JP3903685B2 - 板金製ロッカーアーム - Google Patents

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聡 角川
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    • B21MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21KMAKING FORGED OR PRESSED METAL PRODUCTS, e.g. HORSE-SHOES, RIVETS, BOLTS OR WHEELS
    • B21K1/00Making machine elements
    • B21K1/20Making machine elements valve parts
    • B21K1/205Making machine elements valve parts rocker arms

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの動弁機構に組み込み、カムシャフトの回転を弁体(吸気弁及び排気弁)の往復運動に変換する為のロッカーアームのうち、金属板にプレス加工を施す事により造る板金製ロッカーアームの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
レシプロエンジン(往復ピストンエンジン)には、一部の2サイクルエンジンを除き、クランクシャフトの回転と同期して開閉する吸気弁及び排気弁を設けている。この様なレシプロエンジンでは、上記クランクシャフトの回転と同期して(4サイクルエンジンの場合には1/2の回転速度で)回転するカムシャフトの動きを、ロッカーアームにより、上記吸気弁及び排気弁に伝達し、これら吸気弁及び排気弁をそれぞれの軸方向に往復運動させる。
【0003】
従来は、この様なエンジンの動弁機構に組み込むロッカーアームを、鋳造品(鋳鉄品或はアルミニウムダイキャスト品)とする事が一般的であった。ところが、鋳造品は重量が嵩んだり(鋳鉄品の場合)、或は十分に強度を確保する為には容積が嵩張る(アルミニウムダイキャスト品の場合)。又、一般的にはロストワックス法により造る為、製造コストが嵩む事も避けられない。この為に近年、鋼板等の金属板にプレス加工を施す事により上記ロッカーアームを造る事が考えられ、一部で実施されている。
【0004】
この様な事情で考えられた板金製ロッカーアームの製造方法として従来から、例えば特開平3−172506号公報に記載されたものがある。この公報に記載された製造方法は、プレス加工により1枚の金属板からプレス加工を主体とする一体成形により、板金製ロッカーアームを造る。この為、得られた板金製ロッカーアームは、全面に亙りほぼ均一な厚さを有する。
【0005】
これに対して従来から、それぞれを金属板にプレス加工を施す事により形成した、2個又は3個の部材を溶接により結合固定したロッカーアームも知られている。従来知られている構造では、これら各部材の板厚は総て同じであるが、この様に複数個の部材を組み合わせて成る板金製ロッカーアームの場合には、ピボット部及びバルブ係合部を含む連結部の厚さを、各側壁部の厚さよりも大きくできる。
【0006】
上述した様な従来技術のうち、特開平3−172506号公報に記載された、1枚の金属板から板金製ロッカーアームを一体に造る技術の場合には、造られた板金製ロッカーアームの厚さは、ほぼ全面に亙り均一になる為、使用時に大きな力を受けるバルブ係合部の近傍部分が他の部分に比べて、強度的に不利になり、剛性も低くなる場合がある。上記バルブ係合部の近傍部分の強度及び剛性を十分に確保すべく、板金製ロッカーアームを造る為の金属板の厚さを大きくすると、他の部分の厚さが、本来必要とする以上に大きくなり、板金製ロッカーアームの小型・軽量化を十分に図れないだけでなく、材料費も嵩む原因となる。
【0007】
