JP3975361B2 - 抗ストレプトコッカスサーモフィラスモノクローナル抗体、その産生細胞、ストレプトコッカスサーモフィラスの検出方法及び検出試薬 - Google Patents

抗ストレプトコッカスサーモフィラスモノクローナル抗体、その産生細胞、ストレプトコッカスサーモフィラスの検出方法及び検出試薬 Download PDF

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本発明は、ストレプトコッカスサーモフィラス(Streptococcus thermophilus)に対する新規なモノクローナル抗体、該抗体の産生能を有する細胞株(ハイブリドーマ)、該抗体を利用したストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出方法及び検出試薬に関する。
ストレプトコッカスサーモフィラスは、ヨーグルトに使用される細菌の代表的な一つである。国際規格(国連食料農業機構(FAO)と世界保健機構(WHO))の決定によれば、ヨーグルトと称される製品は、「Lactobacillus bulgaricus(ラクトバチルス・ブルガリカス)、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus(ストレプトコッカス・サリバリウス サブスピーシーズ サーモフィラス、一般にはこの菌を「ストレプトコッカスサーモフィラス」と称している)の両方の菌の乳酸発酵作用により乳及び脱脂粉乳などの乳製品から作られるもので、最終製品中には前述の2つの菌が多量に生存しているもの」と定義される。
ヨーグルトは、これらの2つの菌のそれぞれの含有量により風味や味が異なることがわかっている。特に、ストレプトコッカスサーモフィラスの含有量はヨーグルトの品質に重大な影響を与える。従って、これら各菌の含有量を測定する技術は、ヨーグルトの品質を検査する上でも重要である。
従来、このような菌の検出は、一般には、培養法を利用して生育させた菌について、その菌学的性質等を調べることにより行われている。即ち、各種培地を利用した培養により発生するコロニーの生育状態、形態学的性質、菌学的性質等を調べることにより該当する菌を同定し、該菌のコロニー数を計数することによって、その定量を行っている。しかるに、この方法では、通常、培養に24時間以上の時間を必要とし、培養自体操作が煩雑で、培地の選択、培養条件の選択、コロニー形態の確認等に専門的知識と熟練とが必要であり、定量精度も尚低い欠点がある。
従って、ストレプトコッカスサーモフィラスを、より迅速かつ簡便に、しかも正確にかつ精度よく行う検出できる技術の開発が当業界で望まれている。
上記技術の開発のためには、まずストレプトコッカスサーモフィラスに対して特異的な抗体の確立が考えられる。そのような抗体が得られれば、該抗体を利用した免疫検出技術によって、ヨーグルト中のストレプトコッカスサーモフィラスを容易に同定、定量することができ、これによってヨーグルトの品質を知ることができる。しかしながら、ストレプトコッカスサーモフィラスに対する特異抗体は現在知られていない。
本発明は、当業界で要望されているストレプトコッカスサーモフィラスの検出技術を提供することを目的とする。また本発明は、上記検出技術に利用できるストレプトコッカスサーモフィラスに対するモノクローナル抗体及び該抗体を産生する細胞株を提供することを目的とする。
本発明者は、研究を重ねた結果、上記目的を達成し得る新しいモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞系を確立し、該細胞系から所望のモノクローナル抗体の収得に成功した。本発明はこの成功を基礎として更に研究を重ねた結果、完成されたものである。
本発明は、下記の発明を提供する。
(1) ストレプトコッカスサーモフィラスに対するモノクローナル抗体を産生する細胞株(以下単に「本発明細胞株」と言うことがある)。
(2) 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P-19601として寄託された、上記(1)に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞株。
(3) ストレプトコッカスサーモフィラスと反応し、他のストレプトコッカス属、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属に属する細菌とは実質的に交差反応しないモノクローナル抗体(以下単に「本発明抗体」と言うことがある)。
(4) 上記(1)又は(2)に記載の細胞株により産生される上記(3)に記載のモノクローナル抗体。
(5) 上記(3)に記載のモノクローナル抗体を含有することを特徴とする、ストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出のための検出試薬。
(6) ストレプトコッカスサーモフィラスを含有する試料と上記(3)又は(4)に記載のモノクローナル抗体とを接触させて免疫複合体を生成させる工程を含むことを特徴とする、上記試料中のストレプトコッカスサーモフィラスを免疫学的に検出する方法。
(7) ストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出が、サンドイッチELISA法により行われる上記(6)に記載の検出方法。
(8) 試料がヨーグルトである上記(6)又は(7)に記載の方法。
本明細書において、モノクローナル抗体について「実質的に交差反応しない」及び「実質的に結合能を有さない」とは、ストレプトコッカスサーモフィラスとの反応性(結合性)を100(基準)とした時、他の細菌との反応性(結合性)が1以下であることを言う。
