JP3846268B2 - コモンレール式燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にディーゼルエンジンに適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置に係り、特に、電気系失陥時における高圧ポンプの焼き付き防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン、特にディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムにおいては、コモンレールに噴射圧力(数10〜数100MPa程度)まで高められた高圧燃料を蓄圧し、この燃料をインジェクタの開弁によりシリンダ内に噴射するようになっている。そしてコモンレールへの燃料供給については、燃料タンクに貯留された常圧程度の燃料をフィードポンプにより吸引吐出し、さらにこの吐出された燃料を高圧ポンプにより加圧してコモンレールに圧送供給するようになっている。
【0003】
フィードポンプと高圧ポンプとの間に電磁弁が設けられ、この電磁弁により高圧ポンプへの燃料供給量が制御される。即ち、コモンレール圧を比較的急激に立ち上げたいときは電磁弁の開度が大きくされ、高圧ポンプに比較的大量の燃料が供給される。これにより高圧ポンプは比較的大量の燃料をコモンレールに圧送し、コモンレール圧が比較的急激に立ち上げられる。逆に、コモンレール圧を比較的緩慢に立ち上げたいときは電磁弁の開度が小さくされ、高圧ポンプに比較的少量の燃料が供給される。これにより高圧ポンプは比較的少量の燃料をコモンレールに圧送し、コモンレール圧が比較的緩慢に立ち上げられる。
【0004】
電磁弁は一般に面積型調量弁であり、リニアソレノイド、DCリニアモータ等からなる電気アクチュエータを備え、電気アクチュエータに対する制御電流とスプリング力との釣り合いにより、弁体を所定位置に位置させて所定の開口面積を得るようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電磁弁には、電気アクチュエータがOFFのときに全開となる常開式(ノーマルオープンタイプ)と、電気アクチュエータがOFFのときに全閉となる常閉式(ノーマルクローズタイプ)とがある。これらの利害得失を比較すると次のようになる。
【0006】
まず、電磁弁の電気アクチュエータ及び配線類等が故障、断線したときなどのように、電磁弁における電気系失陥時には、電気アクチュエータが常時OFFとなる。この場合、高圧ポンプの圧送量は常開式では常に最大、常閉式では常にゼロとなる。次に、このような電気系失陥時において、常開式では機械式圧力レギュレータ等である程度の圧力を確保すればシステムを停止する必要が無く、工場等までの退避走行が可能であるのに対し、常閉式ではシステムを停止せざるを得ず退避走行ができない。一方、電気系失陥時において、エンジン停止と同時にフィードポンプを停止する際、常開式では全開となり最大圧送が行われるので、高圧ポンプの摺動部である圧力発生部が極低速で高圧を受けて焼き付く虞がある。他方常閉式では全閉となり圧送が行われないので焼き付く虞はない。
【0007】
そこで、本発明は特に常開式における上記問題を解決することを目的としており、電磁弁の電気系失陥時において、通常の運転をある程度可能にしつつ、極低速域での高圧ポンプの焼き付き破損を防止することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンに同期駆動されるフィードポンプ及び高圧ポンプを備え、上記フィードポンプから供給された燃料を上記高圧ポンプにより加圧してコモンレールに圧送すると共に、上記フィードポンプから上記高圧ポンプに供給される燃料量を常開式の電磁弁により調節するコモンレール式燃料噴射制御装置において、上記電磁弁の非通電時に、上記フィードポンプのフィード圧が所定値以上に達するまで、上記フィードポンプから上記高圧ポンプへの燃料供給を機械的に遮断する燃料供給遮断手段を設けたものである。
【0009】
