JP3865457B2 - 分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法に関し、詳しくは、エチレンと共役ジエン化合物とを触媒の存在下に反応させて、加硫速度の速い分岐鎖状ポリエン化合物を高収率にて製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエン化合物とは、1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上有する炭化水素化合物をいい、従来、数多くのものが知られている。このようなポリエン化合物として、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等が知られている。
【0003】
このようなポリエン化合物と、例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとを共重合させることによって、加硫可能な不飽和性共重合体を得ることができ、このようなエチレン性不飽和共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性等にすぐれているところから、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材料、土木建材用品、ゴム引布等のゴム製品として、また、ポリプロピレン、ポリスチレン等へのポリマーブレンド用材料等として広く用いられている。
【0004】
このようなエチレン性不飽和共重合体のなかでも、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体は、その他のエチレン性不飽和共重合体に比べて、加硫速度が速いので、特に広く用いられている。
【0005】
しかしながら、従来知られているエチレン性不飽和共重合体は、例えば、上記エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体であっても、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム等の通常のジエン系ゴムに比べて、加硫速度が遅く、ジエン系ゴムとの共加硫性に劣っている。
【0006】
また、従来のエチレン性不飽和共重合体は、加硫速度が遅いので、加硫時間を短く、或いは加硫温度を低くし、加硫時の消費エネルギー量を低減して、加硫ゴムを生産性よく製造することが困難である。
【0007】
そこで、本発明者らは、既に、特開平8−325170号公報に記載されているように、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物とエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって得られるエチレン性不飽和共重合体が、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体と比較して、加硫速度が速いことを見出している。上記公報によれば、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物は、遷移金属化合物又は遷移金属錯体と有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得られる触媒の存在下にエチレンと共役ジエン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0008】
しかしながら、上記触媒は、活性が十分に高くなく、エチレンと共役ジエン化合物との反応によって、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を高い収率で得ようとすると、触媒成分として、高価な遷移金属化合物と有機配位子を多量に用いることが必要とされる問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであって、エチレンと共役ジエン化合物とを反応させて、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を製造するに際して、高活性の触媒を用いることによって、高価な遷移金属化合物及び有機配位子の使用を少量にとどめて、経済的に有利に分岐鎖状ポリエン化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、エチレンと一般式(I)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中、fは1〜5の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又は一般式(II)
【0013】
【化7】
【0014】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R4、R5及びR6ははそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)で表わされるアルケニル基を示す。但し、R1、R2及びR3は同時に水素原子であることはない。)で表わされる共役ジエン化合物とを、
(A)遷移金属化合物、
(B)AlR3
(式中、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表わされる第1の有機アルミニウム化合物、及び
(C)AlRtX3−t
(式中、tは0、1、1.5又は2を示し、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはそれぞれ独立にCl、Br又はIを示す。)で表わされる第2の有機アルミニウム化合物からなる触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(III)
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、f、R1、R2及びR3は前記と同じである。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法が提供される。
【0017】
特に、本発明によれば、前記一般式(I)で表わされる共役ジエン化合物において、R3が前記一般式(II)で表わされるアルケニル基であるときは、エチレンと一般式(I')
【0018】
【化9】
【0019】
(式中、fは1〜5の整数を示し、n1〜5の整数を示し、R1、R2、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
