JP3879163B2 - 二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法及びガスバリアーフィルムの製造方法 - Google Patents

二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法及びガスバリアーフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法及びガスバリアーフィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常の高分子フィルム等に対して気体透過性を大きく低減させたガスバリアーフィルムは、内容物を変質や酸化等から保護する機能を有するため、食品、医薬品等の包装分野において広く用いられている。
このようなガスバリアーフィルムの一例として、高分子フィルムの表面に酸化シリコン系のガスバリアー層を設けたものがある。ガスバリアー層の形成は、主に蒸着法又はプラズマ化学気相堆積法(以下、「プラズマCVD法」という。)により行われている。例えば、特開平2−122924号公報には、高分子フィルム上にケイ素酸化物を蒸着してなる膜を設けた透明バリヤーフィルムが開示されている。また、特開昭64−87772号公報には、0.1Torr以下の低圧において、テトラメチルジシロキサン(以下、「TMDSO」という。)、ヘキサメチルジシロキサン(以下、「HMDSO」という。)等の有機ケイ素化合物を原料ガスとした低圧プラズマCVD法により、基体にシリコン酸化膜を付着させる方法が開示されている。更に、特開平8−142254号公報には、珪素酸化物と炭素、水素、珪素及び酸素のなかから1種あるいは2種以上の元素からなる化合物を含有するバリア層を有するバリア袋用フィルムが開示されている。
【0003】
しかし、特開平2−122924号公報では、原料ガスとして一酸化ケイ素等のケイ素酸化物を用いている。このような無機ケイ素化合物を原料ガスに用いて得られたシリコン酸化膜は、有機ケイ素化合物を用いたものに比べて被覆性等に乏しいという問題がある。また、上記公報の実施例によれば、得られたガスバリアーフィルムの酸素透過性は1.2〜1.5(cc/m2 )/日程度であり、必ずしもガスバリアー性が十分とはいえないものであった。更に、蒸着法によるシリコン酸化膜は、一般に透明性とガスバリアー性とを両立させることが困難である。
【0004】
一方、特開昭64−87772号公報に記載の方法のように、原料ガスに有機ケイ素化合物を用いたプラズマCVD法による場合には、得られるシリコン酸化膜の被覆性は比較的良いと考えられる。しかし、原料ガスに有機ケイ素化合物を用いると、この有機ケイ素化合物の分解が不十分である場合には得られるシリコン酸化膜中に有機成分が残存し、この残存有機成分によりガスバリアー性が損なわれる恐れがある。
このため特開昭64−87772号公報に記載の方法では、TMDSO、HMDSO等の有機ケイ素化合物の確実な分解を図るために、プラズマCVD法を「比較的高い電力で」行っている。具体的に例示された実施条件は、1000ワット×40KHz、375ワット×13.56MHz及び直流300ワットであり、1000ワット×40KHzが好ましいとされている。また、圧力は0.1Torr以下の低圧とする必要があり、これはプラズマCVD法を上記のような高電力で行う場合、真空度が十分でないと基体が加熱されて損傷する恐れがあるためと考えられる。
【0005】
しかし、上記のように高電力且つ高真空でプラズマCVD法を行うことは、装置、設備及びコスト等の点から不利であるとともに、大面積の処理が困難であるという問題がある。また、特開昭64−87772号公報の実施例によれば、得られたガスバリアーフィルムの酸素透過性は0.0836(cc/100in2 )/日〔即ち、1.34(cc/m2 )/日〕程度であって、必ずしもガスバリアー性が十分とはいえないものであった。
【0006】
更に、特開平8−142254号公報には具体的なプラズマCVD条件、例えば好ましい真空度、プラズマ発振周波数及び電力等に関する記載がないが、上記公報に記載のバリア袋用フィルムは、高いバリア性を得るためにバリア層中に含まれる各化合物の組成比及びその濃度分布を精密に制御する必要があるので非常に製造が困難である。また、上記公報のバリア層は有機成分を含むものであるため、成膜後の経時によって有機成分のうちアルコキシ基等が加水分解されることによりバリア層の剥離が生じてガスバリアー性が失われたり、水蒸気透過性が低下したりしやすいという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特定の有機ケイ素化合物を原料ガスとしたプラズマCVD法により形成されたガスバリアー層を有する、二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、基材フィルムの表面にプラズマCVD法によりガスバリアー層を形成するガスバリアーフィルムの製造方法であって、このプラズマCVD法における圧力条件が緩和された製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プラズマCVD法によりシリコン酸化膜を形成する際に、原料ガスとして特定の有機ケイ素化合物を用いることによりガスバリアー性に優れた膜が得られることを見出した。また、上記特定の有機ケイ素化合物はプラズマCVD法における分解性が高いため、これを原料ガスに用いれば特別な高真空を必要とすることなく容易にガスバリアー層を形成できることを見出して、本発明を完成したのである。
【0009】
