JP3867508B2 - 内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術として、燃料噴射弁により噴射される燃料を吸気通路に設けたヒータで加熱し、気化することにより、吸気通路や吸気弁に付着する燃料を減らし、とくに冷機始動時の燃焼改善と、有害な炭化水素の排出量の低減を図る方式が提案されている。 例えば米国特許No.5894832にあるように、各気筒の吸気ポート付近に設けられる燃料噴射弁(ポート燃料噴射弁)に加えて、その上流のスロットル弁をバイパスする補助空気通路に燃料噴射弁(上流燃料噴射弁)とヒータを配置する構成により冷機始動後の暖機過程で上流燃料噴射弁よりヒータに向けて燃料噴射を行い、ヒータで燃料気化を促進することにより吸気通路への燃料付着を防止し燃焼改善を図るものが有る。また上記公知例では燃料気化により燃焼改善効果が得られることから、始動後のアイドルでヒータにより燃料を加熱気化するとともに点火時期の遅角量をヒータの無い従来のエンジンに対し大きくして、排気温度を上昇させ、触媒の活性を促進することにより冷機始動後において炭化水素(HC)の排出量を低減できるという利点が有る。
【0003】
ここで、前記米国特許では、噴射された燃料をほぼ全てヒータに付着させて気化するので大容量のヒータが必要となり、このため消費電力が増大し、またヒータサイズが大きくなるという問題があった。
【0004】
ここで、一般に、燃料の粒径を10ミクロン程度に微粒化すれば、空気流により燃料粒子が運ばれ、吸気通路に燃料を付着させること無くシリンダに輸送できることが知られている。よって上流に配置する燃料噴射弁をエアアシスト式の高微粒化噴射弁とすることで、燃料をシリンダに直接流入させることによりヒータを廃止する構成が考えられる。また高微粒化噴射弁の燃料粒径のばらつき等により吸気通路に多少の燃料が付着する場合には、一部の燃料をシリンダに直接流入させ、残りの燃料をヒータに付着させることで、吸気通路への付着燃料を減少させつつヒータの消費電力を低減する構成が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のエアアシスト式の高微粒化噴射弁を設けることにより吸気通路への付着燃料を減少させてヒータを廃止する、もしくはヒータの消費電力を低減する方式では、エアアシスト式噴射弁はスロットル弁上流から燃料微粒化用の空気を取り入れるが、始動クランキング時では、スロットル弁上流部と噴射弁下流の吸気通路の圧力差が小さくなるので、燃料微粒化用の空気量が減少し微粒化が促進されず、粒径の大きな燃料粒子が吸気通路壁面に付着するためシリンダへの燃料流入が遅れ、始動性の悪化を招いたり、またシリンダ流入燃料が安定燃焼可能な量となるまでの所要時間が長いため完爆までに未燃ガスが多く排出されてしまうという問題が有る。
【0006】
また、ヒータを備えた構成で、始動クランキング時では、ヒータ部の空気流量が減少すること、および吸気通路圧力が高いことに起因してヒータ部の燃料気化が促進されず、シリンダへの燃料流入が遅れ始動性の悪化を招いたり、未燃ガスを多く排出してしまうという問題が有った。
【0007】
さらに、加速時等、吸気通路圧力が上昇する条件では、スロットル弁上流と噴射弁下流の吸気通路の圧力差が減少するのでエアアシスト式噴射弁の微粒化用空気が不足し、燃料の微粒化が促進されない。このため吸気通路内に付着する燃料が増加しシリンダに流入する燃料が減少することにより燃焼の悪化や、排気ガスの悪化を招く恐れがあるという問題が有った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するための本発明の構成を図1に示す。
【0009】
上記課題は、各気筒毎に設けられる燃料噴射弁1と、燃料噴射弁1の上流の吸気通路内または、燃料噴射弁1の上流でスロットル弁をバイパスする補助空気通路内に設けられる燃料噴射弁2と、前記燃料噴射弁2の噴射方向に設けられ、燃料噴射弁2の噴射燃料の全てまたは一部を加熱により気化するヒータ部材と、前記ヒータ部材に通電を行うヒータ制御手段とを有し、
始動時に機関回転速度が所定値を超えたとき、または機関回転速度が所定値を超えてから所定のディレイ時間経過後に、前記燃料噴射弁2から燃料を噴射すると共に、前記ヒータ制御手段のヒータへの通電を開始することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置によって解決される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例について説明する。図2は本発明を適用するシステムの構成を示す図であり、エンジンの吸気通路6には吸入空気量センサ7,スロットル弁8が設けられる。各シリンダの吸気ポート入口にはポート燃料噴射弁2が設けられる。吸気通路の上流部にはエアアシスト式の高微粒化噴射弁(上流燃料噴射弁)3および燃料微粒化用の空気をスロットル弁8の上流から取り込み、上流燃料噴射弁3に供給する空気通路11が設けられる。一般的に、噴射燃料の粒径を10ミクロン程度まで微粒化すれば、燃料は吸気通路に付着すること無くシリンダに流入することが知られており、吸気通路に付着する燃料が少なくなるように上流燃料噴射弁3の噴射燃料は約10ミクロンに微粒化される。上流燃料噴射弁3の噴射方向にはヒータ4が設けられる。ヒータは、温度を一定に保つことのできるPTCヒータ等を用いることができる。ヒータ4にはバッテリ12より、ヒータリレー13を介して電流が供給される。ヒータ電流は電流検出用抵抗20の端子電圧により検出される。また、スロットル弁をバイパスする補助空気通路9には補助空気の量を調節するアイドルスピードコントロールバルブ10(以下
