JP3951863B2 - 不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法、良否判定方法、及び予測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法、良否判定方法、及び予測装置にかかり、特に、制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリにおけるデータ保持寿命を短時間で予測することができる不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法、この予測方法の原理を利用した不揮発メモリの良否判定方法、及び予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリは、電気的にデータが書き換え消去可能な不揮発性メモリデバイスであり、現在、さまざまな電子機器に使用されている。EEPROMは、制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを備えており、制御ゲートの電圧を制御すること等によりデータの書き換え消去が可能である。
【0003】
EEPROMに要求される寿命の一つとして、使用環境によって決定される所定の温度条件で放置した時にしきい値電圧が変化し、データ書込み後のデータと異なるデータに変化するまでの時間、いわゆる電荷保持寿命がある。このとき、寿命を求める温度は、例えば、メモリが搭載される機器の環境温度となるため、一般に用いられる機器の場合では、100℃以下の温度になることが多い。これらの性能を満たすためには、高い信頼性を備えたデバイス構造及びプロセスが必要である。
【0004】
EEPROMのデータ(電荷)保持寿命とは、浮遊ゲートに蓄えられた電荷がある量抜ける(流出する)までの時間である。したがって、この電荷保持寿命を保証することによって、EEPROMの信頼性を大きく向上することができる。
【0005】
従来では、この電荷保持寿命は、主に温度加速法を用い、高温で保持寿命を測定し、その温度依存性を示す直線から外挿により目的とする温度での寿命を求めていた。図1に温度加速法の温度と電荷保持寿命との関係を示す直線の例(IEICE TRANS.ELECTRON Vol.E77−C.No.8 AUGUST 1944 p1287)を示す。図に示すように、測定点からはなれた点の電荷保持寿命が外挿により予測されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法では、予測精度を向上するためには、低い温度での寿命測定を行なう必要があるため、評価に膨大な時間が必要になる、という問題がある。したがって、EEPROMの開発期間を短縮させることが困難であった。
【0007】
また、高温で測定した寿命の温度特性を基に実動作温度での電荷保持寿命を推定すると、IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES Vol.46 No.7 July 1999.p1518に報告されるように、過大評価になる(長寿命側に評価される)ことが報告されている。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解消するためになされたもので、従来の温度加速法より短時間で、かつ精度良く電荷保持寿命を予測することができる不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法、この予測方法の原理を利用した不揮発メモリの良否判定方法、及び予測装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法は、制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリにおけるデータ保持寿命を予測する不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法であって、浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に印加する印加工程と、前記加速電圧印加時の測定データに基づいて、前記加速電圧に対する電荷保持寿命時間を演算する演算工程と、前記加速電圧と前記電荷保持寿命時間との関係に基づいて、加速電圧が0Vになるときの電荷保持寿命時間をデータ保持寿命時間として予測する予測工程と、を含んで構成したものである。
【0010】
本発明では、浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧を印加し、そのときの測定データ基づいて加速電圧に対する電荷保持寿命時間を演算する。そして、加速電圧が0Vになるときの電荷保持寿命時間、すなわち加速電圧を印加することなくリーク電流のみによって浮遊ゲートに蓄積された電荷が抜け出るまでの時間を、データ保持寿命時間として予測する。
【0011】
本発明の演算工程では、経過時間tと保持電荷に起因するしきい値電圧V(t)との関係を表す以下の式と測定データとに基づいて、電荷保持寿命時間を演算することができる。
【0012】
【数3】
【0013】
ただし、P1、P2は測定データから抽出される定数であり、VT0は保持電荷に起因する電圧V(t)の初期値である。
