JP3905497B2 - ホイールナット及びホイールボルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体側のハブとディスクホイールとを締結するために用いられるホイールナット(ハブナットとも称する)及びホイールボルト(ハブボルトとも称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ディスクホイールにハブとは反対側に向って拡径するテーパ状のボルト挿通孔を形成し、ホイールナットをナット本体とテーパ状外周面を有する座金とから構成して、均等な締付力でディスクホイールをハブに締結可能とする技術が知られている(特許文献1参照)。また、同様に、ホイールボルトをボルト本体とテーパ状外周面を有する座金とから構成して、均等な締付力でディスクホイールをハブに締結可能とする技術も知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
実公平6−12961号公報
【特許文献2】
実公平7−4329号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1のホイールナットでは、その製造・組立工程において、
▲1▼内側に雌ねじ部が形成されたナット本体の筒状部の外周面と、ナット本体の筒状部に外嵌される座金の筒状部の内周面との嵌合(接触)の精度;
▲2▼ナット本体のフランジ部の座面と座金の外側端面との嵌合(接触)の精度;▲3▼ディスクホイールのボルト挿通孔のテーパ状拡径面と座金のテーパ状外周面との嵌合(接触)の精度;
をそれぞれ調整する必要がある。したがって、これら▲1▼〜▲3▼で示される3つの嵌合の精度が同時に満足されないとホイールボルトに曲げ力が作用し、ホイールナットに緩みを生じたり、ホイールボルトが折損したりしやすくなる。
【0005】
また、特許文献2のホイールボルトでも、同様に製造・組立工程において、
▲4▼先端側に雄ねじ部が形成されたボルト本体の軸状部の外周面と、ボルト本体の軸状部に外嵌される座金の筒状部の内周面との嵌合(接触)の精度;
▲5▼ボルト本体のフランジ部の座面と座金の外側端面との嵌合(接触)の精度;▲6▼ディスクホイールのボルト挿通孔のテーパ状拡径面と座金のテーパ状外周面との嵌合(接触)の精度;
をそれぞれ調整する必要がある。したがって、これら▲4▼〜▲6▼で示される3つの嵌合の精度が同時に満足されないとホイールボルトに曲げ力が作用し、ホイールボルトに緩みを生じたり、折損したりしやすくなる。
【0006】
本発明の課題は、ナット本体の筒状部の外周面と座金の筒状部の内周面との嵌合(接触)の精度を調整せずにすみ、製造・組立のコストダウンを図ることのできるホイールナットを提供することにある。また、本発明の課題は、ボルト本体の軸状部の外周面と座金の筒状部の内周面との嵌合(接触)の精度を調整せずにすみ、製造・組立のコストダウンを図ることのできるホイールボルトを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するために、本発明のホイールナットは、
対向配置される車体側のハブとは反対側に向って拡径するボルト挿通孔が形成されたディスクホイールを、該ハブに締結するためのホイールナットであって、
前記ハブ側から前記ボルト挿通孔に挿通されるホイールボルトの雄ねじ部と螺合する雌ねじ部と、そのホイールボルトとの螺合による締結力を受け止めるフランジ部と、を有するナット本体と、
前記ディスクホイールとナット本体との間に位置するとともに、そのナット本体のフランジ部の座面に接触する端面と前記ボルト挿通孔の拡径面に接触する外周面とを有する座金と、
それらナット本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持する係合部材と、を含み、
前記係合部材は、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とに跨る環状部材としてのコイルスプリングで構成され、そのコイルスプリングの内面がこれらの外周面を外側から同時に係合保持していることを特徴とする。
【0008】
このホイールナットによれば、係合部材がナット本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持するので、ナット本体の筒状部の外周面と座金の筒状部の内周面とを嵌合(接触)させる必要がなくなる。つまり、
(1)ナット本体のフランジ部の座面と座金の端面との嵌合(接触)の精度と、(2)ディスクホイールのボルト挿通孔の拡径面と座金のテーパ状外周面との嵌合(接触)の精度と、
