JP3952379B2 - 垂直磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の磁気記録装置に搭載される垂直磁気記録媒体およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、高記録密度においても、書き込まれた信号がシフトしたり消滅したりすることなく、かつ生産性に優れた垂直磁気記録媒体と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク記録装置の大容量化に伴って、磁気記録媒体の高記録密度化の要求が高まっている。従来の磁気記録方式では、長手磁気記録方式が主流であったが、最近になって、磁気記録の高記録密度化を実現する技術として、垂直磁気記録方式が注目されつつある。
【0003】
この垂直磁気記録媒体は、硬質磁性材料の磁気記録層と、この記録層への記録に用いられる磁気ヘッドが発生する磁束を記録層へ集中させる役割を担う軟磁性材料で形成される裏打ち層とを、構成要素に含んでいる。
【0004】
垂直磁気記録媒体用の磁気記録層材料としては、現在、主にCoCr系合金結晶質膜が使用されている。このCoCr系合金結晶膜の他にさらに有望な垂直磁気記録層材料を検討した場合、現状においては、光磁気記録材料として使用されている希土類−遷移金属合金非晶質膜が、大きな垂直磁気異方性定数Kuを有しているので、非常に有望であると思われる。ところが、従来用いられている光磁気記録材料は、光磁気記録に適するように、補償点近傍の組成が使用されている。この補償点近傍の組成域のHcは、垂直磁気記録用の材料として要求されるHcよりもかなり大きく、そのままでは垂直磁気記録媒体用の材料としては使用することは難しい。
【0005】
これに対し、磁気記録層材料に希土類−遷移金属非晶質膜を用いた垂直磁気記録媒体が、特開2001−76332号公報および特開平7−176027号公報において提案されている。
【0006】
特開2001−76332号公報に提案されている垂直磁気記録媒体の構成は、『基板と、該基板上に設けられ、Nd、Pr、Ce、およびSmの希土類元素のうち少なくとも一元素を含み、かつCoおよびFeの遷移元素のうち少なくとも一元素を含む希土類−遷移金属非晶質膜からなる第1の磁性層、およびPtおよびPdのうち少なくとも一元素を含む中間層を、複数回積層させた積層膜とを備えた』構成である。この公報の開示では、前記構成によって、熱攪乱の影響が少なく、かつ従来の磁気記録材料の記録密度の限界を越えることが可能になったとしている。
【0007】
また、特開平7−176027号公報には、磁性膜が、『Coを主成分とし、これにCr、Fe、Mo、V、Ta、Pt、Si、B、Ir、w、Hf、Nb、Ru、Ti、Ni、CoOおよび希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類以上の元素または化合物を含んでなる材料から』構成され、非磁性中間層が、『Co、Ti、Ru、Hf、Ta、Cr、V、Ti、W、Mo、Pt、Pd、Si、Ge、Bから選ばれた少なくとも1種類を含む材料、またはこれを含む合金材料』から構成された垂直磁気記録媒体が、提案されている。この公報の開示では、前記構成によって、再生ノイズが小さく高密度磁気記録に好適な垂直磁気記録媒体を提供できるとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
現状、主に使用されているCoCr系合金結晶質磁気記録材料の場合、今後の記録の高密度化に対し、磁気記録層の薄膜化、CoCr系結晶粒径の微細化ならびに粒界偏析の促進等の方法により磁気記録媒体の低ノイズ化の検討が行なわれている。しかしながら、上記方法は、記録された信号の熱安定性を劣化させる方向であり、場合によっては記録された信号が消えてしまうという、いわゆる熱揺らぎの問題が急浮上してくる。
【0009】
一方、従来、光磁気記録材料として用いられていた希土類−遷移金属合金非晶質膜を使用すると、この希土類−遷移金属合金材料は、非晶質であるために、CoCr系結晶質膜に見られるような、いわゆる結晶粒界というものが存在しないので、書き込まれた信号をその場所にとどめておくための核となるものが存在せず、信号がシフトしたり、消えたりしてしまうことがある。特に、この現象は、高い周波数での記録時に発生し易く、高記録密度化を目指す垂直磁気記録材料としてはそのまま用いることはできない。
【0010】
