JP3870131B2 - トンネル周壁面の変位の推定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルの先受け工法の設計に必要なトンネルの切羽周辺部分の変位推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル工事において、切羽やトンネル壁面を安定にする補助工法として、図7に示すような先受け工法がある。図7はトンネルの縦断面図である。この先受け工法は、切羽の少し後方より、先受部材としての鋼管を、トンネル軸に対して所定の角度をなした状態で、トンネル横断面において放射状に、上記切羽の前方の地山に向って打設し、続いて、打設した鋼管を通じて地山に硬化材を注入することにより切羽前方の地山を補強し、その後、上記トンネルを掘り進めるものである。
【0003】
上記先受工法の設計すなわち、上記鋼管のサイズ(径、肉厚、長さ)や縦断方向および横断方向の打設ピッチ等の仕様の決定には、鋼管の曲げ剛性によってトンネル天端付近のゆるみ荷重が支持されるとする梁構造モデルが主に利用されている。具体的には、切羽前方に自立できない破壊領域が形成されるとし、その形状および大きさを過去の実績から設定し、設定された破壊領域の重量を支持するために必要な鋼管の曲げ剛性から、鋼管の仕様を決定する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、先受け鋼管が破壊領域の重量を支持できるかどうかの判定に留まり、先受け工法による1切羽進行ごとの切羽の安定化効果および変位抑制効果をみることができないため、決定した鋼管の仕様の妥当性を評価できず、周辺地山の状態に応じて最適な鋼管の仕様を決定することができない。また、硬化性材料(ウレタン樹脂、シリカレジン、モルタルなど)の注入効果を設計に盛込むことができず、鋼管の仕様が過大となる可能性が高い。
【0005】
この対策として、切羽と先受け工法をモデル化した3次元有限要素法による掘削解析を行うことも考えられるが、この方法によれば、1切羽進行ごとに周辺地山の状態に応じたモデル定数を変えて掘削解析を行う必要があり、コンピュータの処理速度が向上したとはいえ、工事現場で行うのは事実上不可能である。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、容易に先受け工法を施したトンネルの切羽周辺部分の変位を推定することができるトンネル周壁面の変位の推定方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を有効に達成するために、次のようなトンネル周壁面の変位の推定方法を開発した。すなわち、請求項1記載の本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、トンネル半径方向に棒状補強体が存在するトンネル周囲の地盤を、原地盤と棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、この求めた弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいてトンネル周壁面の変位を推定する。
【0008】
請求項2記載の本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、請求項1に記載のトンネル周壁面の変位の推定方法において、上記棒状補強体は内部に硬化性材料が充填された管体と管体周囲に形成された原地盤と硬化性材料との固化体とからなり、トンネルの周囲の地盤を内部が注入材で充填された管体と固化体と原地盤とが連成してなる一つの地盤改良体として弾性係数を求め、この求めた弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいてトンネル周壁面の変位を推定する
【0009】
請求項3記載の本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、トンネル切羽より前方のトンネル計画断面周囲の地盤を、トンネル長さ方向に、棒状補強体の先端より前方のトンネル半径方向に棒状補強体が存在しない第1の区間と、第1の区間より後方のトンネル半径方向の一部に棒状補強体が存在する第2の区間とに分け、上記第1の区間に原地盤の弾性係数を与えると共に、上記第2の区間を原地盤と一部に存する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、上記第1の区間の弾性係数と、第2の区間の弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいて、トンネル切羽位置でのトンネル周壁面の変位を推定する。
