投与例では、組織再生・再構築が順調に進み、真皮や皮下組織において膠原線維(コラーゲン線維)、弾性線維、細網線維、細胞外基質が正常に近い状態まで充分に産生分泌されたために、その結果として図1Bの生理食塩水投与例よりも、瘢痕が少なくなっていた。
【0027】
次に発明者らは、皮膚組織の欠損が生じる疾患(褥創、皮膚潰瘍、熱傷、凍傷、放射線障害、開放創、紫外線障害、電撃傷等)においても、低用量のジンセノサイドRbの静脈内投与が皮膚組織の再生・再構築を促進するかどうかを調べた。このために、たとえば雄性ウィスターラット(体重300g程度)を使用して、吸入麻酔下で同動物の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を作成して放置した。その後、約1時間経過してからジンセノサイドRb(12μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内投与し、続いてアルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを7日間静脈内へ持続注入(12μg/日)した。
なお、同様の開放創を作成して放置した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0028】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、開放創を含む皮膚組織を摘出し、後固定後常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図2に示す。図2は図面に変わる写真である。図2AはジンセノサイドRb投与例、図2Bは生理食塩水投与例を示している。図2A、Bの矢印より左側が健常部を、図2Aの矢印より右側が再生皮膚組織を、図2Bの矢印より右側が主として瘢痕部(scar,s)を示している。図2Aの再生皮膚組織には表皮下の結合組織(真皮もしくは皮下組織)に毛包ならびに毛乳頭やそれに付随した皮脂腺や立毛筋が多数みられ、再生ならびに再構築した皮膚組織の下に瘢痕(scar,s)が少し存在している。
図2Aに示されるごとく、ジンセノサイドRb投与例では、図2Bの生理食塩水投与例と比較して、上皮化も充分起きており、乳頭を有する真皮の結合組織、皮下組織の再生・再構築がほぼ正常組織に近い状態までに進行していた。また、ジンセノサイドRb投与例では、生理食塩水投与例と異なり、開放創の再生皮膚組織内に毛包、毛乳頭、脂腺、立毛筋、汗腺等の皮膚付属器が豊富に認められ、血管網もほぼ正常組織に近い状態まで再生・再構築もしくは回復していた。おそらく、このような表皮、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、皮膚付属器、血管の再生・再構築に伴い、開放創作成時に切断された末梢神経もジンセノサイドRbの静脈内投与により再生していると考えられた。図2Aに示すごとく、低用量のジンセノサイドRb投与例では組織再生・再構築が順調に進み、真皮や皮下組織において膠原線維(コラーゲン線維)、弾性線維、細網繊維、細胞外基質が正常に近い状態にまで充分に産生分泌されたために、その結果として図2Bの生理食塩水投与例よりも、瘢痕が少なくなっていた。
【0029】
次に発明者らは、皮膚の開放創を作成する前にあらかじめジンセノサイドRbを静脈内投与したときも皮膚組織の再生・再構築が促進するかどうかを調べた。このために、雄性ウィスターラット(体重300g程度)に吸入麻酔下でジンセノサイドRb(12μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内投与し、続いてアルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを4日間静脈内へ持続注入(12μg/日)した。その後、吸入麻酔下で同動物の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を作成するとともに、ジンセノサイドRbの静脈内持続注入をさらに3日間継続した。
なお、同様の開放創を作成して放置した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0030】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目(すなわち開放創作成後5日目)に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、開放創を含む皮膚組織を摘出し、後固定後常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図3に示す。図3は図面に変わる写真である。図3AはジンセノサイドRb投与例、図3Bは生理食塩水投与例を示している。“i”は痂皮(incrustationもしくはeschar)を、“ep”は表皮(epidermis)の重層扁平上皮(stratified squamous epithelium)を、“bv”は血管(blood vessel)を示す。
図3Aに示されたごとく、ジンセノサイドRb投与例では、開放創作成後5日目には既に痂皮の下に明らかな表皮(重層扁平上皮組織)が再生・再構築しており、表皮(重層扁平上皮)直下には赤血球で満たされた太い再生血管もしくは新生血管が分布するとともに、同血管から枝分れしたと思われる比較的細い血管が真皮の結合組織や皮下組織内に密に存在していた。一方、図3Bに示されたごとく、生理食塩水投与例では、開放創作成後5日目においても痂皮の下の表皮再生は極めて不完全であり、非常に薄い表皮の直下にある再生血管も、ジンセノサイドRb静脈内投与例と比較して明らかに細かった。そのため将来瘢痕になると考えられる表皮下の結合組織には極めて細い血管が少数散見されるのみであった。従って、ジンセノサイドRbの静脈内投与により、皮膚組織の再生・再構築が明らかに促進され、開放創によってひとたび破綻・切断された血管の再生・新生・再構築もジンセノサイドRbの静脈内投与により促進されることが発明されたことになる。また、ここで忘れてはならないことは、図3AのごとくジンセノサイドRb投与例で開放創作成後5日目にみられた表皮(重層扁平上皮)直下の太い血管が、開放創作成後9日目には図2Aのごとくほぼ退縮し、同部には乳頭を有する真皮の結合組織がみられることである。すなわち、ジンセノサイドRb投与例では、開放創作成後早期には血管の再生もしくは新生が起こり、皮膚組織の再生・再構築が完成するにつれて、血管の再構築が生じることを物語っている。1つの化合物が組織再生・再構築という複雑な生命現象を、かくも鮮やかに成し遂げることを証明した本発明は、まさに人類史上初のものであると言える。なお、健常組織においては、ジンセノサイドRb投与例と生理食塩水投与例との間で、明らかな相異は認められなかった。このことは、低用量のジンセノサイドRbを静脈内へ持続投与しても健常組織にはさしたる影響を与えず、病変組織や損傷(創傷)組織にのみ好ましい効果をもたらすことを支持している。すなわち、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは副作用の少ない医薬組成物と言える。
【0031】
このように、開放創によってひとたび欠損した皮膚組織がジンセノサイドRbの静脈内投与により速やかにかつ正常に近い状態にまで再生・再構築するという本実験結果は、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが皮膚欠損部周辺の表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、幹細胞、線維芽細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、立毛筋の細胞、血管平滑筋細胞の分裂、増殖、移動、分化、ならびに表皮細胞の毛包、汗腺、皮脂腺細胞への分化を促進することをも明らかにしている。しかも前述の各種細胞、末梢神経、血管がジンセノサイドRb投与により有機的に系統立てて再生・再構築した結果、正常皮膚組織に近い状態にまで皮膚の開放創が速やかに回復するということが発明されたことになる。すなわち、低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内持続投与により、皮膚欠損部に新たに再生した表皮細胞や線維芽細胞が正常の皮膚組織に類似した態様で配列し、細胞外基質、膠原線維、弾性線維、細網線維なども正常皮膚組織に近い状態にまで再生・再構築されると言える。本実験結果(図2A、図3A)に示されたごとく、ジンセノサイドRbの静脈内投与により皮膚の開放創(皮膚欠損部)において表皮組織のみならず真皮や皮下組織にいたるまで再生・再構築が促進されるので、ひとたび開放創が上皮化されたのちに再び同部に外傷が負荷されても、ジンセノサイドRb投与により上皮化された開放創部では上皮組織の剥離が生じにくいものと期待される。
【0032】
一方、図2Bや図3Bに示すごとく生理食塩水投与例では、外見上上皮化は起きていても、真皮や皮下組織の再生・再構築を伴わず瘢痕が形成されているので、同部に軽い外力が加わっただけで容易に表皮組織が剥離する恐れがある。ちなみに、発明者らの経験によれば表皮増殖因子(epidermal growth factor,EGF)、血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor,PDGF)や塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor,bFGF)をラット皮膚の開放創局所に噴霧もしくは塗布しても、それらの創傷治癒促進効果は低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与の効果に遠く及ばない。このように低用量のジンセノサイドRbが単独で皮膚組織の再生・再構築もしくは創傷治癒をかくもあざやかに成しとげるということは、皮膚組織の創傷治療もしくは再生・再構築にかかわるサイトカイン類(EGF、TGF−β、TGF−α、FGF、VEGF、PDGF−BB、TGF−β、PDGF−AB、IGF、KGF、PDGF、TGF−β、TGF−β、FGF−2、U−PA、t−PA等)の産生や血球成分・血漿成分の機能なども低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbにより調節されていることを物語っている。すなわち、Singer,A.J.とClark,R.A.Fの総説(New Engl. J. Med., 341, 738-746, 1999)に記述されたごとく、創傷治癒もしくは組織再生・再構築にかかわる複雑な生命現象を、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが単独ですべて成しとげたといえる。
【0033】
ラット皮膚の開放創を用いた本実験結果より、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる静脈内投与製剤の創傷治癒促進効果ならびに皮膚組織再生・再構築促進作用は、歴史上最強のものと考えられる。おそらくジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩が極めて強力な創傷治癒促進作用、皮膚組織再生、再構築促進作用を発揮するものと思われるが、このことはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物が皮膚の損傷、創傷、外傷もしくは欠損等による疾患や皮膚の病理組織学的変化をきたす疾患の予防、処置、治療のためのリード化合物になり得ることも支持している。
【0034】
ジンセノサイドRbをリード化合物として利用することにより作成できる皮膚の疾患の治療薬の候補物質として、もっとも可能性が高いものは、前記した構造式で示される化合物(ジヒドロジンセノサイドRb)であり、本化合物は既述のごとく、ジンセノサイドRbのステロイド様骨格(ダマラン骨格)に結合している側鎖(カーボンチェーン)の二重結合を還元することにより容易に作成することができる。その他、図4に示したジンセノサイドRbの化学的誘導体もジンセノサイドRbと同様に皮膚又は粘膜の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患もしくは皮膚又は粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患の治療、予防、処置剤となり得る。図4左上の(1)は水酸基をアセチル化した誘導体の例であり、(2)はアセチル化に加えて側鎖の二重結合を単結合にして同部に任意の官能基(たとえば水酸基)を結合させた例であり、(3)はアセチル化に加えて側鎖の二重結合を切断して末端をアルデヒド基にした誘導体の例であり、(4)はアセチル化に加えて側鎖の末端にアルキル基やアリル基等任意の官能基を結合させた例であり、(5)はアセチル化に加えて側鎖の二重結合を切断してカルボキシル基誘導体にした例である。右側の(6)は側鎖の二重結合を切断してカルボキシル基を結合した例であり、(7)は、側鎖末端にある一方のメチル基を水素原子に置換し、他方のメチル基をアルキル基やアリル基等任意の官能基に置換したものであり、(8)は側鎖の二重結合を単結合にして、同部に任意の官能基たとえば水酸基を結合させた例である。なお、前記した誘導体については、本明細書の[発明が解決しようとする課題]の項にも既述されている。また、薬用人蔘にはジンセノサイドRb以外に公知のものだけでも30種類前後の精製サポニン類すなわちジンセノサイド類が含まれているが(庄司順三、薬用人蔘’95,pp251-261,熊谷 朗編、共立出版株式会社)、これらの精製サポニン類すなわちジンセノサイド類の化学構造もジンセノサイドRbの化学構造と類似しているので、前記皮膚疾患又は粘膜疾患の治療、予防、処置剤となり得る。もちろん、ジンセノサイドRbをリード化合物として利用することにより作成できる新規化学的誘導体は前述のものに限定されるわけではない。また、ジンセノサイドRb以外の精製サポニン類すなわちジンセノサイド類(特にプロトパナキサジオール、プロトパナキサトリオール)についてもダマラン骨格(ステロイド様骨格)側鎖を還元するかもしくは図4と同様の方法で化学的誘導体を作成することができる。また、ジンセノサイドRoを始めとするオレアノール酸の化学的誘導体については、[発明が解決しようとする課題]の項で既述している。前述したジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの化学的誘導体すなわちジンセノサイド類誘導体ならびに公知の類似化合物すなわち前述の庄司の総説に記載された3種類のアグリコンの化学構造を有する化合物は、脳卒中、神経変性疾患、脊髄損傷、頭部外傷、神経外傷等の脳神経疾患や細胞死を伴う諸疾病に対しても、ジンセノサイドRbと同様の効果、効能を示すことが期待される(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤;特願平11−340850、PCT/JP99/06804、ジンセノサイドRbからなる脳血管再生・再構築促進剤ならびに神経組織二次変性抑止剤;PCT/JP00/04102、薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)。なお、前述のジンセノサイド類又はジンセノサイド類誘導体の適応が期待される、細胞死を伴う諸疾病や病態の中には、成書(今日の治療指針;監修、日野原重明、阿部正和、医学書院;1995)に記載されたすべての疾病や病態が含まれる。もちろん、厚生省が指定する45の特定疾患もジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbによる予防、処置、治療が可能である。
【0035】
またジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの皮膚組織再生・再構築促進効果は画期的なものであるので、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbもしくはその代謝産物をリード化合物として新規皮膚疾患治療薬もしくは組織再生促進剤を作成できるのみならず、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbもしくはその代謝産物の標的分子を同定することにより、標的分子の機能を修飾する化合物をも合成して皮膚疾患治療薬の開発を目指すことができる。
【0036】
本実験結果では、皮膚欠損を生じる開放創を作成した後に低用量のジンセノサイドRbを静脈内へ持続投与することにより、皮膚組織の再生・再構築が促進され、創傷治癒が顕著に進んだ。このことは、低用量のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの静脈内持続投与が皮膚欠損を生ずる他の疾患(たとえば褥創、皮膚潰瘍、熱傷、凍傷、放射線障害、水疱性皮膚疾患、紫外線障害、電撃傷、日射病、皮膚の外傷等)にも効果・効能を示すことを物語っている。また、皮膚のみならず、他の臓器・組織の一部が欠損する疾患(たとえば消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、粘膜びらん、粘膜潰瘍、消化管粘膜びらん、慢性胃腸炎、急性胃腸炎、クローン病、ベーチェット病、鼓膜損傷、角膜損傷、角膜びらん、角膜潰瘍、骨欠損、膀胱・尿道・陰茎損傷等)にもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与や局所投与が有効であるとされる。また、前述の疾患において、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを点鼻投与、挿肛投与、点耳投与、点眼投与、舌下投与等してもよい。もちろん、各種臓器・組織の病理組織学的変化をきたすその他のあらゆる疾患に対して、低用量のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは病理組織学的変化をきたした臓器・組織の再生・再構築を促することにより、効果・効能を示す。このような病理組織学的変化をきたす疾患や病態として、創傷、熱傷、外傷、咬傷、皮膚潰瘍、褥創はもとより成書(今日の治療指針;監修、日野原重明、阿部正和;医学書院;1995)に記載されたすべての疾患や病態が考えられる。
【0037】
ラット皮膚の開放創を用いた本実験において、低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与は顕著に皮膚組織の再生・再構築を促進した。改めて言うまでもなく、皮膚は表皮(重層扁平上皮)、結合組織、血管、神経、分泌腺等、他の臓器や組織と共通した構成要素を持っている。従って、低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内持続投与が皮膚組織の再生・再構築を顕著に促進したという本実験事実は、低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与が他のあらゆる臓器や組織(たとえば肝、腎、心臓、消化管、唾液腺、膵、筋肉組織、呼吸器、感覚器、泌尿生殖器、内分泌器官、角膜、粘膜、口腔粘膜、神経組織等)の再生もしくは再構築をも促進することを示している。すなわち、肝部分切除術後、クラッシュシンドローム、急性尿細管壊死、急性腎不全、肝炎、腎炎、膵部分切除、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病、角膜損傷、角膜びらん、角膜潰瘍、口内炎、アフタ性口内炎、口腔粘膜損傷、鼓膜損傷等の病態において、当該臓器の再生もしくは再構築を促進するために、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは局所投与が有効であると考えられる。
【0038】
また、本発明のジンセノサイドRbは、開放創による皮膚欠損部位において血管の再生・再構築、末梢神経再生、毛包、汗腺、脂腺の再生をも促進することが本実験において明らかにされた。これらのことより、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは血流障害を主症状とする疾病(大動脈炎症候群、末梢動脈閉塞症、閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、レイノー症候群、狭心症、心筋梗塞、肺塞栓、脳梗塞、肝・腎・心虚血再灌流障害、脳血管障害、痔疾、もやもや病等)の予防、治療、処置剤、発毛・育毛剤、脱毛(円形脱毛症、男性型脱毛症、び慢性脱毛症)の進行予防・治療・処置剤あるいは末梢神経障害や神経痛の予防、治療、処置剤として、利用可能であると考えられる。
【0039】
以上の実験結果から、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRb又はその塩を含有してなる静脈内投与用製剤が、優れた創傷治癒促進作用もしくは皮膚組織再生・再構築促進効果を介して、皮膚の損傷、創傷(切開創、開放創)、外傷もしくは欠損による疾患又は皮膚の病理組織学的変化をきたす疾患の治療、予防、処置に有用となることが明らかにされた。
本発明の低用量・低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRb又はその塩は、薬用人蔘の成分として知られており、副作用の極めて少ない物質である。
【0040】
次に本発明者らは、皮膚組織の欠損が生じる疾患(褥創、皮膚潰瘍、熱傷、凍傷、放射線障害、開放創、紫外線障害、電撃障害等)において、ジンセノサイドRbの皮膚外用投与が効果・効能を発揮するかどうかを調べた。このため、たとえば雄性ウイスターラット(体重300g程度)を使用して、吸入麻酔下で同動物の背部を剃毛した後に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を3ケ所作成した。そのうち2ケ所には0.01重量%もしくは0.001重量%のジンセノサイドRbを含有する眼科用白色ワセリン(プロペト)を連日0.1g単回塗布し、残りの開放創には同量の眼科用白色ワセリン(プロペト)のみを塗布した。開放創作成後、9日目に創部を含む皮膚を写真撮影した。さらに、本発明者らは同様の方法で0.0001重量%、0.00001重量%もしくは0.000001重量%のジンセノサイドRb皮膚外用塗布の効果も調べた。なお、実験動物は写真撮影直前に麻酔薬により安楽死させ、写真撮影したのちに創傷部を採取するかもしくは創傷部を採取したのちに写真撮影を実施した。その後創傷部組織を固定液中で保存した。結果を図5及び図6に示す。図5及び図6は図面に変わる写真である。
【0041】
図5の上から1番目が開放創作成後プロペトのみを外用投与(外用塗布)したものであり、赤い開放創(写真では黒い開放創)が目立つ。図5の上から2番目が0.001%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを外用塗布(皮膚外用投与)したものであるが、上から1番目のプロペトのみを外用塗布したものに比べて開放創面積がやや縮小していた。一方、0.01重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを外用塗布(皮膚外用投与)された上から3番目の開放創は、上から1番目の対照と比べて差異は認められなかった。すなわち0.01重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペト(すなわち軟膏基剤の1gあたり100μgのジンセノサイドRbを含有するプロペト)は、開放創に塗布しても皮膚組織の再生・再構築を顕著には促進せず、従って創傷治癒もそれほど進まず、その結果瘢痕形成もそれほど抑止しないと考えられる。
【0042】
また、図6の上から2番目と3番目に示したごとく、0.00001重量%(10−5重量%)もしくは0.000001重量%(10−6重量%)のジンセノサイドRbを含有するプロペトは、0.0001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトよりも優れた効果を示した。このことは、低濃度のジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤を開放創に外用塗布もしくは外用噴霧しても、低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与とほぼ同じ効果・効能が得られることを明らかにしている。また0.000001重量%のジンセノサイドRbの皮膚外用投与により、再生した開放創部より明らかな発毛が観察された。すなわち、低用量のジンセノサイドRbの静脈内持続投与の効果・効能・用途について、本発明で詳細に説明された事項は、ほぼすべてジンセノサイドRbの病変部局所投与や病変部外用投与にもあてはまると言える。すなわち、低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、皮膚の表皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、血管、皮脂腺、神経、汗腺、毛乳頭、立毛筋、毛包等の再生・再構築を促進し、創傷治療を早めると考えられる。本発明者の知る限り、低濃度のジンセノサイドRbの皮膚外用投与の効果は、ペプチド性因子(PDGF、EGF、bFGF)の効果よりはるかに優れている。本実験で使用した低濃度のジンセノサイドRbを含有する軟膏もしくは外用剤は、皮膚のみならず損傷もしくは、病理組織学的変化をきたすあらゆる臓器・組織(角膜、口腔、外耳、鼓膜、膣、子宮、尿道、直腸、肛門等)に外用投与して、病変組織の再生・再構築を促進せしめることができる。本実験結果より、プロペト10gあたりのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの混入量は0.1mg以下、好ましくは0.0001mg以下ということが判明した。すなわち皮膚疾患を有するヒトもしくは脊椎動物へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの皮膚外用投与量は、患者の個人差や病状にもよるが、従来考えられていたよりはるかに少ないということになる。本実験では高濃度のジンセノサイドRb(0.0001重量%以上)の効果は動物によりばらつきがみられた。ラットでは0.001重量%〜0.0001重量%という高濃度のジンセノサイドRbを開放創に外用投与しても、しばしば同動物は開放創をなめることがあるので、その結果として開放創部のジンセノサイドRbの濃度が低下して時折好ましい効果が得られたと考えられる。しかし、ヒトでは開放創をなめるという行為はほとんど起こり得ないので、創傷治癒促進のためにはより低濃度(たとえば0.00002重量%未満)のジンセノサイドRbを外用投与することが好ましい。
【0043】
前述のごとく、低濃度のジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、皮膚の表皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、血管、立毛筋、皮脂腺、汗腺、毛乳頭、毛包等の再生・再構築を促進するという事実は、当然のことながらジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、表皮細胞、表皮角化細胞、メルケル細胞、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、角質細胞、真皮ならびに皮下組織の線維芽細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、皮脂腺の細胞、脂肪細胞、汗腺の細胞、毛包の細胞、立毛筋の細胞、間葉系細胞、皮膚の幹細胞等の再生・再構築をも促すことを明らかにしている。すなわち、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは皮膚組織を構成するあらゆる細胞やその分泌物の再生・再構築を促進すると考えられる。一方、加齢に伴う皮膚の諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、乾燥等)は、皮膚組織を構成する前記細胞が、紫外線障害や生体の老化に伴い徐々に死滅するかもしくは機能不全に陥り、もとの健常な状態に再生できなくなるために、生じるものと考えられる。たとえば、加齢や老化に伴う皮膚のかさつき、乾燥、脱毛、亀裂、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、皮脂欠乏、かゆみなどは皮膚の汗腺、毛包、ならびに脂腺の細胞が、機能障害に陥るか死滅したままで再生しないために、生じると考えられる。また、日焼け、色素沈着、しみ、そばかす等は、日光や紫外線に照射された皮膚の細胞が死に至っても、元通りに細胞が再生しなくなるために起こると考えられる。さらに加齢に伴う、皮膚のしわ、たるみ、萎縮などは、真皮や皮下組織の線維芽細胞もしくは間葉系細胞が、加齢とともに機能不全に陥るか数が減少したために、真皮や皮下組織で充分な膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞外基質を保持できなくなった結果、生じると言える。一方、メラノサイトやランゲルハンス細胞の機能障害により白髪や易感染性が生じると考えられる。
【0044】
本発明の低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、皮膚組織を構成するすべての細胞の再生・再構築を促進することができるので、化粧品の組成物として利用すれば、老化に伴う皮膚の構成細胞の減少(細胞死)、機能障害に帰因する諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、軽減もしくは改善することができる。さらに、ジンセノサイドRbは、本発明者ら(阪中、田中)の既出願特許(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤;PCT/JP00/04102、薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において、細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現を上昇せしめ、表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、皮脂腺の細胞、毛包の細胞、立毛筋の細胞、汗腺の細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞等を含めたあらゆる皮膚の細胞を保護すると考えられるので、やはり加齢や老化に伴う皮膚の構成細胞の死や機能障害を未然に防ぐことができると考えられる。このように、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、皮膚を構成するあらゆる細胞を保護するのみならず、ひとたび皮膚の細胞が死に至るか機能不全に陥っても、それらの細胞を再生せしめることによって、加齢に伴う皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、亀裂、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、改善もしくは軽減すると考えられる。すなわち、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは細胞保護作用と組織・細胞再生促進作用という2つの強力な作用を介して、加齢に伴う皮膚の老化症状を改善、予防もしくは軽減すると言える。しかも、本発明の実験結果や上記の既出願特許(特願平10−365560、PCT/JP99/02550)から明らかなように、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは患部組織や皮膚組織における細胞外液濃度が、1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下のときに、細胞保護作用ならびに組織・細胞再生促進作用を発揮する。また、後述の実施例のごとく、低濃度・低用量のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、粘膜組織の再生・再構築をも促進し、口腔粘膜の咬傷を治療することができる。従って、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbをあらゆる化粧品や健康薬(化粧水(スキンローション)、乳液(ミルクローション)、美容液、マッサージ剤、パック剤、乳剤、ファンデーション、ハンドクリーム、ゲル、ローション、エマルジョン、パウダー、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、コールドクリーム、アイシャドウ、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、ナイトクリーム、美白クリーム、トローチ、のどあめ、おしろい、口紅、入浴剤、化粧石けん、健康飲料水、アイソトニックウォーター、水割用氷、シャーベット、アイスクリーム、アルコール飲料、洗眼薬、洗眼液、洗顔液、うがい薬、シャンプー、リンス、歯みがき粉、リップクリーム、下地クリーム(メイクアップベース)、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等)に微量混入して使用し、皮膚局所又は粘膜局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度を前記のごとく低濃度に維持すれば、皮膚や粘膜の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、亀裂、かさつき、再生不良、上皮剥離、粘膜剥離、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、乾燥等)に対して優れた効果を発揮する。たとえば、加齢や老化に伴い皮膚の脂(すなわち皮脂)が欠乏するだけでも、皮膚のかさつき、ひびわれ、乾燥、かゆみ、角質細胞剥離等が生じるが、低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbをあらゆる化粧品に混入して使用することにより、皮脂腺の保護もしくは再生・再構築が促進され前記の加齢に伴う皮膚の老化症状を予防、改善、もしくは軽減すると考えられる。また、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する任意の化粧品は、表皮細胞(角質細胞)もしくは表皮角化細胞を保護するのみならず、その再生をも促進するので、角質細胞間脂質や天然保湿因子の産生や分泌も促進することにより、皮膚の乾燥やかさつきを抑止し、皮膚に自然な潤いをもたらす。また、たとえばミネラルウォーターなどにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画等を低濃度で混入することにより、アルコール飲料や高温刺激物による口腔粘膜や消化管粘膜(特に食道粘膜)の障害を改善、予防、処置することができる。低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbはケミカルピーリング用の組成物として、ケミカルピーリングの全過程(前、中、後)で使用される試薬類又は投与剤のうち1種類もしくは2種類以上に混入して使用することができる。なお、本発明の化粧品組成物、発毛育毛用組成物、ケミカルピーリング用組成物(薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類、ジンセノサイド類誘導体)の基剤としては、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、低級アルコール類、高級アルコール類、多価アルコール類、エステル類、界面活性剤、水溶性高分子化合物等があげられる。本発明の前記皮膚外用組成物は、その他の皮膚細胞賦活剤、抗炎症剤、活性酸素消去剤、美白剤、保湿剤、紫外線吸収剤、防腐防黴剤、エモリエント剤、天然物エキス、レチノン酸のいずれかあるいは2つ以上と併用してもよい。
【0045】
次に本発明者の一人(阪中)は低濃度のジンセノサイドRbを含有するプロペトが口腔粘膜の咬傷に有効であるかどうか、自身で確認した。平成12年5月2日午後2時頃に阪中は歯科治療後左三叉神経第三枝の浸潤麻酔ならびに歯根膜麻酔が醒める前に、空腹のあまり遅い昼食をとり始めた。15分以内に自身の左下唇粘膜を3度噛んでしまい、その後口腔内に鉄の味覚(血液)を感知したので、鏡にて咬傷を確認した所、少なくとも5ケ所に口腔粘膜のびらんもしくは欠損を認め、さらに1ケ所に血腫を認めた。このまま、放置すると数日以内にアフタ性口内炎を併発し、完治までに1週間から10日を要すると判断したので、本発明者らの動物実験で効果・効能が確認されている低濃度(0.00001重量%)のジンセノサイドRbを含有したプロペトを、口腔粘膜咬傷部のびらんもしくは欠損をきたした領域5ケ所、ならびに血腫の部位1ケ所に少量外用塗布した。外用塗布は、毎食前後ならびに間食前後に実施した。なお、食後にはできるかぎり歯を磨いてから外用塗布することにした。すなわち1日6〜10回に分けて咬傷部位に0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを口唇粘膜へ外用塗布した。咬傷後96時間目の口唇粘膜の写真を図7に示す。図7は図面に変わる写真である。
【0046】
図7の写真に示すごとく、咬傷後96時間目には白矢頭で示すごとく血腫は残っているが、その他の黒矢頭で示した口唇粘膜の咬傷部(すなわちびらんもしくは欠損をきたした口腔粘膜)は、わずかに発赤がみられるのみでほぼ完全に上皮化が進んでおり、明らかに創傷が治癒したと考えられた。なお、0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを咬傷部に外用塗布し始めてからは、創部における疼痛も顕著に軽減した。おそらく低濃度のジンセノサイドRbの口腔粘膜外用投与により、咬傷により切断した末梢神経が上皮化とともに速やかに再生したため、疼痛が軽減したと考えられる。本発明者の経験では、このような咬傷が治癒するのには、少なくとも7日から10日はかかるが、低濃度のジンセノサイドRb外用投与により明らかに口唇粘膜組織が速やかに再生・再構築し、96時間以内に咬傷(創傷)治癒が著しく促進されたと言える。しかも、咬傷後にアフタ性口内炎を併発することもまったくなかった。おそらく、粘膜病変に対しては、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する外用剤を1日に1〜10回病変部に局所投与すれば効果がみられると考えられる。
【0047】
一般にアフタ性口内炎にはデキサルチン軟膏のようなステロイド剤が臨床現場でよく使用されるが、周知のごとくステロイド剤はアフタ性口内炎の疼痛を軽減するものの、創傷や組織の欠損部位の治癒を遅らしむるという副作用を示す。しかも、雑菌が多く存在する口腔内の粘膜病変に対して免疫機能抑制作用を有するステロイド剤を外用塗布することは感染症の併発を考慮すると必ずしも好ましいとは言えない。
一方、低濃度のジンセノサイドRbの粘膜外用投与は創傷治癒や上皮化を促進せしめ、かつ粘膜病変における末梢神経の再生も促進させるので、ステロイド剤の粘膜外用投与よりも優れた治療法と考えられる。しかも、低濃度のジンセノサイドRbは免疫機能抑制作用も示さないので、極めて安全な医薬組成物と言える。今後、アフタ性口内炎の第一選択薬としても低濃度ジンセノサイドRbは利用できると期待される。
【0048】
次に本発明者の一人(阪中)は、平成12年5月26日昼食中に再度左下唇粘膜を噛んでしまったので、0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを同様の方法で咬傷部へ外用塗布した。咬傷直後の写真を図8の左側に、咬傷後72時間目の写真を図8の右側に示す。図8は図面に変わる写真である。
【0049】
