JP3860617B2 - α,β−不飽和ニトリルの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、α,β−不飽和ニトリルの製造工程の1つである多段急冷塔で、反応器出口ガス中に含まれる未反応アンモニアを中和し固定化するにあたり、該急冷塔におけるpHの制御方法を改善したα,β−不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン又はイソブチレン、アンモニア及び酸素を反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを合成する方法における反応器出口ガスにはアクリロニトリル又はメタクリロニトリル、青酸、及びアセトニトリル等の主成分の他に、アクロレイン又はメタクロレイン、未反応アンモニア、炭化水素重合物、及び飛散触媒等が含まれている。従ってこの反応ガスよりアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを回収する過程でこれらの物質を除去することが必要である。
【0003】
特に重要なことは未反応アンモニアを速やかに固定化し除去することである。合成反応ガス中の主成分であるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルが、未反応アンモニアと共存し且つpHが高い条件下では不飽和ニトリルと反応しアミン類への副反応を不可逆的に起し、例えば、未反応アンモニアとアクリロニトリルからβーアミノプロピオニトリルに変質することにより、主成分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの損失が多大となる為である。
【0004】
さらに、未反応アンモニアと水が存在してpHが高く、70〜90℃と高温の条件下では、アクロレイン又はメタクロレイン、及び青酸等はシアンヒドリンや、その他のシアン化合物等の一部が高分子の重合物に成長する。
これらの重合物の組成は明らかではないが、その一部は極めて粘調な物質となり急冷塔の熱交換器や急冷塔の充填物の汚れや詰りの原因となる。
これらの問題を解決するためにとられる方法としては硫酸を多大に注入しpHを低い条件下にして未反応アンモニアを固定化し除去する方法もあるが、主成分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルが水と反応しアクリルアミド又はメタクリルアミド等に変質するという問題がある。
【0005】
そこで、従来よりプロピレン又はイソブチレンのアンモ酸化反応によって得られるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを含む反応ガスを、反応器を出た後、間接冷却器で冷し、ついで急冷塔へ導き、未反応アンモニアを適正な量の硫酸等を含む酸水溶液で洗い固定化して除去するのが一般的である。
【0006】
この方法に用いられる急冷塔として多段急冷塔を用いる方法が米国特許第3649179号公報に開示されている。この米国特許3649179号公報に記載された方法によれば、急冷塔は上下2段区画(又はそれ以上の多段区画)に分割され、反応ガスは先ず急冷塔下段区画へ導かれここで硫酸を含んだ第一冷却水で冷却及び洗浄され反応ガス中の未反応アンモニア、高沸点生成物、重合物、及び飛散触媒等が分離除去され、次の急冷塔の上部区画段へ導かれ、再度、硫酸を含んだ第二冷却水で冷却及び未反応アンモニアを分離除去される。そして、この第一、第二冷却水は反応ガスと直接接触による冷却方式で循環使用されている。
【0007】
