JP3894216B2 - 高分子蛍光体および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
近年、Tangらは有機蛍光色素を発光層とし、これと電子写真の感光体等に用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機EL素子を作製し、低電圧駆動、高効率、高輝度の有機EL素子を実現させた(特開昭59−194393号公報)。有機EL素子は、無機EL素子に比べ、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特長があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されている〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(1988年)〕、〔ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.Phys.)第65巻、3610頁(1989年)〕。
また、特開平3−244630号公報には、それ自身が溶媒に可溶であり、熱処理が不要であるという特長を有する共役系高分子が例示されている。アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)にも溶媒に可溶な高分子発光材料およびそれを用いて作成した有機EL素子が記載されている。しかし、これらの材料を用いて作成された有機EL素子は、発光効率が必ずしも十分に高くはなかった。
一方、強い蛍光を有する共役系低分子と脂肪族炭化水素をエーテル結合で連結した高分子は、共役鎖長が短いために青色の蛍光を示し、これを用いて青色発光有機EL素子が作成できることが報告されている〔マクロモレキュールズ(Macromolecules)第26巻、1188頁(1993年)〕。
また、無置換のp−フェニレンビニレンとm−フェニレンビニレンの交互共重合体が緑青色の蛍光を有することが報告されている〔Vysokomolekul.Soedin.、第5巻、805頁(1963年)〕が、蛍光の量子収率やEL特性については知られていなかった。
有機EL素子の発光効率という観点からは、ビニレン基にシアノ基を導入したポリ−p−フェニレンビニレン誘導体が、電子親和性が高く、電子注入が容易になるために、これを用いると赤色発光有機EL素子が作成でき、これは、電子1個あたりに放出されるフォトンの割合が高い値を示すことが報告されている。〔ネイチャー(Nature)第365巻、628頁(1993年)〕。
また、共役系低分子を非共役の脂肪族炭化水素とエーテル結合で連結した高分子を用いた場合には、電荷輸送に寄与すると考えられる共役鎖長が短いため、電荷の移動が困難となることが予想される。
可溶性の共役系高分子では薄膜成形後の高温の熱処理は不要であるが、蛍光の量子収率や有機EL素子の発光効率が十分でなく、これらがより高い材料が求められている。
これまで知られているビニレン基にシアノ基を導入したポリ−p−フェニレンビニレン誘導体は、必ずしも高分子自身の蛍光の量子収率が向上した訳ではない。
溶媒への溶解性が優れ、しかも蛍光の量子収率が高く、電気伝導特性も優れた高分子蛍光体、および高分子蛍光体を用いて塗布法により容易に作成できる高輝度の有機EL素子が要望されていた。
(1)少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が下記化1および化2、
〔ただし、Ar1は、隣接する基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基、ヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる六員環以上の複素環化合物基、または該芳香族化合物基もしくは複素環化合物基とビニレン基が結合した基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する原子の個数が1、3または5のいずれかであるものを示す。〕
〔ただし、Ar2は、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基、ヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる五員環以上の複素環化合物基、または該芳香族化合物基もしくは複素環化合物基とビニレン基が結合した基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つの基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。〕
で表わされる繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、化1で示される繰り返し単位が、繰り返し単位数で全体の2〜50%含まれ、かつ固体状態で蛍光を有し、溶媒可溶性である高分子蛍光体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
で示される繰り返し単位からなることを特徴とする高分子蛍光体。
で示される繰り返し単位からなることを特徴とする高分子蛍光体。
で示される繰り返し単位からなる共重合体で、化3の繰り返し単位が全繰り返し単位の5モル%以上含まれることを特徴とする高分子蛍光体。
に示す構造の少なくとも1つを含む繰り返し単位から選ばれることを特徴とする(1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
で表わされる繰り返し単位からなる共重合体であることを特徴とする(1)または(6)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