図8に示すごとく、低濃度のジンセノサイドRbを粘膜へ外用投与すれば、アフタ性口内炎を併発することなく咬傷が速やかに治癒することが判明した。従って低濃度のジンセノサイドRbは、皮膚組織のみならずヒト口腔粘膜を始めとする粘膜組織の再生・再構築をも促進し、創傷治癒を速やかに進めるものと考えらえる。このような事実にもとづけば、低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは口腔粘膜を含む粘膜や口腔内組織の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患や病態に対しても、組織再生・再構築促進作用を介して効果・効能を発揮すると言える。このような疾患として、う蝕、歯髄炎、辺縁性歯周組織炎、口内炎、舌炎、再発性アフタ、口腔内アフタ、口臭、口腔異常感症、歯性感染症、口腔粘膜咬傷、舌の咬傷、口腔粘膜熱傷、舌の熱傷、口腔粘膜損傷、歯肉炎、歯槽膿漏、カタール性口内炎、壊疽性口内炎、ワンサン口内炎、アフタ性口内炎、急性疱疹性歯肉口内炎、ヘルパンギーナ、帯状疱疹、口腔粘膜びらん、口腔粘膜潰瘍、褥瘡性潰瘍、放射線性口内炎、天疱瘡、口腔カンジダ症、扁平苔癖、Riga−Fede癖、平滑舌、赤平舌、角膜びらん、角膜潰瘍、ドライアイ、シェーグレン症候群等があげられる。
【0050】
また、口腔粘膜の咬傷に対して低濃度のジンセノサイドRbの外用塗布が有効であったという事実は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが、口腔粘膜を始めとする粘膜の上皮、粘膜固有層、唾液腺、粘液腺、混合腺、結合組織、筋組織、血管、末梢神経、上皮細胞、腺細胞、筋上皮細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、筋細胞、細胞外基質、コラーゲン線維、弾性線維もしくは細網線維の再生又は再構築を促進させることを支持している。
【0051】
なお、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する粘膜外用剤は、口腔粘膜のみならず消化管粘膜、鼻粘膜、眼球粘膜(結膜、角膜)、膣粘膜、子宮粘膜、尿道粘膜、膀胱粘膜、気管・気管支粘膜等に外用塗布することにより、これらの粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患や病態に著効を示す。特に粘膜の創傷、熱傷、炎症、びらん、潰瘍、欠損もしくは花粉症や春季カタル等にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの外用投与が有効である。さらに、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する粘膜外用剤は、粘膜の老化症状(萎縮、上皮剥離、粘膜剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)を予防、改善、処置するための健康薬としても使用できる。なお、これまでに記述されたジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの効果、効能、用途は、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキス又は薬用人蔘にもあてはまる。もちろん、これまでに記述されたジンセノサイドRbの効果・効能・用途は、後述するジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの効果・効能・用途とも共通する。
【0052】
次に本発明者らは、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが皮膚組織や口腔粘膜組織のみならず、植物組織の新生・再生もしくは再構築をも促進するかどうかを調べた。このため植物組織として観葉植物の1つであるポトスを選んだ。発明者の一人(田中)の部屋にあるポトスの親株から、類似した挿し木を6本採取し、3本は水のみを用いて水栽培し、残り3本は100fg/mlのジンセノサイドRbを含有する水中で栽培した。栽培13日目の挿し木の写真を図9に示す。図9は図面に変わる写真である。
図9の左側は水のみで挿し木(ポトスの茎と枝)を水栽培したものであり、図9の右側は、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。明らかに低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で、ポトスの挿し木を水栽培した場合に根の伸長が促進された。
【0053】
次に、本発明者らは、前述の挿し木を引き続き水栽培に供し、22日目に再度写真撮影を実施した。結果を図10に示す。図10は図面に変わる写真である。図10の左側は、水のみでポトスの挿し木を3本22日間水栽培したものであり、図10の右側は、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。なお、水栽培用の水もしくはジンセノサイドRbを含有する水は、1週間ごとに一度交換した。さらに、本発明者らは27日目にも発根部位を観察した。
【0054】
図10に示すごとく、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を22日間水栽培すると、水のみで水栽培されたポトスと比べて、より多くの根が新生もしくは再生し、水栽培用ガラス容器に接するまでに伸長した。さらに、27日目になると、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で栽培されたポトスの挿し木3本すべてに、一次発根部位より明らかな二次発根が観察された。しかし、水のみで栽培されたポトスの挿し木3本には、まったく二次発根は認められなかった。従って、本実験結果より低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは皮膚組織やヒト口腔粘膜組織のみならず、植物組織の発根・発芽・成長・分化・新生・再生もしくは再構築をも促進することが明らかにされた。
【0055】
次に本発明者らは、薬用人蔘の粗サポニン分画が低濃度のジンセノサイドRbと同様にポトスの挿し木の新生・再生もしくは再構築を促進するかどうかをしらべた。このため、ポトスの親株から、類似した挿し木を2本採取し、1本は水のみを用いて栽培し、残りの1本は1450fg/mlの薬用人蔘の粗サポニン分画を含有する水中で、水栽培した。栽培14日目の写真を図11に示す。図11は図面に変わる写真である。図11の左側は水のみで挿し木を栽培したものであり、図11の右側は、低濃度の粗サポニン分画(1450fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。明らかに、低濃度の粗サポニン分画(1450fg/ml)を含有する水で、ポトスの挿し木を水栽培した場合に根の新生・再生又は伸長(すなわち発根)が促進された。すなわち、粗サポニン分画もジンセノサイドRbと同様に植物組織の新生・再生もしくは再構築を促進すると言える。当然のことながら、粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキスや薬用人蔘も同様の作用を有すると言える。すなわち薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、あらゆる生体組織(動物・植物組織)の再生・新生・再構築を促進すると言える。
【0056】
前記の実験で示したごとく、100fg/mlのジンセノサイドRbもしくは1450fg/mlの粗サポニン分画を含有する水溶液中で、植物組織たとえばポトスの挿し木を栽培すると、対照の挿し木に比べて明らかに根の新生が促進される。従って前述のごとく、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキス又は薬用人蔘が、動物組織のみならず、植物組織の発根・発芽・成長・分化・新生・再生もしくは再構築をも促進すると言える。
しかも、植物組織の発根・発芽・成長・分化・新生・再生もしくは再構築を促進させるジンセノサイドRbもしくは粗サポニン分画の細胞外液濃度は、動物組織(皮膚組織、口腔粘膜組織)を再生・再構築させる場合と同様に、極めて低いことが本発明において見出された。従って、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、植物の栽培・育成・保存、生花の保存・栽培・育成、水栽培、水耕栽培、農作物栽培・育成、野菜の栽培・育成、果実(フルーツ)の栽培・育成、たばこの栽培・育成、きのこ栽培、薬用植物栽培、茶葉の栽培・育成等に利用できると言える。前述の薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる発根・発芽・成長・分化促進剤もしくは肥料添加物は、任意の肥料に好ましくは低濃度で混入又は添加することができるし、単独で植物組織の発根・発芽・分化・再生・再構築・新生・成長促進剤として使用してもよい。もちろん、後述するジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbも、ジンセノサイドRbと同様に植物組織の発根・発芽・新生・成長・再生・分化もしくは再構築を促進し、前述のような農産物、植物、野菜等の栽培・育成・保存に利用することができる。
【0057】
ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくは薬用人蔘の粗サポニン分画が動物組織(皮膚組織、口腔粘膜組織)のみならず植物組織の発根・発芽・分化・成長・新生・再生もしくは再構築を促進するという事実は、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイドRbを始めとするジンセノサイド類があらゆる生体組織の発根・発芽・分化・成長・新生・再生もしくは再構築を促進することを物語っている。従って薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは家畜、養殖用魚貝類、ペット用飼料の添加物としても利用できると言える。たとえば、魚貝類、甲殻類、ウナギ、真珠貝、アコヤ貝、アナゴ等の養殖の際に、低濃度の薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを海水又は淡水に通常の飼料とともに添加すれば、これらの水産資源もしくは海産資源の発育が促進されると考えられる。もちろん、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、その細胞保護作用を介して、魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ等の海産・水産資源を外傷、創傷、病原微生物、バイオハザード、内分泌撹乱物質、環境汚染、毒素等から守ることができる。すなわち、本発明の飼料添加物は来るべき食糧危機から人類を救済するために必須のものとなる。また、粗サポニン分画が植物組織の再生・新生もしくは再構築を促進するという事実は、低濃度の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキス又は薬用人蔘が皮膚組織あるいは粘膜組織の再生もしくは再構築をも促進することにより、化粧品組成物、健康薬組成物、獣医薬組成物もしくは医薬組成物として利用されることを支持している。もちろん、後述するジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもジンセノサイドRbと同様に、前記した水産資源もしくは海産資源の発育促進に利用できる。
【0058】
さて、前述の口腔粘膜咬傷例において、本発明者(阪中)は0.00001重量%(10−5重量%)のジンセノサイドRbを含有するプロペトを口腔粘膜(下唇粘膜)に1日6〜10回外用塗布すると口腔粘膜組織が速やかに再生・再構築し、創傷が治癒しアフタ性口内炎も未然に防がれることを示した。しかし、当然のことながら口腔粘膜咬傷部に0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを外用塗布しても、唾液によって咬傷部近傍のジンセノサイドRbの細胞外液濃度は、すぐに低くなってしまうことが予想される。おそらく、0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトは、口腔内の唾液によって、かなり希釈されても充分に口腔粘膜咬傷部組織の再生・再構築を促進すると考えられる。すなわち、ジンセノサイドRbは0.00001重量%よりはるかに低い濃度域で効果・効能を発揮すると予想される。従って、皮膚の創傷部にジンセノサイドRbを含有する外用剤を塗布するときは、当該外用剤におけるジンセノサイドRbの濃度が唾液等で著しく希釈されることは考えにくいので、0.00001重量%よりも低い濃度のジンセノサイドRbを使用する方が好ましいと考えられた。そこで本発明者らは、前述したラット皮膚の開放創に、さらに低い濃度のジンセノサイドRbを含有するプロペトを外用塗布しその効果をしらべた。
【0059】
吸入麻酔下でラット(n=3)の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを6ケ所に施し開放創を作成した。その後、各開放創に、ジンセノサイドRbをそれぞれ0.0001重量%(10−4重量%)、0.00001重量%(10−5重量%)、0.000001重量%(10−6重量%)、0.0000001重量%(10−7重量%)、0.00000001重量%(10−8重量%)の濃度で、含有するプロペトを1日単回0.1g9日間外用塗布した。コントロールにはプロペトのみを外用塗布した。その後麻酔により動物を安楽死させた直後に、創傷部皮膚を採取し写真撮影を実施した。採取した皮膚組織は固定液中で保存した。結果を図12に示す。図12は図面に変わる写真である。
図12の上段は第1例目を示し、中段は第2例目を示し、下段は第3例目を示す。各々、左右3個づつの合計6ケ所に開放創の跡があり、左側の上から10−4重量%の場合、10−5重量%の場合、10−6重量%の場合、右側の上から10−7重量%の場合、10−8重量%の場合、0重量%の場合(コントロール)を示す。
【0060】
図12に示すごとく10−6重量%から10−8重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペト(すなわち10ng/gから100pg/gの濃度のジンセノサイドRb)を開放創に外用塗布しても明らかに、プロペトのみを外用塗布した開放創に比べて、創傷治癒が促進された。また、低濃度のジンセノサイドRbを外用投与した例では、創傷治癒部に明らかな発毛が観察された。従って、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを皮膚外用剤として使用するときは、外用剤における濃度は10−8重量%前後もしくはそれ以下に設定することが好ましいと考えられた。従って、発毛・育毛用組成物、ケミカルピーリング用組成物又は化粧品組成物として、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘を使用するときも、化粧品におけるその濃度は0.001重量%未満、好ましくは0.00001重量%(10−5%重量)以下、より好ましくは0.00000001重量%(10−8重量%)以下に設定することが必要である。
【0061】
前述の実験例において、プロペトのみを外用塗布した開放創(発赤部)の面積を分母にとり、10−4重量%から10−8重量%のジンセノサイドRbを外用塗布した開放創の面積を分子にとり、その比を算出した。結果を図13に示す。図13では、n=3で*印はP<0.05で有意差があることを示し、**印はP<0.01で有意差があることを示す。なお、検定はScheffeのpost hoc testによっている。
図13に示すごとく、これら低濃度のジンセノサイドRbを開放創に外用投与すると有意に創傷治癒が促進された。特に0.0000001重量%(10−7重量%)以下のジンセノサイドRbすなわち1ng/g以下もしくは1ng/ml以下のジンセノサイドRbの外用投与が開放創を有意に縮小せしめたという事実は、ジンセノサイドRbが患部組織の細胞外液濃度が1ng/ml以下のときに生体組織の新生・再生又は再構築を促進するということを強く支持している。
【0062】
次に、本発明者らはジンセノサイド類誘導体が、ジンセノサイドRbと同様に低濃度・低用量で組織再生・再構築を促進するかどうかをしらべた。このため、ジンセノサイド類誘導体の1つとしてジヒドロジンセノサイドRbを選び、同化合物の開放創治療効果を検討した。なお、ジヒドロジンセノサイドRbの詳細についてはPCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)に記載されている。吸入麻酔下でラット(n=4)の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを5ケ所に施し開放創を作成した。その後、各開放創に、ジヒドロジンセノサイドRbをそれぞれ0.0001重量%(10−4重量%)、0.00001重量%(10−5重量%)、0.000001重量%(10−6重量%)、0.0000001重量%(10−7重量%)、の濃度で、含有するプロペトを1日単回9日間外用塗布した。コントロールにはプロペトのみを外用塗布した。その後、麻酔により動物を安楽死させた直後に創傷部皮膚を採取し写真撮影を実施した。採取した皮膚組織は固定液中で保存した。結果を図14に示す。図14は図面に変わる写真である。図14は4例が示されており、上から第1例目、第2例目、第3例目、及び第4例目が示されている。各々、左側に2個、右側に3個づつの合計5ケ所に開放創の跡があり、左側の上から10−4重量%の場合、10−5重量%の場合、右側の上から10−6重量%の場合、10−7重量%の場合、0重量%の場合(コントロール)を示す
【0063】
図14に示すごとく0.00001重量%(10−5重量%)から0.0000001重量%(10−7重量%)のジヒドロジンセノサイドRbを含有するプロペト(すなわち100ng/gから1ng/gの濃度のジヒドロジンセノサイドRb)を開放創に外用塗布すると明らかに、プロペトのみを外用塗布した開放創に比べて、創傷治癒が促進された。また、低濃度のジヒドロジンセノサイドRbを外用投与した例では、創傷治癒部に明らかな発毛が観察された。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを皮膚外用剤として使用するときは、外用剤における濃度は0.0000001重量%(10−7重量%)前後もしくはそれ以下に設定することが好ましいと考えられた。従って、化粧品組成物として、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを使用するときも、化粧品又は健康薬におけるその濃度は0.001重量%未満、好ましくは0.00001重量%(10−5%重量)以下、より好ましくは0.0000001重量%(10−7重量%)以下に設定することが好ましい。
【0064】
前述の実験例において、プロペトのみを外用塗布した開放創の面積を分母にとり、0.0001重量%(10−4重量%)から0.0000001重量%(10−7重量%)のジヒドロジンセノサイドRbを外用塗布した開放創の面積を分子にとり、その比を算出した。結果を図15に示す。図15では、n=4で*印はP<0.05で有意差があることを示す。なお、検定はFsherのPLSDによっている。
図15に示すごとく、0.00001重量%(10−5重量%)以下の濃度のジヒドロジンセノサイドRbを開放創に外用投与すると皮膚組織の再生・再構築が促進され、有意に創傷治癒も促進された。特に0.00001重量%(10−5重量%)以下のジンセノサイドRbすなわち100ng/g以下もしくは100ng/ml以下のジヒドロジンセノサイドRbの外用投与が開放創を有意に縮小せしめたという事実は、ジンセノサイドRbが患部組織の細胞外液濃度が100ng/ml以下のときに生体組織の新生・再生又は再構築を促進するということを強く支持している。
【0065】
次に本発明者らは、ジヒドロジンセノサイドRbがジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有するということを確認するため、さらに培養神経細胞を用いて実験を実施した。
本発明者(阪中、田中)らは、培養神経細胞を一酸化窒素供与体であるニトロプルシッドナトリウム(SNP)に短時間暴露すると神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死が誘導されることを報告している(Toku K. et al., J. Neurosci. Res., 53, 415-425, 1998)。この培養実験系を用いて、本発明者らはすでにジンセノサイドRbが1ng/ml以下の細胞外液濃度で神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止することを見出している(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)。そこで、同様の実験系を用いてジヒドロジンセノサイドRbの神経細胞保護作用をしらべた。
【0066】
妊娠17日齢のラットの胎仔大脳皮質より、トリプシンEDTAを用いて神経細胞を分離し、ポリエルリジンコートした24ウェルプレートに蒔いた。10%牛胎仔血清を含むDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)中で16時間培養後、培養液をインシュリン、トランスフェリン等を含む神経細胞培養用無血清培地に置き換え、3ないし4日間培養した。培養3または4日目に、300μMの濃度でニトロプルシッドナトリウム(SNP)を添加し、10分間インキュベートした。その後、培養液をジヒドロジンセノサイドRb(0〜1ng/ml)及び牛血清アルブミンを含むEagle's minimum essential medium(EMEM)に置き換えた。SNP負荷後16時間目にLaemmliの電気泳動用サンプル緩衝液を用いて神経細胞を溶解し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロース膜に転写後、神経細胞特異タンパク質MAP2に対する抗体を用いてイムノブロッティングを行った。神経細胞の生存率を定量化するため、免疫染色されたMAP2のバンドをデンシトメトリーにより解析した。結果を図16及び図17に示す。図16は図面に変わる写真である。図17では、n=5で、*印はP<0.001で有意差があることを示し、**印はP<0.0001で有意差があることを示す。なお、検定はScheffeのpost hoc testによっている。
また、参考までにジヒドロジンセノサイドRbのNMRチャート(400MHz,CDOD)を図18に示す。
【0067】
図16はmicrotuble associated protein 2(MAP2)のイムノブロットの結果を示す図面に代わる写真である。左から1番目のレーンがコントロールの培養神経細胞であり、明らかなMAP2のバンド(すなわち神経細胞のマーカーのバンド)が認められた。SNP処理をすると、多くの神経細胞がアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死に陥るので、MAP2のバンドが左から2番目のレーンのごとく明らかに弱くなった。ジヒドロジンセノサイドRbを0.01fg/ml(レーン3)から1ng/ml(レーン7)の濃度で培養メディウムに添加しておくと、SNPによる神経細胞のアポトーシス又はアポトーシス様神経細胞死が明らかに抑止され、その結果神経細胞の生存の指標であるMAP2の強いバンドが観察された。
【0068】
前述のMAPのイムノブロット実験を5回くり返し、結果をデンシトメトリー解析したものが図17である。図17に示すごとく、0.01fg/ml〜1ng/mlのジヒドロジンセノサイドRbは有意に神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止することが判明した。すなわち、ジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbよりもやや広い濃度域で、細胞特には神経細胞に対して好ましい効果を発揮すると考えられる。従って、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、患部組織における細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは0.0001fg/ml〜100fg/mlのときに細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様細胞死を抑止することにより、優れた細胞保護作用を発揮すると考えられる。統計解析法はScheffeのpost hoc testである。*はP<0.001を、**はP<0.0001を示す。
【0069】
また、ジヒドロジンセノサイドRbを0.0001重量%(10−5重量%)含有する皮膚外用剤が優れた開放創治療効果を示すという前述の実験結果から判断すると、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbはやはり、患部組織における細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは0.0001fg/ml〜100fg/mlのときに優れた生体組織の再生・再構築を作用を発揮すると言える。
【0070】
以上の実験結果より、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に低濃度・低用量で優れた皮膚組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用、細胞保護作用を示すことが判明した。しかも、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において、低用量のジヒドロジンセノサイドRbの静脈内持続投与は、ジンセノサイドRbと同様に、優れた脳梗塞治療効果を発揮することも発明されている。従って、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、本発明および既出願特許(PCT/JP99/02550、PCT/JP99/06804、PCT/JP00/04102)で記述されたジンセノサイドRbの効果・効能・用途をすべて兼ね備えていると言える。すなわち、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、生体組織(植物組織及び動物組織)の新生・再生・成長・発根・発芽・分化もしくは再構築の促進作用を有するので(1)病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患(病態を含む)の予防、治療、処置のための医薬組成物又は獣医薬組成物、(2)皮膚あるいは粘膜の老化症状を予防、改善、軽減、処置するための化粧品組成物又は健康薬組成物、(3)農産物、野菜、植物、生花の栽培、育成、保存のための成長調整用組成物又は肥料添加物、(4)海産資源、水産資源、家畜、養殖用魚貝類を保護、育成するための成長調製用組成物又は飼料添加物、(5)細胞死をきたすあらゆる疾患の予防、処置又は治療用医薬組成物等として有用である。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、粘膜外用組成物、化粧品組成物、発毛・育毛用組成物、ケミカルピーリング用組成物、医薬組成物、健康薬組成物、成長調製用組成物、飼料添加物、肥料添加物、植物の発根・発芽・成長・分化促進剤として、ジンセノサイドRbと同様の方法で使用できる。ただし、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbよりも広い濃度域で細胞・組織に好ましい効果を発揮する可能性があるということを留意して、適切な投与用量を選択することが必要である。
【0071】
さらに、ジヒドロジンセノサイドRbが優れた生体組織再生・再構築促進作用を発揮するという本実験結果は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbをリード化合物として利用することにより優れた皮膚・粘膜疾患治療薬、組織再生・新生・発根・発芽促進剤等が新規に作成できることを証明したことになる。現時点では合成法が確立されていないジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbをリード化合物として利用することにより組織再生・再構築促進用医薬組成物を作成するという発想は、本発明者の知る限りこれまでにはなかったものである。
【0072】
さて、本発明においてジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが生体組織の再生・再構築を促進することが見出されたが、それに加えて本発明者(阪中)の既出願特許において低濃度のジンセノサイドRbがBcl−x発現増強作用を介して細胞保護作用も発揮することが発明されている(特願平10−365560、PCT/JP99/02550)。さらに、ジンセノサイドRbは脳血管の再生・再構築をも促進することが、本発明者ら(阪中、田中)の既出願特許(特願平11−340850、PCT/JP99/06804)において見出されている。一方、本発明者ら(阪中、田中)は、プロサポシン関連ペプチドがジンセノサイドRbと同様の低濃度域で、すなわち患部組織の細胞外液濃度が1ng/ml(5nM)以下、好ましくは10pg/ml(5pM)以下、より好ましくは100fg/ml(50fM)以下の時、Bcl−x発現増強作用を介して、細胞保護作用を示すことを発明している(特願平11−185155)。なお、プロサポシン関連ペプチドとは、特願平11−185155に記載されたごとく、特定の共通アミノ酸配列(consensus sequence)を有するプロサポシン由来あるいはサイトカイン由来のペプチドを指している。従って、ジンセノサイドRbとプロサポシン関連ペプチドは、化学構造は異なるものの、その効果・効能・用途が類似している。事実、中大脳動脈皮質枝永久閉塞ラット(すなわち脳梗塞ラット)の脳室内にジンセノサイドRbもしくはプロサポシン関連ペプチドを脳血管閉塞後に注入すると同様の脳梗塞縮小効果ならびに場所学習障害改善効果が認められることを本発明者ら(阪中、田中)は発表している(Igase, K. et al., J. Cereb. Blood Flow Metab., 19, 298-306, 1999; Zhang, B. et al., J. Stroke Cerebrovasc. Dis., 7, 1-9, 1998)。このことから判断すると、プロサポシン関連ペプチドは、ジンセノサイドRbと同様に脳血管組織の再生・再構築をも促進すると考えられる。すなわち、プロサポシン関連ペプチドは、ジンセノサイドRbと同様の低濃度域で、脳血管の内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、内膜、中膜、外膜、結合組織、コラーゲン線維、弾性線維、細網線維もしくは細胞外基質の再生・再構築を促進することが容易に推測される。このように、ジンセノサイドRbとプロサポシン関連ペプチドの効果・効能・用途が酷似しているという事実に基づけばプロサポシン関連ペプチドもジンセノサイドRbと同様にあらゆる生体組織の再生・再構築を促進すると考えられる。
また、前記の特願平11−185155においてエリスロポエチンを始めとするサイトカイン類も、プロサポシン関連ペプチドやジンセノサイドRbと同様の低モル濃度域で、Bcl−x発現を増強せしめ細胞保護作用を示すことが発明されている。しかも、エリスロポエチンは、プロサポシン関連ペプチドやジンセノサイドRbと同様に、中大脳動脈皮質枝永久閉塞ラット(脳梗塞ラット)の脳室内に投与されると、やはり脳梗塞巣縮小効果ならびに場所学習障害改善作用を示すことを本発明者(阪中)は見出している(Sadamoto, Y. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 253, 26-32, 1998)。従って、低モル濃度のエリスロポエチンも脳血管を始めとする生体組織の再生・再構築を促進すると考えられる。また、エリスロポエチンと同様にコロニー刺激因子の1つとしてあげられるインターロイキン3(IL−3)も脳室内投与により、神経細胞を保護しBcl−xの発現を促進することを本発明者ら(阪中、田中)は見出している(Wen, T. -C. et al., J. Exp. Med., 188, 635-649, 1998)ので、同様にIL-3も低いモル濃度で組織の再生・再構築を促進すると推察できる。以上のごとく、脳室内投与により神経細胞保護作用を示す非ペプチド因子(たとえばジンセノサイドRb、イソカルバサイクリン類、プロスタグランディン類、イソカルバサイクリン誘導体)もしくはサイトカイン類や成長因子類(たとえばエリスロポエチン、インターロイキン3、プロサポシン関連ペプチド)はすべて低モル濃度域であらゆる生体組織の再生・再構築を促進すると推論できる。言い換えれば、脳虚血モデル動物において脳室内注入することにより脳細胞又は神経細胞保護作用を示す化合物(たとえば、ジンセノサイド類、イソカルバサイクリン類、栄養因子類、プロスタグランディン類、ステロイド類、成長因子類、増殖因子類、プロサポシン関連ペプチド、サイトカイン類、ケモカイン類、ペプチド性因子類、非ペプチド性化合物もしくはそれらの代謝産物等)はすべて、前述のごとく、低モル濃度で組織再生・再構築促進作用を示すと考えられる。なお、脳室内投与により脳細胞又は神経細胞保護作用を示す具体的な化合物もしくは生理活性物質として、塩基性線維芽細胞成長因子 (bFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インターロイキン6、イソカルバサイクリン類の一種であるTEI−7165、エストラジオール、グルタミン酸拮抗薬、表皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、グルタミン酸受容体拮抗薬、15R−イソカルバサイクリン誘導体、プロスタグランディン類、15−デオキシ−イソカルバサイクリン誘導体等があげられるが、これらに限定されるわけではない。前述のイソカルバサイクリン類、プロスタグランディン類、イソカルバサイクリン誘導体の詳細については、特開平11−222436、特開平11−228418、特開平11−228417、昭59−210044、平4−26654、昭61−197518、平2−167227、特開平8−20540、特開平8−20541、特開平8−40909の公開特許公報等に明記されており、TEI−7165の虚血脳保護作用に関する論文は、本発明者らの一人(阪中)により公表されている(Matsuda, S. et al., Brain Res., 769, 321-328, 1997)。すなわち、前記の化合物はすべて、患部組織における細胞外液濃度が1ng/ml以下もしくは0.5nM以下、好ましくは10pg/ml以下もしくは5pM以下、より好ましくは0.01〜100fg/mlもしくは0.005〜50fM又は1〜10000fg/mlもしくは0.5〜5000fMのときに組織再生・再構築促進作用を介して、病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・治療もしくは処置に役立つと考えられる。
もちろん、前記の化合物はすべて、本発明の明細書で記載されたジンセノサイド類(ジンセノサイドRbを含む)やジヒドロジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有する。すなわち、再生、新生、発根、発芽、成長、分化又は再構築を伴うかもしくはそれらが遅延する生体組織の疾患、病態、症状又は状態を予防、処置、改善もしくは治療するための組成物、医薬組成物、健康薬組成物、化粧品組成物、肥料添加物、飼料添加物又は獣医薬組成物として、前記化合物もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩がジンセノサイドRbと同様に有用とされる。たとえば、このような前記化合物の適応が期待される疾患、病態、症状又は状態として、PCT/JP00/04102に記載された細胞死をきたすすべての疾患や病態、本明細書で記載された皮膚や粘膜の老化症状、ポトスの挿し木のように水栽培中の植物の発根、発芽、成長の状態、あるいは養殖魚介類の成長の状態、等があげられる。特に、創傷、熱傷、褥創、皮膚潰瘍等の皮膚疾患の予防、治療又は処置のために、前記化合物(医薬組成物)を皮膚外用剤として使用するときは、患部組織における当該化合物の細胞外液濃度を比較的容易に調整できるので、ジンセノサイドRbもしくはジヒドロジンセノサイドRbと同様に低濃度(0.001重量%以下又は未満、好ましくは0.00001重量%以下、より好ましくは0.0000001重量%以下、さらに好ましくは0.000000001重量%以下)の前記化合物を皮膚外用剤に混入して患部組織に外用塗布もしくは噴霧すれば優れた効果が得られる。
【0073】
次に本発明をさらに詳細に説明する。
以上で説明してきたように、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩が、好ましくはこれらの低濃度、低用量での使用が、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療に極めて優れた作用を有することを見出したことを基本とするものである。そして、本発明のジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩は、好ましくはこれらの低濃度、低用量での使用により、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患を単に治癒させるということだけでなく、病理組織学的変化をきた生体組織を再生又は再構築する、例えば、前記で具体的に例示してきたように皮膚の損傷の場合には、単に損傷箇所を生体組織外と遮断して内部組織を保護だけの回復ではなく、損傷箇所の各組織を再生し、再生された各組織がもとの状態になるように再構築され、損傷前の生理的な状況を再生させるということが本発明の大きな特徴である。また、本発明のジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくはこれらの低濃度、低用量での使用が生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の治癒を促進させることを見出したことも、本発明の特徴のひとつである。
他の本発明の特徴は、低濃度、低用量で、好ましくは極めて低濃度、低用量でジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を使用することにより、従来知られていたジンセノサイド類の作用とは全く異なった新規な作用を発現することを見出したことである。
さらに、本発明の他の特徴は、低濃度、低用量で、好ましくは極めて低濃度、低用量でジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、静脈内投与、粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与などの非経口投与することを特徴とするものである。
【0074】
したがって、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、好ましく低濃度、低用量で含有してなる、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防・処置又は治療用の新規な医薬組成物又は獣医薬組成物を提供するものである。
より詳細には、本発明は、生体組織の損傷や欠損などによる病理組織学的変化をきたす疾患を、当該病理組織学的に変化した組織を再生させ、再構築させることにより処置又は治療し、また、そのような変化を起こすおそれのある生体組織を予防することができ、そしてこれらの疾患の治癒を促進させることのできる新規な医薬組成物又は獣医薬組成物を提供するものである。
【0075】
また、本発明は、前記した本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の有効量を、生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患を有する患者に投与することからなる、これらの疾患の予防・処置又は治療する方法を提供するものである。