また、本明細書において、「免疫学的検出」等として記載する「検出」なる用語は、菌の存在の有無を確認することのみならず、菌が存在する場合にはその菌の存在の程度(含有される量)を測定すること(定量すること)をも含めた広義の意味で用いられるものとする。
本発明は、ストレプトコッカスサーモフィラスに対する高い親和性を有し特異性の高い抗ストレプトコッカスサーモフィラスモノクローナル抗体を産生する能力のある細胞株、及び該細胞株の産生する上記モノクローナル抗体が提供される。
本発明のモノクローナル抗体を利用すれば、検体中に存在するストレプトコッカスサーモフィラスを、高感度、高精度で容易に検出できる。しかもこの検出結果は、他の細菌の混入による誤差を伴わないストレプトコッカスサーモフィラスに特異的なものである。従って、この検出結果に基づいて、ヨーグルト等の品質管理を容易に実施することができる。
以下、本発明の抗ストレプトコッカスサーモフィラスモノクローナル抗体産生細胞株及び本発明抗体について、作製手順に沿って説明し、次いで本発明抗体を利用した免疫測定法について詳述する。
本発明細胞株
(免疫)
まず、ストレプトコッカスサーモフィラスまたは該ストレプトコッカスサーモフィラスに特異的なマーカー蛋白質を免疫原として利用して、慣用されるモノクローナル抗体製造技術に従って、哺乳動物を免疫する。
哺乳動物としては、特に制限はないが、一般には、マウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット等を用いることができる。好ましい哺乳動物はマウスおよびラットであり、より好ましくはマウスである。これらの哺乳動物は、本発明抗体の製造のために引き続き細胞融合される形質細胞腫細胞との適合性を考慮して選択することができる。マウスの例としては、A/J系統、BALB/C系統、DBA/2系統、C57BL/6系統、C3H/He系統、SJL系統、NZB系統、CBA/JNCrj系統が挙げられる。これらのうちで、BALB/C系統のマウスは、免疫後に血清中に高い抗体力価を示すので、その利用によれば、ストレプトコッカスサーモフィラスとの親和性が極めて高いモノクローナル抗体を得ることが可能である。血中抗体力価が、特異的なハイブリドーマの出来易さと関係していることは公知である。また、細胞株の確立後の腹水による抗体大量作製においては、BALB/C系統マウスが一般によく使用される。従って、そのような抗体の大量作製が望まれる場合は、BALB/C系統のマウスの利用が好ましい。実験動物の齢は、用いる動物種により異なり特に限定されないが、マウスまたはラットの場合、代表的には約4週齢〜約12週齢、好ましくは約6〜約10週齢、より好ましくは約7週齢である。
免疫原として用いられるストレプトコッカスサーモフィラスは、例えば、ヨーグルト中から既知技術により単離、精製された標品でもよく、各種寄託機関に寄託された保存菌であってもよい。例えば、該菌は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC, アメリカ合衆国 メリーランド 20852、ロックビル、パークローン ドライブ 12301から入手することができる。
更に、上記免疫原は、ストレプトコッカスサーモフィラスに特有のマーカー蛋白及びその一部であってもよい。
免疫の前に、免疫原は、免疫応答を増強させるためにアジュバントと混合され得る。アジュバントの例としては、油中水型乳剤(例えば、不完全フロイントアジュバント)、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤等のいずれの形態であってもよい。より具体的には、該アジュバントには、水酸化アルミニウムゲル、シリカアジュバント、粉末ベントナイト、タピオカアジュバント等が含まれる。更に、これらの他に、BCG、Propionibacterium acnesなどの菌体及び細胞壁、トレハロースダイコレート(TDM)などの菌体成分;グラム陰性菌の内毒素であるリポ多糖体(LPS)およびリピドA画分;βグルカン(多糖体);ムラミルジペプチド(MDP);ベスタチン;レバミゾールなどの合成化合物;胸腺ホルモン、胸腺ホルモン液性因子、タフトシンなどの生体成分由来の蛋白質乃至ペプチド性物質;それらの混合物(例えば、完全フロイントアジュバント)などもアジュバントとして利用することができる。これらのアジュバントは、市販品としても容易に入手できる。該アジュバントは、免疫原の投与経路、投与量、投与時期などに依存して免疫応答の増強または抑制に効果を示す。更に利用するアジュバントの種類によって、得られる抗体は、免疫原に対する血中抗体産生、細胞性免疫の誘導、免疫グロブリンのクラスなどに差が生じる。それゆえ、目的とする免疫応答に応じて、アジュバントを適切に選択することが好ましい。選択されたアジュバントの取扱い、例えばストレプトコッカスサーモフィラスとの混合方法などは、各アジュバントについて当該分野で公知の方法に従うことができる。
哺乳動物の免疫は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えば、免疫原を哺乳動物の皮下、皮内、静脈または腹腔内に注射投与することによって行われる。免疫応答は、免疫される哺乳動物の種類および系統によって異なるので、免疫スケジュールは、使用される動物に合わせて適切に変更され得る。免疫原の投与は、最初の免疫後に、何回か繰り返される。追加免疫は、例えば、最初の免疫から4週間後、6週間後および8週間後に行われ得る。より具体的には、例えば免疫原を生理食塩水含有リン酸緩衝液(PBS)、生理食塩水などで適当濃度に希釈し、所望により前記アジュバントと併用して、供試動物に2-14日毎に数回投与し、例えばマウスの場合は、免疫原の総投与量が約100-500μg/マウス程度になるようにするのが好ましい。より好ましくは、供試動物としてマウスを利用し、14日毎に5回以上免疫原を投与し、免疫原の総投与量を約100μg/マウスとする。