【0014】
また、本発明の不揮発メモリの良否判定方法は、制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリの良否を判定する不揮発メモリの良否判定方法であって、浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧と前記加速電圧に対する電荷保持寿命時間との関係に基づいて、電荷保持寿命時間が所定時間のときの加速電圧を求め、求めた加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に前記所定時間印加し、前記保持電圧に起因するしきい値電圧の変化が予め定めた所定値を越えたか否かを判断することにより、不揮発メモリが良品か不良品かを判定するようにしたものである。
【0015】
本発明では、電荷保持寿命時間が所定時間のときの加速電圧を印加し、その時のしきい値電圧の変化が予め定めた所定値を越えたか否かを判断し、しきい値電圧の変化が予め定めた所定値を越えたかときには不良品と判定し、しきい値電圧の変化が予め定めた所定値以下の場合には良品と判定するようにしている。
【0016】
また、不揮発メモリのデータ保持寿命予測装置は、制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリにおけるデータ保持寿命を予測する不揮発メモリのデータ保持寿命予測装置であって、浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に印加する印加手段と、前記加速電圧を印加したときの保持電荷に起因するしきい値電圧が所定値を越えて変化したときの時間を測定する測定手段と、経過時間tとしきい値電圧V(t)との関係を表す上記の式と測定データとに基づいて、前記電荷保持寿命時間を演算する演算手段と、前記加速電圧と前記電荷保持寿命時間との関係に基づいて、加速電圧が0Vになるときの電荷保持寿命時間をデータ保持寿命時間として予測する予測手段と、を含んで構成したものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。まず、本実施の形態の電荷抜けモデルについて説明する。
【0018】
EEPROMは、図2(A)に示すように、ソース及びドレインを備えたシリコン基板10のソース−ドレイン間の上方に、トンネル酸化膜12を介して浮遊ゲート14を形成し、浮遊ゲート14の上面に絶縁膜16を介して制御ゲート18を形成して構成されている。
【0019】
このEEPROMは、浮遊ゲート14における電荷の有無により、メモリ効果を発現するデバイスであり、制御ゲートに電圧Vppを印加すると共にドレイン−ソース間の電圧を0Vにして、浮遊ゲートに電荷を注入することで0を書き込む。
【0020】
浮遊ゲート14に電荷Qが存在すると、浮遊ゲート14の電位VFGで定まり、かつトンネル酸化膜12を介して流れるリーク電流JLにより、浮遊ゲート14から電荷が流出する。電荷が流出すること浮遊ゲート電位VFGが低下し、メモリ効果を失う。すなわち、図2(B)に示すように時間の経過と共に、浮遊ゲート電位VFG、リーク電流JL共に低下する。この関係は下記の式で表すことができる。
【0021】
【数4】
【0022】
ここで、CFGは浮遊ゲートと制御ゲート間の絶縁膜の容量、VFG0は初期(時間0)浮遊ゲート電位であり、下記(2)式で表される。
【0023】
【数5】
【0024】
ここで、αはカップリング係数、VCGは制御ゲート電圧である。
【0025】
トンネル酸化膜12に流れるリーク電流JLは、下記の3つの電流式のいずれかで記述することができる。
【0026】
1)P−F(プール・フレンケル)電流式
【0027】
【数6】
【0028】
2)F―N(ファウラー・ノルドハイム)電流式
【0029】
【数7】
【0030】
3)指数関数電流式
【0031】
【数8】
【0032】
ここで、(4)式〜(5)式のA1、B1、A2、B2、A3、B3は定数である。
【0033】
上記3つの式のいずれかを(1)式に代入し展開すると、どの式を用いても次の(7)式が得られる。
【0034】
【数9】
【0035】
ここで、C1は定数である。
(7)式の微分方程式を解くと、次の(8)式が得られる。
【0036】
【数10】
【0037】
ここで、cは定数である。
(8)式において、t=0での初期(時間0)リーク電流をJL0とすると、定数cは、−1/JL0と表されるので、上記(8)式は以下の(9)式ように表される。
【0038】
【数11】
【0039】
ここで、上記(9)式の分母のtの係数を(10)式のように表すと
【0040】
【数12】
【0041】
上記(9)式は簡単に下記の(11)式で表すことができる。
【0042】
【数13】
【0043】
この(11)式より、リーク電流JLは、時間に反比例して減少する特性を持つことが理解できる。また、tBはJL0が1/2になるまでの時間であり、JL0に反比例して短くなる特徴を持っている。
【0044】
次に、浮遊ゲートから抜ける電荷量ΔQはリーク電流の時間積分であるので、下記の式で表される。
【0045】
【数14】
【0046】
t=0でΔQ=0であるので、定数cは
【0047】
【数15】
【0048】
となる。従って、ΔQ(t)は、以下の(13)式で表される。