これによれば、電磁弁の電気系失陥等による非通電(OFF)時において、エンジン回転の低下によりフィードポンプのフィード圧が所定値未満になったとき、高圧ポンプへの圧送用燃料の供給が機械的に遮断されるので、高圧ポンプが非圧送状態となり、その圧力発生部に高圧が作用することがない。これにより高圧ポンプの焼き付きが防止される。
【0010】
ここで、上記フィード圧の所定値が、上記エンジンがアイドル回転数未満の所定回転数となっているときのフィード圧であってもよい。
【0011】
上記燃料供給遮断手段が、上記フィードポンプと上記電磁弁との間に直列に設けられ上記フィードポンプのフィード圧に基づき開弁する開閉弁からなってもよい。
【0012】
上記燃料供給遮断手段が上記電磁弁に設けられてもよい。この場合、上記電磁弁が、電磁ソレノイドと、この電磁ソレノイドの通電時に閉弁側に駆動されるアーマチュアと、このアーマチュアを開弁側に付勢するリターンスプリングと、上記電磁ソレノイドの通電時に上記アーマチュアにより閉弁側に駆動され、上記フィードポンプのフィード圧により開弁側に駆動されると共に、上記アーマチュアから分割されて上記アーマチュアに対し相対移動可能な弁体と、この弁体を上記アーマチュアに対し閉弁側に付勢する弾性部材とを備えてもよい。この場合、上記電磁ソレノイドの非通電時において、上記フィード圧が上記所定値未満のとき、上記弁体が上記弾性部材により押圧されて閉弁位置に位置され、上記フィード圧が上記所定値以上のとき、上記弁体が上記フィード圧により押圧され、上記弾性部材に抗じて開弁位置に位置されるのが好ましい。
【0013】
上記フィード圧の燃料を上記高圧ポンプに潤滑用として供給する潤滑ラインが設けられるのが好ましい。
【0014】
また本発明は、作動流体を被供給先へと加圧圧送するポンプ手段と、このポンプ手段に供給される作動流体量を調節する常開式の電磁弁と、この電磁弁の非通電時に、上記ポンプ手段に供給する流体圧が所定値以上に達するまで、上記ポンプ手段への流体供給を機械的に遮断する流体供給遮断手段とを備えたことを特徴とする圧力流体供給装置。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
〔ベースシステム〕
まず、本発明の具体的内容を説明する前に、本発明が適用されるベースとなる燃料噴射制御システムについて説明する。
【0017】
図6にかかるべースとなるシステム全体を示す。当該システムはコモンレール式燃料噴射制御装置であり、車両用エンジン(図示せず)、本実施形態ではディーゼルエンジンにおける燃料噴射制御を実行するためのものである。
【0018】
エンジンの各気筒にインジェクタ1が設けられ、各インジェクタ1にはコモンレール2に貯留されたコモンレール圧(数10〜数100MPa)の高圧燃料が常時供給されている。コモンレール2への燃料圧送は高圧ポンプ(サプライポンプ)3によって行われる。即ち、燃料タンク4の常圧程度の燃料(軽油)が燃料フィルタ5を通じてフィードポンプ6により吸引され、さらにフィードポンプ6から高圧ポンプ3へと送られ、高圧ポンプ3により加圧された後、コモンレール2へと圧送供給される。
【0019】
フィードポンプ6と高圧ポンプ3との間に、高圧ポンプ3への燃料供給量を調節するための電磁弁が介設される。この電磁弁は具体的には面積型調量弁(メータリングバルブ、以下単に「調量弁」という)7である。一方フィードポンプ6と並列して、フィードポンプ6のフィード圧(出口圧)を調節するためのリリーフ弁8が設けられる。
【0020】
図7にも示されるように、高圧ポンプ3は、ポンプボディ50と、エンジンに同期駆動されるポンプシャフト9と、ポンプシャフト9に設けられた偏心シャフト部51と、偏心シャフト部51の外周に回転自在に嵌装され平面部52を有するカムリング10と、カムリング10の平面部52に面接触されるタペット11と、タペット11を平面部52に押し付けるポンプスプリング12と、タペット11がカムリング10によってリフトされたときに同時にリフトしてプランジャ室13の燃料を加圧するプランジャ14と、プランジャ室13の入口部及び出口部に設けられたチェック弁15,16とから主に構成される。ポンプシャフト9はポンプボディ50に固定されたベアリング53によって両端部が回転自在に支持される。
【0021】
