JP3903011B2 - 先引きローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミシンに設けられる先引きローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
ミシンは、支持台と押え装置とによって生地を挟持した状態で、送り装置によって生地を送りながら、針を上下に往復動させて縫製する。押え装置は、押え棒の下端部に押え部材が設けられて構成され、押え部材によって支持台と協働して生地を挟持することができる。送り装置は、支持台に設けられ、下方から送り歯を生地に当接して生地を送る送り歯装置と、支持台の上方に設けられて上方からローラ片を生地に当接させて生地を送る先引きローラとを有する。先引きローラは、回転自在に支持されるローラ片と、ローラ片を回転駆動するモータを有し、支持台とローラ片とによって生地を挟むようにしてローラ片を生地に当接させ、そのローラ片を回転させることによって、生地を送ることができる。
【0003】
また先引きローラは、ローラ片およびモータが、ユニット化されており、このユニットは、上下に変位自在に設けられている。このようにユニットを変位自在に設けることによって、支持台とローラ片とによって生地を挟んで送ることができるとともに、ローラ片を支持台から退避させて生地のセットおよび取出を実現することができる(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−198373号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような先引きローラは、縫製動作を補助する手段であるローラ片と、このローラ片を駆動する駆動手段であるモータとがユニット化され、このユニットを変位させている。このようにローラ片を変位させるにあたって、モータも変位させる必要があり、ローラ片を変位させることが困難である。またローラ片が変位自在に設けられる理由は、生地のセットおよび取出のためだけではなく、生地の段差などに追従して変位することによって円滑な生地の送りを達成せんがためでり、ローラ片の生地の段差などに対する追従性のさらなる向上のためにも、ローラ片の変位を容易にすることが望まれている。
【0006】
このようにたとえばローラ片である縫製動作を補助する手段の変位を容易にすることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、ローラ片の変位を容易にすることができる先引きローラを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、(a)支持台(5)上に載置された被縫製物(2)を、駆動手段(106)によって変位駆動される押え棒(22)に設けられる押え部材(23)によって上方から弾発的に押圧した状態で、送り歯(8)によって予め定める送り方向(A)に送りながら、上下に往復動する縫い針(10)によって縫製するミシン(1)に設けられ、送り歯(8)による被縫製物(2)の送り動作を補助する先引きローラ(4)であって、
(b)上下に延び下方になるにつれて送り方向(A)上流側に向かうように傾斜して配置される基体(15)であり、
(b1)長手方向の中間部に、上方になるにつれて送り方向(A)下流側に向かう方向に延びる案内孔(46,47)が形成される基体(15)と、
(c)略水平でありかつ送り方向(A)に垂直な基準方向に平行であり、案内孔(46,47)よりも下方かつ送り方向(A)上流側に配置されるリンク角変位軸線(L51)まわりに角変位自在に、基端部で基体(15)に連結される案内リンク(51,52)と、
(d)上下に延び下方になるにつれて送り方向(A)上流側に向かうように傾斜して配置されるローラ支持体(35)であり、
(d1)下部側の部分が、基体(15)から下方および送り方向(A)上流側に部分的に突出する状態で、上部側の部分が基体(15)に部分的に挿入されて設けられ、
(d2)上端部に、基体(15)の案内孔(46,47)に嵌まり込んで案内される案内ピン(44,45)が形成され、
(d3)長手方向中間部に、案内リンク(51,52)の遊端部に対して基準軸線に平行な角変位軸線(L50)まわりに角変位自在に連結される案内軸(50)が設けられて、長手方向中間部が、リンク角変位軸線(L51)まわりに、送り方向下流側になるにつれて上方に向かう経路に沿って変位するように案内され、
(d4)基体(15)に対して伸長および縮退変位自在であるローラ支持体(35)と、
(e)ローラ支持体(35)の下端部に、基準軸線に平行なローラ回転軸線(L16)まわりに回転自在に設けられるローラ片(16)であり、
(e1)ローラ支持体(35)の基体(15)に対する伸縮動作によって、送り歯(8)による送り動作を補助する送り位置(20)と、送り位置(20)から上方かつ送り方向(A)下流側へ退避する送り解除位置(21)とにわたって、基体(15)に対して変位自在に設けられ、
(e2)送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたる経路は、ローラ片(16)が送り位置(20)から送り解除位置(21)に変位するとき、まず送り方向(A)下流側へ変位した後上方へ変位する経路であり、
(e3)送り位置(20)に配置される状態で、送り動作を補助するローラ片(16)と、
(f)基体(15)に固定され、送り動作を補助するようにローラ片(16)を回転駆動するモータ(17)と、
(g)モータ(17)の回転駆動力を、ローラ片(16)の変位に追従してローラ片(16)に伝達する伝動機構(18)であり、
(g1)モータ(17)の出力軸(60)に連結される駆動プーリ(61)と、ローラ片(16)に連結される従動プーリ(62)と、案内軸(50)に連結される中間プーリ(63)と、駆動プーリ(61)および従動プーリ(62)にわたって中間プーリ(63)を介して巻き掛けられる伝動ベルト(64)を有し、
(g2)駆動プーリ(61)、従動プーリ(62)および中間プーリ(63)は、歯付プーリであり、伝動ベルト(64)は、無端ループ状のタイミングベルトであり、
(g3)ローラ片(16)の変位に対応して、伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるように、伝動ベルト(64)を案内するベルト案内手段(70)が設けられる伝動機構(18)と、
(h)ローラ片(16)およびローラ支持体(35)に、ローラ片(16)が送り位置(20)に向かう方向のばね力を与える弾発押圧手段(77)と、
(i)弾発押圧手段(77)のばね力に抗して、ローラ片(16)を送り解除位置(21)に向けて変位させるための送り解除操作手段(90)であり、
(i1)手動操作部(91)と、連動操作部(92)とを有し、
(i2)手動操作部(91)は、解除操作片(93)と、復帰阻止片(94)と、阻止片駆動ばね部材(95)とを有し、