【0049】
【数16】
【0050】
ところで、浮遊ゲートに保持された電荷量に起因するしきい値電圧の時間変化は初期(時間0)のしきい値電圧をVT0とすると、以下の(14)式で記述することができる。
【0051】
【数17】
【0052】
上記(14)式より、しきい値電圧は時間の対数に比例して変化することが理解できる。この(14)式の関係をグラフで表すと図3のようになる。
【0053】
また、(14)式より、しきい値電圧が所定の変化量△VT変化する間での時間TTFは次の(15)式で表される。
【0054】
【数18】
【0055】
ここで、Mは以下の式で表される定数である。
【0056】
【数19】
【0057】
上記(15)式はしきい値電圧の変化が△VTの時には、初期リーク電流JL0としきい値電圧の変化係数P1が求まれば寿命が予測できることを意味している。
【0058】
次に、上記のモデルを用いて寿命予測を行なう寿命予測装置について図4を参照して説明する。
【0059】
試料であるEEPROMの制御ゲートは、制御ゲートを電圧源20、または接地に接続するように切り換える切り換えスイッチ32に接続され、ソースおよび基板は接地されている。また、ドレインは、ドレインを電圧源22及び電流計24、または接地に接続するように切り換える切り換えスイッチ26に接続されている。
【0060】
そして、EEPROMは全自動プローバ28上に載置され、任意の場所のEEPROMの測定が可能なようになっている。全自動プローバ28、電圧源20、22、及び電流計24には制御用コンピュータ30が接続されている。
【0061】
次に、図5を参照して、制御用コンピュータ30による寿命予測の測定ルーチンについて説明する。まず、ステップ100において、切り換えスイッチ32を電圧源20側に、また、切り換えスイッチ26を接地側に切り換えて、電圧源20からパルス状電圧を制御ゲートに印加することにより、EEPROMに書き換えストレスを加えた後、浮遊ゲートに電荷を注入した状態にする。
【0062】
浮遊ゲートに電荷を注入した後、次のステップ101において、しきい値電圧の初期値を測定する。しきい値電圧の測定は切り換えスイッチ26を電圧源22、電流計24側に、また、切り換えスイッチ32を電圧源20側に切り替え、電圧源22からドレインに一定の電圧を印加すると共に、電圧源20から制御ゲートに階段状に増加する電圧を印加し、電流計24で測定した電流が所望の値になる電圧源20の電圧をしきい値電圧とする。
【0063】
次のステップ102において、制御ゲートまたはドレインに浮遊ゲートに注入された電荷が加速されてより早く抜けるような電圧(加速電圧)を印加する。浮遊ゲートに注入された電荷が加速されてより早く抜けるような電圧を制御ゲートに印加する場合は、切り換えスイッチ32を電圧源20側に、また、切り替えスイッチ26を接地側に切り換える。一方、浮遊ゲートに注入された電荷が加速されてより早く抜けるような電圧をドレインに印加する場合は、切り替えスイッチ32を接地側に、また、切り換えスイッチ26を電圧源22及び電流計24側に切り換える。
【0064】
浮遊ゲートに保持された電荷を加速して流出させるには、電圧源20から制御ゲートに一定の電圧を印加するか、または、電圧源22からドレインに一定電圧を印加すればよい。本実施形態では、制御ゲートに一定電圧VCG1〜VCG5を印加している。ステップ103では所望の時間電圧を印加し保持する。
【0065】
次のステップ104では、ステップ101と同様な方法でしきい値電圧の測定を行う。ステップ106では、ステップ104で測定したしきい値電圧が予め定められた所定値△VTを超えたか否かを判断し、しきい値電圧の変化が所定値△VTを超えた場合には、ステップ108において、そのとき制御ゲートに印加した電圧、電圧印加時間、しきい値電圧VT(t)、しきい値電圧の初期値VT0を制御用コンピュータ30の記憶装置に記憶する。
【0066】
次のステップ110では、予め定められた測定回数n(本実施の形態では、n=5)だけ測定したか否かを判断し、n回測定されていない場合にはステップ112で次の加速電圧(制御ゲートに対して一定電圧VCG2)を印可する準備を行ない、ステップ100に戻って上記で説明したように特性を測定して記憶装置に記憶する。この測定は、測定回数がnになるまで、制御ゲートに印加する電圧VCGを順に変更して継続する。
【0067】
以上の結果、各々値が異なる加速電圧を制御ゲートまたはドレインに順に印加し、各加速電圧印加時の電圧印加時間、しきい値電圧、しきい値電圧の初期値、及び制御ゲート電圧が測定データとして測定され、制御用コンピュータの記憶装置保存される。
【0068】
図7に示す解析ルーチンのステップ120では、ステップ108で保存したデータ(しきい値電圧、しきい値電圧の初期値、及び電圧印加時間)をロードし、ステップ122で各々の制御ゲートに加速電圧を加えたときの特性を上記の(14)式でフィッティングし、ステップ124で測定データから定数であるパラメータP1、P2を抽出する。図3から理解されるように、P1は(14)式のグラフの直線部分の傾きであり、t=P2のときしきい値電圧VT(t)は、ln(2)・P1だけ低下するので、(14)式のグラフの直線部分の傾きを求めれば、パラメータP1を抽出することができ、抽出したパラメータP1を用いれば、しきい値電圧が初期値からln(2)・P1だけ低下する時の時間を示すパラメータP2を抽出することができる。