かくして、哺乳動物体内において所望の抗体産生細胞を調製できる。免疫細胞(形質細胞)としては、上記最終投与の約3日後に摘出した脾細胞が好ましい。
(抗体産生の確認)
免疫後、哺乳動物から採血し、得られた血液をストレプトコッカスサーモフィラス結合活性の存在についてアッセイすることにより、哺乳動物の体内でストレプトコッカスサーモフィラスに対する抗体が産生されていること、および免疫末期には該抗体はIgMからIgGへのクラススイッチが起こっていることが確認できる(例えば、HarlowおよびLane、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, COLD SPRING HARBOR LABORATORY, New York (1988)参照)。適切なアッセイ方法の例としては、酵素免疫測定法(ELISA法, Immunochemistry, 8, 871-874 (1971); Engvall, E., Meth. Enzymol., 70, 419-439 (1980))、放射免疫アッセイ法(RIA)、蛍光抗体法等が挙げられる。特にストレプトコッカスサーモフィラスに対して高親和性を有する抗体を得るためには、上記アッセイ法等によって高い抗体価を示す抗血清を選択するのが望ましい。
(ブースト)
ストレプトコッカスサーモフィラス結合性抗体の産生を確認した後、脾臓を肥大させるために、ブースト(免疫原の追加注射)を行い得る。ブーストで投与される免疫原の量は、最初に投与される免疫原の量の約4〜5倍とするのが望ましいが、これを目安として適宜増減することができる。ブーストは、代表的には、免疫原と不完全フロイントアジュバントとのエマルジョンを用いて行われる。ただし、最終免疫(細胞融合数日前の免疫原の追加注射)で投与される免疫原は、アジュバントを加えない純粋品であるのが好ましい。投与経路は、皮下、皮内、静脈及び腹腔内のいずれでもよい。これらの投与経路の選択によって、免疫原とするストレプトコッカスサーモフィラスの異なった部位を認識する抗体が得られる可能性がある。
(細胞融合)
最終免疫後、免疫した哺乳動物から形質細胞(免疫細胞)としての脾細胞を摘出し、これを骨髄腫由来の細胞(形質細胞腫細胞、ミエローマ細胞)と細胞融合させる。
融合細胞(ハイブリドーマ、hybridoma)の増殖能力は、細胞融合時に用いられるミエローマ細胞の種類に依存するので、細胞融合には、増殖能力の優れた細胞を用いることが好ましい。また、ミエローマ細胞は、これと融合させる免疫細胞の由来する哺乳動物と適合性があることが好ましい。ミエローマ細胞は、新たに調製してもよいし、市販のものを使用してもよい。マウスのミエローマ細胞株としては、P3X63-Ag8.653 (J. Immunol., 123, 1548-1550, (1979))、Sp2/O Ag14 (Nature, 276, 269-270 (1978))、FO・1 (J. Immunol. Meth., 35, 1-21 (1980)、S194/5.XX0 BU.l、P3/NS1/1 Ag4 1などが挙げられる。これらのうちでP3X63-Ag8.653は、その利用によって抗体の断片を産生せず、かつ融合細胞の増殖能力が優れたものとなるため特に好ましい。ラット由来のミエローマ細胞株としては、210.RCY3.Ag.1.2.3 (Nature, 277, 131-133 (1979)、YB2/0などが挙げられる。
細胞融合は、当該分野で公知の方法に従って行われる(例えばケーラーとミルステインの方法 (KoehlerおよびMilstein, Nature, 256: 495 (1975))、コスバーらの方法 (Kosbor et al., (1983), Immunol. Today, 4: 72)、コッテらの方法 (Cote et al., (1983), Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 80: 2026)、コーレらの方法 (Cole et al., MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan, R. Liss Inc., New York,NY, 77-96頁(1985)など参照)。細胞融合法の例としては、融合促進剤として、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルス(HVJ)を用いる方法、電流を利用する方法などが挙げられる。これらのうちでは、細胞毒性も比較的少なく、融合操作も容易で再現性が高いため、ポリエチレングリコールを用いる方法が好ましい。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用比は、通常のこの種の抗体の製造方法におけるそれと変りはない。例えばミエローマ細胞に対して免疫細胞を約1-10倍程度用いるのが普通である。融合反応時の培地としては、上記ミエローマ細胞の増殖に通常使用される各種のもの、例えばRPMI-1640培地、MEM培地、その他のこの種細胞培養に一般に利用されるものを例示できる。通常これらの培地はウシ胎仔血清(FCS)などの血清補液を抜いておくのがよい。融合は上記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を、上記培地中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液、例えば平均分子量1000-6000程度のものを、通常培地に約30-60W/V%の濃度で加えて混ぜ合せることにより行われる。以後、適当な培地を逐次添加して遠心分離し、上清を除去する操作を繰返すことにより所望のハイブリドーマを調製できる。
