JP3907450B2 - 高強度鍛造品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高価な成分をできるだけ使用することなく、安価な鋼を用いて高強度の鍛造部品の製造を可能にする新規な鍛造品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンロッド等のエンジン部品を含め、自動車部品は多数の部品が熱間鍛造により製造されている。この理由は、自動車部品には、クランクシャフト、コンロッド等、比較的サイズが大きいものが多く、冷間加工による製造では巨大なプレスが必要となり、実質的に製造が困難なことと、鍛造で可能な限り最終形状に近い製品を製造することにより、その後の機械加工による仕上げ加工が短時間ですみ、トータルコストでは他の方法に比べ圧倒的に安価なコストで製造が可能なためである。
【0003】
従来、これらの部品は炭素鋼、合金鋼等を熱間鍛造し、機械加工により所定形状に仕上げられた後、焼入焼もどし(調質)処理が施されて製造されていた。しかしながら、焼入焼もどしは多大なエネルギーを必要とし、熱処理コストが高価になる問題があり、その問題を解決するため、熱間鍛造後空冷するだけで必要とする強度が確保できる非調質鋼が多数開発され、実際に使用されるようになった。また、当然のごとくこの非調質鋼は、多数の特許が出願され、公開されている。今日、非調質鋼は非常に多くの種類の鋼種が開発され、かつ使用されるようになっている。そして、その種類によっても特徴に違いはあるが、基本的には炭素鋼にV、Mo、Cr等の合金元素を添加し、その添加元素の効果(析出強化、固溶強化等)を有効に利用することによって、鍛造後に空冷するだけで狙いとする特性が得られるように成分調整されたことを特徴とするものである。
【0004】
また、化学成分の調整によるのではなく、鍛造時の熱を利用して、鍛造後にすぐに焼入れるという方法で熱処理に必要なエネルギーを節約し、コストを低減するという鍛造焼入れと呼ばれる方法も一部で試みられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来技術には、以下の問題がある。
非調質鋼を用い鍛造のままで狙いとする強度を確保する方法は、それ以前に行われていた焼入焼もどしを行う方法に比べれば、熱処理コストを大幅に削減し、合金元素の添加による素材コストの上昇分を考慮しても、トータルコストを低減することができた。しかし、非調質鋼の使用が特別なものではなく普通に行われるようになった今日において、さらなるコストダウンを行うには、合金元素の使用をできるだけ抑えても高い強度の得られる鍛造品の製造方法の開発が必要と考えられてきた。
【0006】
また、鍛造焼入れによる方法は、鍛造工場内で大型の焼入れ設備が必要になるだけでなく、焼入後に割れが発生する場合があり、割れの発生した不良品をもれなくチェックしようとすると、さらに新たなチェック設備が必要となり、結果として期待したほどのコストダウン効果が得られないということがわかった。
【0007】
本発明は、以上説明した課題を解決するために成されたものであり、従来の非調質鋼を用いた場合に比べさらにコストダウン可能であって、かつ高い強度を確保できる新規な高強度鍛造品の製造方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、重量比にして、C:0.20〜0.55%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50〜1.50%、
S:0.1%以下(0を含む)、Cr:0.50%以下(0を含む)、Al:0.005〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を用い、1100〜1300℃に加熱保持後すぐに粗形状に鍛造するという粗加工工程と、その後600〜850℃の未再結晶温度域に冷却する一次冷却工程と、600〜850℃(Ar1点以下を除く)の温度で最終形状に鍛造する仕上げ加工工程と、仕上げ加工工程後速やかに冷却を開始し、加工の影響を残存させたまま再結晶させることなくフェライト・パーライト変態完了まで冷却させる二次冷却工程からなり、
上記粗加工工程においては、高強度を必要としない部位について概略最終形状までの加工を終了させるとともに高強度を必要とする部位についても粗加工を加え、上記仕上げ加工工程において高強度を必要とする部位に集中的に変形を加え所定形状を得ることを特徴とする高強度鍛造品の製造方法にある。
