JP3980313B2 - エンジンの潤滑構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はエンジンの潤滑構造、特にコンパクトなレイアウトを可能にするものに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2000−282826号には、クランクケース底部に設けたオイル溜まりのオイルをクランクウェブの回転によりリードバルブを介してミッション室へ送り出して潤滑する構造が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構造の場合、ミッション室の底部からストレーナを介してオイルポンプでオイルを吸引して循環させることになるので、リードバルブとストレーナの距離が長くなり、その間のオイル通路がクランクケース内を往復することになるので長くなる。したがって潤滑構造によりエンジンを軽量・コンパクト化するためには、リードバルブとストレーナを接近させることが望ましいが、このようにするとリードバルブから送り出されたばかりのオイルにはエアーが噛み込まれているため、このエアーの噛み込みのあるオイルをストレーナへ吸引しないようにすることが望まれている。そこで本願発明は、リードバルブとストレーナを近接配置してしかもエアーの噛み込みを防ぐようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明に係るエンジンの潤滑構造は、クランクシャフト、コンロッド、ピストンが配置された部屋と、エンジン下部に設けたオイルパンの部屋をそれぞれ独立して設け、これらの部屋をリードバルブを介して連結し、前記オイルパンのオイルをストレーナによって吸い上げるように成したエンジンの潤滑構造において、
前記オイルパンを前記クランクシャフトの後下方に配置し、
前記クランクシャフト、コンロッド及びピストンが配置された部屋と前記オイルパンとを前記クランク軸を軸支するジャーナル隔壁により分離するとともに、このジャーナル隔壁の後部下方隅に設けられた開口に前記リードバルブを備えることで前記部屋から前記オイルパンへの出口とし、
前記オイルパンの底部から一体に上方に向けてこのオイルパンの前後を仕切るリブを設け、このリブを前記オイルパン内のストレーナと前記出口との間でオイル内に混入したエアーを分離する隔壁とし、
前記リブの前方にオイルストレーナ、後方に前記出口を配置したことを特徴とする。
【0005】
【発明の効果】
クランクシャフト、コンロッド及びピストンを収容する密閉された部屋とオイルパンの部屋とを隔離し、リードバルブを介して両室を連絡し、このリードバルブに近接してストレーナを配置したので、クランクシャフトやピストン等を潤滑したオイルは、ピストンの往復運動によってリードバルブを介してオイルパンの部屋へ排出される。このときリードバルブによりオイルの逆流入を防止する。
【006】
また、リードバルブから出たオイルはエアーを多く含んだエアー噛み込み状態となっている。しかしリードバルブからの出口とストレーナとの間に隔壁を設けることによりエアーを分離させることができる。その結果、潤滑装置のコンパクトなレイアウトとエアーの噛み込み防止の両立を可能にすることができ、潤滑構造によりエンジンを軽量・コンパクト化できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は本実施例の適用された水冷4サイクル式エンジンの左側面図、図2はそのクランク軸、メイン軸及びカウンタ軸を通る断面図、図3はバランサー機構部分の断面図である。
【0008】
図1において、このエンジンはクランクケース1の上部にシリンダブロック2を設け、その上にシリンダヘッド3及びシリンダヘッドカバー4を設けてある。シリンダブロック2内にはピストン5が摺動して往復自在であり、ピストン5はコンロッド6を介してクランク軸7(符号の指示先は中心を示す)を回転させる。クランク軸7はクランクケース1内のクランク室内へ収容され、クランク軸7の軸上に設けられたプライマリドライブギヤ9によりクラッチ10と一体のプライマリドリブンギヤ11と噛み合う。
【0009】