ハイブリドーマの分離は、通常の選別用培地、例えばHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培地)で培養することにより行われる。該HAT培地での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(未ハイブリドーマなど)が死滅するのに充分な時間、通常数日〜数週間行えばよい。得られるハイブリドーマは、所望抗体のスクリーニング及びクローニングに供される。
(抗体のスクリーニングおよびクローニング)
ハイブリドーマから産生される抗体の結合能は、当該分野で公知の方法に基づいてアッセイされ得る。本発明においては、ストレプトコッカスサーモフィラスに選択的結合能を有し、他の細菌に対して実質的に結合能を有さない抗体を産生するハイブリドーマを得るために、他の細菌に対する結合能に基く選別(即ち、他の細菌に対する結合能を有さない抗体産生株の選別)を利用して、目的の細胞株をクローニングする。
抗体の結合能を指標とするスクリーニングは、抗体産生の確認に関して上述した方法と同様の方法、即ち、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法などの方法に従い実施することができる。これらのうちでは、簡便に感度よく抗体を検出し得ることから、ELISA法が好ましい。この方法の具体例は、後記実施例において詳述する。尚、このスクリーニングには前記免疫抗原が利用できる。
ハイブリドーマのクローニングには、当該分野で公知の方法が用いられ得る。クローニングの方法の例としては、よく知られている限界希釈法、軟寒天法などが挙げられる。これらのうちでは、操作も容易で数多くの実績があり、再現性が高いため、限界希釈法が好ましい。
細胞融合により得られた多くのハイブリドーマの中から、効率よく所望の細胞を選択するために、細胞選別は、クローニングの初期の段階から行うことが好ましい。
クローニングされたハイブリドーマは、インビボおよびインビトロにおける培養法により大量培養することができる。インビトロ培養法は、ハイブリドーマを適当な血清培地若しくは無血清培地中で培養することにより実施でき、所望のハイブリドーマは培地中に産生される。この培養によれば、比較的高純度の所望抗体を培養上清として得ることができる。また、インビボ培養法は、ハイブリドーマと適合性のある哺乳類動物、例えばマウスなどの腹腔内に、ハイブリドーマを注射接種して増殖させ、所望抗体をマウス腹水として大量に回収する。
所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することができ、また液体窒素中で半永久的に保存することができる。
上記ハイブリドーマの一具体例としては、後述する実施例に記載された方法に従って得られるハイブリドーマを例示することができる。このハイブリドーマは、平成15年11月28日に、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1 中央第6)に、「ST-1」なる表示で寄託されており、その受託番号はFERM P-19601である。
(抗体の精製)
抗体産生ハイブリドーマの培養上清およびマウスなどの腹水は、そのまま粗製抗体液として用いることができる。またこれらは常法に従って、例えば、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組合せることにより精製して、精製抗体とすることができる。精製抗体は、通常約90%以上の純度、好ましくは約95%以上の純度、より好ましくは約98%以上の純度であるのが望ましい。
本発明抗体は、ストレプトコッカスサーモフィラスと反応するが、他の細菌とは実質的に反応しないとう特有の免疫学的性質(特異性)を有している点において特徴づけられる。
本発明抗体は、ストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出のための検出試薬として有用である。本発明はこのような本発明抗体を利用した検出試薬及び該試薬を利用して試料中のストレプトコッカスサーモフィラスを免疫学的に検出する方法をも提供する。
本発明抗体を利用した免疫学的検出法
ストレプトコッカスサーモフィラスを標的とする免疫学的検出(測定)法は、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、酵素イムノメトリックアッセイ法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、イムノブロット法、ウエスタンブロット法などの常法に従うことができる。
ウエスタンブロット法は、試料中に存在するストレプトコッカスサーモフィラスの分子量を知るために有効である。この方法は、例えば、試料液をアクリルアミドゲル電気泳動させた後、メンブランに転写し、本発明抗体と反応させ、生成する反応物(免疫複合体)を標識第二抗体を用いて検出(複合体と結合する標識第二抗体の標識量を測定)することにより実施できる。
本発明抗体を用いる免疫学的検出の好ましいひとつの具体的方法としては、ELISA法が挙げられる。このELISA法は、一般的な競合法、サンドイッチ法などの手法に従って実施でき、更に液相系でも、固相系でも実施できる。
好ましいELISA法の一例は、次のようにして実施される。即ち、まず標準抗原(ストレプトコッカスサーモフィラス)を適当な担体に固定化し、ブロッキングする。次いで、検出が望まれるストレプトコッカスサーモフィラスを含有する試料および本発明抗体を、上記固定化標識抗原と接触させて、本発明抗体-ストレプトコッカスサーモフィラス免疫複合体および本発明抗体-標準抗原免疫複合体を競合的に生成させる。生成した本発明抗体-ストレプトコッカスサーモフィラス免疫複合体の量を測定し、予め作製した検量線から試料中のストレプトコッカスサーモフィラス量を決定することができる。
