JP3857735B2 - 電磁調理器用の表面プレート板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電磁誘導加熱方式による電磁調理器用の表面プレート板に関する。
【0002】
【従来の技術】
交番磁力線による渦電流発熱を利用して被加熱物(鍋)を直接加熱する、いわゆる電磁誘導加熱による電磁調理器は、安全性や経済面での利点のため、近年、家庭用や業務用の調理器として急速に普及してきた。即ち、電磁調理器は、(イ)調理器本体は殆ど発熱せず、炎がないため吹きこぼれ等による炎の立ち消えがなく、また不完全燃焼や酸欠の心配もなく安全である、(ロ)表面プレート板は平坦で、吹きこぼれても布巾で拭取ればいつも清潔であり、また、炎がなく鍋底に煤がつかない、(ハ)直接鍋を加熱するため熱効率が高く(約90%)、また鍋を調理器から離すと自動的に加熱を停止するから、無駄な電力を使わない、(ニ)とろ火から強火までレバー等で連続的に調節可能であり、操作は簡単である、(ホ)ガスコンロと同等又はそれ以上の火力がある、などの特徴を有している。
【0003】
電磁調理器は、基本的には鍋を積載する表面プレート板と調理器本体に内蔵された磁力発生コイルからなり、該磁力発生コイルは高周波電源ユニットと接続されている。また、現在普及している電磁調理器には、安全装置機能として、小物検知機能や空炊き防止機能、温度過昇防止機能が取り付けられており、そのための温度検知器は磁力発生コイル上に設置されている。
【0004】
これまで、電磁調理器の表面プレート板の材料には、結晶ガラス板やセラミックス板が用いられてきた。ところが、これらの材料は靭性が無いため、鍋を置いた時等の衝撃により割れ易いという欠点がある。また、加工すると割れとしまうため、表面プレート板中に温度検知センサーを内蔵することができず、そのため、プレート板上部の温度とプレート板下部の温度とを同時にコントロールすることができない(プレート板下部はコイルの保護のため、プレート板上部は火炎、火傷の防止のため、コントロールする必要がある、)という欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記従来技術の実状に鑑みてなされたものであって、鍋を置いた時等の衝撃で割れにくく、また、温度検知センサーを内蔵できる電磁調理器用の表面プレート板を提供することを、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に、マトリックスとしてカーボン、ガラス、セラミックスのいずれかを含む無機繊維強化複合材料からなる上板と、マトリックスとして耐熱性樹脂を含む無機繊維強化複合材料からなる下板とを有することを特徴とする電磁調理器用の表面プレート板が提供される。また、第二に、上記第一の電磁調理器用の表面プレート板において、温度検知センサーを内蔵するものである電磁調理器用の表面プレート板が提供される。
【0007】
即ち、本発明の電磁調理器用の表面プレート板は、少なくともその一部が無機繊維強化複合材料からなるものとしたことから、鍋を置いた時等の衝撃により破損することがなくなり、また、温度検知センサーを内蔵させる加工が可能になったので、表面プレート板上部と下部との温度を正確に測定し、且つ制御することが可能になる。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
電磁調理器は、その外観は例えば図1で示される。図1において、1は電磁調理器本体、2は表面プレート板、3は高周波電源ユニットであり、4は電源接続部である。調理器本体1の内部に磁力発生コイルが内蔵されている。
本発明は図1中2で示される表面プレート板に関するものであり、該プレート板が少なくともその一部が無機繊維強化複合材料からなることを特徴とする。
【0009】
本発明のプレート板を構成する材料である無機繊維強化複合材料は、近年、耐熱性、強度、耐摩耗性等の点から注目されている材料であり、航空宇宙材料、半導体製造装置用材料、原子炉用材料、生体用材料等として使用ないし検討されている素材である。なお、本発明の表面プレート板は、その全体が無機繊維強化複合材料で構成されていることが最も好ましいが、そのうちの一部、例えば積層構造の場合、少なくともその1層、が無機繊維強化複合材料で構成されていればよい。
【0010】
