JP3985623B2 - ロボット - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、人間と共存できるようなロボットに関し、たとえば人間のような温かみと弾力を有する手を使って握手等が可能なロボットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロボットハンドを有するロボットにおいて、そのロボットハンドは機械的であり、触れた感触は冷たく硬くゴツゴツした温かみのないものであった(例えば、特開平10−314198号公報)。
【0003】
そこで重要となってくることは、ペットロボットや介護、福祉ロボット等の人間共存型ロボットが使用者に受容されることである。
【0004】
ロボットの動作が使用者に不安を覚えさせたり、不快感を与えたり、温かみのないようなものであれば、ロボットが長期的にわたって使用されることは難しくなる。
【0005】
すなわち、実用化に際し、ロボットに触れる可能性があり、そのロボットが動作を伴う場合、使用者の安全性が保障され、心理的な面においても癒し、安らぎ、励ましなどを与えてくれる機能を有したロボットが必要とされてくる。
【0006】
また、信頼性及び経済性にも優れ、取り扱いも容易であり、かつ人間のような温かみを有する人間共存型ロボットが強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような背景の中、従来のように機械的でなく弾力性を備え、触った感触も人間が心地よいとされる弾力性を有し、また従来のように機械的で冷たくないように人間の体温に近い温度を有した人間共存型ロボットを量産することを目的とする。
【0008】
さらに、上記したように人間共存型ロボットが使用者に長期的に受容されるためには、ロボットが握り返してくれる場合の動作の強弱や安全性、温度の高低、素材の弾力性に関する検討も必要である。
【0009】
例えば、使用者がソフトに握り返してくれるロボットハンドを有するロボットのロボットハンドを触ろうとした時に、心地悪いとされる程強く握り返されたり、温度が高すぎたり、素材が硬すぎたしりすると、使用者はそのロボットに対して、不快感と恐怖心を抱くようになってしまう。このようなロボットによる使用者への心理的影響を少なくするためには、人間との接触状態で使用者が心地よいと感じる値を調べてみることが重要である。
【0010】
また、安全性対策が望まれる。ロボットが人間の手を握り返してくれたロボットハンドを人間の動作によって、そのロボットのロボットハンドの力を緩め離すことを可能とする等の対策が望まれる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のロボットは、骨材が関節部により連結され、さらにアクチュエータにより駆動される把持手段であって、把持面側の構成が、前記骨材の上に柔軟材を備え、さらに接触センサーを備えた把持手段を用い、人が前記ロボットハンドと握手することによる前記接触センサーからの検知信号に基づき、前期把持手段が人の手を握り返すものである。
【0012】
また、より望ましくは、握手を解除するための解除用接触センサーをさらに備えた把持手段を用い、人が前記ロボットハンドとの握手を解除しようとする動作による前記解除用接触センサーからの検知信号に基づき、把持手段が握手を解除するロボットである。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態を図9に示す。
【0019】
図9において、15はロボットハンドあり、骨材、柔軟材等より構成される。
【0020】
16は、目であり例えば、硝子等で構成され、必要に応じて赤外線センサ−等を内蔵する。17は、足でありロボットハンドと同様に骨材、柔軟材等より構成される。
【0021】
18は、頬であり柔軟材等より構成される。19は、唇であり、柔軟材等より構成される。
【0022】
図1(a)および図1(b)は本発明の実施の形態1における把持手段であるロボットハンドの断面図および平面図を示す。図1に示すロボットハンドは、骨材1が関節部2で連結されアクチュエータ3により駆動される関節駆動機構4を備えている。
【0023】
アクチュエータ3は電磁モータ3aおよび歯車減速機構3bより構成され、電磁モータの高速回転を減速して関節部でのゆっくりした回転に変換している。歯車減速機構3bには必要以上に過大な力が加わらないようトルク制限機能をもたせることが望ましい。この関節駆動機構4の骨材1の上には柔軟材5を備え、この関節駆動機構4の動作により、柔軟材5を把持面側6としてロボットハンドの把持動作が行われる。尚、図1においてロボットハンドの親指側も上記と同様の構成であるため、図示は省いた。
【0024】
