JP3839140B2 - ブレーキロータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスク式制動装置用のブレーキロータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は、ディスク式制動装置の一例を示し、図9は、このディスク式制動装置に使用されているブレーキパッドを示し、図10は、このディスク式制動装置に使用されている従来のブレーキロータを示している。
【0003】
図8に示すように、このディスク式制動装置Aは、ブレーキキャリパのシリンダボディBがブレーキロータCを跨いで配設され、シリンダボディBの一端にピストンDが摺動自在に密挿されており、このピストンDのブレーキロータC側の端面と、該端面とブレーキロータCを挟んで対向するシリンダボディBの爪部B1には、それぞれブレーキパッドEが取り付けられている。そして、シリンダ内に圧送される油等の作動液の圧力によりピストンDとシリンダボディBとが相対的に移動して、両ブレーキパッドEがブレーキロータCの摺動面C1に押し付けられる構造となっている。
【0004】
ブレーキパッドEは、図9に示されているように、金属製の裏金E1に摩擦材E2が固着されたものであって、摩擦材E1の中央部にはスリットE3が形成されている。
【0005】
ブレーキロータCは、図10に示されているように、ブレーキパッドE用の摺動面C1を形成して互いに対向する2枚の円盤状のディスクC2間に、ディスクC2の半径方向へ沿って放射状に延びる複数のフィンC3がディスクC2の周方向へ均等に配設され、隣接するフィンC3間に、放熱性能を向上させるための通風用のベンチホールC4が形成されており、ディスクC2の中心に対して点対称の構造を有している。
【0006】
図11,図12は、このブレーキロータCの振動の固有モードを示している。図11,図12に示すように、ブレーキロータCは、ディスクC2が曲げ振動する直径2節モード(2次の直径節モード),直径3節モード(3次の直径節モード),直径4節モード(4次の直径節モード),直径5節モード(5次の直径節モード),直径6節モード(6次の直径節モード)等の振動モードを呈する固有モードを有している。
【0007】
これらの固有モードは、ブレーキロータCが点対称な構造を有しているため、重根となり、従って、ブレーキロータCを静止させた状態で加振すると、円盤状のディスクC2のどこを加振しても、加振点が常に腹となるモードでブレーキロータCは振動する。
【0008】
このため、ブレーキロータCでは、ディスクC2の摺動面C1にブレーキパッドEを押し付けて回転を制動すると、ディスクC2の摺動面C1とブレーキパッドEとの間に生じる摩擦振動がブレーキロータCを振動させ、ブレーキロータCの固有振動が励振された場合には、静止系から観察するとあたかも振動モードが空間に静止しているかのように観察される。
【0009】
これらの振動モードを空間固定モードと呼び、この空間固定モードは、常にモードの腹で加振されるため、最も効率よく励振されると共に音響放出効率が最大となり、実際にブレーキ鳴きの原因となる場合が多い。そして、このブレーキ鳴きの原因となる空間固定モードは、図11,図12に示すような重根となる固有モードである直径節モードが存在するために発生する、ということを原田らが報告している(日本機械学会論文(C編)55巻512号(1989−4)No.88−0622A)。
【0010】
図13は、フィンC3の総数が36枚である場合のブレーキロータCにおける直径6節モードの一部を示している。図13に示されているように、直径節モードの重根は、互いの位相が1/4波長ずれており、このため、直径節モードにおける重根の一方の波W1の腹は、他方の波W2の節となる。
【0011】
ここで、ブレーキパッドEの摩擦材E2がブレーキロータCの直径節モードに与える影響について説明する。制動時に、ブレーキロータCの摺動面C1にブレーキパッドEを押進接触させると、ブレーキパッドEの剛性がブレーキロータCの固有振動を抑制するように働いて固有値を上昇させる。
【0012】
このとき、互いの位相が1/4波長ずれた重根に対して均等にブレーキパッドEの剛性が働かないと、固有値のずれが生じて重根が分離する。そして、制動時に分離された重根は、離間周波数が小さい場合には、ブレーキパッドEの摩擦により連成振動を起こして、空間固定モードを発生させることが確認されている。
【0013】
図14は、離間周波数と直径節モードの次数との関係を示し、図15は、直径節モードの波長が長い場合のブレーキパッドEと直径節モードとの関係を示しており、図16は、直径節モードの波長が短い場合のブレーキパッドEと直径節モードとの関係を示している。