そこで、本発明は、磁気記録層として希土類−遷移金属合金非晶質膜を用いる構成を有し、高記録密度においても書込まれた信号のシフトや消滅がなく、かつ生産性に優れた垂直磁気記録媒体の提供を目的とし、この目的を、前記二つの公報に開示の構成とは独立した構成により実現することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意、実験、検討を重ねたところ、磁気記録層を希土類−遷移金属合金非晶質膜から構成することとし、該希土類−遷移合金非晶質材料として、少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属とを含ませることにより、良好な垂直磁気記録媒体を得ることができることを、知るに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、本発明によれば、非磁性基板上に少なくとも中間層、磁気記録層、保護層および液体潤滑剤層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体において、前記磁気記録層が希土類−遷移金属合金非晶質膜により構成されており、該希土類−遷移合金非晶質材料が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含むことにより、良好な特性を示す垂直磁気記録媒体を作製することができる。
【0013】
また、本発明では、前記中間層がMnを主成分とする非磁性膜により構成され、該Mn中間層の膜厚を5nm以上30nm以下とし、さらに該中間層に含まれるMnの組成を70at%以上とすることが、好ましい。
【0014】
また、本発明では、非磁性基板と中間層との間に軟磁性裏打ち層を付与することにより、磁気ヘッドが発生する磁束を集中させることができ、磁気記録層に急峻な磁場勾配を形成することが出来る。これにより、さらに良好な特性を得ることが可能である。
【0015】
また、本発明では、非磁性基板と軟磁性裏打ち層の間に、1層あるいは複数層の下地層ならびに軟磁性裏打ち層の磁区制御を目的とした反強磁性層を付与することにより、軟磁性層の磁壁形成に起因するスパイクノイズを完全に抑制する事が出来、垂直磁気記録媒体の実用化にあたって非常に好ましい。
【0016】
さらに、本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法は、既存の製造装置を用いて行なうことが出来るため、大容量磁気記録媒体の大量生産にも適する方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に断面構成を示した磁気記録媒体では、非磁性基板1上に少なくとも中間層5、磁気記録層6および保護層7が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑剤層8が形成されている。
【0019】
また、図2に断面構成を示した磁気記録媒体では、非磁性基板1上に少なくとも軟磁性裏打ち層4、中間層5、磁気記録層6および保護層7が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑剤層8が形成されている。
【0020】
さらに、図3に断面構成を示した磁気記録媒体では、非磁性基板1上に少なくとも、1層あるいは複数層の下地層2、磁区制御層3、軟磁性裏打ち層4、中間層5、磁気記録層6、および保護層7が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑剤層8が形成されている。
【0021】
本発明において、非磁性基板1としては、NiPメッキを施したAl合金や強化ガラス、結晶化ガラス等を用いることができる。これらガラス材料は、通常の磁気記録媒体用に用いられるものである。
【0022】
また、磁区制御層3の構成材料としては、Mnを含む合金系からなるPtMn、IrMnなどの反強磁性膜、あるいは非磁性基板1の半径方向に磁化を配向させたCoCrTa、CoCrPt、CoCrPtB膜などの硬質磁性膜を用いることができる。この磁区制御層3の膜厚としては5〜300nm程度であることが好ましい。
【0023】
多層下地層2としては、磁区制御層3としてMn合金系の反強磁性膜を用いる場合には、面心立方構造を有するCu、Irなどの非磁性単金属、あるいはNiFeCrなどの非磁性合金等を用いることが望ましい。その場合、その下層に、さらに、前記非磁性単金属膜あるいは非磁性合金膜の微細構造を制御するために、さらに下地層を設けてもよい。このさらに設ける下地層としては、3〜30nmの膜厚を有するTa、Zr、Nb膜などが適当である。
【0024】
また、磁区制御層3として硬質磁性膜を用いた場合には、多層下地層2としては、CrMo、 CrWなどのCr合金などを用いることが出来る。この場合にも、さらにその下層に、前記Cr合金膜の微細構造を制御するために前記と同様に下地層を設けてもよい。