このロボットハンドの把持動作により、このロボットハンドが人の手との間で握手動作をする場合、人の手と触れ合う部分は柔軟材でできているため人に心地よい感触を与えることができる。この心地よい感触を与えるために必要な柔軟材の柔らかさについては後述する実験により特定範囲の弾性率のポリマー材料が適していることがわかった。一方このような柔軟材だけでは、ロボットハンドが人の手に与える力覚を十分に伝えることができない。そこで柔軟材を上記の関節駆動機構の骨材上の把持面側に構成することにより、人の手に適切な握手感覚を与えることができた。
【0025】
この柔軟材5の内部には、配線9で結合された接触センサー7を設けてあり、人がこのロボットハンドと握手しようとこのロボットハンドの把持面に触った瞬間に、この接触センサー7の検知信号に基づきロボットハンドが握手動作に移るようこのロボットハンドを制御することができる。
【0026】
さらに柔軟材5の内部には、配線9で結合された加熱冷却素子8を設けてあり、この加熱冷却素子8を用いてロボットハンドの把持面の温度を(環境温度に依存して変化する)人が触れて心地よいと感じる特定の温度範囲に制御することにより、このロボットハンドとの握手時に人間の手にさらに心地よい握手感覚を与えることができる。加熱冷却素子は例えば加熱はヒ−タ−素子で冷却はペルチェ素子等で構成される。
【0027】
またこのロボットは人間の熱線を検知する赤外線センサーを例えば図9の目に内蔵し、この検知信号に基づき、予めロボットハンドの把持部を上記のような人間が触って心地よい温度に温度制御することができる。
【0028】
なおこのロボットが上記のように人と握手をした際、安全性対策上、人の意志動作によって、人の手を握り返してくれたロボットハンドの力を緩め離すことを可能とすることが望まれる。そこでこれを実現するためにこののロボットは、上述のロボットハンドの把持面に設けた接触センサ−とは別に設けられた接触センサ−を人が押すと、ロボットハンドが握手の開放動作に移るよう制御することができる。
【0029】
<実施例1>
ロボットハンドの柔軟材に関する実験
表1に示すようにロボットハンドを構成する柔軟材の弾力性について調査検討及び実験を行った。具体的には(人間が)心地よいと感じる数値を、100人の母集団を被験者として(調査検討及び感覚実験)を行った。結果を図7に示す。図7に示したように弾性率が1×103N/m2より大きく1×105N/m2未満の場合、半数(50%)以上の人が心地よい数値という結果となった。従って、1×103N/m2より大きく1×105N/m2未満の値の弾性率を有する柔軟材をロボットハンドに使用することが望ましいことがわかった。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施の形態2)
図2(a)および図2(b)は本発明の実施の形態2におけるロボットハンドの断面図および平面図を示す。図2に示すロボットハンドは、実施の形態1の図1と同様、骨材1が関節部2で連結されアクチュエータ3により駆動される関節駆動機構4を備えている。
【0032】
この関節駆動機構の骨材1の上には柔軟材5を備えるとともに、この柔軟材5を表皮層10で被覆している。関節駆動機構により駆動することにより、この表皮層で覆われた柔軟材5を把持面側6としてロボットハンドの把持動作が行われることは実施の形態1の場合と同様である。
【0033】
このロボットハンドの把持動作により、このロボットハンドが人の手との間で握手動作をする場合、柔軟材と表皮層よりなる把持部分は、その平均的な弾性率を、実施の形態1で述べた特定の弾性率範囲とすることにより、実施の形態1と同様人に心地よい感触を与えることができる。
【0034】
この弾性率範囲のうち下限に近い材料では、それ自体ではロボットハンドの把持部を構成するだけの強度は持たない。このように握って心地よい感触は与えるが強度が持たない材料を用いるには、この柔軟材を、この材質よりは弾性率の高いポリマー材料によりなる表皮層で覆うことにより、これらを両立させることができる。
【0035】
この柔軟材5の表皮層10に接する内部には、配線9で結合された接触センサー7を設けてあり、人がこのロボットハンドと握手しようとこのロボットハンドの把持面に触った瞬間に、この接触センサー7の検知信号に基づきロボットハンドが握手動作に移るようこのロボットハンドを制御することができる。接触センサーはロボットハンドの把持面に近い場所にあるため確実な接触の検知ができる。
【0036】
さらに柔軟材5の表皮層10に接する内部には、配線9で結合された加熱冷却素子8および温度センサー11を設けている。この温度センサー11のセンサー信号に基づき加熱冷却素子8を用いて温度制御する。温度センサーによる加熱冷却素子のフィードバック制御によりロボットハンドの把持面の温度を特定の温度範囲に正確に制御することができ、このロボットハンドは、人の手に触れて心地よいさらに適切な握手感覚を与えることができる。温度センサーと加熱冷却素子はロボットハンドの把持面に近い場所にあるため伝熱経路が短く、ロボットハンドの把持面の温度を速やかに望ましい温度に制御することができる。