【0069】
ステップ126では、抽出したパラメータP1,P2を(15)式に代入し、しきい値電の変化が所定値ΔVTになるまでの時間TTF(VCG)を計算する。
【0070】
次のステップ128では、予め定められた測定回数nだけ時間TTFを計算したか否かを判断し、予め定められた測定回数nだけ時間TTFを計算した場合には、ステップ130で計算した時間TTFを制御ゲートに印加した加速電圧VCGと共に記憶装置にセーブする。一方、n回計算されていない場合にはステップ132で次の加速電圧のデータをロードする準備を行ない、ステップ120に戻って上記で説明したように時間TTFの計算を継続する。
【0071】
図7の寿命計算ルーチンのステップ140では、時間TTF及び制御ゲート電圧VCGのデータをロードし、ステップ142で外挿関数へのフィッティングを行ない、ステップ144でパラメータを抽出する。次のステップ146では、制御ゲート電圧VCGが0VのときのTTFを寿命として演算する。これにより、制御ゲート電圧が0Vのときの保持寿命が外挿により求められることになる。
【0072】
ここで、問題となるのは、どの関数を用いて外挿するかということである。(15)式から明らかなように外挿で用いる関数はJL0の関数であることが理解できる。
【0073】
以下、実験結果を基に外挿に用いる関数の考察を行う。EEPROMに10万回の書き換えを行った後、電荷保持特性を測定した。制御ゲート電圧に印加する電圧は、−4V〜−8Vの間で変化させた。書き換えストレス印加、及び保持特性の評価は125℃の雰囲気温度で行った。
【0074】
電荷保持特性の印加制御ゲート依存性の測定結果は、図8に示すようであった。また、図中の実線は(14)式を用いてフィッティングした結果である。相関係数はすべての特性において0.99以上であった。すなわち、本結果より上記で説明したモデルの妥当性が証明される。また、カーブフィッティングより抽出されたパラメータを表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
また、これらのパラメータを用いてTTF,JL0,VFG0を計算した結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
また、これらのパラメータを用いてTTFを計算し、制御ゲート電圧とTTFの関係をプロットすると図9に示す結果が得られた。
【0079】
ここで、求めたいのは制御ゲートが0Vのときの寿命である。外挿関数は、(15)式より明らかなように、リーク電流JL0の関数である。図12中の実線及び破線は、各々(4)式、(5)式、(6)式を用いてフィッティングした結果である。図から、指数関数モデル、P−Fモデルがよく一致していることが理解できる。しかしながら。制御ゲート0Vの寿命は、両モデルで1桁程度の差がある。
【0080】
そこで、指数関数モデル、P−Fモデルのどちらのモデルを用いればよいかを制御ゲート電圧0Vで測定した電荷保持特性と比較した。その結果を図10に示す。図から明らかなようにP−Fモデルがよい一致を示している。しかしながら、指数関数モデルでも寿命の誤差は1桁程度であり、また、その寿命は短い方向を評価、すなわち過少評価している。言い換えれば、指数関数モデルを用いて予測した結果がEEPROMの電荷保持寿命の仕様を満たしていれば、P−Fモデルで予測した寿命(実際の寿命)も仕様を満たしていると言える。なお、デバイスにより検証し、より精度の高いモデルを適用することも可能である。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態は、浮遊ゲートに蓄積された電荷が加速的に抜けるような電圧を制御ゲートに印加し、そのときの寿命の制御ゲート電圧依存性を求め、その関係から制御ゲート電圧0Vの点を外挿することによって、EEPROMの電荷保持寿命を予測している。その時の外挿関数は、TTF=A・exp(−B|VCG|)である。
【0082】
本実施の形態を用いることにより、従来の温度加速では1000時間程度評価時間が必要であったが、制御ゲートに加える電圧にもよるが、100時間程度で寿命が予測可能となる。
【0083】
本実施の形態を用いることにより、EEPROMの評価時間が飛躍的に短縮でき、開発期間の短縮及びより高信頼性のあるデバイス開発が期待できる。
【0084】
次に第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記の第1の実施の形態でパラメータA,Bを求めた曲線(TTF=A・exp(−B|VCG|))を用いて、製品の良否を判定するようにしたものである。本実施の形態の制御ルーチンを図11を参照して説明する。ステップ150では、上記ステップ100で説明したのと同様に書換え処理を行ない、ステップ151では初期しきい値電圧の測定を行ないステップ152において上記の曲線に基づいて、時間TTFを10秒とした時の加速電圧VCG10(=−ln(10/A)/B)を求め、この加速電圧VCG10を10秒間印加する。
【0085】
次のステップ154ではしきい値電圧を測定し、ステップ156でしきい値電圧の変化が所定値ΔVTを越えているか否かを判断する。しきい値電圧の変化が所定値ΔVTを越えていなければ、上記の第1の実施の形態でパラメータA,B求めた曲線を満足しているので、ステップ158で良品と判断し、逆にしきい値電圧の変化が所定値ΔVTを越えていれば、ステップ160で不良品と判断する。