これに対して、それぞれを金属板にプレス加工を施す事により形成した2個又は3個の部材を溶接により結合固定した板金製ロッカーアームの場合には、バルブ係合部を含む連結部の厚さを、側壁部等他の部分の厚さよりも大きくできる反面、複数個の部材を別々に製造した後、これら各部材同士を組み付け、溶接により接合する必要がある。この為、加工工数が増大し、しかも部品管理の手間を要する。更に、各部材を組み付ける際の位置決め等の為に、複雑且つ精密な設備を必要とする為、加工工数の増大と部品管理の手間を要する事と合わせて、コストが嵩む事が避けられない。しかも、得られた板金製ロッカーアームの品質(精度)が、一体構造のものに比べると劣る場合が多い。
【0008】
【先発明の説明】
上述の様な問題を解決できる技術として、特願平11−63515号には、図5〜11に示す様な、板金製ロッカーアームとその製造方法とに関する発明が記載されている。この先発明の板金製ロッカーアーム1は、図5に示す様に、互いにほぼ平行な1対の側壁部2、2と、これら両側壁部2、2の幅方向一端縁同士を連結する連結部3及び第二の連結部4とを有する。又、これら両側壁部2、2の長さ方向中間部に1対の円孔5、5を、互いに同心に形成し、これら両円孔5、5に、カムと係合するローラを回転自在に支持する為の支持軸の両端部を支持自在としている。上記連結部3及び第二の連結部4のうち、連結部3の片面には、弁体の基端部を突き当てる為の係合部6を、第二の連結部4に、ラッシュアジャスタの先端部を突き当てる為の第二の係合部7を、それぞれ形成している。
【0009】
上記係合部6と第二の係合部7とのうち、係合部6は、上記連結部3の幅方向中間部の片面に、この連結部3の幅方向中間部を厚さ方向に塑性変形させる事により、この連結部3の他の部分よりも凹んだ凹溝状に形成している。従って、この連結部3の他面には、上記係合部6を形成する事に伴って土手状に突出した、断面形状が台形である膨出部8が存在する。これに対して、上記第二の係合部7は、上記第二の連結部4の中央部を厚さ方向に塑性変形させる事により、球状凹面として成る。
【0010】
上述の様な板金製ロッカーアーム1を造る場合、先ず第一工程で、図6に示す様な第一素板9を造る。即ち、この第一工程では、例えば3〜4mm程度の厚さを有する炭素鋼板等、十分な剛性を有する金属板(平板材若しくはコイル材)を、図示しないプレス装置の打抜き型と受型との間に供給し、これら両型同士の間で、上記第一素板9を打ち抜き形成する。
【0011】
この第一素板9は、図6(A)に示す様に、角を丸めた菱形の長さ方向一端部{図6(A)の右端部}を切除した如き形状と、t9 なる厚さ{図6(B)}とを有する。この様な第一素板9の幅方向{図6(A)の上下方向}中央部の、図6(A)に記載した2本の鎖線α、αよりも少し内側部分(幅方向中央寄り部分)で幅W10なる部分を、上記第一素板9の長さ方向{図6(A)の左右方向}に連続する基部10としている。そして、この基部10の幅方向の両側に、それぞれが略三角形である、1対の翼状部11、11を設けている。
【0012】
上述の様な第一素板9の中央部には、続く第二工程で、図7(A)に示す様に透孔12を形成して、第二素板13とする。この透孔12の形状は、大略鼓形で、幅方向両側縁の長さ方向中央部に、互いに近づく方向に突出した、それぞれが部分円弧状である、1対の舌状部14、14を形成している。これら両舌状部14、14はそれぞれ、後述するローラを回転自在に支持する為の支持軸の両端部を支持する為の円孔5、5(図5、11参照)を形成する為に設ける。又、上記透孔12の四隅部分には、それぞれが略半円形である切り欠き部15、15を形成している。これら各切り欠き部15、15は、次の第三工程で、上記基部10を断面円弧状に湾曲させて湾曲部16(図8参照)を形成する際に、湾曲作業を行ない易くする為に形成する。
【0013】
上述の様な第二素板13は、図示しないプレス加工装置に組み込んだ、プレス装置の打抜き型と受型との間に上記第一素板9を供給し、これら両型同士の間で上記透孔12を打ち抜く事により形成する。尚、前記第一素板9及び上記第二素板13の基部10の幅W10は、次に述べる第三工程で形成する1対の側壁部2、2の外側面同士の間隔である、第一中間素材17の幅W17(図8参照)よりも大きくしている(W10>W17)。この様に、基部10の幅W10を第一中間素材17の幅W17よりも大きくした事に伴って、上記1対の舌状部14、14同士の間隔D14も大きくしている。
【0014】
