JP3870087B2 - 樹脂射出成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢材が混在された熱可塑性樹脂材により射出成形される有底の凹部を有する単層の樹脂射出成形品に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂射出成形品に光沢のある外観を与えるために、例えば熱可塑性樹脂材に金属粒子を混合して成形することは一般によく知られている。このような樹脂射出成形品において、金属粒子が微粉であったり、或いは金属粒子が片状粉であっても混練や成形によって破壊されたり、射出成形時の流動過程で金属粒子を含まない層或いはこの流動過程で金属粒子の並び方が異なるところができ、その層だけ光の反射が弱くなるというウェルドマークが生じ、外観上の見映えが低下するという難がある。
【0003】
そこで、従来、特公平6−99593号公報に開示されるように、熱可塑性樹脂材に所定の光沢を有する所定粒径の粒子を混合して成形することにより、ウェルドマークの発生を抑制して、カメラ外装カバーや、VTRカバー等の複雑形状の高級モールド品にも使用し得る優れた外観を有する樹脂射出成形品が得られるようにすることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、乗員の手の届く範囲に飲料用カップや缶ジュースを置くようにするために、車両のセンターコンソールに有底の凹部を有するカップ受けが設けられることがある。このようなカップ受けは、その内部に置かれた飲料用カップ等が車両運転時の揺れ等によって倒れないようにするために、その凹部内の深さHが凹部の開口縁部の内径Dに比べて大きくなるように深底形状に成形されている。
【0005】
上記センターコンソールは一般に樹脂射出成形品によって成形されており、その表面には高級感を得るために、塗料等がスプレー塗装されている。
【0006】
また、上記カップ受けは、センターコンソールと一体的に成形される樹脂射出成形品か、又は別体として熱可塑性樹脂材により成形される樹脂射出成形品で構成されるが、その場合、センターコンソールと異なった外観性を高めるために、カップ受けに対しセンターコンソールとは別に高級感のある塗装を施すことがある。
【0007】
そして、上記カップ受けがセンターコンソールと一体的に成形され、それらを別々の塗料によって塗装する場合には、どちらか一方を塗装するときに、他方をマスキングして他方に塗料が付着しないようにする必要があり、塗装時に余分な手間を要し、加工工程も増加するとともに作業環境が悪化するという問題があった。
【0008】
そこで、センターコンソール及びカップ受けを別体に成形して、それらを別々に塗装するようにしてもよいが、このカップ受けは、上記のように凹部内の深さHが凹部の開口縁部の内径Dに比べて大きいので、その内面に塗料を吹き付けたときに、その内底面等からの塗料の跳ね返りが生じるのは避けられず、均一に塗布できなかったり、塗料が底面に溜まったりするという問題が生じる。
【0009】
さらに、上記提案例では、金属粒子等の含有量が多いときに、車室内のセンターコンソールに設けるカップ受け等の樹脂射出成形品にはギラギラ感が強すぎて適さないという難がある。
【0010】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記提案例の考え方に着目して、その混合する光沢材を特定することで、凹部内の深さが凹部の開口縁部の内径に比べて大きい深底形状の樹脂射出成形品であっても、その内面に塗装を施すことなく、ウェルドマークのないもしくはウェルドマークが目立たない美麗なメタリック外観を与えんとすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、光沢材が混在された熱可塑性樹脂材により成形される有底の凹部を有する単層の樹脂射出成形品であって、この凹部の開口縁部の内径Dと凹部内の深さHとが
H≧D/2
の関係を有し、少なくとも上記凹部の内面は、成形により得られたままの状態の成形面に保たれており、上記光沢材は、アルミニウム、すず、チタン及び鉄の金属、この金属を基質とする黄銅及びステンレスの合金並びにマイカ、ガラスからなるグループの中から選ばれた1種又は2種以上の材料であり、さらに、この光沢材の平均相当粒径は2〜500μm(2μm以上でかつ500μm以下)であり、光沢材が熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1〜3.0重量部(0.1重量部以上でかつ3.0重量部以下)含有されるように構成した。ここで、内径とは内側寸法をも含む意味で用いる。
