JP3915576B2 - 筒内噴射用燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、筒内噴射式内燃機関、例えば蓄圧式燃料噴射装置を備えるディーゼルエンジンの筒内噴射用燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁が種々提案されており、例えば、蓄圧式燃料噴射装置を備えるディーゼルエンジンの燃料噴射弁としては、図5に例示するような燃料噴射弁がある。
【0003】
図5では便宜上、図示を省略するが、この燃料噴射弁は、そのボディ2の内部加工を容易にするために適宜に分割されて構成されている。このボディ2内には燃料噴射圧相当の高圧燃料が流通する燃料供給通路18が形成されている。この燃料供給通路18は燃料だまり16及びニードル背圧室13に連通している。ボディ2の先端部には燃料を気筒内に噴射するための噴射孔17が形成されている。この噴射孔17は上下に摺動可能なニードル弁14によって開閉される。このニードル弁14には、ボディ2内に形成されたシリンダ部2aを摺動可能なピストン部14aが形成されている。このピストン部14aの一方端はニードル背圧室13に面しており、他端には燃料だまり16の燃料圧力を受ける受圧面20、及び噴射孔17を開閉するためのニードル部14bが形成されている。なお、上記シリンダ部2aに設けられているニードルスプリング15は、噴射孔17が閉じられる方向にニードル弁14を付勢している。
【0004】
また、ボディ2内には、圧電素子からなるPZTアクチュエータ3が備えられている。このPZTアクチュエータ3は、リード線(図示略)を通じて電圧が印加されると伸長し、非通電時には収縮する圧電素子からなるアクチュエータである。PZTアクチュエータ3の先端部には、同PZTアクチュエータ3の変位量に応じて移動するPZTピストン5が備えられている。一方、ボディ2内には、このPZTピストン5に対向して形成されたシリンダ部2bを摺動可能なピストン部42、及び略円筒状の突き押し部43からなるリフタ41が設けられている。そして、PZTピストン5とこのリフタ41との間には燃料で満たされた圧力室7が形成されている。
【0005】
他方、ボディ2内に設けられた制御弁室11は、その内部に制御弁12を備えている。なお、この制御弁室11は上記ニードル背圧室13に常時連通している。また上記リフタ41とこの制御弁室11との間に形成されている燃料リーク室9は、燃料排出通路10を介して燃料タンク(図示略)に連通されている。また、制御弁室11と燃料リーク室9とは連通路45によって連通されている。この連通路45は上記制御弁12によって開閉される。制御弁12は制御弁スプリング16によって連通路45を閉状態とする方向に常時付勢されており、上記PZTアクチュエータ3の駆動によるリフタ41の図中下方への変位に伴って連通路45を開状態にする。
【0006】
この燃料噴射弁では、以下のようにして燃料の噴射が行われる。
まず、PZTアクチュエータ3に電圧を印加して同PZTアクチュエータ3を伸長させ、これによりPZTピストン5を図中下方に変位させる。このPZTピストン5の変位に伴って、圧力室7内に満たされている燃料の圧力が上昇してリフタ41が押し下げられ、リフタ41の突き押し部43によって制御弁12が図中下方に変位する。この制御弁12の変位、すなわち開弁により、ニードル背圧室13と連通している制御弁室11は、連通路45を介して燃料リーク室9にも連通するようになる。ここで、燃料リーク室9は燃料タンクにつながる燃料排出通路10に連通しているため、ニードル背圧室13の高圧燃料が燃料リーク室9、すなわち低圧側に流入し、ニードル背圧室13内の燃料圧力が低下する。こうしてニードル背圧室13内の燃料圧力が低下すると、ニードル弁14を下方へ付勢する力よりもニードル弁14の受圧面20等に作用する上向きの力の方が大きくなるため、ニードル弁14は図中上方へ移動する。このニードル弁14の移動により噴射孔17が開口され、この噴射孔17から高圧燃料が噴射される。
【0007】
一方、燃料噴射の停止は以下のようにして行われる。