【0010】
請求項4記載の本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、トンネル切羽より前方のトンネル計画断面周囲の地盤を、トンネル長さ方向に、棒状補強体の先端より前方のトンネル半径方向に棒状補強体が存在しない第1の区間と、第1の区間より後方のトンネル半径方向の一部に棒状補強体が存在する第2の区間とに分けると共に、トンネル切羽より後方のトンネル周囲の地盤を、トンネル半径方向に棒状補強体が密に存在する第3の区間とし、上記第1の区間に原地盤の弾性係数を与えると共に、上記第2の区間を原地盤と一部に存する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、かつ上記第3の区間を原地盤と密に存在する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、上記第1の区間の弾性係数と第2の区間の弾性係数と第3の区間の弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいて、トンネル切羽より後方位置でのトンネル周壁面の変位を推定する。
【0011】
請求項5記載の本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、掘削によるトンネル切羽前後のトンネル周囲地盤の地圧解放率を次式(数1)により求め、
【数2】
求めた地圧解放率に初期地圧を乗じてなる開放された応力と、地盤の弾性係数と、ポアソン比とに基づいてトンネル周壁面の変位を推定する。
【0012】
上記した本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法においては、最初に、鋼管打設範囲において、鋼管と注入材から改良された地山の等価弾性係数を直交異方性モデルから算出する。
次に、これをトンネル横断方向に座標変換し、等方条件を満足するように平均化を行う。この弾性係数を壁面近くの改良部分にあてはめた円形トンネル理論解から変位を算出する。
円形トンネル理論解の代わり2次元の有限要素法解析を用いて算出してもよい。地圧解放率は有限要素法の解析結果を関数近似したものを用いる。地圧解放率は先行変位計測結果から求めたものを用いてもよい。切羽の前方から先受け工のない区間、一部改良区間、一様改良区間のそれぞれについて上記弾性係数を設定することで縦断方向任意位置の変位を精度よく計算できる。
前方から区間ごとの変位を加算して最終変位が求まり、切羽位置での壁面周方向ひずみを計算する。これと限界ひずみとを比較して、切羽の安定性を評価する。
また、切羽後方位置での最終変位と変位の管理基準値とを比較して変位抑制効果を評価する。推定変位から、(1)切羽の安定性と先受けによる切羽安定化効果を櫻井の限界ひずみの考え方を導入して定量的に評価でき、(2)トンネル施工管理の基本である変位管理基準との対比が可能になり、トンネル全体の安定性や先受け工による変位抑制効果を定量的に評価できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
1.先受け工法の構造とそのモデル化
先受け工法の鋼管配置を図1に示す。同工法にかかわらずに、棒状の剛な部材を切羽前方地山に配置する一般的な先受け工法に共通した構造である。同図(a)のαは鋼管の打設角度(さし角)、(s,t,v)は鋼管の軸方向にとった局所直交座標である。
【0014】
図2は鋼管の近くを詳しく見たもので、図1で色を変えた部分を拡大し、(s,t,v)座標で示してある。内部が硬化性材料で充填された鋼管の周囲に同心円状に地山と硬化性材料の固化体が形成されるとする。すなわち、鋼管を芯材とする円柱の改良体が形成される。
【0015】
図1を見ると、トンネルの縦断方向と横断周方向に同じ鋼管配置が切羽進行ごとに繰返されていることに気付く。これは、鋼管の縦横断打設ピッチが一定であるので当然であるが、改良体が三次元的に周期対称構造になる点が重要である。
【0016】
図2(a)に示した縦横断打設ピッチで区切られる繰返し構造の最小部分(周期対称要素あるいは代表要素)の平均的な弾性係数(等価弾性係数)を求めることにより、鋼管打設ピッチをパラメータにして改良範囲全体の等価弾性係数を算出することができる。以下、その具体的な手順を説明する。