一段急冷塔、及び上下二段区画(又はそれ以上の多段区画)に分割された急冷塔に於いても、未反応アンモニアを固定化し除去することが重要であるから、その未反応アンモニアを固定化するための指標となる急冷塔内の循環液のpH制御方法が重要であるにもかかわらず、該pHに対する信頼性ある測定法方とそれを用いたpHの適切な制御方法については工夫がなされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、α,β−不飽和ニトリルの製造工程の1つである多段急冷塔で、未反応アンモニアを中和し固定化する為に用いるpH計の故障を減少させるとともに、pH計の誤指示をなくし精度良くpHを制御する為のpH測定部位の設定と中和に用いる鉱酸、及び/又は有機酸の注入方法を改善することにより、α,β−不飽和ニトリルの収率を向上せしめることを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意研究を重ねた結果、α,β−不飽和ニトリル製造工程中の多段急冷塔のpHを制御するに際して、その最下段区画より上部に設けられた区画段循環液のpHを測定し多段急冷塔の各区画段のpHを制御することによって、多段急冷塔のpH計の故障と誤指示を減少させることが出来て、多段急冷塔及び後工程の運転が非常に安定化し、α,β−不飽和ニトリルの収率も向上することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、α,β−不飽和ニトリルの製造工程の1つである多段急冷塔において、その最下段区画より上部に設けられた区画段循環液のpHを測定し、該多段急冷塔の各区画段のpHを制御することを特徴とするα,β−不飽和ニトリルの製造方法を提供するものである。
【0011】
以下に、本発明の内容を詳しく述べる。
プロピレン、アンモニア及び空気(酸素)を反応させてアクリロニトリルを製造したり、イソブチレン又はtーブチルアルコールをアンモニア及び空気(酸素)と反応させてメタクリロニトリルを製造する場合、目的成分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの収量を高めるため、急冷塔等で汚れの原因となる副反応で生成するアクロレイン又はメタクロレインの生成量を少なくしなければならない。そのためにはアンモニア/プロピレン又はイソブチレンのモル比を化学量論比より大きな値で反応させる必要がある。その結果、反応器出口ガス中には必ず未反応アンモニアは残っているのが一般である。
【0012】
勿論、未反応アンモニア以外に反応器出口ガス中にはアクリロニトリル又はメタクリロニトリル、青酸、及びアセトニトリル等の主成分の他に、アクロレイン又はメタクロレイン、炭化水素重合物、及び飛散触媒等も含まれている。
目的とするアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの収率を上げるためには、その回収過程で未反応アンモニアを速やかに固定化し除去することが重要であり、そのために反応器出口ガスを冷却すること、及び未反応アンモニアを固定化し除去する為に急冷塔が設けられ適正な量の鉱酸、及び/又は有機酸を含む水溶液を循環し反応ガスは洗われている。
尚、急冷塔ではその他に飛散触媒、及び組成は明らかではないが粘調な炭化水素重合物等も循環液で洗われ系外に除去される。
【0013】
未反応アンモニアを速やかに固定化する為に用いる酸としては鉱酸、及び/又は有機酸が用いられるが、鉱酸としては硫酸、塩酸等が挙げられ、有機酸としては酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、及びクエン酸等が挙げられる。用いる酸は単独でも二種以上の酸を混合して用いても良い。
用いる酸の種類は経済性や後処理の容易さから決められるものであるが、鉱酸では硫酸が、有機酸では酢酸等が望ましい。更に望ましいものは安価であり経済的な硫酸が挙げられ通常は用いられる。
【0014】
未反応アンモニアを急冷塔で速やかに鉱酸、及び/又は有機酸で固定化し除去出来ない場合には、急冷塔の循環液は未反応アンモニアの存在によりpHが高くなりアルカリ性を示す結果、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルはアンモニアと不可逆的にアミン類への副反応、例えばアンモニアとアクリロニトリルからβーアミノプロピオニトリルが生成し、損失が大きくなる。
