JP3909455B2 - ポーラスプラグの成形方法、ポーラスプラグの成形装置、ポーラスプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポーラスプラグの成形方法、ポーラスプラグの成形装置、ポーラスプラグに関する。ポーラスプラグは、取鍋の壁体に埋設され取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むものである。
【0002】
【従来の技術】
ポーラスプラグは、取鍋の壁体に埋設されて使用され、取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むものであり、一般的には気体を透過できるように多孔質構造とされている。従来より、図7に示すように、縦軸形の成形キャビティ510を有する成形型500を用い、成形キャビティ510の縦軸形の中心軸線P10に沿って加圧体600を降下させることにより、成形キャビティ510内の成形材料700を加圧し、これによりポーラスプラグ600を縦軸形に成形することにしていた。このポーラスプラグ600では、これの中心軸線に沿った方向における一端部、他端部、中間部とを比較したとき、一端部の気孔率と他端部の気孔率とは同じ程度であるものの、一端部の気孔率と中間部の気孔率とはかなり相違する傾向がある。同様に、中心軸線に沿った方向における一端部のかさ比重と他端部のかさ比重とは同じ程度であるものの、一端部のかさ比重と中間部のかさ比重とはかなり相違する傾向がある。このためポーラスプラグ600の軸長方向では均質性が充分ではなく、ポーラスプラグ600のガス透過性能を十分に発揮するには限界があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、軸長方向における均質性を高めてガス透過性能を発揮するのに有利なポーラスプラグを製造するポーラスプラグの成形方法、ポーラスプラグの成形装置、ポーラスプラグを提供することを解決すべき課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るポーラスプラグの成形方法は、取鍋の壁体に埋設され取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むポーラスプラグを成形する方法であって、
中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の円錐筒形状の成形キャビティを区画すると共に横軸形のポーラスプラグの下半分を成形する円弧面で規定された成形下型面を有する下型と、中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の前記成形キャビティを区画すると共に横軸形の前記ポーラスプラグの上半分を成形する円弧面で規定された成形上型面を有する上型とを備えていると共に、型閉じ時に互いに離間している加圧用の平坦面を成形下型面および成形上型面の端側に有する成形装置を用い、
成形装置の成形キャビティ内に成形材料を収容した状態で、成形キャビティの中心軸線に対して軸直角方向に沿って成形キャビティ内の成形材料を上型の成形上型面および下型の成形下型面により加圧することにより、加圧用の平坦面により成形され横断面において互いに背向する位置に径外方向に突き出る耳部を備える円錐台形状の周壁面をもつポーラスプラグを横軸形で成形するものである。本発明に係る成形方法によれば、成形キャビティの中心軸線が横方向に沿うように横軸形に成形装置は設けられており、成形キャビティの中心軸線に対して軸直角方向に沿って成形キャビティ内の成形材料を上型の成形上型面および下型の成形下型面により加圧することにより、ポーラスプラグを横軸形で成形する。
【0005】
本発明に係るポーラスプラグの成形装置は、取鍋の壁体に埋設され取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むポーラスプラグを成形する成形装置であって、
中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の成形キャビティを区画すると共に横軸形のポーラスプラグの下半分を成形する円弧面で規定された成形下型面を有する下型と、中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の成形キャビティを区画すると共に横軸形のポーラスプラグの上半分を成形する円弧面で規定された成形上型面を有する上型とを備えており、
下型の成形下型面および上型の成形上型面の端側は、型閉じ時に互いに離間している耳部形成のための加圧用の平坦面を有することを特徴とするものである。