カムリング10の平面部52、タペット11、ポンプスプリング12、プランジャ室13、プランジャ14及びチェック弁15,16は圧送部を構成し、この圧送部はポンプシャフト9の回転方向に120°間隔で三つ設けられる。これにより高圧ポンプ3はポンプ1回転当たりに3回の燃料圧送を行う。
【0022】
詳しくは、図7に示されるように、ポンプシャフト9の回転により偏心シャフト部51が偏心回転し、これによりカムリング10が同一位相を保ったまま、偏心シャフト部51の中心の描く円軌道に沿って移動する。これにより平面部52が同一位相位置で上下左右に往復運動することになり、平面部52の上下運動に追従してタペット11及びプランジャ14が上下し、プランジャ室13における燃料の吸入・圧送が行われると共に、平面部52の左右運動により平面部52がタペット11に対し摺動することとなる。
【0023】
高圧ポンプ3のポンプシャフト9とフィードポンプ6のポンプシャフト(図示せず)とがチェーン機構、ベルト機構又はギヤ機構等からなる機械的連結手段17によりエンジンに連結され、高圧ポンプ3とフィードポンプ6とがエンジンに同期駆動される。
【0024】
本装置における燃料の流れは図6に矢示する通りである。即ち、燃料タンク4の燃料は燃料フィルタ5を通じた後フィードポンプ6に送られ、さらに調量弁7へと送られる。フィードポンプ6のフィード圧はリリーフ弁8により調節され、リリーフ弁8を通過した余剰の燃料はフィードポンプ6の入口側に戻される。調量弁7は、電子制御ユニット(以下ECUという)18により開度が制御され、この開度に見合った燃料量が調量弁7から排出される。
【0025】
さらにこの排出された燃料は入口側チェック弁15を押し開けてプランジャ室13に導入される。そしてプランジャ14のリフトにより高圧に加圧され、出口側チェック弁16の開弁圧を越える程度まで圧力上昇したとき出口側チェック弁16を押し開け、コモンレール2に導入される。これによりコモンレール圧が調量弁7からの排出燃料量に見合った分だけ上昇する。コモンレール2の燃料はインジェクタ1に常時供給されており、インジェクタ1が開弁したときコモンレール2の燃料がシリンダ内に噴射される。
【0026】
インジェクタ1の開閉制御に伴いインジェクタ1から排出されるリーク燃料は直接燃料タンク4に戻される。また、フィード圧の燃料が潤滑ライン20を通じて高圧ポンプ3のポンプボディ50内に導入され、高圧ポンプ3における各摺動部の潤滑用として用いられる。潤滑後の燃料はチェック弁54を通過した後燃料タンク4に戻される。
【0027】
ECU18は本装置を総括的に電子制御するもので、主としてインジェクタ1の開閉制御をエンジン及び車両の運転状態(例えばエンジン回転速度、エンジン負荷等であり、以下「エンジン等の運転状態」という)に基づき実行する。インジェクタ1の電磁ソレノイドのON/OFFに応じて燃料噴射が実行・停止される。
【0028】
またECU18は、エンジン等の運転状態に応じてコモンレール圧及び調量弁7の開度を制御する。コモンレール圧については、実際のコモンレール圧がコモンレール圧センサ21により検出されると共に、エンジン等の運転状態から最適値としての目標コモンレール圧が設定され、実際のコモンレール圧が目標コモンレール圧に常に近づくよう、フィードバック制御を行っている。
【0029】
調量弁7の開度については、目標コモンレール圧と実際のコモンレール圧との差に応じて制御され、例えば目標コモンレール圧より実際のコモンレール圧が比較的大きく下回るようなら高圧ポンプからの圧送量を多くするため、大開度に制御される。調量弁7の開度はECU18から送られてくるデューティ信号に基づいて制御される。
【0030】
エンジン等の運転状態を検出するため各種センサ類が設けられる。これにはエンジン回転速度(回転数)を検出するためのエンジン回転センサ22、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)を検出するためのアクセル開度センサ23、アクセル開度が0か否か(アクセルペダルの踏み込みがあるか否か)を検出するためのアクセルスイッチ24、及び変速機のギヤポジション(ニュートラルを含む)を検出するためのギヤポジションセンサ25が含まれる。これらセンサ類はECU18に電気的に接続される。
【0031】