この様に、上記1対の舌状部14、14同士の間隔D14を大きくすると、上記透孔12を打ち抜く為の打抜き型の寿命を確保できる。即ち、透孔の中央部の幅が狭いと、この透孔を打抜き加工する為の打抜き型にかかる負担が大きく、この打ち抜き型の寿命が短くなる。これに対して、上記透孔12の中央部の幅である、上記1対の舌状部14、14同士の間隔D14を大きくすると、上記透孔12を形成する為の打抜き型の負担が軽減し、この打ち抜き型の耐久性を確保して、コスト低減を図れる。
【0015】
尚、第二素板13を形成する順序は、上述した第二工程で行なうとした透孔12の打抜き形成を始めに行ない、次に、前述した第一工程で行なうとした、基部10及び翼状部11、11の打抜き形成を行なっても良い。更には、打ち抜き型及び受型の加工が可能で、プレス装置の容量が十分であれば、素材となる金属板から、直接図7に示す様な第二素板13を形成しても良い。
【0016】
何れにしても、図7に示す様な形状に加工した、上記第二素板13は、続く第三工程で、図8に示す様な第一中間素材17とする。この第三工程では、上記第二素板13を、図示しないプレス装置に組み付けた押型と受型との間に供給して強く押圧し、上記第二素板13の基部10及び翼状部11、11に曲げ加工を施す。そして、上記第二素板13を、幅方向に関して左右1対の側壁部2、2と、これら両側壁部2、2の幅方向{図8(C)(D)の左右方向}端縁同士を連結する湾曲部16とから成る、上記第一中間素材17とする。この湾曲部16は、この第一中間素材17の長さ方向{図8(A)の左右方向}中間部で、上記透孔12に対応する部分が不連続な、半円筒状に形成されている。この様に、透孔12部分で2分割された上記湾曲部16のうち、一端側{図8(A)(B)の右端側}が弁体の基端部を突き当てる為の係合部6(図5、10、11参照)になり、他端側{図8(A)(B)の左端側}がラッシュアジャスタの先端部を突き当てる為の第二の係合部7(図5、10、11参照)となる。
【0017】
前述した通り、上記1対の側壁部2、2の外側面同士の間隔である、上記第一中間素材17の幅W17は、前述した第一、第二素板9、13の基部10の幅W10より小さくしている。即ち、上記第一中間素材17に於いて、上記1対の側壁部2、2の幅方向端縁同士を連結する為の連結部としての役目を有する上記湾曲部16は、図8(C)(D)に示す様に、略半円筒状に形成している。この様に略半円筒状の湾曲部16を形成し、この湾曲部16の元となる、前述した平板状の基部10の幅W10よりもこの湾曲部16の幅を小さくする為、この基部10の幅W10を、上記第一中間素材17に設けられる左右1対の側壁部2、2である、上記第一中間素材17の幅W17よりも大きく(W10>W17)でき、前述した舌状部14、14同士の間隔D14を大きくできる。上述した様な第三工程により得られる、図8に示す様な第一中間素材17を構成する上記湾曲部16の厚さt16は、前記第一素板9の厚さt9 とほぼ同じ(t16≒t9 )である。
【0018】
尚、上記湾曲部16のうち、少なくとも弁体の基端部を突き当てる為の係合部6を構成する為の一端側部分には、次述する第四工程で押圧加工を施して、厚さを大きくする。この場合に、押圧加工後に所望の厚さを得る為には、上記湾曲部16の形状及び寸法を規制する必要がある。即ち、この湾曲部16の形状及び寸法の選択が、上記押圧加工に於ける厚さを決定付ける事になる。又、上記第一中間素材17には、上記湾曲部16を形成すると同時に、左右1対の側壁部2、2も同時に形成する。即ち、上記湾曲部16を形成するのに伴って、前記第一、第二素板13、20の幅方向両端部に形成した翼状部11、11及び中央部の透孔12の内側縁部に設けた舌状部14、14を起立させて、互いにほぼ平行な、上記1対の側壁部2、2とする。
【0019】
上述の様にして構成した、上記第一中間素材17には、続く第四工程で湾曲部16に押圧加工を施し、図9に示す様な第二中間素材18とする。即ち、上記第四工程では、上記湾曲部16を平板状に加工すると共に厚さを増大させて、図9に示す様に、上記第一素板9の厚さt9 {図6(B)参照}よりも大きな厚さt3 、t4 (t9 <t3 、t4 )を有する連結部3及び第二の連結部4とする。尚、上記湾曲部16は、必ずしも半円筒形でなくても良く、半長円筒状、半楕円筒状等、湾曲していれば良い。
【0020】