まず、PZTアクチュエータ3への通電が遮断される。これにより、制御弁12は、制御弁スプリング16の付勢力と制御弁室11内の高圧燃料の圧力によって連通路45を閉塞する。このとき、ニードル背圧室13には燃料噴射圧相当の高圧が作用するとともに、この圧力はニードルスプリング15の付勢力とともにニードル弁14に図中下向きの力を与えるように作用する。この状態ではニードル弁14を下方に付勢する力の方が大きいため、噴射孔17はニードル弁14によって閉弁状態とされ、閉塞される。
【0008】
このように、同図5に例示した燃料噴射弁では、PZTアクチュエータ3への通電、通電遮断に伴う制御弁12の開閉に基づきニードル背圧室13内の圧力を制御することで、燃料の噴射、及び停止が行われる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、こうした燃料噴射弁にあっては上述のように、制御弁12が閉弁しているときは、ニードル背圧室13内は高圧になっており、燃料リーク室9内は低圧になっている。そのため、リフタ41が制御弁12を圧下してこれを押し開いた瞬間、ニードル背圧室13に連通した制御弁室(高圧室)11の高圧燃料が噴流となって燃料リーク室(低圧室)9に流入する。図6は、先の図5におけるB部の拡大図として、このような高圧燃料の噴流、すなわち高圧噴流の動きを模式的に示したものである。この図6に示されるように、制御弁12が開弁すると、制御弁室11内の高圧燃料は噴流となって燃料リーク室9内に流入し、リフタ41におけるピストン部42の底面44に衝突する。この底面44はリフタ41の移動方向に直交する形状となっており、また高圧噴流の方向はリフタ41の移動方向とほぼ同一方向となっている。そのため、制御弁12の開弁と同時に、このピストン部42の底面44に衝突した高圧噴流がリフタ41の変位に対する反力として作用し、同リフタ41を押し上げるようになる。すなわち制御弁12を閉弁させてしまうようになる。そして、この制御弁12の閉弁により高圧噴流がなくなると、再び制御弁12はリフタ41に押されて開弁し、高圧噴流による上記圧力の作用も再び繰り返されるといった、いわゆるハンチングが生じるようになる。このようなハンチングは、特に制御弁12の開弁直後に生じやすく、こうしてハンチングが生じてしまうと、上述した燃料噴射すら、これを正常に行うことができなくなってしまう。
【0010】
なお従来、例えば特開2001−295716号公報に記載の燃料噴射弁のように、すなわちその一部を図7に拡大して示すように、上記リフタ41'の底面をテーパ状としたものも提案されてはいる。しかしこの場合であれ、上記高圧噴流による反力f1(f1<F)を小さくすることはできても、その影響を完全に吸収することはできず、テーパ角に応じた分力f1は、やはりリフタ41'を押し上げる力として作用してしまう。
【0011】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上述した制御弁の開弁に起因するハンチングをより的確に防止することのできる筒内噴射用燃料噴射弁を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、燃料供給通路に接続され該通路を介して高圧燃料が導入される高圧室と、燃料排出通路に接続された低圧室と、これら高圧室と低圧室との間を連通する連通路と、前記高圧室内に前記連通路を常閉する態様で設けられた制御弁と、該制御弁が閉弁状態にあるときの圧力バランスに基づいて燃料の噴射孔を閉弁状態に維持するニードル弁と、アクチュエータの駆動に基づき前記低圧室側から前記連通路を介して前記制御弁を圧下することにより該制御弁を開弁させるリフタとを備え、前記リフタにより前記制御弁を開弁させたときの前記連通路を介した前記高圧室と前記低圧室との圧力バランスの遷移に基づいて前記ニードル弁を開弁させる筒内噴射用燃料噴射弁において、前記連通路の側壁面と前記リフタにおける前記側壁面との対向面との間に形成される流路と、前記低圧室によって形成される流路とからなる高圧燃料の流路の断面積を、該高圧燃料の流路の上流側の端部から下流側の端部へ向かうにつれて次第に拡大せしめる減衰機構を設けたことをその要旨とする。
【0013】