【0025】
軟磁性裏打ち層4としては、NiFe合金、センダスト(FeSiAl)合金等を用いることができるが、非晶質のCo合金、例えばCoNbZr、CoTaZrなどを用いることにより良好な電磁変換特性を得ることができきる。軟磁性裏打ち層4の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、10nm以上300nm以下であることが、生産性との兼ね合いから望ましい。
【0026】
中間層5は、磁気記録層6の磁気特性ならびに電磁変換特性を制御するために用いられる。さらに、軟磁性裏打ち層4を用いた場合には、軟磁性裏打ち層4と磁気記録層6を磁気的に分離する作用もある。本発明の一形態では、中間層5は、Mnを主成分とする非磁性膜により構成するが、その場合、Mnの組成が70at%以上であることが好ましい。Mn中間層を用いることにより、磁気記録層である希土類−遷移金属合金非晶質膜中の磁壁が固定され、高記録密度においても書き込まれた信号のシフトや消滅がなくなる。
【0028】
この中間層5を成膜する際には、成膜時に使用するガス圧を2mTorr以上100mTorr以下に調整して行なう。このガス圧を適当に制御することにより、中間層の表面形態が変化し、希土類−遷移金属合金非晶質膜の構造ならびに磁気特性を制御することが出来る。
【0029】
中間層5の膜厚は、5nm以上30nm以下とすることが好ましい。軟磁性裏打ち層4を用いる場合、中間層5の膜厚が5nmよりも薄いと、軟磁性裏打ち層4と磁気記録層6の磁気的な分離が不十分であるために、電磁変換特性が劣化する。30nmよりも厚くした場合、磁気記録ヘッドと軟磁性裏打ち層4の距離が離れてしまうため、やはり電磁変換特性が劣化する。一方、軟磁性裏打ち層がない場合には、中間層5の膜厚が5nmよりも薄い場合には、膜厚が薄すぎて中間層としての特性が現れず、また、30nmよりも厚い場合には、表面粗さが粗くなり過ぎ、垂直磁気記録媒体としての特性が劣化する。
【0030】
磁気記録層6は、希土類−遷移金属合金非晶質膜からなり、該希土類−遷移合金非晶質材料が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含むことが良好な垂直磁気記録媒体とするためには重要である。この希土類元素全部の濃度を10atm%以上35atm%以下とすれば、良好な垂直磁気記録媒体を得ることができる。
【0031】
また、希土類−遷移金属合金非晶質材料としては、TbCo、TbFeCo、TbFe、TbGdCo等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
この磁気記録層6を成膜する際には、成膜時に使用するガスの圧力を10mTorr以上200mTorr以下にすることが望ましい。さらに、膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0033】
保護層7は、従来より使用されている保護膜を用いることができる。例えば、カーボンを主体とする保護膜を用いることができる。保護層7の膜厚等の条件は、通常の磁気記録媒体で用いられる諸条件をそのまま用いることができる。
【0034】
また、液体潤滑剤層8も従来より使用されている材料を用いることができる。例えば、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤をもちいることができる。液体潤滑剤層8の膜厚等の条件は、通常の磁気記録媒体で用いられる諸条件をそのまま用いることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、以下の実施例は、本発明を好適に説明する代表例に過ぎず、本発明をなんら限定するものではない。
【0036】
(実施例1)
図1に示す断面構成において、非磁性基板1として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後、スパッタ装置内に導入し、Mnターゲットを用い、中間層5を成膜し、連続して、TbCoターゲットを用いて磁気記録層6の成膜を行なった。Mn中間層5の膜厚は、2nmから50nm(サンプル(i)〜(v))まで変化させた。磁気記録層6の膜厚は30nm一定とした。最後に、カーボンからなる保護層7を5nm厚に成膜後、真空装置から取り出した。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑剤層8を2nm厚にディップ法により形成し、垂直磁気記録媒体とした。
【0037】
得られた垂直磁気記録媒体の磁気特性は、磁化曲線を振動試料型磁力計にて測定し算出した。
【0038】
(比較例1)