を調整すればよくなり、製造・組立のコストダウンを図ることができる。具体的には、前述の▲1▼〜▲3▼の調整を同時複合的に実行しなくても、上記(1)及び(2)のうちのいずれか一方の嵌合を調整の基準とし、他方をそれに合わせて調整すればよいので、手順が単純化され熟練者でなくても容易に製造・組立が行なえる。したがって、ナット本体と座金との部品製造工程及び両者の組立工程において、部品(係合部材)の増加に伴う原価上昇分を上回るコストダウンが可能となる。
【0009】
また、ホイールボルトの雄ねじ部とホイールナットの雌ねじ部とによる螺合長さが確保されていれば、ナット本体の筒状部を省略することができ、ナット本体の製造原価も抑制することができる。さらに、係合部材の採用によりナット本体と座金とのかしめを要しなくなるので、かしめ時におけるメッキ層の剥離・キズの発生等が減少し防錆効果や装飾効果も向上する。
【0010】
次に、上記課題を解決するために、本発明のホイールボルトは、
対向配置される車体側のハブとは反対側に向って拡径するボルト挿通孔が形成されたディスクホイールを、該ハブに締結するためのホイールボルトであって、
前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ハブに形成された雌ねじ部と螺合する雄ねじ部と、その雌ねじ部との螺合による締結力を受け止めるフランジ部と、を有するボルト本体と、
前記ディスクホイールとボルト本体との間に位置するとともに、そのボルト本体のフランジ部の座面に接触する端面と前記ボルト挿通孔の拡径面に接触する外周面とを有する座金と、
それらボルト本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持する係合部材と、を含み、
前記係合部材は、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とに跨る環状部材としてのコイルスプリングで構成され、そのコイルスプリングの内面がこれらの外周面を外側から同時に係合保持していることを特徴とする。
【0011】
このホイールボルトによれば、係合部材がボルト本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持するので、ボルト本体の軸状部の外周面と座金の筒状部の内周面とを嵌合(接触)させる必要がなくなる。つまり、
(3)ボルト本体のフランジ部の座面と座金の端面との嵌合(接触)の精度と、(4)ディスクホイールのボルト挿通孔の拡径面と座金のテーパ状外周面との嵌合(接触)の精度と、
を調整すればよくなり、製造・組立のコストダウンを図ることができる。具体的には、前述の▲4▼〜▲6▼の調整を同時複合的に実行しなくても、上記(3)及び(4)のうちのいずれか一方の嵌合を調整の基準とし、他方をそれに合わせて調整すればよいので、手順が単純化され熟練者でなくても容易に製造・組立が行なえる。したがって、ボルト本体と座金との部品製造工程及び両者の組立工程において、部品(係合部材)の増加に伴う原価上昇分を上回るコストダウンが可能となる。
【0012】
また、係合部材の採用によりボルト本体と座金とのかしめを要しなくなるので、かしめ時におけるメッキ層の剥離・キズの発生等が減少し防錆効果や装飾効果も向上する。
【0013】
なお、以上のようなホイールナット又はホイールボルトにおいて、例えば、ボルト挿通孔の軸線を含む半断面において三角形状又は台形状のテーパ座金を用いる場合には、ボルト挿通孔の拡径面と座金の外周面とがテーパ状の嵌合状態(接触状態)となる。
【0014】
このとき、これらのホイールナット又はホイールボルトにおける係合部材は、フランジ部の座面と座金の端面とを接触保持するとともに、フランジ部の外周面と座金の外周面とをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。このように、フランジ部と座金とは、係合部材によって二方向に保持されているので安定して保持される。そして、フランジ部の座面を、ボルト挿通孔の軸線方向とほぼ直交する方向に形成し座金の端面と接触させる場合には、フランジ部と座金とは、係合部材によってボルト挿通孔の軸線方向及び半径方向(軸線方向に直交する方向)の双方向に保持され、構成の簡素化が図られている。
【0015】
さらに、本発明の特徴として、上記ホイールナット又はホイールボルトにおける係合部材を、フランジ部の外周面と前記座金の外周面とに跨る環状部材としてのコイルスプリングで構成し、コイルスプリングの内面がこれらの外周面を外側から同時に係合保持するのが望ましい。このような環状部材を用いることによって、一層のコストダウンが図れ、フランジ部と座金から外れにくくなる。このコイルスプリングのばね力により径の伸縮割合を大きくとれるので、ホイールナット又はホイールボルトの組み立てが容易となる。