【0037】
また例えば図9において人の熱線を検知する赤外線センサーを16の目に内蔵し、本ロボットに人が近づくと、この赤外線センサ−によって人の熱線を検知して、上述の加熱冷却素子に信号を送り、予めロボットハンドの把持部を人の体温に近い温度に温度制御することができる。
【0038】
なおこのロボットは、上記のように人と握手をした際、上述のロボットハンドの把持面に設けられた接触センサ−とは別に設けた接触センサ−を人が押すと、ロボットハンドが握手の開放動作に移るよう制御することができる。
【0039】
<実施例2>
最適温度に関する実験
ロボットハンドの温度で心地よいとされる温度は何度が最適であるかを100人の母集団を被験者として(調査検討及び感覚実験)を行った。図8に示したように、ロボットハンドの温度が、20℃以上37℃以下において過半数の人(50%)は心地よいと感じることが判った。興味あることには心地よいと感じるロボットハンドの温度は人体の温度よりやや低めであることがわかった。ただし、図2に示したように、環境(被験者の置かれている環境温度)によって心地よいと感ずるロボットハンドの温度も多少変化し、環境(被験者の置かれている環境温度)が低いほど、心地よいと感じるロボットハンドの温度は、やや高めとなり、環境(被験者の置かれている環境温度)が高いほど、心地よいと感じるロボットハンドの温度は低めとなる。
【0040】
例えば本実験においては環境温度が25℃の場合はロボットハンドの温度が20℃以上34℃以下のとき過半数の人は心地よいと感じ、環境温度が15℃の場合はロボットハンドの温度が23℃以上37℃以下のとき過半数の人は心地よいと感じた。このようにロボットハンドの温度は環境温度を考慮して制御することが望ましいことがわかった。
【0041】
従ってこれら実験結果を考慮すると、より心地よいと感ずるロボットハンドの温度は、23℃以上34℃以下とすることが望ましい。
【0042】
このようにロボットハンドに温度調整機構を設けて、環境(被験者の置かれている環境温度)に応じて、ロボットハンドの温度を最適化してもよい。この時、人と環境温度の差を一定とするのではなく、環境温度が高い時はロボットハンドの温度を相対的に低めに、また環境温度が低い時にはロボットハンドの温度を相対的に高めにすることが重要である。具体的には、心地よいと感じるロボットハンドの温度をTr、環境温度をTeとすると
21.5 - 0.3×(Te-20) < Tr < 35.5 - 0.3×(Te-20) (1)
とすることが望ましい。
【0043】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3におけるロボットハンドの製作方法を示したものである。
【0044】
実施の形態2で示した柔軟材5を被覆する表皮層10は、柔軟材5の形状を保持しうる強度と弾性率を有するポリマー材料12を使用する。
【0045】
このポリマー材料12を切断、または打ち抜き等の加工方法を用いて、ロボットハンドの表皮層10の形状を製作する。
【0046】
このポリマー材料12は形状作製の容易性のほかに熱圧着、接着等の方法で容易に接合できる材料である事が望ましい。
【0047】
また本発明のロボットハンドは、把持部を生物の体温に近い温度に温度制御することから、加熱冷却素子8から発生する熱を適度に放熱できるような通気性を有する材料である事が望ましい。また、本発明のロボットハンドは人間の手と接触する事から、汗や使用環境下での水分をロボットハンド内部に浸透させないような機能を有する防水性の材料であることが望ましい。
【0048】
図4は配線9で結合された接触センサー7、加熱冷却素子8、温度センサー11を配置したフレキシブル配線基板13および表皮層10に前記フレキシブル配線基板13を接合する工程の斜視図である。このフレキシブル配線基板13をロボットハンドの表皮層10に接合する事で、ロボットハンドの表皮層10の把持面側のごく近傍に各種センサー等を配置構成することが可能となり、柔軟材5の厚さの影響による各種センサー感度の低下を防ぐ事が可能となる。
【0049】
またはフレキシブル配線基板13自体が表皮層10に用いられるポリマー材料12を利用する事も可能である。
【0050】
図5aは少なくとも一方にフレキシブル配線基板13が形成された2枚のグローブ形状を有する表皮層10を前記フレキシブル配線基板13の形成面を外側として、そのグローブ形状に沿った周囲部で接合する工程を示した断面図である。
【0051】