ISCバルブと略す)が設けられる。ここで、補助空気通路9は、ヒータ4に空気流が向かうように出口形状が形成される。上流燃料噴射弁の燃料粒径には多少のばらつきが有り粒径の大きな燃料粒子も一部存在するが、上流燃料噴射弁から噴射された燃料の内、粒径の小さな燃料粒子は空気流により下流に運ばれ直接シリンダに流入する。このため、ヒータに付着するのは粒径の大きな燃料粒子のみとなり、燃料の全てをヒータに付着させるものに対し、ヒータの消費電力を軽減することができる。エンジンには、回転速度を検出できるクランク角センサ14,冷却水温センサ15が設けられ、点火装置として、点火プラグ16,点火コイル17,パワースイッチ18が設けられる。各センサの信号はコントロールユニット19に入力され、ポート燃料噴射弁2,上流燃料噴射弁3,ヒータ4,ヒータリレー13,ISCバルブ10,パワースイッチ18はコントロールユニット19により制御される。
【0013】
上記のような上流燃料噴射弁としてエアアシスト式の燃料噴射弁を用いる構成では、燃料微粒化のための空気をスロットル弁上流から取り込み、噴射弁下流に噴射するので、ほぼ大気圧であるスロットル弁上流と、噴射弁下流の圧力差が減少する始動クランキング時には微粒化用の空気が不足し燃料の微粒化が促進されない。図4にエアアシスト式の燃料噴射弁の微粒化用空気量と平均粒径の関係を示す。アイドル時や部分負荷で走行時は、噴射弁下流の吸気通路圧力が小さくなりスロットル弁上流との圧力差が大きくなるので噴射弁の空気流量が確保でき平均粒径は10ミクロン程度と小さくなる。このとき10ミクロン以下に微粒化された燃料粒子が空気流により運ばれ、吸気通路に付着すること無くシリンダに流入する。これに対し、始動クランキング時では、噴射弁下流の吸気通路圧力は大気圧に近い値となりスロットル弁上流との圧力差がほとんど生じず噴射弁に空気はほとんど流れないため、粒径は例えば120ミクロン程度と大きくなってしまう。このため例えば図2の構成では、始動クランキング時には、上流燃料噴射弁の燃料粒径が大きくなるので、空気流に乗って直接シリンダに輸送される燃料は減少し、大部分の燃料がヒータ4に付着する。その結果ヒータの気化能力を超える燃料がヒータに付着し、ヒータで気化されなかった燃料が吸気通路の壁流(付着燃料)となってしまいシリンダへの燃料流入が遅れ、始動性の悪化を招いたり、未燃ガスを多く排出してしまうという問題が有った。
【0014】
このような始動クランキング時にエアアシスト式の上流燃料噴射弁の燃料微粒化が促進されないことによる不具合を防止するための本発明の燃料噴射制御について図5により説明する。本発明では、スタータによる始動クランキングとともに、ポート燃料噴射弁で(d)に示すように噴射を行い始動するようにする。
【0015】
ここで、ポート燃料噴射弁で噴射する場合も吸気通路やバルブへ付着する燃料が有り、燃料がシリンダに流入するまでの遅れが有るが、一般的なポート燃料噴射弁の粒径が70ミクロン程度であるのに対し、始動クランキング時に上流燃料噴射弁で噴射する場合は微粒化用空気がほとんど供給されないため上流燃料噴射弁の粒径は例えば120ミクロンとなり、上述したように燃料の多くが付着燃料となるためにポート燃料噴射弁で始動する場合に比べて付着燃料が増大する。また噴射弁が上流に位置するため燃料の輸送遅れが生じることにより、上流燃料噴射弁で始動したときのシリンダへの燃料流入遅れはポート燃料噴射弁により始動する場合よりも大きくなることが発明者らの実験により確認された。従って始動クランキング時にポート燃料噴射弁で噴射することにより始動性が改善できる。実験では上流燃料噴射弁で噴射し始動した場合の始動時間は、約1.8secなのに対しポート燃料噴射弁で始動することにより始動時間を0.5secに短縮できた。また始動時にシリンダ流入燃料が燃焼可能な量に達するまでの遅れが減少することにより、完爆までに排出される未燃ガスの排出量も低減することができる。
【0016】
ポート燃料噴射弁による始動後に回転数(a)が所定値(完爆判定レベル)以上に上昇した後は、(b)に示すようにエンジンの吸気動作により吸気通路の圧力が小さくなり、スロットル弁上流と噴射弁下流の吸気通路の圧力差が大きくなって微粒化のための空気が供給されることで燃料が十分に微粒化されるので、
(d)の実線のようにポート燃料噴射弁の噴射を停止して、(e)の実線に示すように上流燃料噴射弁による噴射を開始すれば、高微粒化された燃料が吸気通路に付着すること無くシリンダに流入するので燃焼の改善を図ることができる。またこのとき(c)のように上流燃料噴射弁による噴射開始と同時にヒータへの通電を開始する。
【0017】
上流燃料噴射弁の噴射開始後は、ポート燃料噴射弁で噴射する場合に比べて、吸気通路への付着燃料が減少し、燃焼安定性が向上するので、(f)のように点火時期の遅角補正を実施し、排気温度を上昇させ触媒の活性を促進することができる。ここで、ヒータの消費電力を考慮して例えば冷機始動後から触媒活性までの数十秒間、ヒータへの通電、および上流燃料噴射弁で噴射を行い触媒の活性を促進するようにする。その後は上流燃料噴射弁の噴射およびヒータへの通電を停止し、ポート燃料噴射弁で噴射を実施する。
【0018】
ここで、本例では始動クランキング時にポート燃料噴射弁で噴射するようにしたが、始動クランキング時にポート燃料噴射弁による噴射を実施するとともに、上流燃料噴射弁でヒータの気化能力を超えない程度に一部の燃料を噴射するようにしても良い。
【0019】
また、ヒータの容量が小さい場合には、上流燃料噴射弁で噴射開始後も一部の燃料をポート燃料噴射弁で噴射しヒータへの付着燃料を減少させるようにしても良い。