また、ホイールナットは、座金の内周面の内側に位置してフランジ部の座面から筒状部が突出形成されており、その筒状部にも雌ねじ部が形成されていることにより、雌ねじ部と雄ねじ部との螺合長さを比較的長くとることができ、締付固定が安定する。
また、フランジ部の座面が、ホイールボルト側に傾斜して設けられ、座金の端面も同方向に傾斜して設けられてフランジ部の座面と接触していることにより、雌ねじ部と雄ねじ部との螺合長さを比較的長くとることができ、締付固定が安定する。しかもフランジ部の座面と座金の端面との接触面積を比較的大きくとることができ、座金の回り止め効果が大きくなる。また、ホイールボルトは、座金の内周面の内側に挿入される軸状部が前記フランジ部の座面から突出形成されていることにより、ボルト本体の強度が増す。また、フランジ部の座面が、ボルト本体の先端側に傾斜して設けられ、前記座金の端面も同方向に傾斜して設けられて前記フランジ部の座面と接触していることにより、座面と座金の端面との接触面積を比較的大きくとることができ、座金の回り止め効果が大きくなる。また、座金の外周面のテーパ角よりも、座金の端面のテーパ角を大に形成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、図13〜図15により、本発明の前提となるホイールナットの参考例について説明する。
図13に示すようなテーパ状の外周面を有する座金(テーパ座金)を用いる場合、ホイールナット500の製造・組立工程では次のような調整を要する。
▲1▼ナット本体510のフランジ部512の座面512aと座金520の外側端面520aとの嵌合(接触)精度の調整;
▲2▼ディスクホイール502のボルト挿通孔のテーパ状拡径面502bと座金520のテーパ状外周面520bとの嵌合(接触)精度の調整;
▲3▼内側に雌ねじ部511が形成されたナット本体510の筒状部515の外周面515aと、ナット本体510の筒状部515に外嵌される座金520の筒状部の内周面520cとの嵌合(接触)精度の調整;
【0017】
そして、テーパ座金を用いるホイールナットでは、特に上記▲3▼の調整が不十分なため不良品となるケースが多い。そこで、図13〜図15に示すように、ナット本体510(の筒状部515)と座金520との間に係合部を設けることができる。図13のホイールナット500では、ナット本体510の筒状部515の外周面515a側に凹部515bを設け、座金520の内周面520c側に突出する凸部520dを嵌合させて位置調整を行う。また、図14のホイールナット550では、ナット本体510の筒状部515の外周面515a側にローレット、セレーション、スプライン等の凹凸部515cを形成し、座金520の内周面520c側に形成された溝部520eと嵌合させる。さらに、図15のホイールナット560では、ナット本体510の筒状部をなくし、フランジ部512に突起512bを設け、座金520の内周面520c側に形成される凹陥部520fと嵌合させる。
【0018】
これらのホイールナット500,550,560において、ナット本体510(の筒状部515)と座金520との間に設けられる係合部の加工精度を上げることは勿論可能である。しかし、上記▲1▼〜▲3▼で示される3つの嵌合の精度が同時に満足されないとホイールボルトに曲げ力が作用し、ホイールナットに緩みを生じたり、ホイールボルトが折損したりするおそれがある。また、ナット本体510と座金520との間に、凹部515b・凸部520d(図13)、凹凸部515c・溝部520e(図14)、突起512b・凹陥部520f(図15)で示すような係合部を設ける必要があり、従来の部品との共用化に難がある。そこで、本発明ではホイールナット(又はホイールボルト)の基本構成を、例えば以下で述べる実施例のように変更している。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、本発明のホイールナットをホイールボルトと組み合わせて使用する場合の一実施例を示す正面半断面図である。図1に示すホイールナット100は、互いに対向配置される自動車等の車体側のハブ1とディスクホイール2とを締結するために用いられる。ディスクホイール2には、ハブ1とは反対側に向って拡径するテーパ状のボルト挿通孔2aが所定数形成されている。つまり、各ボルト挿通孔2aは、ハブ1側に形成された円柱状の孔と、それに続いてハブ1側とは反対側(車体外側)に広がる円錐状(又は円錐台状)の孔とを有している。また、ハブ1には、ボルト挿通孔2aと軸線Oを共通にする貫通孔1aと溝部1bとが形成されている。ホイールボルト3は貫通孔1aから挿入され、その軸状部3aの基端側外周に形成された凹凸部3bが溝部1bと嵌合する。なお、ホイールボルト3の軸状部3aに形成される凹凸部3bは、例えばローレット、セレーション、スプライン等であり、凹凸部3bを溝部1bに圧入することによって、ホイールボルト3はハブ1に回転不能に固定される。