【0006】
本発明に係る成形方法で成形されたポーラスプラグ、本発明に係る成形装置で成形されたポーラスプラグによれば、ポーラスプラグの中心軸線に沿った方向の一端部、他端部、中間部を比較したとき、一端部の気孔率と中間部の気孔率と他端部の気孔率とを近似させることができる。かさ比重についても同様である。これによりポーラスプラグの軸長方向における均質性を高めて良好なガス透過性能を発揮するのに有利となる。
【0007】
本発明に係るポーラスプラグは、中心軸線に対して軸直角方向に沿って成形材料を加圧することにより成形されており、横断面において互いに背向する位置に径外方向に突き出る耳部を備える円錐台形状の周壁面をもつことを特徴とするものである。これによりポーラスプラグの軸長方向における均質性を高めてガス透過性能を発揮するのに有利となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1〜図3を参照しつつ説明する。図1(A)〜(C)は目標とするポーラスプラグ6の形状を模式的に示す。ポーラスプラグ6はガスを透過できるように多孔質性を有しており、中心軸線P2を有する円錐台形状の周壁面6aと、軸長方向の一方に設けられた大径側の平坦な軸端面6bと、軸長方向の他方に設けられた小径側の平坦な軸端面6cとをもつ。軸端面6cの外径は軸端面6bの外径よりも小さい。図2に示すように、成形装置1は、上記したポーラスプラグ6を横軸形で成形するものであり、下型2及び上型3と、下型2及び上型3を外側から保持するライナ4とを有する。下型2及び上型3は、中心軸線P1が横方向に沿って配向された横軸形の円錐筒形状をなす成形キャビティ5を有する。下型2は、横軸形で成形されるポーラスプラグ6の下部を成形する成形下型面2xを有する。加圧体として機能できる上型3は、横軸形で成形されるポーラスプラグ6の上部を成形する成形上型面3xを有する。型閉じ状態では、図2に示すように、成形下型面2x及び成形上型面3xは、成形キャビティ5の中心軸線P1をほぼ中心とする円弧面で形成されている。換言すれば、成形装置1は、成形キャビティ5の中心軸線P1の回りで円形状に沿った円弧面で規定された型面をもつ。前記したようにポーラスプラグ6の周壁面6aは円錐台形状であるため、型閉じ状態の成形下型面2x及び成形上型面3xは、円錐台形状の成形空間を形成する。図2に示すように下型2は成形下型面2xの端側に連設され成形キャビティ5の径方向の端側に位置する加圧用の平坦面2cをもつ。上型3は、成形上型面3xの端側に連設され成形キャビティ5の径方向の端側に位置する加圧用の平坦面3cをもつ。平坦面3cと平坦面2cとは互いに対向している。型締め状態において平坦面3cと平坦面2cとは高さ方向において互いに離間しており、図2に示すように平坦面3cと平坦面2cとの間の距離(高さ寸法)はKとして規定されている。この構造により上型3の横端部及び下型2の横端部において鋭角型部分の発生が抑えられ、上型3及び下型2の保護性が高められて耐久性が高まる。ポーラスプラグ6の大径側の軸端面6bの径が140ミリメートルのときには、Kは例えば3〜20ミリメートルにした方が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0009】
成形の際には、粉粒状のアルミナ系を主要成分とすると共に無機バインダ(例えばリン酸系バインダ)を含む成形材料を用いる。この成形材料を成形装置1の成形キャビティ5内に収容した状態で、成形キャビティ5の中心軸線P1に対して軸直角方向に沿ってつまり矢印Y方向に沿って上型3を降下させることにより、成形キャビティ5内の成形材料を上型3及び下型2により加圧する。これによりポーラスプラグ6をこれの中心軸芯P2が横方向に沿うように横軸形に成形する。成形直後のポーラスプラグ6は径方向の端側において互いに背向する位置に一対の耳部60を有する。耳部60は径外方向に突出しており、平坦面3cと平坦面2cとにより形成される。耳部60は成形後に研削等により除去しても良いし、取鍋の壁部内にポーラスプラグ6を設置する際に位置決め突部として使用しても良い。なお、ポーラスプラグ6は成形後には焼成することが好ましい。
【0010】
本実施形態によれば、ポーラスプラグ6の中心軸線P2に沿った方向の一端部61、他端部62、中間部63を比較したとき、気孔率やかさ比重などの物性値については、従来技術に比較して、一端部61と中間部63と他端部62とをそれぞれ近似させることができる。これによりポーラスプラグ6の軸長方向における気孔率やかさ比重等の物性値の均質性を高めることができ、ポーラスプラグ6のガス透過性能を良好に発揮するのに有利となる。
【0011】
