JP3959128B2 - カルバペネム化合物の製造方法 - Google Patents
カルバペネム化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はカルバペネム化合物の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然から発見されたチエナマイシン〔J.Am.Chem.Soc.,100,313 (1978)〕が、幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性を有することが報告されて以来、抗菌剤として有用な種々のカルバペネム化合物が報告されてきた。カルバペネム骨格の1位(慣用的な番号付け(下記式A参照)によるもの;本発明の記載の番号付けでいう4位に相当する。)メチレン基がアルキル基で置換された化合物、特に1β−メチルカルバペネム化合物 〔Heterocycles.,21,29 (1984)〕は腎の酵素、デヒドロペプチダーゼ−Iに対する安定性に優れていることから、抗菌剤として極めて有用であることが報告され、それにともない1β−アルキルカルバペネム化合物の有効な製造方法の開発に多くの関心がもたれてきた。後記一般式(III)で表わされるカルバペネム化合物は1β−アルキルカルバペネム化合物製造の重要中間体として、その製造方法についてはこれまでに多くの検討が加えられてきた。特に1β−アルキル基の異性化を伴わない効率的な方法として、閉環反応およびホスフェート化反応をワンポットで実施する方法は操作も簡便であり、工業的合成法としても優れている。(特開昭62−103084号公報)。
【化4】
【0003】
【解決しようとする課題】
このような状況のなかで、さらに大量合成に適した方法が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、閉環反応およびホスフェート化反応をワンポットで実施する方法が大量合成に適した方法であることから、この方法を基により効率的な製造方法を見出すことを目的に、鋭意検討した。
その結果、一般式(I)
【化5】
[式中、R1 およびR2 は同一でも、もしくは異なっていてもよく、各々水素原子または低級アルキル基を示し、R3 は低級アルキル基を示し、Xは水素原子または保護された水酸基を示し、COZはカルボキシル基の活性エステル、置換もしくは無置換のアリールチオカルボニル基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオカルボニル基、置換もしくは無置換のアラルキルチオカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、またはヘテロアリールオキシカルボニル基を示す。]
で表わされるβ−ラクタム化合物を塩基の存在下で、一般式(II)
【化6】
[式中、R4 はカルボキシル基の保護基を示し、Yは水酸基の活性エステルまたはハロゲン原子を示す。]
で表わされる酢酸エステル誘導体と反応させ、ひきつづき水酸基の活性エステル化剤で処理することにより、抗菌剤として有用な1β−アルキルカルバペネム化合物の製造中間体である一般式(III)
【化7】
[式中、R1 、R2 、R3 、R4 およびXは前述と同じ意味を有し、Lは置換もしくは無置換アリールスルホニルオキシ基、低級アルカンスルホニルオキシ基、ハロゲノ低級アルカンスルホニルオキシ基、ジ低級アルキルホスホリルオキシ基、ジ(ハロゲノ低級アルキル)ホスホリルオキシ基またはジ(置換または無置換アリール)ホスホリルオキシ基を示す。]
で表わされるカルバペネム化合物の効率良い製造方法を見い出し本発明を完成した。
【0005】
ここで、前記式における置換基について言及しておく。
本発明における低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。
Xにおける水酸基の保護基としては通常に用いられる保護基であれば特に限定はないが、例えばt−ブチルオキシカルボニル基のような(炭素数1〜4の低級アルコキシ)カルボニル基;例えば2−ヨウ化エチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基のような(炭素数1〜4のハロゲン化アルキルオキシ)カルボニル基;例えばアリルオキシカルボニル基のような(炭素数3〜5のアルケニルオキシ)カルボニル基;例えばベンジルオキシカルボニル基、o−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基のような置換または無置換アラルキルオキシカルボニル基;例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基のようなトリ−(炭素数1〜4のアルキル)シリル基;例えばt−ブチルジフェニルシリル基のようなジアリールアルキルシリル基;例えばメトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基のような置換メチル基;テトラヒドロピラニル基などを挙げることができる。好適なものとしてはトリ−(炭素数1〜4のアルキル)シリル基、ジアリールアルキルシリル基、置換メチル基、テトラヒドロピラニル基などを挙げることができる。
【0006】
COZがカルボキシル基の活性エステルである場合には、Z基としては例えばイミダゾール基、トリアゾール基のようなヘテロアリール基、例えばN−サクシイミドオキシ基、N−フタルイミドオキシ基、ベンズトリアゾリルオキシ基のような環状イミドオキシ基、例えば3−(2−チオキソ)チアゾリジニル基のようなヘテロシクロアルキル基などを挙げることができる。
置換または無置換のアリールチオカルボニル基である場合の置換または無置換のアリール基としては例えばフェニル基、1〜3個の塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲノフェニル基、p−またはo−ニトロフェニル、p−メトキシフェニル基等が挙げられる。
置換または無置換のヘテロアリールチオカルボニル基である場合の置換または無置換のヘテロアリール基としては例えば2−、3−または4−ピリジル基、2−ピリミジル基、2−(4,6−ジメチル)ピリミジル基等が挙げられる。
【0007】
置換または無置換のアラルキルチオカルボニル基である場合の置換または無置換のアラルキル基としては例えばベンジル基、p−メトキシベンジル基、2,4−ジメトキシベンジル基、p−またはo−ニトロベンジル基、p−クロロベンジル基のような置換または無置換のモノアリールアルキル基を挙げることができる。
置換アリールオキシカルボニル基である場合の置換アリールオキシ基としては例えばp−またはo−ニトロフェニルオキシ基、2,4−ジニトロフェニルオキシ基、1〜3個の塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲノフェニルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロアリールオキシカルボニル基である場合のヘテロアリールオキシ基としては例えば2−、3−または4−ピリジルオキシ基などが挙げられる。好適なものとしてはカルボキシル基の活性エステル、置換または無置換のアリールチオカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基などを挙げることができる。