【0014】
図14に示されているように、制動時に分離された重根は、直径節モードの次数が高次になるほど離間周波数が小さい傾向にあることが、有限要素法によって確認されている。このことは、図15に示すように、低次の直径節モードの場合には、直径節モードの波長が長く、ブレーキパッドEにおけるブレーキロータCの回転方向の幅Tが直径節モードの波長に対して短いため、制動時に分離された重根に対するブレーキパッドEの剛性の影響差が大きく、離間周波数が大きくなることによる。
【0015】
逆に、高次の直径節モードの場合には、図16に示すように、直径節モードの波長が短く、ブレーキパッドEにおけるブレーキロータCの回転方向の幅Tが直径節モードの波長に対して長くなるため、制動時に分離された重根に対するブレーキパッドEの剛性の影響差が小さく、離間周波数が小さくなる。
【0016】
ところで、ブレーキパッドEは、寿命等の観点から必要体積が決定され、ロータ回転方向の幅TがブレーキロータCの角度換算で約60度程度に設定されることが一般的である。従って、一般的に、1波長が60度となる6次の直径節モード(直径6節モード)以上の直径節モードは、重根の離間周波数が小さく、ブレーキパッドEの摩擦により連成振動を起こして空間固定モードを発生させ易くなっている。
【0017】
この空間固定モードに起因するブレーキ鳴きを防止するため、前記日本機械学会論文(C編)55巻512号(1989−4)No.88−0622Aにおいて、原田らは、ブレーキロータCのベンチホールC4に質量を付加することにより、直径節モードの重根の離間周波数を大きくすることを行っている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブレーキロータCのベンチホールC4に質量を付加すると、制動時に加熱したブレーキロータCを冷却するためのベンチホールC4の冷却風の流れが妨げられて、ブレーキロータCの冷却性能が大幅に悪化する、という問題が生じる。
【0019】
そこで、本発明では、冷却性能を悪化させることなく、逆に冷却性能を向上させることができ、しかも、ブレーキ鳴きを抑制することもできるブレーキロータを提供することを課題としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、請求項1の発明では、ブレーキパッド用の摺動面を形成して互いに対向する2枚のディスク間に、ディスク径方向へ沿って放射状に延びる複数のフィンをディスク周方向へ均等に配設して、隣接するフィン間に通風用のベンチホールを形成したブレーキロータにおいて、前記フィンは、ディスク周方向へ連続する3枚を一組として偶数組が設けられ、各組3枚中の連続する2枚が通風上流側の先端部を除去された短フィンであって、残り1枚がディスク径方向へ相対的に長い長フィンであり、各組における前記長フィンと短フィンの配列が同一とされており、かつ、これらの長フィン及び短フィンは共に、前記2枚のディスクが対面する部位内に配設されている、という構成を採用している。
【0021】
この請求項1の発明では、フィンは、ディスク周方向へ連続する3枚を一組として偶数組が設けられ、各組3枚中の連続する2枚が通風上流側の先端部を除去された短フィンであるので、従来のブレーキロータと比べて、冷却風入り口側の開口面積が広がっていると共に、各組3枚中の連続する2枚の短フィンが位置するディスクの部位の剛性が低くなっている。
【0022】
しかも、請求項1の発明では、各組における長フィンと短フィンの配列が同一とされているので、従来のブレーキロータと比べて剛性が低い低剛性部位は一定の間隔で配置されている。
【0023】
ところで、請求項1の発明では、フィンは、ディスク周方向へ連続する3枚を一組として偶数組が設けられているので、直径節モードの中には、互いの位相が1/4波長ずれている重根の一方の波の腹と、他方の波の節とが、前記低剛性部位に位置する直径節モードが必ず一つは存在している。
【0024】
そして、この一つは存在する直径節モードでは、重根の一方の波は、その腹が前記低剛性部位に位置するため周波数が低周波数側へシフトするのに対し、他方の波は、前記低剛性部位に波の節が位置するため周波数が殆ど変化せず、その結果、重根が分離する。
【0025】
従って、請求項1の発明では、重根が分離する直径節モードが存在し、この直径節モードは、重根が予め分離しているため、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなる。
【0026】