【0020】
以上のように、内燃機関の吸気ポートに設けられるポート燃料噴射弁と、吸気通路上流に高微粒化が可能なエアアシスト式の上流燃料噴射弁を備えた構成において、始動クランキング時には上流燃料噴射弁に微粒化のための空気が供給されず微粒化の不足により吸気通路への付着燃料が増加すること、および上流燃料噴射弁がシリンダから離れておりシリンダへの燃料供給遅れが大きいことを考慮して、本発明では始動クランキング時は、主にポート燃料噴射弁で噴射を実施し始動すると共に始動後(完爆回転まで上昇後)は、高微粒化が可能な上流燃料噴射弁で主に噴射を実施する(噴射弁の切り換えを行う)ことにより、始動性の悪化,始動時の未燃ガスの排出を防止するとともに、始動後の燃焼安定化をはかることができる。
【0021】
尚、本実施例では各気筒の吸気ポートに噴射弁を備えたエンジンへの適用例を示したが、本方式は、各気筒の燃焼室内に噴射弁を備えた筒内噴射式のエンジンにも同様に適用可能であり、始動クランキング時には上流燃料噴射弁に対し燃料供給の遅れの小さい筒内噴射弁で主に噴射を実施し、始動後に上流燃料噴射弁で主に噴射を実施すれば同様の効果を得ることができる。
【0022】
さらに、始動時に上流燃料噴射弁の噴射を開始するタイミングは、始動時の一時的な回転変動による誤動作を防止するために、クランキング後所定の回転を超えた状態が所定ディレイ時間以上経過してから実施するようにしても良い。これにより、燃焼が安定した状態で、かつ上流燃料噴射弁の燃料微粒化に必要な空気量が得られるまで十分に回転上昇した状態で噴射弁の切り換えを行うことができる。
【0023】
また、吸気通路に圧力センサが設けられる場合には始動時に上流燃料噴射弁の噴射を開始するタイミングについて、検出した吸気通路圧力が所定値以下に減少したときから噴射を開始するか、または大気圧と吸気通路圧力の差圧を検出するタイプのセンサであれば差圧が所定値以上となったときから噴射を開始するようにしてもよい。また始動時の吸気通路圧力の変動による誤動作を防止するために、吸気通路圧力が所定値以下に減少、もしくは大気圧と吸気通路圧力の差圧が所定値以上となってから所定のディレイ時間が経過した後から上流燃料噴射弁の噴射を開始してもよい。
【0024】
ここで、(d)の点線に示すように始動後にポート燃料噴射弁の噴射を停止した後もしばらくの間、始動時にポート燃料噴射弁により噴射され吸気ポートに付着した燃料が徐々に蒸発しシリンダに流入するが、ヒータに付着する燃料に対し、上流燃料噴射弁からシリンダに直接流入する燃料の割合が例えば50%以上と比較的多い場合には、ポート燃料噴射弁の噴射停止後に上流燃料噴射弁の噴射を開始しても、吸気ポートからの蒸発燃料が減少する前に(e)の点線(i)のように上流燃料噴射弁の燃料が応答良く流入するので燃焼悪化を生じること無く噴射弁の切り換えが可能である。
【0025】
これに対し上流燃料噴射弁からシリンダに直接流入する燃料に対しヒータに付着する燃料の割合が多い場合では(e)の点線(ii)のようにヒータ部の燃料気化遅れの影響が大きくなりシリンダへの燃料流入が遅れるため、必要なシリンダ流入燃料量を確保するために、上流燃料噴射弁による噴射開始時にポート燃料噴射弁の噴射を即時に停止するのでなく、(d2)の実線に示すように徐々に減少させるようにして不足分を補い噴射弁の切り換えを行うようにしても良い。ここで、始動後のポート燃料噴射弁の噴射量の減量特性は、ヒータからの気化燃料の量と、吸気ポートからの蒸発燃料の量によって、それらの不足分を補うように設定されるが、ポート燃料噴射弁の噴射によるシリンダへの燃料の流入は、吸気ポートへの燃料付着により流入遅れを生じるので、燃料付着量と関連するエンジン冷却水温や、吸気通路圧力またはエンジン回転速度,吸入空気量の検出値,始動時間(始動クランキング開始から回転上昇するまでの時間)により前記減量特性を変更するようにしても良い。例えば始動後にポート燃料噴射弁で噴射したときにエンジン冷却水温が低ければ、吸気ポートへの燃料付着量が多くなるので燃料付着によるシリンダ流入燃料の減少を補うように(d2)の点線(ii)のように、始動後のポート燃料噴射弁の噴射量をエンジン冷却水温が高いときの減量特性(i)に比べてゆっくりと減少させるようにする。また始動時間が長いときは始動完了までに吸気ポートに付着した燃料は多くなっているので、始動後に吸気ポートから気化する燃料も多くなり、よって始動後のポート燃料噴射弁の噴射量を始動時間が短いときに比べて速く減少させるようにする。さらに、ヒータからの気化燃料の量はヒータ温度,吸気通路圧力,吸入空気量,吸入空気温度に依存するため、ヒータ温度やこれと関連のあるヒータ電流,ヒータ通電時間、および吸気通路圧力またはエンジン回転速度,吸入空気量,吸入空気温度のいずれかの検出値またはこれら検出値の組合せに基づいて前記減量特性を変更するようにしても良い。ここでPTCヒータでは、ヒータ印加電圧一定のとき図13のように、ヒータ温度が上昇するに従ってヒータ電流が減少する特性を有するのでヒータ電流によりヒータ温度を検出することができる。
【0026】
このように噴射弁の切り換え時に吸気ポートからの気化燃料量およびヒータからの気化燃料量に関連するパラメータの検出値に応じてポート燃料噴射弁の噴射量減量特性を変更することにより、エンジンの運転状態の変化による空燃比のばらつきを生じることが無く、回転変動や、未燃ガスの排出を防止できる。
【0027】
尚、上記の例では、始動後のポート燃料噴射弁の噴射量減量特性として減量速度をエンジンの運転状態により変更するようにしたが、減量を開始するまでのディレイ時間を変更するようにしても良い。
【0028】