同様に未反応アンモニアが残存することによりpHが高くアルカリ性を示す場合は、アクロレイン又はメタクロレインと青酸が反応してアクロレインシアンヒドリン又はメタクロレインシアンヒドリンが生成したり、その他にも青酸が反応したシアン化合物等の一部が粘調な高分子重合物に成長する。
【0015】
その一方で、未反応アンモニアを中和する為に必要以上の鉱酸、及び/又は有機酸を急冷塔に注入し循環液のpHを低くし過ぎると、主成分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルは加水分解を起して、アクリルアミド又はメタクリルアミドに変質しやはり目的成分の損失が大となる。特にpHが5以下で温度が80〜90℃と高い条件下では主成分の加水分解反応が進み易い。
【0016】
故に、急冷塔に於ける循環液のpHは低すぎたり、逆に高すぎたりすることなく5〜6の範囲のpHに、望ましくは5.3〜5.8の範囲のpHに安定して制御することは、目的成分であるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの損失を最小限に止めるためには非常に重要なことである。更にpHが低すぎたり、逆に高すぎたりすると目的成分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの損失が大となる以外に急冷塔の汚れや詰りの原因となったり、後工程の汚れや詰りを引き起して円滑な運転を阻害する原因となる。
【0017】
ところで、急冷塔は一段の急冷塔に於いても、反応ガスを冷却し未反応アンモニアを鉱酸である硫酸で固定し除去することは従来から行われていた。しかし、急冷塔底液から排出される液中の硫酸アンモニューム(以後は硫安と称する)の濃度が薄く後工程での処理が複雑となり費用も多大となる欠点がある。
その為に最近では急冷塔は多段急冷塔が用いられることが多く、例えば、前記の米国特許第3649179号公報に記載のように急冷塔は上下二段区画(又はそれ以上の多段区画)に分割された多段急冷塔で冷却と未反応アンモニアを中和し固定化除去する方法がとられている。
【0018】
少なくとも上下二段の区画に分割された多段急冷塔にすることで、下段区画で飛散触媒や粘調な炭化水素重合物等の汚れや詰りの原因となる物質は洗い除去されるので、上部区画段は汚れや詰りの問題がかなり解消される。
しかし、該米国特許方法では多段急冷塔に於いて、未反応アンモニアを速やかに適正な量の鉱酸、及び/又は有機酸を含む循環液で洗い固定化するために重要なpHの制御方法についての工夫、すなわち多段急冷塔に於けるpH計の故障や誤指示をなくし、精度良く測定するpHの測定部位や鉱酸、及び/又は有機酸の注入方法についての開発はまだなされていなかった。
【0019】
本発明者らは、運転中pH計が故障する原因が多段急冷塔の最下段区画の循環液の液温が高くて、高沸点生成物や飛散触媒を含んだ循環液を直接pH計に接触させて測定する為に薄いガラスで出来ているpH電極や比較電極を破損するところにあることをつきとめた。
同時に、pH計が故障しないまでも誤指示をする原因は、多段急冷塔の最下段区画の循環液に高沸点生成物が高濃度で存在し、該循環液が粘調であるためにpH電極や比較電極の表面に付着してpH測定を妨害し精度あるpH測定が出来ないということも見出した。
【0020】
このpH計の電極内部にはKCl飽和溶液が充填されているが、使用時間と共に減少するために定期的に補充する必要がある。特に最下段区画の循環液の液温は80〜90℃と高いために蒸発し易く頻繁にKCl飽和溶液の補充が必要があったし誤指示の原因ともなっていたのである。
そこで、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、多段急冷塔のpH計が故障や誤指示をすることなく制御する方法として、多段急冷塔の各区画段のpH値が相関性を示すことを見い出し、多段急冷塔の最下段区画の循環液のpHを測定しなくても適正な量の鉱酸、及び/又は有機酸を循環液に注入し未反応アンモニアを固定化し除去できる方法を確立した。