上記構成では、筒内噴射用燃料噴射弁内に設けられた高圧室と低圧室との連通を開閉する高圧室内の制御弁が低圧室内のリフタに圧下されて開弁され、高圧室と低圧室との圧力バランスが遷移されることにより同燃料噴射弁から燃料が噴射される。そして、この制御弁の開弁直後は、高圧室から低圧室に高圧燃料が前述した噴流として流入するが、同構成によれば、高圧室から低圧室に流入する高圧燃料は確実に拡散されるとともに、その流速も低下される。すなわち、同構成によれば、高圧室から低圧室への高圧燃料の流入速度が上記減衰機構により減衰されて、低圧室側のリフタに衝突する高圧噴流の勢いが低下させられるようになる。これにより、リフタに圧下される制御弁を確実に開弁させることができ、もって制御弁の開弁に起因するハンチングをより的確に防止することができるようになる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筒内噴射用燃料噴射弁において、前記減衰機構が、前記リフタの前記連通路の側壁面との対向面にあって、同リフタの外周縁から前記連通路の中心に向けて所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状の面、及び前記連通路の側壁面の前記制御弁に対向する側から同側壁面の前記リフタに対向する側に向けて所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状を備えることをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、高圧室から流入する高圧噴流の向きは、リフタのこうした形状に沿って、その移動方向から外側に連続的に少しずつ変化するようになる。このため、高圧燃料がリフタに作用する圧力は特定の箇所、特定の方向に集中することなく分散され、同圧力がリフタに及ぼす力(反力)も結局は減衰されるようになる。すなわち、リフタに作用する圧力が連続的に減衰されることにより、リフタの変位に対する反力についてもこれを無視できる程度に小さくすることができるようになる。
ここで、前述したようにリフタにテーパ面を設けることによっても、高圧燃料からリフタに作用する圧力を小さくすることはできるが、この場合にはリフタに衝突する高圧噴流の向きが急激に変化するため、前記圧力を十分に小さくすることはできない。すなわち、リフタの変位に対する反力を十分に緩和することはできない。この点、上記請求項2に記載の構成では、こうしたリフタの変位に対する反力を十分に小さくすることができるため、リフタに圧下される制御弁を確実に開弁させることができ、もって制御弁の開弁に起因するハンチングをより的確に防止することができるようになる。
【0017】
ちなみに、前記従来の、リフタにテーパを設けたものにあっても、そのテーパ角を小さくすることができれば、リフタの変位に対する反力を影響のない程度に小さくすることはできるが、これではリフタが大型化(長尺化)し、ひいては燃料噴射弁そのものの大型化を招いてしまう。
【0018】
また一方、先の図5に例示した燃料噴射弁において、リフタに作用する高圧噴流の反力を低下させるには、例えば、リフタの下方端に形成される突き押し部をその軸方向に長くして、高圧噴流がリフタのピストン部底面に衝突するまでの距離を長くすることも考えられる。しかし、こうした燃料噴射弁にあっては、例えば分割噴射等の精密な噴射制御を行うためにPZTアクチュエータの微少な変位量に基づく駆動が行われる場合がある。そして、この微少な変位量を確実に制御弁へ伝達するためには、リフタの上記突き押し部にも自ずと高い剛性が要求される。すなわち、該突き押し部の長さを確保するためにその剛性が低下するようなことがあると、当該燃料噴射弁に要求される燃料噴射精度をも低下させかねない。
【0019】
この点、上記請求項2に記載の構成では、前記減衰機構が所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状の面を備えるリフタとなっているため、高圧燃料からリフタに作用する圧力を連続的に減衰させながらも、リフタ全体が大型化することはなく、また、リフタとしての剛性が低下することもない。従って、燃料噴射弁の大型化や燃料噴射精度の低下を招くことなく、制御弁の開弁に起因するハンチングを防止することができるようにもなる。
【0021】