実施例1において、中間層5を成膜せずに、非磁性基板1に直接TbCo磁気記録層6を成膜した以外は、実施例1に示した方法と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
【0039】
実施例1のMn中間層5の膜厚を変化させて作製した垂直磁気記録媒体の保磁力ならびに保磁力角型比の値を表1にまとめた。ここで、保磁力角型比は磁化曲線の傾き具合を評価するための指標となり、値が小さいほど磁化曲線が傾いていることに対応し、磁化反転がより磁壁移動型から磁化回転型に近付いていることになる。比較例1の結果も同じ表1中に合わせて示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、中間層5を用いない場合には、保磁力は、1810Oe程度の小さな値を示し、保磁力角型比も0.99と完全に磁壁移動型の磁化反転であることわかる。これに対し、Mn中間層5を用いることにより、Hcは増加し、保磁力角型比は低下する。保磁力が3000Oe以上の良好な値を示す中間層の膜厚は5nm以上30nm以下である。膜厚が30nm以上となると、Mn中間層の表面形状が凸凹になってしまい、保磁力は低下してしまう。
【0042】
(実施例2)
図1の構成において、磁気記録層6の材料をTbFeCo、TbFe、TbGdCoに替えた以外は、実施例1と同様に垂直磁気記録媒体を作製した。Mn中間層5の膜厚は10nmに固定した。
【0043】
磁気記録層6の材料を変えて作製した垂直磁気記録媒体の保磁力ならびに保磁力角型比の値を表2にまとめた。比較のために、実施例1に示したTbCoの場合の結果も同じ表2中に示してある。磁気記録層材料を変更しても、保磁力ならびに保磁力角型比はほぼ同じ値を示し、磁気記録材料である希土類−遷移合金非晶質膜が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含んでいれば、良好な磁気特性が得られることが分かる。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例3)
図1の構成において、中間層5の構成材料のMnの組成を変更した以外は、実施例1と同様に垂直磁気記録媒体を作製した。中間層5の膜厚は10nmに固定した。
【0046】
中間層5の組成において、Mnに他の元素を添加した場合の一例として、Cr、Zr、Nb、Mo、Wを添加した場合の保磁力の値を表3にまとめた。比較のために、実施例1に示した添加を行なっていないMnを用いた場合の結果も同じ表3中に示した。
【0047】
【表3】
【0048】
表3から明らかなように、Mn中間層に他の元素の添加を行なってない場合に比較して、他の元素を添加した場合は、いずれにおいても、保磁力は低下する。さらに、他の元素の添加量の増加に伴い、媒体の保磁力の値は単調に減少し、中間層5中のMnの割合が70at%よりも少なくなると、保磁力は3000 Oe以下の小さな値となってしまう。したがって、中間層5にMn合金材料をもちいる場合には、Mnの組成が70at%以上であることが重要であることが分かる。
【0049】
(実施例4)
図2の断面構成の磁気記録媒体において、非磁性基板1として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、CoZrNbターゲットを用い、軟磁性裏打ち層4を200nm成膜し、引き続き、Mnターゲットを用い中間層5を成膜して、さらに、連続してTbCoターゲットを用いて磁気記録層6の成膜を行なった。Mn中間層5の膜厚は2nm〜50nmまで変化させた。磁気記録層6の膜厚は30nm一定とした。最後に、カーボンからなる保護層7を5nm厚に成膜後、真空装置から取り出し、その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑剤層8を2nm厚にディップ法により形成し、垂直磁気記録媒体とした。
【0050】
得られた媒体の電磁変換特性は、スピンスタンドテスターを用いGMR素子を有する単磁極ヘッドにより測定を行なった。
【0051】
(比較例2)
実施例4において、軟磁性裏打ち層4を成膜後、中間層5を成膜せずに、TbCo磁気記録層6を成膜した以外は、実施例1に示した方法と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
【0052】