また始動直後では、吸気通路圧力が減少するためポート燃料噴射弁による始動時に吸気通路に付着した燃料が急激に蒸発し燃料過剰となる場合があるので、
(d2)の点線(iii)に示すように始動直後に一時的にシリンダ流入燃料の増加が発生するタイミングでは、燃料過剰とならないようポート燃料噴射弁の噴射量を減少させるようにしても良い。
【0029】
ところで、吸気通路上流にエアアシスト式の燃料噴射弁を設けるものについて、噴射弁の改良によりさらに微粒化を促進し、平均粒径を小さくして、大部分の燃料粒子の粒径を10ミクロン以内とすれば、燃料粒子を気流に乗せて吸気通路に付着すること無くシリンダに輸送できる。微粒化を改善した燃料噴射弁の例としては、特開平4−292573号公報にあるように燃料を旋回させて微粒化し、さらにノズルに空気を供給して旋回燃料と衝突させることで微粒化を促進するようにした噴射弁が知られている。
【0030】
このような噴射弁を吸気通路上流に配置する構成では、ヒータを設けなくともヒータを設けるものと同様に吸気通路への燃料付着を防止でき燃焼を改善することができるので、図3に示すようなヒータを廃止した構成により消費電力の低減が可能となる。このような構成においても図2の構成と全く同様に、始動クランキング時には上流燃料噴射弁に微粒化用空気が供給されず燃料が吸気通路内に付着してしまうという問題が有るので、本発明の噴射制御を適用することができる。
【0031】
また、エアアシスト式の上流燃料噴射弁およびヒータを、スロットル弁をバイパスする補助空気通路に配置する構成にも本発明の噴射制御を適用することができる。
【0032】
さらに図2,図3の構成で、補助空気通路とISCバルブを設けずに、空気量を調節するための弁としてスロットル弁のみを設け、スロットル弁をモータにより駆動する構成に適用してもよい。
【0033】
また本発明の噴射制御では、図5(e)の実線に示すように、始動後に上流燃料噴射弁の噴射開始時の噴射量を、定常状態の燃料量、もしくは吸入空気量検出値に対し理論空燃比となる燃料量に対して増量し、燃料の蒸発表面積を大きくしてヒータ部の燃料気化遅れを減少させるようにしているがヒータからの燃料気化の遅れはヒータ温度,吸気通路圧力,吸入空気量,吸入空気温度に依存するため、ヒータ温度やこれと関連のあるヒータ電流,ヒータ通電時間、および吸気通路圧力またはエンジン回転速度,吸入空気量やこれと関連の有るエンジン冷却水温および吸入空気温度のいずれかの検出値またはこれら検出値の組合せに基づいて上流燃料噴射弁の噴射開始時の増量特性を変更するようにしても良い。例えば前回の始動から長く時間の経過していない再始動では、ヒータ温度が上昇しているのでヒータの燃料気化遅れは小さく、通常の冷機状態からの始動と同様に燃料の増量を行うと、シリンダに流入する燃料が過剰となり燃焼が悪化したり未燃ガスを多く排出してしまう。よってヒータ温度をヒータ電流により検出して、ヒータ温度が高い場合は(e2)の点線(i)のように上流燃料噴射弁の噴射開始時の増量分を少なくし、ヒータ温度が低い場合は(e2)の点線(ii)のように増量分を多くするようにする。また、吸入空気量が多い場合は、ヒータ部の燃料気化が空気との衝突により促進されヒータの燃料気化遅れは減少するので前記増量分を少なくするようにする。ここで、噴射開始時の燃料増量分を変更する他に、増量分の減少速度を変更するようにしても良い。
【0034】
このようにエンジンの運転状態やヒータ温度(ヒータ電流)に応じて上流燃料噴射弁の噴射開始時の燃料増量特性を変更することにより、運転状態が異なっても燃焼の悪化や未燃ガスの排出量の増加を招くこと無く、シリンダへの燃料流入の遅れを減少させことができる。
【0035】
上記のような上流燃料噴射弁で噴射開始時にヒータ部の気化遅れを減少させるために燃料増量する方法は、上流燃料噴射弁としてエアアシスト式の噴射弁を用いるものに限らず、ヒータに燃料を付着させて気化する方式であれば適用できる。この場合は始動時にヒータ部の燃料気化遅れや、輸送遅れによる始動性の悪化を防止するため始動クランキング時にポート燃料噴射弁で噴射を行い、始動後にエンジンの運転状態やヒータ温度(ヒータ電流)に応じた増量特性で上流燃料噴射弁での噴射を実施する。
【0036】
次に、図6のような上流燃料噴射弁3,ポート燃料噴射弁2、および上流燃料噴射弁3の噴射燃料を気化するためのヒータ4を備えた構成において、ヒータの気化特性に着目した始動時の噴射制御の方法について説明する。ここで上流燃料噴射弁はエアアシスト式等の高微粒化噴射弁に限定されるものではなく、通常の燃料加圧式の噴射弁であっても良い。
【0037】
始めに、始動クランキング時から上流燃料噴射弁により噴射を行った場合の始動性能について図7により説明する。スタータによる始動クランキング開始とともに(d)のように上流燃料噴射弁で噴射を開始する。このとき(c)のようにポート燃料噴射弁の噴射は実施しない。また(b)のようにヒータへの通電は始動前の適当なタイミングで開始され、ヒータはある程度昇温されているものとする。始動クランキング時では(e)のようにヒータ部の空気流量が少なく、ヒータ表面に濃い燃料蒸気の層ができ燃料蒸気圧の上昇により気化が抑制されること、および(f)のように吸気通路圧力が大気圧に近いため気化しにくいという2つの理由によりヒータの燃料気化率が低下することが発明者らの実験により確認されている。図8にヒータ部の空気流量と燃料気化率の関係の例を示す。空気流量の増加にしたがって燃料気化率が増加する。これは空気流によりヒータ表面の燃料蒸気が除去されて燃料気化が促進されることによる。よって始動クランキング時にはヒータ部の空気流量が減少することにより燃料気化率が低下し、またヒータが上流に位置するため気化燃料がシリンダに達するまでの輸送遅れがあるため、図7(g)に示すようにシリンダへの燃料流入遅れが大きく(a)のように始動時間が1.6secと長くなる。これに対し、ポート燃料噴射弁で始動する場合の始動時間は0.5sec程度であるので、始動クランキング時から上流燃料噴射弁で噴射する場合にはポート燃料噴射弁で始動する場合に比べて始動性が悪化する。また、シリンダ流入燃料が安定燃焼可能な量となるまでの所要時間が長いため、完爆までに有害な未燃ガスが多く排出されてしまう。さらに始動クランキング時に気化されずヒータ部に多く付着していた燃料が(g)のように始動後の吸気通路圧力の低下により急激に蒸発することにより(h)のように燃料過剰となり、このため始動後に未燃ガスが多く排出されてしまう。