【0009】
本発明において注目すべきことは、鍛造による成形を従来のように所定温度に加熱後連続的に実施するのではなく、1100〜1300℃における粗加工工程と、600〜850℃の仕上げ加工工程の2段階に分けることである。
【0010】
コンロッド等のエンジン部品は、使用中には大きな繰返し応力が負荷されるが、その負荷応力は部品内で一様ではなく、必ず高い応力が負荷される部位とあまり高い応力が負荷されない部位が存在する。このうち、後者の部位については、従来のように焼入焼もどしを施したり、合金元素を添加する等の方法で強度を向上させなくても、安価な炭素鋼を普通に鍛造するだけで十分に必要な強度を確保することができる。従って、従来の高強度化のための方策は、このような部位に対しては完全な過剰品質の状態となっており、余分なコストをかけていたことになる。しかしながら、今日に到るまで、安価な鋼を鍛造のままで高強度を得る方法が確立されていなかったため、前記した方法が長期間実施され続けられていたのである。
【0011】
そして、本発明者等は、安価な鋼を用い鍛造のままで高強度化することができる鍛造条件について詳細に調査した結果、従来実施されている熱間鍛造温度に比べ著しく低い600〜850℃の温度領域(未再結晶温度領域)で加工すると、鍛造後冷却した後において加工の影響が残存し、かつ非常に微細なフェライト粒からなる組織となり、通常の鍛造方法に比べ大幅に強度を向上できることを見出したものである。
【0012】
しかしながら、従来から1200℃前後で加熱して行われていた加工工程のままでこの方法を選択すると、加工温度の低下に伴う変形抵抗の増加のため、加工に必要な力が大幅に増加し、従来使用していたプレスでは能力不足になり、プレス能力の増強を図らない限り加工が不可能となる可能性がある。そこで、高強度を必要としない部位を中心に1100〜1300℃の温度で粗加工を行って、ある程度最終形状に近い形状を得ておき、その後600〜850℃の未再結晶温度領域に冷却した後、強度が必要な部位を中心に仕上げ加工を行うという2段階の加工を施すことによって、プレス機を変更することなく所定形状への加工を可能にしたものである。すなわち、粗加工工程後の仕上げ加工工程である低温鍛造は、強度確保のために最低限必要な歪を付与するという考え方で鍛造工程を設計することによって、既存の鍛造プレスをそのまま利用することが可能であることを確認したものである。
【0013】
なお、本発明は強度が必要な部位について、全ての加工を仕上げ加工工程で行うことは意味していない。強度が必要な部位においても、仕上げ加工工程において強度向上に必要な歪が確保できれば良いので、ある程度粗加工工程で最終形状に近づけておくことにより仕上げ加工工程におけるプレスの負担を軽くすることは当然必要なことである。
【0014】
次に、請求項1の発明で使用する鋼の成分範囲及び鍛造条件限定理由について以下に説明する。
本発明の方法で使用する鋼のCの含有率の範囲を0.20〜0.55%としたのは、本発明の方法により必要な強度の確保を可能にするためである。Cの含有率が、0.20%未満では本発明の方法を施しても高い強度を得ることが困難となり、0.55%を超えると、鍛造後に微細なフェライト粒を得ることが難しくなり、降伏比が低下して高い降伏強度が得られなくなるためである。
【0015】
次に、粗加工工程における加熱温度を1100〜1300℃としたのは、1100℃未満では変形抵抗が増加し、大変形を伴う加工が難しくなるためであり、上限を1300℃としたのは、それ以下の温度で容易に大変形を与えることが可能なため、温度を上げすぎてもエネルギーが無駄になってコストが増加するだけとなるからである。
【0016】
粗加工工程で強度を必要としない部位を中心に塑性加工された後、600〜850℃の未再結晶温度域まで冷却される(一次冷却工程)。この冷却をする方法には様々な手段を適用することができるが、生産性が低下すると鍛造に必要なコストが増加してしまうので、生産性ができるだけ低下しない手段を選択することが必要である。具体的には、加工用の型とは別に冷却用の型を別に設け、その型の上で冷却するようにしたり、粗加工と仕上げ加工を異なるプレス機によって成形することとし、そのプレス間をコンベアで運ばれる間に所定の温度に冷却されるようにしても良い。
【0017】