【0017】
2.等価弾性係数の算出
図1、図2に示した改良範囲内の地山は、鋼管軸方向に相対的に硬くてこれに直交する二方向に柔らかいと考えるのが適当である。そこで、周期対称要素では、鋼管軸方向にとった局所座標のs方向と、これに直角なt,v方向で弾性係数が異なる直交異方性体としてモデル化する。s方向はひずみ一定を仮定した並列バネモデルを用いて、鋼管の大きな剛性が等価弾性係数に支配的に現れるようにする。一方、t,v方向は応力一定を仮定した直列バネモデルを用いて、地山や固化体の相対的に小さな剛性が支配的に現れるようにする。
結果、注入改良域の等価弾性係数は局所座標(s,t,v)方向に次のようになる。
【0018】
【式1】
【0019】
【式2】
【0020】
【式3】
【0021】
【式4】
【0022】
【式5】
【0023】
次に、これを局所直交座標(s,t,v)から基準円筒座標(γ,θ,z)に変換する。すなわち、Es,Etからトンネル横断方向の等方的な等価弾性係数Eを求める。ここで、座標変換の回転角度は、鋼管の打設角度αである。
【0024】
ここで、周期対称要素はトンネル横断周方向にも対称であるので、トンネル軸周りに軸対称条件を設定する。また、後述する切羽安定や変位の評価に際しては、等方初期地圧下の横断円形トンネル解析解を用いるので、これに適応するようにzに係る項とせん断成分は省略する。さらに、後述する横断円形トンネル解析解の適用に向けて等方条件を付加すると共に、トンネル周方向の応力:σθ=0の一軸状態を考えると、トンネル横断半径方向における注入改良範囲の等価弾性係数は、
【0025】
【式6】
と求められる。また、ポアソン比は、
【0026】
【式7】
となる。ここで、
【0027】
【式8】
εγ.トンネル半径方向のひずみ
εθ:トンネル周方向のひずみ
σγ.トンネル半径方向の応力
σθ:トンネル周方向の応力
VtsVstVvsVtv:局所直交座標(s,t,v)におけるポアソン比で、0.3〜0.35が用いられる。
【0028】
3.トンネル壁面変位の算出
ここまでに、注入改良域の等価弾性定数としてEg,vgが求まった。次に、トンネル横断方向に地山と注入改良域からなる二層構造の圧肉円筒モデルを用いて、トンネル壁面変位を算出する。図3にこのモデルを示す。トンネル軸方向には平面ひずみ条件を仮定する。
【0029】
図3に示した記号の意味は次のとおりである。
a:トンネル半径
rg:注入改良域の外径
ro:地山の外側境界
ρo:初期地圧(土被り圧)
ρg:注入改良域と地山境界の半径方向圧力
ρi:内圧
Er,Eg:地山および注入改良域のヤング率
トンネル壁面位置での半径方向の変位は、
【0030】
【式9−1】
となる。ここで、αg= rg/α は形状係数である。
また、トンネル壁面位置での周方向ひずみは、
【0031】
【式9−2】
である。
【0032】
4.区間分けとその区間の等価弾性係数の算出
式9−1でpi=0としてトンネル貫通後、あるいは、切羽から十分に後方位置の最終変位を算出できる。しかし、この変位はトンネル掘削前から先受けが施工された場合のものであり、危険側の評価を与える。トンネル縦断方向に見れば、図4に示すように、切羽後方の一様改良区間(周期対称区間)、切羽前方先受け鋼管先端位置までの一部改良区間、それより前方の未改良区間に分けられる。これらの内、切羽前方未改良区間の弾性係数は地山のそれであり、切羽後方の一様改良区間の弾性係数算出方法は既に示した。
【0033】
しかし、切羽前方一部改良区間の弾性係数は、トンネル縦断方向に鋼管が一様な配置になっていないため、別に算出しなければならない。また、切羽前方に生じる変位については、先受け工法と切羽との位置関係にも配慮が必要である。
【0034】
すなわち、図4では、切羽がこの位置からλz(鋼管縦断打設ピッチ)進んだ無支保状態において切羽前方に生じる変位が最大となり、切羽が最も不安定な状態になると考える。結局、切羽前方一部改良区間は、鋼管縦断打設ピッチで区分した二区間に細分割して、等価弾性係数を算出する。
【0035】
4−(1) 切羽前方部改良区間の内の最初のEgf1の算出
図4を参考にすると、切羽前方の最初の区間に含まれる鋼管長さはλ1=λ、区間長λ2となる。この条件は上述した周期対象要素の場合と同じであり、
【0036】
【式10】
となる。
【0037】
4−(2) 切羽前方部改良区間の内の次のEgf2の算出
