JP3853744B2 - 飲食品有害菌の検査 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲食品有害菌の検査、具体的には検出およびその増殖性迅速判定に関し、さらに詳しくは本発明は、グアイアコール生成菌の中で、特に酸性飲料に有害な耐熱性好酸性菌(例えばA. acidoterrestris)あるいは中性飲料に有害なBacillus属に属する細菌(例えばBacillus subtilis)等の細菌の検出方法、検出用キットおよび増殖性迅速判定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸性飲食品、特に原料果汁や果汁飲料等の酸性飲料から増殖性を持つ微生物が検出されるようになり、問題となっている。一般的には、細菌は果汁及び果汁飲料のような酸性領域では生成しにくいが、そうした酸性領域を好む好酸性菌の中で、耐熱性の芽胞を有する耐熱性好酸性菌が、当該飲料の殺菌温度条件(通常93℃程度)では死滅しにくいため、特に問題となっている。代表的な耐熱性好酸性菌はAlicyclobacillus属細菌である。Alicyclobacillus属細菌のうち2種(A. acidoterrestris及びA. acidiphilus)は果汁及び果汁飲料中に混入し、増殖を引き起こすことが報告されている。またこれらは増殖の際に異臭成分グアイアコールを生成することから品質上特に問題である。中でもA.acidoterrestrisは果汁から高頻度で単離されており、果汁及び果汁入り飲料の微生物管理を行う上での指標菌として位置付けられている。
【0003】
このような菌の検出方法としては、以下の特許文献に示すように、培養法、PCRによる特異的遺伝子の検出法等が開発されてきたが、高価な装置を必要としない培養法は、前培養後さらに約48時間以上の培養時間あるいは検出時間を要するものであり、短時間で簡便な方法は未だ知られていない。
【0004】
特許第3177367号公報(特許文献1)は、好酸性芽胞形成細菌を、アルデヒドを含む酸性培地を用いて検出する方法及び検出用キットについて開示している。また、好酸性芽胞細菌はバニリンをグアイアコールに変化させ、グアイアコールは強い臭気を有するため、バニリンを含む培地中に果汁等の被検試料を添加することにより、コロニーの生成を確認するまでもなく、短期間で被検試料中の好酸性芽胞形成細菌の存在を検出することができることを開示している。
特開平8−140696号公報(特許文献2)は、酸性果汁または酸性飲料中で増殖性のある耐熱性好酸性菌を検出する方法において、GC−MS法などにより、ω−シクロヘキサン脂肪酸の有無を知ることにより、判定できることを開示している。
【0005】
特開平10−234376号公報(特許文献3)は、酸性果汁または酸性飲料中で増殖性のある耐熱性好酸性菌を検出する方法において、ω−シクロヘキサン脂肪酸の生合成に関与する酵素をコードする核酸を、特定塩基配列を有する核酸プライマーを用い、PCR反応を行うことによってAlicyclobacillus属に属する微生物を検出・同定する方法を開示している。
【0006】
バニラフレーバを使った乳製品は多種市販されているが、条件が揃えば特定のBacillusの増殖に伴い異臭成分グアイアコールが産生され、香味上の変敗を起こすことがある。しかし、Bacillus属に属する微生物の有害性についてはこれまであまり注目されず、従ってそれらの検出方法についてもほとんど報告されていない。
【0007】
また、本発明者等は従来より、検体中での菌の増殖性を把握するための手段としてAlicyclobacillus acidoterrestrisを用いるチャレンジテスト(指標菌増殖試験法)を行なっていた。この試験法では、飲料等の検体中に101〜3/mlの芽胞(もしくは栄養細胞)を接種して35℃、2〜3週間保存後、平板培養法(さらに3〜5日要する)による経時的な菌の消長を測定して当該飲料の耐熱性好酸性菌による危害分析を行い殺菌条件を決定している。したがって、判定には最短でも半月を要していた。
【0008】
【特許文献1】
特許第3177367号公報(第(1)〜(6)頁)
【特許文献2】
特開平8−140696号公報(第(1)〜(5)頁)
【特許文献3】
特開平10−234376号公報(第(1)〜(37)頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は、飲食品、特に酸性果汁等の酸性飲料中で増殖性のある耐熱性好酸性菌(主としてA. acidoterrestris及びA. acidiphilus、特に、A. acidoterrertris)、中性飲食品、特に乳製品(例えばヨーグルト)、茶等の中性飲食品中で増殖性のあるBacillus属に属する細菌(主としてB.subtilisおよびB.megaterium、特にB.subtilis)等の有害菌を安価かつ短時間で検出できる方法および測定を簡便化した検査用キット、ならびに上記有害菌を指標としてその飲食中での増殖性迅速判定方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
グアイアコールはこれまで数種のバチルスや放線菌のみが生成するということが知られている(R.F.SIMPSON, J.M.AMON and A.J.DAW, Off-flavour in wine caused by guaiacol, Food Technology in Australia, vol.38,31-33(1986)、およびN.Jensen, P.Varelis and F.B. Whitfield, Formation of guaiacol in chocolate milk by the psychrotrophic bacterium Rhanella aquatilis, Lettes in Applied Microbiology, 33,339-343 (2001)参照)。耐熱性好酸性菌A. acidoterrestrisは、それらの菌の一種であって酸性飲料中の主な混入菌であり、バニリンから、バニリン酸を経てグアイアコールを生成することが知られている。これらの情報をもとに、迅速かつ簡便なグアイアコール産生菌、特に耐熱性好酸性菌およびBacillus属細菌の特異的な培養法による検出法と検出用キットの開発を試みた。