一次冷却工程における冷却終了時の温度範囲を600〜850℃の範囲としたのは、この温度範囲での加工が鍛造部品の高強度化に最も適した温度であるからである。温度の下限を600℃としたのは、600℃未満になると変形抵抗が増加しすぎて所定形状に加工することが難しくなるためであり、逆に850℃を超える温度では、加工後に再結晶してしまうため、組織に加工の影響を残存させることが難しく、かつ得られるフェライト粒が粗大となり、強度向上効果が小さくなるためである。従来の非調質鋼と同等かそれ以上の強度を得ようとする場合には、800℃以下とするのが望ましい。
【0018】
一次冷却工程が終了後速やかに仕上げ加工が施される。仕上げ加工の温度を600〜850℃とした理由は、前記した一次冷却工程終了時の温度範囲限定理由と全く同じである。この仕上げ加工では、前記したように部品の中の高強度が必要とする部位を中心に加工が加えられることになる。安価な鋼で高強度を得るためには、この工程である程度大きな歪を与え、その影響を再結晶させることなく冷却後の組織に残存させる必要がある。具体的には相当塑性歪で0.8以上の歪を与えることが好ましい。歪量が小さいと加工の影響が十分に残存しないだけでなくフェライト粒が十分に微細化せず、大きな強度向上効果が得られないからである。
【0019】
仕上げ加工工程で鍛造品としての最終形状まで加工された後、速やかに冷却を開始し、加工後に再結晶させることなくフェライト・パーライト変態させ、微細なフェライト粒を有する組織を得る(二次冷却工程)。仕上げ加工工程で十分な歪が付与されていれば、この冷却終了後に微細なフェライト粒が容易に得られる。フェライト粒を微細とする程、硬度が増し、かつ高い降伏比が得られ強度を向上することができる。
【0020】
以上説明した通り、粗加工工程において、高強度を必要としない部位について概略最終形状までの加工を終了させるとともに高強度を必要とする部位についても粗加工を加え、仕上げ加工工程において高強度を必要とする部位に集中的に変形を加え所定形状を得るのが本発明の特徴である。
【0021】
すなわち、高強度が必要な部位については、粗形状まで、他の部位についてはできるだけ最終形状に近い形状までの加工を粗加工工程で行っておき、仕上げ工程で残された加工を行うこの方法を施すことにより、未再結晶温度領域での歪が高強度が必要な部位に集中して付与され、他の部位に比べ冷却後に微細なフェライト粒を有する組織を得ることができ、強度の向上を図ることができる。その結果、安価な鋼を使用しても必要な部位のみ高強度化できるので、要求される強度を確保できる鍛造品を得ることができる。
【0022】
次に、請求項2の発明は、仕上げ加工し、冷却が終了した後において、仕上げ加工工程で加工が集中的に加えられた部位の圧縮変形方向のフェライト粒の平均寸法を5μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の高強度鍛造品の製造方法である。
【0023】
未再結晶温度領域で加工を加え、再結晶させることなく速やかに冷却することにより、冷却終了後において、加工の影響が残存した未再結晶加工組織が得られる。仕上げ加工工程においてある程度大きな歪(目安として相当塑性歪で0.8以上)を付与することにより、微細なフェライト粒が得られるが、このフェライト粒の大きさを小さくする程、大きな強度向上効果を得ることができる。本発明の加工を施すと仕上げ加工工程において圧縮された方向にフェライト粒がつぶされ、その直角方向に伸ばされた組織が得られるが、本発明者等が詳細に調査した結果、このつぶされた方向のフェライト粒の平均寸法を5μm以下とすることによって、特に優れた強度向上効果が得られることを見出したものである。なお、フェライト粒は低い温度で鍛造するほど微細になるので、微細なフェライト粒を得るには鍛造温度を低くする必要がある。800℃以下の温度で鍛造するとかなりの確率で5μm以下のフェライト粒を得ることができる。
【0024】
また、以上説明した製造方法には、重量比にして、C:0.20〜0.55%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50〜1.50%、
S:0.1%以下(0を含む)、Cr:0.50%以下(0を含む)、Al:0.005〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を使用することができる。ここで示した成分範囲からなる鋼は、特に特別な成分ではなく、従来から普通に使用されている炭素鋼の一部又はその類似鋼にすぎないので、成分範囲の限定理由に特別説明すべき点はなく、ここでは特に説明しない。