次に、調量弁7の構成を図8を用いて説明する。調量弁7は、図中下側に示される調量部7aと、図中上側に示されるアクチュエータ部7bとから主として構成される常開スプール式の電磁弁である。調量部7aは、バルブケーシング31の円筒部32内に、弁体としてのスプール弁体33と、リターンスプリング34とを収容してなり、円筒部32内をスプール弁体33が同軸に摺動昇降移動することで、円筒部32の側壁に設けられた第一孔35と、スプール弁体33に設けられた弁孔36との連通部における通路開口面積が変化し、フィードポンプ6から第一孔35に送られてくる燃料の導入量を変化させるようになっている。これにより調量弁7の開度が変化される。スプール弁体33は上端が閉塞された円筒状の部材で、弁孔36から導入した燃料を中心孔55を通じて下方に導く。リターンスプリング34はスプール弁体33の下端面と円筒部32の底壁との間に圧縮状態で装入され、スプール弁体33を上方即ち開弁側に付勢する。中心孔55から排出された燃料は、円筒部32の底壁に設けられた第二孔37から高圧ポンプ3に向けて排出される。つまりここでは第一孔35が燃料入口、第二孔37が燃料出口となる。
【0032】
アクチュエータ部7bは電気アクチュエータとしてのリニアソレノイドとして構成され、バルブケーシング31の上部に固定された円筒状のヨーク38に電磁ソレノイド39を埋設し、ヨーク38の中心側の空洞部に軸状のアーマチュア40を摺動昇降移動自在に配設してなる。アーマチュア40を外周側から電磁ソレノイド39が囲繞し、電磁ソレノイド39の通電量に応じてアーマチュア40が下方即ち閉弁側に駆動ないしストロークされる。アーマチュア40は、スプール弁体33と同軸に且つその上部に隣接して位置される。そしてアーマチュア40の電磁力作用部40aが大径とされてヨーク38の内周面に摺接し、アーマチュア40の弁体駆動部40bは電磁力作用部40a及びスプール弁体33よりも小径とされ、その下端面がスプール弁体33の上端面中心部に面接触される。
【0033】
スプール弁体33は、構造的には、アーマチュア40から分割されてアーマチュア40に対し軸方向に相対移動可能、近接離反移動可能であるが、通常、電磁ソレノイド39の電磁力とリターンスプリング34の付勢力とにより、アーマチュア40の下端面とスプール弁体33の上端面とは密着しており、アーマチュア40とスプール弁体33とは一体とみなせる。そこでこれらを合わせて弁体部材41と称する。弁体部材41はバルブケーシング31及びヨーク38内に満たされた燃料中に浸漬されながら摺動する。
【0034】
ECU18から電磁ソレノイド39にデューティ信号(デューティパルス)が送られ、そのデューティ比(ONデューティ比)に応じた量だけ弁体部材41がリターンスプリング34に抗じて閉弁側に移動し、調量弁7の開度が制御される。
【0035】
図9は調量弁7の調量部7aの各状態を示している。(a)は電磁ソレノイド非通電時で、このとき第一孔35と弁孔36とは完全に連通しており、弁開度としては最大即ち全開である。なおこのときアーマチュア40は図8に示す上方のストッパ56に当接される。この状態では高圧ポンプ3に最大流量が与えられ、高圧ポンプ3からは最大量の燃料圧送が行われる。(b)は小電流時で、このとき第一孔35と弁孔36とは一部同士が連通し、弁開度としては中間開度となる。このとき高圧ポンプ3からは中間量の燃料圧送が行われる。この中間開度はデューティ比の変更により無段階に変化させることができる。(c)は大電流時で、このとき第一孔35と弁孔36とは非連通となり、弁開度としては最小即ち全閉となる。このとき高圧ポンプ3には燃料が与えられず、高圧ポンプ3からの燃料圧送もなされない。高圧ポンプ3は単なる空回り状態となる。このように、デューティ比を変化させて電磁ソレノイド39に流れる平均電流値を制御することで調量弁7の開度を全開から全閉まで連続的に変化させることができる。
【0036】