本発明における第1発明の方法は、高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torrの下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン及びアルコキシシロキサンから選択される原料ガスを用いたプラズマ化学気相堆積法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成して得られる二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法である。
【0010】
本発明における第2発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torrの下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン及びアルコキシシロキサンから選択される原料ガスを用いたプラズマ化学気相堆積法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成することを特徴とする。上記原料ガスとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン又はトリアルコキシシランを用いることが好ましい。
また、発明に記載のように、上記プラズマCVD法により形成された上記ガスバリアー層に窒素プラズマを照射してもよい。これにより、照射前に比べて上記ガスバリアー層のガスバリアー性が向上するという効果が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
ガスバリアーフィルムにおける「ガスバリアー層」は、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はSi−H結合をもつアルコキシシロキサンを原料ガスとしたプラズマCVD法により形成されたシリコン酸化膜である。これらの有機ケイ素化合物を原料ガスとすることにより、無機ケイ素化合物を原料ガスに用いた場合に比べて被覆性に優れたシリコン酸化膜が得られる。また、これらの有機ケイ素化合物はSi−C結合をもつTMDSO、HMDSO等に比べて分解しやすいので、実質的に有機成分を含まず且つガスバリアー性に優れたシリコン酸化膜を容易に形成することができる。ここで、「実質的に有機成分を含まない」とは、400〜4000cm−1の条件で行われる赤外線吸収スペクトルにおいて、有機物に由来する吸収が認められないことをいう。
【0012】
以下、この「原料ガス」について更に詳しく説明する。
上記「Si−H結合をもつアルコキシシラン」としては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びトリアルコキシシランが挙げられる。これらのアルコキシシランはSi−C結合を含むシラン化合物に比べて分解性が高く、またテトラアルコキシシランよりも更に分解性が良いため、より低い出力のプラズマCVD法によってガスバリアー性に優れたシリコン酸化膜を形成可能なためである。この分解性の点から、特にトリアルコキシシランを用いることが好ましい。
また、プラズマCVD法における分解性が良いことから、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシシランを用いることが好ましく、特にエトキシ基を有するものが好ましい。
【0013】
アルコキシシランの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
(1)モノアルコキシシラン
モノメトキシシラン、モノエトキシシラン、ジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブトキシシラン、ジイソブトキシシラン、ジ−tert−イソブトキシシラン等。
(2)ジアルコキシシラン
ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブトキシシラン、ジイソブトキシシラン、ジ−tert−イソブトキシシラン等。
(3)トリアルコキシシラン
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、トリイソブトキシシラン、トリ−tert−ブトキシシラン等。
これらの中でも、前述のように反応性に富むトリアルコキシシランを用いることが好ましく、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリプロポキシシランがより好ましく、最も好ましいのはトリエトキシシランである。
【0014】
上記「Si−H結合をもつアルコキシシロキサン」としては、プラズマCVD法における原料ガスとして使用可能な程度に気化しやすいものであれば、特に限定されることなく用いることができる。具体的には、分子量900以下のアルコキシシロキサンを用いることが好ましい。このアルコキシシロキサンに含まれるケイ素原子の数は2〜4個とすることが好ましく、2個とすることが特に好ましい。4個以上のケイ素原子を有するアルコキシシロキサンは気化させることが困難なためである。アルコキシシランの場合と同様に、プラズマCVD法における分解性が良いことから、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシシロキサンを用いることが好ましく、特にエトキシ基を有するものが好ましい。また、両末端のケイ素原子のいずれもがアルコキシ基と水素原子との双方を有するものが好ましい。特に好ましいアルコキシシロキサンは、1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン及び1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサンである。