また、上型3が平坦面3cを有する本実施形態では、平坦面3cに相当する型部分を鋭利なピン角形状にせずとも良く、上型3の耐久性の向上を図り得る。同様に下型2も平坦面2cを有するため、平坦面2cに相当する型部分を鋭利なピン角形状にせずとも良く、下型2の耐久性の向上を図り得る。このポーラスプラグ6は、図3に示すように、炭素鋼や合金鋼といった溶鋼等の溶湯200を保持する取鍋100の壁体110の内部に埋設されて使用される。埋設されている状態では、ポーラスプラグ6の小径側が上側に、大径側が下側に向くようにポーラスプラグ6が配置されている。ポーラスプラグ6はガス源150に流路150aを介して接続され、取鍋100の溶湯200内に気体(アルゴンガス、酸素、空気等)を吹き込み、攪拌処理等の溶湯処理を行うことができる。
【0012】
(試験例)上記したポーラスプラグの軸長方向における各部位1k〜4k(図6参照)の物性値について、軸長方向のばらつきを測定した。この試験例では、ポーラスプラグの大径側の径を100ミリメートル、小径側の径を60ミリメートル、全長Lを290ミリメートルとしたとき、大径側の部位1kと小径側の部位4kとの間の距離L1を240ミリメートル、部位2kと部位3kとの間の距離L2を80ミリメートルとした。更に、従来品として、縦軸とした中心軸線に沿って加圧することにより成形した縦軸形のポーラスプラグについても、同様に物性値を測定した。試験結果を図4及び図5に示す。図4の横軸はポーラスプラグの軸長方向における部位1k〜部位4kを示し、縦軸は気孔率を示す。図4の特性線に示すように、気孔率については、従来品では軸長方向におけるばらつきが大きかったが、発明品では軸長方向のばらつきがかなり低減されていた。即ち、図4に示すように、従来品ではポーラスプラグの端部である部位1k、4kの気孔率よりも、中間部である部位2k、3kの気孔率が高かったが、発明品ではポーラスプラグの端部である部位1k、4kの気孔率と、中間部である部位2k、3kの気孔率とはかなり近似していた。図4に示す試験結果によれば、ポーラスプラグの端部である部位4kの気孔率をAとし、中間部である部位2k、3kの気孔率をBとしたとき、発明品の場合には、(AとBとの差の絶対値)/A=(24.9−24.4)/24.9=0.5/24.9≒0.02となった。なお発明品では、中間部である部位2k、3kの気孔率Bとしては、部位2kの気孔率(24.3%)と部位3kの気孔率(24.5%)の平均値とし、24.4%を採用した。また従来品の場合には、(AとBとの差の絶対値)/A=(26.15−23.3)/23.3=2.85/23.3≒0.12である。なお従来品では、中間部である部位2k、3kの気孔率Bとしては、部位2kの気孔率(25.7%)と部位3kの気孔率(26.6%)の平均値とし、26.15%を採用した。
【0013】
図5の横軸はポーラスプラグの軸長方向における部位1k〜部位4kを示し、縦軸はかさ比重を示す。図5の特性線に示すように、かさ比重についても、従来品では軸長方向におけるばらつきが大きかったが、発明品では軸長方向におけるばらつきがかなり低減されていた。即ち、図5に示すように、従来品ではポーラスプラグの端部である部位1k、4kのかさ比重よりも、中間部である部位2k、3kのかさ比重が低かったが、発明品では一端部である部位1k、4kのかさ比重と、中間部である部位2k、3kのかさ比重とはかなり近似していた。
【0014】
ポーラスプラグの端部である部位4kのかさ比重をCとし、中間部である部位2k、3kのかさ比重をDとしたとき、本発明品では、(CとDとの差の絶対値)/C=(2.845−2.82)/2.82=0.025/2.82≒0.009である。発明品の場合には、中間部である部位2k、3kのかさ比重としては、部位2kのかさ比重(2.85)と部位3kのかさ比重(2.84)の平均値とし、2.845を採用した。また従来品の場合には、中間部である部位2k、3kのかさ比重Dとしては、部位2kのかさ比重(2.8)と部位3kのかさ比重(2.76)の平均値とし、2.78を採用した。従来品では、(CとDとの差の絶対値)/C=(2.87−2.78)/2.87=0.09/2.87≒0.03である。
【0015】
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、例えば成形材料はアルミナに限定されるものではなく他の耐火物でも良く、またバインダも上記したものに限定されるものではなく、更にポーラスプラグのサイズ、形状も上記したものに限定されるものではない等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。上記した実施形態に記載の語句は一部であっても各請求項に記載できるものである。