さらに、上記構成によれば、高圧室から低圧室に流入する高圧噴流は上記連通路を通じて拡散されるため、その流速は減衰され、同高圧噴流の勢いを低下させることができる。このため、確実に高圧燃料からリフタに作用する圧力を減衰させることができる。なおここで、高圧噴流を急激に拡散させると乱流等が発生しやすく、同高圧噴流を拡散させても部分的に流速の速い噴流が発生するおそれがある。この点、上記請求項2に記載の構成では、前記連通路を所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状としているため、高圧噴流は徐々に拡散されるようになる。従って、乱流等の発生が抑制され、高圧噴流の拡散による同噴流の流速も好適に低下させることができるようになる。以上のような構成により、制御弁の開弁に起因するハンチングを防止することができるようになる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筒内噴射用燃料噴射弁において、前記リフタにおける前記略円錐形状の面の所定の曲率は、前記連通路の側壁面における連続的に拡径された通路形状の所定の曲率よりも小さいことをその要旨とする。
同構成によれば、高圧燃料の流路の断面積を高圧室側から低圧室側へ向かうにつれて次第に拡大せしめることができる。
【0027】
同構成によれば、連通路としての通路形状のみを通じて上記減衰機構を容易に実現することができるようになる。また、この連通路が所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状とされることで、高圧燃料の乱流等も好適に抑制されるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる筒内噴射用燃料噴射弁を蓄圧式燃料噴射装置を備えるディーゼルエンジンの燃料噴射弁に具体化した第1の実施形態を図1、図2に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態にかかる燃料噴射弁の概略構造を示す図であり、先の図5と同一の構成要素には同一符号を付している。また、本実施の形態にかかる燃料噴射弁と先の図5に示した従来の燃料噴射弁とは、リフタ21、特にその突き押し部22の形状が異なる以外は基本的に同様の構造である。そこで以下では、リフタ21の形状等を中心に説明する。
【0030】
図2は、図1におけるA部の拡大図を示している。
この図2に示されるように、リフタ21には、ボディ2内に形成されるシリンダ部2bを摺動するピストン部42、及び制御弁12を図中下方に変位させる突き押し部22が形成されている。そして本実施の形態にあって、この突き押し部22の、制御弁室11と燃料リーク室9とを連通する連通路45との対向面は、リフタ21の外周縁から連通路45の中心に向けて所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状の面となっている。すなわちこの突き押し部22は、制御弁12の開弁直後に高圧燃料からリフタ21に作用する反力を連続的に減衰させる減衰機構を構成している。以下、この減衰機構による反力減衰作用について、同図2の参照のもとに詳述する。
【0031】
いま、制御弁12が図2に示されるように開弁されたとすると、その開弁直後に制御弁室11から燃料リーク室9に流入する高圧噴流(高圧燃料の噴流)は、突き押し部22の上記曲面形状に沿って流れ、その向きはリフタ21の移動方向から外側に連続的に変化するようになる。すなわち、高圧噴流が突き押し部22に衝突する際に生じる圧力は特定の箇所、特定の方向に集中することなく分散され、それら分散された分力がリフタ21を押し戻そうと作用する力(反力)も自ずと減衰されるようになる。本実施の形態では、このように、リフタ21の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力を大幅に減衰させることができる。このため、同リフタ21によって制御弁12が圧下されている期間は、同制御弁12の開弁状態を確実に維持することができ、もって制御弁12の開弁に起因する前述したハンチングの発生を的確に防止することができるようになる。
【0032】
