JP3915441B2 - 地下通水装置および地下通水方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下通水装置および地下通水方法に関し、特に、止水性の地中壁を構築した後に、地下水の流下を可能にする地下通水装置および地下通水方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、地下構造物、例えば、地下鉄や車両専用道路用などの地下トンネルを開削工法で構築する際には、地山の崩壊を防止して、内部の掘削を可能にするために止水性を備えた地中壁が構築される。
【0003】
この種の地中壁を構築する工法は、地中連続壁工法を始めとして、各種各様の方法が提供されているが、地中連続壁工法や柱列壁工法などで構築される地中壁は、地下構造物の本体部を構築した後にも地中に残置される場合がある。
【0004】
ところで、止水性を備えた地中壁を地中に残置しておくと、地下水流を遮断することになり、地中壁の上流側で地下水位が上昇し、下流側では、地下水位が低下するいわゆるダムアップ現象が生じる。
【0005】
そこで、従来は、このようなダムアップ現象を解消するために、地中壁の形成後に、地中壁で遮断された地下水流を連通させる通水路を有する通水装置を設けていた。
【0006】
このような地下通水装置では、地中壁の構築工事中には、地山側から掘削側に地下水が流下しないように遮断する必要があるので、通常、通水路に止水用の開閉バルブを設置していた。
【0007】
このような開閉バルブは、地中壁を構築する際に、箱抜き構造を設けて、その内部に閉止状態で設置されていて、内部を掘削した際に、この部分をはつり出して、その操作を可能にし、埋め戻す際に、開閉バルブを開いて、通水路を開放させることで通水性を確保していた。
【0008】
しかしながら、このような構造の従来の地下通水装置および地下通水方法には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、上述した従来の地下通水装置では、開閉バルブを収納する箱抜き構造を設けることになるが、このような箱抜き構造は、地中壁の深い位置に設置されるので、打設コンクリートの重圧などにより破壊しないような堅牢な構造にする必要があり、また、このような箱抜き構造を地中壁の内部に設けると、地中壁の断面欠損が発生し、所定の耐力を得るためには、主筋や配力筋の設計変更が余儀なくされる。
【0010】
さらに、止水用の開閉バルブを操作可能にするためには、地中壁の壁面をはつり出して、箱抜き構造の一部を破断することになり、通水性を確保するために、時間と手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、箱抜き構造を排除することにより、配筋の設計変更をすることなく、経済的に通水性を確保することができる地下通水装置および地下通水方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路を形成する地中壁用の通水装置において、前記通水路は、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水管内に設置され、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁とを有し、前記逆止弁は、一端が前記通水管内に揺動自在に支持された弁体と、前記弁体の掘削側への回動を阻止する弁座とを備え、前記逆止弁は、掘削後に埋め戻す際に、前記掘削側から両端が開口した導水管を前記通水管内に挿入固定することにより、前記弁体を地山側に回動させて、前記通水管を開放させるようにした。
【0013】
このように構成した地下通水装置によれば、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁を、地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管の内部に設置して、地中壁の形成後に、地中壁で遮断された地下水流を連通させる通水路を形成するので、従来の通水装置のように箱抜き構造を必要としない。
【0014】
箱抜き構造が不要になると、地中壁の主筋や配力筋の設計変更をする必要がなくなる。
【0018】
上記構成によれば、比較的簡単な構造で逆止弁を構成することができ、また、比較的簡単な構成で、通水路の通水性を確保することができる。
【0019】
さらに、本発明は、止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路を形成する地中壁用の通水方法において、前記通水路は、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水管内に設置され、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁とを有し、前記地中壁の内方を掘削後に埋め戻す際に、前記通水管内に、前記掘削側から両端が開口した導水管を、前記通水管内に挿入固定することにより、前記逆止弁を開放させるようにした。
【0020】
このように構成した地下通水方法によれば、地中壁の内方を掘削後に埋め戻す際に、通水管内に、掘削側から両端が開口した導水管を、通水管内に挿入固定することにより、逆止弁を開放させて、通水を確保するので、内方を掘削した際に、通水管を容易に露出させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図3は、本発明にかかる地下通水装置および地下通水方法の一実施例を示している。