本発明で使用される無機繊維強化複合材料は、任意のものを選択することができる。強化繊維としては、炭素繊維、アルミナ繊維、アルミナ・シリカ繊維、炭化珪素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維等が用いられる。強化繊維径としては、1μm〜100μmのものが好ましい。繊維配向は、ミルド繊維、ウィスカー、短繊維、クロス織り、フェルト織り、多次元織り、一次元織り等任意のものが使用できる。一方、マトリックスとしては、カーボン、ガラス、セラミックス(アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、シリカ、アルミナ・シリカ、マグネシア、酸化カルシウム等)が好ましく、その形状は粒径0.5μm〜100μmの粒状のものか、又は液状のものが好ましく使用される。該複合材料は、マトリックスと強化繊維をホットプレス法又は含浸法により、150℃〜1,200℃の温度で、真空、常圧又は1,000kg/cm2以下の加圧下に成形することによって容易に得られる。尚、フェノール系樹脂、ポリイミド、PEEK樹脂等の耐熱性樹脂もマトリックスとして好ましく用いられる。但し、マトリックスとして耐熱性樹脂を用いた場合、耐熱温度の問題から単独で表面プレート板として使用できないので、マトリックスとして耐熱性樹脂を用いたものは、前記カーボン、ガラス、セラミックス(アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、シリカ、アルミナ・シリカ、マグネシア、酸化カルシウム等)がマトリックスとして用いられる無機繊維強化複合材料からなる上板に対する下板として用いられる。
【0011】
本発明の表面プレート板は無機繊維強化複合材料からなるため、温度検知センサーを内蔵する加工が可能になった。この温度検知センサー内蔵表面プレート板をセットした状態は、例えば図2(加熱原理図)で示される。図2において、2は表面プレート板、3は高周波電源ユニット、4は電源接続部、5は磁力発生コイル、6は形成された磁力線、7は表面プレート板2の上部に設置された温度検知センサー、8は表面プレート板2の下部に設置された温度検知センサー、9は被加熱物(鍋)をそれぞれ示す。
【0012】
上記態様においては、表面プレート板2の上部(上表面近傍)に温度検知センサー7を設置したことにより、表面プレート板2の上面と接触する部分の温度測定が正確に行えるようになり、予め被加熱物9の比熱などを計算することにより、正確な温度制御が可能となる。その結果、空炊き時の表面プレート板2上部の温度が制御され、火災や火傷の発生を防止できる。(従来の表面プレート板の場合は、温度検知センサーは磁力発生コイル上に設置されていたため、該センサーと表面プレート板との間に空間が存在し、加えて表面プレート板、即ち結晶ガラスやセラミックスは熱伝導率が低いということもあって、表面プレート板上面と接触する部分の厳密な温度測定が不可能で、正確な温度制御をすることができなかった。例えば、空炊きした場合、表面プレート板直下の温度は200℃以下であっても、表面プレート板上面と接触する部分の温度は500℃以上にも達し、非常に危険な状態になる。)
【0013】
なお、水のように粘性の少ない液体では、被加熱物9の上下で温度差が生じるが、表面プレート板2上部の温度検知センサー7と投げ込み温度検知センサーを併用することにより、正確な温度測定が可能になり、厳密な温度制御ができるようになる。
もちろん、表面プレート板2下部に温度検知センサー8を設置したことによって、表面プレート板2の上部と下部との温度測定が同時に行われ、表面プレート板2上面と接触する部分の温度の制御(火炎、火傷の防止)と表面プレート板2下面の下の部分の温度制御(磁力発生コイルの保護)を同時に行えることは言うまでもない。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらにより限定されるものではない。
【0015】
参考例1
強化繊維、マトリックスに以下の表1のものを使用し、400℃〜1,200℃の温度でホットプレス成形して、450×450×5mmの電磁調理器用プレート板を製作した。炭素繊維は電磁誘導を受けにくい焼成温度900℃以下のものを使用した。また、強化繊維の繊維含有率は30容量%とした。
【0016】
【表1】
【0017】
図2に示されるような2ヶ所の位置に温度検知センサーを装着し、加熱調理を行った結果、調理は極めて良好であった。また、強化繊維が入っているため、衝撃による破損は無かった。
一方、表面プレート板に温度検知センサーが内蔵しているため、表面プレート板の上部で400℃以下、下部で200℃以下の温度に調節でき、空炊き防止として、非常に有効であった。
【0018】
実施例1