【0011】
その結果、本発明者等は、被検試料をバニリン酸の存在下に培養し、生成したグアイアコールを測定することにより上記目的を達成することができ、この知見をもとに、従来の方法よりも迅速かつ簡便なグアイアコール産生菌、特に耐熱性好酸性菌(特にA. acidoterrestris)およびBacillus属細菌(特にB.subtilis)の培養法による迅速かつ簡便な検出方法および検出用キット、ならびに飲食品中での増殖性迅速判定方法を開発することに成功した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)の検出方法および(7)〜(13)の検出用キット、ならびに(14)〜(17)の増殖性迅速判定方法を提供するものである。
(1)検体を含む培養液を、バニリン酸の存在下で一定時間培養もしくはインキュベーションした後、生成するグアイアコールを定性または定量分析により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の検出方法。
(2)生成するグアイアコールをGC−MS分析または呈色反応により測定することを特徴とする、上記(1) に記載の検出方法。
(3)グアイアコールの呈色反応がペルオキシダーゼを触媒とする酸化反応を用いるものであり、これを吸光度法または目視にて検出することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の検出方法。
(4)検出の対象となるグアイアコール産生菌が耐熱性好酸性菌であり、酸性条件下で培養もしくはインキュベーションすることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の検出方法。
(5)検出の対象となるグアイアコール産生菌がBacillus属に属する細菌であり、中性条件下で培養もしくはインキュベーションすることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の検出方法。
(6)耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、上記(4)に記載の検出方法。
(7)グアイアコール生成用のバニリン酸基質を含有する酸性培地または中性培地が容器中に収容され、かつ滅菌・密封されていることを特徴とする、グアイアコール産生菌検出用キット。
(8)上記(7)に記載のキットおよびグアイアコール検出用手段を組合せたことを特徴とする、グアイアコール産生菌検出用キット。
(9)グアイアコール検出用手段が呈色反応に基づくものであって、少なくとも過酸化水素水、ペルオキシダーゼ酵素および酵素反応用緩衝液の組合せを含むことを特徴とする、上記(7)または(8)に記載の検出用キット。
(10)上記(7)に記載のキット、バニリン酸基質、過酸化水素水、ペルオキシダーゼ、緩衝液、培養液濾過用フィルター、培養液濾過用手動ポンプ、培養濾過液収容透明セルおよび色調見本板の全て、またはそれらのいずれかの組合わせでセットされていることを特徴とする、上記(9)に記載のグアイアコール産生菌検出用キット。
(11)検出の対象となるグアイアコール産生菌が耐熱性好酸性菌であり、酸性培地が収容されていることを特徴とする、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の検出用キット。
(12)検出の対象となるグアイアコール産生菌がBacillus属に属する細菌であり、中性培地が収容されていることを特徴とする、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の検出用キット。
(13)耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、上記(11)に記載の検出用キット。
(14)グアイアコールを産生する芽胞形成菌を、バニリン酸の存在下において飲食品中で一定時間インキュベーションした後、生成するグアイアコールを定性または定量分析により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の飲食品中での増殖性の迅速判定方法。
(15)判定の対象となるグアイアコール産生菌が、耐熱性好酸性菌であることを特徴とする、上記(14)に記載の判定方法。
(16)耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、上記(15)に記載の判定方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、主として対象となるのは酸性飲食品および中性飲食品である。酸性飲食品、特に果実飲料等の酸性飲料中に混入し、増殖を引き起こすのは概してAlicylobacillus属の細菌である。Alicyclobacillus属細菌としては、これまで、A. acidoterrestrisA. acidocaldariusA. cycloheptanicusA. hesperidumA. herbariusA. maliA. acidiphilusの7種がある。Alicyclobacillus属細菌の中でも果汁から高頻度で単離され、増殖の際に薬品様の異臭成分グアイアコールを生成するのはA. acidoterrestris及びA. acidiphilusの2種に限定され、中でもA. acidoterrestrisは飲料及び果汁等から高頻度で単離されている。また中性飲食品、特に乳製品、茶等の中性飲食品中に混入し、増殖を引き起こすのは概してBacillus属の細菌である。