なお、先の図7に示したように、テーパ角を備えるリフタ41'を用いることによっても、高圧燃料がリフタ41'に作用する圧力を減少させることはできる。しかしこの場合には、リフタ41'に衝突する高圧噴流の向きが急激に変化する。このため前述のように、圧力f1の発生が避けきれず、結局は、こうした高圧噴流の影響を完全に吸収することはできない。もっとも、この場合であれ、上記リフタ41'のテーパ角を小さくすることができれば、リフタ41'の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力の影響を無視できる程度に小さくすることはできる。しかしこれでは、リフタ41'が大型化(長尺化)し、ひいては燃料噴射弁そのものの大型化を招いてしまう。この点、本実施の形態の上記リフタ構造によれば、このような燃料噴射弁としての大型化を招くこともない。
【0033】
また一方、リフタに作用する高圧噴流による反力を低下させるという意味では、例えば先の図5に示した燃料噴射弁においても、そのリフタ41に形成される突き押し部43の軸方向の長さを長くして、高圧噴流がリフタ41におけるピストン部42の底面44に衝突するまでの距離を長くすることが考えられる。しかし、こうした燃料噴射弁にあっては、例えば分割噴射等の精密な噴射制御を行うためにPZTアクチュエータ3の微少な変位量に基づく駆動が行われる場合がある。そして、この微少な変位量を確実に制御弁12へ伝達するためには、リフタ41の上記突き押し部43にも自ずと高い剛性が要求される。すなわち、該突き押し部43の長さを確保するためにその剛性が低下するようなことがあると、当該燃料噴射弁に要求される燃料噴射精度をも低下させかねない。この点、本実施の形態の上記リフタ構造によれば、このような燃料噴射精度の低下を招く懸念もない。
【0034】
以上説明したように、第1の実施形態にかかる筒内噴射用燃料噴射弁によれば、次のような効果が得られる。
(1)制御弁12の開弁直後に制御弁室11から燃料リーク室9に流入する高圧噴流は、突き押し部22の曲面形状に沿って流れ、その向きはリフタ21の移動方向から外側に連続的に変化するようになる。そのため、リフタ21の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力は大幅に減衰され、制御弁12の開弁に起因するハンチングの発生を的確に防止することができるようになる。
【0035】
(2)リフタ21の突き押し部22は所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状となっている。このため、リフタ21の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力を連続的に減衰させながらも、突き押し部の長尺化を招くことがなく、ひいては燃料噴射弁の大型化を招くこともない。
【0036】
(3)また、突き押し部を長尺化することなく、リフタ21の変位に対する高圧噴流の反力を減衰させることができるため、同突き押し部の剛性も確保される。そのため、燃料噴射弁に要求される燃料噴射精度の低下を招く懸念もない。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、この発明にかかる筒内噴射用燃料噴射弁を蓄圧式燃料噴射装置を備えるディーゼルエンジンの燃料噴射弁に具体化した第2の実施形態を図3に基づいて詳細に説明する。
【0038】
本実施の形態にかかる燃料噴射弁と先の図5に示した従来の燃料噴射弁とは、連通路30の形状が異なる以外は基本的に同様の構造である。そこで、以下では、連通路30の形状等を中心に説明する。
【0039】
図3は、先の図5に示した燃料噴射弁に本実施の形態にかかる連通路30を適用したときのB部の拡大図を示している。
この図3に示されるように、連通路30は、制御弁12に対向する側からリフタ41に対向する側に向けて、換言すれば、制御弁室11から燃料リーク室9に向けて、所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状を有している。すなわちこの連通路30は、制御弁12の開弁直後に高圧燃料からリフタ41に作用する反力を連続的に減衰させる、より詳しくは制御弁12の開弁直後における制御弁室11から燃料リーク室9への高圧燃料の流入速度を減衰させる減衰機構を構成している。以下、この減衰機構による反力減衰作用について、同図3の参照のもとに詳述する。
【0040】