【0015】
また、ガスバリアーフィルムにおける「基材フィルム」としては、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、アイオノマー、ポリアミド等の高分子からなるものを適宜選択して用いることができる。一般的な材料としては、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0016】
ガスバリアーフィルムは、上記基材フィルム及び上記ガスバリアー層からなる二層フィルムの状態において、その酸素透過性が1(cc/m )/日以下〔好ましくは0.9(cc/m )/日以下、更に好ましくは0.7(cc/m )/日以下〕であることを特徴とする。このようなガスバリアーフィルムは、例えば包装材料等として用いる場合、通常は基材フィルム及びガスバリアー層に加えて印刷インキ、ラミネートフィルム(樹脂層)等が積層された複合フィルムの状態で使用される。上記樹脂層の材質は包装材料の使用目的等から選択され、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等を用いることができる。ガスバリアーフィルムは、上記二層フィルムの状態において十分なガスバリアー性を有するので、上記二層フィルム以外の層に用いる材料の選択自由度が広い。また、上記複合フィルムの状態では更に高いガスバリアー性を得ることが可能である。
【0017】
尚、ガスバリアーフィルムにおいては、ガスバリアー層の厚さが薄過ぎる場合には十分なガスバリアー性が発揮されないが、逆にガスバリアー層が厚過ぎる場合にもガスバリアー性が低下することが知られている。これは、プラズマCVD法により形成される膜が厚くなるにつれて膜中の歪みが大きくなり、このためクラックが発生しやすくなるためである。クラックが生じた膜はガスバリアー性を失う。従って、膜厚の増加のみによるガスバリアー性の向上には限界がある。
そこで、ガスバリアーフィルムにおけるガスバリアー層の厚さは、原料ガスの種類、基材フィルムの材質、プラズマCVD法を行う条件等により異なるが、10nm〜600nmとすることが好ましく、15〜300nmとすることがより好ましい。
【0018】
ガスバリアーフィルムは、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はアルコキシシロキサンを原料ガスとしたプラズマCVD法により形成されたガスバリアー層を有する。これらの原料ガスは分解性が高いので、比較的低温で成膜させても実質的に有機成分を含まないシリコン酸化膜を得ることができる。このように低温で成膜させることにより、緻密でガスバリアー性に優れたガスバリアー層を形成させることができる。
【0019】
次に、第2発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torr(好ましくは0.05Torr〜5Torr)の下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はアルコキシシロキサンを原料ガスとしたプラズマCVD法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成するものである。
この製造方法において、プラズマCVD法における圧力は0.01〜10Torrとする。圧力が0.01Torr未満であると、成膜速度が遅くなるため製造効率が低下するとともに装置及び設備が大型化するという問題がある。一方、圧力が10Torrを超える場合には、後述する実験例4、5及び参考例1の酸素透過性の比較から判るように、得られるシリコン酸化膜のガスバリアー性が低下する。
【0020】
尚、「原料ガス」及び「基材フィルム」としては、第1発明の説明において上述したもの等を用いればよい。また、「ガスバリアー層」の好ましい厚さ及びその理由についても第1発明の説明において上述したとおりである。
【0021】
上記製造方法におけるプラズマCVD法について更に詳しく説明する。
まず、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はアルコキシシロキサンを反応系内に供給する方法としては、これを希釈ガスでバブリングして気化させ反応系内へ供給するか、あるいは加熱により気化させて前記希釈ガスと共に反応系内へ供給する方法が一般的である。
【0022】
アルコキシシラン又はアルコキシシロキサンの供給に利用され、また反応系内に存在させる希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスあるいは窒素、水素等が挙げられ、更に好ましくは希ガスあるいは窒素が挙げられる。
【0023】
希釈ガスは、原料ガスを含めた反応系内の全ガス量中、50vol%以上が好ましく、特に好ましくは80vol%〜99vol%である。50vol%未満では、プラズマが安定して立たず、得られるシリコン酸化膜の膜質が悪くなる恐れがある。
【0024】
本発明の製造方法において、反応系内に酸化剤を存在させることによって、より緻密な膜を製造することができる。酸化剤としては、空気、酸素、N2 O、NO、NO2 、CO2 、CO等が挙げられる。
【0025】
酸化剤はアルコキシシラン1モルに対して、0.5モル〜50モルが好ましく、更に好ましくは1モル〜20モルである。0.5モル未満では緻密な膜質が得られなくなる場合がある。一方、50モルを超えると気相反応によりシリコン酸化物の微粒子が生成し易くなり、膜質の低下が起きるだけでなく、原料から膜への効率が悪くなり経済的とはいえない。