従って、それらの有害細菌の有無の検査は、微生物管理上重要である。そこで本発明者らは酸性および中性飲料有害菌の指標の一つとなり得るグアイアコールの生成過程に注目し、バニリンからバニリン酸を経てグアイアコールが生成されることに着眼した。グアイアコールの生成を触媒する酵素はバニリン酸脱炭酸酵素(Vanillic acid decarboxylase)による脱炭酸反応であることが知られている。本発明者らは、バニリンを添加して検体の培養を行った場合(特許第3177367号公報(特許文献1)に記載の方法)と、バニリン酸を添加して検体の培養を行った場合とで、A. acidoterrestrisの検出の迅速性について比較試験したところ、後記の実施例に示されるようにバニリン酸を使用した場合の方がグアイアコールの生成速度が著しく大きいことが確認された。また、Bacillus属に属する種々の細菌でも同様にグアイアコールの生成速度が著しく大きい結果が得られた。本発明において対象となる微生物は、グアイアコールを産生する細菌であれば特に制限されることはない。
【0014】
本発明による検出方法は、前記のように、検体を含む培養液を、バニリン酸の存在下で一定時間培養もしくはインキュベーションした後、生成するグアイアコールを定性または定量分析により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の検出方法であり、好ましい態様において、生成するグアイアコールをGC−MS分析または呈色反応により測定する方法である。
【0015】
本発明において、「検体」とは、有害菌を有する可能性があり、本発明の検出方法及び検出用キットを用いる検査の対象となるサンプルであって、特に限定するものではないが、例えば原料果汁(アップル果汁、オレンジ果汁等の酸性果汁)、果実飲料(例えばオレンジジュース、フルーツジュース)等の酸性飲料、乳製品(牛乳、ヨーグルト(特に半製品)等)、おかゆ、茶、混合茶等の中性飲食品の他、異性化糖、はちみつ等の食品を包含する飲食品およびその培養後の菌体等を挙げることができる。培養後の菌体としては、酸性液体培養基もしくは固体培養基および中性液体培養基もしくは固体培養基を用いて選択培養(前培養)した液体培養物またはコロニー、それらの希釈物等があげられる。酸性培養基としては、好酸性菌用の選択培地として一般に使用される液体または固体培地(例えばYSG培地、BAM培地等)の他、検体としての酸性飲料等の酸性飲食品自体も包含される。酸性飲料等の検体を前培養する場合、検体をそのまま通常35〜45℃で1〜5日間程度培養するか、検体を上記液体培地あるいは固体培地を用いて通常45〜50℃で48〜96時間程度培養する。中性培養基としては、Bacillus検出用の選択培地として一般に使用される液体または固体培地(例えば標準寒天培地、TSA培地等)の他、検体としての中性飲料等の中性飲食品自体も包含される。中性飲料等の検体を前培養する場合、検体をそのまま通常30〜35℃で7〜10日間程度培養するか、検体を上記液体培地あるいは固体培地を用いて通常30〜35℃で48〜72時間程度培養する。
【0016】
また、「培養液」とは、バニリン酸存在下での培養もしくはインキュベーションの対象となる、検体を含む液体培地(もしくは培養基)あるいは滅菌水、緩衝液等の細胞活性を維持できる培養基不含液をいう。
【0017】
本発明の検出方法において、基本的に、酸性飲料(または中性飲料)等の検体をバニリン酸を添加した酸性培地(または中性培地)で培養するか酸性飲料(または中性飲料)等の検体にバニリン酸を添加し培養して選択培養(前培養)とグアイアコール生成反応を同時に行なう場合と、培養後の菌体等のように前培養(選択培養)された培養物をバニリン酸を含む培養液中でインキュベーションするか培養物中にバニリン酸を添加しインキュベーションしてグアイアコール生成反応を行なう場合とがある。酸性飲料、中性飲料、液体培養物や培養果汁等を使用してこれにバニリン酸を添加する場合には、これらの液体試料(検体)自体が本発明における培養液となる。
【0018】
上記のような培養は、基本的には下記のような形態で行なわれる。
(1) バニリン酸を添加した液体培地に酸性飲料(または中性飲料)または固形食品(レトルトおこわ(赤飯)等)、半流動食品(例えばヨーグルト)等の検体を添加し、45〜50℃で18〜48時間程度選択培養する(前培養およびグアイアコール生成反応)。液体培地としては、YSG培地、BAM培地等の酸性培地および標準液体培地、TSB培地等の中性培地があげられる。バニリン酸の添加濃度は、培地に対して通常25〜200ppm、好ましくは50〜100ppm(バニリン酸添加培地)程度であり、検体の添加量は培地に対して通常10〜50%(v/v)程度である。
(2) 酸性飲料(または中性飲料)等の検体にバニリン酸を添加し、通常35〜45℃で18〜48時間程度選択培養する(前培養およびグアイアコール生成反応)。バニリン酸の添加濃度は、検体に対して通常25〜200ppm程度である。
(3) 予め選択培養(前培養)して得られた液状培養物またはコロニーを、そのままあるいは必要に応じて滅菌水、適当な緩衝液(例えばフタル酸カリウム緩衝液(酸性培地用)、リン酸カリウム緩衝液(中性培地用))、液体培地(例えばYSG培地(酸性培地用)、TSB培地(中性培地用))等で希釈してから、バニリン酸を添加した上記液体培地に添加し、通常、45〜50℃(特に耐熱性好酸性菌)または35〜45℃(特にBacillus属菌)で1〜8時間、好ましくは1〜3時間程度振とう培養する(グアイアコール生成反応)。検体の添加量は培地に対して例えば1白金耳(培地5〜10ml当り)あるいは液体培養物または希釈物1〜10%(v/v)程度である。
(4) 予め選択培養(前培養)して得られた液状培養物、該培養物またはコロニーの上記希釈物にバニリン酸を添加し、通常45〜50℃で0.5〜1.5時間程度振とう培養する(グアイアコール生成反応)。バニリン酸添加量は、上記液状培養物または希釈物に対して通常25〜200ppm、好ましくは50〜100ppm程度である。