(i3)解除操作片(93)は、長手方向中間部で基体(15)に支持され、案内孔(46,47)よりも上方に配置される基準方向に平行な軸線(L93)まわりに角変位自在であり、下端部に、長手方向に延びる切欠き溝(96)が形成され、この切欠き溝(96)に案内ピン(44)が嵌まり込み、案内ピン(44)に対して、切欠き溝(96)に沿って変位自在かつ案内ピン(44)の軸線まわりに角変位自在に連結され、上端部に把持部(97)が形成され、
(i4)復帰阻止片(94)は、解除操作片(93)の下端部寄りの部分に、送り方向上流側から臨んで設けられ、長手方向中間部で、基準方向に平行な軸線(L94)まわりに角変位自在であり、上端部は解除操作片(93)に当接され、下端部に把持部(99)が形成され、
(i5)阻止片駆動ばね部材(95)は、解除操作片(93)の操作に追従して、復帰阻止片(94)を角変位させ、復帰阻止片(94)の上端部の解除操作片に対する当接を維持するように、復帰阻止片(94)にばね力を与え、
(i6)復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する面部分は、曲面状の面部分(200)と、曲面状の面部分(200)の両側の平面状の面部分(201,202)を有し、復帰阻止片(95)は、解除操作片(93)に対して、ローラ片(16)が送り位置(20)および送り解除位置(21)に配置されるとき、平面状の面部分(201,202)で当接し、送り位置(20)および送り解除位置(21)の間に配置されると、曲面状の面部分(200)で当接し、
(i7)復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する位置と復帰阻止片(94)の角変位の軸線(L94)との距離は、ローラ片(16)が、送り位置(20)にある場合最も小さく、送り解除位置(21)に向かうにつれて大きくなり、送り解除位置(21)にある場合最も大きくなり、
(i8)連動操作部(92)は、ローラ支持体(35)の下端部に設けられ、押え棒(22)に固定される係止部材(105)に上方から係止される送り解除操作手段(90)とを含むことを特徴とする先引きローラである。
【0009】
本発明に従えば、送り動作を補助するローラ片(16)は、基体(15)に変位自在に設けられ、このローラ片(16)を駆動するモータ(17)は、基体(15)に固定される。このように固定されるモータ(17)の回転駆動力が、伝動機構(18)によって、ローラ片(16)の変位に追従してローラ片(16)に伝達される。モータ(17)の駆動力がローラ片(16)に伝達されることによってローラ片(16)が駆動され、送り動作を補助する。ローラ片(16)を変位させるにあたっては、モータ(17)を変位させる必要がない。さらにローラ片(16)およびローラ支持体(35)に、ローラ片(16)が送り位置に向かう方向のばね力を与える弾発押圧手段(77)が設けられており、ローラ片(16)が、たとえば被縫製物(2)の段差に追従するなど、送り動作に追従して変位するように構成される。したがってローラ片(16)は、送り動作に円滑に追従することができる。
【0010】
また基体(15)に対して伸長および縮退自在にローラ支持体(35)が設けられている。基体(15)には、上方になるにつれて送り方向下流側に向かう方向に延びる案内孔(46,47)が形成され、ローラ支持体(35)に形成される案内ピン(44,45)が嵌まり込んでいる。また案内孔(46,47)よりも下方かつ送り方向上流側に配置されるリンク角変位軸線(L51)まわりに角変位自在に、案内リンク(51,52)がその基端部で基体(15)に連結されており、案内リンク(51,52)の遊端部には、ローラ支持体(35)の案内軸(50)が角変位自在に連結されている。ロータ支持体(35)の長手方向中間部は、リンク角変位軸線(L51)まわりに、送り方向下流側になるにつれて上方に向かう経路に沿って変位するように案内される。このロータ支持体の下端部に、ローラ片(16)が設けられ、ローラ支持体(35)の基体(15)に対する伸縮動作によって、ローラ片(16)が、送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたって、変位自在である。送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたる経路は、ローラ片(16)が送り位置(20)から送り解除位置(21)に変位するとき、まず送り方向(A)下流側へ変位した後上方へ変位する経路である。ローラ片(16)がこのような移動経路を移動するようにしているので、送り位置(20)を、できるかぎり押え部材(23)による押え位置に近づけることができ、良好な縫目を形成することができる。
【0011】
またローラ片(16)の基体(35)への連結構造が、前述のような案内リンク(51,52)を用いる構造であり、ローラ片(16)の変位に伴う摩擦損失を少なくすることができる。したがってローラ片(16)の円滑な変位を実現できる。さらに伝動機構(18)は、モータ(17)の出力軸(60)に連結される駆動プーリ(61)と、ローラ片(16)に連結される従動プーリ(62)と、案内軸(50)に連結される中間プーリ(63)と、駆動プーリ(61)および従動プーリ(62)にわたって中間プーリ(63)を介して巻き掛けられる伝動ベルト(64)を有し、ローラ片(16)の変位に対応して、伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるように、伝動ベルト(64)を案内するベルト案内手段(70)が設けられる。これによって駆動プーリ(61)と従動プーリ(62)に巻き掛けられる伝動ベルト(64)を用い、ローラ片(16)の変位を許容したうえで、ローラ片(16)への駆動力の伝達が可能になる。しかも駆動プーリ(61)、従動プーリ(62)および中間プーリ(63)が、歯付プーリであり、伝動ベルト(64)が、タイミングベルトであり、かつ伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるので、ローラ片(16)の位置に拘わらず、ローラ片(16)を駆動することが可能であるうえ、伝動ベルト(64)が不所望に外れてしまうなどの不具合を生じてしまうことがない。
【0012】
また送り解除操作手段(90)が設けられ、弾発押圧手段(77)のばね力に抗して、ローラ片(16)を送り解除位置(20)に向けて変位させることができる。送り解除操作手段(90)の手動操作部(91)は、解除操作片(93)と、復帰阻止片(94)と、阻止片駆動ばね部材(95)とを有している。解除操作片(93)は、基体(16)に角変位自在に支持され、上端部に把持部(97)が形成され、下端部に切欠き溝(96)が形成されている。切欠き溝(96)には、案内ピン(44)が嵌まり込んでおり、把持部(97)を把持し、解除操作片(93)を手動で操作することによって、ローラ片(16)を送り解除位置(21)に向けて変位させることができる。