【0008】
一般式(II)で表わされる酢酸エステル誘導体のR4 におけるカルボキシル基の保護基としては一般に用いられるもので可能であるが、好適には例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の低級アルキル基;例えば2−ヨウ化エチル基、2,2,2−トリクロロエチル基などの炭素数1〜4のハロゲノ低級アルキル基;例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、イソブトキシメチル基などの(炭素数1〜4の低級アルコキシ)メチル基;例えばアセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基などの(炭素数1〜5の低級脂肪族アシル)オキシメチル基;例えばアリル基、2−メチルアリル基、3−メチルアリル基、3−フェニルアリル基などの炭素数3〜10の置換または無置換の低級アルケニル基;例えばベンジル基、p−またはo−ニトロベンジル基、p−クロロベンジル基などの置換または無置換のモノアリールアルキル基が挙げられる。
【0009】
Yの水酸基の活性エステルとしては、例えばベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、p−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基などの置換もしくは無置換アリールスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基などの炭素数1〜4の低級アルカンスルホニルオキシ基、例えばトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの炭素数1〜4のハロゲノ低級アルカンスルホニルオキシ基などを挙げることができ、またハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素などを挙げることができる。好適なものとしてはハロゲン原子を挙げることができる。
本発明の製造方法を下記反応式に従ってさらに詳しく説明する。
【化8】
[式中、R1 、R2 、R3 、R4 、X、Y、ZおよびLは前記と同じ意味を表し、Bはアルカリ金属原子を示す。]
一般式(I)で表される化合物を不活性溶媒中、酢酸エステル誘導体(II)と塩基の存在下で反応させ、ひきつづき水酸基の活性エステル化剤と処理することにより、一般式(III)で表されるカルバペネム化合物へ誘導することができる。 本発明において「ひきつづき」とは反応成績体をとり出すことなく次の反応に付すことをいう。
【0010】
ここでLとは、水酸基と活性エステル化剤との反応によって誘導されるエステル基であり、Lにおける置換もしくは無置換アリールスルホン酸エステル(置換もしくは無置換アリールスルホニルオキシ基)としては、例えばベンゼンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、p−ニトロベンゼンスルホン酸エステル、p−ブロモベンゼンスルホン酸エステルなどを、低級アルカンスルホン酸エステル(低級アルカンスルホニルオキシ基)としては、例えばメタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステルなどを、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸エステル(ハロゲノ低級アルカンスルホニルオキシ基)としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸エステルなどを、ジ−低級アルキルホスホリックアシッドエステル(ジ低級アルキルホスホリルオキシ基)としては、例えばジメチルホスホリックアシッドエステル、ジエチルホスホリックアシッドエステルなどを、ジ−ハロゲノ低級アルキルホスホリックアシッドエステル(ジ(ハロゲノ低級アルキル)ホスホリルオキシ基)としては、例えばジ(トリクロロエチル)ホスホリックアシッドエステルなどを、ジ(置換もしくは無置換アリール)ホスホリックアシッドエステル(ジ(置換または無置換アリール)ホスホリルオキシ基)としては、例えばジフェニルホスホリックアシッドエステル、ジ−p−クロロフェニルホスホリックアシッドエステル、ジトリルホスホリックアシッドエステルなどを挙げることができる。
【0011】
このようなアルコールの活性エステルの中で好適なものとしては、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、ジフェニルホスホリックアシッドエステルを挙げることができる。
従って、水酸基の活性エステル化剤とは化合物(IV)と反応して上述のような活性エステルを生成する試剤である。
具体的に使用されうる活性エステル化試剤は、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、無水−p−トルエンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、p−ブロモベンゼンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、無水メタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチルクロロホスフェート、ジエチルクロロホスフェート、ジ(トリクロロエチル)クロロホスフェート、ジフェニルクロロホスフェート、ジ−p−クロロフェニルクロロホスフェート、ジトリルクロロホスフェートなどを挙げることができる。
【0012】
アルカリ金属原子としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどが例示される。
不活性溶媒としては、不活性なものであれば特に限定はないが、好適なものとして例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPT)、t−ブタノールおよびその混合溶媒等を挙げることができる。
【0013】
酢酸エステル誘導体(II)は反応が十分に進行するだけの量が必要であり、一般式(I)で表わされる化合物に対して2〜4当量用いて行うことができる。化合物(I)と酢酸エステル誘導体(II)との反応において使用されうる塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ソジウムビス(トリメチルシリル)アミド、ポタシウム(トリメチルシリル)アミド、ソジウムアミド等のアミン類のアルカリ金属塩、ポタシウムt−ブトキサイド等のアルコール類のアルカリ金属塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、n−ブチルリチウムおよびソジウムメチルスルフィニルメチド等を挙げることができる。これらの塩基の中で好適なものとして水素化ナトリウムを挙げることができる。
【0014】
この場合の塩基は反応が充分に進行するだけの量を用いることが望ましく、適当量は2〜5当量ということができる。また反応は適宜冷却または加熱することにより抑制または促進することができるが、好適な反応温度は−78℃〜10℃ということができる。
また、必要に応じて、反応の活性化を目的として触媒量の水、アルコール類などを添加することもできる。
【0015】