液状培養物またはコロニーを検体として使用する場合、バニリン酸添加培養液中の菌体濃度は通常10〜10/ml、好ましくは10〜10/ml程度になるようにすることが望ましい。
上記(2)、(4)の場合には、添加するバニリン酸は、上記液体培地あるいは他の適当な培地中に溶解した形態でもよいが、エタノール、水等の培地不含液に溶解した形態のもので十分である。
上記(1)〜(4)の培養は、通常pH3.0〜5.0程度(酸性培地の場合)およびpH5.5〜7.5程度(中性培地の場合)の条件下で行なわれる。
【0019】
上記(1)および(2)の場合には、前培養(選択培養)とグアイアコール生成反応が同時に進行するのに対して、上記(3)および(4) の場合には、選択培養(前培養)の後にグアイアコール生成反応が行なわれる。
上記のようにして生成したグアイアコールは、本発明において定量または定性分析により測定する。グアイアコールの定量または定性分析としては、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC−MS分析)、HPLC、呈色反応等があげられるが、GC−MS分析および呈色反応が好ましい。
【0020】
GC−MS分析により測定を行なう場合、グアイアコールの生成した可能性のある液状培養物試料は、通常、0.2〜0.8μ孔径の除菌用フィルター(好ましくはカートリッジ式フィルター)等で菌体をろ過してから、ろ液を固相抽出カラム(例えばSep-Pak Plus t-C18, Waters社等)を用い、これに脱水用カラム(例えばハイドロカラム、ユニフレックス社)を接続し、n−へキサンで抽出操作を行い、これをGC−MS分析用の試料とする。GC−MS分析の一般的方法は、例えばLopez, Ricardo et al., Determination of minor and trace volatile compounds in wine by solid-phase extraction and gas chromatography with mass spectrometric detection, Journal of Chromatography, 966(1-2), 167-177(2002)等を参照することができる。
GC−MS分析によって得られたデータ値は、例えばオレンジジュース中のグアイアコール0.05ppm以上等を目安として目的のグアイアコール産生菌(耐熱性好酸性菌、Bacillus属細菌等)の有無あるいは汚染の度合いの判定に利用することができる。
【0021】
呈色反応によりグアイアコールの測定を行なう場合、好ましい方法として、ペルオキシダーゼを触媒とする酸化反応による呈色反応を用い、これを吸光度法または目視にて検出する方法があげられる。
具体的には例えば、生成グアイアコールを含む可能性のある上記培養物試料を除菌用フィルターでろ過したろ液に、酸性緩衝液(または中性緩衝液)を混合した後、過酸化水素水および最後にペルオキシダーゼを添加・混合し、通常、pH3.5〜6.0(好ましくは3.5〜4.5)、温度15〜40℃、好ましくは室温(例えば20〜30℃)で、通常3〜10分、好ましくは5〜7分程度保持した後(10分を超えると退色等の問題で好ましくない)、呈色の程度または有無を通常の吸光度計を用いた吸光度法または目視にて検出する。酸性緩衝液としては、例えばリン酸−クエン酸緩衝液、フタル酸緩衝液、酒石酸緩衝液等があげられ、そのpHは通常3.5〜6.0、好ましくは3.5〜5.0である。緩衝液の添加量は、通常試料に対して50〜200%(v/v)である。中性緩衝液としては、例えばリン酸カリウム緩衝液、ゼーレンゼン氏緩衝液等があげられ、そのpHは通常5.0〜8.0、好ましくは6.5〜7.5である。緩衝液の添加量は、通常試料に対して50〜200%(v/v)である。過酸化水素水の添加量は、通常試料に対して1〜5mMである。ペルオキシダーゼの添加量は、通常試料3mlに対して1〜20Unit(望ましくは5〜10U)である。反応液の測定波長は通常450〜500nm、好ましくは460〜480nmである。
吸光度測定、目視による呈色反応の測定結果は、例えば目的菌の菌数濃度、グアイアコール生成量、呈色液の吸光度との関係の検量線あるいは目視用の基準色調表をあらかじめ作成しておき、茶褐色の有無または程度等を目安として目的のグアイアコール産生菌の有無あるいは汚染の度合いの判定に利用することができる。
好ましい態様において、上記GC−MS分析と呈色反応の両測定を行なうことにより、一層信頼性の高い情報を得ることができる。
【0022】
本発明は、グアイアコール産生菌(産生耐熱性好酸性菌(特にA. acidoterrestrisBacillus属細菌(特にB.subtilis)等)の検出用キット、すなわち、グアイアコール生成用のバニリン酸基質を含有する酸性培地(または中性培地)が容器中に収容され、かつ滅菌・密封されていることを特徴とする、グアイアコール産生菌検出用キットにも関する。本発明はさらに、該キットおよびグアイアコール検出用手段を組合せたことを特徴とする検出用キットにも関する。本発明による上記検出用キットは、前述したような本発明による検出方法を基本原理とするものである。
【0023】
図5は、本発明によるグアイアコール産生菌検出用キットの好ましい例を示すものである。
検出用キット▲1▼は、酸性培地(または中性培地)にバニリン酸を添加したものを適当な容器(プラスチック製、ガラス製チューブ等)に封入し、滅菌(オートクレーブ等)したものである。酸性培地としては、YSG培地、BAM培地等の液体培地があげられ、中性培地としては、標準液体培地、TSB培地等の液体培地があげられる。バニリン酸の添加量は、通常培地に対して25〜200ppmの濃度である。検出用キット▲1▼は、単独で使用する場合はGC−MS分析に用いることができる。
【0024】