復帰阻止片(94)は、角変位自在であり、上端部の面部分(200〜202)で解除操作片(93)に当接され、下端部に把持部(99)が形成されている。この復帰阻止片(94)には、阻止片駆動ばね部材(95)によって解除操作片(93)に対する当接を維持するようにばね力が与えられている。ローラ片(16)が送り位置(20)に配置されると、復帰阻止片(94)は、解除操作片(93)に対して、図3に実線で示すように、一方の平面状の面部分(201)で当接する。ローラ片(16)が送り解除位置(21)に配置されると、復帰阻止片(94)は、図3に仮想線で示すように、他方の平面状の面部分(202)で当接する。ローラ片(16)が送り位置(20)および送り解除位置(21)の間に配置されると、解除操作片(93)に対して、曲面状の面部分(200)で当接する。また復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する位置と復帰阻止片(94)の角変位の軸線(L94)との距離は、ローラ片(16)が、送り位置(20)にある場合最も小さく、送り解除位置(21)に向かうにつれて大きくなり、送り解除位置(21)にある場合最も大きくなる。したがって復帰阻止片(94)は、ローラ片(16)が送り解除位置(21)を除く位置に配置される場合には、ローラ片(16)が送り位置に向かう方向へ変位することを許容するが、ローラ片(16)が送り解除位置(21)に配置される場合には、ローラ片が送り位置(21)に向かう方向へ変位することを阻止する。この阻止状態は、復帰阻止片(94)の把持部(99)を把持し、手動操作して角変位させることによって解除することができる。
【0013】
送り解除操作手段(90)の連動操作部(92)は、ローラ支持体(35)の下端部に設けられ、押え棒(22)に固定される係止部材(105)に上方から係止される。押え部材(23)が被縫製物(2)を弾発的に押圧する押え位置にある状態で、ローラ片(16)が送り位置に配置され、かつ連動操作部(92)が係止部材(105)に係止されている。この状態から押え部材(23)が上方へ変位するように駆動手段(106)によって変位駆動されると、この駆動力がローラ支持体(35)に伝達され、ローラ片(16)が送り解除位置(21)に向けて連動して変位される。このようにローラ片(16)は、押え部材(23)に連動して変位させることができる。この連動時には、ローラ片(16)は、送り解除位置(21)を除く可動範囲内で変位される。またローラ片(16)を手動操作するときは、押え部材(23)とは別に、ローラ片(16)だけを変位させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態のミシン1の一部を、生地の送り方向A下流側から見て示す斜視図である。ミシン1は、たとえば衣服の布生地などの被縫製物2を縫製するミシン本体3と、ミシン本体3の外側に設けられる付属装置である先引きローラ4とを含む。先引きローラ4は、ミシン本体3の支持台5の上方における背後側となる送り方向A下流側に、支持台5に対向して設けられる。
【0015】
ミシン本体3は、針板6などが設けられる略水平な支持台5に支持される被縫製物2を、押え装置7によって上方から弾発的に押圧し、支持台5と押え装置7とによって弾発的に挟持した状態で、支持台5に設けられる送り歯8を備えた送り歯装置によって、予め定める略水平な送り方向Aへ送りながら、支持台5の上方に設けらえる針棒に保持される縫い針10を、部分的に支持台5に挿入されるように、略鉛直な針移動方向Bへ往復動させる。さらにミシン本体3は、このように縫い針10を往復動させて、縫い針10によって被縫製物2を挿通してもたらされる針糸を、支持台5に設けられるかまおよびルーパーなどの捕捉器によって捕捉し、針糸と捕捉器が保持する糸、たとえばかまの場合はボビン糸とを係合し、被縫製物2を縫製することができる。
【0016】
先引きローラ4は、前述のミシン本体3の縫製動作を補助する装置であって、具体的には、送り歯8を備える送り歯装置による被縫製物2の送り動作を送り歯装置に同期して補助するための装置である。したがって先引きローラ4は、送り補助装置であり、送り歯装置と併せて送り装置を構成する。この先引きローラ4は、基体15と、縫製補助手段であるローラ片16と、補助駆動手段であるモータ17と、動力伝達手段である伝動機構18とを含む。
【0017】
基体15は、ミシン1の機体の一部を成すミシン本体3のアーム11に固定される。ローラ片16は、縫製動作を補助する縫製補助位置である送りを補助する送り位置20と、送り位置20から上方かつ送り方向下流側へ退避する補助解除位置である送り解除位置21とにわたって、ローラ移動方向Cへ、基体15に対して変位自在に設けられ、送り位置20に配置される状態で、送りを補助する。モータ17は、基体15に固定され、送り動作を補助するようにローラ片16を駆動する。つまりモータ17は、ローラ片16を回転駆動する。伝動機構18は、モータ17の駆動力を、ローラ片16の変位に追従してローラ片16に伝達する。
【0018】
モータ17の回転駆動力は、伝動機構18によってローラ片16に伝達され、これによってローラ片16がモータ17によって回転駆動される。このローラ片16は、送り位置20に配置される状態で、支持台5に支持される被縫製物2に弾発的に当接され、支持台5とローラ片16とによって被縫製物2が弾発的に挟持される。被縫製物2を弾発的に挟持した状態で、ローラ片16を送り歯8と同期して回転駆動することによって、送り歯装置による送り動作と同期して被縫製物2を送り方向Aへ送ることができる。
【0019】
ミシン1では、良好な縫目を形成するために、被縫製物2が縫い針10によって不所望に変位してしまうことを防ぐために、支持台5と押え装置7とによって、被縫製物2を挟持した状態で、送り歯装置によって被縫製物2を送るとともに、支持体5とローラ片16とによって被縫製物2を弾発的に挟持して先引きローラ4によって送り動作を補助している。
【0020】
したがって縫製動作を開始する前に、支持台5と押え装置7との間および支持台5と先引きローラ4のローラ片16との間に、被縫製物2を配置しなければならない。また縫製動作の終了後に、支持台5と押え装置7との間および支持台5とローラ片16との間から、被縫製物2を取出さなければならない。このような被縫製物2の配置および取出を容易にするために、押え装置7および先引きローラ4は、支持台5と協働した被縫製物2の挟持を解除できるように構成されている。
【0021】
先引きローラ4では、ローラ片16が、前述のように変位自在に設けられており、送り位置20から上方および送り方向A下流側へ変位して退避し、送り解除位置21に配置されと、そのローラ片16は、支持台5から退避している。このように退避させた状態では、被縫製物2の挟持が解除され、支持台5とローラ片16との間に対する被縫製物2の配置および取出が可能になる。
【0022】