図5bは前記フレキシブル配線基板13の接合面と前記接合部が内側となるようにグローブ形状を裏返して、実際のロボットハンドの形状を作製する工程を示した断面図である。
【0052】
上記グローブ形状の作製工程を用いる事で、接合した周囲部をロボットハンド形状の内側にする事が可能となり、ロボットハンドの外観形状をより滑らかなものとすることが可能となる。
【0053】
図6は図5bで示した表皮層10の内面にフレキシブル配線基板13を形成したグローブ形状14に、前記間接駆動機構4を挿入し、柔軟材5を注入し、グローブ形状14と前記間接駆動機構を接合する事により、ロボットハンドの形状を作製する方法を示したものである。
【0054】
上記ロボットハンドの製作方法によると、グローブ形状を作製する加工工程を容易なものとする利点を有する。また柔軟材5、表皮層10の材料選択もロボットハンドの使用環境によって選択する事が容易となるという利点を有する。また人間の手により近づけた5本指を有するロボットハンド形状も容易に作製が可能となる利点を有する。
【0055】
以上本発明を、人間と接触し、ソフトに人間の手を握り返してくれるロボットハンド有する人間共存型ロボットに適用する場合について説明したが、本発明はこれと同様の対策が要望されるロボット、ぬいぐるみ等にも広く適用されるものであり、上記ペットロボットに限るものではない。
【0056】
以上本発明の弾力性、温度は手に限定するものではなく、胴体部、顔、足等に適用しても良い。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の骨材上に人間が心地よいと感ずる弾性率を有する柔軟材を備えたロボットハンドを有する人間共存型ロボットによれば、握手をした際に従来のロボットでは得られなかった心地よい弾力感を人間に与えることが可能である。
【0058】
更に本発明のロボットにおいては加熱冷却素子をも備えることによりロボットハンドの温度を人間が心地よいと感ずる温度に保つことにより更なる心地よさを人間に与えることが可能となる。この時本発明では人の接近を赤外線センサー等で検知し必要な時のみ動作させるようにして省エネ化が可能である。
【0059】
また本発明のロボットにおいてはロボットハンドに人間が触れたとき、接触センサーによりこれを検知してロボットハンドが人間の手を握り返してくれることによって、使用者はロボットに対し、心理的な面で、人間のような温かみを感じて、愛着が沸き、癒されたり励まされたりするので、長期的に受容され得る人間共存型ロボットの提供を実現できる。また、お年寄りなどの手に刺激を与えることにより、脳の活性化を図り、ボケ防止の効果も期待できる。この時安全目の観点からは本発明では別に設けた接触センサー等を用いて人間の意志動作により握手を解除することが可能である。
【0060】
これらロボットのロボットハンドは本発明の請求項10から13に記載のロボットハンドの製造方法を用いれば、容易にかつ安価で量産性に優れた作製が可能となる。
【0061】
また、本発明は、上記ペットロボットのみならず福祉、介護、医療分野等において、人間と共存して様々な発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における把持手段(ロボットハンド)を示す図
【図2】本発明の実施の形態1におけるロボットハンドを示す図
【図3】本発明の実施の形態3におけるロボットハンドの製作方法を示す図
【図4】本発明の実施の形態3の工程を示す図
【図5】本発明の実施の形態3の工程を示す図
【図6】本発明の実施の形態3の工程を示す図
【図7】ロボットハンドの柔軟材に関する実験結果を示した図
【図8】最適温度に関する実験結果を示した図
【図9】本発明の実施の形態のロボットの全体を示す図
【符号の説明】
1 骨材
2 間接部
3 アクチュエータ
3a 電磁モータ
3b 歯車減速機構
4 間接駆動機構
5 柔軟材
6 把持面側
7 接触センサー
8 加熱冷却素子
9 配線
10 表皮層
11 温度センサー
12 ポリマー材料
13 フレキシブル配線基板
14 グローブ形状
15 ロボットハンド
16 目
17 足
18 頬
19 唇
Claims (2)
- 骨材が関節部により連結され、さらにアクチュエータにより駆動される把持手段であって、把持面側の構成が、前記骨材の上に柔軟材を備え、さらに接触センサーを備えた把持手段を用い、人が前記ロボットハンドと握手することによる前記接触センサーからの検知信号に基づき、前期把持手段が人の手を握り返すロボット。
- 握手を解除するための解除用接触センサーをさらに備えた把持手段を用い、人が前記ロボットハンドとの握手を解除しようとする動作による前記解除用接触センサーからの検知信号に基づき、把持手段が握手を解除する請求項1に記載のロボット。
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