【0021】
多段急冷塔の各区画段のpHは、多段急冷塔の各区画段の内部に設けられた充填物の種類や層高、循環液量、スプレーノズル型式と個数、及びスプレーノズルの配置方法等によって気液の接触効率が異なってくるが、最下段区画より上部の区画段のpHが5〜6の範囲になるように、多段急冷塔の最下段区画の循環液に鉱酸、及び/又は有機酸を注入することで多段急冷塔の各区画段の循環液のpHも5〜6の範囲とすることができる。
更に、多段急冷塔の最下段区画より上部の区画段の循環液のpHを5.3〜5.8の狭い範囲になるように、多段急冷塔の最下段区画に鉱酸、及び/又は有機酸を注入する量を調整すると、多段急冷塔の各区画段の循環液のpHはほぼ同じ値となりpH値の差異が非常に小さくなる。
【0022】
pHとは周知のように水素イオン濃度の逆数の対数で表されたものであるから、通常の制御として行われているPID制御方式では制御は難しいのである。そしてpH制御はpH滴定曲線に従うもので非線形性を示し、且つ、pH測定液の系内保有量や液置換量、その他の外乱の影響を受けて時間遅れやオーバーシュートの問題があり、これらの点からもpH制御は難しいものであった。
【0023】
このような時間遅れやオーバーシュートの問題は本発明方法でも対策を立てておく必要がある。即ち最下段区画に鉱酸、及び/又は有機酸を注入してpHを下げた後、その低下したpHが最下段区画より上部区画段に設けられたpH計によって測定されるまでに時間遅れやオーバーシュートが生じ正確なpH制御が阻害される可能性があるからである。
【0024】
しかし、本発明ではpH設定値と指示値との差、pHの時間当りの変化量、及び系内保有量や液の置換量から時間遅れやオーバーシュートを考慮し、経験的に求めて数式化したプログラムに従い鉱酸、及び/又は有機酸を注入するプログラム制御法を採用することで適正な量、時間に鉱酸、及び/又は有機酸を注入することが出来、各区画段のpH値の変化幅を小さくすることを可能にした。
【0025】
尚、ファイジー制御と呼ばれる方法に於いては、pH制御の問題点である非線形性であることや外乱要因、及び時間遅れやオーバーシュートの問題によるpH制御の難しさは抑制できプログラム制御法と同等以上の制御が出来る。
このことから、多段急冷塔の最下段区画の飛散触媒や粘調な炭化水素重合物等を含んだ汚れ易い循環液のpHを測定しなくても未反応アンモニアを固定化し除去するために適正な量の鉱酸、及び/又は有機酸を注入する方法が確立出来た。
次に図を用いて本発明の多段急冷塔のフローを説明する。
【0026】
まず、プロピレンとアンモニアと空気を反応させてアクリロニトリルを合成する際に得られた反応器出口ガス中の組成はほぼ次のような組成であった。
<成分> <vol%>
アクリロニトリル 6.5%
アンモニア 0.5%
プロピレン+プロパン 0.4%
アセトニトリル 0.3%
青酸 1.2%
不凝縮性ガス 63.5%
水蒸気 27.5%
その他(アクロレイン、高沸点成分) 0.1%
【0027】
このガスを約13500Nm3 /Hrを前述のガス割合で260〜280℃で図1に示す多段急冷塔の最下段にあるガス導入配管(1)から供給した。
尚、実施例(図1)及び比較例(図2)で用いた多段急冷塔は、ともに直径が2.7m、高さが9.7mであり、通常のスプレー構造と内部に磁製のラシヒリングを充填した多段急冷塔を用いた。
この多段急冷塔の各区画段の循環液のpH測定に用いた計器は通常一般的に使われているものであるが、具体的には横河電機製作所(株)製の流通型pH計を用いた。なお、pH測定検出端は、循環液配管に直接設置してもよいし、一部抜出し別の配管を設けて設置してもよい。
【0028】
該多段急冷塔の最下段区画(2)ではガスと向流に160t/Hrの洗浄水(11)を冷却器(6)で冷さずに循環させた。最下段区画での蒸発によって減少するに相当する水は上部段で凝縮した液を補給水配管(13)から最下段に約2.3〜2.9t/Hr程度を補給した。