押え装置7は、ミシン本体3のアームに支持される押え棒22と、押え棒22の下端部となる支持台5寄りの端部に設けられる押え部材23とを有する。この押え装置7は、布押えなどとも呼ばれる装置であり、押え部材23によって、被縫製物2を弾発的に押え、支持台5と協働して弾発的に挟持する。
【0023】
押え棒20は、その軸線が略鉛直な上下方向に配置される状態で、その軸線に沿って、略鉛直な押え移動方向Dへ変位自在に支持されている。これによって押え装置7は、支持台5と協働して被縫製物2を挟持する押え位置と、押え位置から退避して被縫製物2の挟持を解除する押え解除位置とにわたって、押え部材23を変位させることができる。したがって押え部材23を押え位置に配置することによって、被縫製物2を挟持して不所望な変位を阻止し、押え部材23を押え解除位置に配置することによって、被縫製物2の挟持が解除され、支持台5と押え部材23との間に対する被縫製物2の配置および取出が可能になる。図1には、押え位置を示す。
【0024】
図2は、先引きローラ4を送り方向A上流側から見て示す正面図である。図3は、先引きローラ4を図2の左側から見て示す左側面図である。図4は、先引きローラ4を図2の右側から見て示す右側面図である。図5は、先引きローラ4を送り方向A下流側から見て示す背面図である。図6は、図2の切断面線S6−S6から見て示す断面図である。図2〜図6には、構造の理解を容易にするためにカバーなどを取外して内部構造が見えるように示す。
【0025】
先引きローラ4の基体15は、上下方向に延び、下方になるにつれて送り方向A上流側に向かうように傾斜して配置され、上端部においてブラケット29を介してミシン本体3のアームに固定される。この基体15は、略鉛直方向および送り方向Aを含む仮想平面に略平行に配置される2つの長手板状の基体支持板30,31を有する。各基体支持板30,31は、上下方向に延びて配置され、長手方向中間部で、下方に成るにつれて送り方向A上方側へ向かうように屈曲し、全体として、下方になるにつれて送り方向A上流側に向かうように傾斜して配置される。このような各基体支持板30,31が、略水平でありかつ送り方向Aに略垂直な方向(以下「基準方向」という)Eに間隔をあけた状態で、連結部材32,33によって連結され、基体支持板30,31間に収容空間が形成されて、基体15が構成される。
【0026】
先引きローラ4は、ローラ支持体35を有しており、このローラ支持体35にローラ片16が回転自在に支持されている。ローラ支持体35は、下部側の部分が基体15から下方および送り方向A上流側に部分的に突出する状態で、上方側の部分が基体15に部分的に挿入されて、基体15に対して伸長および縮退変位自在に設けられる。
【0027】
ローラ支持体35は、略鉛直方向および送り方向Aを含む仮想平面に略平行に配置される2つの長手板状のローラ支持板36,37を有する。各ローラ支持板36,37は、上下方向に延びて配置され、長手方向中間部で、下方に成るにつれて送り方向A上方側へ向かうように屈曲し、全体として、下方になるにつれて送り方向A上流側に向かうように傾斜して配置される。このような各ローラ支持板36,37が、基準方向Eに間隔をあけた状態で、連結部材38〜40によって連結され、ローラ支持板36,37間に収容空間が形成されて、ローラ支持体35が構成される。
【0028】
このローラ支持体35の下端部に、基準方向Eに延びるローラ回転軸線L16まわりに回転自在にローラ支持軸42が、ローラ支持体35を挿通する状態で支持される。ローラ支持軸42のローラ支持体35から突出した部分にローラ片16が設けられる。このようにしてローラ片16が、ローラ支持体35の下端部の外側に、ローラ回転軸線L16まわりに回転自在に設けられる。
【0029】
またローラ支持体35の上端部には、ローラ支持体35から両外方に基準方向Eへ突出する案内ピン44,45が設けられる。本実施の形態では、各案内ピン44,45は、各ローラ支持板36,37の上端部を連結する連結部材39と一体に形成される。
【0030】
基体15の各基体支持板30,31には、長手方向中間部に、上方になるにつれて送り方向A下流側に向かう方向に延びる案内孔46,47が貫通してそれぞれ形成されている。ローラ支持体35の各案内ピン44,45は、各案内孔46,47に嵌まり込んで案内され、これによってローラ支持体35の上端部が、各案内孔46,47に沿って変位するように案内される。
【0031】
また各基体支持板30,31には、基準方向Eに平行なリンク角変位軸線L51まわりに角変位自在に、案内リンク51,52がその基端部で連結されている。リンク角変位軸線L51は、各案内孔46,47よりも下方かつ送り方向A上流側に配置される。また各基体支持板30,31には、リンク角変位軸線L51よりも下方側かつ送り方向A下流側の範囲において、リンク角変位軸線L51まわりの円弧に沿って、各案内リンク51,52の遊端部の移動経路に対応して、軸挿通孔55,56が形成されている。
【0032】
ローラ支持体35の長手方向中間部には、ローラ支持体を挿通して案内軸50が設けられる。この案内軸50のローラ支持体35から両外方へ突出した部分は、各軸挿通孔55,56を挿通し、各案内リンク51,52の遊端部に、基準方向Eに平行な案内軸50の軸線L50まわりに角変位自在に連結される。これによってローラ支持体35の中間部が、リンク角変位軸線L51まわりに、送り方向A下流側になるにつれて上方になる経路に沿って変位するように案内される。
【0033】
このようにしてローラ支持体35は、各案内リンク51,52を有するリンク機構を用いた連結手段110によって基体15に連結され、送り方向A下流側になるにつれて上方になる方向へ、基体15に対して伸長および縮退変位自在である。これによってローラ片16が、送り位置20と、送り位置21に対して上方かつ送り方向A下流側となる送り解除位置21とにわたって、送り方向A下流側になるにつれて上方になる経路に沿って変位自在である。このローラ片16の経路は、送り方向Aおよび下方に凸の経路であって、送り位置20から送り解除位置21に変位するとき、まず送り方向A下流側へ変位した後上方へ変位するように変位する。
【0034】
より良好な縫目を形成するためには、ローラ片16は、被縫製物2に当接して送るときの位置、すなわち送り位置20を、できるだけ押え装置7による挟持位置に近接していることが好ましく、したがってできるだけ押え棒22の軸線に近接していることが好ましい。このような位置に押え位置20を配置した場合、押え部材23を押え位置から上方へ退避させることなく、ローラ片16だけを上方へ退避させると、ローラ片16と押え装置7とが干渉してしまうので、ローラ片16を単に上方へ退避させる構成では、ローラ片16を押え装置7による挟持位置に近接させることが困難である。これに対して前述のように、まず送り方向A下流側へ変位した後上方へ変位するようにローラ片16が変位するので、送り位置16をできるかぎり押え部材23による挟持位置に近づけることができる。