より詳細には、本発明は、前記した本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の有効量を、生体組織の損傷や欠損などによる病理組織学的変化をきたす疾患を有する患者に投与することからなる、当該病理組織学的に変化した組織を再生させ、再構築させることにより処置又は治療し、また、そのような変化を起こすおそれのある生体組織を予防し、そしてこれらの疾患の治癒を促進させる新規な予防方法・処置方法又は治療方法を提供するものである。
【0076】
さらに本発明は、前記した本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物を製造するためのジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
【0077】
本発明における器質的疾患としては、生体組織の正常な状態が破壊された状態であればよく、例えば、皮膚組織の疾患としては、皮膚組織の創傷、熱傷、放射線障害、凍傷、紫外線障害、電撃傷、外傷、皮膚潰瘍、褥創、外科的手術後の各種の創傷、電撃症、外傷、接触性皮膚炎、水疱性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、うつ帯性皮膚炎、乾皮症、糖尿病性皮膚潰瘍、自家感作性皮膚炎、紅皮症、剥脱性皮膚炎、表皮水疱症、光線過敏症、慢性色素性紫斑(シャンバーグ病)、ストロフルス、花粉症、虫刺され、痒疹、多形滲出性紅斑、環状紅斑、結節性紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、乾癬、扁平苔癬、魚鱗癬、毛孔性苔癬、黄色腫症、皮膚アミロイドーシス、単純疱疹、ウイルス性いぼ、伝染性軟属腫、膿皮症、皮膚結核、皮膚非定型抗酸菌症、白癬、皮膚・口腔カンジダ症、疥癬、毛虱症、梅毒、ケロイド、肥厚性瘢痕、血管腫、リンパ腫、母斑、尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、黒皮症、汗疱、あせも、にきび、酒査皮(しゅさ)、酒査皮(しゅさ)様皮膚炎、口腔粘膜損傷、口内炎、口囲皮膚炎、皮膚の老化症状(例えば、皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、再生不良、色素沈着、乾燥等)、脱毛症、爪囲炎、嵌入爪等が挙げられる。
【0078】
本発明の組成物により再生又は再構築を促進される皮膚組織又は皮膚細胞としては、表皮細胞、真皮、真皮の乳頭、皮下組織、結合組織、毛乳頭、毛包、立毛筋、皮脂腺、汗腺、末梢神経、血管、表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、メラノサイト、幹細胞、間葉系細胞、毛包の細胞、立毛筋の細胞、汗腺の細胞、皮脂腺の細胞、線維芽細胞などが挙げられる。また、粘膜組織としては、口腔粘膜などの粘膜組織の損傷、咬傷、創傷、熱傷、外傷又は欠損による疾患などの粘膜組織の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患や病態が挙げられ、例えば、う蝕、歯髄炎、辺縁性歯周組織炎、口内炎、舌炎、再発性アフタ、口腔内アフタ、口臭、口腔異常感症、歯性感染症、口腔粘膜咬傷、舌の咬傷、口腔粘膜熱傷、舌の熱傷、舌の損傷、口腔粘膜損傷、歯肉炎、歯槽膿漏、カタール性口内炎、壊疽性口内炎、ワンサン口内炎、アフタ性口内炎、急性疱疹性歯肉口内炎、ヘルパンギーナ、帯状疱疹、口腔粘膜びらん、口腔粘膜潰瘍、褥瘡性潰瘍、放射線性口内炎、天疱瘡、口腔カンジダ症、扁平苔癬、Riga-Fede病、平滑舌、赤平舌、粘膜潰瘍、粘膜びらん、白内障、眼球結膜のびらん、角膜のびらん、消化管粘膜のびらん、シェーグレン症候群、粘膜特に口腔粘膜の老化症状(例えば、萎縮、粘膜剥離、ひびわれ、上皮剥離、再生不良、乾燥)などが挙げられる。なお、広義には熱傷、褥創、皮膚潰瘍、凍傷、電撃傷なども創傷の中に含まれることを付記しておく。ただし、これらの疾患の治療に適する薬剤もしくは医薬組成物はおのずと異なる。たとえば褥創やコンタクトレンズ等による角膜の損傷では、緩徐に皮膚や角膜の上皮細胞がアポトーシス様細胞死もしくはアポトーシスに陥るので、いわゆる細胞保護剤又は抗アポトーシス剤がこれらの疾患に効果・効能を発揮することが期待される。しかし、創傷(たとえば切開創、開放創、熱傷、咬傷等)により瞬時にして生体組織を構成する細胞が脱落もしくは欠損したときには、原則として細胞保護剤よりも組織再生・再構築促進剤を使用するべきと考えられる。もっとも、創傷部周辺でアポトーシス様細胞死もしくはアポトーシスが頻繁に起こる場合は、細胞保護剤や抗アポトーシス剤が創傷病変の伸展・悪化を防ぐのに役立つことがあるかもしれない。
【0079】
本発明における器質的疾患としては、前記した皮膚組織や粘膜組織に限定されるものではなく、他のあらゆる組織、例えば、中枢神経組織、肝臓、腎臓、脾臓、造血組織、消化管、肺、膵臓、角膜、内分泌腺、外分泌腺、唾液腺、性腺、膀胱などの病理組織学的変化をきたす器質的疾患が包含される。これらの、疾患としては、例えば、肝炎、肝切除ならびに肝虚血再灌流後の肝組織の疾患、神経外傷(頭部外傷・脊髄損傷)後の中枢神経の疾患、切断指趾の疾患、腎炎、急性尿細管壊死後の腎組織の疾患、脾臓の疾患、膵臓の疾患、肺切除後の臓器の疾患、移植骨髄の再生・定着、鼓膜損傷、白内障、角膜損傷、角膜びらん、角膜潰瘍、爪の損傷、消化性潰瘍、外科手術(胸部や腹部外科手術、整形外科手術、形成外科手術、美容外科手術、産婦人科手術、泌尿器科手術、眼科手術、頭頸部外科手術、歯科口腔外科手術、耳鼻咽喉科手術、獣医学手術、脳神経外科手術等)後の損傷や傷害などが挙げられる。
【0080】
さらに、皮膚の開放創(欠損)においては、皮膚欠損部に分布していた末梢神経や血管も破綻、切断されるが、明らかにこの末梢神経や血管も、ジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは皮膚外用投与により速やかにかつもとの健常な状態に近いところまで再生・再構築・回復・修復すると思われる。従って、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは神経組織や血管組織の再生や再構築を促進するための医薬組成物としても利用可能である。すなわち、糖尿病性神経症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離、脊椎すべり症、頚椎症、脊椎症性脊髄症、脊椎症性神経根症、後縦靱帯骨化症、顔面神経麻痺、脊髄損傷、末梢神経障害、圧迫性神経障害、頭部外傷、神経外傷、神経痛、神経変性疾患、末梢神経麻痺、脳卒中のいずれかの病態において、ひとたび損傷を受けた神経組織の再生・再構築を促すことによりジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、局所投与、点鼻投与、挿肛投与等が効果・効能を発揮するものと思われる。一方、血管の再生・再構築促進作用を介して、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは血流障害を主症状とする疾病(大動脈炎症候群、膠原病、末梢動脈閉塞症、閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎、糖尿病性皮膚潰瘍、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、網膜中心動静脈閉塞症、レイノー病、レイノー症候群、心筋梗塞、褥創、痔疾、肛門周囲炎、骨壊死、骨端症、末梢循環不全、狭心症、肝・腎・心虚血再灌流障害、脳血管障害、骨萎縮、変形治癒骨折、遷延治癒骨折等)に効果・効能を示すと思われる。以上記述した、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの効果、効能、用途は、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキス又は薬用人蔘にもあてはまる。
【0081】
本発明における器質的疾患としては、前述の疾病や外傷に加えて、あらゆる臓器・組織の病理組織学的変化をきたす疾患や病態が包含され、より具体的には、成書(今日の治療指針;監修、日野原重明、阿部正和、医学書院;1995;今日の治療指針;総編集、多賀須幸男、尾形悦郎、医学書院;2000;或いは、今日の小児治療指針第12版;編集、矢田純一、柳澤正義、山口規容子、大関武彦、医学書院;2000)に記載されたすべての疾病や病態が考えられる。もちろん、将来原因不明の器質的疾患が新規に出現しても、もしその疾患が生体組織の病理組織学的変化をきたすものであれば、これらの疾患も本発明の器質的疾患に包含されるものである。
【0082】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の態様を、さらに詳細に説明すれば次のようになる。なお、本発明は当然のことながら獣医薬組成物にも関するが、以下の記述では医薬組成物という表現のみを用いて、獣医薬組成物という表現を省略することもあることを付記しておく。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、皮膚組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患を、表皮、真皮、真皮の乳頭、皮下組織、結合組織、毛乳頭、毛包、皮脂腺、立毛筋、汗腺、末梢神経ならびに血管の再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用により予防・処置または治療するための組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、皮膚組織の再生・再構築を促進させるための組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、粘膜組織の損傷、咬傷、創傷、熱傷、外傷もしくは欠損による疾患や口腔粘膜などの粘膜組織の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患を、損傷箇所の再生・再構築を促進させ、治癒促進作用により予防・処置または治療するための組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、病理組織学的変化をきたした生体組織の細胞又は組織の再生及び/又は再構築を促進させる組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、病理組織学的変化をきたした生体組織又はその細胞の再生及び/又は再構築により、器質的疾患の治癒を促進する組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、皮膚組織又は粘膜組織の老化症状を予防、改善、処置するための医薬組成物若しくは獣医薬組成物又は皮膚外用組成物若しくは粘膜外用組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
【0083】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、粘膜組織特には口腔粘膜組織の疾患を、上皮、粘膜固有層、唾液腺、粘液腺、混合腺、結合組織、筋組織、血管、末梢神経の再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用により予防・処置または治療するための組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
さらに、本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、前記口腔粘膜構成組織ならびに粘膜組織の上皮細胞、腺細胞、筋上皮細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、細胞外基質、コラーゲン線維、弾性線維、細網線維の再生又は再構築を促進させるための組成物、当該組成物を用いた予防・処置または治療方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
【0084】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物における有効成分である、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩としては、前記したジンセノサイドやジンセノサイドを含有する天然物又はその抽出物、及び化学修飾などにより誘導されるジンセノサイド誘導体などが挙げられる。
ジンセノサイドとしては、天然のジンセノサイドRbが好ましい。
【0085】
ジンセノサイドRbは前記した構造式で示されるものであり、ジンセノサイドRbは、例えば、柴田ら(Shibata S. et al., Economic and medicinal plant research, World Scientific, Philadelphia, pp 217-284, 1985)の方法に準じて分離・精製することができる。このような方法により精製されたものはその純度が98%以上であることが、薄層クロマトグラフィーならびに核磁気共鳴スペクトルにより確認されている(Kawashima Y. and Samukawa K., J. Med. Pharmacol. Soc. Wakan-Yaku, 3, 235-236, 1986)。
他のジンセノサイドも公知の方法に準じて入手することができる。
【0086】
本発明のジンセノサイド類として天然物又はその抽出物などを用いることができる。このような天然物又は抽出物などとしては、ジンセノサイド類を含有する任意の天然植物、例えば、オタネニンジン、アメリカ人蔘、三七人蔘、チクセツ人蔘、ヒマラヤ人蔘、伝七人蔘などを用いることができる。これらの天然物は、それをそのまま使用してもよいが、抽出処理、濃縮処理、精製処理、製剤化処理などがなされた抽出物、エキス、液剤、錠剤、分画、精製物などを使用することができる。例えば、薬用人蔘の粗サポニン分画は、紅蔘をメタノール抽出し、そのエキスを水に懸濁して、エーテルで洗浄後、水飽和ブタノールで振出すという通常の方法により得たものであり、収率は約8%である。ちなみに薬用人蔘エキスの収率は35〜45%程度である。なお、後述の実施例で用いたジンセノサイドRbならびに粗サポニン分画は、本発明者の一人(阪中)の既発表論文(Wen, T.-C. et al., Acta Neuropathol., 91, 15-22, 1996)において用いたもの(凍結乾燥結晶)と同じものである。ただし、粗サポニン分画抽出に用いられる天然物としては紅蔘(オタネニンジン)のみならず、チクセツニンジン、トチバニンジン、ヒマラヤニンジン、サンシチニンジン、アメリカニンジン、伝七人蔘等任意のものが使用できる。
【0087】
本発明の組成物の有効成分であるジンセノサイド類は、前記した天然のジンセノサイドを前述した方法により化学修飾したジンセノサイド類誘導体であってもよい。このようなジンセノサイド類誘導体としては後述するジヒドロジンセノサイドRbなどが挙げられる。ジヒドロジンセノサイドRbは、天然のジンセノサイドRbを還元して製造することができる。
【0088】
本発明のジンセノサイド類は遊離のものを使用することもできるが、それを適当な塩と使用することもできる。また、それらの水和物のような溶媒和物として使用することもできる。
また、これらのジンセノサイド類の化学構造の一部を修飾してプロドラッグを作成し、任意の投与経路、投与方法を選択することができる。たとえば、ジンセノサイドRbの水酸基をエステル化してプロドラッグを作成した後に投与し、内因性エステラーゼで加水分解せしめることによりジンセノサイドRbを生体組織内で作用させることも可能である。
【0089】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、低濃度で含有してなるものが好ましい。
本発明の実験結果によれば、ジンセノサイドRbを皮膚組織再生・再構築促進剤として使用するときの静脈内投与量は、同化合物を脳細胞又は神経細胞保護剤として使用するときの静脈内投与量と類似している(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)。このことから判断すると、本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが皮膚組織もしくは口腔粘膜組織の再生・再構築促進剤として作用する濃度は、特願平10−365560号、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)で記述されたものと同様に低濃度が好ましく、より具体的には、病変部の細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となる濃度である。本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与用製剤もしくは皮膚外用剤として使用する場合にも、患者の患部組織における細胞外液濃度が前記の濃度になるように製剤を調整することが好ましい。本発明の医薬組成物や製剤は、患部組織の細胞外液濃度が1〜100fg/ml程度もしくはそれ以下の濃度(たとえば0.01fg/ml)でも充分な効果が得られる。すなわち、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは患部組織における細胞外液濃度が0.01〜100fg/mlもしくは1〜10000fg/mlのときに最も優れた効果・効能を発揮すると考えられる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを化粧品や健康薬の組成物として使用することにより、皮膚や粘膜の老化症状の予防、処置、改善を目指すときも、皮膚局所又は粘膜局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく低濃度になるよう化粧品又は健康薬へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの配合量を調整する必要がある。
【0090】
後述するように、ジンセノサイド類は米国特許5,663,160号又はWO99/07338号に記載された他の化粧品組成物とともに化粧品に混合することができるが、本発明の組成物は、これらの米国特許5,663,160号又はWO99/07338号で記載された濃度よりも低い濃度で使用することを特徴とするものである。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbはその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物とともにあらゆる化粧品又は健康薬の中に混入することができるが、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbとともに使用するその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物についても従来の文献や特許明細書で記載された濃度より低い濃度で使用することが好ましい。
【0091】
前記してきた実施例からも明らかなように、皮膚の切開創、開放創、欠損を受けたラット(体重約300g)にジンセノサイドRbを1日あたり12〜60μgの用量で静脈内投与すると、皮膚組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用、を介して、歴史上かつてないほど優れた治療効果が認められた。また、0.0001重量%、0.00001重量%、0.000001重量%、0.0000001重量%もしくは0.00000001重量%のジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤をラットの開放創に塗布することにより、創傷治癒ならびに皮膚組織再生・再構築が明らかに促進され、開放創部の面積が対照群の1/2〜1/4程度に縮小した。また0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有する粘膜外用剤はヒト口腔粘膜の咬傷にも著効を示した。しかし、0.01重量%の濃度のジンセノサイドRbのラット開放創治療効果は軽微であったので、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは0.001重量%以下又は未満の濃度で皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤に配合することが好ましい。
これらの実験結果は、本発明のジンセノサイド類は、低濃度で使用することが有効であることを示している。
【0092】
前述のような実験結果に基づけば、皮膚組織又は粘膜組織の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾病もしくは皮膚又は粘膜の病理組織学的変化をきたす疾病を患ったヒトもしくは脊椎動物(体重60kgと仮定)の静脈内への至適薬物(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb)投与量は、体重あたりで計算すると1日あたり2.4mgから12mgということになる。従って本発明の医薬組成物をヒト皮膚疾患又は粘膜疾患の予防、治療、処置に使用する場合、1日あたりの全身投与量としては、患者の個人差や病状にもよるが、0.01mg以上、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは10mg以上である。しかし、一般に動物の体重が増加するにつれて体重あたりの必要薬物投与量が減少することから、ヒトでは、この用量の10分の1以下でも充分効果・効能を示す可能性がある。本発明の医薬組成物は副作用が少なく、前記皮膚疾患の予防、処置、治療における投与量の上限としてはかなり多量にすることもできるが、1日あたり1g以下、好ましくは0.1g以下である。また、皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤10g中に含有されるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの量も0.1mg以下、好ましくは0.001mg以下、より好ましくは0.0001mg以下であると言える。すなわち、皮膚疾患や粘膜疾患を有するヒトへの1日あたりのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの皮膚又は粘膜外用投与量は病状や個人差にもよるが通常0.1mg以下、好ましくは0.001mg以下、より好ましくは0.0001mg以下と考えられる。
【0093】
本発明のジンセノサイド類として、天然物又はその抽出物を使用する場合には、一般に、薬用人蔘粗サポニン分画の患部組織における至適細胞外液濃度は、ジンセノサイドRbの至適細胞外液濃度の14.5倍と考えられることから、前記してきた量の14.5倍を使用すればよい。
【0094】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、静脈内投与、粘膜投与や皮膚外用投与などの非経口投与形態のものが好ましい。より詳細には、本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩を低濃度で含有してなる非経口投与製剤、粘膜外用塗布・外用噴霧製剤もしくは皮膚外用塗布・外用噴霧製品が好ましい。
したがって、本発明は、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を好ましくは低濃度で含有してなる前記疾患の予防・処置又は治療用の非経口投与製剤、好ましくは静脈内もしくは血管内投与用製剤、粘膜外用剤又は皮膚外用剤を提供する。
【0095】
これらの本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物は、静脈内投与用製剤、粘膜外用剤、皮膚外用剤もしくは皮膚外用塗布・外用噴霧が好ましいが、病変部局所外用剤、病変部局所注射剤、経口投与製剤、点鼻薬、点耳薬、点眼薬、眼軟膏、坐薬、皮下注射薬、皮内注射薬、筋肉注射薬、吸入薬、舌下薬、人工唾液、関節内投与、経皮吸収薬等、任意の投与経路が選択できる。また徐放剤として使用してもよい。
また、本発明は前記の静脈内投与用製剤、粘膜外用剤、皮膚外用剤、健康薬又は化粧品などからなる皮膚疾患もしくは粘膜疾患の長期にわたる治療・予防、もしくは処置剤、皮膚組織もしくは粘膜の再生・再構築促進剤、創傷治癒促進剤又は皮膚もしくは粘膜の老化症状抑止用化粧品又は健康薬を提供する。
【0096】
本発明の静脈内投与用製剤としては、血管内、好ましくは静脈内に直接適用できるものであればよく、生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液、リポソーム、脂肪乳剤等に溶解した後に、単回静脈内注入用製剤もしくは静脈内持続投与用製剤として使用できる。また、点滴用組成物などの静脈内投与製剤に添加して使用できる剤型であってもよい。
本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防、処置、治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤は、任意の基剤たとえば水溶性基剤、乳剤性基剤、配合剤もしくは脂溶性基剤(軟膏基剤)にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを好ましくは低濃度で混入することにより作成できる。また、アフタッチのように粘膜に密着する製剤に低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入してもよい。具体的には水溶性基剤(クリーム等)、乳剤性基剤、配合剤もしくは軟膏基剤(脂溶性基剤)たとえば眼科用白色ワセリン(プロペト)100gあたりに、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを100mg(0.1重量%)以下又は未満、好ましくは10mg(0.01重量%)以下又は未満、より好ましくは1mg(0.001重量%)以下又は未満、1fg(10−15重量%)以上となるように混入した後に、前記疾患の予防、処置もしくは治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤として使用できる。
【0097】
もちろん、前述の皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤の中にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの他に任意の医薬組成物(たとえば、ブドウ糖、抗生物質、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンD、ビタミンD誘導体、ビタミン類、抗ウィルス剤、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、薬用人蔘成分、天然物成分等)を混入してもよい。なお、ジンセノサイドRbと他の医薬組成物又は皮膚・粘膜外用組成物を併用するときは、ジンセノサイドRbの濃度の上限を0.001重量%未満から0.00002重量%未満に設定することが好ましい。特にアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎もしくは花粉症等のアレルギー性の皮膚粘膜疾患に対しては、常用量以下もしくは従来の特許文書で開示された用量未満のステロイド(剤)、抗アレルギー用医薬組成物(剤)又は免疫抑制用医薬組成物(剤)等を、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤や粘膜外用剤に混入すると著効が得られる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤とその他任意の医薬組成物を含有する皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤とを併用してもよい。前記疾患の予防、処置、治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度の上限は、10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0098】
本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、皮膚の切開創、開放創もしくは欠損発症後に1週間程度静脈内へ持続投与することにより又は単回もしくは連日皮膚局所へ外用塗布・噴霧することにより、脱落した皮膚組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めることができる。また、本発明のジンセノサイドRbは口腔粘膜の咬傷後に5日前後、創傷部位に1日1〜10回外用塗布することにより脱落した口腔粘膜組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めることができる。
【0099】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の投与方法としては、血管内投与特に静脈内投与が好ましく、前記した投与量を断続的又は連続的に投与することができる。本発明の有効成分であるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbはサポニンの1種であり、通常の方法により製剤化することができる。例えば、本発明の水溶性医薬組成物は、凍結乾燥結晶を生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液等に溶解することにより静脈内投与することができる。もちろん、前記のごとく溶解後に点滴用組成物などの静脈内投与製剤に添加して使用してもよい。さらに、脂肪乳剤、リポソーム製剤、徐放剤としても使用可能である。静脈内投与するときの製剤の濃度としてはあまり高濃度でない限り任意の濃度に調整することができ、例えば0.001〜100mg/ml、好ましくは0.01〜10mg/ml、より好ましくは0.1〜1mg/ml程度にして投与することができる。前述の疾患の予防、処置もしくは治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤としてジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを利用するときは、既述のごとく任意の基剤たとえば水溶性基剤、乳剤性基剤、軟膏基剤、配合剤もしくは脂溶性基剤に、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.001重量%以下又は未満、10−15重量%以上となるように混入すればよい。ただし、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤を長期にわたって投与するとき、あるいは皮膚の創傷の程度が軽症である患者に投与するときは、その濃度を10−20重量%まで下げてもよい。前記皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度の上限は、10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤は、皮膚局所に塗布できる形であってもよいし、噴霧できる形であってもよい。
【0100】
さらに、本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの薬剤としての特徴で、見逃せないのが、これと言った副作用を示さない点である。事実、腹腔内投与されたジンセノサイドRbのLD50は1110mg/kgであることが報告されているので(Kaku T. et al., Arzneim. Forsch/Drug Res., 25, 539-547, 1975)、後述の実施例で示すごとく体重300g程度のラットに1日あたり12〜60μgを静脈内持続投与して皮膚組織の切開創、開放創、欠損の治療を目指す限りにおいては、ジンセノサイドRbは極めて安全な医薬組成物であると考えられる。また、皮膚外用剤や粘膜外用剤として使用するジンセノサイドRbの投与量は、静脈内投与量に比べてはるかに少ない。もちろん、本発明者らが、今回の各実験例において、本発明のジンセノサイドRbを投与した動物を注意深く観察した範囲内でも、副作用は検出されなかった。
【0101】
本発明の医薬組成物は、外用剤として皮膚組織や粘膜組織の病理組織学的変化をきたした器質的疾患の予防、改善、処置、治療に有効であることから、本発明の医薬組成物を皮膚組織や粘膜組織に適用する化粧品、ケミカルピーリング剤、発毛育毛剤などの皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物として適用することができる。例えば、老化に伴う皮膚の各種老化症状(例えば、皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、再生不良、色素沈着、乾燥等)や脱毛症などの予防、改善、処置のために外用剤として適用することができる。
また、前述した実験例において示したように、皮膚の開放創(欠損)においては、当然のことながら毛包も速やかに脱落するが、低用量のジンセノサイドRbの皮膚外用投与により、明らかに開放創部の発毛・育毛が促進されることが観察された。このことから判断すると、低用量のジンセノサイドRbの皮膚外用投与は、開放創(皮膚の欠損)作成後、同部の発毛・育毛を促進することにより、創傷部をもとの健常な組織により近い状態にまで再生・再構築せしめると言える。すなわち、低用量のジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類は発毛・育毛促進剤もしくは脱毛進行予防剤としても適用できることが示された。
【0102】
前述のごとく、ジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、皮膚の表皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、血管、立毛筋、皮脂腺、汗腺、毛乳頭、毛包等の再生・再構築を促進するという事実は、当然のことながらジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、表皮細胞、表皮角化細胞、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、角質細胞、真皮ならびに皮下組織の線維芽細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、皮脂腺の細胞、汗腺の細胞、立毛筋の細胞、毛包の細胞、間葉系細胞、皮膚の幹細胞、膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞間基質等の再生・再構築をも促すことを明らかにしている。すなわち、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは皮膚組織を構成するあらゆる細胞やその分泌成分の再生・再構築を促進すると考えられる。一方、加齢に伴う皮膚の諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、脱毛、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)は、皮膚組織を構成する前記細胞が、紫外線障害や生体の老化に伴い徐々に死滅もしくは機能不全に陥り、もとの健常な状態に再生できなくなるために、生じるものと考えられる。たとえば、加齢や老化に伴う皮膚のかさつき、乾燥、脱毛、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、皮脂欠乏、かゆみなどは皮膚の汗腺、毛包、ならびに脂腺の細胞が、機能障害に陥るか死滅したままで再生しないために、生じると考えられる。
【0103】
また、日焼け、色素沈着、しみ、そばかす等は、日光や紫外線に照射された皮膚の細胞が死に至っても、元通りに細胞が再生しなくなるために起こると考えられる。さらに加齢に伴う、皮膚のしわ、たるみ、萎縮などは、真皮や皮下組織の線維芽細胞もしくは間葉系細胞が、加齢とともに機能不全に陥るか数が減少したために、真皮や皮下組織で充分な膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞外基質を保持できなくなった結果、生じると言える。一方、メラノサイトの機能障害により白髪が増加するものと考えられる。さらにランゲルハンス細胞の機能障害により皮膚の免疫機能が低下し、易感染性が生じると考えられる。本発明の低濃度・低用量のジンセノサイドRbは、皮膚組織を構成するすべての細胞やその分泌成分の再生・再構築を促進することができるので、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbを化粧品の組成物として利用すれば、老化に伴う皮膚の構成細胞の減少(細胞死)、機能障害に帰因する諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、軽減もしくは改善することができる。さらに、ジンセノサイドRbは、本発明者の一人(阪中)の既出願特許(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)において、細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現を上昇せしめ、表皮細胞、表皮角化細胞すなわちケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、角質細胞、皮脂腺の細胞、毛包の細胞、汗腺の細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、立毛筋の細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞等を含めた皮膚の細胞を保護すると考えられるので、やはり加齢や老化に伴う皮膚の構成細胞の死や機能障害を未然に防ぐことができると考えられる。
【0104】
このように、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、皮膚を構成するあらゆる細胞を保護するのみならず、ひとたび皮膚の細胞が死に至るか機能不全に陥っても、それらの細胞を再生せしめることによって、加齢に伴う皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、改善もしくは軽減すると考えられる。すなわち、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは細胞保護作用と組織・細胞再生促進作用という2つの強力な作用を介して、加齢に伴う皮膚の老化症状を改善、予防もしくは軽減すると言える。しかも、本発明の実験結果や上記の既出願特許(特願平10−365560、PCT/JP99/02550)から明らかなように、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは患部組織や皮膚組織における細胞外液濃度が、1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下のときに、細胞保護作用ならびに組織・細胞再生促進作用を発揮する。もちろん、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、粘膜の老化症状(萎縮、上皮剥離、粘膜剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)を予防、改善もしくは軽減するための健康薬組成物又は粘膜外用組成物としても有用である。
【0105】
したがって、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、低濃度、低容量で含有する、好ましくは組成物中の0.001重量%未満含有してなる皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物としては、化粧品、発毛育毛剤、トイレタリー用品、衛生用品、ケミカルピーリング用組成物、健康用品など外用できる物品のあらゆるものに適用することができる。