図11は調量弁7の開度制御の内容を示した線図である。横軸は調量弁7の電磁ソレノイド39に流れる通電電流I、縦軸は調量弁7から排出される排出流量Qである。排出流量Qが多いほどコモンレール圧の上昇率が高くなる。図示されるように、エンジン回転数が高速になるほど通電電流Iが大きくなり、弁開度が小さくされる。これはエンジン回転数が高速になるほどフィードポンプ回転数が高速になり、フィード流量自体が大きくなるからである。また、エンジン負荷が高負荷ほど通電電流Iが小さくなり、弁開度が大きくされる。これはエンジン負荷が高負荷ほど燃料噴射量が多くなり、コモンレール圧の減少度合いが大きくなるので、素早くコモンレール圧を補充する必要があるからである。
【0037】
ところで、このベースシステムには次のような問題がある。即ち、調量弁7は常開式であり、電磁ソレノイド39が非通電即ちOFFのとき全開となる。そしてこのとき高圧ポンプ3は最大圧送を行う。しかし、このOFF状態がエンジンの極低回転域において行われると、高圧ポンプ3の圧力発生部が高圧を受けて焼き付く可能性がある。
【0038】
これを詳述すると以下の通りである。エンジン、フィードポンプ6及び高圧ポンプ3は全て連動しており、エンジンが停止するとフィードポンプ6及び高圧ポンプ3も停止する。そしてフィードポンプ6のフィード圧特性は図10に示す通りである。ここではフィードポンプ6がエンジンに1:1の減速比で駆動され、ポンプ回転数はエンジン回転数に等しい。もっとも1:1以外の減速比でフィードポンプ6を駆動することは可能である。なお図にはリリーフ弁8を通過するオーバーフロー流量も併記してある。図示されるように、フィード圧Pfは、ポンプ回転数の上昇とともに上昇し、ポンプ回転数0からアイドル回転数(約500rpm)手前までは比較的急速に立ち上がり、それ以上の回転域では比較的緩やかに上昇する。
【0039】
しかし、ポンプ回転数が、アイドル回転数よりも顕著に低い停止直前の回転数、即ち焼付限界回転数NB未満の極低速域になると、高圧ポンプ3の圧力発生部が高圧を受けて焼き付く可能性がある。即ち、例えば電磁ソレノイド39の故障、配線類の断線等により、調量弁7が電気的に失陥し、常時OFF即ち全開になったとする。この状態でエンジンを停止しようとするとエンジン回転数(=フィードポンプ回転数)が惰性でアイドル回転数以下に落ち込み、焼付限界回転数NB未満の極低速域に突入する。このとき、フィードポンプ6のフィード圧自体は低いものの、調量弁7が全開なので、高圧ポンプ3のプランジャ室13には多量の燃料が流れ込み、プランジャ14のリフト時にプランジャ室13が高圧となる。すると、この高圧反力により、カムリング10の平面部52とタペット11間の摺動部、及びポンプシャフト9とベアリング53間等の摺動部に、高面圧が発生し、なおかつ極低速で摺動部の油膜生成力が弱いため、金属接触が発生し、焼き付きに至ってしまう。なお、このような焼き付きは、エンジンキーOFFと同時に調量弁7もOFFとなるので、調量弁7の正常時にも起こる可能性がある。
【0040】
さらに、潤滑ライン20により潤滑用燃料が高圧ポンプ3の上記各摺動部(圧力発生部)に供給されてはいるものの、極低速域ではフィード圧及びフィード流量自体が小さいため、十分な量の燃料が潤滑ライン20に分岐せず、これも焼き付き発生の一因となっている。
【0041】
そこで、本実施形態はこのような焼き付きを防止するため、調量弁OFF時に、フィードポンプのフィード圧が所定値以上に達するまで、フィードポンプから高圧ポンプへの燃料供給を機械的に遮断する燃料供給遮断手段を設けている。以下これについて説明する。
【0042】
〔第一実施形態〕
図1に本発明の第一実施形態に係るコモンレール式燃料噴射制御装置を示す。この装置は前述のベースの装置と大略同様であり、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0043】
この第一実施形態において、主にベースと異なるのは、フィードポンプ6と調量弁7との間に、燃料供給遮断手段をなす開閉弁60を直列に設けた点である。開閉弁60は、フィードポンプ6のフィード圧Pfが、図10に示される焼付限界回転数NB相当の圧力PB以上になったとき、そのフィード圧Pfに基づいて開弁し、その圧力PB未満では閉弁するようになっている。
【0044】