【0038】
燃焼安定性の確保と排出ガス値の低減のためには、気化燃料を早く供給できることが望ましいが、始動クランキング時から上流燃料噴射弁で噴射する場合は前述したように、ヒータの気化率が低いことにより始動性が悪化し未燃ガスが多く排出されてしまう。これに対し、本発明では図9(d)のように回転速度が始動の完了を判定する所定値N0を超えたときから上流燃料噴射弁の噴射を開始するようにする。回転上昇後では(e)(f)のように空気流量の増加、および吸気通路圧力の減少によりヒータ部の燃料気化が促進されるため、燃料付着による未燃ガスの排出を防止できる。そして始動クランキング時から始動完了するまでの間は、ポート燃料噴射弁で噴射を実施するので、前述したように上流燃料噴射弁で始動する場合に比べて付着燃料が減少し(g)のようにシリンダへの燃料流入が早くなり、始動時間が0.5sec程度に短縮され、またクランキング開始から完爆までの未燃ガスの排出量を低減できる。さらに(h)のように始動後の付着燃料の蒸発による空燃比の変動も小さく、始動後の未燃ガスの排出量を低減できる。
【0039】
他に、スタータの動作とヒータへの通電が重なって供給電流が増大することによるバッテリへの負担等を考慮して、クランキング(スタータ動作)終了時から上流燃料噴射弁での噴射を開始する方法も考えられるが、クランキングはドライバのスイッチ操作によるため、ドライバーの操作によりクランキング時間が長くなったときは気化燃料の供給が遅れて燃焼が悪化する場合が有るので、本発明では回転上昇後から上流燃料噴射弁で噴射を開始することにより、始動時に速やかに気化燃料をシリンダに供給できる。
【0040】
ここで、始動時に上流燃料噴射弁の噴射を開始するタイミングは、ヒータ部の気化に必要な空気量が得られていることを判定するために吸入空気量センサにより検出した空気量が所定値を超えてから噴射するようにしても良い。
【0041】
また、吸気通路に圧力センサが設けられる場合には、検出した吸気通路圧力が所定値以下に減少したときから上流燃料噴射弁の噴射を開始してもよい。
【0042】
さらに始動時の一時的な回転変動や吸入空気量,吸気通路圧力の変動による誤動作を防止するために、クランキング後所定の回転を超えた状態、または吸入空気量が所定値以上となっている状態、または吸気通路圧力が所定値以下となっている状態が所定のディレイ時間以上継続したときに上流燃料噴射弁の噴射を開始してもよい。これにより、燃焼が安定した状態で、かつヒータ部の燃料気化に必要な空気量が得られるまで状態で確実に噴射弁の切り換えを行うことができる。
【0043】
次に、ポート燃料噴射弁、その上流の吸気通路内にエアアシスト式の噴射弁、およびヒータを備え、上流燃料噴射弁で噴射された燃料の一部を空気流により輸送し直接シリンダに供給するとともに、残りの燃料をヒータに付着させて気化するようにした構成において、ヒータの消費電力を低減する方法について説明する。従来技術として、前記した米国特許No.5894832 の実施例には、アイドル時にヒータに全ての燃料を付着させ気化する構成で、ドライバーがドアを開けると同時にヒータに通電を開始して、エンジン始動までにヒータを昇温することで燃料気化を促進する方式が記載されている。
【0044】
上記従来技術では、始動前からヒータに通電すること(プリヒート)により消費電力が増大するという問題がある。
【0045】
上記従来技術のような全ての燃料をヒータに付着させて気化する構成において、始動前からのヒータへの通電(プリヒート)を実施する場合と実施しない場合の始動性について図10(1)により説明する。ここで、前述したように始動クランキング時はヒータの気化率の低下により上流燃料噴射弁で噴射すると始動性の悪化や未燃ガスの排出を引き起こすので、ポート燃料噴射弁で噴射するようにしている。(a1)の実線のように始動前からのヒータ通電(プリヒート)を実施した場合は、ヒータが昇温しているので(c1)のように始動後に上流燃料噴射弁の噴射を開始した後に、(d1)の実線のように速やかに気化燃料がシリンダに供給され、(e1)の実線のように始動後の回転が安定している。これに対して(a1)の点線のようにプリヒートを実施しない場合は、上流燃料噴射弁で噴射開始後に、ヒータが昇温されていないので燃料の気化が促進されず、(d1)の点線に示すように気化燃料の流入が遅れ、燃焼が悪化するため(e1)の点線のように始動後に回転落ちを引き起こす。
【0046】
一方、上流燃料噴射弁としてエアアシスト式の高微粒化噴射弁を用い、一部の燃料をヒータに付着させずに空気流に乗せて直接シリンダに輸送するようにした図2の構成では、図10(2)の(a2)のようにプリヒートを実施しなくとも、上流燃料噴射弁の噴射開始後に、燃料の一部がヒータを介さず直接シリンダに流入するために(d2)のように燃料の流入が早く、よって上記従来技術のように始動前からのプリヒートを実施せずに始動後からヒータに通電を実施しても