上記第四工程は、上記第一中間素材17の湾曲部16を、押圧加工用の押型と受型との間にセットした状態で加圧する冷間鍛造により行ない、上記湾曲部16を塑性変形させる。この結果、平板状の上記連結部3及び第二の連結部4が形成される。この様に、湾曲部16を塑性変形させて連結部3及び第二の連結部4とする際、断面円弧状の湾曲部16が平板状の連結部3及び第二の連結部4になる分、厚さがt3 、t4 にまで増大する。この様に、断面円弧状の湾曲部16を平板状の連結部3及び第二の連結部4にすると同時に厚さを増大させる加工は、プレスによる押圧加工を用いて、容易に行なえる。
【0021】
尚、図示の例では、一端側に設けた連結部3だけでなく、他端側に設けた第二の連結部4も厚さを大きくしている。但し、板金製ロッカーアームの使用時に特に大きな応力が加わるのは、弁体の基端部を突き当てる係合部6を設ける、連結部3の側である。従って、上記第二の連結部4の他側は、必ずしも厚さを増大させる必要はない。厚さを増大させる必要がなければ、単に湾曲部16を塑性変形させて平坦な連結部にすれば良い。但し、連結部3及び第二の連結部4の厚さを同じにする方が、加工の手間を少なくできる為、コスト上有利である。
【0022】
上記第四工程で、第一中間素材17に比較的厚肉の連結部3及び第二の連結部4を形成して第二中間素材18としたならば、次の第五工程でこれら連結部3及び第二の連結部4に塑性加工若しくは切削加工、更には必要とする研削加工を施す。即ち、図10に示す様に、上記連結部3に、図示しない弁体の基端部を突き当てる為の係合部6を形成する。又、上記第二の連結部4に、図示しないラッシュアジャスタの先端部を突き当てる為の第二の係合部7を形成する。この様な第五工程では、上記第二中間素材18の連結部3を、図示しない鍛造加工機の押型と受型との間にセットして、この連結部3に冷間鍛造を施す事により、図10(A)(B)(D)に示す様な、凹溝状でその底面が凸に湾曲した係合部6を形成する。又、上記第二の連結部4を、図示しない別の鍛造加工機の押型と受型との間にセットして、この第二の連結部4に冷間鍛造を施す事により、図10(A)(B)(C)に示す様な、球状凹孔である第二の係合部7を形成する。この様な第五工程により、前記第一素板9の厚さよりも大きな厚さを有する上記連結部3及び第二の連結部4に係合部6及び第二の係合部7を設けた、第三中間素材19となる。尚、上述した第一〜第五工程までの順序は、変更しても構わない。例えば、トランスファープレス加工やプログレッシブ加工に適する様に、上記各工程の順序や各中間素材の形状を変更しても良い。但し、最終的には上記第三中間素材19を得られる様にする。
【0023】
この様にして得られた第三中間素材19には、次の第六工程で、1対の側壁部2、2の中間部で互いに整合する位置に、それぞれ円孔5、5を、プレス加工、或は旋削加工により形成して、図5、11に示す様な板金製ロッカーアーム1として完成する。これら両円孔5、5は、前述した様に、ローラを回転自在に支持する為の支持軸の両端部を支持する為のものである。即ち、上記両円孔5、5に両端部を支持した支持軸の中間部周囲にローラを回転自在に支持すると共に、このローラの外周面をカムの外周面に当接させて、カムシャフトの回転運動を上記板金製ロッカーアーム1の揺動運動に変換自在とする。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な先発明に係る板金製ロッカーアーム及びその製造方法は、ロッカーアームの強度や剛性の向上を図れるだけでなく、工数及び部品点数の削減により、コストの低減、精度の向上、設備の簡略化を図れる為、高品質の板金製ロッカーアームを低コストで実現できる。
但し、より出力の大きなエンジンへの組み付けを可能にすべく、より大きな強度を得る為には、弁体の基端部を突き当てる係合部6に関して、次の様な点を改良する事が望まれている。
【0025】
この点に就いて、上述した先発明に係る板金製ロッカーアーム1に形成した係合部6の断面形状を示した、図12により説明する。連結部3の中間部を厚さ方向に変形させる事によりこの連結部3の片面(図12の下面)に、この連結部3の他の部分よりも凹んだ状態に上記係合部6を形成する事に伴って、この連結部3の他面(図12の上面)には、土手状に突出した、断面形状が台形である膨出部8が存在する状態となる。従来構造の場合には、この膨出部8の断面形状である台形の上辺に対応する、この膨出部8の中央部20の幅W20が、上記係合部6の幅W6 と同じか、この係合部の幅W6 よりも大きかった(W20≧W6 )。そして、上記中央部20の幅方向(図12の左右方向)両端縁は、上記係合部6の幅方向両端縁と幅方向に関してほぼ同じ位置か、外側に存在していた。