また、本発明は、前記した本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物を用いた予防方法・改善方法又は処置方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記した本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物を製造するためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。また、本発明は、当該組成物を用いた前記症状又は疾患の予防方法・改善方法又は処置方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
【0106】
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物のより詳細な態様としては、次のものが挙げられる。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、再生不良、色素沈着、乾燥等)を予防、改善、処置するための化粧品組成物、当該組成物を用いた予防方法・改善方法又は処置方法、化粧方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、皮膚もしくは粘膜の老化症状を予防、処置、改善するための化粧品、健康薬、健康食品、当該製品を用いた予防方法・改善方法又は処置方法、化粧方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、粘膜特に口腔粘膜や食道粘膜の老化症状(萎縮、粘膜剥離、ひびわれ、上皮剥離、再生不良、乾燥)を予防、処置、改善するための健康薬組成物、当該組成物を用いた予防方法・改善方法又は処置方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、発毛・育毛用組成物、当該組成物を用いた予防方法・改善方法又は処置方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、ケミカルピーリング用組成物、当該組成物を用いた予防方法・改善方法又は処置方法、及びその製造のためのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩の使用を提供するものである。
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物は、トイレタリー用品又は衛生用品を提供するものである。
【0107】
本発明の実験結果によれば、ジンセノサイドRbを皮膚組織再生・再構築促進剤として使用するときの静脈内投与量は、同化合物を脳細胞又は神経細胞保護剤として使用するときの静脈内投与量と類似している(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)。このことから判断すると、本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが皮膚組織もしくは口腔粘膜組織の再生・再構築促進剤として作用する濃度は、特願平10−365560号、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)で記述されたものと同様に低濃度が好ましく、より具体的には、病変部の細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となる濃度である。本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与用製剤もしくは皮膚外用剤として使用する場合にも、患者の患部組織における細胞外液濃度が前記の濃度になるように製剤を調整することが好ましい。本発明の医薬組成物や製剤は、患部組織の細胞外液濃度が1〜100fg/ml程度もしくはそれ以下の濃度(たとえば0.01fg/ml)でも充分な効果が得られる。すなわち、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは患部組織における細胞外液濃度が0.01〜100fg/mlもしくは1〜10000fg/mlのときに最も優れた効果・効能を発揮すると考えられる。
【0108】
また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを化粧品や健康薬の組成物として使用することにより、皮膚や粘膜の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、再生不良、色素沈着もしくは乾燥等又は粘膜の萎縮、再生不良、剥離、上皮剥離、ひびわれもしくは乾燥等)の予防、処置、改善を目指すときも、皮膚局所又は粘膜局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく低濃度になるよう化粧品又は健康薬へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb配合量を調整する必要がある。もちろんジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは米国特許5,663,160号又はWO99/07338号で記載された他の化粧品組成物とともに化粧品に配合することができるが、他の化粧品組成物についても米国特許5,663,160号又はWO99/07338号で記載された濃度よりも低い濃度で使用することを特徴とするものである。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbはその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物とともにあらゆる化粧品又は健康薬の中に配合することができるが、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbとともに使用するその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物についても従来の文献や特許明細書で記載された濃度より低い濃度で使用することが好ましい。
したがって、本発明の化粧品組成物又は健康薬組成物は、通常の化粧品のみならず、歯みがきやシャンプーなどの医薬部外品や、健康グッズなどの生体の表皮又は口腔部などの粘膜に直接又は間接的に接触する物品をすべて包含する。
【0109】
従って、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbをあらゆる化粧品や健康薬(化粧水(スキンローション)、美容液、マッサージ剤、パック剤、乳剤、乳液(ミルクローション)、ファンデーション、ハンドクリーム、コールドクリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、ボディーミルク、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、アイシャドウ、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、ナイトクリーム、美白クリーム、トローチ、のどあめ、あめ、健康飲料水、アイソトニックウォーター、シャーベット、氷、健康食品、キャンディー、おしろい、洗眼液、洗顔液、洗眼薬、口紅、化粧石けん、うがい薬、シャンプー、リンス、歯みがき粉、入浴剤、リップクリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、下地クリーム(メイクアップベース)、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等)に微量配合して使用し、皮膚局所又は粘膜局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度を前記のごとく低濃度に維持すれば、皮膚や粘膜の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、再生不良、上皮剥離、粘膜剥離、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、乾燥等)に対して優れた効果を発揮する。
【0110】
たとえば、加齢や老化に伴い皮膚の脂(すなわち皮脂)が欠乏するだけでも、皮膚のかさつき、かゆみ、亀裂、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥等が生じるが、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbをあらゆる化粧品に混入して使用することにより、皮脂腺の保護もしくは再生・再構築が促進され前記の加齢に伴う皮膚の老化症状を予防、改善もしくは軽減すると考えられる。また、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する任意の化粧品は、表皮細胞(表皮角化細胞、角質細胞)を保護するのみならず、その再生をも促進するので、角質細胞間脂質や天然保湿因子の産生や分泌も促進することにより、皮膚の乾燥やかさつきを抑止し、皮膚に自然な潤いをもたらす。また、たとえばミネラルウォーターなどにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画等を低濃度で混入することにより、アルコール飲料による口腔粘膜や消化管粘膜の障害を改善、予防、処置することもできる。さらに、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbはケミカルピーリング(Chemical peeling)において、皮膚組織の再生・再構築を促進するための組成物としても使用できる。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは介護施設、温泉保養施設、病院にて入浴剤として使用することにより、皮膚の老化や疾患の予防、処置、改善に役立つ。ドレッシング剤、消毒薬、洗浄剤、絆創膏、被覆剤などに混入することにより、創傷の治癒を促進し、その悪化を防止することもできる。本発明の皮膚外用組成物の基剤ならびに併用可能なその他の組成物については既述した。
【0111】
本発明の皮膚外用組成物又は粘膜外用組成物を発毛・育毛用組成物として使用する場合には、任意の又は公知の基剤に有効成分を配合した後、単独で使用してもよいし、その他の薬効成分(たとえば血行促進用組成物、局所刺激用組成物、毛包賦活用組成物、抗男性ホルモン、抗脂漏用組成物、角質溶解用組成物、抗生物質、生薬エキス、ビタミン、アミノ酸等)と併用してもよい。その際には、ジンセノサイドRbの濃度の上限を0.00002重量%未満に設定することが好ましい。具体的には、円形脱毛症、男性型脱毛症、び慢性脱毛症に対して低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与や局所外用塗布等が有効と考えられる。
【0112】
液状の化粧品、たとえば通常のUVリキッドファンデーションにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときは、その濃度が1000ng/ml以下、好ましくは10ng/ml以下、より好ましくは0.01fg/ml〜100pg/mlとなるように調整した上で、連日皮膚に外用塗布もしくは外用噴霧すれば皮膚局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく、低く維持され、皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、脱毛、ふけ、白髪、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、色素沈着、再生不良、日焼け等)の改善、進行予防もしくは悪化予防に役立つ。また、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品たとえば、通常の下地クリームやナイトクリームにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときも、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの混入量をクリーム1gあたり1000ng以下、好ましくは10ng以下、より好ましくは0.01fg〜100pg程度にして、連日皮膚に外用塗布すれば、皮膚の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)の予防、改善、処置に役立つ。
【0113】
ただし、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbを任意の化粧品に配合して、きわめて長期にわたって使用するときは化粧品1gあたりのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの含有量を0.0000001fgまで下げてもよい。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを皮膚の老化症状の予防、改善、処置の目的で上記の化粧品に混入する際の濃度の上限は、液状の化粧品の場合、10μg/ml以下、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品の場合は10μg/g以下である。言い換えれば、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは0.001重量%以下、好ましくは0.001重量%未満の濃度で上記の化粧品に混入することが好ましい。さもなければ、かえって皮膚の正常細胞の膜を障害することにもなりかねない。すなわち、長期間使用する化粧品や健康薬にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときは、本発明で既述した皮膚疾患や粘膜疾患の予防、処置、治療用の外用剤よりも濃度を低くする方が安全と考えられる。もちろん、上記のごとくジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを微量含有する化粧品は、顔面に外用塗布、外用噴霧するのみならず、日光に頻繁に照射されるその他の皮膚組織(たとえば四肢、体幹、頚部、項部等)に外用塗布もしくは外用噴霧できる。このように、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する化粧品もしくは健康薬を長期にわたって常時使用することにより、皮膚の老化に伴う症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防もしくは改善することができる。ただし、皮膚外用剤、粘膜外用剤、健康薬又は化粧品に混入するジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの量は一応の目安であり、実際には皮膚局所もしくは粘膜局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下になるようにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの配合量を調整する必要がある。
【0114】
もちろん、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを前述のごとく低濃度で健康薬(たとえばうがい薬、洗眼液等)に混入して使用することにより、粘膜の老化(萎縮、上皮剥離、再生不良、粘膜剥離、ひびわれ、乾燥等)を予防、改善又は軽減することもできる。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又は後述する薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘を、健康飲料食品、うがい薬、入浴剤、洗眼薬等の健康薬の組成物として使用するときも、好ましくは0.001重量%未満の濃度で健康薬の原液を作成し、使用時にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又は薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘の濃度が1ng/ml以下又は14.5ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下又は145pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下又は1450fg/ml以下となるように原液を希釈すればよい。もちろん前述の原液を凍結乾燥後、粉末状の健康薬の原末として使用してもよい。原液を凍結乾燥して粉末にした場合は、当然のことながら当該粉末における健康薬組成物の重量%は増加するが、使用時に凍結乾燥粉末を、健康薬組成物が上記のごとく低濃度になるように希釈すればよい。一般に、薬用人蔘粗サポニン分画の患部組織における至適細胞外液濃度は、ジンセノサイドRbの至適細胞外液濃度の14.5倍と考えられる。
【0115】
前記の栽培実験により明らかにされているように、本発明の医薬組成物は、ヒトのみならず植物や家畜やペットなどの生体組織にも適用することができ、動物や植物の成長を調整することができる。
したがって、本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画、若しくはジンセノサイド類又はそれらの塩からなる、植物又は動物の組織又は細胞の新生、再生、成長、再構築、分化、保存、育成又は栽培を促進するための成長調整用組成物を提供する。
また、本発明は、前記した本発明の成長調整用組成物を用いた、植物の栽培方法、及び動物の飼育方法を提供するものである。
本発明の成長調整用組成物としては、植物の組織又は細胞の新生、再生、成長、再構築、分化、保存、育成又は栽培を促進するための植物成長調整用組成物、及び海産物、海産資源、水産物、水産資源、海産動物、水産動物、ペット又は家畜の育成、保護又は養殖のための動物成長調整用組成物が包含される。
より詳細には、本発明の成長調整用組成物としては、植物における成長促進剤、肥料添加物、肥料組成物などが挙げられ、動物における成長促進剤、飼料添加物、飼料組成物などが挙げられる。
【0116】
本発明の低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、ヒトのみならずペットや家畜の疾病・外傷・創傷の予防・治療・処置にも利用することできる。
さらに、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは海産物(魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ、ウニ、カキ、ワカメ、真珠貝、アコヤ貝等)及び水産物の養殖や農産物栽培にも利用される。もちろん、水族館などで飼育される魚介類の保護・育成にも利用される。この場合、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、海洋資源や農作物を内分泌撹乱物質、毒素、外傷、微生物、バイオハザード・環境汚染等から守るものと考えられる。さらに、例えば水耕野菜においてジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを栽培用の水に添加することにより、当該野菜を増産することもできる。
【0117】
本発明の成長調整用組成物の態様としては、つぎのものが挙げられる。
本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩を含有してなる植物組織の再生・新生又は再構築を促進するための組成物、成長調製用組成物又は肥料組成物を提供する。
本発明は、植物組織の再生・新生又は再構築促進剤として有用な、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩を含有してなる植物組織の損傷・外傷・切断もしくは欠損の予防・処置・修復又は治療用の肥料添加物又は肥料組成物を提供する。
本発明は、植物組織たとえばポトスの茎・枝などの挿し木もしくは水栽培に有用な、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩からなる肥料添加物又は肥料組成物を提供する。
本発明は、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩からなる動物用の飼料添加物又は飼料組成物を提供する。
【0118】
さらに詳細には、本発明は植物組織たとえばポトスの茎・枝などの挿し木もしくは水栽培に有用な、低濃度の薬用人蔘の粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbに関する。すなわち、本発明は、植物の栽培・育成・保存・改良、生花の保存、水栽培、農作物栽培・育成、野菜の栽培・育成、果実・果樹の栽培・育成、たばこの栽培・育成、園芸植物の栽培・育成・改良、薬用植物の栽培、きのこ栽培、茶葉の栽培・育成等に有用な、ジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩、好ましくは薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩からなる発根・発芽・成長促進用組成物又は肥料添加物を提供する。
【0119】
本発明の肥料添加物又は肥料組成物は、薬用人蔘もしくはそのエキス又は薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物又はそれらの塩を低濃度で含有してなるものが好ましい。肥料組成物として薬用人蔘成分たとえばジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを水栽培に単独で、もしくは他の有効成分とともに使用するときは、水栽培用の溶液中のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度は1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下に調整することが好ましい。本発明のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは0.01fg/ml程度の濃度域でも充分に水栽培植物組織の発根・発芽・成長・分化・再生・新生もしくは再構築を促進し、野菜、果実、生花を含むあらゆる農作物・植物の保存・育成・栽培・改良に利用することができる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを任意の固形肥料、ゲル状肥料、液状肥料、液体肥料、粉末状肥料(たとえば、単肥、土壌改良資材又は肥料、育苗肥料、水稲・麦用肥料、緩効性肥料、高度化成、普通化成、有機化成、NK・PK・PM化成、有機配合肥料、液肥等)に添加又は混入するときも、その濃度は化粧品の場合と同様に、0.001重量%以下もしくは未満、10−20%以上に設定することが好ましい。肥料組成物としてのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度の上限は0.1重量%以下、好ましくは0.001重量%以下である。本発明の薬用人蔘粗サポニン分画を肥料添加物又は肥料組成物としてあるいは単独で水栽培に使用するときは、水栽培用の溶液中の粗サポニン分画の濃度は、14.5ng/ml以下、好ましくは145pg/ml以下、より好ましくは1450fg/ml以下に調整することが好ましい。本発明の薬用人蔘粗サポニン分画は0.145fg〜1450fg/mlの濃度域でも充分に水栽培植物組織の発根・発芽・成長・再生・新生もしくは再構築を促進し、野菜、果実、生花を含むあらゆる農作物・植物の保存・育成・栽培に利用することができる。また薬用人蔘の粗サポニン分画を任意の固形肥料、ゲル状肥料、液状肥料、液体肥料、粉末状肥料(たとえば、単肥、土壌改良資材又は肥料、育苗肥料、水稲・麦用肥料、緩効性肥料、高度化成、普通化成、有機化成、NK・PK・PM化成、有機配合肥料、液肥等)に添加又は混入するときも、その濃度は化粧品の場合と同様に0.01重量%以下、好ましくは0.001重量%以下、より好ましくは0.0001重量%以下、10−20重量%以上とすることが好ましい。もちろん、薬用人蔘の粗サポニン分画と同量もしくはその5〜6倍量以下の薬用人蔘又は、薬用人蔘エキスを肥料組成物として使用してもよい。肥料組成物としての粗サポニン分画、薬用人蔘エキスの濃度の上限は1重量%以下である。
【0120】
後述の実施例で示すごとく、100fg/mlのジンセノサイドRbもしくは1450fg/mlの薬用人蔘粗サポニン分画を含有する水中で、植物組織たとえばポトスの挿し木を栽培すると、対照の挿し木に比べて明らかに根の新生(すなわち発根・成長)が促進される。このことから判断すると、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキス又は薬用人蔘が、動物組織のみならず、植物組織の新生・再生もしくは再構築をも促進すると言える。
しかも、植物組織の新生・再生もしくは再構築を促進させるジンセノサイドRbもしくは粗サポニン分画の細胞外液濃度は、動物組織(皮膚組織、口腔粘膜組織)を再生・再構築させる場合と同様に、極めて低いことが本発明において見出された。従って、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは、植物の栽培・育成・保存、生花の保存・栽培・育成、水栽培、農作物栽培・育成、野菜の栽培・育成、果実(フルーツ)の栽培・育成、たばこの栽培・育成、きのこ栽培、薬用植物栽培、茶葉の栽培・育成等に利用できると言える。前述の薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる肥料添加物又は肥料組成物は、任意の肥料に好ましくは低濃度で混入することができるし、単独で植物組織の発根・発芽・新生・再生・成長・再構築促進剤として使用してもよい。
【0121】
ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくは薬用人蔘の粗サポニン分画が動物組織(皮膚組織、口腔粘膜組織)のみならず植物組織の新生・再生もしくは再構築を促進するという事実は、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイドRbを始めとするジンセノサイド類があらゆる生体組織の新生・再生もしくは再構築を促進することを物語っている。従って薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは家畜、養殖用魚貝類、ペット用飼料への添加物すなわち飼料組成物としても利用できると言える。たとえば、魚貝類、甲殻類、ウナギ、ウニ、カキ、アナゴ、真珠貝、アコヤ貝等の養殖の際に、低濃度の薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを海水又は淡水に通常の飼料とともに添加すれば、これらの水産資源もしくは海産資源の発育が促進されると考えられる。もちろん、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画もしくはジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、その細胞保護作用を介して、魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ等の海産・水産資源を外傷、創傷、病原微生物、バイオハザード、内分泌撹乱物質、環境汚染、毒素等から守ることができる。すなわち、本発明の飼料添加物又は飼料組成物は来るべき食糧危機から人類を救済するために必須のものとなる。以上のごとく、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキス、薬用人蔘、ジンセノサイド類は10−20重量%から0.1重量%又は1重量%の濃度域で成長調整用組成物として使用できる。
また、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類や薬用人蔘の粗サポニン分画が植物組織の再生・新生もしくは再構築を促進するという事実は、低濃度の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキス又は薬用人蔘が皮膚組織の再生もしくは再構築をも促進することにより、ケミカルピーリング用組成物、化粧品組成物、健康薬組成物、発毛・育毛用組成物、医薬組成物もしくは獣医薬組成物として利用されることを支持している。
【0122】
本発明の前記してきた各組成物、すなわち医薬組成物、獣医薬組成物、皮膚外用組成物、粘膜外用組成物、健康薬組成物、化粧品組成物、発毛育毛用組成物、成長調整用組成物などは、ジンセノサイドRbなどのジンセノサイド類もしくはその代謝産物又はそれらの塩を、低濃度で含有してなるものが好ましい。
また、本発明のこれらの組成物は、静脈内投与、粘膜投与や皮膚外用投与などの非経口投与形態のものが好ましい。より詳細には、本発明の医薬組成物、獣医薬組成物、健康薬組成物もしくは化粧品組成物は、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩を低濃度で含有してなる非経口投与製剤、粘膜外用塗布・外用噴霧製剤もしくは皮膚外用塗布・外用噴霧製品が好ましい。
また、本発明は、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩を好ましくは低濃度で含有してなる生体組織の病理組織学的変化をきたす疾患の予防・処置又は治療用の非経口投与製剤、好ましくは静脈内もしくは血管内投与用製剤、粘膜外用剤又は皮膚外用剤をも提供するものである。
さらに本発明は、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもしくはその代謝産物又はそれらの塩を好ましくは低濃度で含有してなる、皮膚もしくは粘膜の老化症状を予防、処置、改善するための化粧品又は健康薬を提供するものである。
【0123】
本発明のこれらの組成物は、静脈内投与用製剤、粘膜外用剤、皮膚外用剤もしくは皮膚外用塗布・外用噴霧が好ましいが病変部局所外用剤、病変部局所注射剤、経口投与製剤、点鼻薬、点耳薬、点眼薬、眼軟膏、坐薬、皮下注射薬、皮内注射薬、筋肉注射薬、吸入薬、舌下薬、人工唾液、関節内投与薬、経皮吸収薬等、任意の投与経路が選択できる。また徐放剤として使用してもよい。
【0124】
以上説明してきたように、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与は、皮膚組織や粘膜組織の再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用を介して、前記したあらゆる皮膚疾患もしくは口腔疾患の予防、治療、処置に効果・効能を示すと考えられる。このように静脈内投与、粘膜局所投与もしくは皮膚局所投与により、傷害を受けた皮膚組織もしくは粘膜組織を傷害前に近い状態にまで再生・再構築せしめる化合物としては、低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが人類史上最初のものと考えられる。
【0125】
すなわち、本発明者らは、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物が、皮膚組織もしくは粘膜組織の再生又は再構築の促進作用、特に皮膚の切開創、開放創もしくは欠損後の皮膚組織再生・再構築の促進作用、ヒト口腔粘膜の咬傷後の粘膜組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用又は表皮、真皮、真皮の乳頭、皮下組織、粘膜固有層、筋組織、結合組織、毛包、毛乳頭、立毛筋、皮脂腺、汗腺、唾液腺、粘液腺、混合腺、末梢神経、血管、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、上皮細胞、腺細胞、筋上皮細胞、表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、メラノサイト、メルケル細胞、血管内皮細胞、立毛筋の細胞、血管平滑筋細胞、平滑筋細胞、筋細胞、膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞外基質の再生・再構築を促進する作用を有することを初めて見出したものである。
【0126】
従って、本発明は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物を前記した皮膚組織ならびに口腔組織やその他の臓器・組織の疾患の予防・処置又は治療用の他の有効成分を探索するためのリード化合物として使用することができることを提供するものである。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの化学構造の一部を修飾してプロドラッグを作成したのちに、任意の投与経路を選択することも可能である。さらに、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物の標的分子を同定することにより、標的分子の機能を修飾する新規化合物をも合成して皮膚疾患治療薬・創傷治癒促進剤、皮膚組織再生・再構築促進剤、口腔疾患治療薬、粘膜組織再生・再構築促進剤、皮膚又は粘膜の老化症状抑止用化粧品の開発を目指すこともできる。
【0127】
従って、本発明は、これらの疾患の新しい予防・処置又は治療用の有効成分を探索するためのリード化合物としてのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物を提供するものでもある。もちろん、薬用人蔘もしくはそのエキス又はジンセノサイドRbを含む薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物をリード化合物として利用することにより、植物組織の発根・発芽・成長・分化・新生・再生もしくは再構築を促進するための組成物又は肥料組成物を新規に開発することもできる。
このように、今後は、ジンセノサイドRbもしくはその代謝産物をリード化合物として利用することにより、皮膚組織もしくは口腔粘膜の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患もしくは皮膚や口腔ならびにその他の臓器や粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患の予防、治療、処置剤を多種類作成できる。
【0128】
すなわち、本発明は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物が皮膚組織のあらゆる疾患に対する予防・処置又は治療に極めて有効であることを見出したものであり、従って本発明はジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物をリード化合物として、皮膚疾患もしくは後述する口腔粘膜疾患あるいは粘膜疾患全般に対する予防・処置又は治療のための有効成分を探索する方法に関する。さらに、本発明は、皮膚組織もしくは粘膜の疾患に対する予防・処置又は治療のための有効成分を探索するためのリード化合物としてのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物の使用に関する。本発明は、前記した方法又は使用により得られた皮膚組織や口腔粘膜の疾患に対する予防・処置又は治療剤にも関する。
【0129】
次に、本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物をリード化合物として新規な誘導体を創製する例を示す。この例は、ジンセノサイドRbを水素還元により化学修飾したジヒドロジンセノサイドRbについてのものである。
【0130】
本発明者らは、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRb又はその代謝産物が、皮膚組織の再生又は再構築の促進作用、特に皮膚の開放創もしくは欠損後の皮膚組織再生・再構築の促進作用、創傷治癒促進作用又は表皮、真皮、真皮の乳頭、皮下組織、結合組織、毛包、毛乳頭、立毛筋、皮脂腺、汗腺、末梢神経、血管、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、上皮細胞、腺細胞、筋上皮細胞、表皮細胞、表皮角化細胞、角質細胞、メラノサイト、メルケル細胞、血管内皮細胞、立毛筋の細胞、血管平滑筋細胞、平滑筋細胞、筋細胞、膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞外基質の再生・再構築を促進する作用を有することを初めて見出したものであり、従って、本発明は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb又はその代謝産物を前記した皮膚組織やその他の臓器・組織の疾患の予防・処置又は治療用の他の有効成分を探索するためのリード化合物として使用することができることを証明するものである。また、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの化学構造の一部を修飾してプロドラッグを作成したのちに、任意の投与経路を選択することも可能である。もちろん、薬用人蔘もしくはそのエキス又はジンセノサイドRbを含む薬用人蔘成分もしくはそれらの代謝産物をリード化合物として利用することにより、植物組織の発根・発芽・成長・分化・新生・再生もしくは再構築を促進するための成長調整用組成物又は肥料組成物を新規に開発することができることも、本発明は明らかにしている。
【0131】
本発明のジヒドロジンセノサイドRbは下記構造式
【0132】
【化2】
Figure 0004008192
【0133】
で示されるものであり、ジヒドロジンセノサイドRbは、以下の方法で製造できることがPCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)に記述されている。まず10%Pd/c(パラジウムチャーコール)10.2mgを秤量し、活セン付2口フラスコに入れる。メタノール(特級)を1ml加えて懸濁させる。水素風船(約1.1気圧)をとりつけ30分0℃で触媒を活性化する。ジンセノサイドRb19.9mgをメタノール1mlで溶かし注射器で注入する。混合物を10時間半0℃で激しく攪拌する(磁気スターラー)。反応混合物をろ紙及び0.45μmのメンブランフィルターでろ過する。メタノールを減圧除去する。純水10mlに溶解させたのち凍結乾燥すると19.9mg(収率97%)のジヒドロジンセノサイドRbが白色粉末として得られる。ジヒドロジンセノサイドRbの融点は193−195℃である。ちなみにジンセノサイドRbの融点は197−198℃(文献値)である。なお、ジヒドロジンセノサイドRbのNMRチャートについては、PCT/JP00/04102に提示されている。このような方法により製造されたジヒドロジンセノサイドRbの純度は98%以上であることが核磁気共鳴スペクトル(NMR)ならびにHPLCにより確認されている。また、ジンセノサイドRb以外のジンセノサイド類についても同様の方法により還元し、ジヒドロ化することができる。
【0134】