水酸基の活性エステル化反応における活性エステル化剤は反応が十分に進行するだけの量が必要であり、一般式(I)で表わされる化合物に対して1〜2.5当量用いて行うことができる。反応は適宜冷却または加熱することにより抑制または促進することができる。通常、反応温度は−78℃〜60℃の範囲で行われるが、−40℃〜10℃の範囲が好適である。
なお、反応終了後は通常の有機化学的手段によって成績体を取り出すことができる。
一般式(I)で表わされる化合物を不活性溶媒中、塩基の存在下で、酢酸エステル誘導体(II)と反応させて得られるエノレートの塩(IV)は生成条件下において、すなわち塩基性条件下において原料化合物(I)の不斉炭素(C5位)に基づく立体をそのまま保持しており、化合物(III)に誘導後も原料化合物のR3 のアルキル基の立体を保持したものが得られる。すなわち、本反応によってエピマー化することなく、カルバペネム化合物(III)が得られる。
【0016】
この場合、反応系内で生じるエノレート(IV)は以下の式
【化9】
に示すようなキレート構造をとっている可能性がある。
また、本発明の製造方法では、最初の酢酸エステル誘導体(II)との反応で、Zで表される残基が反応系内に遊離する。そして、生じたZ残基がそのまま反応系内に存在した時、次の水酸基の活性エステル化剤との反応に影響を与えることがある。しかし、このような場合においても、本方法で使用する酢酸エステル誘導体(II)は、生じたZ残基を捕捉することができるので、次の反応への影響を解消させることができる。
【0017】
一般式(I)で表される化合物は例えば特開昭62−103084号公報に記載の方法により合成できる。
ここで、一般式(I)で表わされるβ−ラクタム化合物についてより具体的に例をあげて示すならば、
(1) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−イミダゾリルカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(2) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−トリアゾリルカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(3) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(N−サクシイミドオキシ)カルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
【0018】
(4) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(N−フタルイミドオキシ)カルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(5) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(1−ベンズトリアゾリルオキシ)カルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(6) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(3−(2−チオキソ)チアゾリジニル)カルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
【0019】
(7) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−フェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(8) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(9) (3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジフェニルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−ニトロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(10)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジフェニルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−メトキシフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
【0020】
(11)(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−フェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(12)(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(13)(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリエチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−フェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(14)(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリエチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(15)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(2−ピリジル)チオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
【0021】
(16)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(3−ピリジル)チオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(17)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(4−ピリジル)チオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(18)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(2−ピリミジル)チオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン、
(19)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−〔(1R)−1− [2−(4,6−ジメチル)ピリミジル] チオカルボニルエチル〕−2−アゼチジノン、
(20)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(ベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
【0022】
