JP3989855B2 - 板状構造材及びその組合せ版体並びにその組立て施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、板状構造材及び該板状構造材を構成する構成素材相互を組み合わせてなる組合せ版体並びにそれらの構成素材を使用してなされる組合せ版体の組立て施工方法に関し、更に詳しくは、3角形状をなす基板と該基板相互を繋ぐ連結材との2種の構成素材よりなる板状構造材及びその組合せ版体並びに該組合せ版体の組立て施工方法に関する。
本発明は、壁、床、天井等の構造用版体を主たる対象とするが、他の用途を除外するものではない。
【0002】
【従来の技術】
このような板状構造材として、基板を一定厚さの4辺形状になし、該4辺形状基板の側辺に凹溝と凸条とを形成し、相接する4辺形状基板の凹溝と凸条とを係合させて大型の板状体(これを版体又はパネルという)とする構法は普通に採られている。
しかしながら、この4辺形状基板を接合して得られる版体構法によれば、当該版体の版面方向に働く版面力は、4辺形状基板の辺部に沿う水平方向と垂直方向との2方向分力のみとなり、力が集結されず、十分な組付け力を得ることができず、版面に直角に働く力に対しても大きな抵抗力(抵抗モーメント)を期待できない。
更に、角部が集まる交会部(節点ともいう)での作用力の収斂性・集中性が得られ難く、すなわち「ずれ」が生じやすく、かつ、そのため当該交会部位から緩みが生じ、全体的な破損を惹起する原因となる。
なお又、4辺形状基板の組付け操作に付き、既に組み付けられた版体の開き空間へ次に取付ける4辺形状基板を落とし込んでゆくものであるが、このとき当該4辺形状基板の水平及び垂直性の確保が必要であり、当該組付け作業の施工効率の悪化要因ともなっている。
【0003】
本発明者は、この4辺形状基板による版体の問題点を解明する過程で、従来構法ではその交会部に締り力が生じていないことが「ずれ」の原因であるとの知見を得るに至ったものである。
しかして、その締り力を得るべく、3角骨組によるトラス構法の適用により、基板を3角形状となし、かつ該基板間にくさび棒を介装することにより、その実現を図りうるとの着想に至ったものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記着想のもとに、従来の4辺形状基板による版体構法の持つ欠点を克服すべくなされたものであり、高い組立て精度と大きな耐力が実現できる版体構造が得られ、かつ版体の組立てが容易な新規な構成の板状構造材を得ることを目的とする。
本発明は更に、この板状構造材の組み合わせをもって構成される組合せ版体並びにその組合せ版体の組立て施工方法を得ることも他の目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下の構成を採る。
本発明の第1は板状構造材に係り、一定厚の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる3角形基板と、前記相対接する基板相互の凹溝に合致し、かつ該凹溝に沿って密接状に嵌合されるくさび棒と、の2種の構成素材からなることを特徴とする。
本第1発明において、くさび棒は、(a) 3角形基板の各辺部に対応する長さのもの(これを単位くさび棒という)、(b) 3角形基板の各辺部の長さを超えるもの(これを長くさび棒という。通常は2辺部長を採る。)が用意される。また、該くさび棒の先端は直角2等辺状の角部のものと、平坦状のものとの2態様をもつ。
上記構成において、
▲1▼凹溝の幅形状は等幅もしくは底部より開口に向けて拡幅される形状を採ること、換言すれば、底部より開口に向けて非縮幅の形状を採ること、
▲2▼3角形基板は中実、及び辺部を残して中空とされること、
は適宜に選択実施される態様である。
【0006】
(作用)
所定数の同形の3角形基板とくさび棒とを用意し、3角形基板の対応する辺部を対接させ、これらの凹溝内にくさび棒を嵌入する。
これにより、適宜の形状の版体いわゆる組合せ版体を形成する。該形状は四辺形を通常とするが、他の形状を除外するものではない。
単位組合せ版体として、
▲1▼2つの3角形基板の斜辺相互を対接する態様、
▲2▼4つの3角形基板の短辺相互を対接し、それらの直角部を交会部(直角交会部)に配する態様、