いま、制御弁12が図3に示されるように開弁されたとすると、その開弁直後に制御弁室11から燃料リーク室9に流入する高圧噴流(高圧燃料の噴流)は、上記連通路30を通過する際に拡散されてその流速が減衰され、同高圧噴流の勢い自体が低下させられる。そのため、リフタ41を押し戻そうと作用する力(反力)も自ずと減衰されるようになる。本実施の形態では、このように、リフタ41の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力を大幅に減衰させることができる。このため、同リフタ41によって制御弁12が圧下されている期間は、同制御弁12の開弁状態を確実に維持することができ、もって制御弁12の開弁に起因する前述したハンチングの発生を的確に防止することができるようになる。
【0041】
なお、高圧噴流を急激に拡散させると乱流等が発生しやすく、同高圧噴流を拡散させても部分的に流速の速い噴流が発生するおそれがある。この点、本実施の形態では、前記連通路30を所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状としているため、高圧噴流は徐々に拡散されるようになる。従って、乱流等の発生が抑制され、高圧噴流の拡散による同噴流の流速も好適に低下させることができるようになる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、制御弁室11と燃料リーク室9とを連通する連通路を上記通路形状とすることにより制御弁12の開弁に起因するハンチングを防止するようにしている。そのため、リフタについては従来と同様な構造のものでもよく、また、減衰機構自体も容易に形成することができるようになる。
【0043】
以上説明したように、第2の実施形態にかかる筒内噴射用燃料噴射弁によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)制御弁12の開弁直後に制御弁室11から燃料リーク室9に流入する高圧噴流は、上記連通路30を通過する際に拡散されてその流速が減衰され、同高圧噴流の勢い自体が低下させられる。そのため、リフタ41の変位に対して高圧噴流が及ぼす反力は大幅に減衰され、制御弁12の開弁に起因するハンチングの発生を的確に防止することができるようになる。また、前記連通路30を所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状としているため、高圧噴流の乱流等も抑制され、高圧噴流の拡散による同噴流の流速も好適に低下させることができるようになる。
【0044】
(2)リフタについては従来と同様な構造のものでもよいため、燃料噴射弁の大型化や燃料噴射精度の低下を招くことなく、制御弁12の開弁に起因するハンチングを防止することができるようになる。
【0045】
(3)連通路の通路形状を上記形状とすることのみで、制御弁12の開弁に起因するハンチングを防止することができるため、減衰機構自体も容易に形成することができるようになる。
【0046】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・前記第1の実施形態と前記第2の実施形態とを組み合わせて、突き押し部22を有するリフタ21と連通路30とを共に備える構成としてもよい。なお、この場合には、図4に示すように、リフタ21の突き押し部22と連通路30の側壁面との間に形成される流路と、燃料リーク室9によって形成される流路とからなる高圧燃料の流路の断面積が、該高圧燃料の流路の上流側の端部から下流側の端部に向かうにつれて次第に拡大されるように、突き押し部22と連通路30とでその互いの曲率を設定する。すなわち、例えば図4に示すように、突き押し部22の曲率を連通路30の側壁面の曲率より小さく設定する。こうすることで、制御弁室11から燃料リーク室9に流入する高圧燃料は確実に拡散されるとともに、その流速も低下され、前記第1の実施形態及び第2の実施形態にも増して、前記ハンチングのより的確な防止が図られるようになる。
【0047】
・前記第1の実施形態では、突き押し部22の形状を、リフタ21の外周縁から連通路45の中心に向けて所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状としたが、減衰機構の構造としてこのような形状に限定されるものではない。要は、制御弁の開弁直後における制御弁室から燃料リーク室への高圧燃料の圧力移入に際してこの高圧燃料がリフタに作用する圧力を連続的に減衰させることができる機構であればよい。