検出用キット▲1▼とグアイアコール検出用手段を組合せた検出用キットは、GC−MS分析等の機器を使用しないでグアイアコールを検出することができる。グアイアコール検出用手段の代表例は呈色反応(好ましくはペルオキシダーゼを触媒とするグアイアコールの酸化反応)に基づくものであり、これを組合せた検出用キットは、GC−MS分析と呈色反応による両者を行なうこともでき、両測定を実施することにより、一層信頼性のある判定を行なうことができる。
【0025】
以下に、呈色反応(ペルオキシダーゼによる酸化反応)に基づく本発明検出用キットの好ましい具体例を示す。
図5に示すような検出用キットは、上記のキット▲1▼(バニリン酸含有培地▲1▼)、バニリン酸基質(▲2▼)、グアイアコール検出手段としての過酸化水素水(▲5▼)、ペルオキシダーゼ酵素(▲6▼)、酵素反応用緩衝液(▲7▼)、培養液濾過用フィルター(カートリッジフィルター▲8▼など)、培養液濾過用手動ポンプ(シリンジ▲9▼など)、培養濾過液収容透明セル(▲4▼)、および色調見本板(▲3▼)から構成されている。
本発明において、検出用キットは▲1▼〜▲9▼の全ての組合わせでセットされたものが好ましく、これらの任意の組合せでセットされていてもよいが、▲1▼または▲2▼と、▲5▼〜▲7▼は使用時には必須である。基本的には、キット構成▲1▼と▲3▼〜▲9▼の組合せおよび▲2▼〜▲9▼の組合せにより好ましい測定が可能となる。
【0026】
図5において、▲1▼は、前記の通りバニリン酸含有酸性培地を収容した滅菌、密封容器である。▲2▼は、グアイアコール生成用のバニリン酸基質をエタノールまたは水等の溶媒に溶解しプラスチック容器等に封入したものである。バニリン酸の濃度は通常1〜10%(w/v)である。▲5▼は、酵素反応のための酸化剤としての過酸化水素水をプラスチック容器等に封入したものである。▲6▼は、呈色反応用酵素としてのペルオキシダーゼを水等に溶解しプラスチック容器等に封入したものである。ペルオキシダーゼの濃度(力価もしくは比活性)は通常1〜20U/3mlである。▲7▼は、酵素反応のための酸性緩衝液(または中性緩衝液)をプラスチック容器等に封入したものである。▲8▼は、酵素反応前の培養試料液から菌体等の粒子をろ過するためのカートリッジフィルターである。▲9▼は、カートリッジフィルターを取り付けて培養試料液を吸入し菌体等の粒子をろ過してろ液を得るためのプラスチック製等のシリンジである。▲4▼は、▲9▼で得られたろ液を注入しペルオキシダーゼ酵素反応を行なわせて目視または吸光度測定を行なうための培養液収容透明セル(ガラス製等)である。▲3▼は、酵素反応における呈色とグアイアコール生成量との関係に基づいて作成した色調見本版であり、グアイアルコールの濃度に応じて呈色(茶褐色)段階が表示されている。
【0027】
上記のような本発明による検出用キットを使用したグアイアルコール産生菌(耐熱性好酸性菌、Bacillus属菌等)の検出方法の基本形態の例は、以下の通りである。なお、各キット構成中の試薬量、試薬濃度、各試薬および検体の使用量等の条件は、前述の本発明検出方法に従って任意に設定できる。また培養、酵素反応、測定等の条件は、基本的にこの本発明検出方法に従う。
(1) バニリン酸含有培地▲1▼に酸性飲料(または中性飲料)等の検体を添加・分散させ、一定時間(通常45〜50℃で18〜48時間)振とう培養後、▲8▼、▲9▼によりろ液を得て、このろ液についてGC−MS分析を行なうか、またはキット構成▲3▼〜▲7▼を用いてグアイアコール測定を行なう。
(2) 酸性飲料(または中性飲料)等の検体にバニリン酸▲2▼を添加、分散させ、一定時間(通常45〜50℃で18〜48時間)振とう培養後、▲8▼、▲9▼によりろ液を得て、このろ液についてGC−MS分析を行なうか、またはキット構成▲3▼〜▲7▼を用いてグアイアコール測定を行なう。
(3) 予め選択培養(前培養)して得られた液状培養物またはコロニーを、そのままあるいは必要に応じて滅菌水、適当な緩衝液(例えばフタル酸カリウム緩衝液(特に酸性飲料用)、リン酸カリウム緩衝液(特に中性飲料用))、液体培地(例えばYSG培地(特に酸性飲料用)、TSB培地(特に中性飲料用))等で希釈してから、バニリン酸含有培地▲1▼に添加・分散させ、一定時間(通常45〜50℃で0.5〜8時間)振とう培養後、▲8▼、▲9▼によりろ液を得て、このろ液についてGC−MS分析を行なうか、またはキット構成▲3▼〜▲7▼を用いてグアイアコール測定を行なう。
(4) 予め選択培養(前培養)して得られた液状培養物、該培養物またはコロニーの上記希釈物に、バニリン酸▲2▼を添加・分散させ、一定時間(通常45〜50℃で0.5〜1.5時間)振とう培養後、▲8▼、▲9▼によりろ液を得て、このろ液についてGC−MS分析を行なうか、またはキット構成▲3▼〜▲7▼を用いてグアイアコール測定を行なう。
【0028】
本発明はまた、グアイアコールを産生する芽胞形成菌の芽胞体を、バニリン酸の存在下において飲食品中で一定時間インキュベーションした後、生成するグアイアコールを定性または定量分析により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の飲食品中での増殖性の迅速判定方法にも関する。
本発明判定方法は、基本的に、グアイアコールを産生する芽胞形成菌の芽胞を指標菌とし、この芽胞菌体を飲食品(特に飲料)中でインキュベーションし、生成グアイアコールを測定することにより、実際の製品としての飲食品(すなわち酸性飲料(果汁、野菜汁、スポーツドリンク等)、中性飲食品(乳製品(半製品ヨーグルト、牛乳、生乳等)、おかゆ、茶、混合茶等)中での該菌体の増殖性を判定するものである。
【0029】