▲3▼8つの3角形基板の底角部を交会部(トラス交会部)に配する態様、
を採る。該単位組合せ版体においては、単位くさび棒が使用される。
更に、上記単位組合せ版体の複合体として大型の版体を形成する。該大型の版体においては、単位くさび棒及び長くさび棒が使用される。
【0007】
本発明の第2は組合せ版体に係り、一定厚の同形の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板を、該3角形基板の対応する各辺の側面を相接して配し、相接する3角形基板の凹溝に密接状にくさび棒を嵌合して組み立ててなることを特徴とする。
上記において、対応する各辺とは、3角形基板の同一長さの辺、換言すれば短辺と短辺、斜辺と斜辺との対応をいう。
本第2発明において、くさび棒は、(a) 3角形基板の各辺部に対応する長さのもの(単位くさび棒)、(b) 3角形基板の各辺部の長さを超えるもの(長くさび棒、通常は2辺部長を採る。)が用意される。また、該くさび棒の先端は直角2等辺状の角部のものと、平坦状のものとの2態様をもつ。
上記構成において、
▲1▼3角形基板の幅形状は等幅もしくは開口に向けて拡幅される形状を採ること、
▲2▼3角形基板は中実、及び辺部を残して中空とされること、
▲3▼3角形基板とくさび棒とは接着剤により固着されること、
は適宜に選択実施される態様である。
(作用)
対接する辺部の凹溝内にはくさび棒が密接状に長手方向に嵌入されているので、3角形基板相互は一体的強度が得られ、版面に作用する曲げモーメントに対して大きな抵抗曲げモーメントを発揮する。
また、直角交会部、トラス交会部において中心点へ向けての作用力の集中を受け、締り力が生じ、ズレが生じない。
【0008】
本発明の第3は更に特定された組合せ版体に係り、一定厚にして直角部と底角部とを有する直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板と、前記相対接する基板相互の凹溝に密接状に嵌合されるくさび棒と、の2種の構成素材の組合せよりなる版体であって、
a.前記同形の3角形基板の対応する各辺の側面が位相を揃えて相接して配され、
b.前記相対接する3角形基板相互の凹溝にはくさび棒が密接状に嵌合され、
c.該3角形基板の底角部の集まる交会部には全ての底角部を集め、
d.該3角形基板の直角部の集まる交会部には全ての直角部を集めてなる、
ことを特徴とする。
上記において、3角形基板の底角部の集まる交会部をトラス交会部といい、3角形基板の直角部の集まる交会部を直角交会部という。
上記構成に加え、3角形基板の斜辺相互間には1つの交会部間のくさび棒が配され、該3角形基板の短辺相互間には1つの交会部間のくさび棒及び2つの交会部間にわたるくさび棒が配されてなることは他の発明を構成する。
(作用)
トラス交会部では水平・垂直方向及び斜め方向の8方向からの力の集中を受け、当該交会部の中心点に向け自動求心がなされ、かつ、くさび効果により締り作用を発揮する。また、直角交会部においてもくさび棒の角部によるくさび効果による締り作用が発揮される。
当該組合せ版体ではトラス交会部並びに直角交会部が均等に分布し、更に大きな締り力が確保され、ズレが生ぜず、版体全体として大きな強度を得る。
【0009】
また、本発明の第4は組合せ版体の施工方法に係り、一定厚にして直角部と底角部とを有する直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板と、前記相対接する基板相互の凹溝に密接状に嵌合されるくさび棒と、の2種の構成素材の組合せよりなる版体の施工方法であって、
a.前記同形の3角形基板の対応する各辺の側面を位相を揃えて相接して配し、
b.該3角形基板の底角部の集まる交会部には全ての底角部を集め、
c.該3角形基板の直角部の集まる交会部には全ての直角部を集め、
d.前記相対接する3角形基板相互の凹溝にはくさび棒を密接状に嵌合する、
ことを特徴とする。
上記構成に加え、3角形基板の斜辺相互間には1つの交会部間のくさび棒を配し、該3角形基板の短辺相互間には1つの交会部間のくさび棒及び2つの交会部間にわたるくさび棒を配する、ことは他の発明を構成する。
(作用)