【0035】
回転駆動源であるモータ17は、基体15の上端部に基体15の外方に配置されて固定される。このモータ17は、出力軸60が基体15内に突出するように設けられている。出力軸60は、基準方向Eに平行な駆動軸線L60まわりに回転自在であり、この出力軸60に、駆動プーリ61が設けられる。駆動プーリ61は、歯付プーリである。
【0036】
伝動機構18は、前記駆動プーリ61と、従動プーリ62と、中間プーリ63と、伝動ベルト64とを有する。従動プーリ62は、ローラ支持体35内、すなわち各ローラ支持板36,37間に配置されて、ローラ支持軸42に設けられる。中間プーリ62は、各ローラ支持板36,37間に配置されて、案内軸50に設けられる。これら従動プーリ62および中間プーリ63は、歯付プーリである。また従動プーリ62と中間プーリ63との間には、各ローラ支持板36,37間に配置されて、固定案内プーリ65が設けられており、固定案内プーリ65は、基準方向Eに平行な軸線L65まわりに回転自在である。
【0037】
伝動ベルト64は、無端ループ状のベルトであって、タイミングベルトである。この伝動ベルト64は、駆動プーリ61と従動プーリ62とにわたって、中間プーリ63を介して巻き掛けられる。中間プーリ63は、伝動ベルト64の内方に配置される。
【0038】
詳細に述べると、伝動ベルト64は、送り方向A上流側の部分が、駆動プーリ61に送り方向A上流側から巻掛けられ、この駆動プーリ61から下方へ延びて、従動プーリ62に送り方向A上流側から巻掛けられる。さらに伝動ベルト64の送り方向A上流側の部分は、駆動プーリ61から従動プーリ62に至るまでの間に、第1の連結部材38、中間プーリ63、固定案内プーリ65および第3の連結部材40の順に、第1の連結部材38、中間プーリ63および第3の連結部材40には、送り方向A上流側から、案内プーリ63には、送り方向A下流側から巻き掛けられる。
【0039】
また伝動ベルト64は、送り方向A下流側の部分が、駆動プーリ61に送り方向A下流側から巻掛けられ、この駆動プーリ61から下方へ延びて、従動プーリ62に送り方向A下流側から巻掛けられる。さらに伝動ベルト64の送り方向A下流側の部分は、駆動プーリ61から従動プーリ62に至るまでの間に、第2の連結部材39、中間プーリ63および第3の連結部材40の順に、送り方向A下流側から巻き掛けられる。
【0040】
第1の連結部材38は、ローラ支持体35の上端部で、ローラ支持板36,37を連結する2つの連結部材38,39のうち、送り方向A上流側に配置される連結部材であり、第2の連結部材39は、前記2つの連結部材38,39のうち、送り方向A下流側に配置される連結部材であり、第3の連結部材40は、ローラ支持体35の下端部で、ローラ支持板36,37を連結する連結部材である。このようにして伝動ベルト64は、基体15からローラ支持体16に沿って、基体15内およびローラ支持体16内に配置される。
【0041】
このような伝動機構18によってモータ17の回転駆動力をローラ片17に伝達することができる。伝動ベルト64を用いることによって、ローラ片16およびローラ支持体35の変位を許容できる伝動機構18を実現することができる。
【0042】
また先引きローラ4は、ローラ片16の変位に対応して、伝動ベルト64の張力が一定に保たれるように、伝動ベルト64を案内するベルト案内手段70をさらに含む。ベルト案内手段70は、各基体支持板30,31間に配置されて、駆動プーリ61と中間プーリ63との間に設けられる。
【0043】
ベルト案内手段70は、作動片71と、可動案内プーリ72と、ばね部材73とを有する。作動片71は、基端部で、基準方向Eに平行な軸線L71まわりに角変位自在に、基体15に設けられる。可動案内プーリ72は、作動片71の遊端部に、基準方向Eに平行な軸線L72まわりに回転自在に設けられる。この可動案内プーリ72は、伝動ベルト64の送り方向A上流側の部分よりも、送り方向A上流側に配置されている。
【0044】
ばね部材73は、ねじりコイルばねによって実現され、一端部が基体15に固定される係止突起76に係止され、他端部が作動片72の遊端部付近に係止される。このばね部材73は、可動案内プーリ72を送り方向Aへ伝動ベルト64に向けて押圧するばね力を作動片72に与える。これによって可動案内プーリ72が伝動ベルト64に弾発的に当接され、ローラ片16およびローラ支持体35の位置に関わらず、伝動ベルト64の張力がほぼ一定に保たれる。
【0045】
また先引きローラ4には、弾発押圧手段77が設けられる。弾発押圧手段77は、ローラ片16およびローラ支持体35に、ローラ片16が送り位置20に向かう方向のばね力を与える手段であり、押圧操作片78とばね力発生部79とを有する。
【0046】
押圧操作片78は、長手状の部材であって、基体15内、すなわち各基体支持板30,31間に配置され、ローラ支持体35の上方に設けられる。この押圧操作片78は、長手方向中間部において、基準方向Eに平行な軸線L78まわりに角変位自在に設けられる。押圧操作片78の一端部となる下端部は、ローラ支持体35の上端部に当接されている。押圧操作片78の他端部となる上端部には、凹所が形成される受部87が形成されている。
【0047】
ばね力発生部79は、押圧操作片の上方に設けられる。ばね力発生部79は、基体15に位置調整自在に設けられるばね受部材80と、一端部がばね受部材80に支持されるばね部材81と、ばね部材81の他端部に支持された状態で押圧操作片78の受部87の凹所に嵌まり込んで、ずれないように当接する当接片82とを有する。
【0048】
ばね部材81は、圧縮コイルばねであり、そのばね力を当接片82を介してローラ支持体35に与える。このような構成によってローラ支持体35を、ローラ片16が、送り位置20に向かう方向へ、弾発的に押圧することができる。ばね受部材80の位置を調整し、ばね部材81のばね力を調整することができる。
【0049】
また弾発押圧手段77は、前記構成とは別に、基体15のモータ17と同一の外側に、送りばね部材85が設けられる。送りばね部材85は、一端部が基体15に固定される係止突起88に係止され、他端部が2つの案内ピン44,45のうちの1つの案内ピン45に係止される。この送りばね部材85は、引張コイルばねであり、ローラ支持体35に、ローラ片16が送り位置20に向かう方向のばね力を与えることができる。このばね力も、ローラ支持体35を、ローラ片16が、送り位置20に向かう方向へ、弾発的に押圧するために寄与している。
【0050】
また先引きローラ4には、送り解除操作手段90が設けられている。この送り解除操作手段90は、前述のように先引きローラ4に、ローラ片16を送り位置20に向けて変位させるためのばね力を与える手段が設けられるが、このばね力に抗してローラ片16を送り解除位置21に向けて変位させるための手段である。送り解除操作手段90は、手動操作部91と、連動操作部92とを有する。
【0051】