変速機構を構成するメイン軸12とカウンタ軸13(いずれも符号の指示先は中心を示す)はクランク軸7と平行に配置され、それぞれの軸上に設けられている複数の変速ギヤ14,15を常時噛み合わせてある。これらはクランクケース1内のミッション室内へ収容される。メイン軸12はクラッチ10と接続し、クラッチレバー17によりクラッチ10を断続操作する。また、公知のギヤセレクト機構により変速ギヤ14,15の組み合わせを選択し、カウンタ軸13の一端に設けられた出力スプロケット18へ変速出力するようになっている。
【0010】
図2に示すように、クランクケース1は左右分割されている、左側のLケース20と右側のRケース21で構成され、それぞれの外側にLケースカバー22、Rケースカバー23が取付けられる。
【0011】
Lケース20とRケース21の間にはクランク軸7、メイン軸12、カウンタ軸13がベアリングで支持され、クランク軸7はLケース20とRケース21の間に密閉して形成されたクランク室8内へ収容される。また、メイン軸12、カウンタ軸13、変速ギヤ14,15の変速機構は、クランク室8に続いてLケース20、Rケース21間に形成されたミッション室16内へ収容されている。クランク室8はミッション室16と隔壁で隔てられた密閉室になっている。また、Rケース21とRケースカバー23及びクラッチカバー24の間にクラッチ室25が形成され、ここに湿式クラッチ10が収容される。
【0012】
クラッチ10に接続するメイン軸12は中空軸であり、その内部にプッシュロッド26が貫通し、一端側をクラッチレバー17の一端に形構成したカム部27で押すことによりクラッチを断続操作する。符号28はクランク軸7の一端に設けられたACGである。
【0013】
図3に示すように、クランク軸7上のプライマリドライブギヤ9近傍にバランサードライブギヤ30が設けられ、ここに噛み合うバランサードリブンギヤ31がっCバランサー軸32の一端に設けられている。バランサー軸32はクランク軸7と平行に配置されてLケース20,Rケース21間に支持され、両端にバランスウエイト33,34が設けられている。一方のバランスウエイト33はバランサードリブンギヤ31と別体でかつ軸方向へ重なって設けられ、他方のバランスウエイト34はバランサー軸32の他端へ一体に設けられている。
【0014】
バランスウエイト33が設けられているバランサー軸32の軸端には軸方向の係合穴32aが設けられ、ここに水ポンプ35の駆動軸36に形成された異形端部36aが係合して同軸で一体回転可能に連結され、バランサー軸32と一体になって水ポンプ35を駆動する。
【0015】
他方のバランスウエイト34のボス部には別体のギヤ37が一体回転可能に設けられている。このギヤ37はオイルポンプギヤ38と噛み合い、オイルポンプギヤ38は一体の駆動軸39を回転させてオイルポンプ40を駆動する。駆動軸39はバランサー軸32と平行にLケース20へ支持されている。オイルポンプ40はLケース20側でかつRケース21との合わせ部に形成されている。
【0016】
オイルポンプ40に対するオイルの供給は、クランク室8のRケース21の底部に形成されたオイル溜まり41から図示しないリードバルブを介してクランクウエブ42の回転によりオイルパンへ送り込まれる。オイルポンプ40から圧送されたオイルは吐出路43からLケースカバー22の内側に設けられたオイルフィルタ44を介してLケースカバー22に形成されたオイル通路45からクランク軸7の軸心部に設けたオイル通路46等必要箇所へ給油する。
【0017】
図4はLケースカバーを取り外した状態のLケース側面を示す図、図5はエンジンを中央で左右分割してRケース側の分割面を示す断面図である。図5に示すように、Rケース21の底部にオイル溜まり41へ開口するオイル排出口47を設けてある。
【0018】
オイル排出口47とクランク軸7のウエブ42との間には、ウェブ42の回転方向(矢示方向)に沿ってウェブ42の外周側からオイル排出口47に向かって次第に拡大する略楔状のオイル通路48を形成し、ウェブ42の回転によってオイル通路48からオイル溜まり41内へオイルを送り込むようになっている。
【0019】