3角形状をなす基板及びくさび棒は交互に落とし込み操作をもって組立て作業がなされ、操作が容易である。特に基板の操作は主として3角形空間への落とし込みによるので、空間的余裕をもって作業が行え、従来の矩形板での平行を保持しつつ組み立てる煩雑さ(熟練度)はなく、かつ、基板の角部及びくさび棒の先端角部での当接斜面の自動求心作用により、精度の高い組立てがなされる。また、交会部ではくさび効果により締込みがなされ、この部分で版面方向及び該版面に直角方向に大きな強度が発揮される。
【0010】
本発明は、特には構築用の壁体、床体、天井版への適用がなされ、その素材・用途に付き格別限定されるものではなく、構築用として適用されるものであればその採用を妨げない。
更に、本発明は限定された用途として、家具(屋台を含む)、建具に係り、一定厚の同形の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板を該3角形基板の各辺の側面を相接して配し、相接する3角形基板の凹溝に密接状に嵌合されるくさび棒を嵌合して形成される組合せ版体をもって構築される構成を採る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の板状構造材及びその組合せ版体並びにその組立て施工方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図8はその一実施形態の板状構造材及びその組合せ版体を示す。すなわち、図1はその板状構造材Hの全体構成を示し、図2〜図8は各部分構成を示す。
詳しくは、図1は本板状構造材Hを分解して示したものであり、図2はその一構成素材の基板の一部断面平面構成、図3は基板の側面構成を示す。図4〜図6は単位組合せ要領の一態様を示し、図4はその分解図、図6は各素材の納まり状態を示す。図7・図8は他の単位組合せ要領を示し、図7はその分解図、図8の左部分は断面を、右部分は平面(表面)を示す。
【0012】
図1〜図8に示すように、本実施形態の板状構造材Hは、一定厚をもって直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面に辺に沿う凹溝が縦設されてなる3角形基板1と、前記相対接する基板相互の凹溝に密接状に嵌合される連結材としてのくさび棒2との2種の構成素材からなる。これらの構成素材はことの性質上、所定の剛性を有する。
【0013】
以下、各部の構成に付き詳細に説明する。
3角形基板1(図1〜図3参照)
3角形基板1(以下単に「基板1」という)は、図1〜図3に示すように、一定厚をもって直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面の中央部には辺に沿う凹溝4が縦設されてなる。本実施形態での凹溝4の形状は長方形の1/2、すなわち2つの凹溝4が合わさって所定の長方形を形成する。
図において、1aは基板1の表面、1bは基板1の裏面、1cは短辺の側面、1dは斜辺(長辺、底辺ともいう)の側面を示す。Aは基板1の直角部、Bは底角部を示す。Pは斜辺部の凹溝4の角部、Vは直角部の凹溝4の角部を示す。
更に図において、aは本基板1の厚さ、bは凹溝4の幅、cは凹溝4の深さを示す。また、eは短辺1cの長さ、fは斜辺1dの長さを示す(f=√2・e)。
ここに、直角2等辺3角形は直角を必須とするが、辺部において実質的に2等辺を確保すれば足り、要は使用される基板1がすべて同形をなすことが本質的事項である。
該基板1の素材は原則として、構造材として採用される全ての材料を含む。通常には、木材、金属、合成樹脂材、コンクリート材(RCを含む)が採られるが、その他の素材を除外するものではない。
図例(図1〜図3)では、該基板1は中実をなすが、基板1の辺部に、凹溝4の形成及び所定強度の確保のため、所定厚を残して中空1e(図13参照)とする態様を採ることは自由である。この場合、中空態様での基板をそのまま使用することも、あるいは基板の表面及び又は裏面に化粧板等の薄板を貼る態様を採ることもできる。
【0014】
くさび棒2(図1、図4〜図8参照)
くさび棒2は、所定の長さと断面形状(本実施形態では長方形)を有し、基板1の凹溝4にその半分が嵌り込む。
該くさび棒2の素材は、原則として基板1に対応した素材を採るが、異種を除外しない。