本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbはPCT/JP00/04102で記載されたごとく、遊離のものを使用することもできるが、それを適当な塩と使用することもできる。また、それらの水和物のような溶媒和物として使用することもできる。本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbはジンセノサイドRbと同様にあらゆる化粧品や健康薬(化粧水(スキンローション)、乳液(ミルクローション)、美容液、マッサージ剤、パック剤、乳剤、ファンデーション、ゲル、ローション、エマルジョン、パウダー、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、ハンドクリーム、コールドクリーム、アイシャドウ、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、ナイトクリーム、美白クリーム、トローチ、おしろい、口紅、化粧石けん、入浴剤、うがい薬、健康飲料水、アイソトニックウォーター、氷、シャーベット、アイスクリーム、洗眼液、洗眼薬、洗顔液、シャンプー、リンス、歯みがき粉、リップクリーム、下地クリーム(メイクアップベース)、ヘアーリキッド、ヘアートニック、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等)に好ましくは低濃度で混入することができる。ジンセノサイド類誘導体の基剤ならびに併用可能な皮膚外用組成物についてはジンセノサイドRbの場合と同様である。本発明の実験結果によれば、ジヒドロジンセノサイドRbを細胞保護剤として利用するときの細胞外液濃度は、100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下である。またジヒドロジンセノサイドRbを0.00001重量%(10−5重量%)〜0.0000001重量%(10−7重量%)含有する皮膚外用剤は有意に開放創を縮小せしめることが後述の実施例で明らかにされている。ちなみに、0.00001重量%のジヒドロジンセノサイドRbは100ng/gもしくは100ng/ml程度の濃度と考えられる。これらのことから判断すると、本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが皮膚組織の再生・再構築促進剤として作用する濃度は、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞又は神経細胞保護剤)で記述されたものと同様に低濃度が好ましく、より具体的には、病変部の細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となる濃度である。本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを静脈内投与用製剤もしくは皮膚外用剤として使用する場合にも、患者の患部組織における細胞外液濃度が前記の濃度になるように製剤を調整することが好ましい。本発明の医薬組成物や製剤は、患部組織の細胞外液濃度が0.01〜100fg/ml程度もしくはそれ以下の濃度(たとえば0.00001fg/ml)でも充分な効果が得られる。また、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを化粧品や健康薬の組成物として使用することにより、皮膚や粘膜の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、ふけ、脱毛、白髪、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、再生不良、色素沈着もしくは乾燥等又は粘膜の萎縮、上皮剥離、粘膜剥離、再生不良、ひびわれもしくは乾燥等)の予防、処置、改善を目指すときも、皮膚局所又は粘膜局所におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく低濃度になるよう化粧品又は健康薬へのジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRb混入量を調整する必要がある。もちろんジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは米国特許5,663,160で記載された他の化粧品組成物とともに化粧品に混入することができるが、他の化粧品組成物についても米国特許5,663,160で記載された濃度よりも低い濃度で使用することを特徴とするものである。また、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbはその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物とともにあらゆる化粧品又は健康薬の中に混入することができるが、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbとともに使用するその他の任意の化粧品組成物又は健康薬組成物についても従来の文献や特許明細書で記載された濃度より低い濃度で使用することが好ましい。
したがって、本発明の化粧品組成物又は健康薬組成物は、通常の化粧品のみならず、歯みがきやシャンプーなどの医薬部外品や、健康グッズなどの生体の表皮又は口腔部などの粘膜に直接又は間接的に接触する物品をすべて包含する。
【0135】
さて、後述の実施例で示すごとく、ジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbとほぼ同様の低濃度・低濃度域で神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止し、かつ外用投与により皮膚の開放創の治癒を顕著に促進する。しかも、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において発明されたごとく、ジヒドロジンセノサイドRbからなる静脈投与用製剤は、ジンセノサイドRbからなる静脈内投与用製剤とほぼ同様の用量で、優れた脳梗塞治療効果を示す。すなわち、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの効果・効能・用途は、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの効果・効能・用途と酷似していると言える。このような推測に基づけば、本発明において明らかにされたジンセノサイドRbの効果・効能・用途はすべてジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbにもあてはまると言える。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に、粘膜組織の再生・再構築を促進させるための医薬組成物、植物組織の発根・発芽・成長・新生・分化・再生もしくは再構築を促進させるための成長調整用組成物又は肥料組成物、魚貝類・海産資源・水産資源・家畜もしくはペットの育成、保護又は養殖のための飼料組成物又は成長調製用組成物、として利用できることになる。当然のことながら、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは前述のごとく静脈内投与用製剤又は粘膜外用剤として使用できる。以下にこれらのことについて記述する。
【0136】
本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる静脈内投与用製剤は、血管内、好ましくは静脈内に直接できるものであればよく、生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液、リポソーム、脂肪乳剤等に溶解した後に、単回静脈内注入用製剤もしくは静脈内持続投与用製剤として使用できる。また、点滴用組成物などの静脈内投与製剤に添加して使用できる剤型であってもよい。また、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの化学構造の一部を修飾してプロドラッグを作成し、任意の投与経路、投与方法を選択することができる。たとえば、ジヒドロジンセノサイドRbの水酸基をエステル化してプロドラッグを作成した後に投与し、内因性エステラーゼで加水分解せしめることによりジヒドロジンセノサイドRbを生体組織内で作用させることも可能である。本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる生体組織の病理組織学的変化をきたす器質的疾患の予防、処置、治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤は、任意又は公知の基剤たとえば水溶性基剤(クリーム等)、乳剤性基剤、配合剤もしくは脂溶性基剤(軟膏基剤)にジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを好ましくは低濃度で混入することにより作成できる。また、アフタッチのように粘膜に密着する製剤に低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを混入してもよい。具体的には水溶性基剤、乳剤性基剤、配合剤もしくは軟膏基剤(脂溶性基剤)たとえば眼科用白色ワセリン(プロペト)100gあたりに、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを1g(1重量%)以下又は未満、好ましくは10mg(0.01重量%)以下又は未満、より好ましくは0.1mg(0.0001重量%)以下又は未満、1fg(10−15重量%)以上となるように混入した後に、前記疾患の予防、処置もしくは治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤として使用できる。もちろん、前述の皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤の中にジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの他に任意の医薬組成物(たとえば、ブドウ糖、抗生物質、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンD、ビタミンD誘導体、ビタミン類、抗ウィルス剤、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、薬用人蔘成分、天然物成分等)を混入してもよい。特にアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎もしくは花粉症等のアレルギー性の皮膚粘膜疾患に対しては、常用量以下もしくは従来の特許文書で開示された用量未満のステロイド(剤)、抗アレルギー用医薬組成物又は免疫抑制用医薬組成物等をジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤や粘膜外用剤に混入すると著効が得られる。また、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤とその他任意の医薬組成物を含有する皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤とを併用してもよい。前記疾患の予防、処置、治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの濃度の上限は、10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0137】
液状の化粧品、たとえば通常のUVリキッドファンデーションにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを混入するときは、その濃度が100μg/ml以下、好ましくは10ng/ml以下、より好ましくは0.01fg/ml〜100pg/mlとなるように調整した上で、連日皮膚に外用塗布もしくは外用噴霧すれば皮膚局所におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく、低く維持され、皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、脱毛、ふけ、白髪、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、色素沈着、再生不良、日焼け等)の改善、進行予防もしくは悪化予防に役立つ。また、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品たとえば、通常の下地クリームやナイトクリームにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを混入するときも、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの混入量をクリーム1gあたり100μg以下、好ましくは10ng以下、より好ましくは0.01fg〜100pg程度にして、連日皮膚に外用塗布すれば、皮膚の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)の予防、改善、処置に役立つ。ただし、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbを任意の化粧品に混入して、きわめて長期にわたって使用するときは化粧品1gあたりのジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの含有量を0.0000001fgまで下げてもよい。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを皮膚の老化症状の予防、改善、処置の目的で上記の化粧品に混入する際の濃度の上限は、液状の化粧品の場合、10mg/ml以下、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品の場合は10mg/g以下、すなわち1重量%以下である。しかし、1重量%という高濃度のジンセノサイド類誘導体は、かえって皮膚の正常細胞の膜を障害することにもなりかねないので、長期間使用する化粧品や健康薬にジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを混入するときは、本発明で記述した皮膚疾患や粘膜疾患の予防、処置、治療用の外用剤における至適濃度よりも濃度を低くする方が安全と考えられる。もちろん、上記のごとくジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを微量含有する化粧品は、顔面に外用塗布、外用噴霧するのみならず、日光に頻繁に照射されるその他の皮膚組織(たとえば四肢、体幹、頚部、項部等)に外用塗布もしくは外用噴霧できる。このように、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを含有する化粧品もしくは健康薬を長期にわたって常時使用することにより、皮膚の老化に伴う症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防もしくは改善することができる。ただし、皮膚外用剤、粘膜外用剤、健康薬又は化粧品に混入するジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの量は一応の目安であり、実際には皮膚局所もしくは粘膜局所におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下になるようにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの混入量を調整する必要がある。もちろん、ジンセノサイドRbと同様に、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを前述のごとく低濃度で健康薬(たとえばうがい薬、洗眼液、健康飲料水、健康飲料食品等)に混入して使用することにより、粘膜の老化(萎縮、上皮剥離、粘膜剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)を予防、改善又は軽減することもできる。
【0138】
本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様、皮膚の切開創、開放創もしくは欠損発症後に1週間程度静脈内へ持続投与することにより又は単回もしくは連日皮膚局所へ外用塗布・噴霧することにより、脱落した皮膚組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めることができると考えられる。また、本発明のジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に、口腔粘膜の咬傷後に1週間前後、創傷部位に1日1〜10回外用塗布することにより脱落した口腔粘膜組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めることができると考えられる。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与、粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与は、ジンセノサイドRbと同様に、皮膚組織や粘膜組織の再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用を介して、前記したあらゆる皮膚疾患もしくは口腔疾患の予防、治療、処置に効果・効能を示すと考えられる。ジヒドロジンセノサイドRbを用いてなされた本発明は、今後ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物をリード化合物として利用することにより、皮膚組織もしくは口腔粘膜の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患もしくは皮膚や口腔ならびにその他の臓器や粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患の予防、治療、処置剤を多種類作成できることを明らかにするものである。
【0139】
また、本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内持続投与、口腔粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与は損傷、創傷、外傷もしくは欠損を受けた皮膚組織や口腔粘膜組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めると考えられるので、このような事実に基づけば、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与や局所投与は、腹部や胸部の内臓器官、頭頸部の器官、ならびに骨、関節、靱帯、筋、血管、神経の損傷、外傷、創傷もしくは欠損による疾患や同臓器の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患に対しても、皮膚組織もしくは口腔粘膜組織の損傷、創傷、外傷、欠損の場合と同様に、組織再生・再構築促進作用又は創傷治癒促進作用を介して効果・効能を発揮するものとされる。従って、外科的処置及び手術における臓器切断縫合部の回復促進、縫合不全防止、消化性潰瘍病変の予防、治療、処置、肝・腎・脾・膵・肺・腸管・消化器・泌尿生殖器・内分泌腺・外分泌腺・子宮・膀胱・胆のう切除術後の臓器再生・再構築促進、骨・関節・靱帯・腱・末梢神経・髄膜再建手術(整形外科及び脳神経外科手術)における当該組織の再生・再構築促進、肝・腎・脾・膵・肺・腸管・泌尿生殖器等の臓器の損傷、創傷、外傷、欠損の予防、治療、処置にも低用量・低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与、術中局所投与、点鼻投与、挿肛投与等が有効である。また、前記した臓器・組織の病理組織学的変化をきたすあらゆる内因性・外因性疾患に対して低用量・低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが有効である。このような疾患としては、成書(今日の治療指針;監修、日野原重明、阿部正和、医学書院;1995;今日の治療指針;総編集、多賀須幸男、尾形悦郎、医学書院;2000;或いは今日の整形外科治療指針第4版;編集、二ノ宮節夫、富士川恭輔、越智隆弘、国分正一、医学書院;2000)に記載されたすべての疾病や病態が含まれる。本発明の低濃度・低用量のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、ヒトのみならずペットや家畜の疾病・外傷・創傷の予防・治療・処置にも利用できる。さらに、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは海産物(魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ、ウニ、カキ、ワカメ、真珠貝、アコヤ貝等)及び水産物の養殖や農産物栽培にも利用される。この場合、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、海洋資源や農作物を内分泌撹乱物質、毒素、外傷、微生物、バイオハザード・環境汚染等から守るものと考えられる。さらに、例えば水耕野菜においてジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを栽培用の水に添加することにより、当該野菜を増産することもできる。
【0140】
さらに、本発明のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの薬剤としての特徴で、見逃せないのが、これと言った副作用を示さない点である。事実、PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において示されたごとく体重300g程度のラットに1日あたり6μgを静脈内持続投与して脳梗塞の治療を目指す限りにおいては、ジヒドロジンセノサイドRbは極めて安全な医薬組成物であると考えられる。また、皮膚外用剤や粘膜外用剤として使用するジンセノサイドRbの投与量は、静脈内投与量に比べてはるかに少ない。もちろん、本発明者らが、今回の各実験例において、本発明のジヒドロジンセノサイドRbを皮膚外用投与した動物を注意深く観察した範囲内でも、副作用は検出されなかった。
【0141】
後述の実施例で示すごとく、0.00001重量%(10−5重量%)、0.000001重量%(10−6重量%)もしくは0.0000001重量%(10−7重量%)のジヒドロジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤をラットの開放創に塗布することにより、創傷治癒ならびに皮膚組織再生・再構築が明らかに促進され、開放創部の面積の平均が対照群の1/2〜1/4程度に縮小した。しかし、0.0001重量%(10−4重量%)の濃度のジヒドロジンセノサイドRbのラット開放創治療効果は軽微であったので、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは0.0001%以下又は未満の濃度で皮膚外用剤に混入することが好ましいと考えられた。これらのことは、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが皮膚組織の損傷、欠損、変性脱落を示す疾患(皮膚の潰瘍、外傷、熱傷、凍傷、紫外線障害、放射線障害、電撃傷、褥創、創傷、水疱性皮膚疾患等)や皮膚の病理組織学的変化をきたす疾患(たとえば、今日の皮膚疾患治療指針第2版;編集、池田重雄、今村貞夫、大城戸宗男、荒田次郎、医学書院;1996に記載の疾患ならびに、創傷、熱傷、放射線障害、凍傷、紫外線障害、電撃症、外傷、皮膚潰瘍、褥創、接触性皮膚炎、水疱性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾皮症、自家感作性皮膚炎、紅皮症、剥脱性皮膚炎、表皮水疱症、光線過敏症、慢性色素性紫斑(シャンバーグ病)、ストロフルス、虫刺され、痒疹、多形滲出性紅斑、環状紅斑、結節性紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、乾癬、扁平苔癬、魚鱗癬、毛孔性苔癬、黄色腫症、皮膚アミロイドーシス、単純疱疹、ウイルス性いぼ、伝染性軟属腫、膿皮症、皮膚結核、皮膚非定型抗酸菌症、白癬、皮膚・口腔カンジダ症、疥癬、毛虱症、梅毒、ケロイド、肥厚性瘢痕、血管腫、リンパ腫、母斑、尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、黒皮症、汗疱、あせも、にきび、酒査皮(しゅさ)、酒査皮(しゅさ)様皮膚炎、口腔粘膜潰瘍、口内炎、口囲皮膚炎、皮膚の老化症状、脱毛症、爪囲炎、ドライアイ、嵌入爪等)の予防・治療・処置に有用であることを物語っている。なお、当然のことながら、皮膚組織の損傷、欠損、変性脱落を示す疾患も、皮膚の病理組織学的変化をきたす疾患の中に含まれる。もちろん、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、低濃度・低用量のジンセノサイドRbと同様に、口腔粘膜の損傷、咬傷、創傷、熱傷、外傷もしくは欠損による疾患や粘膜ならびに口腔粘膜の病理組織学的変化をきたすあらゆる疾患や病態、すなわちう蝕、歯髄炎、辺緑性歯周組織炎、口内炎、舌炎、再発性アフタ、口腔内アフタ、口臭、口腔異常感症、歯性感染症、口腔粘膜咬傷、舌の咬傷、口腔粘膜熱傷、舌の熱傷、舌の損傷、口腔粘膜損傷、歯肉炎、歯槽膿漏、カタール性口内炎、壊疽性口内炎、ワンサン口内炎、アフタ性口内炎、急性疱疹性歯肉口内炎、ヘルパンギーナ、帯状疱疹、口腔粘膜びらん、口腔粘膜潰瘍、褥瘡性潰瘍、放射線性口内炎、天疱瘡、口腔カンジダ症、粘膜欠損、粘膜びらん、粘膜潰瘍、扁平苔癖、Riga−Fede病、平滑舌、赤平舌、シェーグレン症候群等による疾患の予防・処置又は治療に有用である。
【0142】
PCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)において、本発明者ら(阪中、田中、仲田)は、ジヒドロジンセノサイドRbを6μg/日〜60μg/日の用量で体重300g程度の脳梗塞ラットに静脈内投与すれば優れた脳梗塞治療効果が得られることを発明している。また、ジンセノサイドRbも同様の用量で静脈内投与すると、優れた脳梗塞治療効果、創傷治癒促進作用又は皮膚組織再生・再構築促進作用がみられる。従って、ジヒドロジンセノサイドRbも前記した用量で静脈内投与すると、優れた創傷治癒促進作用又は皮膚組織再生・再構築促進作用を発揮すると考えられる。このような推測に基づけば、皮膚組織又は粘膜組織の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾病もしくは皮膚又は粘膜の病理組織学的変化をきたす疾病を患ったヒトもしくは脊椎動物(体重60kgと仮定)の静脈内への至適薬物(ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRb)投与量は、体重あたりで計算すると1日あたり1.2mgから12mgということになる。従って本発明の医薬組成物をヒト皮膚疾患又は粘膜疾患の予防、治療、処置に使用する場合、1日あたりの全身投与量としては、患者の個人差や病状にもよるが、0.001mg以上、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは10mg以上である。しかし、一般に動物の体重が増加するにつれて体重あたりの必要薬物投与量が減少することから、ヒトでは、この用量の10分の1以下でも充分効果・効能を示す可能性がある。本発明の医薬組成物は副作用が少なく、前記皮膚疾患の予防、処置、治療における投与量の上限としてはかなり多量にすることもできるが、1日あたり1g以下、好ましくは0.1g以下である。また、皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤10g中に含有されるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの量も100mg以下、好ましくは1mg以下、より好ましくは0.001mg以下、さらに好ましくは0.00001mg以下であると言える。すなわち、皮膚疾患や粘膜疾患を有するヒトへの1日あたりのジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの皮膚又は粘膜外用投与量は病状や個人差にもよるが通常100mg以下、好ましくは1mg以下、より好ましくは0.001mg以下、さらに好ましくは0.00001mg以下と考えられる。
【0143】
本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物の投与方法としては、血管内投与特に静脈内投与が好ましく、前記した投与量を断続的又は連続的に投与することができる。本発明の有効成分であるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbはサポニンの1種であり、通常の方法により製剤化することができる。例えば、本発明の水溶性医薬組成物は、凍結乾燥結晶を生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液等に溶解することにより静脈内投与することができる。もちろん、前記のごとく溶解後に点滴用組成物などの静脈内投与製剤に添加して使用してもよい。さらに、脂肪乳剤、リポソーム製剤、徐放剤としても使用可能である。静脈内投与するときの製剤の濃度としてはあまり高濃度でない限り任意の濃度に調整することができ、例えば0.001〜100mg/ml、好ましくは0.01〜10mg/ml、より好ましくは0.1〜1mg/ml程度にして投与することができる。前述の疾患の予防、処置もしくは治療のための皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤としてジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを利用するときは、既述のごとく任意の基剤たとえば水溶性基剤、乳剤性基剤、軟膏基剤、配合剤もしくは脂溶性基剤等に、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.0001重量%以下又は未満さらに好ましくは0.000001重量%以下、10−15重量%以上となるように混入すればよい。ただし、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤を長期にわたって投与するとき、あるいは皮膚の創傷の程度が軽症である患者に投与するときは、その濃度を10−20重量%まで下げてもよい。前記皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの濃度の上限は、10重量%以下である。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤は、皮膚局所に塗布できる形であってもよいし、噴霧できる形であってもよい。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、既製のあらゆる化粧品や任意の有効成分を含有する新規化粧品に混入することができるが、化粧品内におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの濃度は0.001重量%(10−3重量%)未満、10−15重量%以上に維持することが好ましい。ただし、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを含有する化粧品又は健康薬をきわめて長期にわたって使用するときは、その濃度を10−20重量%まで下げてもよい。また、前述のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤、粘膜外用剤、健康薬もしくは化粧品は、病変局所もしくは皮膚局所におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度を100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下に維持できるのであれば、単回皮膚もしくは粘膜に外用投与するのみならず連日皮膚もしくは粘膜に外用投与してもよいし、常時外用塗布もしくは外用噴霧してもよい。
【0144】
ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様にを静脈内へ持続注入することにより優れた効果を示すが、実際の一般外来において皮膚組織の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾病もしくは皮膚の病理組織学的変化をきたす疾病を患ったヒト又は動物を治療するときは、連日ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの単回静脈内注入を効果がみられるまで実施してもよい。また、連日ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを点滴用組成物に混入したのちに1時間前後の時間をかけて、効果がみられるまで静脈内へ投与することも可能である。もちろん、皮膚の創傷、切開創、開放創、褥創、潰瘍、熱傷、外傷、凍傷、放射線障害、紫外線障害、電撃傷、水疱性皮膚炎、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾皮症、自家感作性皮膚炎、紅皮症、花粉症、剥脱性皮膚炎、表皮水疱症、光線過敏症、慢性色素性紫斑(シャンバーグ病)、ストロフルス、虫刺され、痒疹、多形滲出性紅斑、環状紅斑、結節性紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、乾癬、扁平苔癬、魚鱗癬、毛孔性苔癬、黄色腫症、皮膚アミロイドーシス、単純疱疹、ウイルス性いぼ、伝染性軟属腫、膿皮症、皮膚結核、皮膚非定型抗酸菌症、白癬、皮膚・口腔カンジダ症、疥癬、毛虱症、梅毒、ケロイド、肥厚性瘢痕、血管腫、リンパ腫、母斑、尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、黒皮症、汗疱、あせも、にきび、酒査皮(しゅさ)、酒査皮(しゅさ)様皮膚炎、口腔粘膜損傷、口内炎、口囲皮膚炎、皮膚の老化症状、脱毛症、爪囲炎、嵌入爪等を有する患者や外科手術前後の患者のうちで、長期にわたって入院加療を要するヒトに対しては、たとえば高カロリー輸液(IVH)製剤の中にジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを添加した上で同化合物を1ヶ月以上の長期にわたって静脈内投与することもできる。もちろん、前述の疾患の予防、処置又は治療のために、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤もしくは粘膜外用剤を連日病変局所に必要回数(1日につき1〜10回程度)塗布または噴霧してもよい。
【0145】
本発明は低用量・低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが開放創(欠損)を受けた皮膚の表皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、毛包、毛乳頭、立毛筋、汗腺、脂腺、末梢神経、血管を速やかにかつ傷害前に近い状態にまで再生・再構築せしめることを世界に先がけて報告するものである。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが表皮(上皮)組織、結合組織、血管、末梢神経、腺組織の再生・再構築を促進するということは、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが単に皮膚のみならず他のあらゆる組織(たとえば、中枢神経組織、肝臓、腎臓、脾臓、造血組織、消化管、肺、膵臓、角膜、内分泌腺、外分泌腺、唾液腺、性腺、膀胱等)の再生・再構築にも有効であることを物語っている。すなわち、肝炎、肝切除ならびに肝虚血再灌流後の肝組織再生・再構築、神経外傷(頭部外傷・脊髄損傷)後の中枢神経再生・再構築、切断指趾の再生・再構築・定着、腎炎、急性尿細管壊死後の腎組織再生・再構築、脾・膵・肺切除後の臓器再生・再構築、移植骨髄の再生・定着、鼓膜損傷、角膜損傷、角膜びらん、角膜潰瘍、爪の損傷および疾患の予防、治療、処置、消化性潰瘍の予防、治療、処置、外科手術(胸部や腹部外科手術、整形外科手術、形成外科手術、美容外科手術、産婦人科手術、泌尿器科手術、眼科手術、頭頸部外科手術、歯科口腔外科手術、耳鼻咽喉科手術、獣医学手術、脳神経外科手術等)後に損傷や傷害を受けた当該臓器・組織の再生・再構築等にもジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与、挿肛投与、術中局所投与、点鼻投与もしくは病変部局所投与等が有効であるとされる。もちろん、前述の疾病や外傷に加えて、あらゆる臓器・組織の病理組織学的変化をきたす疾患や病態の予防、処置、治療にも、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは組織再生・再構築促進作用を介して効果、効能を発揮する。このようなジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの適応が期待される疾患や病態として、成書(今日の治療指針;監修、日野原重明、阿部正和、医学書院;1995;今日の治療指針;総編集、多賀須幸男、尾形悦郎、医学書院;2000)に記載されたすべての疾病や病態が考えられる。もちろん、将来原因不明の器質的疾患が新規に出現しても、もしその疾患が生体組織の病理組織学的変化をきたすものであれば、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの適応が期待される。以上記述した、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbの効果、効能、用途は、ジンセノサイドRbの効果・効能・用途と一致する。また後述の実施例で示すごとく、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、神経細胞を始めとする細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様細胞死を抑止することもできる。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは細胞死を伴うあらゆる疾患に効果・効能を発揮する。細胞死をきたす疾患についてはPCT/JP00/04102に記載されている。さらに、ジヒドロジンセノサイドRbは静脈内投与により優れた脳卒中・脳梗塞治療効果をも発揮することがPCT/JP00/04102において発明されている。
【0146】
また、皮膚の開放創(欠損)においては、当然のことながら毛包も速やかに脱落するが低用量・低濃度のジヒドロジンセノサイドRbの皮膚外用投与により、明らかに開放創部の発毛・育毛が促進される。このことから判断すると、低用量・低濃度のジヒドロジンセノサイドRbの皮膚外用投与は、開放創(皮膚の欠損)作成後、同部の発毛・育毛を促進することにより、創傷部をもとの健常な組織により近い状態にまで再生・再構築・回復・修復せしめると言える。すなわち、低用量・低濃度のジヒドロジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは発毛・育毛促進剤もしくは脱毛進行予防剤としても利用可能と思われる。もちろん、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは発毛・育毛用組成物として任意の基剤に混入後単独で使用してもよいし、その他の薬効成分(たとえば血行促進用組成物、局所刺激用組成物、毛包賦活用組成物、抗男性ホルモン、抗脂漏組成物、角質溶解用組成物、抗生物質、生薬エキス、ビタミン、アミノ酸等)と併用してもよい。具体的には、円形脱毛症、男性型脱毛症、び慢性脱毛症に対して低用量・低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与や局所外用塗布等が有効と考えられる。さらに、皮膚の開放創(欠損)においては、皮膚欠損部に分布していた末梢神経や血管も破綻、切断されるが、明らかにこの末梢神経や血管も、ジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは皮膚外用投与により速やかにかつもとの健常な状態に近いところまで再生・再構築・回復・修復すると思われる。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは神経組織や血管組織の再生や再構築を促進するための医薬組成物としても利用可能である。すなわち、糖尿病性神経症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離、脊椎すべり症、頚椎症、脊椎症性脊髄症、脊椎症性神経根症、後縦靱帯骨化症、顔面神経麻痺、脊髄損傷、末梢神経障害、圧迫性神経障害、頭部外傷、神経外傷、神経痛、神経変性疾患、末梢神経麻痺、脳卒中のいずれかの病態において、ひとたび損傷を受けた神経組織の再生・再構築を促すことによりジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの静脈内投与、局所投与、点鼻投与、挿肛投与等が効果・効能を発揮するものと思われる。一方、血管の再生・再構築促進作用を介して、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは血流障害を主症状とする疾病(大動脈炎症候群、膠原病、末梢動脈閉塞症、閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎、糖尿病性皮膚潰瘍、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、網膜中心動静脈閉塞症、レイノー病、レイノー症候群、心筋梗塞、褥創、痔疾、肛門周囲炎、骨壊死、骨端症、末梢循環不全、狭心症、肝・腎・心虚血再灌流障害、脳血管障害、骨萎縮、変形治癒骨折、遷延治癒骨折等)に効果・効能を示すと思われる。。以上記述した、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbの効果、効能、用途は、ジンセノサイドRbの効果・効能・用途と一致する。