(21)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(p−メトキシベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(22)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(2,4−ジメトキシベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(23)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(p−ニトロベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(24)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(o−ニトロベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(25)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(p−クロロベンジル)チオカルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
【0023】
(26)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(p−クロロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(27)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(2、4−ジクロロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(28)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(2、4、5−トリクロロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(29)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(p−ニトロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
【0024】
(30)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(o−ニトロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(31)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(2,4−ジニトロフェニルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(32)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(2−ピリジルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(33)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(3−ピリジルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノン、
(34)(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4− [(1R)−1−(4−ピリジルオキシ)カルボニルエチル] −2−アゼチジノンなどを挙げることができる。
【0025】
ここで、一般式(II)で表わされる酢酸エステル誘導体についてより具体的に例をあげて示すならば、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸イソプロピル、クロロ酢酸t−ブチル、クロロ酢酸アリル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸イソプロピル、ブロモ酢酸t−ブチル、ブロモ酢酸2,2,2−トリクロロエチル、ブロモ酢酸アリル、ブロモ酢酸2−メチルアリル、ブロモ酢酸ベンジル、ブロモ酢酸p−クロロベンジル、ブロモ酢酸p−ニトロベンジル、ブロモ酢酸o−ニトロベンジル、ブロモ酢酸2,4−ジニトロベンジル、ブロモ酢酸p−メトキシベンジル、ブロモ酢酸2、4−ジメトキシベンジル、ヨード酢酸メチル、ヨード酢酸t−ブチル、ヨード酢酸ベンジル、ヨード酢酸p−ニトロベンジル、ヨード酢酸p−メトキシベンジル、ベンゼンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、p−トルエンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、p−ニトロベンゼンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、メタンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、エタンスルホニルオキシ酢酸ベンジル、、トリフルオロメタンスルホニルオキシ酢酸ベンジルなどを挙げることができる。
【0026】
さらに前記一般式(I)で表わされる化合物からカルバペネム化合物(V)を直接に得ることを所望する場合には、化合物(I)を前述の方法によってカルバペネム化合物(III)に誘導後、化合物(III)をとり出すことなく、ひきつづきメルカプタン化合物(X)
R0 −SH (X)
[式中、R0 は有機基を意味する。]
および塩基を加えて処理することにより一般式(V)で表わされるカルバペネム化合物へ導くことができる。これを次の反応式に示す。
【0027】
【化10】
[式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R0 ,B,X,YおよびZは前述と同じ意味を有する。]
【0028】
この反応は例えば特開昭62−103084号公報に記載の公知の方法で行うことができる。
【0029】
なお、一般式(III)で表わされるカルバペネム化合物を単離した場合には、該誘導体とメルカプタン化合物(X)とを上述の方法と同様にして反応させることにより、一般式(V)で表わされるカルバペネム化合物を製造することができる。
【0030】
以上のようにして、β−ラクタム化合物(I)から一般式(III)で表わされるカルバペネム化合物、または必要に応じて一般式(V)で表わされるカルバペネム化合物を製造することができる。
【0031】
このようにして得られるカルバペネム化合物(V)は、例えば特開昭62−103084号公報に記載の方法で容易にカルバペネム化合物(VI)
【化11】
[式中、R1 ,R2 ,R3 およびR0 は前述と同じ意味を有し、X0 は水素原子または水酸基を示す。]
へ導くことができる。
【0032】
すなわち一般式(V)
【化12】
[式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R0 およびXは前述と同じ意味を有する。]で表わされる化合物から、水酸基の保護基の除去反応、カルボキシル基の保護基の除去反応あるいはアミノ基の保護基の除去反応を適宜組合せて行なうことにより、抗菌活性を有する一般式(VI)で表わされるカルバペネム化合物を得ることができる。