請求項2の発明は、請求項1記載のブレーキロータであって、前記短フィンは、前記長フィンよりディスク周方向へ幅広に形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
このため、請求項2の発明では、ディスクの剛性が請求項1記載の発明と比べて大きくなり、その結果、重根が分離する直径節モードは、分離した重根の一対の波の周波数が何れも、請求項1記載の発明と比べて高周波数側へシフトする。
【0028】
ところで、請求項1の発明では、ディスクの摺動面に発生する粗密波等の他の振動モードの周波数と、分離した重根の一対の波における一方の波の周波数とが接近して連成する場合がある。
【0029】
しかし、請求項2の発明では、重根が分離する直径節モードは、分離した重根の一対の波の周波数が何れも請求項1記載の発明と比べて高周波数側へシフトするので、請求項1の発明では前記一対の波の一方と前記他の振動モードとが連成する場合であっても、前記一対の波の周波数を高周波数側へシフトさせることによって、前記連成を防止することができる。
【0030】
請求項3の発明は、請求項1記載のブレーキロータであって、前記短フィンは、隣接する前記長フィン側が増肉されて、前記長フィンよりディスク周方向へ幅広に形成されていることを特徴とするものである。
【0031】
このため、請求項3の発明では、ディスクの剛性が請求項1記載の発明と比べて大きくなり、しかも、その大きくなった影響が、分離した重根の双方にほぼ均等に作用する。
【0032】
従って、請求項3の発明では、重根が分離する直径節モードは、重根の離間周波数が請求項1の発明とほぼ同等のまま、分離した重根の一対の波の周波数が何れも、請求項1記載の発明と比べて高周波数側へシフトする。
【0033】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、前記フィンは、総数が36枚であることを特徴とするものである。
【0034】
このため、請求項4の発明では、直径6節モードにおける重根の一方の波の腹と、他方の波の節とが、従来のブレーキロータと比べて剛性が小さい低剛性部位に位置することになり、前記一方の波の周波数が低周波数側へシフトして、直径6節モードの重根が分離する。
【0035】
従って、請求項4の発明では、直径6節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなる。
【0036】
請求項5の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、前記フィンは、総数が42枚であることを特徴とするものである。
【0037】
このため、請求項5の発明では、直径7節モードにおける重根の一方の波の腹と、他方の波の節とが、従来のブレーキロータと比べて剛性が小さい低剛性部位に位置することになり、前記一方の波の周波数が低周波数側へシフトして、直径7節モードの重根が分離する。
【0038】
従って、請求項5の発明では、直径7節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなる。
【0039】
請求項6の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、前記フィンは、総数が48枚であることを特徴とするものである。
【0040】
このため、請求項6の発明では、直径8節モードにおける重根の一方の波の腹と、他方の波の節とが、従来のブレーキロータと比べて剛性が小さい低剛性部位に位置することになり、前記一方の波の周波数が低周波数側へシフトして、直径8節モードの重根が分離する。
【0041】
従って、請求項6の発明では、直径8節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなる。
【0042】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れかに記載のブレーキロータであって、前記長フィン及び短フィンのディスク径方向の一端を前記ディスクの外周端に一致させ、前記長フィンのディスク径方向の他端側で冷却用の前記通風をガイドすることを特徴とするものである。
【0043】
このため、請求項7の発明では、従来のブレーキロータと比べて、冷却風入り口側の開口面積が広がっていると共に、短フィンが位置するディスクの部位の剛性が低くなっているおり、従って、請求項1の発明と同様、重根が分離する直径節モードが存在し、この直径節モードは、重根が予め分離しているため、従来のブレーキロータと比べて制動時に重根の離間周波数が大きくなる。
【0044】
【発明の効果】