系内が平衡になった時点の最下段の液温は急冷塔に入ってくるガスの温度や組成によって多少変動するが88〜92℃であり、最下段の循環液は痕跡程度のアクリロニトリル、硫安、及び粘調な高沸物等を含む水溶液であり、最下段区画から系外への抜出し液量は約0.8t/Hrであった。尚、この時の急冷塔の塔底圧力は約0.5Kg/cm2 Gであった。
【0029】
多段急冷塔の上部段区画の第二洗浄水(20)の液温は約36〜38℃まで冷却器(15)で冷し、約180t/Hrを循環させた。この時の急冷塔から吸収塔に出ていく急冷塔出口ガス(21)の温度は約37〜39℃であった。上部区画段で凝縮した液の一部は最下段区画への補給水(13)として使用し、残りは抜出し配管(14)から系外に抜出し後工程で処理される。
【0030】
急冷塔の循環液に含まれる粘調な高沸物とは、反応器で生成した炭化水素重合物、アクロレインやアクリロニトリル及び青酸が直接重合したもの、アクリロニトリルにアンモニアが付加したβーアミノプロピオニトリルやアクロレインに青酸が付加したシアンヒドリンが重合したもの等を含んでいる。
【0031】
その高沸物と硫安の測定法は、採取したサンプル液を温浴で蒸発乾燥、更に105℃で乾燥、デシケータ内で放冷し、その後秤量し高沸物と硫安の合計を求める方法である。硫安の測定は重量測定後のサンプルを温水に溶かし、肥料分析で行われている分析法であるホルムアルデヒド法(「詳細肥料分析法」、昭和48年1月改訂第1版39ページ、養賢堂出版)に準じて測定した。高沸物と硫安の合計から硫安を差引きし高沸物を求める。
高沸物と硫安の濃度は次式で定義される。
【0032】
【数1】
【0033】
【実施例】
以下、実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。
【0034】
実施例1
図1の二段に分割された多段急冷塔を用い、上部区画段の循環液のpH制御計器(19)の設定を5.5にセットし98wt%硫酸を急冷塔の最下段区画の循環液に注入(8及び9)した。pHの制御はプログラム制御法を採り入れたが、例えば、pH設定値と指示値の差が非常に小さい場合には硫酸注入量が変化しないように不感帯領域を設けた。尚、pHの時間当りの変化量が大きく変化した場合には多段急冷塔の特性を考慮した経験から求めた予測硫酸注入量まで変化させ時間遅れの問題が生じないような数式を調節計に入力しpH制御を行った。この時の98wt%硫酸の注入量は約151kg/Hrであり、上部区画段の循環液のpHは5.4〜5.6の範囲で安定した指示を示した。この時の最下段区画の抜出し液を採取しpHを測定すると5.6であり、硫安の濃度は24.9wt%、高沸物は18.2wt%の濃度であった。
【0035】
又、上部区画段の循環液の硫安濃度は0.03wt%と痕跡程度で高沸物の濃度は0.8wt%と最下段区画の循環液に比較して低い濃度であった。
上部区画段に設置されているpH計の指示はノイズ状の変化や経時的な変化もなく設定値との差異も小さく、定期的に1日1回の採取した液での比較でもpH指示値と同じであり差異は生じていなかった。
又、pH電極へのKCl補給も1ヶ月間に1回の補給で十分であり、pH電極や比較電極等の汚れも少なく清掃が容易で1ヶ月毎の定期点検で十分であった。
【0036】
比較例1
図2に示す多段急冷塔を用い、最下段区画の循環液のpH制御計器(10)の設定を5.5にセットし、98wt%の硫酸を急冷塔の最下段区画の循環液に注入(8及び9)した。尚、同じように上部区画段の循環液のpH制御計器(19)の設定も最下段区画の循環液のpH制御計器(10)と同じ5.5にセットし、98wt%硫酸を上部区画段の循環液に注入(17及び18)した。スタート当初は98wt%の硫酸注入量は最下段区画の循環液に約150Kg/Hrであり、上部区画段の循環液への注入はほぼゼロであった。この時に1日1回の定期比較の為に採取した最下段区画の液のpHは5.5であり、上部区画段の液のpHは5.6でpH計の指示値はほぼ正常に指示していた。この時の最下段区画の抜出し液の硫安濃度は24.9wt%で、高沸物の濃度は18.2wt%であり、上部区画段の抜出し液の硫安濃度は0.04wtで高沸物濃度は0.9wt%であった。