【0020】
図2に示すように、このホイールナット100は、ナット本体10と座金20とC形止め輪30(環状部材;係合部材)とを含んで構成されている。このうちナット本体10は、ハブ1側からボルト挿通孔2aに挿通されるホイールボルト3の軸状部3aの先端側に形成された雄ねじ部3c(図1参照)と螺合する雌ねじ部11と、ホイールボルト3との螺合による締結力を受け止めるフランジ部12とを有している。なお、ナット本体10の内部において、雌ねじ部11と雄ねじ部3cとの螺合可能長さを比較的大きくとり、それによってフランジ部12(の座面12a)からのナット本体10の筒状部の突出をなくしている。
【0021】
座金20は、ボルト挿通孔2aの軸線O(図1参照)を含む半断面において台形状に形成され、ディスクホイール2とナット本体10との間に位置している。つまり、座金20は、ナット本体10のフランジ部12の座面12aに接触する端面20aと、ボルト挿通孔2aのテーパ状の拡径面2bに接触するテーパ状の外周面20bとを有するテーパ座金を構成している。
【0022】
C形止め輪30は、ナット本体10と座金20とに跨って外側から両者を係合保持する機能を有している。具体的には、C形止め輪30は、フランジ部12の座面12aと座金20の端面20aとを接触保持するとともに、フランジ部12の外周面12bと座金20のテーパ状外周面20bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。さらに詳細には、C形止め輪30は、フランジ部12の外周面12bと座金20のテーパ状の外周面20bとに跨るように構成され、その内面30aがこれらの外周面12b,20bを外側から同時に係合保持している。
【0023】
なお、ナット本体10において、フランジ部12の座面12aは、ボルト挿通孔2aの軸線O方向とほぼ直交する方向に形成されて、座金20の端面20aと接触している。また、13はスパナ等の工具と係合する六角部、14は防塵効果又は装飾効果を付与するために雌ねじ部11を先端開口側(車体最外側)から覆うキャップである。
【0024】
次に、このホイールナット100の組立方法及びハブ1とディスクホイール2との締結方法について説明する。
(1)ホイールナット100の組立方法(図2参照)
図2に示すように、ナット本体10、座金20及びC形止め輪30を従来と同様の工程で製造する。なお、キャップ14は溶接、かしめ等によってナット本体10に固着しておく。そして、ナット本体10のフランジ部12の座面12aと座金20の端面20aとを位置合わせし、C形止め輪30をフランジ部12の外周面12bと座金20のテーパ状の外周面20bとに跨るように外側から係合保持する。このとき、ナット本体10においてフランジ部12の座面12aから突出する筒状部が省略されているので、ナット本体10の筒状部の外周面と座金20の筒状部の内周面20cとをかしめ等によって嵌合(接触)させる必要はない。
【0025】
(2)ハブ1とディスクホイール2との締結方法(図1参照)
ホイールボルト3をハブ1の貫通孔1aに挿入し、溝部1bに凹凸部3bを圧入・固定する。ボルト挿通孔2aに挿通されたホイールボルト3の雄ねじ部3cに、ナット本体10の雌ねじ部11を螺合させ、ディスクホイール2のボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金20のテーパ状外周面20bとの嵌合(接触)位置を調整する。このように、ホイールナット100組立時のフランジ部12の座面12aと座金20の端面20aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金20のテーパ状外周面20bとの嵌合(接触)位置を調整すればよい。これにより、ハブ1とディスクホイール2との締結が精度よく行われ、ホイールナット100の緩みやホイールボルト3の折損等が発生しにくくなる。
【0026】
以上の通り、C形止め輪30は、フランジ部12の座面12aと座金20の端面20aとを接触保持し、フランジ部12の外周面12bと座金20のテーパ状外周面20bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、C形止め輪30の内面30aがフランジ部12の外周面12bと座金20のテーパ状外周面20bとを外側から同時に係合保持している。C形止め輪30によってフランジ部12と座金20とは二方向に同時に保持されているので、保持が安定し外れにくくなる。
【0027】