(e2)のように燃焼の悪化や回転落ちを生じないことが発明者らの実験により確認された。本発明では従来技術のように始動前からのヒータ通電を行わずに、始動後からヒータ通電および上流燃料噴射弁の噴射を開始するようにする。これによりヒータの消費電力の節減をはかることができる。ここで、始動クランキング時は前述したようにポート燃料噴射弁で噴射を行うため、始動性への影響は無い。
【0047】
以下本発明におけるヒータの制御方法について図11により説明する。
【0048】
第1の例として、図11(a1)のクランキング終了後(スタータ作動終了後)からヒータ通電(c1)および上流燃料噴射弁の噴射(e1)を開始するようにする。このとき、スタータ作動中にはポート燃料噴射弁で噴射(d1)を実施するようにする。これによりスタータの作動とヒータへの通電タイミングが重なることが無いので、スタータへの供給電流が減少して始動性が悪化することが無く、またバッテリーの容量や、電源ケーブルの容量に余裕が無い場合でも、過電流によるバッテリーの劣化、および電源ケーブルの加熱や、信頼性の低下を防止できる。
【0049】
ここで、上例のようにスタータの動作中にヒータへの通電を禁止した場合、スタータの動作は、ドライバーのスイッチ操作によるため、ドライバーの操作の仕方によりスタータの動作時間が長くなった場合は、ヒータの通電開始が遅れ、始動後の燃焼が悪化する場合が考えられるので、これを解決するために、第2の例として、(a2)でクランキング中にエンジンが始動し、(b2)で始動の完了を判定する所定の回転N0を超えたときに、ポート燃料噴射弁の噴射(d2)を停止するとともに ヒータ通電(c2)および上流燃料噴射弁の噴射(e2)を開始するようにする。
【0050】
これによって、始動でスタータ動作中であっても、始動の完了を判定する所定回転を超えるまで回転が上昇すればヒータへの通電および上流燃料噴射弁の噴射を開始するので、ドライバーの操作によりスタータの動作時間が長くなったとしてもヒータの通電が遅れることが無く、始動後の燃焼悪化や排気ガスの悪化を防止できる。また前記所定回転まで上昇後はオルタネータが発電を開始しているのでヒータ通電によるバッテリー電圧の降下を防止できる。
【0051】
さらに、クランキング時(スタータ作動中)に始動の完了を判定する所定回転まで回転が上昇するまではヒータの通電を行わないので、スタータへの供給電流が確保でき第1の例と同様に始動性の悪化を防止できる。
【0052】
ここで、第3の例としてバッテリの容量や電源ケーブルの容量に余裕が無く、大きな電流を頻繁に流すとバッテリの寿命や信頼性の低下を招いたり、電源ケーブルの信頼性が低下するようなシステムでは、回転が始動判定回転まで上昇しても直ちには通電を開始せずに、始動判定回転まで回転上昇後から所定のディレイ時間が経過した後か、もしくはスタータ通電から所定のディレイ時間が経過した後から通電および上流燃料噴射弁の噴射を開始するようにしても良い。ここで、前記ディレイ時間は一般のドライバーの平均的なクランキング時間(スタータ作動時間)を含み、かつ排気への影響が大きくならない程度の値に設定しておく。また、前記ディレイ時間が経過するまでは始動後の燃焼安定性をポート燃料噴射弁の噴射量の増量等により確保しておく。これによって平均的なクランキング時間での始動では、スタータの作動とヒータの通電が重なることが無くなり、したがって大きな電流の流れる時間と頻度を少なくすることができるのでバッテリの劣化や信頼性の低下,電源ケーブルの信頼性の低下を防止できる。ドライバーの操作により一時的にスタータ作動時間が長くなった場合には、スタータ作動中であっても燃焼が悪化する前にヒータに通電を開始するので、燃焼悪化や、排気ガスの悪化を防止できる。
【0053】
以上のように、上流燃料噴射弁としてエアアシスト式の高微粒化噴射弁を用い、噴射燃料の一部をヒータを介さずに空気流により直接シリンダに輸送する構成では、上流燃料噴射弁の噴射開始からシリンダに燃料が流入するまでの遅れ時間が小さいので、始動前からのプリヒートを実施する必要が無く消費電力の低減を図ることができる。
【0054】
ここで、前記第2の例、および第3の例にある、始動クランキング中(スタータ動作中)で回転上昇前にはヒータに通電を禁止し、始動の完了を判定する所定回転以上に上昇後にヒータに通電する方式は、従来の上流燃料噴射弁の噴射燃料の全てをヒータに付着させて気化する方式にも適用でき、ドライバーの操作によりスタータの通電が長くなった場合でも、回転上昇後から、もしくは回転上昇後から燃焼への影響が無い程度の所定のディレイ時間経過後からヒータで通電を開始するのでヒータへの通電が遅れることが無く燃焼の悪化を防止することができる。さらに回転上昇後からヒータへの通電を開始するのでオルタネータの発電能力が十分に確保されており、ヒータへの通電で電源電圧が低下して他の部品の動作に影響を与えることが無い。また始動時に回転上昇前はヒータへの通電を禁止することでスタータの供給電流を確保できるので始動性への影響は無い。このとき必要に応じて始動前から始動クランキング開始までの通電(プリヒート)を実施するようにしてもよい。
【0055】
次に、前述した実施例における始動時の噴射制御およびヒータの制御について図12によりコントロールユニットの処理フローの例を説明する。
【0056】