【0025】
また、本発明の製造方法には、前記の成分に加え、さらにN:0.0080〜0.0200%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.10%の1種又は2種以上を含有した鋼を用いることもできる。
【0026】
このN、Ti、Nbを必要に応じてさらに含有させることにより、さらに高い強度を確保することを可能にするものである。
本発明は前記したように安価な鋼で高強度化できる鍛造方法の提供を目的とするものである。しかしながら、請求項で示す炭素鋼に本発明の方法を適用しても、特に高強度を必要とする部品に対応できない場合が生じる可能性がある。そこで、本発明者らは、極めて少量の添加で効果的に強度を向上させることのできる元素について検討した。その結果、N、Nb、Tiの3元素が極めて少量の添加で高強度化に寄与することを見出したものである。成分範囲限定理由について、以下に説明する。
【0027】
N:0.0080〜0.0250%
Nは、鋼中でAl、Nb等と結合して炭窒化物を形成し、ピンニング効果によってフェライト粒を微細化させ、強度向上に効果のある元素である。Nは溶製時に大気中から混入するので、特に添加するための行為を施さなくても大気溶解の場合には必ず不純物として少量含有している。しかしながら、前記効果を十分に得るためには、不可避的に含有されるNの量では不十分であり、最低でも0.0080%以上含有させる必要がある。しかしながら、多量に含有させても効果が飽和するとともに、製造上安定して添加できるNの量は限界があるので、上限を0.0250%とした。
【0028】
Nb:0.005〜0.10%
Nbは、鋼中でC、Nと結合してNb(C、N)からなる炭窒化物を形成し、AlNと共にピンニング効果によって、フェライト粒の微細化を図り、強度向上に効果のある元素である。そして、請求項で示した炭素鋼に対し、明確な強度向上効果を得るためには、最低でも0.005%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に含有させても効果が飽和するとともにコスト高となるので、上限を0.10%とした。
【0029】
Ti:0.005〜0.10%
TiもNbと同様に鋼中でC、Nと結合してTiC、TiN、Ti(C、N)等の炭窒化物を形成する。このうち、TiCは非常に硬い析出物であるため、析出強化により強度向上に効果がある。また、前記炭窒化物はNb(C、N)と同様に、ピンニング効果によりフェライト粒を微細化し、強度向上に効果がある。そして、請求項に示した炭素鋼に対し、明確な強度向上効果を得るためには、最低でも0.005%以上含有させることとした。しかしながら、多量に含有させても効果が飽和するとともにコスト高となって本発明の目的を達成できなくなるので、上限を0.10%とした。
【0030】
次に、本発明の作用について説明する。
本発明は、エンジン部品等の鍛造部品が、必ずしも全ての部位で高強度を必要としていないことに着目し、成されたものである。そして、本発明では、高強度化は期待できないが加工が容易な1100〜1300℃の温度領域で、高強度を必要としない部位を中心に加工を行う粗加工工程を行っておき、高強度化が期待できる600〜850℃の温度領域で高強度を必要とする部位に集中的に加工を施すことによって、必要な部位のみ高強度化した鍛造品の製造を可能にしたものである。その結果、必要な部位を集中的に高強度化することが可能となるので、高価な元素の添加による固溶強化や析出強化に頼ることなく必要な強度を確保した鍛造品が得られる。また、低温での鍛造は、強度を必要とする部位に可能な限り限定して実施され、他の加工は加工が容易な1100〜1300℃の温度領域で実施されるので、プレス能力をそれほど向上させなくても、加工が可能となる。
【0031】
【実施例】
次に本発明により得られる効果を実施例により明らかにする。表1に実施例で用いた供試材の化学成分を示す。このうち、1〜5鋼は、本発明で規定している成分範囲の条件を満足する鋼であり、6鋼は、既に開発され現在まで使用され続けているフェライトパーライト型非調質鋼(Vの析出強化を利用して強度を確保するもの)である。
【0032】
【表1】
Figure 0003907450