【0026】
上記係合部6及び膨出部は、前述した第五工程で第二中間素材18の端部で上記連結部3に対応する部分を、プレス加工装置に組み込んだ押型と受型との間で強く挟持する事により形成する。この際、上述の様に膨出部8の中央部20の幅W20が、上記係合部6の幅W6 と同じか、この係合部の幅W6 よりも大きいと、上記連結部3の幅方向の一部で、上記係合部6の幅方向両端部分(図12の鎖線β、β部分)に、剪断方向の力が加わる。この結果、これら各部分に内部歪みが生じ、製造時にクラック等が発生し易くなるだけでなく、上記係合部6に大きな力を長期間に亙り繰り返し加えると、この係合部6の幅方向両端縁部分に亀裂等の損傷が発生する可能性を生じる。
【0027】
使用時に上記係合部6に加わる力は、エンジンの出力を高くすべく、この係合部にその基端部を突き当てた弁体を付勢するリターンスプリングの弾力を大きくする程大きくなる。従って、板金製ロッカーアームを高出力エンジンに組み込み、しかも十分な耐久性を確保する為には、上記係合部6の強度を向上させる事が望まれる。
本発明の板金製ロッカーアームは、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明の板金製ロッカーアームは、1枚の金属材を打ち抜き成形する事により、所定の外形及び透孔を有する素板を形成し、この素板にプレス加工に基づく曲げ加工を施す事により、互いにほぼ平行な1対の側壁部とこれら両側壁部の幅方向一端縁同士を連結する連結部とを形成すると共に、これら両側壁部の互いに整合する位置に少なくとも1対の円孔を形成し、上記連結部の中間部を厚さ方向に変形させる事によりこの連結部の片面に、この連結部の他の部分よりも凹んだ状態に係合部を形成している。そして、この連結部の他面に、この係合部を形成する事に伴って土手状に突出した、断面形状が台形である膨出部を存在させている。以上の構成は、前述した先発明に係る板金製ロッカーアームと同様である。
更に、本発明の板金製ロッカーアームの場合には、上記台形の上辺に対応するこの膨出部の中央部の幅方向両端縁を、この係合部の幅方向両端縁よりも幅方向内側に存在させており、上記係合部を設ける上記連結部は、その厚さを増大させる事により、この係合部を設けた部分の厚さを、上記両側壁部の厚さよりも大きくしている。且つ、この係合部の幅方向両端部に凹溝状の隅角部が存在する。
【0029】
尚、好ましくは、請求項3に記載した様に、上記連結部の厚さのうち、上記膨出部の幅方向両側に存在する傾斜部と係合部の隅角部との間隔である、最も薄い部分の厚さtと、上記膨出部の中央部と上記係合部との間隔である、最も厚い部分の厚さTとの比t/Tを、0.5以上とする。
【0030】
【作用】
上述の様な本発明の板金製ロッカーアームは、前述した先発明に係る板金製ロッカーアームと同様に、板金製ロッカーアーム全体を1枚の金属板により一体に成形している為、互いに別々に造った複数個の部材同士を結合する手間が不要で、工数の削減を図ると同時に、製造コストの高騰や精度の悪化を防止し、しかも、組立や位置決めの為に複雑な設備を設ける必要をなくして、高品質の板金製ロッカーア−ムを低コストで造れる。
特に、本発明の板金製ロッカーアームの場合には、連結部の厚さ方向に関して係合部と反対側に存在する膨出部の断面形状である台形の上辺に対応するこの膨出部の中央部の幅方向両端縁が、上記係合部の幅方向両端縁よりも幅方向内側に存在する為、上記係合部及び膨出部を形成する際に、上記連結部の一部に剪断方向の力が加わる事がない。この為、この連結部に亀裂等の損傷が発生しにくくできる。
【0031】