【0048】
・また、前記第2の実施形態では、連通路30の通路形状を、制御弁12に対向する側からリフタ41に対向する側に向けて所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状としたが、これも減衰機構の構造としてこのような形状に限定されるものではない。要は、制御弁の開弁直後における制御弁室から燃料リーク室への高圧燃料の圧力移入に際してこの高圧燃料がリフタに作用する圧力を連続的に減衰させることができる、或いは制御弁の開弁直後における制御弁室から燃料リーク室への高圧燃料の流入速度を減衰させることができる機構であればよい。
【0049】
・前記各実施形態においては、本発明にかかる燃料噴射弁を、蓄圧式燃料噴射装置を備えるディーゼルエンジンの燃料噴射弁に適用する場合について例示したが、同等のメカニズムのもとに燃料の噴射、停止が制御される筒内噴射用の燃料噴射弁であれば、その用途等にかかわらず、本発明の適用は可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる筒内噴射用燃料噴射弁の第1の実施形態についてその全体構造を示す部分断面図。
【図2】図1におけるA部を拡大して示す部分断面図。
【図3】本発明にかかる筒内噴射用燃料噴射弁の第2の実施形態についてその要部を拡大して示す部分断面図。
【図4】上記各実施形態の変形例として図1におけるA部に対応した部分拡大構造を示す部分断面図。
【図5】従来の筒内噴射用燃料噴射弁の一例についてその全体構造を示す部分断面図。
【図6】図5におけるB部を拡大して示す部分断面図。
【図7】従来の筒内噴射用燃料噴射弁の他の例について図5におけるB部に対応した部分拡大構造を示す部分断面図。
【符号の説明】
2…ボディ、2a、2b…シリンダ部、3…PZTアクチュエータ、5…PZTピストン、7…圧力室、9…燃料リーク室、10…燃料排出通路、11…制御弁室、12…制御弁、13…ニードル背圧室、14…ニードル弁、14a…ピストン部、14b…ニードル部、15…ニードルスプリング、16…制御弁スプリング、17…噴射孔、18…燃料供給通路、20…受圧面、21…リフタ、22…突き押し部、30…連通路、41、41'…リフタ、42…ピストン部、43…突き押し部、44…底面、45…連通路。
Claims (3)
- 燃料供給通路に接続され該通路を介して高圧燃料が導入される高圧室と、燃料排出通路に接続された低圧室と、これら高圧室と低圧室との間を連通する連通路と、前記高圧室内に前記連通路を常閉する態様で設けられた制御弁と、該制御弁が閉弁状態にあるときの圧力バランスに基づいて燃料の噴射孔を閉弁状態に維持するニードル弁と、アクチュエータの駆動に基づき前記低圧室側から前記連通路を介して前記制御弁を圧下することにより該制御弁を開弁させるリフタとを備え、前記リフタにより前記制御弁を開弁させたときの前記連通路を介した前記高圧室と前記低圧室との圧力バランスの遷移に基づいて前記ニードル弁を開弁させる筒内噴射用燃料噴射弁において、
前記連通路の側壁面と前記リフタにおける前記側壁面との対向面との間に形成される流路と、前記低圧室によって形成される流路とからなる高圧燃料の流路の断面積を、該高圧燃料の流路の上流側の端部から下流側の端部へ向かうにつれて次第に拡大せしめる減衰機構を設けた
ことを特徴とする筒内噴射用燃料噴射弁。 - 前記減衰機構が、前記リフタの前記連通路の側壁面との対向面にあって、同リフタの外周縁から前記連通路の中心に向けて所定の曲率を持って連続的に絞りが施された略円錐形状の面、及び前記連通路の側壁面の前記制御弁に対向する側から同側壁面の前記リフタに対向する側に向けて所定の曲率を持って連続的に拡径された通路形状を備える
請求項1に記載の筒内噴射用燃料噴射弁。 - 前記リフタにおける前記略円錐形状の面の所定の曲率は、前記連通路の側壁面における連続的に拡径された通路形状の所定の曲率よりも小さい
請求項2に記載の筒内噴射用燃料噴射弁。
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