(変形例1)
図3及び図4にホイールナットの変形例を示す。このホイールナット200では、実施例1(図1及び図2)に次のような変更を加えている。
▲1▼ナット本体110において、フランジ部112の座面112aがボルト挿通孔2aの軸線O方向と直交せずホイールボルト3側に傾斜して設けられている。それに伴って座金120の端面120aも同方向に傾斜し、座面112aと接触(嵌合)している。フランジ部112の座面112aに傾斜(テーパ)が設けられることにより、(イ)雌ねじ部11と雄ねじ部3cとの螺合長さを比較的長くとることができ、ナット本体110とホイールボルト3との締付固定が安定する;(ロ)座面112aと座金120の端面120aとの接触面積を比較的大きくとることができ、座金120の回り止め効果が大きくなる。なお、座金120の外周面20b(又はディスクホイール2の拡径面2b)のテーパ角αよりも、座金120の端面120a(又はフランジ部112の座面112a)のテーパ角βの方が大に形成されている(図4参照)。
▲2▼C形止め輪に代えてコイルスプリング130(環状部材;係合部材)が設けられている。コイルスプリング130のばね力により径の伸縮割合を大きくとれるので、ホイールナット200の組み立てが容易となる。
【0028】
したがって、この場合においても、ホイールナット200組立時のフランジ部112の座面112aと座金120の端面120aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金120のテーパ状外周面20bとの嵌合(接触)位置を調整する。そして、コイルスプリング130は、フランジ部112の座面112aと座金120の端面120aとを接触保持し、フランジ部112の外周面12bと座金120のテーパ状外周面20bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、コイルスプリング130の内面130aがフランジ部112の外周面12bと座金120のテーパ状外周面20bとを外側から同時に係合保持している。
【0029】
(変形例2)
図5及び図6にホイールナットの他の変形例を示す。このホイールナット300では、実施例1(図1及び図2)に次のような変更を加えている。
▲1▼ナット本体210において、フランジ部212の座面12aから筒状部215が突出形成され、この筒状部215は座金220の筒状部に挿入されている。フランジ部212の筒状部215の外周面215aと座金220の筒状部の内周面20cとは、かしめ等によって嵌合(接触)されてはいない。筒状部215が設けられることにより、雌ねじ部11と雄ねじ部3cとの螺合長さを比較的長くとることができ、ナット本体210とホイールボルト3との締付固定が安定する。▲2▼C形止め輪に代えて断面矩形状の円形リング230(環状部材;係合部材)が設けられている。円形リング230は、ナット本体210のフランジ部212(外周面12b)と座金220の外周面20bとにそれぞれ形成された凹部212d,220d(溝部)に焼きばめ等の締まりばめによって嵌め込まれている。円形リング230は凹部212d,220dに埋め込まれてその外面から突出しないので、他物と接触しにくくなる。
【0030】
したがって、この場合においても、ホイールナット300組立時のフランジ部212の座面12aと座金220の端面20aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金220のテーパ状外周面20bとの嵌合(接触)位置を調整する。そして、円形リング230は、フランジ部212の座面12aと座金220の端面20aとを接触保持し、フランジ部212の外周面12bと座金220のテーパ状外周面20bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、円形リング230の内面230aがフランジ部212の外周面12bと座金220のテーパ状外周面20bとを外側から同時に係合保持している。
【0031】
なお、変形例1(図3・図4)及び変形例2(図5・図6)において、実施例1(図1・図2)と共通する機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
(実施例2)
図7は、本発明のホイールボルトを使用する場合の一実施例を示す正面半断面図である。図7に示すホイールボルト180は、互いに対向配置される自動車等の車体側のハブ1とディスクホイール2とを締結するために用いられる。ディスクホイール2には、ハブ1とは反対側に向って拡径するテーパ状のボルト挿通孔2aが所定数形成されている。つまり、各ボルト挿通孔2aは、ハブ1側に形成された円柱状の孔と、それに続いてハブ1側とは反対側(車体外側)に広がる円錐状(又は円錐台状)の孔とを有している。また、ハブ1には、ボルト挿通孔2aと軸線Oを共通にする雌ねじ部1cが形成されている。