【0022】
同図に示した通水装置は、地盤12中に所定厚みの止水性を有する地中壁14の構築工法に適用した例であり、止水性地中壁14の構築により地下水流Wが遮断される。
【0023】
そこで、地中壁14の構築後に、地下水流W間を連通させる通水路16を形成することで、地中壁14の上流側での地下水位の上昇、および、下流側での地下水位が低下するいわゆるダムアップ現象を防止する。
【0024】
本実施例の地下通水装置10は、地中壁14の厚み方向をほぼ水平に貫通し、両端が地下水流Wの上流側と下流側にそれぞれ臨む通水路16を備えている。地中壁14は、本実施例の場合には、地中連続壁工法により構築され、地中に掘削溝18を掘削形成し、鉄筋籠20を建て込んだ後に、掘削溝18内に、コンクリート22を打設して形成される。
【0025】
通水路16は、地中壁14の地山側に配置される集水部24と、鋼管製などの中空円筒状の通水管26と、逆止弁28とを備えている。集水部24は、地中壁16の地山側に配置され、全体形状が概略平板状に形成されている。
【0026】
集水部24は、地中壁14側に配置されるケーシング24aと、フィルター層24bとを備えている。ケーシング24aは、地山側に配置される部分が開口した箱型のものであって、その内部にフィルター層24bが充填されている。
【0027】
この集水部24は、地盤12中の所定深度に、所定の幅で存在する地下水流Wを、フィルター層24bで固形分をろ過しながら水だけを通過させて、内部に取り入れる機能を備えている。
【0028】
通水管26は、両端が開口した管体であって、一端側が集水部24に連通接続され、他端側が、通水管26の他端に嵌着固定されたフランジ部27を介して、地中壁14の掘削側に臨むように、地中壁14内にほぼ水平を指向するように配置されている。
【0029】
なお、通水管26の掘削側の開口は、打設するコンクリート22の廻込みを防止するために、地中壁14を構築する際には、プレートなどにより閉塞されている。
【0030】
逆止弁28は、地中壁14の構築工事中には、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する機能を有するものであって、通水管26の内部に設置されている。
【0031】
本実施例の逆止弁28は、弁体28aと、弁座28bとを備えている。弁体28aは、通水管26の内径よりも若干小径の円板状に形成され、その上端側が通水管26の内面上部に、揺動自在に支持されている。
【0032】
弁座28bは、中央に円形貫通孔が設けられたリング状のものであって、弁体28aの下流側にあって、弁体28aの下流側(掘削側)への回動を阻止する機能を備えており、外周縁が、通水管26の内周面に固設されていて、この貫通孔は、弁体28aの直径よりも若干小径になっている。
【0033】
本実施例の場合には、逆止弁28は、通水管26の掘削側に近接配置されている。このように構成した逆止弁28では、地下水が集水部24を介して、通水管26の内部に取り込まれると、上端側が通水管26の内面上部に、揺動自在に支持されている弁体28aは、この水流圧を受けて、下流側、すなわち、掘削側に揺動して、その下面側が弁座28bに当接して、弁座28この貫通孔を閉塞し、これ以上地下水が流下することを阻止する。
【0034】
次に、上記構成の通水装置10を用いる通水方法について説明する。実施例の場合、通水装置10の逆止弁28は、予め通水管26内に設置し、集水部24が通水管26に連結固定される。
【0035】
このように予め加工された通水装置10は、通水管26を鉄筋籠20の所定の位置に係止して、掘削溝18内に建て込み、その後にコンクリート22が打設される。
【0036】
この場合、集水部24の地山側の表面には、例えば、生物分解性のシートを装着しておき、打設コンクリート22の集水部24側への廻込みを防止し、かつ、生物分解シートがバクテリアなどにより分解されると、集水部24のフィルター層24bが、地山側に露出するようにすることが望ましい。
【0037】
また、通水管26の掘削側の端部は、地中壁14の端縁に位置するように、鉄筋籠20に係止して建て込まれるが、通水管26の掘削側の開口は、例えば、フランジ部27にプレート材などを溶接することにより閉塞しておく。
【0038】
地中壁14を構築した後に、その内方を掘削する工事施工中は、図2に示すように、逆止弁28により、地下水が地山側から掘削側に流下することを阻止して、止水性を確保する。
【0039】
この場合、地中壁14の内方の掘削が進行して、通水管26が露出すると、通水管26の端部をはつり出し、フランジ部27での閉塞状態を解除しても、逆止弁28により止水性は確保される。
【0040】
そして、地中壁14の内方を掘削して、内部に構造物を構築した後に、これを埋め戻す際には、通水路16の開放が行われる。通水路16を開放して、地中壁14で遮断された地下水流を連通させた状態を図3に示している。
【0041】
通水路16を開放させる場合には、まず、通水管26内に、導水管30が挿入固定される。導水管30は、両端が開口した管本体30aと、この管本体30a外周に固設された接合フランジ30bとを備えている。
【0042】