【0033】
カルバペネム化合物(V)における3位置換基SR0 のR0 はカルバペネム化合物に用いられるものであればいずれでもかまわないが、例えば以下のような例を挙げることができる。すなわち、置換および無置換の炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルケニル基;環中に3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキル−アルキル基;フェニル等のアリール基、アリール部がフェニルであり、アルキルが炭素数1〜6個のアリールアルキル基;ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロシクロアルキル基;なお、上述の基はアミノ基、モノ、ジ−およびトリアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、フェニルチオ等のアリールチオ基、スルファモイル基、アミジン基、グアニジノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換カルバモイル基、スルファモイルアミノ基、クロロ、ブロモ、フルオロ等のハロゲノ基、シアノ基、およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよく;上述のヘテロ環部分のヘテロ原子は1〜4個の酸素、窒素又は硫黄原子からなる群から選ばれ;上述の置換基のアルキル部分は1〜6個の炭素原子を有する。
【0034】
必ずしも以下に示したものに限定されるものではないが、本発明の製造方法を、1β−メチルカルバペネム化合物の製造法を例にあげて以下に示す。
【0035】
【化13】
[式中、R4 ,Y,Z,B,LおよびR0 は前述と同じ意味を有し、R10は水酸基の保護基を示す。]
【0036】
一般式(I* )で表わされるβ−ラクタム化合物を以下の順序、
1)不活性溶媒中、酢酸エステル誘導体(II)と塩基の存在下で処理する。
2)水酸基の活性エステル化剤で処理する。
さらに必要に応じて
3)メルカプタン誘導体(X)
R0 −SH (X)
[式中、R0 は前述と同じ意味を有する。]
と塩基の存在下で反応させるか、あるいはメルカプタン誘導体(X)の塩基との塩を反応させる;
で順次同一容器内で反応させることによって一般式(III* )あるいは(V* )で表わされるカルバペネム化合物を製造することができる。
【0037】
この場合、1)の反応では▲1▼β−ラクタム化合物(I)の窒素原子への酢酸エステル残基の結合(N−アルキル化反応)と▲2▼酢酸エステル残基のメチレン部分とCOZ基のカルボニル部分との結合(閉環反応)が並行して進行するか、または順次進行してエノレート(IV* )が生成する。さらに場合によっては▲3▼遊離したZ基の酢酸エステル誘導体(II)による補捉が同時に進行する。
【0038】
上記1)、2)の反応を同一容器内で行なわず、化合物(I* )を1)で示される反応に付した後、反応後処理を行なって得られる一般式(IV-2* )
【化14】
[式中、R4 およびR10は前述と同じ意味を有する。]
で示される化合物は各種の条件で、例えば塩基存在下での反応後処理、高濃度溶液での保存、アセトニトリル等の極性溶媒を用いた溶液中での存在によって、1位のβ−メチル基のエピマー化が進行しやすい。このことから一般式(IV-2* )で表わされる化合物を取り出した後、化合物(IV-2* )より一般式(III* )で表わされる化合物を立体選択的に大量に製造する場合には問題があると考えられる。これに対して、反応系内で化合物(IV-2* )ではなく化合物(IV* )のまま、化合物(III* )に誘導する方法は、1位β−メチル基のエピマー化を起こすことなくカルバペネム化合物(III* )あるいは(V* )へ導くことができるので有利である。
【0039】
前記一般式(I)で示される化合物のR1 ,R2 ,Xが各々異なる場合、例えばR1 =メチル、R2 =水素原子、X=保護された水酸基の場合、β−ラクタム環の3位と結合する炭素原子も不斉炭素となる。従って一般式(I)で示される化合物には式に示した以外に不斉炭素に基づく立体異性体が存在し、これらの異性体がすべて単一の式で示されているが、これによって本発明の記載の範囲は限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
次に実施例、参考例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はもちろんこれらによってなんら限定されるものではない。
なお、略号の意味は次のとおりである。
TBDMS:t−ブチルジメチルシリル基
TMS :トリメチルシリル基
Me :メチル基
Ph :フェニル基
PNB :p−ニトロベンジル基
PNZ :p−ニトロベンジルオキシカルボニル基
TES :トリエチルシリル基
【0041】
実施例1
【化15】
【0042】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(316mg、0.737mmol)、ブロモ酢酸アリル(315mg、1.76mmol)をテトラヒドロフラン(4ml)に溶かして、水素化ナトリウム(60%油性)(114mg、2.85mmol)とテトラヒドロフラン(2ml)の懸濁液に−35℃で滴下し、30分間攪拌した。次にジフェニルクロロホスフェート(213mg、0.793mmol)を2mlのテトラヒドロフランに溶かして滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル20mlで希釈し、食塩水で数回洗浄後、硫酸マグネシウム−炭酸カリウム(10:1)の混合乾燥剤で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにて精製し(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステル(334mg)を得た。
【0043】
IRneat(cm -1) :1782,1731,1490,1294,1189,970 ,837 ,777 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.06(3Hx2,s),0.87(3Hx3,s),1.18(3H,d,J=7.3Hz),1.23(3H,d,J=6.0Hz),3.24(1H,dd,J=3.0と6.3Hz),3.42(1H,m),4.14(1H,dd,J=2.8と10.4Hz) ,4.20(1H,m),4.65(2H,d,J=5.6Hz),5.40(2H,m),5.86(1H,m),7.19〜7.38(10H) 。
【0044】
実施例2
【化16】
【0045】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(467mg、1.09mmol)、ブロモ酢酸ベンジル(549mg、2.4mmol)をテトラヒドロフラン(4ml)に溶かして、水素化ナトリウム(60%油性)(157mg、3.92mmol)とテトラヒドロフラン(3ml)の懸濁液に−35℃で滴下し、30分間攪拌した。次にジフェニルクロロホスフェート(307mg、1.145mmol)を2mlのテトラヒドロフランに溶かして滴下し、1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル20mlで希釈し、食塩水で数回洗浄後、硫酸マグネシウム−炭酸カリウム(10:1)の混合乾燥剤で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにて精製し(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸ベンジルエステル(410mg)を得た。