オイル溜まり41と後述するオイルパンとは連通し、かつこの連通路にリードバルブ49が設けられている。リードバルブ49は公知の構造であり、ピストン5の下降によりLケース20の底部へ設けられているオイルパン側へ開いて出口49aからオイルパン50へ続くオイル排出口51へオイルを送り出し、ピストン5の上昇時には閉じてオイルパン側からのオイル逆流を防止している。
【0020】
図4に示すように、Lケース20の底部にオイルパン50が設けられている。このオイルパン50は、Lケース20のうちクランク室8(図2)を構成するジャーナル璧部20aの外側に設けられ、Lケースカバー22(図2)によって覆われる。ジャーナル璧部20aの後部下方隅にオイル排出口51が開口し、リードバルブ49を介してオイル溜まり41の下流側へ連通している。
【0021】
オイルパン50とクランク室8はジャーナル璧部20aで隔てられ、リードバルブ49を介して連絡する。したがって、リードバルブ49が閉じているとき、クランク室8はオイルパン50と遮断され、しかもシリンダブロック2、シリンダヘッド3及びシリンダヘッド4に囲まれて密閉状態となる。
【0022】
オイル排出口51はオイルパン50の底部から一体に上方へ延びるリブ52によりオイルパン50内で隔離された小区画内へ開口している。この小区画は上方が開放され、オイル排出口51から小区画内へ排出されたオイルがリブ52の上端を乗り越えるとオイルパン50内へ流れ込むようになっている。
【0023】
オイルパン50内にはストレーナ53が設けられ、オイルパン50内のオイルはストレーナ53が設けられた吸入管54を通ってオイルポンプ40へ吸入し、さらにオイルポンプ40から前記したように各所へ圧送して潤滑する。
【0024】
次に、本実施例の作用を説明する。クランク軸1やピストン5等を潤滑したオイルは、ピストン5の往復運動によってオイル溜まり41からリードバルブ49及びオイル排出口51を介してLケース20とLケースカバー22間に形成されるオイルパン50内へ形成されるた小区画内へ排出される。
【0025】
このとき排出されたオイルはエアーを多く含んだ状態となっているが、リブ52をリードバルブ49の下流側となるオイル排出口51とストレーナ53の間に隔壁として設けることにより、エアーを分離させることができる。したがって、ストレーナ53をリードバルブ49に近接配置しても、潤滑装置のコンパクトなレイアウトとエアーの噛み込み防止の両立を可能にすることができ、潤滑構造によりエンジンを軽量・コンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の適用された水冷4サイクル式エンジンの左側面図
【図2】上記エンジンの要部断面図
【図3】バランサー機構部分の断面図
【図4】Lケースカバーを除いたLケースの側面図
【図5】クランクケースを左右分割してRケース側を示す断面図
【符号の説明】
1:クランクケース、5:ピストン、7:クランク軸、8:クランク室、20:Lケース、21:Rケース、22:Lケースカバー、23:Rケースカバー、40:オイルポンプ、41:オイル溜まり、49:リードバルブ、50:オイルパン、51:オイル排出口、52:リブ、53:ストレーナ
Claims (1)
- クランクシャフト、コンロッド、ピストンが配置された部屋と、エンジン下部に設けたオイルパンの部屋をそれぞれ独立して設け、これらの部屋をリードバルブを介して連結し、前記オイルパンのオイルをストレーナによって吸い上げるように成したエンジンの潤滑構造において、
前記オイルパンを前記クランクシャフトの後下方に配置し、
前記クランクシャフト、コンロッド及びピストンが配置された部屋と前記オイルパンとを前記クランク軸を軸支するジャーナル隔壁により分離するとともに、このジャーナル隔壁の後部下方隅に設けられた開口に前記リードバルブを備えることで前記部屋から前記オイルパンへの出口とし、
前記オイルパンの底部から一体に上方に向けてこのオイルパンの前後を仕切るリブを設け、このリブを前記オイルパン内のストレーナと前記出口との間でオイル内に混入したエアーを分離する隔壁とし、
前記リブの前方にオイルストレーナ、後方に前記出口を配置したことを特徴とするエンジンの潤滑構造。
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