請求項1の発明では、重根が分離する直径節モードが存在し、この直径節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなるので、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなり、その結果、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0045】
しかも、請求項1の発明では、従来のブレーキロータと比べて、冷却風入り口側の開口面積が広がっているので、ブレーキロータの冷却性能を向上させることもできる。
【0046】
請求項2の発明では、重根が分離する直径節モードは、分離した重根の一対の波の周波数が何れも請求項1記載の発明と比べて高周波数側へシフトするので、請求項1の発明では前記一対の波の一方と、ディスクの摺動面に発生する粗密波等の他の振動モードとが連成する場合であっても、前記一対の波の周波数を高周波数側へシフトさせることによって、前記連成を防止することができ、前記連成に起因するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0047】
請求項3の発明では、重根が分離する直径節モードは、重根の離間周波数が請求項1の発明とほぼ同等のまま、分離した重根の一対の波の周波数が何れも、請求項1記載の発明と比べて高周波数側へシフトするので、請求項1記載の発明と比べて、重根に起因する制動時の連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなり、その結果、重根に起因するブレーキ鳴きの抑制効果が大きくなる。
【0048】
請求項4の発明では、直径6節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなるので、直径6節モードに起因して発生するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0049】
請求項5の発明では、直径7節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなるので、直径7節モードに起因して発生するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0050】
請求項6の発明では、直径8節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなり、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなるので、直径8節モードに起因して発生するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0051】
請求項7の発明では、請求項1の発明と同様、重根が分離する直径節モードが存在し、この直径節モードは、従来のブレーキロータと比べて、制動時に重根の離間周波数が大きくなるので、従来のブレーキロータと比べて、連成振動が起こりにくくなって、空間固定モードが発生しにくくなり、その結果、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0052】
また、請求項7の発明では、長フィン及び短フィンのディスク径方向の一端をディスクの外周端に一致させたので、ディスクの外周端部分を長フィン及び短フィンで補強することもでき、長フィンのディスク径方向の他端側で冷却用の通風をガイドするので、冷却風を確実にベンチホールへ流入させることもできる。
【0053】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は、請求項1及び4記載の両発明を併せて実施した実施の形態の一例である第1実施形態を示す説明図である。図1に示すように、このブレーキロータ1では、ブレーキパッド用の摺動面2a(図4参照)を形成して互いに対向する2枚の円盤状のディスク2間に、ディスク2の半径方向へ沿って放射状に延びる36枚のフィン3a,3bがディスク2の周方向Xへ均等に配設されて、隣接するフィン3a,3b間に通風用のベンチホール4が形成されている。
【0054】
しかも、このブレーキロータ1では、36枚のフィン3a,3bは、ディスク2の周方向Xへ連続する3枚を一組とした12組とされており、各組3枚中の連続する2枚が、通風である冷却風Rの上流側の先端部を除去された短フィン3bであって、残りの1枚がディスク2の径方向へ相対的に長い長フィン3aとされている。そして、各組における3枚のフィン3a,3bの配列は、長フィン3a,短フィン3b,短フィン3bの順で同一とされている。