手動操作部91は、解除操作片93と、復帰阻止片94と、阻止片駆動ばね部材95とを有する。この手動操作部91は、基体15のモータ17とは反対側の外側に設けられる。
【0052】
解除操作片93は、長手状の部材であって、基体15に、案内孔45,46よりも上方で支持で支持される。この解除操作片93は、長手方向中間部において、基準方向Eに平行な軸線L93まわりに角変位自在に設けられる。解除操作片93の一端部となる下端部は、長手方向に延びる切欠き溝96が形成されて、二股状に形成され、この切欠き溝96に2つ案内ピン44,45のうちのもう1つの案内ピン44が嵌まり込む状態で、この案内ピン44に対して切欠き溝96に沿って長手方向に変位自在にかつ案内ピン44の軸線L44まわりに角変位自在に連結される。この解除操作片93の他端部となる上端部には、把持部97が形成されており、操作者がこの把持部97を把持して解除操作片93を角変位操作することによって、ローラ片16およびローラ支持体35を、変位操作することができる。
【0053】
復帰阻止片94は、長手状の部材であって、解除操作片93の下端部寄りの部分に、送り方向A上流側から臨んで設けられる。この復帰阻止片94は、長手方向中間部において、基準方向Eに平行な軸線L94まわりに角変位自在に設けられる。復帰阻止片94の一端部となる上端部は、解除操作片93の下端部寄りの部分に、送り方向A上流側から当接される。この復帰阻止片94の他端部となる下端部には、把持部99が形成されており、操作者がこの把持部99を把持して復帰阻止片94を角変位操作することができる。
【0054】
阻止片駆動ばね部材95は、引張コイルばねであり、一端部が解除操作片93の下端部側の部分に形成される係止突起100に係止され、他端部が復帰阻止片94の上端部側の部分に形成される係止突起101に係止される。この阻止片駆動ばね部材95によって、解除操作片93の操作に追従して、復帰阻止片94を角変位させ、復帰阻止片94の上端部の解除操作片93に対する当接を維持することができる。
【0055】
復帰阻止片94は、ローラ片16が送り位置20に配置される状態で、解除操作片93の下端部寄りの部分に沿って配置され、送り解除位置に向かうにつれて、解除操作片93の下端部寄りの部分に垂直になる方向へ角変位する。復帰阻止片94は、解除操作片93に対して、ローラ片16が送り位置20および送り解除位置21に配置されるとき、平面状の面部分201,202で当接し、送り位置20および送り解除位置21の間に配置されると、曲面状の面部分200で当接する。
【0056】
復帰阻止片94の解除操作片93に当接する位置と復帰阻止片94の角変位の軸線L94との距離は、ローラ片16が、送り位置20にある場合最も小さく、送り解除位置21に向かうにつれて大きくなり、送り解除位置21にある場合最も大きくなる。したがって復帰阻止片94は、ローラ片16が送り解除位置21を除く位置に配置される場合には、ローラ片16が送り位置20に向かう方向へ変位することを許容するが、ローラ片16が送り解除位置21に配置される場合には、ローラ片16が送り位置20に向かう方向へ変位することを阻止する。この阻止状態は、復帰阻止片94を作業者が操作して角変位させることによって解除することができる。
【0057】
連動操作部92は、連動操作片によって実現され、ローラ支持体35の基体15から突出する部分に、たとえば下端部付近に設けられる。この連動操作部92は、押え棒22に固定される係止部材105に、上方から係止できるように構成されている。
【0058】
押え部材23が押え位置にある状態で、ローラ片16が送り位置20に配置された状態で、連動操作部92が係止部材105に係止される。この状態から押え部材23が押え解除位置に変位するように、押え棒22がアクチュエータなどの駆動手段106によって変位駆動されると、この駆動力がローラ支持体35に伝達され、ローラ片16が送り解除位置21に向けて連動して変位される。
【0059】
このようにローラ片16は、押え装置7に連動して変位させることができる。この連動時には、ローラ片16は、送り解除位置21を除く可動範囲内で変位される。またローラ片16を手動操作するときは、押え装置7とは別に、ローラ片16だけを変位させることができる。
【0060】
このような本実施の形態によれば、ローラ片16は、基体15に変位自在に設けられ、モータ17は、基体15に固定される。このように固定されるモータ17の駆動力が、伝動機構18によって、ローラ片16の変位に追従してローラ片16に伝達される。モータ17の駆動力がローラ片16に伝達されることによってローラ片16が駆動され、縫製動作を補助する。このようなローラ片16を送り位置20と送り解除位置21とにわたって変位させるにあたっては、モータ17を変位させる必要がなく、容易に変位させることができる。
【0061】
さらにローラ片16は、前述のような構成によって、被縫製物2の段差に追従することができる。これにたいしても、高い応答性で追従し、縫製動作に円滑に追従することができる。
【0062】
またローラ片16を基体15に連結する連結手段がリンク機構から成るので、ローラ片16の変位に伴う摩擦損失を少なくすることができる。したがってローラ片16の円滑な変位を実現できる。
【0063】
さらにモータ17の駆動力をローラ片16に伝達するにあたって、伝動ベルト64を用いることによって、ローラ片16の変位を許容したうえで、ローラ片16への駆動力の伝達が可能になる。しかも伝動ベルト64は、ローラ片16の変位に対応して、伝動ベルト64の張力が一定に保たれるように案内される。したがってローラ片64の位置に拘わらず、ローラ片16の駆動が可能であるうえ、伝動ベルト64が不所望に外れてしまうなどの不具合を生じてしまうことがない。
また伝動ベルト64が、ローラ片16が変位しても、基体15およびローラ支持体35内に配置されるので、ローラ片16を変位させるときに、伝動ベルト64が他の部材などに引っ掛かるなど、動作不良を起こすことがない。
【0064】
上述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において、構成を変更することができる。たとえば付属装置は、先引きローラ4以外の装置であってもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、送り動作を補助するローラ片(16)は、基体(15)に変位自在に設けられ、このローラ片(16)を駆動するモータ(17)は、基体(15)に固定される。このように固定されるモータ(17)の回転駆動力が、伝動機構(18)によって、ローラ片(16)の変位に追従してローラ片(16)に伝達される。モータ(17)の駆動力がローラ片(16)に伝達されることによってローラ片(16)が駆動され、送り動作を補助する。ローラ片(16)を変位させるにあたっては、モータ(17)を変位させる必要がない。さらにローラ片(16)およびローラ支持体(35)に、ローラ片(16)が送り位置に向かう方向のばね力を与える弾発押圧手段(77)が設けられており、ローラ片(16)が、たとえば被縫製物(2)の段差に追従するなど、送り動作に追従して変位するように構成される。したがってローラ片(16)は、送り動作に円滑に追従することができる。