で表わされる共役ジエン化合物を遷移金属化合物触媒の存在下に反応させることによって、一般式(III')
【0020】
【化10】
【0021】
(式中、f、n、R1、R2、R4、R5及びR6は前記と同じである。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において用いる共役ジエン化合物は、前記一般式(I)
【0023】
【化11】
【0024】
(式中、fは1〜5の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又は一般式(II)
【0025】
【化12】
【0026】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
で表わされるアルケニル基を示す。但し、R1、R2及びR3は同時に水素原子であることはない。)
で表わされる。
【0027】
上記一般式(I)において、R1、R2又はR3が炭素数1〜5のアルキル基であるとき、そのようなアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。本発明においては、R1、R2又はR3がアルキル基であるとき、そのようなアルキル基としては、特に、炭素数1〜3であることが好ましく、特に、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0028】
特に、本発明において、前記一般式(I)で表わされる共役ジエン化合物において、R3が前記一般式(II)で表わされるアルケニル基であるときは、共役ジエン化合物は、前記一般式(I')で表わされ、R1、R2、R4、R5又はR6が炭素数1〜5のアルキル基であるとき、そのようなアルキル基としても、上述したような具体例を挙げることができ、特に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、なかでも、メチル基であることが好ましい。
【0029】
このような一般式(I)で表わされる共役ジエン化合物の具体例として、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0030】
【化13】
【0031】
【化14】
【0032】
【化15】
【0033】
【化16】
【0034】
これらのなかでは、特に、次式
【0035】
【化17】
【0036】
で表わされる7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)や、次式
【0037】
【化18】
【0038】
で表される7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン(β−ファルネセン)等が実用上、好ましく用いられる。
【0039】
本発明の方法によるエチレンと共役ジエン化合物との反応は、次式で示すことができる。
【0040】
【化19】
【0041】
本発明の方法において、エチレンと上述したような共役ジエン化合物との反応は、
(A)遷移金属化合物、
(B)AlR3
(式中、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表わされる第1の有機アルミニウム化合物、及び
(C)AlRtX3-t
(式中、tは0、1、1.5又は2を示し、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはそれぞれ独立にCl、Br又はIを示す。)
で表わされる第2の有機アルミニウム化合物
からなる触媒の存在下に行なわれる。
【0042】
上記遷移金属化合物(A)としては、具体的には、鉄、ルテニウム等の鉄族、コバルト、ロジウム、イリジウム等のコバルト族、及びニッケル、パラジウム等のニッケル族から選ばれる遷移金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、チオシアン酸塩、アセチルアセトナート等を挙げることができる。これらのなかでは、塩化コバルト(II)又は塩化ニッケル(II)等が好ましく、特に、塩化コバルト(II)が好ましく用いられる。
【0043】
このような遷移金属化合物は、そのままでも、触媒の調製に用いることができる。しかし、本発明によれば、触媒の調製のためには、遷移金属化合物は、これに有機配位子が配位した遷移金属錯体として用いることが有利である。即ち、遷移金属化合物と共に、上記遷移金属の配位子となり得る有機化合物、即ち、配位化合物を反応系に共存させるか、又は予め遷移金属化合物と上記配位化合物とから遷移金属錯体を調製して、触媒の調製に用いることが好ましい。
【0044】
このような配位子となり得る化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセチルアセトン等の含酸素有機化合物、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピコリン、2,2'−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等の含窒素有機化合物、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフェート等の含リン有機化合物を挙げることができる。これらのなかでは、含リン有機化合物が好ましく、特に、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが好ましく用いられる。
【0045】
また、予め遷移金属化合物に有機配位子を配位させた遷移金属錯体としては、例えば、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンコバルト(II)塩化物
(φ2 PCH2 CH2 Pφ2 )CoCl2
(式中、φはフェニル基を示す。)
等を挙げることができる。
【0046】
前記第1の有機アルミニウム化合物(B)において、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示すが、好ましくは、Rのうち、少なくとも1つは炭化水素基である。更に、炭化水素基Rは、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。
【0047】