区間長はλCOSα一λ2であり、切羽前方の次の区間に含まれる鋼管の総延長をλ2とすれば、
【0038】
【式11】
【0039】
【式12】
【0040】
【式13】
【0041】
【式14】
となり、以降、前述したEgを求める場合と同じ手順でEgf2を求めることができる。
【0042】
5. 初期地圧開放率曲線の関数近似
次に、式9−1で変位を算出するためには式15−1に示す地圧開放率を定める必要がある。ここでは図5に示す縦断方向初期地圧解放率を以下の式で関数近似した。結果は、図5に示すとおりであり、良好な近似結果が得られた。なお、図5の初期地圧解放率曲線は切羽をモデル化した等方初期地圧条件下の軸対称FEM解析から設定したものである。
【0043】
【式15−1】
【0044】
【式15−2】
【0045】
ここで、ηof:切羽位置の初期地圧解放率。切羽前方の先行変位測定結果が無い場合はηof =1/3程度を用いる
z:切羽位置を0とするトンネル軸方向位置
a:トンネル半径である。
【0046】
6.最終変位の算出
切羽後方と前方に形成される注入改良範囲の三種類の等価弾性係数(Eg , Egf1= Eg , Egf2)が分かったので、これらと(式15−1、−2)の初期地圧解放率の関数および(式―9)のトンネル壁面変位算出式を組合わせて最終変位を算出できる。ただし、切羽は安全側に図4の破線の位置にある場合を想定し、同図に併記したそれぞれの境界位置を考慮した算出手順は次のようになる。
【0047】
1)切羽前方の未改良区間(一部改良区間の境界(1)の手前まで)
未改良区間の地山弾性係数:Er
【0048】
【式16】
【0049】
【式17】
【0050】
【式18】
【0051】
2)一部改良区間の境界(1)と境界(2)の間
一部改良区間注入改良範囲の等価弾性係数:Egf2
【0052】
【式19】
【0053】
【式20】
【0054】
【式21】
【0055】
3)羽後方一様改良区間(境界(3)以降)
注入改良範囲の等価弾性係数:Egf1=Eg
【0056】
【式22】
【0057】
【式23】
【0058】
【式24】
【0059】
7.先受け工法の設計
まず、現場での利便性を第一義に考え次の仮定を設ける。
(1)扱いの簡単な円形トンネルの変位解を利用する。
(2)地山は等方均質な線形弾性体とする。
(3)初期地圧は土被り圧力に等しい等方的なものとする。
【0060】
先受け工法の設計フローを図6に示す。最初に、地山条件とトンネル条件から掘削後の最終収束変位を予想する。これを用いて、トンネル周囲の影響範囲全体の平均的なみかけ弾性係数を設定する。ここで、最終変位は、補助工法などが適用されない標準的な支保パターンの場合における変位である。
【0061】
次に、最終変位から、先受け工法がない場合の切羽の安定性と地山(壁面)変位の2種類を検討する。切羽の安定性は、切羽位置での先行変位を含めたトンネル壁面の半径方向の最終変位から式9−2により算出する壁面周方向ひずみと限界ひずみとの大小関係から判断する。壁面ひずみが限界ひずみよりも大きな場合に切羽が不安定であるとし、壁面ひずみが限界ひずみよりも小さくなるように、切羽前方の補助工法に要求される地山弾性係数の向上比を求める。
【0062】
一方、地山変位抑制の検討では、切羽より後方位置のトンネル壁面の半径方向の最終変位と管理基準の大小関係を比較する。最終変位が管理基準を上回る場合には、最終変位が管理基準を下回るように、先受け工法に要求される地山弾性係数の向上比を求める。2種類の地山弾性係数向上比の内、大きな方を設計の目標にする。
【0063】
ここで、切羽は安定するが変位が大きくて管理基準をクリアーできない場面も考えられる。このような場合には、切羽後方の手当てではなく、支保の効果が早期に効率的に発揮される先受け工法で変位を抑制することを基本にする。
【0064】
最終的に、先受け工法による地山弾性係数向上比が目標にした向上比を上回るように、鋼管の諸元(外径、肉厚、長さ)と配置(縦横断打設ピッチ)を決める。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明のトンネル周壁面の変位の推定方法は、鋼管の配置ごとにトンネル横断方向の弾性変形係数向上比を算出できるので、これらとトンネル縦断方向の初期地圧解放率を組合わせることにより、先受け工法による切羽の安定化と変位の抑制を評価することができる。
【0066】
また、切羽位置や先受け工法が適用された区間など、トンネル縦断方向の任意位置で変位の算出が可能である。この点が本設計法の最も大きな魅力であり、従来の極限解析を用いた設計法にない優位点である。