【0046】
IRneat(cm -1) :1784,1729,1590,1489,1189,970 ,834 ,778 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.05(3H,s),0.06(3H,s),0.85(3Hx3,s),1.18(3H,d,J=7.3Hz),1.22(3H,d,J=6.3Hz),3.24(1H,dd,J=3.0と5.9Hz),3.44(1H,m),4.14(1H,dd,J=2.8と10.4Hz) ,4.21(1H,m),5.21(2H,AB) ,7.15〜7.38(15H) 。
【0047】
実施例3
【化17】
【0048】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(389mg、0.907mmol)、ブロモ酢酸メチル(303mg、1.98mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(130mg、3.25mmol)、さらにジフェニルクロロホスフェート(254mg、0.945mmol)を用い、実施例1および2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸メチルエステル(207mg)を得た。
【0049】
IRneat(cm -1) :1785,1732,1489,1290,1187,969 ,836 ,778 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.06(3Hx2,s),0.87(3Hx3,s),1.18(3H,d,J=7.3Hz),1.23(3H,d,J=6.3Hz),3.24(1H,dd,J=3.0と6.6Hz),3.41(1H,m),3.69(3H,s),4.13(1H,dd,J=3.0と10.2Hz) ,4.20(1H,m),7.22〜7.38(10H) 。
【0050】
実施例4
【化18】
【0051】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(343mg、0.8mmol)、ブロモ酢酸p−ニトロベンジル(482mg、1.76mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(114mg、2.85mmol)、さらにジフェニルクロロホスフェート(236mg、0.88mmol)を用い、実施例1および2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸p−ニトロベンジルエステル(206mg)を得た。
【0052】
IRneat(cm -1) :1775,1725,1630,1585,1518,1482,1340,1285,1185,1160, 938, 825,770 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.06(3H,s),0.07(3H,s),0.86(9H,s),1.20(3H,d,J=7.9Hz),1.23(3H,d,J=6.3Hz),3.29(1H,dd,J=3.0と6.0Hz),3.43(1H,m),4.22(2H,m),5.28(2H,ABq,J=13.5Hz) ,7.56(2H,d,J=8.9Hz),8.14(2H,d,J=8.9Hz)。
【0053】
実施例5
【化19】
【0054】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(343mg、0.8mmol)、ブロモ酢酸アリル(304mg、1.7mmol)をテトラヒドロフランとトルエンの1:1混合溶液(4ml)に溶かして、水素化ナトリウム(60%油性)(100mg、2.5mmol)とテトラヒドロフランとトルエンの1:1混合溶液(2ml)の懸濁液に−35℃で滴下し、30分間攪拌した。次にジフェニルクロロホスフェート(215mg、0.8mmol)を加え、1時間攪拌した。反応混合物は実施例1および2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステル(344mg)を得た。
【0055】
ここで得た化合物のIRおよびNMRスペクトルは実施例1で得られた化合物のデータと同一であった。
【0056】
実施例6
【化20】
【0057】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(345mg、0.8mmol)、ブロモ酢酸アリル(286mg、1.6mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(104mg、2.6mmol)、さらにジフェニルクロロホスフェート(215mg、0.8mmol)を用い、実施例5と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステルに誘導した後、−20℃で[2S,4S]−1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メルカプトピロリジン(282mg,0.8mmol)のアセトニトリル(3ml)溶液、ジイソプロピルエチルアミン(110mg,0.85mmol)を加え、さらにジメチルホルムアミド(3ml)を加え、−10〜0℃で12時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル50mlで希釈し、食塩水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、(4R,5S,6S,8R,3' S,5' S)−3−[4−(1−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−2−ジメチルアミノカルボニルピロリジニル)チオ]−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステル(95mg)を得た。
【0058】
IRneat(cm -1) :1775,1710,1657,1523,1345,1209,1141,1110,983 ,836 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.07-0.08(3Hx2,s) ,0.88(3Hx3,s),1.24(3H,d,J=7.3Hz),1.25(3H,d,J=5.9Hz),1.91(1H,m),2.72(1H,m),2.94(3Hx2/5,s),2.98(3Hx2/5,s),3.00(3Hx3/5,s),3.10(3Hx3/5,s),3.20-3.30(1H,m), 3.31-3.54(1H,m),3.70(1H,m),4.00-4.26(3H,m), 4.59-4.81(3H,m),5.19(2Hx2/5,ABq,J=13.5Hz), 5.22(2Hx3/5,s), 5.44(1H,d,J=17.5Hz), 5.94(1H,m),7.44(1H,d,J=8.6Hz),7.52(1H,d,J=8.6Hz),8.20(1H,d,J=8.6Hz),8.23(1H,d,J=8.6Hz)。