【0147】
前述のごとく、ジヒドロジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、皮膚の表皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、血管、立毛筋、皮脂腺、汗腺、毛乳頭、毛包等の再生・再構築を促進するという事実は、当然のことながらジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの皮膚外用塗布が、表皮細胞、表皮角化細胞、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、角質細胞、真皮ならびに皮下組織の線維芽細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、皮脂腺の細胞、汗腺の細胞、立毛筋の細胞、毛包の細胞、間葉系細胞、筋上皮細胞、皮膚の幹細胞、膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞間基質等の再生・再構築をも促すことを明らかにしている。すなわち、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは皮膚組織を構成するあらゆる細胞やその分泌成分の再生・再構築を促進すると考えられる。一方、加齢に伴う皮膚の諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、脱毛、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)は、皮膚組織を構成する前記細胞が、紫外線障害や生体の老化に伴い徐々に死滅もしくは機能不全に陥り、もとの健常な状態に再生できなくなるために、生じるものと考えられる。たとえば、加齢や老化に伴う皮膚のかさつき、乾燥、脱毛、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、皮脂欠乏、かゆみなどは皮膚の汗腺、毛包、ならびに脂腺の細胞が、機能障害に陥るか死滅したままで再生しないために、生じると考えられる。また、日焼け、色素沈着、しみ、そばかす等は、日光や紫外線に照射された皮膚の細胞が死に至っても、元通りに細胞が再生しなくなるために起こると考えられる。さらに加齢に伴う、皮膚のしわ、たるみ、萎縮などは、真皮や皮下組織の線維芽細胞もしくは間葉系細胞が、加齢とともに機能不全に陥るか数が減少したために、真皮や皮下組織で充分な膠原線維、弾性線維、細網線維、細胞外基質を保持できなくなった結果、生じると言える。一方、メラノサイトの機能障害により白髪が増加するものと考えられる。さらにランゲルハンス細胞の機能障害により皮膚の免疫機能が低下し、易感染性が生じると考えられる。本発明の低濃度・低用量のジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に皮膚組織を構成するすべての細胞やその分泌成分の再生・再構築を促進することができるので、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbを化粧品の組成物として利用すれば、老化に伴う皮膚の構成細胞の減少(細胞死)、機能障害に帰因する諸症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、軽減もしくは改善することができる。さらに、ジヒドロジンセノサイドRbはジンセノサイドRbと同様に、表皮細胞、表皮角化細胞すなわちケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、角質細胞、皮脂腺の細胞、毛包の細胞、汗腺の細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞、立毛筋の細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞等を含めたあらゆる皮膚の細胞を保護すると考えられるので、やはり加齢や老化に伴う皮膚の構成細胞の死や機能障害を未然に防ぐことができると思われる。このように、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、皮膚を構成するあらゆる細胞を保護するのみならず、ひとたび皮膚の細胞が死に至るか機能不全に陥っても、それらの細胞を再生せしめることによって、加齢に伴う皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)を予防、改善もしくは軽減すると考えられる。すなわち、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは細胞保護作用と組織・細胞再生促進作用という2つの強力な作用を介して、加齢に伴う皮膚の老化症状を改善、予防もしくは軽減すると言える。しかも、本発明の実験結果から明らかなように、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは患部組織や皮膚組織における細胞外液濃度が、100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下のときに、細胞保護作用ならびに組織・細胞再生促進作用を発揮する。もちろん、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に粘膜の老化症状(萎縮、粘膜剥離、上皮剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)を予防、改善もしくは軽減するための健康薬組成物としても有用である。
【0148】
従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbをあらゆる化粧品や健康薬(化粧水(スキンローション)、乳液(ミルクローション)、ファンデーション、美容液、マッサージ剤、パック剤、乳剤、ハンドクリーム、コールドクリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、ボディーミルク、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、アイシャドウ、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、ナイトクリーム、美白クリーム、トローチ、のどあめ、健康飲料水、アイソトニックウォーター、氷、シャーベット、アイスクリーム、あめ、キャンディー、おしろい、洗眼液、洗顔液、洗眼薬、口紅、化粧石けん、うがい薬、シャンプー、リンス、歯みがき粉、入浴剤、リップクリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、下地クリーム(メイクアップベース)、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等)に微量混入して使用し、皮膚局所におけるジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度を前記のごとく低濃度に維持すれば、皮膚や粘膜の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、上皮剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)に対して優れた効果を発揮する。たとえば、加齢や老化に伴い皮膚の脂(すなわち皮脂)が欠乏するだけでも、皮膚のかさつき、かゆみ、亀裂、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥等が生じるが、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbをあらゆる化粧品に混入して使用することにより、皮脂腺の保護もしくは再生・再構築が促進され前記の加齢に伴う皮膚の老化症状を予防、改善もしくは軽減すると考えられる。また、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを含有する任意の化粧品は、表皮細胞(表皮角化細胞、角質細胞)を保護するのみならず、その再生をも促進するので、角質細胞間脂質や天然保湿因子の産生や分泌も促進することにより、皮膚の乾燥やかさつきを抑止し、皮膚に自然な潤いをもたらす。さらに、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbはケミカルピーリング(Chemical peeling)において、皮膚組織の再生・再構築を促進するための組成物として、ケミカルピーリングの全過程(前、中、後)で使用される試薬類又は投与剤のうち1種類又は2種類以上に混入することができる。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは介護施設、温泉保養施設、病院にて入浴剤として使用することにより、皮膚の老化や疾患の予防、処置、改善に役立つ。ドレッシング剤、消毒薬、洗浄剤、絆創膏、被覆剤などに混入することにより、創傷の治癒を促進し、その悪化を防止することもできる。ジヒドロジンセノサイドRbの基剤ならびに併用可能な皮膚外用組成物については、ジンセノサイドRbと同様である。
【0149】
本発明のジンセノサイド類誘導体特にジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbと同様に植物組織の発根・発芽・新生・成長・再生又は再構築を促進させることができる。肥料組成物又は成長調製用組成物としてジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを水栽培に単独で、もしくは他の有効成分とともに使用するときは、水栽培用の溶液中のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの濃度(すなわち植物組織の細胞外液濃度)は100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下に調整することが好ましい。本発明のジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは0.0001〜0.01fg/ml程度の濃度域でも充分に水栽培植物組織の発根・発芽・成長・分化・再生・新生もしくは再構築を促進し、野菜、果実、生花を含むあらゆる農作物・植物の保存・育成・栽培・改良に利用することができる。また、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを任意の固形肥料、ゲル状肥料、液状肥料、液体肥料、粉末状肥料(たとえば、単肥、土壌改良資材又は肥料、育苗肥料、水稲・麦用肥料、緩効性肥料、高度化成、普通化成、有機化成、NK・PK・PM化成、有機配合肥料、液肥等)に添加又は混入するときも、その濃度は化粧品の場合と同様に、1重量%以下、10−20%以上に設定することが好ましい。肥料添加物としてのジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの濃度の上限は10重量%以下である。
前述のごとく、植物組織の新生・再生もしくは再構築を促進させるジヒドロジンセノサイドRbの細胞外液濃度は、動物組織(皮膚組織)を再生・再構築させる場合と同様に、極めて低いと言える。従って、低用量・低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbは、植物の栽培・育成・保存、生花の保存・栽培・育成、水栽培、農作物栽培・育成、野菜の栽培・育成、果実(フルーツ)の栽培・育成、たばこの栽培・育成、きのこ栽培、薬用植物栽培、茶葉の栽培・育成等に利用できると言える。ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbからなる肥料組成物は、任意の肥料に好ましくは低濃度で混入することができるし、単独で植物組織の発根・発芽・新生・再生・成長・再構築促進剤として使用してもよい。
【0150】
ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbが、ジンセノサイドRbと同様に動物組織(皮膚組織、口腔粘膜組織)のみならず植物組織の発根・発芽・新生・再生もしくは再構築を促進するという推測は、ジヒドロジンセノサイドRbを始めとするジンセノサイド類誘導体があらゆる生体組織の新生・再生もしくは再構築を促進することを物語っている。従ってジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは家畜、養殖用魚貝類、ペット用飼料への添加物すなわち飼料組成物又は成長調製用組成物としても利用できると言える。たとえば、魚貝類、甲殻類、ウナギ、ウニ、カキ、アナゴ、アコヤ貝、真珠貝等の養殖の際に、低濃度のジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを海水又は淡水に通常の飼料とともに添加すれば、これらの水産資源もしくは海産資源の発育が促進されると考えられる。もちろん、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、その細胞保護作用を介して、魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ等の海産・水産資源を外傷、創傷、病原微生物、バイオハザード、内分泌撹乱物質、環境汚染、毒素等から守ることができる。すなわち、本発明の飼料添加物は来るべき食糧危機から人類を救済するために必須のものとなる。
【0151】
次に本発明の実施の態様をさらに詳細に説明する。
本発明は、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与用製剤、粘膜外用剤もしくは皮膚外用剤からなる極めて有効な皮膚又は粘膜の損傷もしくは欠損による疾患又は皮膚又は粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患の治療・予防・処置用医薬組成物を提供する。皮膚の損傷もしくは欠損をきたす疾患として、外傷、凍傷、挫傷、挫滅創、創傷、熱傷、放射線障害、紫外線障害、電撃傷、皮膚潰瘍、切開創、開放創、褥創、水疱性皮膚疾患、乾皮症等があげられる。また皮膚の病理組織学的変化をきたす疾患として創傷、熱傷、放射線障害、凍傷、紫外線障害、電撃症、外傷、皮膚潰瘍、褥創、水疱性皮膚炎、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、乾皮症、自家感作性皮膚炎、紅皮症、剥脱性皮膚炎、表皮水疱症、光線過敏症、慢性色素性紫斑(シャンバーグ病)、ストロフルス、虫刺され、痒疹、多形滲出性紅斑、環状紅斑、結節性紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、乾癬、扁平苔癬、魚鱗癬、毛孔性苔癬、黄色腫症、皮膚アミロイドーシス、単純疱疹、ウイルス性いぼ、伝染性軟属腫、膿皮症、皮膚結核、皮膚非定型抗酸菌症、白癬、皮膚・口腔カンジダ症、疥癬、毛虱症、梅毒、ケロイド、肥厚性瘢痕、血管腫、リンパ腫、母斑、尋常性白斑、雀卵斑、肝斑、黒皮症、汗疱、あせも、にきび、酒査皮(しゅさ)、酒査皮(しゅさ)様皮膚炎、口腔粘膜損傷、口内炎、口囲皮膚炎、皮膚の老化症状、脱毛症、爪囲炎、嵌入爪等があげられる。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの優れた前記皮膚疾患の予防・処置・治療効果は、皮膚組織再生・再構築促進作用、もしくは創傷治癒促進作用によってもたらされる。糖尿病患者、高齢者、免疫不全病患者、エイズ患者、低栄養患者、癌患者などが外科手術を受ける際に、本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを術前術後にわたって静脈内持続投与もしくは皮膚外用投与しておけば術創の治癒が促進され、組織の再生・再構築が促進されるので、縫合不全も未然に防がれて術後の早期回復が期待される。もちろん、一般状態の良好な患者が、外科手術を受ける前後にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与もしくは皮膚局所投与してもよい。術中に低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを局所投与することも極めて有用と考えられる。口腔粘膜の損傷、咬傷、創傷、熱傷、外傷もしくは欠損による疾患や口腔粘膜の病理組織学的変化をきたす疾患や病態として、う蝕、歯髄炎、辺縁性歯周組織炎、口内炎、舌炎、再発性アフタ、口腔内アフタ、口臭、口腔異常感症、歯性感染症、口腔粘膜咬傷、舌の咬傷、口腔粘膜熱傷、舌の熱傷、舌の損傷、口腔粘膜損傷、歯肉炎、歯槽膿漏、カタール性口内炎、壊痕性口内炎、ワンサン口内炎、アフタ性口内炎、急性疱疹性歯肉口内炎、ヘルパンギーナ、帯状疱疹、口腔粘膜びらん、口腔粘膜潰瘍、褥瘡性潰瘍、放射線性口内炎、天疱瘡、口腔カンジダ症、扁平苔癬、Riga−Fede病、平滑舌、赤平舌、シェーグレン症候群等があげられるが、これらの疾患や病態すべてにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbが有効とされる。もちろん、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbも本発明のジンセノサイド類特にはジヒドロジンセノサイドRbと同様の効果・用途・効能を示すと言える。
【0152】
また、本発明の低濃度、低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、口腔粘膜もしくは皮膚外用投与は損傷、外傷、創傷もしくは欠損を受けた皮膚組織や口腔粘膜組織の再生・再構築を促進して創傷治癒を早めるので、このような事実に基づけば、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与は、腹部や胸部の内臓器官、脳神経、頭頸部の器官、ならびに骨、関節、筋、血管、神経の損傷、外傷、創傷もしくは欠損に対しても、皮膚組織の損傷、創傷、外傷もしくは欠損の場合と同様に、組織再生・再構築促進作用、創傷治癒促進作用を介して効果・効能を発揮するものとされる。従って、外科的手術における臓器切断吻合部の回復促進、縫合不全防止、消化性潰瘍病変の予防、治療、処置、肝・腎・脾・膵・肺・腸管・子宮・膀胱・胆のう切除術後の臓器再生・再構築促進、骨・関節・筋・靱帯・腱・末梢神経再建手術(整形外科手術)における当該組織の再生・再構築促進、肝・腎・脾・膵・肺・腸管・泌尿生殖器、内分泌器官等の臓器の損傷、創傷、外傷、欠損の予防、治療、処置にもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、点鼻投与、点耳投与、舌下投与、吸入投与、局所投与、挿肛投与等が有効と考えられる。例えば指尖損傷に於いて、皮膚、爪、結合組織、骨、血管、神経を再生させることも可能である。もちろん、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbはあらゆる臓器・組織において病理組織学的変化をきたす器質的疾患に対して、組織再生・再構築促進作用を介して効果・効能を発揮する。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbも、ジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有する。
【0153】
本発明は低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内持続投与粘膜外用投与もしくは皮膚外用投与により、切開創、開放創(欠損)、咬傷を受けた皮膚もしくは口腔粘膜の表皮組織、上皮組織、真皮の結合組織、真皮の乳頭、皮下組織、粘膜固有層、立毛筋、毛包、唾液腺、毛乳頭、汗腺、混合腺、脂腺、筋組織、末梢神経、血管が速やかにかつ傷害前に近い状態にまで再生・再構築することを世界に先がけて報告するものである。ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが表皮(重層扁平上皮)、結合組織、末梢神経、腺組織の再生・再構築を促進するということは、ジンセノサイドRbが単に皮膚のみならず他のあらゆる組織・臓器(たとえば、肝臓、腎臓、脾臓、造血組織、脳、脊髄、末梢神経、消化管、肺、膵臓、角膜、唾液腺、性腺、泌尿器等)の再生・再構築にも有効であることを物語っている。すなわち、肝炎、肝切除ならびに肝虚血再灌流後の肝再生・再構築、腎炎、急性尿細管壊死後の腎再生・再構築、脾切除後の脾再生・再構築、切断指趾の再生・再構築・定着、移植臓器・組織・細胞・骨髄の再生・定着、鼓膜損傷後の再生・再構築、角膜損傷後の再生・再構築、角膜びらん、角膜潰瘍、角膜ヘルペス、爪の損傷および疾患の予防、治療、処置、消化性潰瘍の予防、治療、処置、更年期障害、外科的手術(胸部外科手術、腹部外科手術、整形外科手術、形成外科手術、産婦人科手術、泌尿器科手術、美容外科手術、眼科手術、頭頸部外科手術、耳鼻咽喉科手術、獣医学手術、口腔外科手術、脳神経外科手術等)の際に傷害を受けた当該臓器・組織の再生・再構築等にもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、術中局所投与、挿肛投与、舌下投与、吸入投与、皮膚外用投与、粘膜外用投与、点鼻投与もしくは病変部局所投与等が有効であるとされる。特に外科的手術におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの縫合不全防止効果は極めて大きいと考えられる。もちろん、ヒトのみならず前記疾患を有するペット、家畜、脊椎動物に対しても、低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを既述の方法で獣医薬組成物として投与できる。また、ジンセノサイド類を含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbも、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有する。
【0154】
また、皮膚の開放創(欠損)においては、当然のことながら毛包も速やかに脱落するが低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは皮膚外用投与により、明らかに開放創部の発毛・育毛が促進される。このことから判断すると、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与や皮膚外用投与は、開放創(皮膚の欠損)部の発毛・育毛を促進することにより、創傷部をもとの健常な組織により近い状態にまで回復・修復せしめると言える。すなわち、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは発毛・育毛促進剤もしくは脱毛進行予防剤としても利用可能と思われる。より具体的には、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは局所投与・外用塗布・外用噴霧が円形脱毛症、男性型脱毛症、び慢性脱毛症の予防・治療・処置に有効とされる。さらに、皮膚の開放創(欠損)や口腔粘膜の咬傷においては、皮膚欠損部や粘膜欠損部に分布していた末梢神経や血管も破綻、切断されるが、明らかにこの末梢神経や血管も、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与もしくは皮膚外用投与により速やかにかつもとの健常な状態に近いところまで再生・再構築・回復すると思われる。従って、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは神経組織や血管組織の再生や再構築を促進するための医薬組成物としても利用可能である。すなわち、糖尿病性神経症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離、脊椎すべり症、頚椎症、後縦靱帯骨化症、顔面神経麻痺、脊髄損傷、頭部外傷、神経外傷、神経変性疾患、末梢神経麻痺、神経痛、脳卒中のいずれかの病態において、ひとたび損傷や傷害を受けた神経組織の再生・再構築を促すことによりジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、点鼻投与、挿肛投与もしくは病変部局所投与等が効果・効能を発揮するものと思われる。一方、血管の再生・再構築促進作用を介して、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは血流障害を主症状とする疾病(大動脈炎症候群、膠原病、末梢動脈閉塞症、閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、網膜中心動静脈閉塞症、レイノー病、レイノー症候群、心筋梗塞、褥創、末梢循環不全、狭心症、肝・腎・心虚血再灌流障害、痔疾、脳血管障害等)に効能を示すと思われる。
もちろん、特願平10−365560号ならびにPCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)に記載されたごとくこれらの血流障害を主症状とする疾病において、血流障害にさらされた当該組織における細胞死を抑制することもジンセノサイド類特にジンセノサイドRbの忘れてはならない効能である。従って、中枢末梢を問わず血流障害を主要症状とする疾病において、ジンセノサイドRbは少なくとも2つの作用機構を介して、血流障害にさらされた組織・細胞の障害を軽減する。また、ジンセノサイド類を含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有する。
【0155】
前述の特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)にて発明されたごとく、ジンセノサイドRbは細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現上昇を介して強力に細胞・組織を保護すると考えられるので、このことから判断すると、低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは皮膚移植用ケラチノサイト培養シートの保護・保存・維持にも有効とされる。また、培養皮膚の保存のみならず培養皮膚作成のための細胞の保存・保護・維持、人工臓器作成のための幹細胞の保存・保護・維持、ならびに移植用臓器・組織又は細胞(肝臓、腎臓、心臓、膵臓、肺、髄膜、骨、関節、靱帯、消化管、角膜、皮膚、血管、末梢神経等)の保存・保護・維持にも有用と考えられる。さらに、培養皮膚移植において、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの皮膚外用投与を併用すれば、さらに移植成績も向上する。もちろんジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは移植手術の前中後にレシピエントに既述のごとく任意の方法で投与することにより、移植用臓器・組織又は細胞の再生・再構築もしくは新生を促進することができる。さらに、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは輸血用血球成分・血小板の保護・維持・再生・新生、凍結細胞(精子、卵子、幹細胞等)や凍結培養皮膚シートの保存・保護・維持・再生・再構築・新生にも有効とされる。このようにジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは再生医学(tissue engineering)に於いて臓器・組織または細胞の増殖、再生、分化、定着の促進などに供することが可能である。強力な細胞保護作用ならびに組織再生促進作用を有するジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、海産物(魚貝類、甲殻類、ウナギ、アナゴ等)の養殖や農産物の栽培にも有用であることは前述した。この場合、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは海洋資源や農作物を、内分泌撹乱物質、毒素、外傷、微生物、バイオハザード、環境汚染等から守ると考えられる。さらに、低濃度・低用量のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、粘膜の老化症状(萎縮、上皮剥離、粘膜剥離、ひびわれ、再生不良、乾燥等)の予防、改善、処置のための健康薬組成物としても利用できる。ジンセノサイド類を含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもジンセノサイド類と同様の効果・用途・効能を有する。
【0156】
本発明のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは創傷、開放創、切開創もしくは損傷を受けて変性脱落した皮膚組織の再生・再構築を促進することができるので、当然のことながら紫外線照射を受けて変性脱落した皮膚組織をも、もとの健常な状態にまで再生・再構築せしめることができると考えられる。一般に皮膚の老化は主として紫外線照射や加齢に伴う皮膚の細胞の脱落や機能障害によりもたらされることが知られており、その結果皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、亀裂、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、乾燥等が年齢とともに悪化の一途をたどることが多い。従って、低用量・低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与や皮膚外用塗布・噴霧等は紫外線照射や加齢に伴い変性脱落した皮膚組織の再生や再構築を促進することにより、加齢もしくは老化に伴う皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等の予防・処置・治療に有効であると考えられる。すなわち、低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbはあらゆる化粧品の原材料・組成物としても利用可能である。また、ケミカルピーリング(Chemical peeling)後に皮膚組織の再生・再構築を促進させるための組成物としても、低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与、局所投与、局所塗布、局所噴霧が有用とされる。ジンセノサイド類を含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様の効果・用途・効能を有する。
【0157】
本発明のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、患部組織の細胞外液濃度が低濃度で維持できる限り静脈内投与剤としてのみならず外用剤や病変部局所注射剤としても使用可能である。さらに、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの投与法として、皮下注射、筋肉注射、点眼、眼軟こう、点鼻、点耳、耳軟こう、吸入、挿肛投与、経口投与、舌下投与、経皮投与等任意の経路が選択できる。ただし、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを経口投与剤として使用する時は、ジンセノサイド類単独投与では効果があまり期待できないことがあるので、消化管での分解を阻止する担体(たとえばシェラック、キトサンカプセル、ゼラチン、油層等)あるいは消化管での吸収を促進する担体にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入・封入又は結合させたのちに、経口投与することが必要になる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの代謝産物のうちジンセノサイド類と同等もしくはそれ以上の効果・効能を有するものが同定されれば、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの適応が期待される前述の疾病に対して、その活性代謝産物を既述の方法で投与することもできる。また本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物と高分子化合物との分散体を作成した後、噴霧乾燥させて任意の投与経路を選択することも可能である。さらに、高分子化合物のミクロ粒子にジンセノサイドRbをコーティングしたのちに、任意の投与経路を選択してもよい。ジンセノサイド類を含有する薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘の粗サポニン分画ならびにジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbもジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様の効果・用途・効能を有する。
【0158】
本発明のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる静脈内投与製剤、粘膜外用剤もしくは皮膚外用剤は、皮膚組織再生・再構築促進作用、口腔粘膜組織再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用を介して、皮膚の損傷、創傷、外傷もしくは欠損による疾患の予防・治療・処置に対して歴史上かつてない画期的な効果を発揮する。まさしく、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの投与により“傷が早く確実に治る”のである。従って、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその代謝産物をリード化合物として使用することにより、今後、さらに皮膚の損傷、創傷、外傷、欠損をもたらす疾患の治療薬が数多く新規に開発されるものと期待される。さらに、このことを裏付けるために本発明ではすでにジンセノサイドRbをリード化合物として使用することにより作成したジヒドロジンセノサイドRbが優れた皮膚組織再生・再構築促進作用を示すことを見出している。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの標的分子を同定することにより、標的分子の機能を修飾する新規化合物の合成も可能となる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの化学構造の一部を修飾することによりプロドラッグを作成し、既述のごとく任意の投与経路、投与方法を選択することができる。本発明の医薬組成物は低濃度、低用量のものを使用する限り副作用がほとんど無く、安定性の高い薬物を提供するものである。
【0159】
さて、以下に化粧品組成物としてのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる皮膚の老化症状防止についてさらに詳述する。
加齢に伴う皮膚や粘膜の老化は主として皮膚や粘膜を構成する細胞の減少(死)、機能障害、再生不良もしくは紫外線照射によりもたらされ、萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、脱毛、白髪、ふけ、色素沈着、日焼け、乾燥等の症状を呈する。ジンセノサイドRbは患部組織の細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下で皮膚組織又は粘膜組織ならびにそれらの組織を構成する細胞の再生・再構築を促進し、かつ細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現を促進して、表皮細胞、表皮角化細胞、上皮細胞、皮脂腺の細胞、角質細胞、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、毛包の細胞、唾液腺の細胞、汗腺の細胞、粘液腺の細胞、筋細胞、漿液腺の細胞、立毛筋の細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、脂肪細胞等を含めた皮膚や粘膜の細胞を保護すると考えられるので(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)、あらゆる化粧品や健康薬、たとえば化粧水(スキンローション)、乳液(ミルクローション)、その他のローション、ゲル、エマルジョン、パウダー、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、ファンデーション、ハンドクリーム、コールドクリーム、アイシャドウ、クレンジングクリーム、洗眼液、洗眼薬、洗顔液、洗顔フォーム、ナイトクリーム、美白クリーム、チューインガム、トローチ、のどあめ、おしろい、口紅、入浴剤、化粧石けん、うがい薬、シャンプー、リンス、歯みがき粉、リップクリーム、下地クリーム(メイクアップベース)、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを微量混入して使用し、皮膚局所又は粘膜局所における細胞外液濃度を前記のごとく低濃度に維持すれば皮膚や粘膜の老化症状(皮膚の萎縮、再生不良、易感染性、たるみ、亀裂、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、乾燥等又は粘膜の萎縮、剥離、上皮剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)に対して優れた効果を発揮する。
【0160】