又、上記係合部を設ける連結部の厚さを両側壁部の厚さよりも大きくしているので、この係合部の厚さを増大させる作業を、特別な装置を導入する事なく、プレス加工のみにより実施可能となる為、設備投資を抑制し、しかも、工程の自動化を行なう事による省力化により、高品質の板金製ロッカーアームを低コストで実現できる。そして、厚さが均一な1枚の金属板からロッカーアームを一体成形するにも拘らず、係合部を含む連結部の厚さを、1対の側壁部の厚さよりも大きくできる。従って、この係合部を含む連結部に作用する応力を低減して、無駄な重量増大を招来する事なく、板金製ロッカーアームの強度並びに剛性を確保できる。又、上記両側壁部の厚さは、これら両側壁部に要求される強度並びに剛性を確保できるものであれば良く、必要以上に大きくする必要がない。従って、これら両側壁部の外側面同士の間隔である、上記板金製ロッカーアームの幅を小さくできて、この板金製ロッカーアームを、エンジン内部の限られた空間内に組み込む為の設計が容易になる。
【0032】
又、請求項3に記載した様に、連結部の最も薄い部分の厚さtと、上記膨出部の中央部と上記係合部との間隔である、最も厚い部分の厚さTとの比t/Tを0.5以上にすると、板金製ロッカーアームの使用時に上記連結部に加わる力を均一化して、この連結部の損傷防止をより一層有効に図れる。
【0033】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、連結部3aの片面(図1〜2の下面)に設けた係合部6aにその基端部を突き当てた弁体を付勢するリターンスプリングの弾力を大きくし、上記係合部6aに加わる力が大きくなった場合でも、上記連結部3aの耐久性を十分に確保すべく、上記係合部6aの強度を向上させる為、上記連結部3aの断面形状を工夫した点にある。板金製ロッカーアーム1aのその他の部分の構成は、前述した先発明の場合と同様であるから、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0034】
先ず、請求項1に対応する構成とその作用・効果に就いて説明する。上記係合部6aは、前述した先発明の場合と同様に、上記連結部3aの幅方向(図1の表裏方向、図2の左右方向)中間部を厚さ方向(図1〜2の上下方向)に変形させる事により形成している。この様にして上記係合部6aを上記連結部3aの片面(図1〜2の下面)に、この連結部3aの他の部分よりも凹んだ状態に形成する事に伴って、この連結部3aの他面(図1〜2の上面)には、土手状に突出した、断面形状が台形である膨出部8aが存在する状態となる。この膨出部8aの、上記板金製ロッカーアーム1aの幅方向(図1の表裏方向、図2の左右方向)に関する断面形状は台形である。そして、この台形の上辺に対応する、上記膨出部8aの中央部20aの両側に、それぞれがこの中央部から離れるに従って上記係合部6aに近づく方向に傾斜した、1対の傾斜部21、21を形成している。
【0035】
特に、本発明の板金製ロッカーアーム1aの場合には、上記中央部20aの幅W20a を、上記係合部6aの幅W6aよりも小さくしている(W20a <W6a)。又、上記中央部20aの幅方向(図2の左右方向)両端縁を、上記係合部6aの幅方向両端縁よりも、幅方向に関して内側に存在させている。この為に図示の例では、上記中央部20aの幅方向中心位置と、上記係合部6aの幅方向中心位置とを一致させている(幅方向に関する位相を一致させている)。尚、上述の様に上記中央部20aの幅W20a を上記係合部6aの幅W6aよりも小さくする程度は、この係合部6aをプレス加工する際に、上記連結部3aの内部に剪断応力が加わらない範囲で規制する。従って、上記中央部20aの幅W20a は、上記係合部6aの幅W6aの80%以下(W20a ≦0.8W6a)、更に好ましくは60%以下(W20a ≦0.6W6a)とする。
【0036】
上記係合部6a及び膨出部8aは、第二中間素材18(図9参照)の端部で上記連結部3aに対応する部分を、プレス加工装置に組み込んだ押型と受型との間で強く挟持する事により形成する。本発明の場合には、上述の様に膨出部8aの中央部20aの幅W20a が、上記係合部6aの幅W6aよりも小さい為、上述の様なプレス加工の際、上記連結部3aの幅方向の一部で、上記係合部6aの幅方向両端部分(図2の鎖線γ、γ部分)に、剪断方向の力が加わる事がない。むしろ、この両端部分には、上記係合部6aを形成する為の押型の両端縁部と、この押型に対向する状態で設けられた受型の一部で、上記膨出部8aのうちの傾斜部21、21を形成する部分との間で、圧縮方向の力が加わり、上記両端部分の組織が密になる。この結果、この両端部分に、亀裂等の損傷に結び付く様な内部歪みが生じる事がなくなり、上記係合部6aに大きな力を長期間に亙り繰り返し加えた場合でも、この係合部6aの幅方向両端縁部分に亀裂等の損傷が発生しにくくなる。