本判定方法において使用される指標菌としては、Alicyclobacillus属細菌(例えばA. acidoterrestrisA. acidiphilus )、Bacillus属細菌(例えばB. subtilis. B.megaterium)等の細菌が使用できるが、A. acidoterrestrisが代表的である。指標菌と飲食品の組合せにおける本発明判定方法の好ましい具体例として、例えばA. acidoterrestris(芽胞)のスポーツドリンク中での増殖性判定、Bacillus subtilis(芽胞)の茶もしくは混合茶中での増殖性判定等があげられる。
飲食品中へ添加するバニリン酸の添加量は、上記検出方法および検出キットの場合と同様に飲食品(検出方法における培地(酸性または中性培地)に相当)に対して通常25〜200ppm、好ましくは50〜100ppm程度である。本判定方法において、このバニリン酸の添加、酸性培地または中性培地の使用を含む培養等の条件および方法、ならびにグアイアコールの測定自体は、上述した本発明検出方法および検出キットの場合と基本的に変わらない。従って、本判定方法におけるインキュベーション、および生成するグアイアコールの定性または定量分析による測定は、本発明検出方法および検出キットの方法に準じて実施することができる。ただし、検出キットを使用する場合、バニリン酸(2)を使用すればバニリン酸を含む培地(2)は不要である。
上記の判定方法において、バニリン酸添加培養液(飲食品)中の菌体濃度は、本発明検出方法および検出キットにおいて液状培養物またはコロニーを検体として使用した場合と同様であるが、好ましくは10〜10/ml、より好ましくは10〜10/ml程度になるようにすることが望ましい。
【0030】
本発明判定方法において使用されるグアイアコール産生菌は芽胞形成菌であり、芽胞からはグアイアコールは産生されないが芽胞の出芽があれば産生されること、このことから、本判定方法は芽胞体を使用し、芽胞の出芽があればグアイアコールを産生する(すなわち増殖性あり)と判定できることを見出した。従って、グアイアコールの測定(GC−MS分析、HPLC、呈色反応等)によって得られたデータ値は、例えばオレンジジュース中のグアイアコール0.05ppm等を目安として目的のグアイアコール産生菌(耐熱性好酸性菌、Bacillus属菌等)の増殖性有りと判定する。また前述のように、呈色反応を用い目視用の基準色調表(例えば図5の検出用キット参照)により目的のグアイアコール産生菌の増殖性を判定することができる。好ましい態様において、上記GC−MS分析と呈色反応の両測定を行なうことにより、一層信頼性の高い判定を行なうことができる。グアイアコール測定により増殖性有りと判定された場合は、飲食品の殺菌条件、飲食品原材料の管理の検討等に有用である。
上述のような方法により、従来の判定方法(前記[従来の技術]参照)では最短でも2週間を要していたのに対して、本発明判定方法では、高濃度(例えば10/ml)の芽胞を接種した場合、後記の実施例9に示すように僅か2日間程度で増殖性の有無の判定が可能である。
上述のように、本発明によれば、グアイアコール産生菌増殖性の迅速判定方法を提供することができる。
【0031】
本発明による検出方法、検出キットおよびグアイアコール産生菌増殖性の迅速判定方法については、下記の実施例にさらに詳細に説明されている。
【0032】
【実施例】
以下の実施例は、本発明を更に具体的に説明するものであるが、本発明は、これに限定されるものではない。
本明細書において、特に断りのない限り%表示は重量%を意味する。
【0033】
[実施例1]
前培養:供試菌 Alicyclobacillus acidoterrestris TA-27(KBL304)を、以下の条件で前培養をおこなった。使用培溶液:液体YSG培地、45℃、17時間振とう培養、接種菌数:104/ml。
バニリン添加とバニリン酸でのグアイアコール生成速度の比較:
(1) 供試菌前培養液(対数増殖期)にバニリンまたはバニリン酸を100ppmとなるよう添加し、45℃にて振とう培養(15分、30分・・・)を行った。ブランクとして、菌未接種の液体YSG培地を用意し、試料と同様にバニリンまたはバニリン酸を100ppmとなるよう添加したものを用いた。
(2) 上記(1)の試料をろ過滅菌したろ液2mlを試験管にとり、100mMフタル酸カリウム緩衝液(pH4.5)を1ml添加し混合した。次に3%過酸化水素水8.5μlを添加、混合した。最後にペルオキシダーゼ*3.0μlを添加、混合し、10分間室温にて保持した後、470nmの吸光度を測定した。
(*ペルオキシダーゼは、Peroxidase for Horseradish(WAKO)を1.62U/μlとなるように15mMリン酸ナトリウム緩衝液で希釈したものを使用した。)
バニリン添加とバニリン酸添加のグアイアコール生成速度の比較試験結果を表1、表2および図1に示す。
【表1】
Figure 0003853744
【表2】
Figure 0003853744
表1、表2および図1により、明らかなように、バニリン酸添加の場合は、バニリン添加の場合よりも、Alicyclobacillus acidoterrestris TA-27(KBL304)のグアイアコール生成速度が著しく大きいことがわかった。これにより、前培養後、バニリン添加場合は、菌の検出に2〜3時間程度要するのが検出限界であるのに対して、バニリン酸添加の場合は、1時間以内で目視にても判定可能となることがわかった。
【0034】
[実施例2]
供試菌前培養液として定常期のものを使用したこと、ペルオキシダーゼ反応のための、緩衝液としてpH6.8リン酸ナトリウム緩衝液使用したこと以外は、実施例1記載の方法と同様にして、バニリン添加とバニリン酸添加とでAlicyclobacillus acidoterrestris TA-27(KBL304)のグアイアコール生成速度の比較を行った。結果を表3、表4および図2に示す。
【表3】
Figure 0003853744
【表4】
Figure 0003853744