【0026】
酸化剤は原料ガスと共に系内に導入するのが一般的であるが、別々に系内に導入してもよい。酸化剤の濃度は反応系内の全ガス量に対し、30vol%を超えない程度が望ましく、1vol%〜10vol%が更に好ましい。酸化剤の濃度が高すぎると、気相でのシリコン酸化物の微粒子が生成し易くなり、基材上に付着する恐れがある。一方、酸化剤の濃度が低すぎると成膜速度の低下につながり、実用的とはいえなくなる。
【0027】
シリコン酸化膜の基材フィルム上への成膜温度は400℃より低くすることができ、50℃〜300℃という低温で足りる。なお、成膜温度が室温未満では、膜質の低下につながる恐れがある。具体的な成膜温度は原料ガスの種類に応じて適宜選択される。例えば、原料ガスがトリアルコキシシランである場合には、成膜温度を50℃〜180℃とすることが好ましく、50℃〜100℃とすることが更に好ましい。また、好ましい成膜温度は基材フィルムの材質によっても異なり、例えば基材フィルムがポリエチレンテレフタレートからなる場合には、成膜温度を150℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることが更に好ましい。
【0028】
本発明に用いられる反応装置は特に限定されるものではなく、例えば、縦型、横型、パンケーキ型、ベルトコンベアー型、巻き取り方式等が用いられる。
【0029】
反応器内には、高電圧を印加する電極と接地する電極とが配置され、希釈ガスの存在下、圧力0.01〜10Torrにおいて、プラズマ化学気相堆積法を行える装置であれば特に限定されるものではない。
【0030】
プラズマの発振周波数は、50Hz〜60Hzの低周波から2.45GHzの高周波まで適宜選択すればよい。好ましい周波数は10KHz〜100MHzであり、特に好ましい周波数は1MHz〜30MHzである。
電力は特に限定されないが、10W〜500Wの範囲とすることが好ましく、30W〜250Wとすることが更に好ましい。
そして、本発明の製造方法における好ましいプラズマ密度は0.01〜50W/cm2 であり、より好ましくは0.05〜10W/cm2 である。
【0031】
上記製造方法においては、得られたガスバリアー層に窒素プラズマを照射することができる。これにより、後述する実験例1及び実験例6の酸素透過性の比較から判るように、照射前に比べてガスバリアー性を向上させることができる。窒素プラズマを照射する条件は特に限定されず、所望のガスバリアー性が得られる照射条件を適宜選択すればよい。
【0032】
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はアルコキシシロキサンを原料ガスとしたプラズマCVD法によってガスバリアー層を形成させる。これらの原料ガスは分解性が高いので、特別な高電力を必要とすることなく通常のCVD条件で、例えば13.56MHz、50W程度の条件で十分に分解させることができる。従って、プラズマCVD法を圧力0.01〜10Torrの下で行っても基材フィルムが加熱損傷しにくい。また、原料ガスが分解しやすいため比較的低温で成膜可能なので、これにより緻密でガスバリアー性に優れたガスバリアー層を得ることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明する。
尚、基材フィルムとしては、いずれも厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラーS」)を用いた。また、赤外線吸収スペクトルの測定は、Nicolet社製の機種名「5DXC」により行った。
【0034】
(1)ガスバリアーフィルムの作成
以下に示す方法により、下記表1に示す原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、表1に示す厚さのガスバリアー層を上記基材フィルム上に形成させてガスバリアーフィルムを作成した。
【0035】
実験例1〜4)
反応装置内のサセプター上に、上記基材フィルムを10cm角に裁断したものを載置し、該基材フィルムを60℃に加熱保持した。
原料ガスとしてのトリエトキシシランを50℃に加熱して流量100sccmのヘリウムでバブリングし、酸素100sccmと共に上記装置内に導入した。このとき、反応装置内へのトリエトキシシランの供給量は20sccmに相当する。
【0036】
反応装置内の圧力を0.06Torrとし、発振周波数13.56MHz、電力50Wでグロー放電を発生させ、プラズマ状となし、所定時間反応させて、下記表1に示す厚さの膜をそれぞれ形成させた。尚、このときのプラズマ密度は0.14W/cm である。
得られた膜は均一で平坦性に優れていた。実験例4により得られた膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、図1に示すように、エトキシ基、エチル基等の有機成分に基づく吸収は認められなかった。また、実験例1〜3により得られた膜についても同様に赤外線吸収スペクトルを測定したところ、いずれも有機成分に基づく吸収は認められなかった。即ち、実験例1〜4により得られた膜は、実質的に有機成分を含まないシリコン酸化膜であることが判明した。
【0037】
実験例5)
反応器内の圧力を8Torrとした点以外は実験例1〜4と同様の方法により、上記基材フィルム上に膜厚180nmのガスバリアー層を形成させた。このガスバリアー層の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、有機成分に基づく吸収は認められなかった。
【0038】