(単位くさび棒2A,2B)
長さにおいて、単位長のくさび棒が用意される。基板1の短辺1cに対応するものを単位くさび棒2Aとし、長辺1dに対応するものを単位くさび棒2Bとする。
該単位くさび棒2A,2Bは断面形状において、長方形状を採る。その幅は凹溝4の幅bに合致し、その深さ(高さ)は凹溝4の深さcの2倍(2c)を採る(2c>b)。図6に示すように、単位くさび棒2Aの長さはeを採り、また、単位くさび棒2Bの長さはf−2√2cを採る。
くさび棒2A,2Bの端部R,Qは斜辺の角部に対応して直角(90°)状に尖った形状とされる。くさび棒2Aは後記する版体U2,Kに使用される。くさび棒2Bは後記する版体U1,U3,Jに使用される。
単位くさび棒2Aの異種として単位くさび棒2A’が用意される。該くさび棒2A’は端部は平坦面とされ、その長さはe−2cを採る。該くさび棒2A’は後記する版体U3,Jに使用される。
【0015】
(長くさび棒2C,2D,2E)
くさび棒2は更に、単位くさび棒2A,2Bより長い長くさび棒2C,2D,2Eが用意される。
2Cはいわゆる通し用くさび棒であって、短辺1cの2倍の長さを有し、端部は平坦面とされる。該長くさび棒2Cは後記する版体U3,Jに使用される。
2Dはいわゆる外枠用くさび棒であって、短辺1cの1.5倍の長さを有し、端部は平坦面とされる。この長くさび棒2Dは後記する組合せ平面版Jの組立てに使用される。2Eは補助用のくさび棒であり、その長さを自由とし、端部は平坦面とされる。なお、くさび棒2D,2Eの長さは厳密なものではなく、多少の伸縮は許容される。
【0016】
単位組合せ版体U(図4〜図8参照)
上述の3角形基板1とくさび棒2、特に単位くさび棒2A,2Bとの2つの構成素材をもって正方形又は長方形すなわち四角形状の最小単位の組合せ版すなわち単位組合せ版体が構成される。
(第1単位組合せ版体U1)
先ず、図4〜図6に示されるように、2つの基板1、図例の1(1),1(2)の斜辺1d相互を接合してなる第1単位組合せ版体U1が構成される。このものは、基板1の斜辺1d相互の凹溝4に単位くさび棒2Bが嵌合される。また、適宜に基板1の短辺1Cに単位くさび棒2Aが嵌合され、枠部を形成する。
(第2単位組合せ版体U2)
また、同じく図4〜図6に示されるように、4つの基板1、図例の1(1),1(3),1(4),1(5)の短辺1c相互を接合してなる第2単位組合せ版体U2が構成される。このものは、基板1の短辺1c相互の凹溝4に単位くさび棒2Aが嵌合される。また、適宜に基板1の斜辺1dに単位くさび棒2Bが嵌合され、枠部を形成する。
この第2単位組合せ版U2において、該第2組合せ版U2の中心Oは各基板1の直角部の角部Aの交会部(直角交会部S)であるとともに、各くさび棒2Aの端部Rの交会部でもある。くさび棒2Aの交会部では端部斜面相互が当接し、O点に向け自動求心作用を受け、かつ、くさび効果により締付け作用を発揮する。
【0017】
(第3単位組合せ版体U3)
更にまた、図7・図8に示されるように、8つの基板1、図例では1(6),1(7),1(8),1(9),1(10),1(11),1(12),1(13)をそれらの底辺部の角部B相互を集中して接合してなる第3単位組合せ版体U3が構成される。
この第3単位組合せ版体U3において、長くさび棒2Cを挟んでその両側に4つの単位組合せ版体U1が配されるものである。なお、長くさび棒2Cに直交して単位くさび棒2A’が使用される。
この単位組合せ版体U3において、該第3組合せ版体U3の中心Oは各基板1の底辺1dの角部Bの交会部となる。また、各くさび棒2Bはその先端角部Qが長くさび棒2Cに当接するが、その力の作用線の延長は中心Oに集中する。しかして、当該交会部の中心Oでは水平及び垂直に加え斜めの8方向から力の集中を受け、いわゆるトラス交会部Tを形成する。この結果、該トラス交会部Tでは、中心O点に向け自動求心作用を受け、かつ、くさび効果により締付け作用を発揮する。
該トラス交会部Tのこの作用により、版体U3は大きな耐荷力とともに抵抗モーメントを持つ。
【0018】
上記の態様では基板1の溝4は矩形状をなし、これに対応してくさび棒2の断面も矩形状をなすものであるが、これら溝4、くさび棒2の形状に付き、正方形は勿論として、他の形状を除外するものではない。