表3、表4および図2により、明らかなように、バニリン酸添加の場合は、バニリン添加の場合よりも、Alicyclobacillus acidoterrestris TA-27(KBL304)の増殖速度が著しく大きいことがわかった。これにより、前培養後、バニリン添加の場合は、菌の検出に3〜7時間程度要するのが検出限界であるのに対して、バニリン酸添加の場合は、1.5時間以内で十分判定可能であることがわかった。実施例1、2より前培養は、検体が果汁飲料もしくは酸性飲料である場合には、1日程度が望ましいことがわかった。なお、検体が、新鮮な菌体(液体培養基の場合は培養液、固型培養基の場合はコロニー)の場合には、前培養は不要である。
【0035】
[実施例3](ペルオキシダーゼ反応の至適pHの検討)
実施例1の(2)記載のペルオキシダーゼ反応における至適pHを検討した。その結果を表5示す。
【表5】
Figure 0003853744
表5から明らかなように、pH4.5〜3.5で最も発色がよく、至適pHは4.5〜3.5にあることがわかった。
【0036】
[実施例4](検量線の作成)
実施例3で用いたフタル酸カリウム緩衝液pH4.5を使用して、グアイアコール濃度とABS(OD470 )との測定値の検量線を描いた。その結果を表6および図3に示す。
【表6】
Figure 0003853744
【0037】
[実施例5](検量線の作成)
実施例3で用いたリン酸ナトリウム緩衝液pH6.8を使用して、グアイアコール濃度とABS(OD470 )との測定値の検量線を描いた。その結果を表7および図4に示す。
【表7】
Figure 0003853744
実施例4、5からわかるように、pH4.5において、またpH6.8においてもグアイアコール濃度とOD470 の間で、検量線を描けることが明らかとなった。
【0038】
[実施例6]
グアイアコールを産生しないAlicyclobacillus属細菌の検出に関する選択性についてのバニリンとバニリン酸の効果を比較した。供試菌 Alicyclobacillus acidocaldarius TA-47(KBL336)。前培養条件:液体YSG培地、45℃、17時間振とう培養とした。※フタル酸カリウム緩衝液pH5.0を使用した。
【表8】
Figure 0003853744
【表9】
Figure 0003853744
表8、表9から明らかなようにバニリン酸は、グアイアコールを産生しないAlicyclobacillus属細菌の検出に関する選択性が高いことが示唆された。
【0039】
バニラフレーバを使った乳製品は多種市販されているが、条件が揃えば特定のBacillus の増殖に伴い異臭成分グアイアコールが産生され、香味上の変敗を起こすことがある。乳製品製造工場環境からの単離菌で、上記原因菌となる菌について迅速検出を試みた実施例を以下に示す。
【0040】
[実施例7]
(1)Peroxidase法によるBacillus subtilisコロニーの迅速判定
検出条件:
バニリン酸100ppm加pH7YSG培地に1白金耳菌体を加え、35℃(45℃)静置もしくは振とう培養しPeroxidase法(前法と同じ)により測定した。
【表10】
Figure 0003853744
表10の結果から明らかなように、B.subtilis においても迅速検出が可能であることが確認された。
【0041】
[実施例8]
(2)グアイアコール産生Bacillus の検出例
文献上グアイアコール産生の報告例のあるB.subtilisとB.megaterium の数株と他のBucillusの中で予めグアイアコール産生の有無の判明している代表的な菌株を1株づつ供試し本法(1)による検出の可否を確認した。
【表11】
Figure 0003853744
【表12】
Figure 0003853744
(結果)
表10〜12から明らかなように、B.subtilis および B.megaterium についてはほぼ全株が陽性反応を示した。他のBacillus ではグアイアコール産生菌はすべて陽性となり、有害菌検出法として有効性が認められた。
【0042】
[実施例9]
実験方法
バニリン酸100ppmを添加したA.acidoterrestris増殖のある酸性スポーツドリンク(果汁1%、クエン酸0.18%、異性化糖9%、香料0.25%)を用いて、これにA.acidoterrestris芽胞を103、105spore/mlの2段階に調製し、45℃振とうの条件で培養した。対照には同液に同菌に対する生育抑制効果のある安息香酸Na300ppm添加サンプルを用いた。本溶液を経時的にサンプリングしPeroxidase法にてグアイアコール生成量を測定した。
Figure 0003853744
【表13】
Figure 0003853744
(結果)
表13から明らかなように、従来法では判定に2週間要していたが、本法では10/mlの高濃度芽胞を接種した場合2日以内で判定が可能であった。
【0043】
[実施例10](検出用キット)
図5に示すように、▲1▼バニリン酸を含む酸性培地を入れ、滅菌した密封容器入り培地、▲2▼バニリン酸、▲3▼色調見本板、▲4▼培養濾過液収容透明セル(4〜5ml容)、▲5▼過酸化水素水、▲6▼ペルオキシダーゼ、▲7▼緩衝液、▲8▼培溶液濾過用カートリッジフィルター(0.4ミクロンのものが望ましい)、▲9▼培養液濾過用シリンジ、の全て、もしくはいずれかの組合わせでセットされている検出用キットを用いると検出作業はさらに簡便になる。すなわち、高価な機器を用いることなく、色調見本板と培養濾過液収容セルで、グアイアコール産生耐熱性好酸性菌、特にA. acidoterrestrisの検出を可能とするキットである。
具体的には、実施例1に記載したような方法により、すなわち、耐熱性好酸性菌に汚染された恐れのある果汁あるいは酸性飲料のような検体の場合は、▲1▼に接種し、45℃で一日前後の振とう前培養を行うか、または検体に直接▲2▼バニリン酸を100ppm添加し、45℃で1日程度振とう培養を行なう。この試料を▲8▼、▲9▼を用い2ml前後をろ過滅菌し、▲4▼の容器に入れ、▲7▼の緩衝液(100mMフタル酸カリウム緩衝液(pH4.5))を1ml添加、混合する。次に▲5▼の3%過酸化水素水8.5μlを添加、混合する。最後に▲6▼のペルオキシダーゼ3.0μl(力価5Unit)を添加、混合し、10分間室温にて保持した後、▲3▼にて色調比較し、グアイアコール産生耐熱性好酸性菌、特にA. acidoterrestrisの検出確認する。