【0066】
また基体(15)に対して伸長および縮退自在にローラ支持体(35)が設けられている。基体(15)には、上方になるにつれて送り方向下流側に向かう方向に延びる案内孔(46,47)が形成され、ローラ支持体(35)に形成される案内ピン(44,45)が嵌まり込んでいる。また案内孔(46,47)よりも下方かつ送り方向上流側に配置されるリンク角変位軸線(L51)まわりに角変位自在に、案内リンク(51,52)がその基端部で基体(15)に連結されており、案内リンク(51,52)の遊端部には、ローラ支持体(35)の案内軸(50)が角変位自在に連結されている。ロータ支持体(35)の長手方向中間部は、リンク角変位軸線(L51)まわりに、送り方向下流側になるにつれて上方に向かう経路に沿って変位するように案内される。このロータ支持体の下端部に、ローラ片(16)が設けられ、ローラ支持体(35)の基体(15)に対する伸縮動作によって、ローラ片(16)が、送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたって、変位自在である。送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたる経路は、ローラ片(16)が送り位置(20)から送り解除位置(21)に変位するとき、まず送り方向(A)下流側へ変位した後上方へ変位する経路である。ローラ片(16)がこのような移動経路を移動するようにしているので、送り位置(20)を、できるかぎり押え部材(23)による押え位置に近づけることができ、良好な縫目を形成することができる。
またローラ片(16)の基体(35)への連結構造が、前述のような案内リンク(51,52)を用いる構造であり、ローラ片(16)の変位に伴う摩擦損失を少なくすることができる。したがってローラ片(16)の円滑な変位を実現できる。さらに伝動機構(18)は、モータ(17)の出力軸(60)に連結される駆動プーリ(61)と、ローラ片(16)に連結される従動プーリ(62)と、案内軸(50)に連結される中間プーリ(63)と、駆動プーリ(61)および従動プーリ(62)にわたって中間プーリ(63)を介して巻き掛けられる伝動ベルト(64)を有し、ローラ片(16)の変位に対応して、伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるように、伝動ベルト(64)を案内するベルト案内手段(70)が設けられる。これによって駆動プーリ(61)と従動プーリ(62)に巻き掛けられる伝動ベルト(64)を用い、ローラ片(16)の変位を許容したうえで、ローラ片(16)への駆動力の伝達が可能になる。しかも駆動プーリ(61)、従動プーリ(62)および中間プーリ(63)が、歯付プーリであり、伝動ベルト(64)が、タイミングベルトであり、かつ伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるので、ローラ片(16)の位置に拘わらず、ローラ片(16)を駆動することが可能であるうえ、伝動ベルト(64)が不所望に外れてしまうなどの不具合を生じてしまうことがない。
【0067】
また送り解除操作手段(90)が設けられ、弾発押圧手段(77)のばね力に抗して、ローラ片(16)を送り解除位置(20)に向けて変位させることができる。送り解除操作手段(90)の手動操作部(91)は、解除操作片(93)と、復帰阻止片(94)と、阻止片駆動ばね部材(95)とを有している。解除操作片(93)は、基体(16)に角変位自在に支持され、上端部に把持部(97)が形成され、下端部に切欠き溝(96)が形成されている。切欠き溝(96)には、案内ピン(44)が嵌まり込んでおり、把持部(97)を把持し、解除操作片(93)を手動で操作することによって、ローラ片(16)を送り解除位置(21)に向けて変位させることができる。
復帰阻止片(94)は、角変位自在であり、上端部の面部分(200〜202)で解除操作片(93)に当接され、下端部に把持部(99)が形成されている。この復帰阻止片(94)には、阻止片駆動ばね部材(95)によって解除操作片(93)に対する当接を維持するようにばね力が与えられている。ローラ片(16)が送り位置(20)に配置されると、復帰阻止片(94)は、解除操作片(93)に対して、図3に実線で示すように、一方の平面状の面部分(201)で当接する。ローラ片(16)が送り解除位置(21)に配置されると、復帰阻止片(94)は、図3に仮想線で示すように、他方の平面状の面部分(202)で当接する。ローラ片(16)が送り位置(20)および送り解除位置(21)の間に配置されると、解除操作片(93)に対して、曲面状の面部分(200)で当接する。また復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する位置と復帰阻止片(94)の角変位の軸線(L94)との距離は、ローラ片(16)が、送り位置(20)にある場合最も小さく、送り解除位置(21)に向かうにつれて大きくなり、送り解除位置(21)にある場合最も大きくなる。したがって復帰阻止片(94)は、ローラ片(16)が送り解除位置(21)を除く位置に配置される場合には、ローラ片(16)が送り位置に向かう方向へ変位することを許容するが、ローラ片(16)が送り解除位置(21)に配置される場合には、ローラ片が送り位置(21)に向かう方向へ変位することを阻止する。この阻止状態は、復帰阻止片(94)の把持部(99)を把持し、手動操作して角変位させることによって解除することができる。
送り解除操作手段(90)の連動操作部(92)は、ローラ支持体(35)の下端部に設けられ、押え棒(22)に固定される係止部材(105)に上方から係止される。押え部材(23)が被縫製物(2)を弾発的に押圧する押え位置にある状態で、ローラ片(16)が送り位置に配置され、かつ連動操作部(92)が係止部材(105)に係止されている。この状態から押え部材(23)が上方へ変位するように駆動手段(106)によって変位駆動されると、この駆動力がローラ支持体(35)に伝達され、ローラ片(16)が送り解除位置(21)に向けて連動して変位される。このようにローラ片(16)は、押え部材(23)に連動して変位させることができる。この連動時には、ローラ片(16)は、送り解除位置(21)を除く可動範囲内で変位される。またローラ片(16)を手動操作するときは、押え部材(23)とは別に、ローラ片(16)だけを変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態のミシン1の一部を、生地の送り方向下流側から見て示す斜視図である。
【図2】先引きローラ4を送り方向A上流側から見て示す正面図である。