図2にも示すように、開閉弁60は、フィードポンプ6から調量弁7に至る主ライン61の途中に設けられる。そして開閉弁60は、バルブボディ62内の弁室63に、スプール状の弁体64を摺動自在に設けると共に、弁体64を閉弁側に付勢するバルブスプリング65を設けてなる。弁体64には主ライン61に対する入口及び出口を連通可能な貫通孔としての弁孔66が設けられる。フィードポンプ6からリリーフ弁8に至るリリーフライン67から、バルブスプリング65の反対側に位置する弁室63内に、フィード圧の燃料を導入するための導入ライン68が設けられ、さらに、バルブスプリング65側に位置する弁室63から、余剰の燃料をオーバーフローさせて燃料タンク4に戻すためのオーバーフローライン69が設けられる。
【0045】
この開閉弁60の作動は図2に示す通りである。まず(a)に示すように、フィード圧Pfが焼付限界圧力PB以上のとき(通常運転時)には、導入ライン68から導入されたフィード圧の燃料によって弁体64がバルブスプリング65に抗じて開弁側(右側)に移動し、弁孔66が主ライン61に対する入口及び出口を完全に連通する。これにより主ライン61は全開となって通常通りフィードポンプ6から調量弁7への燃料供給が行われる。
【0046】
一方(b)に示すように、フィード圧Pfが焼付限界圧力PB未満のとき(極低速運転時)には、導入ライン68から導入されたフィード圧が低いため、弁体64がバルブスプリング65に押されて閉弁側(左側)に移動する。これにより主ライン61が全閉となり、フィードポンプ6から調量弁7ひいては高圧ポンプ3への燃料供給が遮断される。
【0047】
このように、フィード圧Pfが焼付限界圧力PB未満となる極低速域において、高圧ポンプ3への燃料供給が遮断されるので、高圧ポンプ3のプランジャ室13が高圧になることが無く、高圧ポンプ3における摺動部ないし圧力発生部での焼き付きを未然に防止できる。そして主ライン61が閉じる結果、潤滑ライン20により多くの燃料を分岐供給できるようになり、潤滑の積極化による焼き付き防止を図れる。
【0048】
一方、通常運転時には主ライン61が通常通り開かれるので、たとえ電気系失陥により調量弁7がOFFにスタックしても、システムを停止することなく退避走行が可能である。この点、常開式のメリットはそのまま活かされることになる。
【0049】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態を説明する。この第二実施形態の装置の全体構成は図6に示したベースの装置と同様であり、異なるのは調量弁の構成だけである。
以下、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0050】
図3に第二実施形態に係る調量弁を示す。この調量弁90は、基本的構成は図8に示したベースの調量弁7と同様であるが、以下の点でベースの調量弁7と相違している。
【0051】
まず、アクチュエータ部7bにおいて、アーマチュア40を直接上方即ち開弁側に付勢するリターンスプリング71が設けられる。このリターンスプリング71はベースのリターンスプリング34に換わるもので、本実施形態の調量部7aではベースのリターンスプリング34が省略される。
【0052】
本実施形態のリターンスプリング71は、略円錐状のコイルスプリングからなり、アーマチュア40の弁体駆動部40bを外周側から囲繞して上下圧縮状態で配置されると共に、その上端がアーマチュア40の電磁力作用部40aと弁体駆動部40bとによるコーナー部に係合され、その下端は、ヨーク38に対するバルブケーシング31の段差72に係合される。
【0053】
また調量部7aにおいては、スプール弁体33の形状が異なっており、スプール弁体33の上端部に、アーマチュア40の弁体駆動部40bより小径の突出軸73が一体に設けられる。そして突出軸73の上端面と、アーマチュア40の弁体駆動部40bの下端面とが通常面接触するようになっている。アーマチュア40とスプール弁体33との間に、これらを互いに離間方向に付勢する弾性部材としての作動スプリング74が設けられる。作動スプリング74はコイルスプリングからなり、突出軸71の外周側に嵌合して配設されると共に、アーマチュア40の弁体駆動部40bの下端面と、スプール弁体33の上端面との間に上下圧縮状態で配置される。これによりスプール弁体33はアーマチュア40に対し下方即ち閉弁側に付勢される。作動スプリング74はリターンスプリング71に比べサイズが小さく、小さなバネ力を有するものとなっている。