はじめにステップ100にてエンジンの運転状態が上流燃料噴射弁による噴射を行う所定の運転状態であるかをチェックする。例としてヒータを設けた構成ではヒータの電力節減のため、エンジン温度が高く燃料の吸気通路への付着が少ない状態ではヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を許可しないようにする。また高負荷時では、スロットル弁上流と噴射弁下流の圧力差が減少し、燃料微粒化用の空気が減少すること、および上流燃料噴射弁では噴射量が不足するため、ヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を許可しないようにする。エンジン温度が低くポート燃料噴射弁で噴射すると吸気通路への燃料付着量が多くなる状態でヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を許可する。
【0057】
ステップ110ではバッテリ電圧をチェックし、バッテリが劣化し電圧が低下している時や、異常電圧となっているときはヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を許可しないようにする。
【0058】
ステップ120では、ヒータやヒータ制御回路,上流燃料噴射弁,上流燃料噴射弁の駆動回路のいずれかの故障が検知されたとき、または過去に故障が検知され、その後、正常状態となったことを検知していない場合はヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を許可しないようにする。
【0059】
以上のステップでヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射が許可となった場合は、ステップ125で許可フラグをセットする。またいずれかのステップで許可条件を満足しなかった場合はステップ127でヒータへの通電及び上流燃料噴射弁の噴射を禁止(許可フラグをクリア)する。
【0060】
ステップ130ではエンジンが回転中であるかをチェックし、回転中であればステップ135で噴射弁に燃料微粒化用空気が供給される回転速度N0、もしくはヒータ部の燃料気化に必要な空気が供給される回転速度N0に達しているかをチェックする。このときN0未満で、かつステップ140でスタータONであれば、始動クランキング中とみなし、ステップ150でポート燃料噴射弁で始動のための噴射を実施する。ここで、始動時のポート燃料噴射弁の噴射量は、エンジン冷却水温や回転速度などの関数として設定される。
【0061】
ステップ135で回転速度N0に達していれば、ステップ160で上流燃料噴射弁の噴射が許可状態であるかチェックし許可状態であればステップ180でヒータONとし、ステップ190で上流燃料噴射弁による噴射を開始するとともにステップ200でポート燃料噴射弁の噴射量を停止もしくは徐々に0となるまで減量する。ここで前述したようにステップ190では上流燃料噴射弁の噴射開始時にヒータ部の気化遅れを減少させるように燃料の増量を実施する。ここで上流燃料噴射弁の燃料の増量および噴射量(噴射パルス幅)の計算は例えば下式により行う。
【0062】
TIUP=KTI×QA/NE×(1+KAS+KINJ+KFB+…)
ここで
TIUP:上流燃料噴射弁の噴射パルス幅(1回転毎噴射時)
KTI :噴射量係数
QA :吸入空気量
NE :エンジン回転速度
KAS :噴射開始時増量補正係数
KINJ:噴射弁特性(非直線性)補正係数
KFB :空燃比センサによるフィードバック補正係数
ここで、噴射量係数KTI,噴射弁特性補正係数KINJは他の補正係数が0のときに空燃比が理論空燃比となるように設定される。
【0063】
上流燃料噴射弁の噴射開始時の増量補正係数:KASはヒータ電流(ヒータ温度)や、吸入空気量,回転速度,吸気通路圧力、またはこれらと関連のあるエンジン冷却水温等のエンジン運転状態に応じた量としても良く、例えば下記のようにKASの初期値を上記パラメータにより設定し、その後時間の経過にしたがって所定の減衰速度で0となるまで減衰させるようにする。
【0064】
KASの初期値= f(IHT,TW,・・)
IHT:ヒータ電流
TW:エンジン冷却水温
ここでヒータ温度により上流燃料噴射弁の噴射開始時の増量特性またはステップ200でのポート燃料噴射弁の減量特性を変更する場合には、回転速度がN0を超えた時点でヒータに通電を行い、ヒータリレーの接点が閉じるまでの動作遅れ等を考慮してヒータ通電後所定のディレイ時間が経過後に、ヒータ電流値を取り込みヒータ温度を検出した後に前記増量特性を算出し、上流燃料噴射弁による噴射を開始するようにする。
【0065】
ステップ160で上流燃料噴射弁の噴射が許可されていなければ、ステップ
210でポート燃料噴射弁による噴射を実施する。ここで本噴射制御をヒータを設けない図3の構成に適用する場合には、本制御フローのヒータの制御に関する部分を除いて実施すれば良い。
【0066】
また、筒内噴射式のエンジンについても、ポート燃料噴射弁を筒内噴射弁に置きかえれば同様に適用可能である。
【0067】