検量線などにより本発明抗体と標準抗原との反応性が予め判っている場合には、上記において固定化した標準抗原の代わりに、ストレプトコッカスサーモフィラスを含有する試料を固定化して用いることもできる。
上記好ましいELISA法においては、また本発明抗体を第一抗体として用い、この第一抗体に対する第二抗体を標識して用いることもできる。この場合は本発明抗体-ストレプトコッカスサーモフィラス免疫複合体の量は、これに結合した標識第二抗体の標識量を測定することにより容易に求めることができる。上記方法の変法として、標識した第二抗体を用いることなく、第一抗体を例えば酵素で標識して利用することもできる。更に、第一抗体をビオチンで標識し、第二抗体の代わりにアビシンまたはストレプトアビシンに酵素を結合させたものを用いる方法も、前記方法の変法として採用することができる。
本発明免疫学的検出法によれば、ストレプトコッカスサーモフィラスを、高精度、高感度で特異的に検出することができる。この検出および測定結果は、例えばヨーグルトの品質管理の有効な指標となり得る。
本発明免疫学的検出法の実施に際しては、本発明抗体を含有する検出試薬を含むキット(検出キット)の利用が簡便である。かかるキットには、本発明抗体(検出試薬)に加えて、当該検出(測定)を実施するに際して必要な任意の他の試薬成分などを更に包含させ得る。その例としては、例えば標準抗原、標識抗体、アッセイ緩衝液、発色試薬、基質、安定化剤などを例示できる。
本発明免疫検出法を適用してストレプトコッカスサーモフィラスの検出(定量を含む)を行い得る試料には、例えばヨーグルト等の乳製品等が含まれる。これらは固定化されたものであってもよい。
以下、本発明抗体を利用してストレプトコッカスサーモフィラスを免疫学的に検出する方法の好ましい一実施態様につき詳述すれば、この態様においては、固相に結合させた第1の抗体および移動相に含められて用いられる第2の抗体を含む本発明キットを利用する。ここで、固相に結合させた第1の抗体としては、本発明抗体、特にFERM P-19601号として寄託された細胞株の産生するモノクローナル抗体が有利に使用できる。また、第2の抗体としては、特に上記モノクローナル抗体に限定されず、ストレプトコッカスサーモフィラスに結合能を有するものであれば、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。之等は常法に従い製造することができる。第2の抗体は、モノクローナル抗体、特に第1の抗体と同一のモノクローナル抗体であるのが好ましい。
これらストレプトコッカスサーモフィラスに結合能を有するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の製造は、例えば、後記実施例1に詳述した方法に従うことができ、ポリクローナル抗体としては該方法により得られる抗血清を利用することができる。
第2の抗体は、当該分野で公知の方法により任意に標識できる。標識の例としては、酵素標識、色素標識、磁性標識、放射性標識、色の付いた粒子(金コロイド、ラテックスなど)による標識などが挙げられる。
本発明キットは、上記第1の抗体及び第2の抗体を入れた1またそれ以上の容器と共に、ストレプトコッカスサーモフィラスのサンドイッチアッセイにおける、抗体の使用を教示する説明教材をも含み得る。更に該キットは、標識の検出のための、または陽性コントロールおよび陰性コントロールの検出のための適切な試薬、洗浄溶液、希釈緩衝液などを含み得る。
上記好ましい一実施態様によれば、まず、第2の抗体を液相でストレプトコッカスサーモフィラスと反応させ、標識-抗体-ストレプトコッカスサーモフィラス複合体を形成させる。次いで、この複合体を含む反応液を移動相として、固定化された第1の抗体と反応させる。その結果、第1の抗体および第2の抗体は、ストレプトコッカスサーモフィラスを介してサンドイッチ状に結合する。従って、ストレプトコッカスサーモフィラスが存在する場合にのみ、ストレプトコッカスサーモフィラスを介して固相上に標識が固定化される。
本発明による「抗ストレプトコッカスサーモフィラスモノクローナル抗体」には、その結合特性を保持した機能性の断片もまた含まれる。これらの断片は、それらが由来するインタクトな抗体とストレプトコッカスサーモフィラスへの特異的結合について競合し得る。抗体の断片は、免疫グロブリンの重鎖、軽鎖、Fab、Fab'、(ab')2、FabcおよびFvを含み得る。抗体の断片は、インタクトな免疫グロブリンの酵素的または化学的分離によって生じ得る。例えば、F(ab')2断片は、文献(HarlowおよびLane, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, COLD SPRING HARBOR LABORATORY, New York (1988))に記載されるような標準的な方法を用い、pH3.0〜3.5においてペプシンで蛋白質消化することによってIgG分子から得ることができる。Fab断片は、限定的還元によってF(ab')2断片から、あるいは還元剤の存在下パパイン消化によって全抗体から得ることができる(Paul, W.編, FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY, 第2版, Ravan Press, N.Y., 1989, 第7章を参照のこと)。
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