液状の化粧品、たとえば通常のUVリキッドファンデーションにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときは、その濃度が1000ng/ml以下、好ましくは10ng/ml以下、より好ましくは0.01fg/ml〜100pg/mlとなるように調整した上で、連日皮膚に外用塗布もしくは外用噴霧すれば皮膚局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が前記のごとく、低く維持され、皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、亀裂、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)の改善、進行予防もしくは悪化予防に役立つ。また、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品たとえば、通常の下地クリームやナイトクリームにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときも、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの混入量をクリーム1gあたり1000ng以下、好ましくは10ng以下、より好ましくは0.01fg〜100pg程度にして、連日皮膚に外用塗布すれば、皮膚の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、亀裂、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)の予防、改善、処置に役立つ。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを皮膚の老化症状の予防、改善、処置の目的で上記の化粧品に混入する際の濃度の上限は、液状の化粧品の場合、10μg/ml未満または以下、固形ゲル状もしくはクリーム状の化粧品の場合は10μg/g未満または以下である。言い換えれば、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは0.001重量%未満または以下の濃度で上記の化粧品に混入することが好ましい。さもなければ、かえって皮膚の正常細胞の膜を障害することにもなりかねない。すなわち、長期間使用する化粧品や健康薬にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入するときは、本発明で既述した皮膚疾患の予防、処置、治療用の外用剤よりもさらに濃度を低くする方が安全と考えられる。前述のごとく、皮膚の開放創を治療するのには0.00000001重量%(10−8重量%)のジンセノサイドRbを外用投与すれば充分な効果が得られるので、通常化粧品内のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度はそれよりも低くする方が好ましい。従って、薬用人蔘、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘粗サポニン分画を化粧品組成物として使用するときも、その濃度は0.001重量%未満に、好ましくは0.00001重量%以下、より好ましくは0.0000001重量%以下に下げることが好ましい。もちろん、上記のごとくジンセノサイド類特にジンセノサイドRbを微量含有する化粧品は、顔面に外用塗布、外用噴霧するのみならず、日光に頻繁に照射されるその他の皮膚組織(たとえば四肢、体幹、頭頚部、項部等)に外用塗布もしくは外用噴霧できる。低濃度のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは介護施設、温泉保養施設、病院等において任意の入浴剤に微量混入することにより、皮膚の老化症状の予防、処置、改善に役立ち、高齢者や寝たきり患者の皮膚疾患(褥創、潰瘍等)を予防、処置、治療することができる。粘膜の老化症状を予防、処置、改善するためにジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを健康薬組成物又は粘膜外用組成物として使用するときも、上記のごとく低濃度のものを用いることが必要である。
【0161】
このように、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを含有する化粧品もしくは健康薬を長期にわたって常時使用することにより、皮膚や粘膜の老化に伴う症状(萎縮、易感染性、たるみ、亀裂、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)もしくは粘膜の老化症状(萎縮、粘膜剥離、上皮剥離、再生不良、ひびわれ、乾燥等)を予防、軽減もしくは改善することができる。もちろん、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbのかわりに低濃度の薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキス又は薬用人蔘を用いて、皮膚や粘膜の老化症状を予防、改善、軽減してもよい。
ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは前述のごとく低濃度のものを用いる限り、既製のあらゆる化粧品や健康薬に混入することができる。また、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbはこれまで使用されたあらゆる化粧品組成物とともに化粧品に混入できる。ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbとともに使用できる化粧品組成物については米国特許5,663,160ならびにWO99/07338に記載されている。ただし、これらのジンセノサイド類特にジンセノサイドRbとともに使用できる化粧品組成物の濃度も、米国特許5,663,160ならびにWO99/07338に記載されたものよりも低くすることを本発明は特徴としている。もちろん、任意の有効成分を含有する化粧品又は健康薬の基剤を新規に開発する場合にも、その中にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを前述のごとく低濃度で混入することにより皮膚又は粘膜の老化による諸症状を予防、処置、改善することができる。また、ケミカルピーリング(chemical peeling)において皮膚組織の再生・再構築を促進する際も、前述のごとく低濃度(0.001重量%未満もしくは以下、好ましくは0.00001重量%以下、より好ましくは0.00000001重量%以下、10−20重量%以上)のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbをケミカルピーリング剤の中に混入し、主としてケミカルピーリング直後から使用すればよい。また、その他の任意の化粧品組成物を、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと併用するときは、それら任意の化粧品組成物の濃度も従来より低く設定することが好ましい。
さらに、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、既製の発毛・育毛剤や任意の有効成分を含有する新規の発毛・育毛剤に、化粧品の場合と同様の方法で好ましくは低濃度(0.001重量%未満または以下、好ましくは0.00001重量%以下、より好ましくは0.00000001重量%以下、10−20重量%以上)で混入することにより、発毛、育毛、脱毛の悪化予防、脱毛の進行予防のために使用することができる。もちろん、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbのかわりに、ジンセノサイドRbを含有する任意の天然物、天然物のエキス、天然物の抽出物、薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画等をあらゆる化粧品、発毛剤、育毛剤又は脱毛進行予防剤に混入して、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの最終的な含有量が前述のごとく低濃度に維持できるのであれば皮膚もしくは粘膜の老化症状や脱毛の改善、予防又は処置のために利用できる。ただし、上記の化粧品や発毛剤・育毛剤・脱毛進行予防剤に混入するジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度はあくまでも目安であり、実際には皮膚局所の細胞外液濃度が1ng以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下になるように、化粧品・健康薬(入浴剤を含む)・発毛剤・育毛剤・脱毛進行予防剤へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbならびにジンセノサイド類含有天然物の混入量を調整する必要がある。既述のごとく長期にわたって、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘、薬用人蔘エキス又は薬用人蔘粗サポニン分画を化粧品組成物、発毛・育毛用組成物、健康薬組成物として使用するときは、化粧品、発毛・育毛剤、健康薬中のそれらの濃度を10−20重量%まで低くしても効果がみられる。
【0162】
ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを褥創治療、皮膚潰瘍治療、創傷治療、皮膚組織再生・再構築促進等のために、皮膚の病変部もしくはその周辺に局所注射するときも、局所注射液内のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度を、10μg/ml以下、好ましくは100ng/ml以下、より好ましくは1fg〜1000pg/ml程度に調整することが必要である。局所注射液におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度の上限は、10mg/ml以下、好ましくは100μg/ml以下である。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる皮膚局所注射剤の溶媒としては、ジンセノサイドRbを静脈内投与用製剤として使用するときと同様に、生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液、リポソーム、脂肪乳剤等任意のものが選択できる。もちろん前述の局所注射剤は皮膚のみならず、あらゆる臓器・組織(移植臓器を含むに注入することができるし、点眼薬、点耳薬としても利用可能である。また、局所注射剤における前述のジンセノサイド類の濃度はあくまでも目安であり、実際には皮膚局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下になるように局所注射剤へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの混入量を調整する必要がある。
【0163】
ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbを褥創治療、皮膚潰瘍治療、創傷治療、皮膚組織再生促進等のために皮膚外用剤として利用するときも、任意の基剤にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入して使用できるが、やはりその濃度は基剤100gもしくは100mlあたり、100mg(0.1重量%)以下又は未満、好ましくは10mg(0.01重量%)以下又は未満、より好ましくは1mg(0.001重量%)以下又は未満、1fg(10−15重量%)以上に調整する必要がある。ジンセノサイド類を前述の皮膚疾患の予防、治療、処置のために皮膚外用剤に混入する際の濃度の上限は、およそ10重量%以下、好ましくは1重量%以下と考えられる。
ただし、皮膚疾患治療用外用剤におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの含有量はあくまでも目安であり、実際には皮膚局所におけるジンセノサイド類の細胞外液濃度を指標にして外用剤へのジンセノサイド類の混入量を調整する必要がある。
【0164】
さて、PCT/JP00/04102に記載されたごとく以下に薬用人蔘の粗サポニン分画について本発明者が有している実験結果を詳細に紹介することにより、粗サポニン分画が、ジンセノサイドRbと同様に皮膚組織の再生・再構築に対しても効果・効能を発揮することを述べたい。本発明者の一人(阪中)は、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与が寝たきりの脊髄損傷ラット(体重約300g)を起立せしめるという優れた効果・効能を示すことをすでに見出している(特願平11−243378、PCT/JP99/06804、ジンセノサイドRbからなる脳血管再生・再構築促進剤ならびに神経組織二次変性抑止剤)。さらに、本発明者ら(阪中、仲田)は低用量の薬用人蔘の粗サポニン分画(870μ/日)の静脈内持続投与が、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与と同様に、寝たきりの脊髄損傷ラット(体重約300g)を起立せしめるということをすでに見出している(PCT/JP00/04102、薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)。
このように脊髄損傷ラットを用いた実験結果において、薬用人蔘の粗サポニン分画(870μ/日)の静脈内持続投与が、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与と同様の効果を示すということは、ジンセノサイドRbよりおよそ14.5倍程度多い粗サポニン分画を持続投与すれば、患部組織の細胞外液において有効な粗サポニン分画の濃度が維持できることを示している。ちなみに本発明者の一人(阪中)は、ジンセノサイドRbが患部組織における細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となる濃度で効果・効能を発揮することを特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)において明らかにしている。従って、低用量の粗サポニン分画は、患部組織における細胞外液濃度が、14.5ng/ml以下、好ましくは145pg/ml以下、より好ましくは1450fg/ml以下の濃度で優れた神経細胞保護作用を示すと考えられる。また、ジンセノサイドRbは患部組織の細胞外液濃度が1〜100fg/ml程度あるいはそれ以下(たとえば0.01fg/ml)でも充分な効果が得られるので、粗サポニン分画からなる医薬組成物や製剤は、患部組織の細胞外液濃度が14.5〜1450fg/mlまたはその100分の1程度でも充分な効果を示すと考えられる。
【0165】
ところで、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与は、特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)において本発明者の一人(阪中)により明らかにされたごとく、優れた脳卒中・脳梗塞治療効果を発揮することが判明している。また、前述の脊髄損傷ラットを用いた実験結果から、粗サポニン分画(870μg/日)の静脈内持続投与が、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与と同様に、優れた脊髄損傷治療効果を示すことも判明している。これらのことから考えると、粗サポニン分画(870μg/日)の静脈内持続投与は、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与と同様に、優れた脳卒中・脳梗塞治療効果をも発揮することが容易に推測できる。さらに、ジンセノサイドRb 6μg/日の静脈内持続投与も優れた脳梗塞・脳卒中治療効果を示すことより(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)、粗サポニン分画87μg/日の静脈内持続投与も優れた脳梗塞・脳卒中治療効果を発揮すると考えられる。すなわち、薬用人蔘の粗サポニン分画は体重約300gのラットにおいて、1日あたり87μgから870μgの静脈内持続投与により、優れた脳細胞又は神経細胞保護作用を示すと言える。従って1日あたり2.9mg/kgから0.29mg/kgの粗サポニン分画を静脈内へ持続投与することにより、優れた脳細胞保護効果もしくは神経細胞保護効果が得られることになる。しかし、これはあくまでも体重300g程度のラットに対する粗サポニン分画投与量の目安であって、粗サポニン分画をヒトに静脈内投与するときは、体重1kgあたりの投与量を、前述の量の2分の1から20分の1程度にする必要があると考えられる。すなわち、ヒトに粗サポニン分画を静脈内持続投与するときは、患者の病状や個人差にもよるが1日あたり1450μg/kg以下、14.5μg/kg以上に設定することが好ましい。
【0166】
また、特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)において、本発明者の一人(阪中)はジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与により、脳神経組織の細胞死抑制因子すなわちBcl−x遺伝子発現が上昇することを発明しているので、粗サポニン分画(870μg/日)の静脈内持続投与でもBcl−x遺伝子発現が上昇すると考えられる。すなわち、粗サポニン分画は、患部組織における細胞外液濃度が、14.5ng/ml以下、好ましくは145pg/ml以下、より好ましくは1450fg/ml以下の濃度で、神経細胞のBcl−x遺伝子の発現を促進すると考えられる。
【0167】
さらに、低用量の粗サポニン分画の静脈内持続投与が、脊髄損傷・脳梗塞・脳卒中の予防、治療、処置に有用であるということは、粗サポニン分画に含有される成分のいずれかが前述の脳・神経疾患に対して優れた効果・効能を示すことを明らかにしている。もちろん、粗サポニン分画の複数の成分が前述の脳・神経疾患に対して優れた効果・効能を示すことも考えられる。さて、粗サポニン分画の中に含有される化学構造が類似した精製サポニン類もしくはジンセノサイド類はジンセノサイドRo、ジンセノサイドRb、ジンセノサイドRb、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg、ジンセノサイドRg、ジンセノサイドRg、ジンセノサイドRh、ジンセノサイドRh、ジンセノサイドRa、ジンセノサイドRa、ジンセノサイドRa、ノトジンセノサイドR、キンケノサイドR、マロニルジンセノサイドRb、ジンセノサイドRS、マロニルジンセノサイドRb、ジンセノサイドRS、マロニルジンセノサイドRc、マロニルジンセノサイドRd、ジンセノサイドRb、(20S)−ジンセノサイドRg、20−グルコジンセノサイドRf、ノトジンセノサイドR、(20R)−ジンセノサイドRg、(20R)−ジンセノサイドRh等であるが、このうちジンセノサイドRbの含量が他の精製サポニンの2倍量以上存在することが知られている。ジンセノサイドRbは、患部における細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下のときに神経細胞もしくは脳細胞保護作用を示すことを考えると、その他の精製サポニンすなわちジンセノサイド類もこれと同等ないし、それよりも10分の1から100分の1程度低い濃度域で脳細胞又は神経細胞を保護する可能性が高いと考えられる。ただし、粗サポニン分画に含まれる成分は、前述の精製サポニン類すなわちジンセノサイド類に限定されるものではない。
【0168】
以上のことより、薬用人蔘の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかがジンセノサイドRbと同様に優れた脳細胞・神経細胞保護作用ならびに脊髄損傷、頭部外傷、神経外傷治療効果を示すことが推測される。従って、低濃度・低用量の粗サポニン分画、もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかが、特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)ならびに特願平11−243378、PCT/JP99/06804(ジンセノサイドRbからなる脳血管再生・再構築促進剤ならびに神経組織二次変性抑止剤)において本発明者の一人(阪中)が記載したジンセノサイドRbの効果・効能・用途を、すべて兼ね備えていると考えられる。すなわち、低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかは、ジンセノサイドRbと同様に細胞死抑制遺伝子産物Bcl−xの発現を上昇せしめ、神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止するのみならず、末梢組織においても優れた細胞保護作用を発揮するものと考えられる。
【0169】
ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与が脳卒中や神経外傷を始めとする脳神経疾患の予防、処置、治療に極めて有効であり、かつ優れた細胞保護効果を示すということを見出した既出願特許(特願平10−365560、PCT/JP99/02550;特願平11−243378、PCT/JP99/06804)に加えて、本発明ではジンセノサイドRb(60μg/日もしくは12μg/日)の静脈内持続投与が、皮膚組織再生・再構築促進作用もしくは創傷治癒促進作用を介して、優れた皮膚疾患治療効果を示すことが判明した。従って、ジンセノサイドRb(60μg/日)の静脈内持続投与が薬用人蔘の粗サポニン分画(870μg/日)の静脈内持続投与と同様の効果・効能を示すという前述の推測に基づけば、薬用人蔘の粗サポニン分画(870μg/日)の静脈内持続投与も、皮膚組織再生促進作用もしくは創傷治癒促進作用を介して、優れた皮膚疾患治療効果を示すと考えられる。すなわち、本発明において新たに見出されたジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの効果・効能・用途はすべて、低用量・低濃度の粗サポニン分画もしくはその成分が有していると思われる。事実、前述のごとくポトスの挿し木を用いた実験で、薬用人蔘の粗サポニン分画はジンセノサイドRbと同様植物組織の再生・新生・再構築を促進することも見出されている。
【0170】
また、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分の投与方法としては、ジンセノサイドRbと同様に患部組織における細胞外液濃度が既述のごとく低濃度に維持できるのであれば任意の投与経路が選択できる。具体的には、低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかは静脈内投与剤としてのみならず外用剤や病変部局所投与剤としても使用可能である。さらに、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかの投与法として、皮下注射、筋肉注射、点眼、点鼻、点耳、吸入、挿肛投与、経口投与、舌下投与、経皮投与等任意の経路が選択できる。粗サポニン分画を徐放剤として使用してもよい。もちろん、粗サポニン分画を製剤化するときの溶媒や基剤はジンセノサイドRbの場合と同様任意のものが利用できる。ただし、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかを経口投与剤として使用する時は、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかを単独に投与したのでは効果があまり期待できない場合があるので、消化管での分解を阻止する担体あるいは消化管での吸収を促進する担体に粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかを混入・封入又は結合させたのちに、経口投与することが必要になるかもしれない。また、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかの代謝産物のうち、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかと同等もしくはそれ以上の効果・効能を有するものが同定されれば、低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかの適応が期待される前述の疾病に対して、その活性代謝産物を既述の方法で投与することもできる。また低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかと高分子化合物との分散体を作成した後、噴霧乾燥させて任意の投与経路を選択することも可能である。さらに、高分子化合物のミクロ粒子に粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかをコーティングしたのちに、任意の投与経路を選択してもよい。もちろん、粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかを用いてプロドラッグを作成したのちに、任意の投与経路を選択してもよい。
【0171】
また、低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかは、ジンセノサイドRbと同様に、加齢に伴う免疫機能低下、皮膚機能低下、循環機能低下、消化機能低下、骨代謝機能低下、筋力低下、関節機能低下、性機能減退等の諸症状を改善する目的で、健康薬としても使用可能である。さらに、低濃度・低用量の粗サポニン分画もしくは粗サポニン分画構成成分のいずれかを化粧品の組成物として利用することにより、加齢に伴う皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等)の予防・治療・処置にも利用できる。
【0172】
化粧品の組成物としての薬用人蔘の粗サポニン分画についてもう少し詳しく以下に述べる。通常薬用人蔘の粗サポニン分画は、紅蔘をメタノール抽出し、そのエキス(収率35〜45%)を水に懸濁して、エーテルで洗浄後、水飽和ブタノールで振出すという方法により得られ、収率は約8%である。ただし、本発明において言及している薬用人蔘粗サポニン分画は紅蔘から得られたものに限らず、その他の薬用人蔘(たとえば三七人蔘、人蔘田七、ヒマラヤ人蔘、アメリカ人蔘、チクセツニンジン等)から得られたものも含んでいる。
加齢に伴う皮膚の老化は主として紫外線照射、皮膚の細胞の死もしくは機能障害によりもたらされ、皮膚の萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、亀裂、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け、再生不良、乾燥等の症状を呈する。薬用人蔘の粗サポニン分画は患部組織の細胞外液濃度が14.5ng/ml以下、好ましくは145pg/ml以下、より好ましくは1450fg/ml以下で、表皮細胞、表皮角化細胞、上皮細胞、ランゲルハンス細胞、メラノサイト、メルケル細胞、角質細胞、唾液腺の細胞、混合腺の細胞、皮脂腺の細胞、毛包の細胞、粘液腺の細胞、筋細胞、立毛筋の細胞、汗腺の細胞、線維芽細胞、幹細胞、間葉系細胞、脂肪細胞等を含めた皮膚や粘膜の細胞を保護する作用ならびに同細胞の再生・再構築促進作用を発揮すると考えられるので、あらゆる化粧品や健康薬、たとえば化粧水(スキンローション)、乳液(ミルクローション)、その他のローション、ゲル、ファンデーション、エマルジョン、パウダー、ヘアーダイ、ヘアーマニキュア、ハンドクリーム、コールドクリーム、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、ナイトクリーム、のどあめ、チューインガム、トローチ、美白クリーム、おしろい、口紅、入浴剤、化粧石けん、洗眼液、洗眼薬、洗顔液、シャンプー、リンス、歯みがき粉、うがい薬、リップクリーム、下地クリーム(メイクアップベース)、UVリキッドファンデーション、パウダーファンデーション等に薬用人蔘粗サポニン分画を微量混入して皮膚局所における細胞外液濃度を前記のごとく低濃度に維持すれば皮膚の老化症状に対して優れた効果を発揮すると考えられる。薬用人蔘粗サポニン分画の基剤ならびに併用可能な皮膚外用組成物については、ジンセノサイドRbの場合と同様である。
【0173】
液状の化粧品、たとえば通常のUVリキッドファンデーションに薬用人蔘の粗サポニン分画を混入するときは、その濃度が14.5μg/ml以下、好ましくは145ng/ml以下、より好ましくは0.145fg/ml〜1450pg/ml以下となるように調整した上で、連日皮膚に外用塗布もしくは外用噴霧すれば皮膚局所における粗サポニン分画の細胞外液濃度が前記のごとく、低く維持され、皮膚の老化症状(皮膚の萎縮、易感染性、亀裂、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、日焼け等)の改善、進行予防もしくは悪化予防に役立つ。また、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品たとえば、通常の下地クリームやナイトクリームに粗サポニン分画を混入するときも、粗サポニン分画の混入量をクリーム1gあたり14.5μg以下、好ましくは145ng以下、より好ましくは0.145fg〜1450pg程度にして、連日皮膚に外用塗布すれば、皮膚の老化症状(萎縮、易感染性、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)の予防、治療、処置に役立つ。粗サポニン分画を皮膚の老化症状の予防、改善、処置の目的で上記の化粧品に混入する際の濃度の上限は、液状化粧品の場合、145μg/ml、固形、ゲル状もしくはクリーム状の化粧品の場合は145μg/g以下である。言い換えれば、粗サポニン分画は0.0145重量%以下の濃度で上記の化粧品に混入することが好ましい。さもなければ、かえって皮膚の正常細胞の膜を障害することにもなりかねない。すなわち、長期間使用する化粧品や健康薬に粗サポニン分画を混入するときは、濃度を低くする方が安全と考えられる。おそらく、ジンセノサイドRbが0.00000001重量%(10−8重量%)という低濃度で優れた開放創治療効果を示すことから判断すれば、薬用人蔘の粗サポニン分画や後述する薬用人蔘エキスや薬用人蔘の濃度もジンセノサイド類と同様に0.001重量%以下または未満とする方が好ましい。もちろん、上記のごとく薬用人蔘の粗サポニン分画を微量含有する化粧品は、顔面に外用塗布、外用噴霧するのみならず、日光に頻繁に照射されるその他の皮膚組織(たとえば四肢、体幹、頭頚部、項部等)に外用塗布もしくは外用噴霧できる。このように、低濃度の粗サポニン分画を含有する化粧品もしくは皮膚外用剤を長期にわたって常時使用することにより、皮膚の老化に伴う症状(萎縮、易感染性、亀裂、たるみ、かゆみ、かさつき、皮脂欠乏、角質細胞剥離、角層剥離、ひびわれ、乾燥、しみ、しわ、そばかす、白髪、ふけ、脱毛、色素沈着、再生不良、日焼け等)を予防もしくは改善することができる。薬用人蔘粗サポニン分画は、粘膜の老化症状(萎縮、ひびわれ、乾燥等)を予防、軽減、改善するために、上記のごとく低濃度で健康薬組成物として使用することもできる。低濃度の薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘は、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様に、海産物の養殖、農産物の栽培、介護施設や温泉保養施設における入浴剤に利用できることはすでに記述した。
【0174】
また、粗サポニン分画のかわりに、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbとほぼ同じ量の薬用人蔘粗サポニン分画の成分を化粧品や皮膚外用剤に混入しても皮膚の老化に伴う諸症状を防ぐことができる。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘の粗サポニン分画もしくはそのジンセノサイド類以外の成分は、前述のごとく低濃度のものを用いる限り、既製のあらゆる化粧品や皮膚外用剤に混入することができる。もちろん、任意の有効成分を含有する化粧品の基剤を新規に開発する場合にも、その中にジンセノサイド類、ジンセノサイドRb、薬用人蔘の粗サポニン分画、もしくは薬用人蔘の粗サポニン分画のジンセノサイド類以外の成分を前述のごとく低濃度で混入することにより皮膚や粘膜の老化による諸症状を予防、処置、改善することができる。また、前述のごとく低濃度のジンセノサイド類、ジンセノサイドRb、薬用人蔘の粗サポニン分画、もしくは薬用人蔘の粗サポニン分画の成分のいずれかを、複数組み合わせて既製の化粧品、健康薬又は皮膚外用剤に混入するか、もしくは任意の有効成分を含有する新規の化粧品の基剤に混入することにより、皮膚や粘膜の老化による諸症状を予防、処置、改善するための化粧品、健康薬又は皮膚外用剤を作成できる。ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘の粗サポニン分画、もしくは薬用人蔘の粗サポニン分画の成分のいずれかを、複数組み合わせて化粧品、健康薬又は皮膚外用剤に混入するときは、化粧品や皮膚外用剤におけるそれぞれの濃度が前述のごとく低濃度である限り、任意の濃度のものが選択できる。また、ケミカルピーリング(chemical peeling)において皮膚組織の再生・再構築を促進する際にも、前述のごとく低濃度の粗サポニン分画、粗サポニン分画成分、薬用人蔘、薬用人蔘エキスもしくはジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを、ケミカルピーリング剤の中に混入すればよい。
【0175】
さらに、ジンセノサイドRbを始めとするジンセノサイド類、薬用人蔘の粗サポニン分画、もしくは薬用人蔘の粗サポニン分画の成分は、既製の発毛・育毛剤や任意の有効成分を含有する新規の発毛・育毛剤に、化粧品の場合と同様の方法で低濃度で混入することにより、発毛、育毛、脱毛の悪化予防、脱毛の進行予防のために使用することができる。また、化粧品、発毛剤もしくは育毛剤に混入する薬用人蔘の粗サポニン分画のかわりに、およそ粗サポニン分画と同量もしくはその5〜6倍量程度以下の薬用人蔘抽出物(エキス)もしくは薬用人蔘を使用してもよい。もちろん低濃度のものを使用する限り、薬用人蔘の粗サポニン分画と薬用人蔘エキスを併用して、前述の化粧品もしくは発毛剤、育毛剤、脱毛の進行予防剤に混入してもよい。さらに、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその他の薬用人蔘成分を含有する任意の天然物や天然物の組成物をあらゆる化粧品、発毛剤、育毛剤又は脱毛進行予防剤に混入して、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbもしくはその他の薬用人蔘成分の最終的な含有量が前述のごとく低濃度に維持できるのであれば皮膚の老化症状や脱毛の改善、予防又は処置のために利用できる。薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘粗サポニン分画の成分は、ジンセノサイドRbと同様に低濃度である限り海産物の養殖、農産物の栽培、介護施設や温泉保養施設における入浴剤に利用できることは既述した。
【0176】
薬用人蔘の粗サポニン分画を、褥創治療、皮膚潰瘍治療、創傷治療、皮膚組織再生促進等のために、皮膚の病変部もしくはその周辺に局所注射するときも、局所注射液内の粗サポニン分画の濃度を、145μg/ml以下、好ましくは1.45μg/ml以下、より好ましくは0.145fg/ml〜14.5ng/ml程度に調整することが必要である。局所注射液における粗サポニン分画の濃度の上限は、14.5mg/ml以下、好ましくは1.45mg/ml以下である。粗サポニン分画からなる皮膚局所注射剤の溶媒としては、ジンセノサイドRbを皮膚局所注射剤もしくは静脈内投与製剤として使用するときと同様に、生理食塩水、蒸留水、リン酸緩衝液、ブドウ糖液、リポソーム、脂肪乳剤等任意のものが選択できる。もちろん前述の局所注射剤は、皮膚のみならず、あらゆる臓器・組織に注入することができるし、点眼薬、点耳薬としても利用できる。また、局所注射剤ににおける前述の粗サポニン分画の濃度はあくまでも目安であり、実際には皮膚局所における粗サポニン分画の細胞外液濃度が14.5ng/ml以下、好ましくは145pg/ml以下、より好ましくは1450fg/ml以下になるように局所注射剤への粗サポニン分画の混入量を調整する必要がある。
【0177】
薬用人蔘の粗サポニン分画を皮膚外用剤として、褥創治療、皮膚潰瘍治療、創傷治療、皮膚組織再生・再構築促進のために利用するときも、任意の基剤に粗サポニン分画を混入して利用できるが、その濃度は基剤100gもしくは100mlあたり、145mg(0.145重量%)以下、好ましくは1.45mg(0.00145重量%)以下、より好ましくは0.145mg(0.000145重量%)以下に調整する必要がある。粗サポニン分画を前述の皮膚疾患の予防・治療・処置のために皮膚外用剤に混入する際の濃度の上限は、およそ1.45%程度と考えられる。ただし、前述のごとくジンセノサイドRbは0.00000001重量%(10−8重量%)の濃度で開放創を治療できるので、薬用人蔘、薬用人蔘エキスや薬用人蔘の粗サポニン分画の皮膚外用剤における濃度も0.001重量%未満に設定した方がよいと考えられる。
もちろん、皮膚疾患治療用外用剤における前記の薬用人蔘粗サポニン分画の含有量はあくまでも目安であり、実際には皮膚局所における粗サポニン分画の細胞外液濃度を指標にして外用剤への粗サポニン分画の混入量を調整する必要がある。
最後に、本発明で使用されるジンセノサイド類特にジンセノサイドRb又は薬用人蔘粗サポニン分画は薬用人蔘の成分として知られており、極めて副作用の少ない医薬組成物、粘膜外用組成物、健康薬組成物、発毛・育毛用組成物、獣医薬組成物、ケミカルピーリング用組成物、成長調整用組成物、もしくは化粧品組成物である。なお、本発明で記載されたジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの効果・効能・用途は、Bcl−x発現増強作用を有するプロサポシン関連ペプチド(特願平11−185155)やその他の脳室内投与により脳細胞保護作用を示す化合物にもあてはまることはすでに述べた。
【0178】
以上のように、本発明の医薬組成物、化粧品組成物、ケミカルピーリング用組成物、健康薬組成物、肥料組成物、飼料組成物、粘膜外用組成物、成長調整用組成物、獣医薬組成物及び発毛・育毛用組成物は、生体組織(動物組織・植物組織)ならびに病変組織の再生・新生・再構築という優れた作用効果を奏するものである。したがって、本発明は、前記した本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物を用いて器質的疾患を細胞又は組織の再生・再構築により治療する方法を提供する。また、本発明の化粧品組成物により化粧方法、本発明のケミカルピーリング用組成物によりケミカルピーリングの方法、及び本発明の発毛・育毛組成物を用いた発毛・育毛方法を提供するものである。また、本発明の肥料組成物、飼料組成物により食料の増産方法を提供するものである。
さらに本発明は、本発明の医薬組成物又は獣医薬組成物からなる医薬製剤又は獣医薬製剤を製造するためのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの使用を提供するものである。また、本発明は、ジンセノサイドRbと効果・効能・用途が酷似するジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbの使用を提供するものである。
【0179】
【実施例】
次に、具体的な試験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0180】
実施例1(ジンセノサイドRbの静脈内注入による切開創治療)
雄性ウィスターラット(体重300g程度)を使用した。同動物は12時間ごとの明暗サイクル室で飼育し、水ならびに餌は自由摂取とした。吸入麻酔下で同動物の背部に長さ3cm程度の切開創を作成し、ナイロン糸で縫合後、約1時間経過してからジンセノサイドRb(60μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内注入した。その後アルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを7日間静脈内へ持続注入した(60μg/日)。
なお、同様の切開創を作成してナイロン糸で縫合した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0181】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、切開縫合部位を含む皮膚組織を採取し、後固定後常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図1に示す。図1AはジンセノサイドRb投与例、図1Bは生理食塩水投与例を示している。また、“s”は瘢痕(scar)を示す。
図1Aに示されるごとく、ジンセノサイドRb投与例では、図1Bの生理食塩水投与例と比較して、明らかに瘢痕形成が少なく、切開創局部の直近に汗腺、脂腺、毛包等の皮膚付属器も多数観察された。また、ジンセノサイドRb投与例では、生理食塩水投与例と異なり創傷局部を除いては、表皮、真皮、皮下組織がほぼ正常に近い状態にまで再生・再構築、もしくは回復していた。
【0182】
実施例2(ジンセノサイドRbの静脈内注入による開放創もしくは皮膚欠損治療)