上流燃料噴射弁として、エアアシスト式の高微粒化噴射弁を用いる図2または図3の構成で、始動クランキング時の他に、高負荷時においても、スロットル弁上流と、噴射弁下流の圧力差が減少するので噴射弁の微粒化用空気が不足し、微粒化が促進されない。このため高負荷時に上流燃料噴射弁で噴射を実施した場合は、燃料が空気流によりシリンダに輸送されず、吸気通路内に付着するため燃焼が悪化するという問題が有る。図14に負荷状態と、上流燃料噴射弁の燃料粒径分布の関係を示す。低負荷では微粒化用の空気が十分に供給されるので、大部分の燃料が、空気流により直接シリンダに輸送可能な粒径である10ミクロン以内となっており、上流燃料噴射弁の高微粒化された噴射により冷機状態から燃料付着を防止でき良好な燃焼を実現できる。中負荷では、燃料の一部が10ミクロン以上となるが、残りの燃料は10ミクロン以下に微粒化されている。高負荷では微粒化用の空気が不足し、平均粒径が例えば120ミクロン以上となるので吸気通路へ燃料が付着してしまい、シリンダへの燃料流入が遅れるため燃焼が悪化し排気ガスの有害成分が増大してしまう。このようにエアアシスト式の噴射弁では、高負荷時に微粒化用の空気が供給されず燃焼が悪化するという問題が有るため本発明では図15に示すように、微粒化用の空気が十分に供給される低負荷時では全燃料を上流燃料噴射弁で噴射するようにして、ポート燃料噴射弁で噴射するものに比べ燃焼改善を図り、高負荷時では上流燃料噴射弁の微粒化用空気が不足することから上流燃料噴射弁の粒径はポート燃料噴射弁の粒径より大きくなるため、全噴射量をポート燃料噴射弁で噴射するようにして燃焼が悪化することを防止するようにする。中負荷では、上流燃料噴射弁の噴霧は粒径が10ミクロンより小さいものと大きいものが混在するので、燃焼が最適となるように上流燃料噴射弁とポート燃料噴射弁の噴射比率を設定するようにする。ここで、エンジンの負荷は吸入空気量センサによる検出空気量および回転速度により求めることができる。またエンジン負荷に対応する吸気圧力センサの検出圧力により噴射比率を変更するようにしても良い。また、上記噴射制御は上流燃料噴射弁の噴射燃料の一部をヒータにより気化する構成に適用しても良い。
【0068】
このようにエンジンの運転状態に応じて、上流燃料噴射弁とポート燃料噴射弁の噴射量比率を可変とすることにより常に最良の燃焼状態で運転することができ排気ガスの悪化となる成分の排出量を低減できる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、各シリンダに配置されるポート燃料噴射弁と、吸気通路上流にエアアシスト式の高微粒化燃料噴射弁(上流燃料噴射弁)を設け一部または全ての燃料をシリンダに直接流入させるようにした構成において、始動後の燃焼改善を図るとともに、上流燃料噴射弁の燃料微粒化のための空気量が減少し微粒化が促進されない始動クランキング時に、ポート燃料噴射弁で噴射を行うので始動性の悪化や未燃ガスの排出を防止できる。
【0070】
また、各シリンダに配置されるポート燃料噴射弁と、吸気通路上流に上流燃料噴射弁と、および上流燃料噴射弁の噴射燃料を気化するためのヒータを備えた構成において、始動後の燃焼改善を図るとともに、始動クランキング時はポート燃料噴射弁から噴射を行い、ヒータ部の燃料気化に必要な空気流量が確保できる回転上昇後から上流燃料噴射弁で噴射を開始するようにしたので、始動性の悪化や、未燃ガスの排出を防止できる。
【0071】
また、エアアシスト式の上流燃料噴射弁の噴射燃料の一部を直接シリンダに流入させ、残りの燃料をヒータにより気化するようにした構成では、上流燃料噴射弁の噴射開始直後のシリンダへの燃料流入が早くなることから、始動前からのヒータへの通電(プリヒート)を実施しないようにしたので消費電力の低減を図ることができる。
【0072】
さらに上流燃料噴射弁の微粒化用空気量はエンジン負荷に依存するため、エンジンの運転状態に応じて、上流燃料噴射弁とポート燃料噴射弁の噴射量比率を運転状態に応じて可変とすることにより常に最良の燃焼状態で運転することができ排気ガスの悪化となる成分の排出量を低減できる。
【0073】
前述までの実施例は、主に各気筒の吸気ポートに噴射弁を設けるエンジンに適用した場合について説明したが、ポート燃料噴射弁を筒内噴射弁に置きかえれば、筒内噴射式のエンジンにも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成図。
【図2】本発明を適用するシステム構成を示す図(1)。
【図3】本発明を適用するシステム構成を示す図(2)。
【図4】噴射弁空気流量と粒径の関係を示す図。
【図5】本発明の噴射制御の説明図(1)。
【図6】本発明を適用するシステム構成を示す図(3)。
【図7】始動時から上流燃料噴射弁で噴射したときの始動性能。
【図8】ヒータ部空気流量と燃料気化率の関係を示す図。
【図9】本発明の噴射制御の説明図(2)。
【図10】ヒータ通電開始タイミングと始動性能の関係を示す図。
【図11】本発明のヒータ制御の説明図。
【図12】本発明の制御フロー。
【図13】ヒータ温度とヒータ電流の関係を示す図。
【図14】エンジン負荷と燃料粒径分布の関係を示す図。
【図15】エンジン負荷に対する上流燃料噴射弁とポート燃料噴射弁の噴射比率の設定例。
【符号の説明】
1…噴射制御手段、2…ポート燃料噴射弁、3…上流燃料噴射弁、4…ヒータ部材、5…ヒータ制御手段、6…吸気通路、7…吸入空気量センサ、8…スロットル弁、9…補助空気通路、10…ISCバルブ、11…微粒化用空気通路、13…ヒータリレー、19…コントロールユニット。

Claims (1)

  1. 各気筒毎に設けられる燃料噴射弁1と、燃料噴射弁1の上流の吸気通路内または、燃料噴射弁1の上流でスロットル弁をバイパスする補助空気通路内に設けられる燃料噴射弁2と、前記燃料噴射弁2の噴射方向に設けられ、燃料噴射弁2の噴射燃料の全てまたは一部を加熱により気化するヒータ部材と、前記ヒータ部材に通電を行うヒータ制御手段とを有し、
    始動時に機関回転速度が所定値を超えたとき、または機関回転速度が所定値を超えてから所定のディレイ時間経過後に、前記燃料噴射弁2から燃料を噴射すると共に、前記ヒータ制御手段のヒータへの通電を開始することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
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