尚、以下の実施例において得られる抗血清、培養上清およびモノクローナル抗体の評価に利用する酵素免疫測定法(ELISA法)は、以下のようにして実施した。
酵素免疫測定法(ELISA法
(A)免疫原(ストレプトコッカスサーモフィラス)のコーティング
ストレプトコッカスサーモフィラスをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に108細胞/mLの濃度となるように懸濁させて抗原溶液を調製した。マイクロプレート(ポリスチレン製高結合型平底#2580、コスター社製)の各ウェルに上記抗原溶液を100μL/ウェル注入し、室温で飽和水蒸気中にて一晩保存した。実験直前に、アスピレータで余分な抗原溶液を除去した。
(B)ブロッキング
上記(A)で調製したマイクロプレートの各ウェルに、1%BSA-PBS-Az(Az:アザイドナトリウム塩)を200μL/ウェル注入し、30分間室温で放置した。その後、アスピレータで1%BSA-PBS-Azを除去した。以降の実験を即日に行わないときは、この状態で、飽和水蒸気中に4℃で保存した。
(C)抗体の反応
上記(B)で調製したウェルに、1%BSA-PBS-Azで種々の濃度に希釈した抗体溶液(抗血清、培養上清、精製抗体等)を50μL/ウェルおよび1%BSA-PBS-Azを50μL/ウェルそれぞれ注入した。常温で1.5時間放置した後、PBSで3回洗浄し、アスピレータで残存するPBSを除去した。
(D)第2抗体の反応
第2抗体として、0.2μg/mLのペルオキシダーゼ標識したヤギ由来の抗マウスIgG抗体(KPL社製)を1%BSAを含むPBS溶液に溶解したものまたは0.2μg/mLのペルオキシダーゼ標識したヤギ由来の抗マウスIgM抗体(KPL社製)を1%BSAを含むPBS溶液に溶解したものを用いた。上記第2の抗体の溶液を前記(C)で調製した各ウェルに50μL/ウェル注入し、常温で30分放置した。PBSで3回洗浄し、さらにアスピレータで残存するPBSを除去した。
(E)基質の反応と停止
o-フェニレンジアミン(生化学用)40mgを10mLのクエン酸-リン酸バッファー(pH5)に溶解し、使用直前に30%過酸化水素水4μLを加えて調製した溶液を基質溶液として利用した。該基質溶液を前記(D)で調製したウェルに100μL/ウェル注入し、室温で放置した。約3分後、各ウェルに更に4N硫酸を25μL/ウェル注入して反応を停止した。
(F)測定
マイクロプレートリーダ(東洋ソーダ社製)を用いて、前記(E)で調製したウェルについて、その492nmにおける吸光度を測定した。
なお、本実施例では免疫測定法として酵素免疫測定法を用いたが、他にRIA法、蛍光抗体法等を用いてもよい。
実施例1
(免疫)
本例においてはBALB/C系統マウスを免疫に使用した。
免疫原であるストレプトコッカスサーモフィラス(財団法人日本乳業技術協会より入手したストレプトコッカスサーモフィラス510を利用した。以下同じ)をPBSに懸濁させて、該細胞を108細胞/mLの濃度で含む免疫原含有PBS溶液を調製した。このPBS溶液に、同体積の不完全フロイントアジュバントを添加し、ホモジナイザを用いて1000回転/分の回転数で充分に乳化させた。かくして、免疫原を含むアジュバントエマルジョンを調製した。
生後約7週間の雌マウス(BALB/C)15匹に、上記免疫原を含むアジュバントエマルジョンを100μLずつ腹腔内にあるいは皮下に注射した(免疫開始)。2週間後、前記免疫原含有PBS溶液および免疫原を含むアジュバントエマルジョンをBALB/Cマウスの前回と同じ部位にそれぞれ100μLずつ注射した(2回目投与)。
免疫開始より4週間後、6週間後および8週間後に、2回目投与と同じ組成及び濃度の免疫原を含むアジュバントエマルジョンを、マウスの2回目投与と同じ部位にそれぞれ100μLずつ注射した(3回目、4回目及び5回目投与)。2回目投与の1週間後と4回目投与の1週間後に、それぞれ採血し、以下に示す方法に従って抗体の産生を確認した。
(抗体産生の確認)
採取した血液から血清を分離し、得られた血清を用いて、酵素免疫測定法(ELISA法)により抗体の産生を確認した。PBS-Azを用いて調製した108細胞/mL・ストレプトコッカスサーモフィラスを各ウェルに100μL/ウェルずつ分注し、室温で一晩コートさせたマイクロプレートを固相として使用した。第2抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体またはペルオキシダーゼ標識抗マウスIgM抗体を使用した。これらの抗体を各ウェルに添加したとき、ウェル中での発色が認められると、血清中にストレプトコッカスサーモフィラスに結合する抗体が存在することが確認される。
その結果、15匹すべてのマウスにおいて抗ストレプトコッカスサーモフィラス抗体の産生が認められた。さらに、いずれのマウスにおいても、2回目投与後に産生された抗体のクラスがIgMからIgGにシフトしていることが確認された。4回目投与後、産生された抗体のIgG/IgM比を調べたところ、300以上という結果が得られた。このことからクラススイッチは充分に起こっていることが確認された。
(細胞融合)
上記で免疫したマウスの中で特に力価の高かった3匹の脾臓を肥大させるために、最終免疫を以下の通り行なった。即ち、免疫開始から6ヶ月後に、免疫原であるストレプトコッカスサーモフィラスを108細胞/mLの濃度となるようにPBSに懸濁させた溶液を、アジュバントを加えずに各マウスに100μLずつ注射した。
最終免疫後3日を経過したマウスのうちの1匹から脾臓を摘出し、脾細胞を採取した。平均分子量1500のポリエチレングリコールを用いて、ケーラーとミルステインが確立した方法(Nature, Vol.256, pp495-497(1975))に準じて、脾細胞とマウス骨髄腫由来細胞株(P3X63-Ag8.653)とを融合させて、ハイブリドーマを得た。