実験例6)
実験例1〜4と同様の方法により実験例1と同じ膜厚のガスバリアー層を形成させた後、このガスバリアー層に窒素流量100sccm、反応圧力0.5torr、電力100W、照射時間5分の条件で窒素プラズマを照射して、実験例6のガスバリアーフィルムとした。
【0039】
(比較例1)
原料ガスとしてトリエトキシシランに代えてテトラメチルジシロキサンを用いた点以外は、実験例1〜4と同様の方法により膜厚180nmのガスバリアー層を形成させた。
比較例4により得られた膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、図2に示すように、1260cm−1にはSi−CH に基づく吸収が、また2900cm−1にはC−Hに基づく吸収が認められた。即ち、テトラメチルジシロキサンを原料ガスとして実験例1〜4と同様のCVD条件により得られた膜は、この原料ガスの分解が不十分であるため有機成分を含むことが判明した。
【0040】
(参考例1)
反応器内の圧力を800Torrとした点以外は実験例1〜4と同様の方法により、上記基材フィルム上に膜厚180nmのガスバリアー層を形成させた。このガスバリアー層の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、有機成分に基づく吸収は認められなかった。
【0041】
【表1】
Figure 0003879163
【0042】
(2)ガスバリアーフィルムの評価
得られた各ガスバリアーフィルムにつき、MOCON社製の酸素透過性測定装置を用いて酸素透過性を測定した。その結果を表1に併せて示す。尚、ガスバリアー層をもたない基材フィルムの酸素透過性は100(cc/m2 )/日であった。
【0043】
表1に示すように、実験例1〜6のガスバリアーフィルムはいずれも基材フィルムに対して酸素透過性が1/2以下となっており、ガスバリアー性を有することが判る。また、実験例1及び実験例6の比較から、ガスバリアー層に窒素プラズマを照射することによりガスバリアー性が大きく向上することが判る。
【0044】
一方、原料ガスとしてテトラメチルジシロキサンを用いた比較例1のガスバリアーフィルムは、基材フィルムと同程度の酸素透過性であった。即ち、ほとんどガスバリアー性をもたないものであった。これは、上述のようにガスバリアー層中に有機物が残存しているためと考えられる。
また、反応圧力が10Torr以下である場合(実験例1及び5)に比べて、反応圧力が800Torrと高い場合(参考例1)にはガスバリアー性が低いことが判る。これは、反応圧力が高すぎるとプラズマが安定して立たないため、均一な膜が得られにくいためと考えられる。
【0045】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明のガスバリアーフィルムは、Si−H結合をもつアルコキシシラン又はアルコキシシロキサンを原料ガスとしたプラズマCVD法により形成されたガスバリアー層を有するので、実質的に有機成分を含まず且つ酸素透過性が1(cc/m2 )/日以下という優れたガスバリアー性を示す。また、本発明のガスバリアーフィルムの製造方法によると、分解性の高い上記原料ガスを用いることにより、一般的なプラズマCVD条件によって容易にガスバリアー層を形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実験例4により得られたガスバリアー層の赤外線吸収スペクトルを示すチャートである。
【図2】 比較例1により得られたガスバリアー層の赤外線吸収スペクトルを示すチャートである。

Claims (3)

  1. 高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torrの下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン及びアルコキシシロキサンから選択される原料ガスを用いたプラズマ化学気相堆積法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成して得られる二層フィルムをガスバリアーフィルムとして用いる方法。
  2. 高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torrの下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン及びアルコキシシロキサンから選択される原料ガスを用いたプラズマ化学気相堆積法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
    上記基材フィルム及び上記ガスバリアー層からなる二層フィルムの酸素透過性が1(cc/m )/日以下であることを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
  3. 高分子からなる基材フィルムの表面に、圧力0.01〜10Torrの下で、Si−H結合をもつアルコキシシラン及びアルコキシシロキサンから選択される原料ガスを用いたプラズマ化学気相堆積法により、シリコン酸化膜からなるガスバリアー層を形成するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
    上記プラズマ化学気相堆積法により形成された上記ガスバリアー層に、窒素プラズマを照射することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
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