従って、第1の有機アルミニウム化合物(B)の好ましい具体例として、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のようなトリアルキルアルミニウムのほか、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のようなジアルキルアルミニウムヒドリドやイソブチルアルミニウムジヒドリド等のようなアルキルアルミニウムジヒドリド等を挙げることができる。これらのなかでは、トリアルキルアルミニウムが好ましく、特に、トリエチルアルミニウムが好ましく用いられる。これらの有機アルミニウム化合物は、そのまま用いることができるが、また、トルエン溶液やヘキサン溶液として用いることもできる。
【0048】
前記第2の有機アルミニウム化合物(C)において、tは0、1、1.5又は2を示し、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示すが、好ましくは、tは1、1.5又は2を示し、Rのうち、少なくとも1つは炭化水素基である。即ち、本発明において、好ましい第2の有機アルミニウム化合物は、ハロゲン原子と共に炭化水素基を有する有機アルミニウム化合物である。更に、炭化水素基Rは、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Xは、好ましくは、塩素原子である。即ち、本発明において、好ましい第2の有機アルミニウム化合物は、塩素原子を含むアルキルアルミニウムである。
【0049】
本発明において、第2の有機アルミニウム化合物(C)の具体例として、例えば、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジプロピルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム等の塩化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド等のアルキルアルミニウムセスキクロライド、二塩化エチルアルミニウム等の二塩化アルキルアルミニウム、三塩化アルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、臭化ジプロピルアルミニウム、臭化ジイソブチルアルミニウム等の臭化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキブロマイド等のアルキルアルミニウムセスキブロマイド、二臭化エチルアルミニウム等の二臭化アルキルアルミニウム、三臭化アルミニウム、ヨウ化ジメチルアルミニウム、ヨウ化ジエチルアルミニウム、ヨウ化ジプロピルアルミニウム、ヨウ化ジイソブチルアルミニウム等のヨウ化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキヨーダイド等のアルキルアルミニウムセスキヨーダイド、二ヨウ化エチルアルミニウム等の二ヨウ化アルキルアルミニウム、三ヨウ化アルミニウム等を挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物は、そのまま用いることができるが、また、トルエン溶液やヘキサン溶液として用いることもできる。
【0050】
本発明によれば、これらのなかでも、ハロゲン原子と共に炭化水素基を有する有機アルミニウム化合物が好ましく、なかでも、ジアルキルアルミニウムハライドが好ましい。特に、好ましいものは、塩化ジエチルアルミニウムである。
従って、本発明によれば、触媒として、遷移金属化合物とトリエチルアルミニウムと塩化ジエチルアルミニウムとからなるものものが最も好ましく用いられる。
【0051】
本発明において、用いる触媒の量は、通常、上記遷移金属化合物(A)が共役ジエン化合物に対して、0.001〜10モル%、好ましくは、0.01〜1モル%の範囲になるように用いられる。また、配位化合物は、遷移金属化合物に対して、通常、20倍モル以下、好ましくは、0.1〜10倍モル量の範囲で用いられる。遷移金属化合物(A)として、予め調製した遷移金属錯体を用いる場合、そのような遷移金属錯体は、共役ジエン化合物に対して、0.001〜10モル%、好ましくは、0.01〜1モル%の範囲となるように用いられる。
【0052】
他方、上記第1の有機アルミニウム化合物(B)及び第2の有機アルミニウム化合物(C)は、それぞれ、遷移金属化合物(A)に対して、通常、1〜200倍モル、好ましくは、3〜100倍モルの範囲で用いられる。更に、本発明によれば、第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)とは、(B)/(C)のモル比が0.005〜200、好ましくは、0.1〜10、特に好ましくは、0.5〜2の範囲にて用いられる。
【0053】
本発明において用いる触媒は、好ましくは、遷移金属化合物(A)と第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)とを反応させることによって調製することができる。また、このような触媒は、エチレンと共役ジエンとを含む反応系において、遷移金属化合物(A)と第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)とをその場で反応させて調製してもよく、また、予め、遷移金属化合物(A)と第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)とを反応させ、得られた反応生成物を触媒としてエチレンと共役ジエンとを含む反応系に供給して、反応を行なってもよい。
【0054】
本発明の方法において、エチレンと共役ジエン化合物との反応は、共役ジエン化合物の種類によっても異なるが、上記遷移金属化合物(A)と第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)を含む触媒の存在下に、通常、30〜200℃、好ましくは、50〜150℃の範囲の温度で、エチレン圧0.5〜100kg/cm2 、好ましくは2〜70kg/cm2 の圧力下に行われる。反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜30時間の範囲である。但し、反応雰囲気は、エチレン単独の雰囲気でもよく、また、エチレンと共に窒素やアルゴン等の不活性ガスを含む雰囲気でもよい。
【0055】