【0059】
参考例1
【化21】
【0060】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(1.29g、3.0mmol)をトルエン(10ml)に溶かし、メタノール(2ml)とクロロトリメチルシラン(0.1ml)を加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物を酢酸エチル50mlで希釈し、食塩水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去し、(3S,4S)−3−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(627mg)を得た。
【0061】
IRKBr (cm -1) :3329,1728,1702,1476,1357,1091,970 ,818 。
NMRδ(CDCl 3 ) :1.30(3H,d,J=6.3Hz),1.35(3H,d,J=6.9Hz),2.09(1H,d,J=4.3Hz),2.98(1H,m),3.09(1H,dd,J=1.7と6.3Hz),3.86(1H,dd,J=2.3と6.6),4.16(1H,m),6.07(1H,br.s) ,7.32(2H,d,J=8.6Hz),7.40(2H,d,J=8.6Hz)。
【0062】
参考例2
【化22】
【0063】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(477mg、1.51mmol)を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(3ml)に溶かし、イミダゾール(260mg、3.79mmol)、トリエチルクロロシラン(456mg、3.0mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(30ml)で希釈し、水洗。水層を酢酸エチル20mlで抽出し、有機層を合わせ、食塩水で2回洗浄した。芒硝乾燥後溶媒を留去し、油状の残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリエチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(342mg)を得た。
【0064】
IRneat(cm -1) :1760,1708,1478,1376,1240,1145,1096,970 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.60(2Hx3,q,J=7.9Hz),0.95(3Hx3,t,J=7.6Hz),1.21(3H,d,J=6.3Hz),1.32(3H,d,J=6.9Hz),2.99(1H,m),3.03(1H,dd,J=2.1と5.0Hz),3.92(1H,dd,J=2.1と5.5),4.20(1H,m),5.99(1H,br.s) ,7.31(2H,d,J=8.6Hz),7.40(2H,d,J=8.9Hz)。
【0065】
実施例7
【化23】
【0066】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−トリエチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(170mg、0.4mmol)、ブロモ酢酸アリル(152mg、0.85mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(50mg、1.25mmol)を用い、実施例1および2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−トリエチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステル(60mg)を得た。
【0067】
IRneat(cm -1) :1770,1746,1490,1298,1189,970 ,747 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.61(2Hx3,q,J=7.9Hz),0.96(3Hx3,t,J=7.6Hz),1.19(3H,d,J=7.3Hz),1.25(3H,d,J=6.3Hz),3.24(1H,dd,J=3.0と6.6Hz),3.42(1H,m),4.14(1H,dd,J=3.0と10.2Hz) ,4.20(1H,m),4.66(2H,d,J=5.6Hz),5.40(2H,m),5.86(1H,m),7.21〜7.37(10H) 。
【0068】
参考例3
【化24】
【0069】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−カルボキシエチル]−2−アゼチジノン(1.05g、3.5mmol)、2−メルカプト−2−チアゾリン(417mg、3.5mmol)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド(592mg、3.5mmol)を塩化メチレン(3ml)に溶かし、氷冷下にピリジン(550mg、7.0mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。反応混合物を塩化メチレン(5ml)で希釈したのち水を加え、有機層を0.5N塩酸、重曹水、水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−〔(1R)−1− [3−(2−チオキソ)チアゾリノ] カルボニルエチル〕−2−アゼチジノン(1.07g)を得た。
【0070】
IRKBr (cm -1) :1763,1704,1369,1280,1258,1152,1058,835 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.07(3Hx2,s),0.87(3Hx3,s),1.21(3H,d,J=6.3Hz),1.26(3H,d,J=6.9Hz),3.04(1H,dd,J=2.6と4.6Hz),3.29(2H,dt,J=2.0と7.6Hz),3.96(1H,dd,J=2.0と4.0),4.19(1H,m),4.56(2H,dt,J=1.0と7.6Hzs), 4.96(1H,m),5.99(1H,br.s) 。
【0071】
実施例8
【化25】
【0072】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1− [3−(2−チオキソ)チアゾリノ] カルボニルエチル]−2−アゼチジノン(219mg、0.5mmol)、ブロモ酢酸ベンジル(137mg、0.6mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(44mg、1.1mmol)、さらにジフェニルクロロホスフェート(135mg、0.5mmol)を用い、実施例2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸ベンジルエステル(55mg)を得た。