雄性ウィスターラット(体重300g程度)を使用して、吸入麻酔下で同動物の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を作成して放置した。その後、約1時間経過してからジンセノサイドRb(12μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内投与し、続いてアルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを7日間静脈内へ持続注入(12μg/日)した。
なお、同様の開放創を作成して放置した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0183】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、開放創を含む皮膚組織を摘出し、後固定後常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図2に示す。図2AはジンセノサイドRb投与例、図2Bは生理食塩水投与例を示している。図2A、Bの矢印より左側が健常部を、図2Aの矢印より右側が再生皮膚組織を、図2Bの矢印より右側が主として瘢痕部(scar,s)を示している。図2Aの再生皮膚組織には表皮下の結合組織(真皮もしくは皮下組織)に毛包やそれに付随した皮脂腺や立毛筋が多数みられ、再生ならびに再構築した皮膚組織の下に瘢痕(scar,s)が少し存在している。
図2Aに示されるごとく、ジンセノサイドRb投与例では、図2Bの生理食塩水投与例と比較して、明らかに瘢痕形成が少なく上皮化も充分起きており、乳頭を有する真皮の結合組織、皮下組織の再生・再構築がほぼ正常組織に近い状態までに進行していた。また、ジンセノサイドRb投与例では、生理食塩水投与例と異なり、開放創の再生皮膚組織内に毛包、毛乳頭、立毛筋、汗腺、脂腺等の皮膚付属器が豊富に認められ、血管網もほぼ正常組織に近い状態まで再生・再構築もしくは回復していた。
【0184】
実施例3(ジンセノサイドRbの静脈内事前注入による開放創もしくは皮膚欠損改善効果)
雄性ウィスターラット(体重300g程度)に吸入麻酔下でジンセノサイドRb(12μg)の生理食塩水溶解液を単回静脈内投与し、続いてアルザミニ浸透圧ポンプを用いてジンセノサイドRbを4日間静脈内へ持続注入(12μg/日)した。その後、吸入麻酔下で同動物の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を作成するとともに、ジンセノサイドRbの静脈内持続注入をさらに3日間継続した。
なお、同様の開放創を作成して放置した対照動物には、同量の生理食塩水のみを静脈内投与した。
【0185】
ジンセノサイドRbもしくは生理食塩水の静脈内持続注入終了後2日目(すなわち開放創作成後5日目)に、動物をペントバルビタールにて麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝液で経心的に灌流固定した。その後、開放創を含む皮膚組織を摘出し、常法通りパラフィンに包埋した。厚さ5μm程度のパラフィン切片を作成してヘマトキシリンエオジン(HE)染色に供した。その結果を図3に示す。図3AはジンセノサイドRb投与例、図3Bは生理食塩水投与例を示している。“i”は痂皮(incrustationもしくはeschar)を、“ep”は表皮(epidermis)の重層扁平上皮(stratified squamous epithelium)を、“bv”は血管(blood vessel)を示す。
図3Aに示されたごとく、ジンセノサイドRb投与例では、開放創作成後5日目には既に痂皮の下に明らかな表皮(重層扁平上皮組織)が再生・再構築しており、表皮(重層扁平上皮)直下には赤血球で満たされた太い再生血管もしくは新生血管が分布するとともに、同血管から枝分れしたと思われる比較的細い血管が真皮の結合組織や皮下組織内に密に存在していた。一方、図3Bに示されたごとく、生理食塩水投与例では、開放創作成後5日目においても痂皮の下の表皮(重層扁平上皮)再生は極めて不完全であり、非常に薄い表皮組織の直下にある再生血管も、ジンセノサイドRb静脈内投与例と比較して明らかに細かった。そのため将来瘢痕になると考えられる表皮下の結合組織には極めて細い血管が少数散見されるのみであった。従って、ジンセノサイドRbの静脈内投与により、皮膚組織の再生・再構築が明らかに促進され、開放創によってひとたび破綻・切断された血管の再生・新生・再構築もジンセノサイドRbの静脈内投与により促進されることが発明されたことになる。
以上の実施例により、ジンセノサイドRbは開放創を作成する前に静脈内投与しても、あるいは開放創を作成した後に静脈内投与しても、優れた皮膚組織再生・再構築促進作用を発揮すると言える。
【0186】
実施例4(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる縫合不全発症の予防、治療、処置)
糖尿病患者、高齢者、免疫不全病患者、低栄養患者、癌患者などは外科的手術後に縫合不全を発症することが多いので、これを未然に防ぐことが何よりも肝要であると考えられている。従って、術前もしくは術後より通常の治療に加えてジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを、1日当たり0.02mg以上、好ましくは0.2mg以上、より好ましくは10mg以上の用量で静脈内へ連日単回注入もしくは持続注入しておくと、術後の縫合不全発症率が有意に低下し、術創の回復も早くなる。また、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内注入を実施するとともに、水溶性基剤、軟膏基剤、脂溶性基剤等の任意の基剤に低濃度のジンセノサイドRbを混入して皮膚外用剤(クリーム、ゲル、噴霧剤又は軟膏等)を作成し、術創部局所及びその周辺部に創傷が治癒するまで、塗布してもよい。また、術中にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを局所投与してもよい。その際に局部におけるジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となるように基剤ならびに局所投与剤へのジンセノサイドRb混入量を調整する。すなわち、皮膚外用剤へのジンセノサイドRb混入量は0.001%未満とすることが好ましい。
【0187】
実施例5(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる放射線障害もしくは熱傷の治療、処置)
重症の放射線障害患者や熱傷患者は、皮膚組織が広範に変性脱落し、皮膚培養シート移植によっても満足すべき効果が得られず、患者の生命予後が脅かされることがある。このような患者に対して、移植培養シートからの皮膚組織再生や健常皮膚組織構成細胞の分裂・増殖・病巣部への移動・分化による病変組織の再生を促すために、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを1日当たり0.02mg以上、好ましくは0.2mg以上、より好ましくは10mg以上の用量で静脈内へ症状の改善がみられるまで連日単回注入もしくは持続注入する。もちろん、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内注入を実施するとともに、水溶性基剤あるいは脂溶性基剤にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入して皮膚外用剤(クリーム、ゲル、ローション、噴霧剤又は軟膏等)を作成し、皮膚病変部及びその周辺に病巣が改善・治癒するまで塗布してもよい。その際に病変部局所におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となるように基剤へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb混入量を調整する。皮膚外用剤におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度は0.001%未満とすることが好ましい。また、放射線障害や熱傷が比較的軽症の場合は、前述の皮膚外用剤のみを投与しても構わない。
【0188】
実施例6(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる褥創の予防・治療・処置)
寝たきり患者ならびに高齢者の褥創は、全身状態を悪化させるきっかけともなりQOL(生活の質、quality of life)を著しく損なう皮膚疾患である。褥創の早期には病変部皮膚の発赤がみられるが、この時点で病変部局所ならびにその周辺に塗布して効果・効能を示す外用剤もしくは静脈内投与製剤がほとんどないことが、皮膚科領域で大きな問題となっている。もちろん、皮膚組織が欠損した褥創病変の治療も困難を極めることが多々ある。
ブドウ糖を含有するか含有しない水溶性基剤あるいは脂溶性基剤にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを混入して皮膚外用剤(クリームまたは軟膏)を作成し、褥創部局所およびその周辺部に褥創病変が治癒するか縮小するかあるいは悪化しなくなるまで、常時塗布する。皮膚外用剤におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの濃度は0.001%未満とすることが好ましい。その際に局部におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となるように基剤へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb混入量を調整する。また、必要に応じて、本実施例4ならびに本実施例5に記載された要領でジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内投与を併用する。ジンセノサイドRbは、特願平10−365560、PCT/JP99/02550(ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)で記述されたごとく、強力な細胞保護作用を介して褥創病変の伸展を抑止し、ひとたび皮膚組織が欠損した褥創病変に対しては、皮膚組織の再生・再構築を促進することにより優れた治療効果を発揮する。
【0189】
実施例7(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる消化性潰瘍の治療)
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の薬物治療の手段として、H2受容体阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、消化管粘膜保護剤等が主として用いられるが、薬剤によって一時的に潰瘍病変が治癒しても、薬物投与を中止するとしばしば潰瘍病変が再発する。また潰瘍病変は、消化管の難病に指定されているクローン病や潰瘍性大腸炎においても頻繁にみられ、患者の予後を悪化させる原因になっている。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病発症後、通常の治療手段を施しながら、できるだけ早期にジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内注入、挿肛投与、点耳投与もしくは内視鏡下での病変部粘膜外用投与を実施し、内視鏡にて病変の治癒もしくは改善が確認されるまで治療を継続する。
【0190】
実施例8(ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbによる糖尿病性皮膚潰瘍の治療)
糖尿病性皮膚潰瘍は病変部の血流障害や皮膚組織の欠損等を伴う難治性疾患であるが、血管や皮膚組織の再生・再構築を促進せしめる作用を有するジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを静脈内投与、局所注入もしくは外用塗布すれば効果が得られる。すなわち、糖尿病性皮膚潰瘍を有する患者に対して、通常の治療に加えて、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを1日当たり0.02mg以上、好ましくは0.2mg以上、より好ましくは10mg以上の用量で静脈内へ連日単回注入もしくは持続注入する。また必要に応じて、本実施例4に記載したごとくジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤を病変部及びその周辺部に塗布してもよいし、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの生理食塩水溶解液を病変部局所に注入してもよい。その際、病変部におけるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの細胞外液濃度が1ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは100fg/ml以下となるように基剤へのジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb混入量もしくはジンセノサイドRb含有生理食塩水(溶解剤)の局所注入量を調整する。
【0191】
実施例9(ジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤による開放創もしくは皮膚欠損治療)
雄性ウイスターラット(体重300g程度)を使用して、吸入麻酔下で動物の背部を剃毛した後に直径6mmのパンチバイオプシーを施し開放創を3ヶ所作成した。そのうち、2ヶ所には0.01重量%もしくは0.001重量%のジンセノサイドRbを含有する眼科用白色ワセリン(プロペト)を連日0.1g単回塗布し、残りの開放創には同量の眼科用白色ワセリン(プロペト)のみを塗布した。開放創作成後、9日目に創部を含む皮膚を写真撮影した。さらに、本発明者らは同様の方法で0.0001重量%、0.00001重量%もしくは0.000001重量%のジンセノサイドRb皮膚外用塗布の効果も調べた。なお、実験動物は写真撮影直前に麻酔薬により安楽死させ、写真撮影したのちに創傷部を採取するかもしくは創傷部を採取したのちに写真撮影を実施した。その後創傷部組織を固定液中で保存した。結果を図5及び図6に示す。
【0192】
図5の上から1番目が開放創作成後、プロペトのみを外用投与(外用塗布)したものであり、赤い開放創(写真では黒い開放創)が目立つ。図5の上から2番目が0.001%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを外用塗布(皮膚外用投与)したものであるが、上から1番目のプロペトのみを外用塗布したものに比べて開放創面積がやや縮小していた。一方、0.01重量%のジンセノサイドRb1を含有するプロペトを外用塗布(外用投与)された上から3番目の開放創は、上から1番目の対照と比べて差異は認められなかった。また、図6の上から2番目と3番目に示したごとく、0.00001重量%もしくは0.000001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトは、0.0001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトよりも優れた効果を示した。0.000001重量%のジンセノサイドRbの皮膚外用投与により、再生した開放創部より明らかな発毛が観察された。このことは、低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbからなる皮膚外用剤を開放創に外用塗布もしくは外用噴霧しても、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの静脈内持続投与とほぼ同じ効果・効能が得られることを明らかにしている。
【0193】
実施例10(ジンセノサイドRbによるヒト口腔粘膜咬傷治療:その1)
次に本発明者の一人(阪中)は低濃度のジンセノサイドRbを含有するプロペトが口腔粘膜の咬傷に有効であるかどうか、自身で確認した。平成12年5月2日午後2時頃に阪中は歯科治療後左三叉神経第三枝の浸潤麻酔ならびに歯根膜麻酔が醒める前に、空腹のあまり遅い昼食をとり始めた。15分以内に自身の左下唇粘膜を3度噛んでしまい、その後口腔内に鉄の味覚(血液)を感知したので、鏡にて咬傷を確認した所、少なくとも5ケ所に口腔内粘膜のびらんもしくは欠損を認め、さらに1ケ所に血腫を認めた。このまま、放置すると数日以内にアフタ性口内炎を併発し、完治までに1週間から10日を要すると判断したので、本発明者の動物実験で効果・効能が確認されている低濃度(0.00001重量%)のジンセノサイドRbを含有したプロペトを、口腔粘膜のびらんもしくは欠損をきたした領域5ケ所、ならびに血腫の部位1ケ所に少量外用塗布した。外用塗布は、毎食前後ならびに間食前後に実施した。すなわち1日6〜10回に分けて咬傷部位に0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを口唇粘膜へ外用塗布した。咬傷後96時間目の口唇粘膜の写真を図7に示す。
【0194】
図7の写真に示すごとく、咬傷後96時間目には白矢頭で示すごとく血腫は残っているが、その他の黒矢頭で示した口唇粘膜の咬傷部(すなわちびらんもしくは欠損をきたした口腔粘膜)は、わずかに発赤がみられるのみでほぼ完全に上皮化が進んでおり、明らかに創傷が治癒したと考えられた。なお、0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを咬傷部に外用塗布し始めてからは、創部における疼痛も顕著に軽減した。
【0195】
実施例11(ジンセノサイドRbによる口腔粘膜咬傷治療:その2)
次に本発明者の一人(阪中)は、平成12年5月26日昼食中に再度左下唇粘膜を噛んでしまったので、0.00001重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトを同様の方法で咬傷部へ外用塗布した。咬傷直後の写真を図8の左側に、咬傷後72時間目の写真を図8の右側に示す。
図8に示すごとく、低濃度のジンセノサイドRbを粘膜へ外用投与すれば、アフタ性口内炎を併発することなく咬傷が速やかに治癒することが判明した。
【0196】
実施例12(ジンセノサイドRbによるポトスの挿し木の新生・再生促進効果)
本発明者らは、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbが皮膚組織や口腔粘膜組織のみならず、植物組織の新生・再生もしくは再構築をも促進するかどうかを調べた。このため植物組織として観葉植物の1つであるポトス(学名、Epipremunum aureum;和名:オウゴンカズラ;英名:golden pothos)を選んだ。発明者の一人(田中)の部屋にあるポトスの親株から、類似した挿し木を6本採取し、3本は水のみを用いて水栽培し、残り3本は100fg/mlのジンセノサイドRbを含有する水中で栽培した。栽培13日目の挿し木の写真を図9に示す。図9の左側は水のみで挿し木(ポトスの茎と枝)を水栽培したものであり、図9の右側は、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。明らかに低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で、ポトスの挿し木を水栽培した場合には水のみで水栽培したものと比べて、根の伸長が促進された。
【0197】
次に、本発明者らは、前述の挿し木を引き続き水栽培に供し、22日目に再度写真撮影を実施した。結果を図10に示す。図10の左側は、水のみでポトスの挿し木を3本22日間水栽培したものであり、図10の右側は、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。なお、水栽培用の水もしくはジンセノサイドRbを含有する水は、1週間に一度交換した。
【0198】
図10に示すごとく、低濃度のジンセノサイドRb(100fg/ml)を含有する水で挿し木を22日間水栽培すると、多くの根が新生もしくは再生し、水栽培用ガラス容器に接するまでに伸長した。従って、本実験結果より低濃度・低用量のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbは皮膚組織やヒト口腔粘膜組織のみならず、植物組織の新生・再生もしくは再構築をも促進することが発明された。
【0199】
実施例13(薬用人蔘粗サポニン分画によるポトスの挿し木の新生・再生促進効果)
次に本発明者らは、薬用人蔘の粗サポニン分画が低濃度のジンセノサイドRbと同様にポトスの挿し木の新生・再生もしくは再構築を促進するかどうかをしらべた。このため、ポトスの親株から、類似した挿し木を2本採取し、1本は水のみを用いて栽培し、残りの1本は1450fg/mlの薬用人蔘粗サポニン分画を含有する水中で、水栽培した。栽培14日目の写真を図11に示す。図11の左側は水のみで挿し木を栽培したものであり、図11の右側は、低濃度の薬用人蔘粗サポニン分画(1450fg/ml)を含有する水で挿し木を水栽培したものである。明らかに、低濃度の粗サポニン分画(1450fg/ml)を含有する水で、ポトスの挿し木を水栽培した場合に水のみで水栽培したものと比べて、根の伸長が促進された。すなわち、粗サポニン分画もジンセノサイドRbと同様に植物組織の新生・再生もしくは再構築を促進すると言える。当然のことながら、粗サポニン分画を含有する薬用人蔘エキスや薬用人蔘も同様の作用を有すると言える。すなわち薬用人蔘、薬用人蔘エキス、薬用人蔘粗サポニン分画、ジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、あらゆる生体組織(動物・植物組織)の再生・新生・再構築を促進すると言える。
【0200】
実施例13(10−4重量%〜10−8重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトによる開放創治療)
吸入麻酔下でラット(n=3)の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを6ケ所に施し開放創を作成した。その後、各開放創に、ジンセノサイドRbをそれぞれ0.0001重量%(10−4重量%)、0.00001重量%(10−5重量%)、0.000001重量%(10−6重量%)、0.0000001重量%(10−7重量%)、0.00000001重量%(10−8重量%)、含有するプロペトを1日単回0.1gを9日間外用塗布した。コントロールにはプロペトのみを外用塗布した。その後麻酔により動物を安楽死させた直後に、創傷部皮膚を採取し写真撮影を実施した。採取した皮膚組織は固定液中で保存した。結果を図12に示す。
【0201】
図12に示すごとく10−6重量%から10−8重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペト(すなわち10ng/mlから100pg/gの濃度のジンセノサイドRb)を開放創に外用塗布しても10−5重量%のジンセノサイドRbを含有するプロペトと同様に明らかに、プロペトのみを外用塗布した開放創に比べて、創傷治癒が促進された。従って、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを皮膚外用剤として使用するときは、外用剤における濃度は10−8重量%前後もしくはそれ以下に設定することが好ましいと考えられた。従って、化粧品組成物又は健康薬組成物として、ジンセノサイド類特にはジンセノサイドRb、薬用人蔘粗サポニン分画、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘を使用するときも、化粧品、ケミカルピーリング剤、又は健康薬におけるその濃度は0.001重量%未満、好ましくは0.00001重量%(10−5重量%)以下、より好ましくは0.00000001重量%(10−8重量%)以下に設定することが必要である。
【0202】
前述の実験例において、プロペトのみを外用塗布した開放創の面積を分母にとり、10−4重量%から10−8重量%のジンセノサイドRbを外用塗布した開放創の面積を分子にとり、その比を算出した。結果を図13に示す。図13に示すごとく、低濃度のジンセノサイドRbを開放創に外用投与すると有意に創傷治癒が促進された。統計解析は、ANOVA+Scheffe's post hoc testによる。*はP<0.05を、**はP<0.01を示す。10−8%前後のジンセノサイドRbを外用塗布すると開放創の面積は、対照群の4分の1程度に縮小するので、低濃度のジンセノサイドRbを外用投与することにより開放創の体積はおよそ、8分の1に縮小したと考えられる。
【0203】
実施例15(低濃度のジンセノサイドRbを含有するプロペトによる口腔粘膜熱傷もしくはアフタ性口内炎治療)
熱い飲食物を急いで口腔内へ入れたときに舌粘膜、口唇粘膜、硬口蓋粘膜、軟口蓋粘膜が熱傷をこうむり、粘膜上皮が脱落し、粘膜のびらんや発赤が出現することがよくある。もちろんこのような熱傷には疼痛を伴うことが常である。また、口腔粘膜の咬傷や熱傷後にもしくは原因が定かではないときにも、しばしばアフタ性口内炎が生じ、1週間から10日程度、常時口腔内に疼痛を覚え食事をするのも不自由なことがしばしばである。上記のような口腔粘膜の熱傷やアフタ性口内炎に対して、10−3重量%未満、好ましくは10−5重量%以下、より好ましくは10−7重量%以下のジンセノサイドRbを含有する軟膏を1日に3〜10回、特に食事前後に病変部に塗布すれば、疼痛も軽減し、粘膜欠損もしくは創傷の治癒が促進される。なお、口腔粘膜外用剤としてジンセノサイド類特にジンセノサイドRbを使用するときの基剤として、デキサルチン軟膏やケナログと同様の基剤を用いてもよい。また、口腔粘膜外用剤に含有されるジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの至適濃度は、皮膚外用剤におけるジンセノサイド類の至適濃度より、10倍〜1000倍程度高いと考えられる。
【0204】
実施例16(ジヒドロジンセノサイドRbを含有する皮膚外用剤による開放創治療)
次に、本発明者らはジンセノサイド類誘導体が、ジンセノサイドRbと同様に低濃度・低用量で組織再生・再構築を促進するかどうかをしらべた。このため、ジンセノサイド類誘導体の1つとしてジヒドロジンセノサイドRbを選び、同化合物の開放創治療効果を検討した。なお、ジヒドロジンセノサイドRbの詳細についてはPCT/JP00/04102(薬用人蔘からなる脳細胞または神経細胞保護剤)に記載されている。吸入麻酔下でラット(n=4)の背部に直径6mmのパンチバイオプシーを5ケ所に施し開放創を作成した。その後、各開放創に、ジヒドロジンセノサイドRbをそれぞれ0.0001重量%(10−4重量%)、0.00001重量%(10−5重量%)、0.000001重量%(10−6重量%)、0.0000001重量%(10−7重量%)、の濃度で、含有するプロペトを1日単回0.1gを9日間外用塗布した。コントロールにはプロペトのみを外用塗布した。その後、麻酔により動物を安楽死させた直後に創傷部皮膚を採取し写真撮影を実施した。採取した皮膚組織は固定液中で保存した。結果を図14に示す。
【0205】
図14に示すごとく0.00001重量%(10−5重量%)から0.0000001重量%(10−7重量%)のジヒドロジンセノサイドRbを含有するプロペト(すなわち100ng/gから1ng/gの濃度のジヒドロジンセノサイドRb)を開放創に外用塗布すると明らかに、プロペトのみを外用塗布した開放創に比べて、創傷治癒が促進された。また、低濃度のジヒドロジンセノサイドRbを外用塗布した例では、創傷治癒部に明らかな発毛が観察された。従って、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを皮膚外用剤として使用するときは、外用剤における濃度は0.0000001重量%(10−7重量%)前後もしくはそれ以下に設定することが好ましいと考えられた。従って、化粧品組成物として、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRbを使用するときも、化粧品又は健康薬におけるその濃度は0.001重量%未満、好ましくは0.00001重量%(10−5%重量)以下、より好ましくは0.0000001重量%(10−7重量%)以下に設定することが好ましい。
【0206】
前述の実験例において、プロペトのみを外用塗布した開放創(発赤部)の面積を分母にとり、0.00001重量%(10−4重量%)から0.0000001重量%(10−7重量%)のジヒドロジンセノサイドRbを外用塗布した開放創の面積を分子にとり、その比を算出した。結果を図15に示す。図15に示すごとく、0.00001重量%(10−5重量%)以下の濃度のジヒドロジンセノサイドRbを開放創に外用投与すると皮膚組織の再生・再構築が促進され、有意に創傷治癒も促進された。特に0.00001重量%(10−5重量%)以下のジヒドロジンセノサイドRbすなわち100ng/g以下もしくは100ng/ml以下のジヒドロジンセノサイドRbの外用投与が開放創を有意に縮小せしめたという事実は、ジヒドロジンセノサイドRbが患部組織の細胞外液濃度が100ng/ml以下のときに生体組織の新生・再生又は再構築を促進するということを強く支持している。統計解析は、ANOVA+FisherのPLSDによる。*はP<0.05を示す。
【0207】
実施例17(ジヒドロジンセノサイドRbによる培養神経細胞保護)
次に本発明者らは、ジヒドロジンセノサイドRbがジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有するということを確認するため、さらに培養神経細胞を用いて実験を実施した。
本発明者(阪中、田中)らは、培養神経細胞を一酸化窒素供与体であるニトロプルミッドナトリウム(SNP)に短時間暴露すると神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死が誘導されることを報告している(Toku K. et al., J. Neurosci. Res., 53, 415-425, 1998)。この培養実験系を用いて、本発明者らはすでにジンセノサイドRbが1ng/ml以下の細胞外液濃度で神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止することを見出している(特願平10−365560、PCT/JP99/02550、ジンセノサイドRbからなる脳細胞又は神経細胞保護剤)。そこで、同様の実験を用いてジヒドロジンセノサイドRbの神経細胞保護作用をしらべた。
【0208】
妊娠17日齢のラットの胎仔大脳皮質より、トリプシンEDTAを用いて神経細胞を分離し、ポリエルリジンコートした24ウェルプレートに蒔いた。10%牛胎仔血清を含むDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)中で16時間培養後、培養液をインシュリン、トランスフェリン等を含む神経細胞培養用無血清培地に置き換え、3ないし4日間培養した。培養3または4日目に、300μMの濃度でニトロプルシッドナトリウム(SNP)を添加し、10分間インキュベートした。その後、培養液をジヒドロジンセノサイドRb(0〜1ng/ml)及び牛血清アルブミンを含むEagle's minimum essential medium(EMEM)に置き換えた。SNP負荷後16時間目にLaemmliの電気泳動用サンプル緩衝液を用いて神経細胞を溶解し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロース膜に転写後、神経細胞特異蛋白質MAP2に対する抗体を用いてイムノブロッティングを行った。神経細胞の生存率を定量するため、免疫染色されたMAP2のバンドをデンシトメトリーにより解析した。結果を図16及び図17に示す。また、参考までにジヒドロジンセノサイドRbのNMRチャート(400MHz,CD3OD)を図18に示す。
【0209】
図16はmicrotuble associated protein 2(MAP2)のイムノブロットの結果を示す図面に代わる写真である。左から1番目のレーンがコントロールの培養神経細胞であり、明らかなMAP2のバンド(すなわち神経細胞のマーカーのバンド)が認められた。SNP処理をすると、多くの神経細胞がアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死に陥るので、MAP2のバンドが左から2番目のレーンのごとく明らかに弱くなった。ジヒドロジンセノサイドRbを0.01fg/ml(レーン3)から1ng/ml(レーン7)の濃度で培養メディウムに添加しておくと、SNPによる神経細胞のアポトーシス又はアポトーシス様神経細胞死が明らかに抑止され、その結果神経細胞の生存の指標であるMAP2の強いバンドが観察された。
【0210】
前述のMAPのイムノブロット実験を5回くり返し、結果をデンシトメトリー解析したものが図17である。図17に示すごとく、0.01fg/ml〜1ng/mlのジヒドロジンセノサイドRbは有意に神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死を抑止することが判明した。すなわち、ジヒドロジンセノサイドRbは、ジンセノサイドRbよりもやや広い濃度域で、細胞特には神経細胞に対して好ましい効果を発揮すると考えられる。従って、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbは、患部組織における細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは0.0001fg/ml〜100fg/mlのときに細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様細胞死を抑止することにより、優れた細胞保護作用を発揮すると考えられる。*はP<0.001を、**はP<0.0001を示す。
【0211】
また、ジヒドロジンセノサイドRbを0.0001重量%(10−5重量%)含有する皮膚外用剤が優れた開放創治療効果を示すという前述の実験結果から判断すると、ジンセノサイド類誘導体特にジヒドロジンセノサイドRbはやはり、患部組織における細胞外液濃度が100ng/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、より好ましくは0.0001fg/ml〜100fg/mlのときに優れた生体組織の再生・再構築を作用を発揮すると言える。
【0212】
【発明の効果】
本発明は、薬用人蔘の成分として知られているジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを有効成分とする、極めて副作用の少ない医薬組成物、皮膚外用組成物、粘膜外用組成物、健康薬組成物、ケミカルピーリング用組成物、化粧品組成物、肥料組成物、飼料組成物、成長調整用組成物、又は発毛・育毛用組成物を提供するものである。本発明では、従来のものよりも低濃度のジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbを使用することにより、従来のジンセノサイドRb含有組成物では見出すことができなかった優れた生体組織の再生及び/又は再構築促進作用が新規に発明された。低濃度・低用量のジンセノサイド類特にジンセノサイドRbは、生体組織の再生・再構築促進作用を介して、病理組織学的変化をきたすあらゆる器質的疾患の予防、治療もしくは処置ならびに農作物や海産物の栽培・育成・養殖に有用とされる。また、本発明では、ジンセノサイド類誘導体特にはジヒドロジンセノサイドRb、薬用人蔘、薬用人蔘エキスもしくは薬用人蔘の粗サポニン分画も、前述したジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbと同様の効果・効能・用途を有することが見出された。なお、本発明において記載されたジンセノサイド類特にはジンセノサイドRbの効果・効能・用途は、プロサポシン関連ペプチド(特願平11−185155)や脳室内投与により脳細胞保護作用を示すその他の化合物にもあてはまる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、切開創に対するジンセノサイドRb静脈内投与の効果を示す図面に代わる光学顕微鏡写真である。AがジンセノサイドRb投与例、Bが生理食塩水投与例である。
【図2】図2は、開放創に対するジンセノサイドRb静脈内投与の治療効果を示す図面に代わる光学顕微鏡写真である。AがジンセノサイドRb投与例、Bが生理食塩水投与例である。
【図3】図3は、開放創に対するジンセノサイドRb静脈内前投与の効果を示す図面に代わる光学顕微鏡写真である。AがジンセノサイドRb投与例、Bが生理食塩水投与例である。
【図4】図4は、ジンセノサイドRbをリード化合物として利用することにより作成できる化学的誘導体の一部を示す図である。
【図5】図5は、開放創に対する低濃度(0.001重量%)のジンセノサイドRbの皮膚外用投与の軽微な治療効果を示す図面に代わる写真である。
【図6】図6は、開放創に対するより低濃度(0.0001重量%、0.00001重量%、0.000001重量%)のジンセノサイドRbの皮膚外用投与の効果を示す図面に代わる写真である。
【図7】図7は、ヒト口腔粘膜咬傷に対する10−5重量%のジンセノサイドRbの粘膜外用塗布の効果を示す図面に代わる写真である。
【図8】図8は、ヒト口腔粘膜咬傷に対する10−5重量%のジンセノサイドRbの粘膜外用塗布の効果を示す図面に代わる写真である。
【図9】図9は、ポトスの根の新生・再生・発根に対するジンセノサイドRb(100fg/ml)の13日目の効果を示す図面に代わる写真である。
【図10】図10は、ポトスの根の新生・再生に対するジンセノサイドRb(100fg/ml)の22日目の効果を示す図面に代わる写真である。
【図11】図11は、ポトスの根の新生・再生に対する薬用人蔘粗サポニン分画(1450fg/ml)の14日目の効果を示す図面に代わる写真である。
【図12】図12は、ラットの開放創に対する10−4〜10−8重量%のジンセノサイドRbの外用投与の効果を示す図面に代わる写真である。
【図13】図13は、ラットの開放創に対する10−4〜10−8重量%のジンセノサイドRbの外用投与の効果を示すグラフである。
【図14】図14は、ラットの開放創に対する10−4〜10−7重量%のジヒドロジンセノサイドRbの外用投与の効果を示す図面に代わる写真である。
【図15】図15は、ラットの開放創に対する10−4〜10−7重量%のジヒドロジンセノサイドRbの外用投与の効果を示すグラフである。
【図16】図16は、SNPによる培養神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死に対するジヒドロジンセノサイドRbの保護効果を示す、図面に代わるMAP2イムノブロットの写真である。
【図17】図17は、SNPによる培養神経細胞のアポトーシスもしくはアポトーシス様神経細胞死に対するジヒドロジンセノサイドRbの保護効果を示すグラフである。
【図18】図18は、ジヒドロジンセノサイドRbのNMRチャートを示す。

Claims (7)

  1. ジンセノサイドRb1、ジヒドロジンセノサイドRb1及び/又はそれらの塩を有効成分として含有する創傷の処置又は治療用の医薬組成物。
  2. 医薬組成物が組成物全体の10 −8 重量%〜10 −4 重量%であるジンセノサイドRb1、ジヒドロジンセノサイドRb1及び/又はそれらの塩を含むプロペトである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 創傷が、切開創、開放創、外科手術後の縫合不全、咬傷又は欠損である、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 疼痛を軽減するためのものである、請求項1〜3の何れかに記載の医薬組成物。
  5. 静脈内投与用組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. 皮膚外用剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
  7. 粘膜外用剤である、請求項6に記載の医薬組成物。
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