上記エチレンと共役ジエン化合物との反応において、反応溶媒は、特に用いる必要はないが、しかし、用いてもよい。この場合、反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、トリデカン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を好ましく用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明によれば、このようなエチレンと共役ジエン化合物との反応によって、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を得ることができるが、このようにして得られる分岐鎖状ポリエン化合物は、通常、シス体とトランス体との混合物である。このような分岐鎖状ポリエン化合物は、その構造によっては、蒸留によって、シス体とトランス体とを分離することができる。しかし、シス体とトランス体との混合物のままでも、前述したエチレン性不飽和共重合体の製造に用いることもできることはいうまでもない。
【0057】
また、エチレンと共役ジエン化合物との反応においては、場合によっては、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物と共に、次の一般式(IV)
【0058】
【化20】
【0059】
(式中、f、R1、R2及びR3は前記と同じである。)
で表わされる直鎖状ポリエン化合物が生成することもある。また、共役ジエン化合物がR3として前記一般式(II)で表わされるアルケニル基を有するときは、場合によっては、前記一般式(III')で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物と共に、次の一般式(V)
【0060】
【化21】
【0061】
(式中、f、n、R1、R2、R4、R5及びR6は前記と同じである。)
で表わされる直鎖状ポリエン化合物が生成することもある。
【0062】
このような直鎖状ポリエン化合物は、場合によっては、蒸留によって、前記分岐鎖状ポリエン化合物と分離することができるが、しかし、本発明によって得られる分岐鎖状ポリエン化合物は、このような直鎖状ポリエン化合物を含む混合物のままで、前述したエチレン性不飽和共重合体の製造に用いてもよい。
【0063】
本発明によれば、原料として用いる共役ジエン化合物を適宜に選択することによって、次のような種々の分岐鎖状ポリエン化合物を得ることができる。
【0064】
【化22】
【0065】
【化23】
【0066】
【化24】
【0067】
【化25】
【0068】
【化26】
【0069】
【化27】
【0070】
【化28】
【0071】
【化29】
【0072】
【化30】
【0073】
【化31】
【0074】
【化32】
【0075】
【化33】
【0076】
【化34】
【0077】
【化35】
【0078】
【化36】
【0079】
【化37】
【0080】
【化38】
【0081】
【化39】
【0082】
【化40】
【0083】
【化41】
【0084】
特に、本発明によれば、エチレンと前述した7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)とを反応させることによって、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを得ることができ、また、エチレンと前述した7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン(β−ファルネセン)とを反応させることによって、4−エチリデン−8,12−ジメチル−1,7,11−トリデカトリエンを得ることができる。
【0085】
本発明の方法によって得ることができる分岐鎖状ポリエン化合物は、これをエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって、高速加硫が可能であるのみならず、耐候性、耐熱性、耐オゾン性等にもすぐれているエチレン性不飽和共重合体を得ることができる。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、前記遷移金属化合物(A)と第1の有機アルミニウム化合物(B)と第2の有機アルミニウム化合物(C)とからなる触媒の存在下に、エチレンと前記共役ジエン化合物とを反応させることによって、前記一般式(I)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を高収率にて得ることができるので、分岐鎖状ポリエン化合物の製造のための触媒費用が少なくてすみ、また、脱灰工程を簡略化することもできる。このようにして得られる分岐鎖状ポリエン化合物は、これをエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって、耐候性、耐熱性、耐オゾン性にすぐれ、しかも、加硫速度の速いエチレン性不飽和共重合体を得ることができる。
【0087】
【実施例】
以下に実施例を比較例と共に挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、目的物の収率は、目的とする生成物のモル数をp、反応に用いた原料共役ジエンの仕込みモル数をc0 とするとき、(p/c0 )×100(%)にて求めた。また、原料である共役ジエンの転化率は、反応後の共役ジエンのモル数をcとするとき、〔(c0 −c)/c0 〕×100(%)にて求めた。
【0088】
実施例1
(4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンの合成)
窒素雰囲気下、50mL容量のステンレス(SUS316)製オートクレーブに、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンコバルト(II)塩化物13.45mg(0.025ミリモル)と無水トルエン0.8gと7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)12.3g(90ミリモル)とを仕込み、室温で1時間攪拌した。次に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.91モル/L)0.8ml(トリエチルアルミニウムとして0.73ミリモル)と塩化ジエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.93モル/L)0.76mL(塩化ジエチルアルミニウムとして0.71ミリモル)を加えて、オートクレーブを密閉した。
【0089】
この後、オートクレーブにエチレンボンベを直結して、エチレンを導入し、オートクレーブ内を5kg/cm2 まで加圧し、80℃に加熱した。消費されたエチレンを間欠的に追加しながら、エチレン圧を4〜5kg/cm2 に維持し、80℃で4時間反応を行なった。