【0054】
この実施形態では第二孔37が燃料入口、第一孔35が燃料出口となっている。また、突出軸73の長さ分第一孔35が下方に移動され、ベースと同様の作動が得られるようになっている。ベース同様、スプール弁体33は構造的にはアーマチュア40から分割されてアーマチュア40に対し軸方向に相対移動可能、近接離反移動可能である。
【0055】
図4に示すように、この調量弁70の基本的作動は図9に示したベースと同様である。(a)は電磁ソレノイド非通電時で、このときアーマチュア40は最も上方に位置され、スプール弁体33は下方からフィード圧Pfで押されることにより、作動スプリング74に抗じて上昇しアーマチュア40に密着する。この結果、スプール弁体33とアーマチュア40とは一体とみなすことができ、ベースと同様弁開度は全開となる。(b)の小電流時、(c)の大電流時も、十分なフィード圧Pfがあることから、スプール弁体33がアーマチュア40に密着しこれらが一体となってベースと同様の作動を行う。
【0056】
ところで、図5(a)に示すように、電気系失陥等により調量弁70がOFF(非通電)となり、エンジン回転数(=フィードポンプ回転数)が極低速域となってフィード圧Pfが焼付限界圧力PB未満となったとき(非通電・極低速運転時)は、フィード圧Pfが作動スプリング74に対抗できず、スプール弁体33が作動スプリング74によりアーマチュア40から離間され、下降されて、調量弁70が全閉となる。これにより高圧ポンプ3への燃料供給が遮断され、高圧ポンプ3の焼き付きを未然に防止できる。
【0057】
一方、図5(b)に示すように、電気系失陥等により調量弁70がOFF(非通電)でありながら、エンジン回転数(=フィードポンプ回転数)が極低速域を越え、フィード圧Pfが焼付限界圧力PB以上になる(非通電・通常運転時)と、十分なフィード圧Pfが発生するのでこれによりスプール弁体33が作動スプリング74に抗じて上昇され、調量弁70をフィード圧に応じた中間開度又は全開にすることができる。これにより退避走行が可能となる。
【0058】
このように、この第二実施形態では燃料供給遮断手段が調量弁70に設けられる。
【0059】
この第二実施形態では次の特徴もある。即ち、調量弁の構成を一部変更するだけでよいので、システム全体を変える必要はなく、調量弁の交換のみで済み、しかも調量弁自体についても既存(ベース)のものを利用できる。これにより低コストで効果を得ることができ、高い汎用性も具備される。
【0060】
本発明の実施の形態は他にも様々なものが考えられる。例えば上記実施形態では高圧ポンプの圧送部について摺動タペットを用いたが、特開平11−13601号公報に示されるようなローラタペットを用いても構わない。ただし、摺動タペットはローラタペットより潤滑上不利である。これは、ローラタペットでは高圧ポンプが回転している限り摺動部の速度がゼロになることはなく、油膜切れが生じないが、摺動タペットではタペットの左右運動が逆転するときに速度ゼロとなり、油膜切れが生じる可能性があるからである。従って本発明は摺動タペットタイプに特に効果的である。
【0061】
また、弾性部材は上記作動スプリングに限らず、他の形態のバネ、ゴム等であってもよい。
【0062】
さらに、本発明は、コモンレール式燃料噴射制御装置の電磁弁に限らず、あらゆる圧力流体発生装置の電磁弁に対して適用可能であり、燃料以外の作動流体を用いるものでも構わない。電磁弁のアクチュエータ部についても、リニアソレノイドの他、DCリニアモータ等あらゆる電気アクチュエータが使用可能である。また電磁弁はスプール式に限らず回動式等であってもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、電磁弁の電気系失陥時において、通常の運転をある程度可能にしつつ、極低速域での高圧ポンプの焼き付き破損を防止することができるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係るコモンレール式燃料噴射制御装置のシステム図である。
【図2】開閉弁の作動状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る調量弁を示す縦断面図である。