【0012】
上記の構成によると、樹脂射出成形品の凹部内面は成形のままの成形面であり、この成形面には塗装が施されないため、塗装時の凹部内底面からの塗料の跳ね返りにより均一に塗布できなかったり、塗料が底面に溜まったりすることが生じることはない。また、含有させる光沢材の平均相当粒径が2μm以上であるため、樹脂射出成形品の外観がメタリックの光輝性に欠けることはない一方、その平均相当粒径が500μm以下であるため、ギラギラしたメタリック調となって繊細感がなくなるということもない。また、樹脂射出成形品に光沢材が熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1重量部以上含有されているため、その外観がメタリック感に欠けることはない一方、その光沢材の含有量が熱可塑性樹脂材100重量部に対して3.0重量部以下に限定されているため、ギラギラした不快なメタリック調となることもない。
【0013】
従って、樹脂射出成形品が成形により得られたままの状態の成形面に保たれていても、ウェルドマークのない或いはウェルドマークが目立たない美麗なメタリック外観を得ることができる。
【0014】
請求項2の発明では、樹脂射出成形品は車両のセンターコンソールに設けられるカップ受けとする。この構成によると、樹脂射出成形品を塗装する必要がないため、塗装工程におけるマスキング等の余分な工程が省略される。また、外観のギラギラ感が強すぎることはないため、車室内のセンターコンソールに設けるカップ受けに適した外観を有する樹脂射出成形品を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図3及び図4において、1はポリプロピレン(PP)等の樹脂射出成形品よりなる車両のセンターコンソールであって、このセンターコンソール1は断面略コ字状の樹脂射出成形品からなり、その上面は車両前方から後方に向かって緩やかに傾斜している。このセンターコンソール1の上面の後部にはサイドブレーキ操作レバー取付用開口2が、また前後中央部にはシフトレバー取付用開口3がそれぞれ形成されている。そして、このセンターコンソール1は、図示しない車両の車室内における運転席及び助手席間のフロアーマット上に取り付け固定され、このフロアーマット上への設置状態では、サイドブレーキ操作レバー取付用開口2からサイドブレーキ操作レバーが、またシフトレバー取付用開口3からシフトレバーがそれぞれ突出するようになっている。
【0016】
そして、センターコンソール1の上面において上記シフトレバー取付用開口3の前側には、2つのカップ受け用開口4,4が左右に並んで形成されており、この各カップ受け用開口4には、乗員の手の届く範囲に飲料用カップや缶ジュース(いずれも図示せず)を置くようにするためのカップ受け5を上側から嵌合して設置するようにしている。上記各カップ受け用開口4は円形をしており、切り欠き状の複数の位置決め用被嵌合部(図示せず)が円周方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0017】
上記カップ受け5は、本発明でいう樹脂射出成形品をなすもので、図1及び図2に示すように、有底の凹部を有する円筒形状をしており、その内部に飲料用カップ等を置いたときに、そのカップ等が車両運転時の揺れによって倒れないようにするために、円筒部5aの内側の最大深さHは円筒部5aの開口縁部5bの内径Dに比べて大きい深底形状に形成されている。具体的には、上記内径D及び深さHはH≧D/2の関係を有している。そして、図2に示すように、車両前方へ向かって左側のカップ受け5の開口縁部5bはセンターコンソール1の上面の傾斜形状に対応するように開口面が斜め左側に向くように若干傾斜している。これとは逆に右側のカップ受け5の開口縁部5bは開口面が斜め右側に向くように若干傾斜している。
【0018】
尚、カップ受け5を円筒形状としているが、断面が四角形、楕円形等を有する有底のものでも良い。この場合には、開口縁部の内径Dは開口縁部の最短内径とする。さらに、カップ受け5の底部は傾斜していてもよく、この場合には、最大深さを深さHとする。
【0019】
そして、上記カップ受け5の外周面には、上記カップ受け用開口4,4の被嵌合部に対応する嵌合部5c,5c,…が半径方向外側へ突設されており、センターコンソール1の定位置に嵌合されるようになっている。尚、上記開口縁部5bには、カップ受け5がカップ受け用開口4を通って下側に落ち込まないようにするために、鍔5dが設けられている。