図9はその態様の一例を示す。
(a) 図は円形断面のくさび棒6を示す。これに対応して基板1は半円形断面の凹溝4Aが形成される。
(b) 図は菱形断面のくさび棒7を示す。これに対応して基板1は3角形断面の凹溝4Bが形成される。
(c) 図は8角形断面のくさび棒8を示す。これに対応して基板1は半8角形断面の凹溝4Cが形成される。
【0019】
組合せ版体J
叙上の板状構造材Hを組み合わせて更に大きな広がりを有する版状体、すなわち組合せ版体Jが構築される。
図10〜図12に該組合せ版体Jの一構成例を示す。
図において、2A’は短辺用の単位くさび棒、2Bは斜辺用の単位くさび棒、2Cは長くさび棒である。また、Tはトラス交会部、Sは直角交会部を示す。
この組合せ版体Jにおいては、各基板1の同一長さどうしの各辺の側面が相接して配され、斜辺1d相互の凹溝4間には単位くさび棒2Bが配され、短辺1e相互の凹溝4間には単位くさび棒2A’と長くさび棒2Cとが配されてなる。なお、外枠を構成するくさび棒2は長くさび棒2Dに限定されず、適宜の長さのもの(2E)が採用される。
この組合せ版体Jに特徴的なことは、3角形基板1の底辺部(斜辺部)が集まる交会部すなわちトラス交会部Tと、直角部が集まる交会部すなわち直角交会部Sとの2種の交会部が現れ、かつ、これらの交会部T,Sが均一に配される。なお、T1は8つの基板1が集まる8点トラス交会部、T2は4つの基板1が集まる4点トラス交会部、T3は2つの基板1が集まる2点トラス交会部であり、S1は4つの基板1が集まる4点直角交会部、S2は2つの基板1が集まる2点直角交会部である。
特に、8点トラス交会部T1はその強度において大きな耐荷力並びに抵抗モーメントを発現する。
【0020】
組合せ版体Jの組立て施工方法
図12を参照して、組合せ版体Jの組立て手順を説明する。丸付き番号▲1▼▲2▼▲3▼…は図12の表示に対応する。
▲1▼底辺となる外枠の長くさび棒2D,2Eが用意される。長くさび棒2D,2Eを適宜長さにつなぐ。
▲2▼最初の基板101の短辺1cがこの長くさび棒2Dに嵌め込まれる。
▲3▼同じく基板101の短辺1cに対して長くさび棒2Cが立て込まれる。
▲4▼他の基板102がその短辺1cをもって前記長くさび棒2Cを介して嵌め込まれる。
▲5▼基板103が嵌め込まれる。
▲6▼次いで、既に設置した基板102の斜辺1dにくさび棒2Bを立て込む。
▲7▼該くさび棒2Bに他の基板104を嵌め込んで配する。
▲8▼基板104の短辺1cにくさび棒2A’を立て込む。
▲9▼基板103の斜辺1dに単位くさび棒2Bを立て込む。
(10)単位くさび棒2Bを介して基板105を嵌め込む。
(11)基板101の斜辺1dに単位くさび棒2Bを立て込む。
(12)単位くさび棒2Bに基板106を嵌め込む。
(13)基板106の短辺1cに単位くさび棒2A’を立て込む。
(14)基板104,105の短辺1cに長くさび棒2Cを立て込む。
(15)単位くさび棒2A’に基板107を嵌め込む。
(16)基板106,107に対し外枠用の長くさび棒2Dを立て込む。
(17)基板103の短辺1cに長くさび棒2Cを立て込む。
(18)基板108を既に設置した長くさび棒2Cに嵌め込む。
(19)基板108の短辺1cに長くさび棒2Cを立て込む。
(20)基板109の短辺1cを長くさび棒2Cに嵌め込む。
(21)既に設置した基板107の斜辺1dに単位くさび棒2Bを立て込む。
(22)基板110をくさび棒2B及び長くさび棒2Cに嵌め込む。
(23)既に設置した基板108の斜辺1dに単位くさび棒2Bを立て込む。
(24)基板111を長くさび棒2C及びくさび棒2Bに嵌め込む。
(25)既に設置した基板109の斜辺1dに単位くさび棒2Bを立て込む。
(26)基板112を単位くさび棒2B及び長くさび棒2Cに嵌め込む。
以下、同様の操作がなされる。
また、(17)での長くさび棒2Cの立込みがなされた後は、図上での右側部分が独立して施工される。
なお、上記の手順は一例であって、不都合の生じない範囲で種々の手順が採られる。
【0021】