管本体30aは、円筒状に形成されていて、通水管26の内径よりも小さく、逆止弁28の弁座28bから内部側に挿通可能な外径を有している。接合フランジ30bは、通水管26の端部に固設されたフランジ部27とほぼ同じ外径を有し、管本体30aの長手方向の中間位置に設けられている。
【0043】
このように構成された導水管30は、地中壁14の内方の掘削側から通水管26の内部に、本体部30aが挿入される。逆止弁28の弁体28aは、通水管26の内部に揺動自在に支持されているので、導水管30の管本体30a通水管26内に押し込むと、その押し込み力を受けて、弁体28aは、弁座28bから離間して、地山側に回動する。
【0044】
弁体28aがこのように回動すると、弁座28bの貫通孔が開いて、その結果、通水管26の内部が開放され、地中壁14により遮断されていた地下水流が、集水部24と通水管26とを介して、上,下流間で連通される。
【0045】
このような逆止弁28の開放状態が得られると、相互に当接しているフランジ部27と接合フランド30bとを緊結すると、通水機能が確保される。
【0046】
さて、以上のように構成した地下通水装置10によれば、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁28を、地中壁14の厚み方向を貫通するように埋設される通水管26の内部に設置して、地中壁14の形成後に、地中壁で14遮断された地下水流を連通させる通水路16を形成するので、従来の通水装置のように箱抜き構造を必要としない。
【0047】
箱抜き構造が不要になると、地中壁14の主筋や配力筋の設計変更をする必要がなくなり、装置全体がコンパクトになるとともに、設計も迅速に行える。
【0048】
また、本実施例の場合には、逆止弁28は、一端が通水管26内に揺動自在に支持された弁体28aと、弁体28aの掘削側への回動を阻止する弁座28bとで構成しており、逆止弁28の構造も簡単になっている。
【0049】
さらに、本実施例の場合には、逆止弁28は、掘削後に埋め戻す際に、掘削側から両端が開口した導水管30を通水管26内に挿入固定することにより、弁体28aを地山側に回動させて、通水管26を開放させるので、較的簡単な構成で、通水路26の通水性を確保することができる。
【0050】
また、本実施例の地下通水方法によれば、地中壁14の内方を掘削後に埋め戻す際に、通水管26内に、掘削側から両端が開口した導水管30を、通水管26内に挿入固定することにより、逆止弁28を開放させて、通水を確保するので、内方を掘削した際に、通水管26を容易に露出させることができ、施工能率も向上し、経済的に通水性を確保できる。
【0051】
なお、上記実施例では、通水路16の地山側に、ケーシング24aとフィルター層24bとで構成した集水部24を設けたものを例示したが、集水部24の構成は、実施例の構成に限定されることはなく、例えば、通水管26の内部に、砕石などを充填してフィルター機能を持たせたものであってもよい。
【0052】
この場合、通水管26の地山側の開口は、例えば、生物分解性や温水分解性のシートで閉塞しておき、コンクリート22の内部への侵入を阻止することが望ましい。
【0053】
【発明の効果】
以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかる地下通水装置および地下通水方法によれば、箱抜き構造を排除することにより、配筋の設計変更をすることなく、経済的に通水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる地下通水装置および地下通水方法の一実施例を示す全体構成の断面説明図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1に示した地下通水装置で、通水性を確保する際の説明図である。
【符号の説明】
10 通水装置
12 地盤
14 地中壁
16 通水路
18 掘削溝
20 鉄筋籠
22 コンクリート
24 集水部
26 通水管
28 逆止弁
30 導水管
Claims (2)
- 止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路を形成する地中壁用の通水装置において、
前記通水路は、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水管内に設置され、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁とを有し、
前記逆止弁は、一端が前記通水管内に揺動自在に支持された弁体と、前記弁体の掘削側への回動を阻止する弁座とを備え、
前記逆止弁は、掘削後に埋め戻す際に、前記掘削側から両端が開口した導水管を前記通水管内に挿入固定することにより、前記弁体を地山側に回動させて、前記通水管を開放させることを特徴とする地下通水装置。 - 止水性地中壁が地中の地下水流を遮断するように形成され、前記地中壁の形成後に、前記地中壁で遮断された前記地下水流を連通させる通水路を形成する地中壁用の通水方法において、
前記通水路は、前記地中壁の厚み方向を貫通するように埋設される通水管と、前記通水管内に設置され、地下水が地山側から掘削側に流下するのを阻止する逆止弁とを有し、
前記地中壁の内方を掘削後に埋め戻す際に、前記通水管内に、前記掘削側から両端が開口した導水管を、前記通水管内に挿入固定することにより、前記逆止弁を開放させることを特徴とする地下通水方法。
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