【0020】
そして、上記カップ受け5は、光沢材が混在された熱可塑性樹脂材により成形され、その光沢材は、アルミニウム、すず、チタン、鉄等の金属、この金属を基質とする黄銅や、ステンレス等の合金、又はマイカ、ガラスの中から1種又は2種以上の材料を選択すればよい。
【0021】
さらに、上記光沢材の平均相当粒径(光沢材の最長径と最短径との算術平均を試験光沢材群について平均した値)は2〜500μmであり、その含有量は熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1〜3.0重量部とされている。
【0022】
従って、この実施形態によると、含有させる光沢材の平均相当粒径が2μm以上であるため、カップ受け5の外観がメタリックの光輝性に欠けることはなく、一方、その平均相当粒径が500μm以下としているため、ギラギラした不快なメタリック調となることもない。
【0023】
また、カップ受け5に光沢材が熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1重量部以上含有されているため、その外観がメタリック感に欠けることはない一方、その光沢材の含有量が熱可塑性樹脂材100重量部に対して3.0重量部以下に限定されているため、ギラギラしたメタリック調となってウェルドマークが発生することもない。
【0024】
従って、カップ受け5が成形により得られたままの状態の成形面に保たれていても、ウェルドマークのない或いはウェルドマークが目立たない美麗なメタリック外観を得ることができる。
【0025】
また、外観のギラギラ感が強すぎることはないため、車室内のセンターコンソールに設けるのに適した外観を有するカップ受け5を得ることができる。
【0026】
そして、カップ受け5の内面は成形のままの成形面であり、この成形面には塗装が施されないため、塗装時の内底面からの塗料の跳ね返りにより均一に塗布できなかったり、塗料が底面に溜まったりすることが生じることはない。さらに、塗装をしていないため、塗装工程におけるマスキング等の余分な工程を省略することができるとともに作業環境が悪化することもない。
【0027】
尚、上記実施形態では、樹脂射出成形品を車両のセンターコンソール1に設けられるカップ受け5としたが、有底の凹部を有する樹脂射出成形品であって、凹部の開口縁部の内径Dと凹部内の深さHとがH≧D/2の関係を有するものであれば、本発明を適用できるのは勿論のことである。
【0028】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。原材料の熱可塑性樹脂材としてポリプロピレン(PP)を使用した。このポリプロピレンに所定の光沢材を混合し、220トン射出成形機を用いて、成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力49MPa、射出時間30秒の成形条件のもとで開口縁部の内径D=80mm、内側の深さH=70mm、肉厚3mmの有底円筒状のカップ受けを成形した。
【0029】
(実施例1)
光沢材として長径が180μm、厚みが9μmのアルミフレーク(A)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して2重量部混合した。
【0030】
(実施例2)
光沢材として長径が40μm、厚みが7μmのアルミフレーク(B)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して1重量部混合した。
【0031】
(実施例3)
光沢材として粒径2〜20μmのマイカ(E)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.5重量部混合した。
【0032】
(比較例1)
光沢材として上記アルミフレーク(A)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して5重量部混合した。
【0033】
(比較例2)
光沢材として上記アルミフレーク(A)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.05重量部混合した。
【0034】
(比較例3)
光沢材として長径が800μm、厚みが10μmのアルミフレーク(C)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して2重量部混合した。
【0035】
(比較例4)