【0033】
図8に示すように、このホイールボルト180は、ボルト本体50と座金60とC形止め輪70(環状部材;係合部材)とを含んで構成されている。このうちボルト本体50は、ボルト挿通孔2aに挿通されてハブ1に形成された雌ねじ部1c(図7参照)と螺合する雄ねじ部51と、雌ねじ部1cとの螺合による締結力を受け止めるフランジ部52とを有している。なお、ボルト本体50において、雄ねじ部51と雌ねじ部1cとの螺合可能長さを比較的大きくとり、それによってフランジ部52(の座面52a)からのボルト本体50の筒状部の突出をなくしている。
【0034】
座金60は、ボルト挿通孔2aの軸線O(図7参照)を含む半断面において台形状に形成され、ディスクホイール2とボルト本体50との間に位置している。つまり、座金60は、ボルト本体50のフランジ部52の座面52aに接触する端面60aと、ボルト挿通孔2aのテーパ状の拡径面2bに接触するテーパ状の外周面60bとを有するテーパ座金を構成している。
【0035】
C形止め輪70は、ボルト本体50と座金60とに跨って外側から両者を係合保持する機能を有している。具体的には、C形止め輪70は、フランジ部52の座面52aと座金60の端面60aとを接触保持するとともに、フランジ部52の外周面52bと座金60のテーパ状外周面60bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。さらに詳細には、C形止め輪70は、フランジ部52の外周面52bと座金60のテーパ状の外周面60bとに跨るように構成され、その内面70aがこれらの外周面52b,60bを外側から同時に係合保持している。
【0036】
なお、ボルト本体50において、フランジ部52の座面52aは、ボルト挿通孔2aの軸線O方向とほぼ直交する方向に形成されて、座金60の端面60aと接触している。また、53はスパナ等の工具と係合する六角部である。
【0037】
次に、このホイールボルト180の組立方法及びハブ1とディスクホイール2との締結方法について説明する。
(1)ホイールボルト180の組立方法(図8参照)
図8に示すように、ボルト本体50、座金60及びC形止め輪70を従来と同様の工程で製造する。そして、ボルト本体50のフランジ部52の座面52aと座金60の端面60aとを位置合わせし、C形止め輪70をフランジ部52の外周面52bと座金60のテーパ状の外周面60bとに跨るように外側から係合保持する。このとき、ボルト本体50においてフランジ部52の座面52aから突出する筒状部が省略されているので、ボルト本体50の軸状部の外周面と座金60の筒状部の内周面60cとをかしめ等によって嵌合(接触)させる必要はない。
【0038】
(2)ハブ1とディスクホイール2との締結方法(図7参照)
ホイールボルト180をボルト挿通孔2aに挿通し、ハブ1に形成された雌ねじ部1cにボルト本体50の雄ねじ部51を螺合させ、ディスクホイール2のボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金60のテーパ状外周面60bとの嵌合(接触)位置を調整する。このように、ホイールボルト180組立時のフランジ部52の座面52aと座金60の端面60aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金60のテーパ状外周面60bとの嵌合(接触)位置を調整すればよい。これにより、ハブ1とディスクホイール2との締結が精度よく行われ、ホイールボルト180の緩みや折損等が発生しにくくなる。
【0039】
以上の通り、C形止め輪70は、フランジ部52の座面52aと座金60の端面60aとを接触保持し、フランジ部52の外周面52bと座金60のテーパ状外周面20bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、C形止め輪70の内面70aがフランジ部52の外周面52bと座金60のテーパ状外周面60bとを外側から同時に係合保持している。C形止め輪70によってフランジ部52と座金60とは二方向に同時に保持されているので、保持が安定し外れにくくなる。
【0040】
(変形例3)
図9及び図10にホイールボルトの変形例を示す。このホイールボルト280では、実施例2(図7及び図8)に次のような変更を加えている。