(付記)上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
・各請求項において、ポーラスプラグの端部の気孔率をAとし、中間部の気孔率をBとしたとき、(AとBとの差の絶対値)/Aの値は、0.08以下に設定されていることを特徴とするポーラスプラグの成形方法、ポーラスプラグの成形装置、ポーラスプラグ。
・各請求項において、ポーラスプラグの端部のかさ比重をCとし、中間部のかさ比重をDとしたとき、(CとDとの差の絶対値)/Cの値は、0.02以下に設定されていることを特徴とするポーラスプラグの成形方法、ポーラスプラグの成形装置、ポーラスプラグ。
・請求項2において、成形装置は横断面で、成形キャビティの中心軸線の回りで円形状に沿った円弧面で規定された型面をもつことを特徴とするポーラスプラグの成形装置。
・請求項3において、成形装置の上型及び下型は、型閉じ時に互いに離間している平坦面を型面の端側に有することを特徴とするポーラスプラグの成形装置。
・請求項3において、横断面において径外方向に突き出る耳部をもつことを特徴とするポーラスプラグ。成形装置の成形型の保護性が確保される。殊に上型及び下型の保護性が確保される。耳部は例えば一対にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は横軸形に配置したポーラスプラグの一方の端面図、(B)は横軸形に配置したポーラスプラグの側面図、(C)は横軸形に配置したポーラスプラグの他方の端面図である。
【図2】成形装置で成形している状態を示す断面図である。
【図3】ポーラスプラグを取鍋の壁体に埋設して使用している状態を示す断面図である。
【図4】ポーラスプラグの軸長方向の部位と気孔率との関係を示すグラフである。
【図5】ポーラスプラグの軸長方向の部位とかさ比重との関係を示すグラフである。
【図6】ポーラスプラグの測定部位を示す図である。
【図7】従来技術に係り、成形装置で成形している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
図中、1は成形装置、2は下型、3は上型、5は成形キャビティ、6はポーラスプラグ、100は取鍋を示す。
Claims (4)
- 取鍋の壁体に埋設され取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むポーラスプラグを成形する方法であって、
中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の円錐筒形状の成形キャビティを区画すると共に横軸形のポーラスプラグの下半分を成形する円弧面で規定された成形下型面を有する下型と、前記中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の前記成形キャビティを区画すると共に横軸形の前記ポーラスプラグの上半分を成形する円弧面で規定された成形上型面を有する上型とを備えていると共に、型閉じ時に互いに離間している耳部成形用の平坦面を前記成形下型面および前記成形上型面の端側に有する成形装置を用い、
前記成形装置の成形キャビティ内に成形材料を収容した状態で、成形キャビティの中心軸線に対して軸直角方向に沿って成形キャビティ内の成形材料を上型の成形上型面および下型の成形下型面により加圧することにより、耳部成形用の平坦面により成形され横断面において互いに背向する位置に径外方向に突き出る耳部を備える円錐台形状の周壁面をもつポーラスプラグを横軸形で成形するポーラスプラグの成形方法。 - 請求項1において、焼成されているポーラスプラグの成形方法。
- 取鍋の壁体に埋設され取鍋に保持されている溶湯内に気体を吹き込むポーラスプラグを成形する成形装置であって、
中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の成形キャビティを区画すると共に横軸形のポーラスプラグの下半分を成形する円弧面で規定された成形下型面を有する下型と、前記中心軸線が横方向に沿って配向された横軸形の前記成形キャビティを区画すると共に横軸形の前記ポーラスプラグの上半分を成形する円弧面で規定された成形上型面を有する上型とを備えており、
前記下型の前記成形下型面および前記上型の前記成形上型面の端側は、型閉じ時に互いに離間している耳部形成のための加圧用の平坦面を有することを特徴とするポーラスプラグの成形装置。 - 中心軸線に対して軸直角方向に沿って成形材料を加圧することにより成形されており、横断面において互いに背向する位置に径外方向に突き出る耳部を備える円錐台形状の周壁面をもつことを特徴とするポーラスプラグ。
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