【0067】
また、トンネル横断の有限要素法(FEM)解析を数多く実施するような手間が省ける。さらに、計測変位と予想変位の照査から、管理基準や設計諸定数の妥当性、先受け工法の効果などを比較的簡単に評価することができる。
【0068】
なお、本発明は実施の形態で説明した中尺鋼管を用いた先受け工法に限らず全ての種類の先受け工法に適用が可能である。
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】先受け工法の配管配置と注入範囲を示す説明図である。
【図2】周期対称要素(代表要素)とその内部構造を示す説明図である。
【図3】二層構造の圧肉円筒モデルを示す説明図である。
【図4】トンネル軸方向の注入改良区間の分布を示す説明図である。
【図5】初期地圧開放率曲線を示す図である。
【図6】先受け工法の設計流れ図である。
【図7】従来の先受け工法の設計概念を示す説明図である。
Claims (5)
- 所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、
トンネル半径方向に棒状補強体が存在するトンネル周囲の地盤を、原地盤と棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、この求めた弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいてトンネル周壁面の変位を推定することを特徴とするトンネル周壁面の変位の推定方法。 - 上記棒状補強体は内部に硬化性材料が充填された管体と管体周囲に形成された原地盤と硬化性材料との固化体とからなり、トンネルの周囲の地盤を内部が注入材で充填された管体と固化体と原地盤とが連成してなる一つの地盤改良体として弾性係数を求め、この求めた弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいてトンネル周壁面の変位を推定することを特徴とする請求項1に記載のトンネル周壁面の変位の推定方法。
- 所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、
トンネル切羽より前方のトンネル計画断面周囲の地盤を、トンネル長さ方向に、棒状補強体の先端より前方のトンネル半径方向に棒状補強体が存在しない第1の区間と、第1の区間より後方のトンネル半径方向の一部に棒状補強体が存在する第2の区間とに分け、上記第1の区間に原地盤の弾性係数を与えると共に、上記第2の区間を原地盤と一部に存する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、上記第1の区間の弾性係数と、第2の区間の弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいて、トンネル切羽位置でのトンネル周壁面の変位を推定することを特徴とするトンネル周壁面の変位の推定方法。 - 所定長の掘削ごとに、トンネル切羽近傍部におけるトンネル周壁面からトンネル切羽より外側の前方地盤に向かって複数本の棒状の補強体を打設しながらトンネルを築造していく際の、トンネル周壁面の変位の推定方法であって、
トンネル切羽より前方のトンネル計画断面周囲の地盤を、トンネル長さ方向に、棒状補強体の先端より前方のトンネル半径方向に棒状補強体が存在しない第1の区間と、第1の区間より後方のトンネル半径方向の一部に棒状補強体が存在する第2の区間とに分けると共に、トンネル切羽より後方のトンネル周囲の地盤を、トンネル半径方向に棒状補強体が密に存在する第3の区間とし、上記第1の区間に原地盤の弾性係数を与えると共に、上記第2の区間を原地盤と一部に存する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、かつ上記第3の区間を原地盤と密に存在する棒状補強体とが連成してなる地盤改良体として一つの弾性係数を求め、上記第1の区間の弾性係数と第2の区間の弾性係数と第3の区間の弾性係数と、地盤のポアソン比と、初期地圧に掘削によるトンネル切羽付近の地盤の地圧の減少割合である地圧解放率を乗じてなる開放された応力とに基づいて、トンネル切羽より後方位置でのトンネル周壁面の変位を推定することを特徴とするトンネル周壁面の変位の推定方法。
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