で表わされる繰り返し単位からなる共重合体であることを特徴とする(2)、(3)、(4)、(5)または(7)記載の高分子蛍光体。
(11)陽極と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を設けたことを特徴とする(1)、(6)または(8)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(13)少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が(2)、(3)、(4)、(5)、(7)または(9)記載の高分子蛍光体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(15)発光層が(2)、(3)、(4)、(5)、(7)または(9)記載の高分子蛍光体を含み、かつ陽極と該発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を設けたことを特徴とする(13)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
具体的には、化6に示す2価の芳香族化合物基またはその誘導体基、およびこれらの基と下記化11に示すビニレン基または置換ビニレン基とが結合したアリーレンビニレン基などが例示される。
これらのなかで1,3−フェニレン基、ナフタレン−1,3−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、キノリン−2,4−ジイル基、ならびにそれらがビニレン基と結合したアリーレンビニレン基、およびそれらに置換基のついた基が好ましい。
さらに好ましくは、1,3−フェニレン基、ピリジン−2,6−ジイル基、ならびにそれらがビニレン基と結合したアリーレンビニレン基、およびそれらに置換基のついた基である。
具体的には、下記化12に示す2価の芳香族化合物基またはその誘導体基、およびこれらの基と化11に示すビニレン基あるいは置換ビニレン基とが結合したアリーレンビニレン基などが例示される。
さらに好ましくは、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、2,5−チエニレン基、ならびにそれらがビニレン基と結合したアリーレンビニレン基、およびそれらに置換基のついた基である。
なお、上記の繰り返し単位を組み合わせることにより、より大きな繰り返し単位となる。例えば、1,4−フェニレン基と1,4−フェニレンビニレン基を組み合わせると、4,4’−ビフェニレンビニレン基となる。
また、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、メチルチオ基、エチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基(C1 〜C12は炭素数1〜12であることを示す。)、4−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
本発明の高分子蛍光体は、溶媒に可溶な高分子であって、該高分子の数平均分子量は103 〜107 であり、該高分子は前記化3で示される繰り返し単位または化4で示される繰り返し単位からなることを特徴とする高分子蛍光体、化3で示される繰り返し単位と化5で示される繰り返し単位との共重合体で化3で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の5モル%以上含まれることを特徴とする高分子蛍光体、あるいは化4で示される繰り返し単位と化5で示される繰り返し単位との共重合体で化4で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の5モル%以上含まれることを特徴とする高分子蛍光体である。 ここで、数平均分子量はクロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
また、炭素数4〜20のアルコキシ基としては、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルオキシ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は炭素数が1〜12のいずれかの数であることを示す。)、4−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
また本発明の有機EL素子は、薄膜からの発光を利用するので該高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有するものが用いられる。
また、炭素数4〜20のアルコキシ基としては、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルオキシ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は炭素数が1〜12のいずれかの数であることを示す。)、4−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
該高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1wt%以上溶解させることができる。
ここで、ジアルデヒド化合物とジホスホニウム塩はそれぞれお互いに隣接して結合することができるが、それぞれ同じ構造の化合物どおしは隣接して結合することはない。よって、更に化2で示される繰り返し単位にアルデヒド基が2つ結合したジアルデヒド化合物を加え、その存在割合を変えることにより、生成する高分子蛍光体の実質的な共役鎖長を自由に調節できる。