液体培養基で培養した培養液または固型培養基で培養したコロニーもしくは耐熱性好酸性菌の増殖した果汁等の酸性飲料のような検体の場合は、適宜滅菌水、緩衝液、培地等で希釈等を行い、▲1▼に接種するか、または上記希釈液に直接▲2▼バニリン酸を100ppm添加し、1時間程度の振とう培養を行う。この試料を▲8▼、▲9▼を用い2ml前後をろ過滅菌し、▲4▼の容器に入れ、▲7▼の緩衝液(100mMフタル酸カリウム緩衝液(pH4.5))を1ml添加、混合する。次に▲5▼の3%過酸化水素水8.5μlを添加、混合する。最後に▲6▼のペルオキシダーゼ3.0μl(力価5Unit)を添加、混合し、10分間室温にて保持した後、▲3▼にて色調比較し、グアイアコール産生耐熱性好酸性菌、特にA. acidoterrestrisの検出確認する。これは実施例1の実施条件に相当する。
【0044】
【発明の効果】
前述のような本発明によれば、下記のような効果を奏する。
検体を含む培養液を、バニリン酸の存在下で一定時間培養もしくはインキュベーションした後、生成するグアイアコールを定性または定量分析により測定することにより、バニリンを使用するよりも極めて迅速かつ高感度のグアイアコール産生菌(代表的には、耐熱性好酸性菌(特にA. acidoterrestris)およびBacillus属細菌(特にB.subtilis)の検出方法を提供することができる。
生成するグアイアコールをGC−MS分析もしくは呈色反応により測定する簡便なグアイアコール産生菌の検出方法を提供することができる。
グアイアコールとの呈色反応がペルオキシダーゼを用いるものであって、吸光度法もしくは目視にて検出する簡便なグアイアコール産生菌の検出方法を提供することができる。
特にバニリン酸、さらには呈色反応試薬を組合せることにより、より迅速で簡便なグアイアコール産生菌の検出用キットを提供することができる。
上記GC−MS分析と呈色反応の両測定を行なうことにより、一層信頼性の高い判定を行なうことができる。
グアイアコール産生菌の芽胞を指標菌として、実際の飲食品中での菌体の増殖性を迅速に判定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるバニリン酸添加とバニリン添加の場合のグアイアコール生成速度の比較結果を示すグラフ。
【図2】実施例2におけるバニリン添加とバニリン酸添加の場合のグアイアコール生成速度の比較結果を示すグラフ。
【図3】フタル酸カリウム緩衝液pH4.5使用時のグアイアコール濃度とOD470の測定結果を示すグラフ。
【図4】リン酸ナトリウム緩衝液pH6.8使用時のグアイアコール濃度とOD470の測定結果を示すグラフ。
【図5】本発明の代表的なグアイアコール産生菌検出キットを示す説明図。

Claims (11)

  1. 予め選択培養もしくは前培養して得られた検体の液状培養物もしくはコロニーを、そのままあるいは希釈してから、バニリン酸を添加した液体培地に添加し、一定時間培養もしくはインキュベーションした後、生成するグアイアコールをペルオキシダーゼを触媒とする酸化反応を用いた呈色反応により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の迅速検出もしくは判定方法。
  2. 検出の対象となるグアイアコール産生菌が耐熱性好酸性菌であり、pH3.0〜5.0の酸性条件下で培養もしくはインキュベーションすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 検出の対象となるグアイアコール産生菌がBacillus属に属する細菌であり、pH5.5〜7.5の中性条件下で培養もしくはインキュベーションすることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  5. 予め選択培養もしくは前培養して得られた検体の液状培養物もしくはコロニーを添加するためのバニリン酸基質含有培地、およびグアイアコールを検出するための過酸化水素水、ペルオキシダーゼおよび緩衝液の構成の組合せを含んでなり、上記の各構成が容器中に収容され、かつ滅菌・密封されていることを特徴とする、グアイアコール産生菌の迅速検出もしくは判定用キット。
  6. 検出の対象となるグアイアコール産生菌が耐熱性好酸性菌であり、pH3.0〜5.0の酸性培地が収容されていることを特徴とする、請求項5に記載のキット。
  7. 検出の対象となるグアイアコール産生菌がBacillus属に属する細菌であり、pH5.5〜7.5中性培地が収容されていることを特徴とする、請求項5または6に記載のキット。
  8. 耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、請求項6に記載のキット。
  9. 予め選択培養もしくは前培養して得られたグアイアコールを産生する芽胞形成菌の芽胞体を、そのままあるいは希釈してから、バニリン酸を含有する飲食品に添加し、一定時間培養もしくはインキュベーションした後、生成するグアイアコールをペルオキシダーゼを触媒とする酸化反応を用いた呈色反応により測定することを特徴とする、グアイアコール産生菌の飲食品中での増殖可能性の迅速判定方法。
  10. グアイアコールを産生する芽胞形成菌が、耐熱性好酸性菌であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 耐熱性好酸性菌が、A. acidoterrestrisであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
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