表4に、前記実施例4および比較例2において作成した磁気記録媒体の線記録密度350kFCIにおけるSNR(電磁変換特性での信号とノイズの比)を示した。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から明らかなように、比較例2の方法にて作製したMn中間層5がない垂直媒体においては、SNRは4.2dBのかなり低い値であった。これに対し、Mn中間層5の膜厚を5nm以上とすることにより、SNR値は急激に増加し、15dB以上の良好な値を示した。これは、書込まれた信号が、Mn中間層5の効果により、その場所に安定に固定されているためである。しかしながら、Mn中間層5の膜厚が30nmよりも厚くなると、Mn中間層5の表面形状が凸凹になるために、特性は劣化してしまう。したがって、Mn中間層5の膜厚は5nm以上30nm以下にする必要がある。
【0055】
(実施例5)
磁気記録層6の材料をTbFeCo、TbFe、TbGdCoに変えた以外は、実施例4と同様に垂直磁気記録媒体を作製した。Mn中間層5の膜厚は10nmに固定した。
【0056】
磁気記録層6の材料を変えて作製した垂直磁気記録媒体のSNR値を表5にまとめた。比較のために、実施例4に示したTbCoの場合の結果も同じ表中に示した。磁気記録層6の材料を変更しても、SNRはほぼ同じ値を示し、磁気記録材料である希土類−遷移合金非晶質膜が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含んでいれば、良好な磁気特性が得られることが分かる。
【0057】
【表5】
【0058】
(実施例6)
図3に示す断面構成において、非磁性基板1を用い、洗浄後スパッタ装置内に導入し、軟磁性裏打ち層4を成膜する前に、第1下地層としてTa膜を5nm厚に、第2下地層としてNiFeCrを5nm厚に、磁区制御層3としてIrMnを10nm厚に成膜した以外は、実施例4と同様にして、磁気記録媒体を作製した。Mn中間層5の膜厚は10nmに固定した。
【0059】
得られた垂直磁気記録媒体の磁気特性は、カー効果測定装置を用いてカーループを測定し、算出した。電磁変換特性は、スピンスタンドテスターを用いGMR素子を有する単磁極ヘッドにより測定を行なった。
【0060】
実施例6の方法にて作製した垂直磁気記録媒体と実施例4の方法にて作製した垂直磁気記録媒体において、磁気特性ならびににSNR関しては、特に差異は認められなかった。
【0061】
この実施例6に示した垂直磁気記録媒体(図3の構成)のスピンスタンドテスターによる1周分の出力波形と、この実施例6とは異なり配向制御層(多層下地層)2ならびに磁区制御層3を付与していない図2の構成の実施例4に示した垂直磁気記録媒体の出力波形とを、図4に、一緒に示した。配向制御層(多層下地層)2ならびに磁区制御層3がない場合(実施例4)には、全周に渡り不均一にスパイクノイズが発生しているこれに対し、本実施例6では、配向制御ならびに磁区制御層を付与することにより、全くスパイクノイズは発生していないことが分かる。これは、配向制御層2ならびに磁区制御層3を付与することにより、軟磁性裏打ち層4に磁壁が形成されないためである。
【0062】
(参考例7)
図2に示す構成において、非磁性基板1として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを、洗浄後、スパッタ装置内に導入し、CoZrNb非晶質軟磁性裏打ち層4を200nm厚に成膜後、中間層5を、各種材料を用い、膜厚を2nm〜50nmまで変化させて成膜した。連続して、TbCoターゲットを用い、20mTorrのガス圧にて磁気記録層6の成膜を行なった。磁気記録層6の膜厚は30nm一定とした。最後にカーボンからなる保護層7を5nm厚に成膜後、真空装置から取り出した。中間層5と磁気記録層6以外の成膜は、すべてガス圧5mTorr下でDCマグネトロンスパッタリング法により行なった。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑剤層8を2nm厚にディップ法により形成し、垂直磁気記録媒体とした。
【0063】
得られた媒体の磁気特性は、磁化曲線をKerr効果測定装置を用いて測定し、算出した。この実施例に示した方法にて全層成膜した垂直磁気記録媒体の電磁変換特性は、スピンスタンドテスターを用いGMRヘッドにより測定を行なった。
【0080】
(実施例10)
図3に示す構成において、非磁性基板1を用い、洗浄後スパッタ装置内に導入し、軟磁性層裏打ち層4を成膜する前に、第1下地層としてTa膜を5nm厚に、第2下地層としてNiFeCrを5nm厚に、磁区制御層3としてIrMnを10nm厚に成膜した以外は、実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0081】
実施例10の方法にて作製した垂直磁気記録媒体と参考例7の垂直磁気記録媒体において、磁気特性ならびにSNRに関しては、特に差異は認められなかった。
【0082】