【0033】
表1に示す成分からなる供試鋼のうち、1〜5鋼は30kgVIM溶解炉で溶解して得られた約φ120の鋼塊を鍛伸してφ40の丸棒を製造し、この丸棒から縦、横、長さがそれぞれ30mm、15mm、100mmの長方体試験片を機械加工により製造した。また、6鋼は実際の製造ラインから一部を入手し、前記と同一形状の試験片を準備した。この試験片を1250℃に10分間加熱保持した後、600〜1200℃の温度まで空冷した後、上下とも平らな工具が固定されたプレスで圧縮加工(30mmの箇所が15mmになる圧縮率で)し、さらに空冷してフェライトパーライト変態させた。但し、6鋼については、本発明が従来の非調質鋼に比べどの程度の特性を有しているかを明確にするためにと準備した鋼であるので、実際に行われている鍛造条件と同様に、加熱炉から取出した後速やかに鍛造(鍛造温度1200℃)するという方法で試験を実施した。この圧縮加工後の試験片を用いて、後述する方法で各種特性の評価試験を行った。
【0034】
強度については、硬さ、フェライト粒径、引張強さ、上降伏点(6鋼については降伏点が明確に現れないため、0.2%耐力)を測定することにより評価した。これらの評価項目のうち、硬さ、フェライト粒径については、圧縮加工後の試験片の長さ100mm方向の中央部を切断した面で硬度計による測定と顕微鏡観察を行うことにより実施した。この際当然のごとく試験片内部の歪は場所により異なっており、硬さ、フェライト粒の形状、寸法も異なるため、測定は前記切断面の中心部分のみで実施した。フェライト粒の測定は前記した通り、圧縮変形を受けてつぶされた方向の寸法を測定した(以下、この寸法をフェライト粒径と記す)。
なお、材料の加工硬化がなく工具面との間の摩擦係数が0.3と仮定して行った剛塑性有限要素法の解析結果によれば、中心部付近の相当塑性歪は、約1.5である。また、引張試験は前記圧縮後の試験片から標点間距離35mm、平行部直径5mmの引張試験片を作製し、1mm/minの引張速度で試験を行った。そして、試験片加工の際、加工歪の違いによる影響がないよう、前記圧縮試験片断面の中心部から引張試験片を作製するようにした。
【0035】
疲労特性については、小野式回転曲げ疲労試験片(平滑)を作製し、107回転での耐久限度を求めることにより評価した。この試験片についても、前記引張試験片と同様の位置から作製するようにした。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003907450
【0037】
表2から明らかなように、本発明である1〜5鋼を鍛造した試験片の評価結果をみると、鍛造方法が従来と同様である1200℃の場合には、従来の非調質鋼である6鋼に比べ、引張強度、降伏強度、疲労強度が共に劣るものであったが、鍛造温度が低下するにつれてフェライト粒径が小さくなり、かつ未再結晶温度領域の上限温度にほぼ位置している850℃から温度をさらに低下していくと、引張強度も少しずつ上昇していくが、それ以上に降伏強度が上昇し、疲労強度も大幅に向上することがわかる。そして、鍛造温度を850℃とした場合に従来の非調質鋼にかなり近い疲労強度が得られ、800℃以下とした場合には、従来のVによる析出強化したフェライトパーライト型非調質鋼と同等か条件によってはそれ以上の強度が得られることがわかる。また、特にN、Ti、Nbを添加した2〜5鋼は、未添加の炭素鋼である1鋼に比べフェライト粒が微細化し、高強度化していることがわかる。なお、引張強度で比較すれば、低温での鍛造でも強度が非調質鋼である6鋼に比べ低くなっているが、実部品での使用の際には引張強度よりも疲労強度が重要であることから、本発明による鍛造品は十分に使用が可能であると言える。
【0038】
なお実施例には、鍛造温度が600℃以上のデータしか示していないが、600℃と1200℃を比較すると、今回の鍛造条件では測定荷重が1200℃の場合を1とすると、4以上となっており、これ以上の低温での鍛造は困難と判断したものである。
【0039】
以上の結果から、試験片での結果では、高価な合金成分を添加せず、安価な炭素鋼を用いた場合でも、低い温度で鍛造することにより、高強度化できることが明らかとなった。しかし、この実施例では高温での鍛造はすぐに再結晶して加工の影響が消失することを考慮し、試験を簡単にするため、本発明で必須の工程である粗加工工程を省略した試験を行っている。従って、実際の部品に適用可能かどうかを判断するためには、実部品を製造しての評価が不可欠と考え、次の評価を実施した。