参考例1の厚さ3mmのガラス繊維強化ガラス複合材料を上板に、厚さ2mmの多孔質セラミックス板を中板に、底板には厚さ2mmのガラス繊維強化プラスチック(フェノール系樹脂)板を接合して、450×450×7mmの表面プレート板を作製した。プレート板には参考例1と同様な位置に温度検知センサーを装着した。該プレート板を用いて加熱調理を行ったところ、結果は参考例1と同様であった。
【0019】
実施例2
参考例1の厚さ1mmのアルミナ繊維強化ガラス複合材料を上板に、厚さ3mmの多孔質セラミックス板を中板に、底板には厚さ2mmのガラス繊維強化プラスチック(ポリイミド樹脂)板を接合して、450×450×6mmの表面プレート板を作製した。プレート板には参考例1と同様に温度検知センサーを内蔵させ、加熱調理を行ったところ、結果は参考例1と同様であった。
【0020】
比較例1
現在市販されている結晶ガラス板表面プレートに参考例1と同じように温度検知センサーを装着し、鍋を乗せて加熱調理を行ったところ、調理中に割れてしまった。
【0021】
比較例2
実施例1のガラス繊維強化プラスチック(フェノール系樹脂)単体で450×450×5mmの表面プレート板を作製した。プレート板に温度検知センサーを内蔵させ、加熱調理を行ったが、耐熱性が無いため調理中にプレート板がたわんでしまった。
【0022】
比較例3
フェノール系樹脂を750℃で成形し、250℃で硬化させ、450×450×5mmの表面プレート板を作製した。プレート板に温度検知センサーを内蔵させ、加熱調理を行ったが、結果は比較例2と同様であった。
【0023】
【発明の効果】
請求項1又は2の電磁調理用の表面プレート板は、マトリックスとしてカーボン、ガラス、セラミックスのいずれかを含む無機繊維強化複合材料からなる上板と、マトリックスとして耐熱性樹脂を含む無機繊維強化複合材料からなる下板とを有するものとしたことから、鍋を置いた時等の衝撃により破損することがない。
【0024】
請求項2の電磁調理用の表面プレート板は、請求項1の表面プレート板において、温度検知センサーを内蔵するものとしたことから、次のような卓越した効果が加わる。
(イ)表面プレート板上部に温度検知センサーを設置することにより、表面プレート板の上面と接触する部分の温度測定が正確に行えるようになり、予め被加熱物の比熱などを計算することにより、正確な温度制御が可能となる。その結果、空炊き時の表面プレート板上部の温度が制御され、火災や火傷の発生を防止できる。
(ロ)表面プレート板上部に温度検知センサーを設置し、且つ被加熱物内に投げ込み温度検知センサーを併用すると、水のような粘性の少ない液体を被加熱物内に仕込んだ場合でも、正確な温度測定が可能になり、厳密な温度制御ができるようになる。
(ハ)表面プレート板上部と下部とに温度検知センサーを設置することにより、表面プレート板の上部と下部との温度測定が同時に行われ、表面プレート板上面と接触する部分の温度の制御(火災、火傷の防止)と表面プレート板下面の下の部分の温度制御(磁力発生コイルの保護)を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁調理器の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の表面プレート板をセットした電磁調理器の加熱原理図である。
【符号の説明】
1 電磁調理器本体
2 表面プレート板
3 高周波電源ユニット
4 電源接続部
5 磁力線発生コイル
6 形成された磁力線
7 表面プレート板の上部に設置された温度検知センサー
8 表面プレート板の下部に設置された温度検知センサー
9 被加熱物(鍋)
Claims (2)
- マトリックスとしてカーボン、ガラス、セラミックスのいずれかを含む無機繊維強化複合材料からなる上板と、マトリックスとして耐熱性樹脂を含む無機繊維強化複合材料からなる下板とを有することを特徴とする電磁調理器用の表面プレート板。
- 前記表面プレート板が温度検知センサーを内蔵するものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁調理器用の表面プレート板。
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- 1995-05-10 JP JP13607795A patent/JP3857735B2/ja not_active Expired - Fee Related
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