【図4】第二実施形態に係る調量弁の作動状態を示す縦断面図である。
【図5】第二実施形態に係る調量弁の非通電時における作動状態を示す縦断面図である。
【図6】ベースとなるコモンレール式燃料噴射制御装置のシステム図である。
【図7】ベースにおける高圧ポンプの軸方向に垂直な断面図である。
【図8】ベースの調量弁を示す縦断面図である。
【図9】ベースの調量弁の作動状態を示す縦断面図である。
【図10】フィードポンプのフィード圧特性を示すグラフである。
【図11】調量弁の排出流量特性を示すグラフである。
【符号の説明】
3 高圧ポンプ(ポンプ手段)
6 フィードポンプ
7,90 調量弁(電磁弁)
10 電子制御ユニット
20 潤滑ライン
33 スプール弁体
39 電磁ソレノイド
40 アーマチュア
60 開閉弁(燃料供給遮断手段)
71 リターンスプリング
74 作動スプリング(弾性部材)
Pf フィード圧
PB 焼付限界圧力
NB 焼付限界回転数

Claims (8)

  1. エンジンに同期駆動されるフィードポンプ及び高圧ポンプを備え、上記フィードポンプから供給された燃料を上記高圧ポンプにより加圧してコモンレールに圧送すると共に、上記フィードポンプから上記高圧ポンプに供給される燃料量を常開式の電磁弁により調節するコモンレール式燃料噴射制御装置において、上記電磁弁の非通電時に、上記フィードポンプのフィード圧が所定値以上に達するまで、上記フィードポンプから上記高圧ポンプへの燃料供給を機械的に遮断する燃料供給遮断手段を設けたことを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
  2. 上記フィード圧の所定値が、上記エンジンがアイドル回転数未満の所定回転数となっているときのフィード圧である請求項1記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  3. 上記燃料供給遮断手段が、上記フィードポンプと上記電磁弁との間に直列に設けられ上記フィードポンプのフィード圧に基づき開弁する開閉弁からなる請求項1又は2記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  4. 上記燃料供給遮断手段が上記電磁弁に設けられる請求項1又は2記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  5. 上記電磁弁が、電磁ソレノイドと、該電磁ソレノイドの通電時に閉弁側に駆動されるアーマチュアと、該アーマチュアを開弁側に付勢するリターンスプリングと、上記電磁ソレノイドの通電時に上記アーマチュアにより閉弁側に駆動され、上記フィードポンプのフィード圧により開弁側に駆動されると共に、上記アーマチュアから分割されて上記アーマチュアに対し相対移動可能な弁体と、該弁体を上記アーマチュアに対し閉弁側に付勢する弾性部材とを備える請求項4記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  6. 上記電磁ソレノイドの非通電時において、上記フィード圧が上記所定値未満のとき、上記弁体が上記弾性部材により押圧されて閉弁位置に位置され、上記フィード圧が上記所定値以上のとき、上記弁体が上記フィード圧により押圧され、上記弾性部材に抗じて開弁位置に位置される請求項5記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  7. 上記フィード圧の燃料を上記高圧ポンプに潤滑用として供給する潤滑ラインが設けられる請求項1乃至6いずれかに記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
  8. 作動流体を被供給先へと加圧圧送するポンプ手段と、該ポンプ手段に供給される作動流体量を調節する常開式の電磁弁と、該電磁弁の非通電時に、上記ポンプ手段に供給する流体圧が所定値以上に達するまで、上記ポンプ手段への流体供給を機械的に遮断する流体供給遮断手段とを備えたことを特徴とする圧力流体供給装置。
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