この組立て施工方法によれば、3角形状をなす基板1及びくさび棒2は交互に落とし込み操作をもって組立て作業がなされ、操作が容易であり、特に基板1の操作は主として3角形空間への落とし込みによるので、空間的余裕をもって作業が行える。従って、従来の矩形板での平行を保持しつつ組み立てる煩雑さはなく、また熟練度を要せず、かつ、基板1の底角部B及びくさび棒2の先端角部Qでの当接斜面の自動求心作用により、精度の高い組立てがなされる。また、交会部T,Sではくさび効果により締込みがなされ、この部分で版面方向及び該版面に直角方向に大きな強度が発揮される。
また、解体も叙上の手順の逆になせばよく、操作は容易である。
【0022】
(用途)
本実施形態の板状構造材Hによる組合せ版体J(U1,U2,U3も含む)は、壁体版、床体版、天井版、屋根版等多様な用途を採る。また、ブロック塀用のブロック体としても適用される。
本組合せ版体Jは恒久構造材としても仮設構造材としても用いられる。基板1とくさび棒2とを接着固定すれば版体Jはより一体化され、恒久構造材として使用される。また、接着しない場合には、分解も容易であり、仮設用としても使用される。
【0023】
本組合せ版体Jは上記の一般的用途に限定されない。
図13に示すものは比較的小さな版体Kであって、家具、建具のパネルへ適用されて好適である。当該版体Kは4つの基板1がトラス組として1組となり、2組が使用される。当該版体Kに使用されている基板1は中空部1eを有し、それ自体で模様化される。基板1の表面に化粧板を貼り付けることを妨げない。
因みに、当該版体Kの諸元は例えば、長さL=900mm、厚さa=45mmを採る。
当該版体Kは大きな強度を発揮することは上述のとおりであり、加えて、組立てが容易で、かつ迅速に組み立てられるものであるうえ、解体も容易かつ迅速になされ、その利便性が大きい。基板1とくさび棒2とを接着剤をもって固着する態様を採れば、解体はできないが、強度の大きな版体を得ることができる。
【0024】
本組合せ版体Jは、その大きさに特に限定を受けない。要は、基材となる板状構造材H、特には3角形基板1の大きさ、及びその使用される数により決まるものである。
【0025】
(実施形態の効果)
本実施形態の板状構造材H及びその組合せ版体は叙上の構成よりなり、叙上の組立て施工方法をもって構築されるものであるので、次の効果を有する。
3角形基板1のトラス交会部T、直角交会部Sにおいて、各基板1及びくさび棒2は角部が収斂し、互いに接し合う面がくさび効果を発揮し、この部分で大きな締付け作用を受ける。また、トラス交会部Tが組合せ版体Jに均一に配されることにより、全体的に大きな耐力を得るとともに、版面に直交する力に対しても大きな耐力(抵抗モーメント)を得る。
本板状構造材Hの基板1は同一の形状を採るので、大量生産が容易であるうえ、積重ねることができ、場所を取らず、運搬の利便性を得る。
【0026】
図14は本発明の別な態様で組み立てられる組立て版体Kを示す。図において、先の図例で示した部材と同一の部材に付いては同一の符号が付されている。2A”は先の単位くさび棒2Aに準じ、2C’は先の単位くさび棒2Cに準じる。
本態様において、通しくさび棒2C’が斜めに配される。交会部T’は、主として直角部と底角部との組合せ(6点もの)の一種となる。
【0027】
図15は更に別な直角3角形基板の態様を示す。
この直角3角形基板1Aは不等辺3角形状であり、短辺が3対2の割合のものを示す。該基板1Aの底角部は2種のものとなり、これに対応して単位くさび棒2’は先端の斜面が不等辺となる。
しかして、この直角3角形基板1Aによる版体Lは長方形状のものが得られる。
【0028】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、板状構造材による組合せ版体は、3角形基板のトラス交会部、直角交会部において、各基板及びくさび棒は角部が収斂し、互いに接し合う面がくさび効果を発揮し、この部分で大きな締付け作用を受ける。また、トラス交会部が組合せ版体に均一に配されることにより、全体的に大きな耐力を得るとともに、版面に直交する力に対しても大きな耐力(抵抗モーメント)を得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の板状構造材の全体構成を示す分解立体図。
【図2】板状構造材の一構成素材としての3角形基板の一部断面平面図(図3の2方向矢視図)。
【図3】3角形基板の側面図(図2の3方向矢視図)。