また、他の合成法としては、化1で示される繰り返し単位を含む芳香族オリゴマーの両端にハロゲン化メチル基が結合した化合物と化2で示される繰り返し単位にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物からの脱ハロゲン化水素法が例示される。
更に、化1で示される繰り返し単位を含む芳香族オリゴマーの両端がスルホニウム塩となった化合物をアルカリで重合して得られる中間体から熱処理により該高分子蛍光体を得るスルホニウム塩分解法が例示される。
これらのうち、Wittig反応による方法が、反応の制御や収率の点で好ましい。
すなわち、例えば相当するジアセトニトリル化合物、より具体的には、例えば、m−フェニレンジアセトニトリルと、相当するジアルデヒド化合物、より具体的には、例えば、2,5−ジオクチルオキシテレフタルアルデヒドを、例えばエチルアルコール/クロロホルム混合溶媒中、ナトリウムメトキシドを用いて重合させるKnoevenagel反応を挙げることができる。共重合体を得るために2種類以上のジアセトニトリルおよび/または2種類以上のジアルデヒド化合物を反応させてもよい。
さらに、Wittig反応とKnoevenagel反応は、どちらもリチウムエトキシド等を用いて行なうことができるので、ジアルデヒド化合物、ジホスホニウム塩化合物およびジアセトニトリル化合物を相当量ずつ混合して反応させれば、これらすべての共重合体が得られる。
例えば、Wittig反応によりアリーレンビニレン系共重合体を得る場合は、例えばまず、ビス(ハロゲン化メチル)化合物、より具体的には、例えば、2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成し、これと化1の構造を含むジアルデヒド化合物、より具体的には、例えば、イソフタルアルデヒドとを、例えばエチルアルコール中、リチウムエトキシドを用いて縮合させるWittig反応により、1,3−フェニレン基を含むアリーレンビニレン系共重合体が得られる。この時、化2の構造を含むジアルデヒド化合物、具体的にはテレフタルアルデヒドを添加すれば、より長い共役鎖長を有する共重合体が得られる。共重合体を得るために2種類以上のジホスホニウム塩および/または2種類以上のジアルデヒド化合物を反応させてもよい。
また、これらの重合体を有機EL素子の発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、再沈精製、クロマトグラフによる分別等の純化処理をすることが望ましい。
例えば、該高分子蛍光体からなる発光層、もしくは該高分子蛍光体と電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)との混合物からなる発光層の両面に一対の電極を有する構造のもの、さらに発光層と陰極の間に電子輸送材料を含有する電子輸送層および/または発光層と陽極の間に正孔輸送材料を含む正孔輸送層を積層したものが例示される。
また、発光層や電荷輸送層は1層の場合と複数の層を組み合わせる場合も本発明に含まれる。さらに、発光層に例えば下記に述べる該高分子蛍光体以外の発光材料を混合使用してもよい。また、該高分子蛍光体および/または電荷輸送材料を高分子化合物に分散させた層とすることもできる。
これらのうち、電子輸送性の化合物と正孔輸送性の化合物のいずれか一方、または両方を同時に使用すればよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、電荷輸送材料を発光層に混合して使用する場合、電荷輸送材料の使用量は使用する化合物の種類等によっても異なるので、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決めればよい。通常、発光材料に対して1〜40重量%であり、より好ましくは2〜30重量%である。
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的にはインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、酸化スズ等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)、Au、Pt、Ag、Cu等が用いられる。作製方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などが用いられる。
なお、塗布法により薄膜化した場合には、溶媒を除去するため、減圧下あるいは不活性雰囲気下、30〜300℃、好ましくは60〜200℃の温度で加熱乾燥することが望ましい。
電荷輸送性の高分子化合物であれば、低分子電荷輸送材料と混合しなくても電荷輸送層に用いることができる。
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
実施例1
<高分子蛍光体1の合成>
2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成した。得られたホスホニウム塩9.56重量部、イソフタルアルデヒド0.268重量部、およびテレフタルアルデヒド1.07重量部を、エチルアルコールに溶解させた。1.56重量部のリチウムエトキシドを含むエチルアルコール溶液をホスホニウム塩とジアルデヒドのエチルアルコール溶液に滴下し、室温で3時間重合させた。一夜室温で放置した後、沈殿を濾別し、エチルアルコールで洗浄後、クロロホルムに溶解、これにエタノールを加え再沈生成した。これを減圧乾燥して、重合体3.64重量部を得た。これを高分子蛍光体1という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体1の繰り返し単位とそのモル比を下記に示す。