実施例10に示した垂直磁気記録媒体のスピンスタンドテスターによる1周分の出力波形を図5に示した。比較のために、下地層2ならびに磁区制御層3を付与していない参考例7の垂直磁気記録媒体の出力波形も図中に一緒に示した。下地層2ならびに磁区制御層3がない場合には、全周に渡り不均一にスパイクノイズが発生している。これに対し、下地層2ならびに磁区制御層3を付与することにより、全くスパイクノイズは発生していないことが分かる。これは、下地層2ならびに磁区制御層3を付与することにより、軟磁性裏打ち層4に磁壁が形成されないためである。
【0083】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、非磁性基板上に少なくとも中間層、磁気記録層、保護層および液体潤滑剤層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体において、前記磁気記録層が希土類−遷移金属合金非晶質膜により構成されており、該希土類−遷移合金非晶質材料が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含むことにより、良好な特性を示す垂直磁気記録媒体を作製することが出来る。
【0084】
また、本発明では、前記中間層がMnを主成分とする非磁性膜により構成され、該Mn中間層の膜厚を5nm以上30nm以下とし、さらに該中間層に含まれるMnの組成を70at%以上とすることが、好ましい。
【0085】
また、本発明では、非磁性基板と中間層との間に軟磁性裏打ち層を付与することにより、磁気ヘッドが発生する磁束を集中させることができ、磁気記録層に急峻な磁場勾配を形成することが出来る。これにより、さらに良好な特性を得ることが可能である。
【0086】
また、本発明では、非磁性基板と軟磁性裏打ち層の間に、1層あるいは複数層の下地層ならびに軟磁性裏打ち層の磁区制御を目的とした反強磁性層を付与することにより、軟磁性層の磁壁形成に起因するスパイクノイズを完全に抑制する事が出来、垂直磁気記録媒体の実用化にあたって非常に好ましい。
【0087】
さらに、本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法は、既存の製造装置を用いて行なうことが出来るため、大容量磁気記録媒体の大量生産にも適する方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による磁気記録媒体の構成を示す断面模式図である。
【図2】 本発明の実施例2による磁気記録媒体の構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施例3および10による磁気記録媒体の構成を示す断面模式図である。
【図4】本発明の実施例を説明するためのもので、実施例6において作製した垂直磁気記録媒体と実施例4において作製した垂直磁気記録媒体のスピンスタンドテスターによる1周分の出力波形を示す図である。
【図5】 本発明の実施例を説明するためのもので、実施例10において作製した垂直磁気記録媒体と参考例7において作製した垂直磁気記録媒体のスピンスタンドテスターによる1周分の出力波形を示した図である。
【符号の説明】
1 非磁性基板
2 多層下地層
3 磁区制御層
4 軟磁性裏打ち層
5 中間層
6 磁気記録層
7 保護層
8 液体潤滑剤層
Claims (3)
- 非磁性基板上に、少なくとも中間層、磁気記録層、保護層および液体潤滑剤層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体において、
前記磁気記録層が希土類−遷移金属合金非晶質膜により構成されており、該希土類−遷移合金非晶質材料が少なくともTbを含む希土類元素と、Fe、Coのうち少なくとも1種類の遷移金属を含み、
前記中間層が、70at%以上のMnを含み、5nm以上30nm以下(5nmを除く)の膜厚を有する非磁性膜である
ことを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 前記非磁性基板と前記中間層との間に軟磁性裏打ち層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記非磁性基板と前記軟磁性裏打ち層との間に、1層あるいは複数層の下地層ならびに磁区制御層を有することを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体。
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Publications (2)
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