反応終了後、オートクレーブを冷却、開放して、得られた反応混合物を水50mL中に注いで、有機層を水層から分離し、ガスクロマトグラフで分析した。
【0090】
その結果、目的物である4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを9.86g(収率67%、β−ミルセン転化率90%)得た。また、反応副生物として、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン2.51g(収率17%)を得た。
【0091】
比較例1
実施例1において、有機アルミニウム化合物として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.91モル/L)1.6mL(トリエチルアルミニウムとして1.46ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行なった。
その結果、目的物である4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを1.97g(収率13%、β−ミルセン転化率18%)得た。また、反応副生物として、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン0.50g(収率3%)を得た。
【0092】
比較例2
実施例1において、有機アルミニウム化合物として、塩化ジエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.93モル/L)1.5mL(塩化ジエチルアルミニウムとして1.44ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行なった。
その結果、目的物である4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを5.15g(収率35%、β−ミルセン転化率47%)得た。また、反応副生物として、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン1.30g(収率9%)を得た。
Claims (10)
- エチレンと一般式(I)
(B)AlR3
(式中、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表わされる第1の有機アルミニウム化合物、及び
(C)AlRtX3−t
(式中、tは0、1、1.5又は2を示し、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはそれぞれ独立にCl、Br又はIを示す。)で表わされる第2の有機アルミニウム化合物からなる触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(III)
- エチレンと一般式(I’)
(A)遷移金属化合物、
(B)AlR3(式中、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表わされる第1の有機アルミニウム化合物、及び
(C)AlRtX3−t(式中、tは0、1、1.5又は2を示し、Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはそれぞれ独立にCl、Br又はIを示す。)で表わされる第2の有機アルミニウム化合物からなる触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(III’)
- 共役ジエン化合物が7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエンである請求項1に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 共役ジエン化合物が7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエンである請求項2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 遷移金属化合物が鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム又はパラジウムから選ばれる遷移金属の化合物である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 遷移金属化合物が1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを配位子として有する鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム又はパラジウムから選ばれる遷移金属の錯体である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 第1の有機アルミニウム化合物がトリエチルアルミニウムである請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 第2の有機アルミニウム化合物において、Xが塩素原子である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
- 触媒が
(A)遷移金属化合物、
(B)トリアルキルアルミニウム、及び
(C)ジアルキルアルミニウムハライド
からなる請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。 - 触媒が
(A)遷移金属化合物、
(B)トリエチルアルミニウム、及び
(C)塩化ジエチルアルミニウム
からなる請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
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JPH10298116A JPH10298116A (ja) | 1998-11-10 |
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-
1997
- 1997-04-23 JP JP10553397A patent/JP3865457B2/ja not_active Expired - Lifetime
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