光沢材として1μmよりも小さい微粉アルミ粉(D)を熱可塑性樹脂材100重量部に対して2重量部混合した。
【0036】
そして、以上の実施例1〜3及び比較例1〜4について、その光沢材の混合量(熱可塑性樹脂材100重量部に対する重量部)と、外観上の評価とをまとめて表1に示す。この評価は以下の基準により行った。
【0037】
商品化の上で重要な因子である(1)メタリック感と、(2)成形時に発生したウェルドマーク外観とを以下の評価基準に従って評価し、これらの評価項目を中心に、最終的な(3)商品意匠性を総合的に判定した。備考欄にはその判定の根拠を示した。表1中の記号は次のとおりである。
【0038】
(1)メタリック感
◎:金属性の輝きが強く、製品全体の輝きのバランスがとれ、好ましく感じる。
○:金属性の輝きがあり、製品全体の輝きのバランスがとれ、好ましく感じる。
△:金属性の輝きがあるものの、過度にギラギラして不快に感じる。
×:金属性の輝きが弱く、全体にメタルの感覚がしない。
【0039】
(2)ウェルドマーク外観
○:樹脂の流れが合流したウェルドマークは観察されない。
△:樹脂の流れが合流したウェルドマークは若干観察される。
×:樹脂の流れが合流したウェルドマークがくっきりと観察される。
【0040】
(3)商品意匠性
◎:美麗なメタリック外観を示し、ウェルドマークもなく、好ましく感じられ、そのまま商品化できるレベルである。
○:美麗なメタリック外観を示し、若干ウェルドマークがあっても、好ましく感じられ、製品・金型設計等の何らかの手段を用いれば商品化可能なレベルである。
×:金属性の輝きが強すぎる、あるいは弱すぎる等、意匠性が無く、商品化の可能性がない。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1〜3は若干ウェルドマークが認められる場合があるものの、良好な意匠性を示し、商品化可能なカップ受けが得られた。尚、実施例3はメタリック調の外観ではなく、パール調の外観が得られたが、良好な意匠性を示した。
【0043】
一方、比較例1〜4はいずれもメタリック感がない、ギラギラしすぎである、ウェルドマークが認められる等、意匠性が乏しかった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明の単層の樹脂射出成形品によると、混在される光沢材として、アルミニウム、すず、チタン及び鉄の金属、この金属を基質とする黄銅及びステンレスの合金並びにマイカ、ガラスからなるグループの中から選ばれた1種又は2種以上の材料を用い、かつ、その平均相当粒径は2〜500μmであり、さらに光沢材が熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1〜3.0重量部含有されるようにしたことにより、樹脂射出成形品が成形により得られたままの状態の成形面に保たれていても、ウェルドマークのない美麗なメタリック外観を得ることができる。
【0045】
請求項2の発明によると、樹脂射出成形品は車両のセンターコンソールに設けられるカップ受けとしたことにより、塗装時のマスキング等の余分な工程が省略され、かつ外観のギラギラ感が強すぎることのない、車両のセンターコンソールに設けるカップ受けに適した外観を有する樹脂射出成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るカップ受けの斜視図である。
【図2】 図1におけるII−II線断面図である。
【図3】 センターコンソールにカップ受けを設けた様子を示す斜視図である。
【図4】 図3におけるIV−IV線拡大断面図である。
【符号の説明】
1 センターコンソール
5 カップ受け
Claims (2)
- 光沢材が混在された熱可塑性樹脂材により射出成形される有底の凹部を有する単層の樹脂射出成形品であって、
上記凹部の開口縁部の内径Dと凹部内の深さHとが
H≧D/2
の関係を有し、
少なくとも上記凹部の内面は、成形により得られたままの状態の成形面に保たれており、
上記光沢材は、アルミニウム、すず、チタン及び鉄の金属、該金属を基質とする黄銅及びステンレスの合金並びにマイカ、ガラスからなるグループの中から選ばれた1種又は2種以上の材料であり、
上記光沢材の平均相当粒径は2〜500μmであり、
光沢材が熱可塑性樹脂材100重量部に対して0.1〜3.0重量部含有されていることを特徴とする樹脂射出成形品。 - 車両のセンターコンソールに設けられるカップ受けであることを特徴とする請求項1の樹脂射出成形品。
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