【0086】
ステップ162では、予め定めた数nの素子の測定が終了したか否かを判断し、予め定めた数nの素子の測定が終了していなければ、ステップ152に戻って上記の測定を継続し、予め定めた数nの素子の測定が終了した場合には、ステップ164で素子の良否マップを表示してこのルーチンを終了する。
【0087】
なお、上記では、時間TTFを10秒としたが、時間TTFは10秒限定されるものではなく、任意の時間を採用することができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法及び装置によれば、短時間で、かつ精度良く電荷保持寿命を予測することができる、という効果が得られる。
【0089】
また、本発明の不揮発メモリの良否判定方法によれば、短時間で、かつ精度良く不揮発メモリの良否を判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の寿命評価方法の例を示す線図である。
【図2】(A)はEEPROMの電荷抜けモデルを示す模式図であり、(B)は浮遊ゲート電位VFGとリーク電流の対数との関係を示す線図である。
【図3】時間の対数としきい値電圧との関係を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態のデータ保持寿命予測装置を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態の測定ルーチンを示す流れ図である。
【図6】本実施の形態の解析ルーチンを示す流れ図である。
【図7】本実施の形態の寿命計算ルーチンを示す流れ図である。
【図8】電荷保持特性の印加制御ゲート電圧依存性の測定結果を示す示す線図である。
【図9】時間TTFの制御ゲート電圧依存性及び各外挿関数でのフィッティング結果を示す線図である。
【図10】電荷保持特性の実験結果と計算結果とを比較して示す線図である。
【図11】本実施の形態の良否判定ルーチンを示す流れ図である。
【符号の説明】
10 シリコン基板
12 トンネル酸化膜
14 浮遊ゲート
18 制御ゲート
Claims (3)
- 制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリにおけるデータ保持寿命を予測する不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法であって、
浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に印加する印加工程と、
前記加速電圧印加時の測定データに基づいて、前記加速電圧に対する電荷保持寿命時間を演算する演算工程と、
前記加速電圧と前記電荷保持寿命時間との関係に基づいて、加速電圧が0Vになるときの電荷保持寿命時間をデータ保持寿命時間として予測する予測工程と、を含み、
前記演算工程では、経過時間tと前記保持電荷に起因するしきい値電圧V(t)との関係を表す以下の式と測定データとに基づいて、前記電荷保持寿命時間を演算する不揮発メモリのデータ保持寿命予測方法。
- 制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリの良否を判定する不揮発メモリの良否判定方法であって、
浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧と前記加速電圧に対する電荷保持寿命時間との関係に基づいて、電荷保持寿命時間が所定時間のときの加速電圧を求め、
求めた加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に前記所定時間印加し、
前記保持電荷に起因するしきい値電圧の変化が予め定めた所定値を越えたか否かを判断することにより、不揮発メモリが良品か不良品かを判定し、
浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧と前記加速電圧に対する電荷保持寿命時間との関係は、以下の式で表される不揮発メモリの良否判定方法。
TTF=A・exp(−B|V CG |)
ただし、V CG は加速電圧、TTFは電荷保持寿命時間、A及びBは所定の数である。 - 制御ゲート、浮遊ゲート、ドレイン、及びソースを有する不揮発メモリにおけるデータ保持寿命を予測する不揮発メモリのデータ保持寿命予測装置であって、
浮遊ゲートに保持された保持電荷を加速して流出させる加速電圧を前記制御ゲート及び前記ドレインの少なくとも一方に印加する印加手段と、
前記加速電圧を印加したときのしきい値電圧が所定値を越えて変化したときの時間を測定する測定手段と、
経過時間tと前記保持電荷に起因する電圧V(t)との関係を表す以下の式と測定データとに基づいて、前記電荷保持寿命時間を演算する演算手段と、
前記加速電圧と前記電荷保持寿命時間との関係に基づいて、加速電圧が0Vになるときの電荷保持寿命時間をデータ保持寿命時間として予測する予測手段と、
を含む不揮発メモリのデータ保持寿命予測装置。
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