【図4】板状構造材の組合せ要領の一態様を示す分解図。
【図5】板状構造材相互の組合せ断面図(図4の5−5線断面図)。
【図6】(a) 図は板状構造材の斜辺角部の拡大詳細図。
(b) 図は(a) 図のb方向矢視図。
【図7】板状構造材の別の組合せ(組合せ前)要領を示す分解図(トラス交会部)。
【図8】図7の組合せ後の要部拡大図。
【図9】他の凹溝及びくさび棒の態様を示す断面図。
【図10】組合せ版体の全体平面図。
【図11】図10の部分拡大図。
【図12】図11の断面詳細図。
【図13】(a) 図は建具のへの適用例を示す組合せ版体。
(b) 図は(a) 図のb方向矢視図。
【図14】他の組合せ態様を示す版体の断面図。
【図15】他の直角3角形基板の態様を示す分解図。
【符号の説明】
H…板状構造材、T…トラス交会部、S…直角交会部、1…3角形基板、1a…上面、1b…下面、1c…短辺、1d…斜辺、A,B…角部、2…くさび棒、2A,2B…単位くさび棒、2C,2D…長くさび棒、4…凹溝、P,V…角部
Claims (10)
- 一定厚の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる3角形基板と、
前記相対接する基板相互の凹溝に合致し、かつ該凹溝に沿って密接状に嵌合されるくさび棒と、
の2種の構成素材からなることを特徴とする板状構造材。 - 請求項1において、凹溝の幅形状は等幅もしくは底部より開口に向けて拡幅される板状構造材。
- 請求項1又は2のいずれかにおいて、3角形基板は辺部を残して中空とされる板状構造材。
- 一定厚の同形の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板を、該3角形基板の対応する各辺の側面を相接して配し、相接する3角形基板の凹溝に密接状にくさび棒を嵌合して組み立ててなる、
ことを特徴とする組合せ版体。 - 請求項4において、3角形基板とくさび棒とは接着剤により固着される組合せ版体。
- 一定厚にして直角部と底角部とを有する直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板と、前記相対接する基板相互の凹溝に密接状に嵌合されるくさび棒と、の2種の構成素材の組合せよりなる版体であって、
前記同形の3角形基板の対応する各辺の側面が位相を揃えて相接して配され、
前記相対接する3角形基板相互の凹溝には前記くさび棒が密接状に嵌合され、
該3角形基板の底角部の集まる交会部には全ての底角部を集め、
該3角形基板の直角部の集まる交会部には全ての直角部を集めてなる、
ことを特徴とする組合せ版体。 - 請求項6において、3角形基板の斜辺相互間には1つの交会部間のくさび棒が配され、該3角形基板の短辺相互間には1つの交会部間のくさび棒及び2つの交会部間にわたるくさび棒が配されてなる組合せ版体。
- 一定厚にして直角部と底角部とを有する直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板と、前記相対接する基板相互の凹溝に密接状に嵌合されるくさび棒と、の2種の構成素材の組合せよりなる版体の施工方法であって、
前記同形の3角形基板の対応する各辺の側面を位相を揃えて相接して配し、
該3角形基板の底角部の集まる交会部には全ての底角部を集め、
該3角形基板の直角部の集まる交会部には全ての直角部を集め、
前記相対接する3角形基板相互の凹溝には前記くさび棒を密接状に嵌合する、ことを特徴とする組合せ版体の施工方法。 - 請求項8において、3角形基板の斜辺相互間には1つの交会部間のくさび棒を配し、該3角形基板の短辺相互間には1つの交会部間のくさび棒及び2つの交会部間にわたるくさび棒を配する組合せ版体の施工方法。
- 一定厚の同形の直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、所定の幅形状を有しかつ所定深さを保持する凹溝が縦設されてなる複数の3角形基板を該3角形基板の各辺の側面を相接して配し、相接する3角形基板の凹溝に密接状にくさび棒を嵌合して形成される組合せ版体をもって構築される家具又は建具。
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