▲1▼ボルト本体150において、フランジ部152の座面152aがボルト挿通孔2aの軸線O方向と直交せず軸状部の先端側に傾斜して設けられている。それに伴って座金160の端面160aも同方向に傾斜し、座面152aと接触(嵌合)している。フランジ部152の座面152aに傾斜(テーパ)が設けられることにより、座面152aと座金160の端面160aとの接触面積を比較的大きくとることができ、座金160の回り止め効果が大きくなる。なお、座金160の外周面60b(又はディスクホイール2の拡径面2b)のテーパ角αよりも、座金160の端面160a(又はフランジ部152の座面152a)のテーパ角βの方が大に形成されている(図10参照)。
▲2▼C形止め輪に代えてコイルスプリング170(環状部材;係合部材)が設けられている。コイルスプリング170のばね力により径の伸縮割合を大きくとれるので、ホイールボルト280の組み立てが容易となる。
【0041】
したがって、この場合においても、ホイールボルト280組立時のフランジ部152の座面152aと座金160の端面160aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金160のテーパ状外周面60bとの嵌合(接触)位置を調整する。そして、コイルスプリング170は、フランジ部152の座面152aと座金160の端面160aとを接触保持し、フランジ部152の外周面52bと座金160のテーパ状外周面60bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、コイルスプリング170の内面170aがフランジ部152の外周面52bと座金160のテーパ状外周面60bとを外側から同時に係合保持している。
【0042】
(変形例4)
図11及び図12にホイールボルトの他の変形例を示す。このホイールボルト380では、実施例2(図7及び図8)に次のような変更を加えている。
▲1▼ボルト本体250において、フランジ部252の座面52aから軸状部255が突出形成され、この軸状部255は座金260の筒状部に挿入されている。フランジ部252の軸状部255の外周面255aと座金260の筒状部の内周面60cとは、かしめ等によって嵌合(接触)されてはいない。軸状部255が設けられることにより、ボルト本体250の強度が増す。
▲2▼C形止め輪に代えて断面矩形状の円形リング270(環状部材;係合部材)が設けられている。円形リング270は、ボルト本体250のフランジ部252(外周面52b)と座金260の外周面60bとにそれぞれ形成された凹部252d,260d(溝部)に焼きばめ等の締まりばめによって嵌め込まれている。円形リング270は凹部252d,260dに埋め込まれてその外面から突出しないので、他物と接触しにくくなる。
【0043】
したがって、この場合においても、ホイールボルト380組立時のフランジ部252の座面52aと座金260の端面60aとの位置合わせを基準として、ボルト挿通孔2aのテーパ状拡径面2bと座金260のテーパ状外周面60bとの嵌合(接触)位置を調整する。そして、円形リング270は、フランジ部252の座面52aと座金260の端面60aとを接触保持し、フランジ部252の外周面52bと座金260のテーパ状外周面60bとをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している。また、円形リング270の内面270aがフランジ部252の外周面52bと座金260のテーパ状外周面60bとを外側から同時に係合保持している。
【0044】
なお、変形例3(図9・図10)及び変形例4(図11・図12)において、実施例2(図7・図8)と共通する機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
座金(テーパ座金)の半断面形状は、平座金に比して軸線方向に相対的に長いものであれば、台形状、三角形状以外に種々の形状を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホイールナットをホイールボルトと組み合わせて使用する場合の一実施例を示す正面半断面図。
【図2】図1のホイールナットの正面分解半断面図。
【図3】図1のホイールナットの一変形例を示す正面半断面図。
【図4】図3のホイールナットの正面分解半断面図。
【図5】図1のホイールナットの他の変形例を示す正面半断面図。
【図6】図5のホイールナットの正面分解半断面図。
【図7】本発明のホイールボルトを使用する場合の一実施例を示す正面半断面図。
【図8】図7のホイールボルトの正面分解半断面図。
【図9】図7のホイールボルトの一変形例を示す正面半断面図。
【図10】図9のホイールボルトの正面分解半断面図。
【図11】図7のホイールボルトの他の変形例を示す正面半断面図。
【図12】図11のホイールボルトの正面分解半断面図。
【図13】本発明の前提となるホイールナットの参考例を示す正面半断面図。