【0037】
しかし、運転経過して3日後に、上部区画段の循環液への98wt%硫酸の注入量を約50Kg/Hrと増加したが、pH計(19)は5.4〜5.6の範囲を示し、1日1回の定期比較の為に採取した上部区画段の液のpHは5.4を示しpH計との差異は発生していなかった。この時の上部区画段の抜出し液の硫安濃度は1.2wt%であり、高沸物濃度は1.0wt%であった。
【0038】
一方、最下段区画の循環液に注入していた98wt%硫酸は105Kg/Hrに減少し、1日1回の採取した最下段区画の液のpHを測定すると6.3を示した。明らかにpH制御計器(10)の指示は5.4であり真値を示さず差異が発生していた。この時の最下段区画の抜出し液の硫安濃度は最下段区画への硫酸注入量が減少したことから21.8wt%と低下したが、高沸物の濃度は20.8wt%に最下段区画のpHが高くなった為に実施例より増加していた。
又、pH計(7)の検出端を点検をしたところpH電極と比較電極の表面にタール状の付着物が認められ、且つ、KCl飽和溶液も減少していた。pH電極と比較電極のクリーニングとKCl飽和溶液の補給を実施しpH計の校正を実施した。
【0039】
このように実施例と同様にスタート当初は、上部区画段のpH計(19)と最下段区画のpH計(10)のどちらも正常に指示するものの、運転経過と共に最下段区画の循環液は硫安及び粘調な高沸物等の汚れ易い物質が高濃度で存在する為に、pH電極の汚れが進行し正常な指示を示さなくなる。尚、最下段区画の循環液温は88〜92℃と高い為にKCl飽和溶液が蒸発し補充が必要なほどまで不足したと思われる。
【0040】
【発明の効果】
α,β−不飽和ニトリルの製造工程の1つである多段急冷塔に設けられたpH計の故障を減少させ、誤指示もなくなり該多段急冷塔及び後工程の安定運転を可能にすることによって、α,β−不飽和ニトリルの収率向上と効率的な生産を実現した効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多段急冷塔のフローの一例を示す図である。
【図2】従来の多段急冷塔のフローの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 反応器から急冷塔へのガス導入配管
2 多段急冷塔の最下段区画
3 多段急冷塔の上部区画段
4 最下段区画液の抜出し配管
5 最下段区画液の系外抜出し配管
6 最下段区画循環液の冷却器(冷却器がなくても良い)
7 最下段区画循環液のpH測定検出端
8 最下段区画へ注入する酸の制御弁
9 最下段区画に注入する酸の配管
10 最下段区画のpHを制御する計器
11 最下段区画の洗浄水循環配管
12 多段急冷塔の上部区画段の抜出し配管
13 上部区画段から最下段区画への補給水配管
14 上部区画段の系外抜出し配管
15 上部区画段の循環液の冷却器
16 上部区画段の液のpH測定検出端
17 上部区画段へ注入する酸の制御弁
18 上部区画段へ注入する酸の配管
19 上部区画段のpHを制御する計器
20 上部区画段の洗浄水循環配管
21 急冷塔から吸収塔への出口ガス配管
pHIC pH指示調節計(pHICと結ばれた破線はそのループを示す)
Claims (3)
- α,β−不飽和ニトリルの製造工程の1つである多段急冷塔において、その最下段区画より上部に設けられた区画段の循環液のpHを測定し、該多段急冷塔の各区画段のpHを制御することを特徴とするα,β−不飽和ニトリルの製造方法。
- 多段急冷塔最下段区画に鉱酸、及び/又は有機酸を注入することによって、該最下段区画より上部に設けられた区画段の循環液のpHを5〜6の範囲に調整し多段急冷塔の各区画段のpHを制御することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 多段急冷塔最下段区画より上部に設けられた区画段の循環液のpHを5.3〜5.8の範囲に調整することを特徴とする請求項2記載の方法。
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