【図3】先引きローラ4を図2の左側から見て示す左側面図である。
【図4】先引きローラ4を図2の右側から見て示す右側面図である。
【図5】先引きローラ4を送り方向A下流側から見て示す背面図である。
【図6】図2の切断面線S6−S6から見て示す断面図である。
【符号の説明】
1 ミシン
2 被縫製物
3 ミシン本体
4 先引きローラ(付属装置)
5 支持台
7 押え装置
15 基体
16 ローラ片
17 モータ
18 伝動機構
51,52 案内リンク
77 弾発押圧手段
90 送り解除操作手段
110 連結手段
Claims (1)
- (a)支持台(5)上に載置された被縫製物(2)を、駆動手段(106)によって変位駆動される押え棒(22)に設けられる押え部材(23)によって上方から弾発的に押圧した状態で、送り歯(8)によって予め定める送り方向(A)に送りながら、上下に往復動する縫い針(10)によって縫製するミシン(1)に設けられ、送り歯(8)による被縫製物(2)の送り動作を補助する先引きローラ(4)であって、
(b)上下に延び下方になるにつれて送り方向(A)上流側に向かうように傾斜して配置される基体(15)であり、
(b1)長手方向の中間部に、上方になるにつれて送り方向(A)下流側に向かう方向に延びる案内孔(46,47)が形成される基体(15)と、
(c)略水平でありかつ送り方向(A)に垂直な基準方向に平行であり、案内孔(46,47)よりも下方かつ送り方向(A)上流側に配置されるリンク角変位軸線(L51)まわりに角変位自在に、基端部で基体(15)に連結される案内リンク(51,52)と、
(d)上下に延び下方になるにつれて送り方向(A)上流側に向かうように傾斜して配置されるローラ支持体(35)であり、
(d1)下部側の部分が、基体(15)から下方および送り方向(A)上流側に部分的に突出する状態で、上部側の部分が基体(15)に部分的に挿入されて設けられ、
(d2)上端部に、基体(15)の案内孔(46,47)に嵌まり込んで案内される案内ピン(44,45)が形成され、
(d3)長手方向中間部に、案内リンク(51,52)の遊端部に対して基準軸線に平行な角変位軸線(L50)まわりに角変位自在に連結される案内軸(50)が設けられて、長手方向中間部が、リンク角変位軸線(L51)まわりに、送り方向下流側になるにつれて上方に向かう経路に沿って変位するように案内され、
(d4)基体(15)に対して伸長および縮退変位自在であるローラ支持体(35)と、
(e)ローラ支持体(35)の下端部に、基準軸線に平行なローラ回転軸線(L16)まわりに回転自在に設けられるローラ片(16)であり、
(e1)ローラ支持体(35)の基体(15)に対する伸縮動作によって、送り歯(8)による送り動作を補助する送り位置(20)と、送り位置(20)から上方かつ送り方向(A)下流側へ退避する送り解除位置(21)とにわたって、基体(15)に対して変位自在に設けられ、
(e2)送り位置(20)と送り解除位置(21)とにわたる経路は、ローラ片(16)が送り位置(20)から送り解除位置(21)に変位するとき、まず送り方向(A)下流側へ変位した後上方へ変位する経路であり、
(e3)送り位置(20)に配置される状態で、送り動作を補助するローラ片(16)と、
(f)基体(15)に固定され、送り動作を補助するようにローラ片(16)を回転駆動するモータ(17)と、
(g)モータ(17)の回転駆動力を、ローラ片(16)の変位に追従してローラ片(16)に伝達する伝動機構(18)であり、
(g1)モータ(17)の出力軸(60)に連結される駆動プーリ(61)と、ローラ片(16)に連結される従動プーリ(62)と、案内軸(50)に連結される中間プーリ(63)と、駆動プーリ(61)および従動プーリ(62)にわたって中間プーリ(63)を介して巻き掛けられる伝動ベルト(64)を有し、
(g2)駆動プーリ(61)、従動プーリ(62)および中間プーリ(63)は、歯付プーリであり、伝動ベルト(64)は、無端ループ状のタイミングベルトであり、
(g3)ローラ片(16)の変位に対応して、伝動ベルト(64)の張力が一定に保たれるように、伝動ベルト(64)を案内するベルト案内手段(70)が設けられる伝動機構(18)と、
(h)ローラ片(16)およびローラ支持体(35)に、ローラ片(16)が送り位置(20)に向かう方向のばね力を与える弾発押圧手段(77)と、
(i)弾発押圧手段(77)のばね力に抗して、ローラ片(16)を送り解除位置(21)に向けて変位させるための送り解除操作手段(90)であり、
(i1)手動操作部(91)と、連動操作部(92)とを有し、
(i2)手動操作部(91)は、解除操作片(93)と、復帰阻止片(94)と、阻止片駆動ばね部材(95)とを有し、
(i3)解除操作片(93)は、長手方向中間部で基体(15)に支持され、案内孔(46,47)よりも上方に配置される基準方向に平行な軸線(L93)まわりに角変位自在であり、下端部に、長手方向に延びる切欠き溝(96)が形成され、この切欠き溝(96)に案内ピン(44)が嵌まり込み、案内ピン(44)に対して、切欠き溝(96)に沿って変位自在かつ案内ピン(44)の軸線まわりに角変位自在に連結され、上端部に把持部(97)が形成され、
(i4)復帰阻止片(94)は、解除操作片(93)の下端部寄りの部分に、送り方向上流側から臨んで設けられ、長手方向中間部で、基準方向に平行な軸線(L94)まわりに角変位自在であり、上端部は解除操作片(93)に当接され、下端部に把持部(99)が形成され、
(i5)阻止片駆動ばね部材(95)は、解除操作片(93)の操作に追従して、復帰阻止片(94)を角変位させ、復帰阻止片(94)の上端部の解除操作片に対する当接を維持するように、復帰阻止片(94)にばね力を与え、
(i6)復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する面部分は、曲面状の面部分(200)と、曲面状の面部分(200)の両側の平面状の面部分(201,202)を有し、復帰阻止片(95)は、解除操作片(93)に対して、ローラ片(16)が送り位置(20)および送り解除位置(21)に配置されるとき、平面状の面部分(201,202)で当接し、送り位置(20)および送り解除位置(21)の間に配置されると、曲面状の面部分(200)で当接し、
(i7)復帰阻止片(94)の解除操作片(93)に当接する位置と復帰阻止片(94)の角変位の軸線(L94)との距離は、ローラ片(16)が、送り位置(20)にある場合最も小さく、送り解除位置(21)に向かうにつれて大きくなり、送り解除位置(21)にある場合最も大きくなり、
(i8)連動操作部(92)は、ローラ支持体(35)の下端部に設けられ、押え棒(22)に固定される係止部材(105)に上方から係止される送り解除操作手段(90)とを含むことを特徴とする先引きローラ。
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