【図14】図13に続くホイールナットの参考例を示す正面半断面図。
【図15】図14に続くホイールナットの参考例を示す正面半断面図。
【符号の説明】
1 ハブ
2 ディスクホイール
2a ボルト挿通孔
2b 拡径面
10 ナット本体
11 雌ねじ部
12 フランジ部
12a 座面
20 座金
20a 端面
20b 外周面
30 C形止め輪(環状部材;係合部材)
130 コイルスプリング(環状部材;係合部材)
230 円形リング(環状部材;係合部材)
100,200,300 ホイールナット
Claims (12)
- 対向配置される車体側のハブとは反対側に向って拡径するボルト挿通孔が形成されたディスクホイールを、該ハブに締結するためのホイールナットであって、
前記ハブ側から前記ボルト挿通孔に挿通されるホイールボルトの雄ねじ部と螺合する雌ねじ部と、そのホイールボルトとの螺合による締結力を受け止めるフランジ部と、を有するナット本体と、
前記ディスクホイールとナット本体との間に位置するとともに、そのナット本体のフランジ部の座面に接触する端面と前記ボルト挿通孔の拡径面に接触する外周面とを有する座金と、
それらナット本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持する係合部材と、を含み、
前記係合部材は、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とに跨る環状部材としてのコイルスプリングで構成され、そのコイルスプリングの内面がこれらの外周面を外側から同時に係合保持していることを特徴とするホイールナット。 - 前記コイルスプリングは、前記フランジ部の座面と前記座金の端面とを接触保持するとともに、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している請求項1に記載のホイールナット。
- 前記フランジ部の座面は、前記ボルト挿通孔の軸線方向とほぼ直交する方向に形成されて前記座金の端面と接触している請求項1又は2に記載のホイールナット。
- 前記座金の内周面の内側に位置して前記フランジ部の座面から筒状部が突出形成されており、その筒状部にも雌ねじ部が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のホイールナット。
- 前記フランジ部の座面が、ホイールボルト側に傾斜して設けられ、前記座金の端面も同方向に傾斜して設けられて前記フランジ部の座面と接触している請求項1又は2に記載のホイールナット。
- 前記座金の外周面のテーパ角よりも、座金の端面のテーパ角を大に形成する請求項5に記載のホイールナット。
- 対向配置される車体側のハブとは反対側に向って拡径するボルト挿通孔が形成されたディスクホイールを、該ハブに締結するためのホイールボルトであって、
前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ハブに形成された雌ねじ部と螺合する雄ねじ部と、その雌ねじ部との螺合による締結力を受け止めるフランジ部と、を有するボルト本体と、
前記ディスクホイールとボルト本体との間に位置するとともに、そのボルト本体のフランジ部の座面に接触する端面と前記ボルト挿通孔の拡径面に接触する外周面とを有する座金と、
それらボルト本体と座金とに跨って外側から両者を係合保持する係合部材と、を含み、
前記係合部材は、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とに跨る環状部材としてのコイルスプリングで構成され、そのコイルスプリングの内面がこれらの外周面を外側から同時に係合保持していることを特徴とするホイールボルト。 - 前記コイルスプリングは、前記フランジ部の座面と前記座金の端面とを接触保持するとともに、前記フランジ部の外周面と前記座金の外周面とをそれぞれ半径方向中心側へ押圧保持している請求項7に記載のホイールボルト。
- 前記フランジ部の座面は、前記ボルト挿通孔の軸線方向とほぼ直交する方向に形成されて前記座金の端面と接触している請求項7又は8に記載のホイールボルト。
- 前記座金の内周面の内側に挿入される軸状部が前記フランジ部の座面から突出形成されている請求項7ないし9のいずれか1項に記載のホイールボルト。
- 前記フランジ部の座面が、ボルト本体の先端側に傾斜して設けられ、前記座金の端面も同方向に傾斜して設けられて前記フランジ部の座面と接触している請求項7又は8に記載のホイールボルト。
- 前記座金の外周面のテーパ角よりも、座金の端面のテーパ角を大に 形成する請求項11に記載のホイールボルト。
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