【0040】
図1に実部品での評価のために実施したコンロッドの鍛造工程を示す。(a)は、鍛造前の素材である丸棒であり、(b)は粗加工工程終了時の形状、(c)は仕上げ加工工程終了時の形状である。コンロッドの場合、図1のA部において他の部位に比べ高い強度が要求されるため、仕上げ加工工程では、その箇所のみに図に示すように集中的に加工を加えている。
【0041】
実部品での評価は、前記実施例で示したうちの5鋼を用い、1250℃に加熱し、30分保持した後、従来方法のように、加熱炉から取出した後、速やかに鍛造(鍛造開始温度約1200℃)し、数回の加工を連続的に行い、最終的に図1の(c)で示す仕上げ加工後の形状を得た後空冷してフェライトパーライト変態させる場合と、加熱炉から取出して、まず図1の(b)の形状を得た後、700℃まで空冷後、さらに鍛造して(c)の形状を得た後、再度空冷してフェライトパーライト変態を完了させるという順序で加工した場合の2種類について実験した。実験終了後、本発明の効果を確認するために、A部の中央部付近を切断し、切断面中央部付近の硬さとフェライト粒径を測定した。その結果、最終形状まで連続的に鍛造したコンロッドの硬さ(Hv)、フェライト粒径が199、35μmであったのに対し、仕上げ加工を700℃で実施したコンロッドの硬さ(Hv)、フェライト粒径は、238、1.3μmと前記試験片での結果と同様の結果が得られ、組織が微細化され、高強度化されていることが確認できた。
【0042】
なお、700℃という低温での仕上げ加工であるが、大部分の加工がその前の粗加工工程で終了しており、1200℃で最終形状まで加工する場合に比較して成形時の最大荷重の増加は大きくなく、成形荷重の面での心配をすることなく加工できることが確認できた。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたようにごとく、本発明法を用いれば、鍛造方法を最適化することによって、高価な合金元素に頼らなくても、従来のフェライトパーライト型非調質鋼と同等以上の強度を有する鍛造品を非調質で製造することができる。従って、大きなコストダウン効果が得られ、産業上の効果は極めて顕著なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法をコンロッドの製造に適用した場合の加工工程を説明する図。

Claims (3)

  1. 重量比にして、C:0.20〜0.55%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50〜1.50%、
    S:0.1%以下(0を含む)、Cr:0.50%以下(0を含む)、Al:0.005〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を用い、1100〜1300℃に加熱保持後すぐに粗形状に鍛造するという粗加工工程と、その後600〜850℃の未再結晶温度域に冷却する一次冷却工程と、600〜850℃(Ar1点以下を除く)の温度で最終形状に鍛造する仕上げ加工工程と、仕上げ加工工程後速やかに冷却を開始し、加工の影響を残存させたまま再結晶させることなくフェライト・パーライト変態完了まで冷却させる二次冷却工程からなり、
    上記粗加工工程においては、高強度を必要としない部位について概略最終形状までの加工を終了させるとともに高強度を必要とする部位についても粗加工を加え、上記仕上げ加工工程において高強度を必要とする部位に集中的に変形を加え所定形状を得ることを特徴とする高強度鍛造品の製造方法。
  2. 仕上げ加工し、冷却が終了した後において、仕上げ加工工程で加工の加えられた部位の圧縮変形方向のフェライト粒の平均寸法を5μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の高強度鍛造品の製造方法。
  3. 請求項1に記載の成分に加え、さらにN:0.0080〜0.0250%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.10%の1種又は2種以上を含有させた鋼を用い、請求項1又は2に記載の方法を施すことを特徴とする高強度鍛造品の製造方法。
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