ハイブリドーマを、15%のウシ胎児血清(FCS)を含むイシコフ培地で調製したヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)培地に浮遊させた後、96ウェルプレート1枚に播種した(200μL/ウェル)。この際、フィーダー細胞(培養開始時に成長因子を供給する細胞)としては同じマウス個体の脾細胞を用いた。CO2インキュベータ(CO2濃度:5体積%、温度:37℃、湿度:95%)内で培養を行って、ハイブリドーマを選択的に増殖させた。以下の培養では、他に示さない限り、これと同じ条件で培養を行なった。
(細胞選別およびクローニング)
上記に従う培養の1週間後に、ハイブリドーマの培養上清を100μL採取し、ハイブリドーマを含む残りの培養液を4枚の24ウェルプレートに継代し、各ウェルに1mlの15%FCSを含むヒポキサンチン/チミジン(HT)培地を加えた。
ハイブリドーマを24ウェルプレートに継代した4日後、細胞培養上清を150μL/ウェルずつ採取した。この培養上清と、培養開始後1週間目に採取した培養上清とを用いて、以下に示すELISA法により、ストレプトコッカスサーモフィラスに対する結合能を測定した。
固相として0.1mg/mLのBSA-PBS-Azを用いて5μg/mLの濃度に調製したストレプトコッカスサーモフィラスを、100μL/ウェルずつ使用した。抗体液としては、細胞培養上清を使用した。第2の抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を使用した。
2回採取した培養上清のELISA法による結果を合わせて、ストレプトコッカスサーモフィラスに対して高い結合能を有し且つ増殖状態の良い20ウェルを確認した。第1段階の選択として、これらのウェルの細胞を、4枚の6ウェルプレートに継代し、各ウェルに15%FCSを含むHT培地4mlを加えた。
第1段階の細胞選別の2日後、培養上清を採取し、以下に示すELISA法によりストレプトコッカスサーモフィラスに対する結合能を測定した。
固相としてPBS-Azで108細胞/mLの濃度に調製したストレプトコッカスサーモフィラスを、100μL/ウェルずつ使用した。抗体液として細胞培養上清を使用した。第二抗体として、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を使用した。
この結果、ストレプトコッカスサーモフィラスに対して高い結合能を有したウェルを、10ウェル選別した。各ウェルの細胞のそれぞれを、中フラスコ(容量50ml)に継代した。培地は15%FCSを含むHT培地45mlずつを用いた。
第2段階の選択を受けた細胞の継代3日後、培養上清を採取し、以下に示すELISA法によりストレプトコッカスサーモフィラス、他の細菌(ラクトバチラスブルガリカス)に対する結合能を測定した。
固相としてPBS-Azで108細胞/mLの濃度に調製したラクトバチラスブルガリカス(財団法人日本乳業技術協会より入手した)を、100μL/ウェルずつ使用した。抗体液として前記と同じハイブリドーマの細胞培養上清を使用した。第二抗体として、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を使用した。尚、細胞培養上清中に、ラクトバチラスブルガリカスに結合する抗体が存在するとウェル上に発色が認められる。
ストレプトコッカスサーモフィラスでのみ結合能を示し、ラクトバチラスブルガリカスに結合能を示さないウェルを1ウェル選別した。
上記1ウェルの細胞について、15%FCSを含むHT培地を用いて、1ウェルあたり2個の細胞が含まれる濃度に希釈(限界希釈)し、希釈物を96ウェルのマイクロプレート各2枚に分注した。フィーダーとして生後4週の雌のマウス(BALB/C)の胸腺細胞を用いて初期増殖を促した。プレートのサイズを上げながら培養を進め、適時細胞培養上清について上記のELISA法によるスクリーニングを繰り返した。ストレプトコッカスサーモフィラスに対して高い力価を示し、かつ良好な増殖を示している細胞株を最終的に選別し、200mLの培地中で5×105細胞/mLの濃度に至るまで培養を進めた。最終的に、ストレプトコッカスサーモフィラスに対して高い結合能を有し、かつ大腸菌K12株、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカスミュータント、ストレプトコッカス・ソブリヌスに対して交叉反応を起こさない株を1株選定した。
この1株を細胞株名:ST-1と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成15年11月28日に国内寄託した(受託番号FERM P-19601号)。
以下、このST-1株の産生する抗体を、「ST1抗体」と称する。
(細胞の保存)
最終的に選別された細胞株は、遠心分離して上清を取り除き、1×107細胞/mLの濃度でFCS:ジメチルスルフォキシド=9:1(体積比)の溶液1mLに浮遊させ、-80℃で予備凍結した後、液体窒素中に移して長期保存状態にした。
(抗体の精製)
選択した1株(ST-1)を、15%FCSを含むイシコフ培地で大量培養し、その上清を遠心分離した。また、別個に選択した1株(ST-1)を、雌のBALB/Cマウスの腹腔内に注射して増殖させ、腹水を蓄積させた後、採取した。上記で得た培養上清および腹水を、それぞれプロテインA結合ゲル(プロテインAセファロース4FF、ファルマシア製)を用いたアフィニティークロマトグラフィにかけ、以下の操作によりモノクローナル抗体(ST1抗体)を精製した。