【0073】
ここで得た化合物のIRおよびNMRスペクトルは実施例2で得たカルバペネム化合物のデータと同一であった。
【0074】
参考例4
【化26】
【0075】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−カルボキシエチル]−2−アゼチジノン(995mg、3.3mmol)、ベンジルメルカプタン(409mg、3.5mmol)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド(592mg、3.5mmol)を塩化メチレン(3ml)に溶かし、氷冷下にピリジン(550mg、7.0mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。参考例3と同様の処理により、(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(ベンジルチオカルボニル)エチル]−2−アゼチジノン(868mg)を得た。
【0076】
IRneat(cm -1) :1764,1687,1374,1255,1140,980 ,961 ;
NMRδ(CDCl 3 ) :0.06(3Hx2,s),0.87(3Hx3,s),1.08(3H,d,J=6.3Hz),1.26(3H,d,J=6.9Hz),2.86(1H,m),2.98(1H,dd,J=2.3と4.3Hz),3.88(1H,dd,J=2.2と5.7),4.11(2H,s),4.17(1H,m),5.84(1H,br.s) ,7.19-7.33(5H) 。
【0077】
実施例9
【化27】
【0078】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−(ベンジルチオカルボニル)エチル]−2−アゼチジノン(180mg、0.406mmol)、ブロモ酢酸ベンジル(152mg、0.82mmol)、水素化ナトリウム(60%油性)(52mg、1.3mmol)、さらにジフェニルクロロホスフェート(118mg、0.44mmol)を用い、実施例2と同様の方法により(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸ベンジルエステル(6.5mg)を得た。
【0079】
ここで得た化合物のIRおよびNMRスペクトルは実施例2で得たカルバペネム化合物のデータと同一であった。
【0080】
実施例10
【化28】
【0081】
(3S,4S)−3−[(1R)−1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル]−4−[(1R)−1−p−クロロフェニルチオカルボニルエチル]−2−アゼチジノン(214mg、0.5mmol)、ブロモ酢酸アリル(197mg、0.55mmol)をトルエンとテトラヒドロフランの8:2混合溶液(1.5ml)に溶かして、水素化ナトリウム(60%油性)(66mg、1.65mmol)とトルエンとテトラヒドロフランの8:2混合溶液(4.3g)の懸濁液に−35〜−40℃で滴下し1.5時間攪拌した。さらにジフェニルクロロホスフェート(148mg、0.55mmol)を加え、2時間攪拌することにより、(4R,5R,6S,8R)−3−ジフェニルホスホリルオキシ−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステルに誘導した後、−35℃で[2S,4S]−1−アリルオキシカルボニル−2−ジメチルアミノカルボニル−4−メルカプトピロリジン(129mg、0.55mmol)のアセトニトリル(0.4ml)溶液と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)(76mg、0.5mmol)を加え−20〜30℃で1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル50mlで希釈し、食塩水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、(4R,5S,6S,8R,3’S,5’S)−3−[4−(1−アリルオキシカルボニル−2−ジメチルアミノカルボニルピロリジニル)チオ]−4−メチル−6−(1−t−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−7−オン−2−カルボン酸アリルエステル(115mg)を得た。
【0082】
IRKBr(cm -1) : 1788, 1704, 1694, 1660, 1553, 1410, 1338, 1209, 1146, 982, 838
NMRδ (CDCl3 : 0.08(3H×2, s),0.88(3H×3, s),1.23(3H,d,J=7.3Hz),1.24(3H,d,J=6.3Hz), 1.96(1H,m), 2.65(1H,m),2.98(3H,s), 3.10(3H,s), 3.21(1H,m),3.27(1H,m),3.45(1H,t,J=10.2Hz),3.61(1H,m),4.01(1H,dd,J=6.9と10.2Hz),4.21(2H,m), 4.54-4.81(4H+1H,m), 5.16-5.47(4H,m),5.85-6.01(2H,m)
Claims (4)
- 一般式(I)
で表わされるβ−ラクタム化合物を塩基の存在下で、一般式(II)
で表わされる酢酸エステル誘導体を一般式(I)で表される化合物に対して2〜4当量用いて反応させ、ひきつづき水酸基の活性エステル化剤(該水酸基の活性エステル化剤とは、水酸基との反応によって、置換もしくは無置換アリールスルホン酸エステル、低級アルカンスルホン酸エステル、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸エステル、ジ低級アルキルホスホリックアシッドエステル、ジ(ハロゲノ低級アルキル)ホスホリックアシッドエステルまたはジ(置換または無置換アリール)ホスホリックアシッドエステルを生成する試剤を表す。)で処理することを特徴とする一般式(III)
で表わされるカルバペネム化合物の製造方法。 - 水酸基の活性化剤が、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、無水−p−トルエンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、p−ブロモベンゼンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、無水メタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチルクロロホスフェート、ジエチルクロロホスフェート、ジ(トリクロロエチル)クロロホスフェート、ジフェニルクロロホスフェート、 ジ−p−クロロフェニルクロロホスフェート、またはジトリルクロロホスフェートである、請求項1記載の製造方法。
- R3がメチル基である請求項1または2に記載の製造方法。
- R1が水素原子であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基であり、Xが保護された水酸基である請求項1または2に記載の製造方法。
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