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、9.8×103であった。該高分子蛍光体1の構造については赤外吸収スペクトル、NMRで確認した。
高分子蛍光体1重合体は、クロロホルムに容易に溶解させることができた。その0.05%クロロホルム溶液を石英板上にスピンコートして重合体の薄膜を作成した。この薄膜の紫外可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルをそれぞれ島津製作所製自記分光光度計UV365および日立製作所製蛍光分光光度計850を用いて測定した。蛍光の量子収率の算出には410nmで励起した時の蛍光スペクトルを用いた。蛍光強度は、横軸に波数をとってプロットした蛍光スペクトルの面積を、410nmでの吸光度で割ることにより相対値として求めた。この高分子蛍光体1の蛍光強度(蛍光の量子収率の相対的な大きさ)は、表1に示すとおり、強かった。
スパッタリングによって、40nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、実施例1で合成した高分子蛍光体1の1.0wt%クロロホルム溶液を用いて、ディッピングにより50nmの厚みで成膜した。次いで、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、電子輸送層として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)を0.1〜0.2nm/sの速度で70nm蒸着した。最後に、その上に陰極としてマグネシウム−銀合金(Mg:Ag=9:1重量比)を150nm蒸着して有機EL素子を作製した。蒸着のときの真空度はすべて8×10-6Torr以下であった。
この素子に電圧10.5Vを印加したところ、電流密度126mA/cm2 の電流が流れ、輝度1037cd/m2 の黄緑色のEL発光が観察された。この時の発光効率は、0.82cd/Aであった。輝度はほぼ電流密度に比例していた。更に電流密度を増すと最高輝度10578cd/m2に達した。また、ELピーク波長は538nmで、高分子蛍光体1の薄膜の蛍光ピーク波長とほぼ一致しており高分子蛍光体1よりのEL発光が確認された。
<高分子蛍光体2の合成>
イソフタルアルデヒド0.671重量部、およびテレフタルアルデヒド0.671重量部を用いた以外は実施例1と同じ方法で合成、洗浄、再沈を行ない、重合体3.49重量部を得た。これを高分子蛍光体2という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体2の繰り返し単位とそのモル比を下記に示す。
該高分子蛍光体2のポリスチレン換算の数平均分子量は、9.8×103であった。該高分子蛍光体2の構造については赤外吸収スペクトル、NMRで確認した。
<吸収、蛍光スペクトルの測定、蛍光の量子収率の評価>
実施例1と同じ方法で蛍光強度、吸収スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長を求めた。高分子蛍光体2の蛍光強度は、表1に示すとおり、強かった。
<素子の作成および評価>
高分子蛍光体1の代わりに高分子蛍光体2を用いた以外は、実施例1と同じ方法で素子を作成した。この素子に電圧12.3Vを印加したところ、電流密度0.789mA/cm2 の電流が流れ、輝度14.4cd/m2 の緑色のEL発光が観察された。この時の発光効率は、1.83cd/Aであった。輝度はほぼ電流密度に比例していた。また、ELピーク波長は530nmで、高分子蛍光体2の薄膜の蛍光ピーク波長とほぼ一致しており高分子蛍光体2よりのEL発光が確認された。
<高分子蛍光体3の合成>
2,5−ジヘプチルオキシ−p−キシリレンジブロミドを、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成した。このホスホニウム塩7.4重量部と、テレフタルアルデヒド1重量部とをエチルアルコールに溶解させた。0.9重量部のリチウムエトキシドを含むエチルアルコール溶液をホスホニウム塩とジアルデヒドのエチルアルコール溶液に滴下し、室温で3時間重合させた。一夜室温で放置した後、沈殿を濾別し、エチルアルコールで洗浄後、クロロホルムに溶解、これにエタノールを加え再沈生成した。これを減圧乾燥して、重合体1.5重量部を得た。これを高分子蛍光体3という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体3の繰り返し単位とそのモル比を下記に示す。
該高分子蛍光体3のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.0×104 であった。
実施例1と同じ方法で蛍光強度、吸収スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長を求めた。高分子蛍光体3の蛍光強度は、表1に示すとおり、実施例1の高分子蛍光体1よりも弱かった。
<素子の作成および評価>
高分子蛍光体1の代わりに高分子蛍光体3を用いた以外は、実施例1と同じ方法で素子を作成した。この素子に電圧10.5Vを印加したところ、電流密度20.5mA/cm2 の電流が流れ、輝度98.0cd/m2 の黄緑色のEL発光が観察された。この時の発光効率は、0.48cd/Aであった。輝度はほぼ電流密度に比例していた。更に電流密度を増すと最高輝度2770cd/m2に達した。また、ELピーク波長はほぼ550nmで、高分子蛍光体3の薄膜の蛍光ピーク波長とほぼ一致しており高分子蛍光体3よりのEL発光が確認された。
<高分子蛍光体4の合成>