プロテインA結合ゲルを充填したカラムを、結合緩衝液(1.5Mグリシン及び3MNaCl、pH8.9)で平衡化した。培養上清及び腹水のそれぞれを、結合緩衝液で約3倍に希釈した後、平衡化したカラムにアプライした。カラムからの溶出液を吸光光度計を用いて280nmの吸光度をモニターしながら、不純物の溶出が終了するまで、カラムを結合緩衝液で洗浄した。洗浄後、溶出緩衝液(100mMクエン酸、pH4)をカラムにアプライ(線流速:約20cm/時間)し、IgG含有溶出液(モノクローナル抗体液)を回収した。回収したIgG含有溶出液について、吸光光度計を用いて280nmの吸光度を測定し、測定された吸光度を吸光係数で換算することにより、抗体の濃度を決定した。
(精製抗体の特徴)
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動による標準蛋白質との比較から、モノクローナル抗体(ST1抗体、培養上清由来のもの)の精製分画は、分子量約50,000のH鎖と約25,000のL鎖からなるIgGであることを確認した。なお、電気泳動上で、不純物の混入は検出限界以下であった。
また、ST-1から、RNeasyキット(QUAGEN社製)を用いて全RNAを抽出し、得られたRNAを鋳型として、リコンビナント抗体発現システム(Amersham Pharmacia Biotech社製)に含まれるマウスScFvモジュールおよびLA Taq DNAポリメラーゼ(Takara社製)を用いて、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行って、本発明抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAを増幅した。
増幅産物をTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)を用いてクローニングし、DNAシーケンシングキット(Applied Biosystems社製)を用いて、クローニングされたプラスミドの塩基配列を決定した。
かくして得られた塩基配列およびこれから予測されるアミノ酸配列を、データベースに登録してある既知配列と比較したところ、合致する配列は見あたらず、これらが新規なものであることが明らかとなった。

(2) 抗体の特異性評価
上記のアフィニティークロマトグラフィにより精製したモノクローナル抗体(ST1抗体)について、ストレプトコッカスサーモフィラスの希釈系列を用いて、前記細胞選別の項に記載したELISA法に従う結合能の測定操作と同一操作を繰り返して、抗体評価を行った。
得られた結果を図1に示す。図1は、縦軸にA492nmにおける吸光度を、横軸に抗体の希釈倍率をとり、抗体(ST1抗体)の各希釈倍率におけるストレプトコッカスサーモフィラス(図中、黒丸、「Streptococcus Thermophilus」と表示)及びラクトバチルスブルガリカス(図中、白抜き丸、「Lactobacillus Bulugaricus」と表示)に対する結合能を吸光度測定により求めた結果をプロットしたグラフである。結果は、各菌につき同一試験を2回繰り返し、それぞれの値をプロットしてある。
図1に示すように、ST1抗体では、×1〜×1/108希釈液でストレプトコッカスサーモフィラスに対する結合が観察されたのに対し、ラクトバチラスブルガリカスに対してはいずれの希釈液についても結合は観察されず、ST1抗体によって特異的にストレプトコッカスサーモフィラスを検出し得ることが示された。
(サンドイッチ反応)
ELISA法においてST1抗体をプレートにコートし、ストレプトコッカスサーモフィラス(財団法人日本乳業技術協会より入手)を結合させ、酵素ラベルしたポリクローナル抗体(コスモバイオ社製)を反応させた後に余分な抗体を除去し、発色基質を添加してインキュベートしたところ、充分な発色が得られた。つまり、ST1抗体と、ポリクローナル抗体との組合せは、免疫クロマトグラフィーなどのサンドイッチ反応を利用した検査方法に有用であることが確認できた。
(免疫クロマトグラフィーにおける検出感度)
ST1抗体を濾紙上に固定化し、金コロイド標識したポリクローナル抗体(コスモバイオ社製)を移動相において、免疫クロマトグラフィー装置を作製した。種々の濃度でストレプトコッカスサーモフィラスを含むPBSサンプル溶液)をアプライしたところ、この免疫クロマトグラフィー装置の感度は、約106細胞/mlであった。
一般に、ヨーグルト中のストレプトコッカスサーモフィラスのレベルは、約106細胞/mL以上であることが知られている。従って、本発明の抗体を用いて作製された免疫クロマトグラフィー装置は、ヨーグルト中のストレプトコッカスサーモフィラスを検出することが可能である。
本発明抗体(ST1抗体)を用いて免疫検出法(ELISA法)に従って試料中のストレプトコッカスサーモフィラスを検出した結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P-19601として寄託された、ストレプトコッカスサーモフィラスに対するモノクローナル抗体を産生する細胞株。
  2. 請求項1に記載の細胞株により産生されるストレプトコッカスサーモフィラスに対するモノクローナル抗体。
  3. 請求項2に記載のモノクローナル抗体を含有することを特徴とする、ストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出のための検出試薬。
  4. ストレプトコッカスサーモフィラスを含有する試料と請求項2に記載のモノクローナル抗体とを接触させて免疫複合体を生成させる工程を含むことを特徴とする、上記試料中のストレプトコッカスサーモフィラスを免疫学的に検出する方法。
  5. ストレプトコッカスサーモフィラスの免疫学的検出が、サンドイッチELISA法により行われる請求項4に記載の検出方法。
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