【0037】
次に、請求項3に対応する構成とその作用・効果に就いて説明する。上記連結部3aの厚さは、上記膨出部8aの幅方向両側に存在する上記各傾斜部21、21と上記係合部6aの隅角部22、22との間で、最も薄い厚さtとなっている。これに対して、上記膨出部8aの中央部20aと上記係合部6aとの間で、最も厚い厚さTとなっている。上記請求項3に記載した板金製ロッカーアームの場合には、上記両厚さt、Tの比t/Tを、0.5以上としている。
【0038】
この様に、上記連結部3aの最も薄い部分の厚さtと最も厚い部分の厚さTとの比t/Tを0.5以上にすると、板金製ロッカーアーム1aの使用時に上記連結部3aに加わる力を均一化して、この連結部3aの損傷防止をより一層有効に図れる。即ち、上記比t/Tが小さ過ぎると、上記板金製ロッカーアームの使用時に、上記各傾斜部21、21と上記係合部6aの隅角部22、22との間部分に応力が集中し、この間部分に亀裂等の損傷が発生し易くなる。下記の表1は、上記比t/Tがこの間部分の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の条件とその結果とを表している。
【0039】
【表1】
【0040】
この実験は、上記比t/Tを異ならせた10通りの試料を用意し、それぞれに就いて同じ条件で、実際の使用条件に即した{1051.54N(107.3kgf )なる押圧力で上記係合部6aを繰り返し押圧する}耐久試験を行なった。尚、上記表1中、厚さt、Tを表す数値の単位はmmである。又、試験結果を表す符号のうち、○印は亀裂等の損傷が発生しなかった事を、×印は損傷が発生した事を、それぞれ表している。この様な実験の結果を表した表1から明らかな通り、上記比t/Tが0.5未満の場合には損傷が発生するが、この比t/Tが0.5以上の場合には損傷が発生しなくなる。従って、前記中央部20aの幅W20a を前記係合部6aの幅W6aよりも小さくすると共に、上記比t/Tを0.5以上にすれば、上記板金製ロッカーアーム1aの耐久性をより一層向上させる事ができる。
【0041】
次に、図3〜4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の板金製ロッカーアーム1bの場合には、係合部6bの幅方向両端部に存在する凹溝状の隅角部22a、22aの深さを、上述した第1例の場合よりも浅くすると共に、膨出部8bの断面形状の上辺に相当する中央部20bの幅W20b を、上記両隅角部22a、22aの間隔D22a よりも小さくしている。この様に上記中央部20bの幅W20b を上記両隅角部22a、22aの間隔D22a よりも小さくする程度も、上記係合部6bをプレス加工する際に、連結部3bの内部に剪断応力が加わらない範囲で規制する。例えば、上記中央部20bの幅W20b は、上記両隅角部22a、22aの間隔D22a の80%以下(W20b ≦0.8D22a )、更に好ましくは60%以下(W20b ≦0.6D22a )とする。
【0042】
上述の様に構成する本例の場合には、上記係合部6bを形成する際に、上記連結部3b内に好ましくない応力が発生するのをより有効に防止できる。即ち、上記係合部6bを形成する際には、上記各隅角部22a、22aの形成に伴って、上記連結部3bの一部が図3〜4の上方に少し押される。本例の場合には、上記各隅角部22a、22a全体が、上記膨出部8bの傾斜部21a、21aに対応する部分に存在するので、上記各隅角部22a、22aの形成に伴う力が、耐久性確保の面からは有害な、剪断応力に結び付く事はない。
【0043】