2,5−ジオクチルオキシテレフタルアルデヒド1.95重量部とm−フェニレンジアセトニトリル0.78重量部とを、エチルアルコール100重量部/クロロホルム100重量部の混合溶媒に溶解させた。これに0.3重量部の28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加え、室温で6時間攪拌した後、エチルアルコール200重量部を加え、室温で一夜放置した。次に、生成した沈殿を濾別し、エチルアルコールで洗浄後、エチルアルコール/水混合溶媒、更にエチルアルコールで洗浄、これを減圧乾燥して、重合体0.5重量部を得た。これを高分子蛍光体4という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体4の繰り返し単位を下記に示す。
該高分子蛍光体4のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×103であった。
該高分子蛍光体4の構造については赤外吸収スペクトル及び1H−NMRで確認した。
実施例1と同じ方法で蛍光強度、吸収スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長を求めた。高分子蛍光体4の薄膜の蛍光強度は、表2に示すとおり強かった。
<高分子蛍光体5の合成>
2,5−ジオクチルオキシテレフタルアルデヒド1.95重量部とp−フェニレンジアセトニトリル0.78重量部とを、エチルアルコール100重量部/クロロホルム100重量部の混合溶媒に溶解させた。これに0.3重量部の28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加え、室温で6時間攪拌した後、エチルアルコール200重量部を加え、室温で一夜放置した。次に、生成した沈殿を濾別し、エチルアルコールで洗浄後、エチルアルコール/水混合溶媒、更にエチルアルコールで洗浄、これを減圧乾燥して、重合体0.5重量部を得た。これを高分子蛍光体5という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体5の繰り返し単位を下記に示す。
該高分子蛍光体5のポリスチレン換算の数平均分子量は、7×103であった。
該高分子蛍光体5の構造については赤外吸収スペクトル及び1H−NMRで確認した。
Claims (6)
- 溶媒に可溶で、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103 〜107 であり、下記化3
〔ただし、Ar3は、隣接する2つのビニレン基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる五員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つのビニレン基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。Ar4は、隣接した2つのビニレン基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる六員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つのビニレン基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する原子の個数が1、3または5のいずれかであるものを示す。〕で示される繰り返し単位からなることを特徴とする高分子蛍光体。 - 溶媒に可溶で、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103 〜107 であり、下記化4、
〔ただし、Ar5は、隣接する2つのビニレン基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる五員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つのビニレン基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。Ar6は、隣接する2つのビニレン基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる六員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つのビニレン基と結合した2つの炭素原子の間に連続して存在する原子の個数が1、3または5のいずれかであるものを示す。〕で示される繰り返し単位からなることを特徴とする高分子蛍光体。 - 溶媒に可溶で、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103 〜107 であり、請求項1の化3および下記化5、
〔ただし、Ar7は、隣接する2つのビニレン基と炭素−炭素結合を形成する二官能の基であり、共役結合に関与する炭素原子数が6個以上22個以下からなる芳香族化合物基またはヘテロ原子を含有する炭素数4個以上20個以下からなる五員環以上の複素環化合物基から選ばれ、これらの基の化学構造式において隣接する2つのビニレン基と結合した2つの炭素原子の間で最短の経路に連続して存在する炭素原子および窒素原子の個数の合計が偶数であるものを示す。〕で示される繰り返し単位からなる共重合体で、化3の繰り返し単位が全繰り返し単位の5モル%以上含まれることを特徴とする高分子蛍光体。 - 溶媒に可溶で、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103 〜107 であり、請求項2の化4および請求項3の化5で示される繰り返し単位からなる共重合体で、化4の繰り返し単位が全繰り返し単位の5モル%以上含まれることを特徴とする高分子蛍光体。
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