更に本例の板金製ロッカーアーム1bの場合には、左右1対の側壁部2、2の片端縁(図3の下端縁)中間部で、連結部3b及び第二の連結部4に隣接する部分に形成したくびれ部23a、23bを、上述した第1例の場合に比べて小さくして、これら各くびれ部23a、23bの奥端部(Rの頂点)位置を、図3の下方にずらせている。そして、これら各くびれ部23a、23bと、ローラ支持用の枢軸の両端部を支持する為の円孔5の周縁部との距離を長くしている。これら各くびれ部23a、23bと円孔5の周縁部との間部分には、この円孔5にその端部を内嵌した枢軸の端部をかしめ広げる事に伴ってこの円孔5の内周面に加わる大きな力に伴って引っ張り応力が加わるが、上記距離が長い分、上記間部分の応力を緩和して、この間部分に亀裂等の損傷が発生しにくくできる。本例の板金製ロッカーアーム1bの場合には、これらの構成により、前述した第1例の板金製ロッカーアーム1aに比べて、耐久性をより一層向上させる事ができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、軽量且つ低コストで造れ、しかも十分な耐久性を有する板金製ロッカーアームを実現して、ロッカーアームを組み込んだエンジンのコスト低減と高性能化とを図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分切断側面図。
【図2】図1の拡大X−X断面図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す部分切断側面図。
【図4】図3の拡大Y−Y断面図。
【図5】先発明に係る板金製ロッカーアームの斜視図。
【図6】先発明の第一工程により得られる第一素板を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図7】同第二工程により得られる第二素板を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図8】同第三工程により得られる第一中間素材を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図9】同第四工程により得られる第二中間素材を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図10】同第五工程により造られる第三中間素材を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図11】同第六工程を経て完成した板金製ロッカーアームを示しており、(A)は平面図、(B)は(A)のa−a断面図、(C)は(A)のb−b断面図、(D)は(A)のc−c断面図。
【図12】図11(D)の断面部分の拡大図。
【符号の説明】
1、1a、1b 板金製ロッカーアーム
2 側壁部
3、3a、3b 連結部
4 第二の連結部
5 円孔
6、6a、6b 係合部
7 第二の係合部
8、8a、8b 膨出部
9 第一素板
10 基部
11 翼状部
12 透孔
13 第二素板
14 舌状部
15 切り欠き部
16 湾曲部
17 第一中間素材
18 第二中間素材
19 第三中間素材
20、20a、20b 中央部
21、21a 傾斜部
22、22a 隅角部
23a、23b くびれ部

Claims (3)

  1. 1枚の金属材を打ち抜き成形する事により、所定の外形及び透孔を有する素板を形成し、この素板にプレス加工に基づく曲げ加工を施す事により、互いにほぼ平行な1対の側壁部とこれら両側壁部の幅方向一端縁同士を連結する連結部とを形成すると共に、これら両側壁部の互いに整合する位置に少なくとも1対の円孔を形成し、上記連結部の中間部を厚さ方向に変形させる事によりこの連結部の片面に、この連結部の他の部分よりも凹んだ状態に係合部を形成し、この連結部の他面に、この係合部を形成する事に伴って土手状に突出した、断面形状が台形である膨出部を存在させており、この台形の上辺に対応するこの膨出部の中央部の幅方向両端縁を、この係合部の幅方向両端縁よりも幅方向内側に存在させており、上記係合部を設ける上記連結部は、その厚さを増大させる事により、この係合部を設けた部分の厚さを、上記両側壁部の厚さよりも大きくしており、この係合部の幅方向両端部に凹溝状の隅角部が存在する板金製ロッカーアーム。
  2. 係合部の幅が1対の側壁部の間隔よりも小さい、請求項1に記載した板金製ロッカーアーム。
  3. 連結部の厚さのうち、膨出部の幅方向両側に存在する傾斜部と係合部の隅角部との間隔である、最も薄い部分の厚さtと、上記膨出部の中央部と上記係合部との間隔である、最も厚い部分の厚さTとの比t/Tを、0.5以上とした、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した板金製ロッカーアーム。
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