【0055】
従って、ブレーキロータ1では、ディスク2における2枚の短フィン2bが位置する部位は、図13図示の従来品と比べて剛性が低い低剛性部位となっており、この低剛性部位は、ディスク2の周方向Xへ一定の間隔で配置されている。
【0056】
図2は、図1に示すものの一部を展開した説明図である。ブレーキロータ1では、フィンの総数を36枚としているため、図2に示すように、直径6節モードの1波長は、3枚一組のフィン3a,3bの2組分に相当し、直径6節モードにおける重根の一方の波W1は、その腹が前記低剛性部位に位置し、重根の他方の波W2は、一方の波W1と1/4波長ずれているため、前記低剛性部位に波W2の節が位置している。
【0057】
そして、ブレーキロータ1では、重根の一方の波W1は、その腹が前記低剛性部位に位置するため、周波数が低周波数側へシフトするのに対し、他方の波W2は、その節が前記低剛性部位に位置するため、周波数が殆ど変化せず、フィン2aが短くなった事による軽量化分だけ若干高周波側へシフトすることが有限要素法の計算によって確認されている。
【0058】
従って、ブレーキロータ1では、直径6節モードに関しては、重根が分離しており、制動時におけるブレーキパッドの剛性による重根分離と相俟って、図13図示の従来品と比べて、制動時における重根の離間周波数が大きくなり、ブレーキパッドとの摩擦に起因する連成振動が起こりにくくなって、その連成振動が引き起こす空間固定モードが発生しにくくなり、その結果、ブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0059】
また、ブレーキロータ1では、各組3枚のフィン3a,3bのうち連続する2枚の短フィン3bが、通風上流側の先端部を除去されているので、図13図示の従来品と比べて、冷却風R入り口側の開口面積が広く、冷却性能が向上する。
【0060】
(第2実施形態)
図3は、請求項2及び4記載の両発明を併せて実施した実施の形態の一例である第2実施形態を示す説明図である。なお、以下に行う第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成部材には同一の符号を付し、第1実施形態の説明と重複する説明は省略する。
【0061】
図3に示すように、第2実施形態に係るブレーキロータ10では、短フィン3cは、ディスク2の周方向Xの幅T2が長フィン3aの幅T1より幅広に形成され、従って、ブレーキロータ1の短フィン3bより幅広とされている。このため、ブレーキロータ10では、ブレーキロータ1と比べて、ディスク2の剛性が向上し、その結果、直径6節モードにおける分離した重根の一対の波W1,W2は何れも、その周波数が高周波側へシフトする。
【0062】
ところで、図4は、直径節モード以外の他の振動モードの一例として、ブレーキロータ1,10のディスク2の摺動面2aに発生する粗密波W3を示している。図1図示のブレーキロータ1では、ディスク2の厚さの選択によっては、ディスク2の摺動面2aに発生する粗密波W3の周波数が、重根分離を狙った直径6節モードにおける重根の波W1,W2の一方の周波数と接近する場合がある。例えば、直径6節モードにおける分離した重根の一対の波W1,W2の周波数間に粗密波W3の周波数が存在すると、制動時には、ブレーキパッドの剛性の影響で前記一対の波W1,W2の周波数が高くなり、前記一対の波W1,W2における低周波数側の波W1が、粗密波W3の周波数に接近して粗密波W3と連成する場合がある。
【0063】
しかし、ブレーキロータ10では、直径6節モードにおける重根の一対の波W1,W2の周波数が何れも、ブレーキロータ1と比べて高周波数側へシフトするので、ブレーキロータ1において重根の波W1,W2の一方と粗密波W3とが連成する場合であっても、重根の一対の波W1,W2の周波数を高周波数側へシフトさせることによって、前記連成を防止することができ、その結果、前記連成に起因するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0064】
そして、短フィン3cの幅T2を広げることによる重根の一対の波W1,W2の周波数変化は、ブレーキロータ1において低周波数側へシフトした波W1に対して大きく働くので、その波W1と粗密波W3とがブレーキロータ1において連成する場合に、短フィン3cの幅T2を広げたブレーキロータ10は、より効果を発揮する。
【0065】
なお、ブレーキロータ10でも、ブレーキロータ1と同様、各組3枚のフィン3a,3cのうち連続する2枚の短フィン3cが、通風上流側の先端部を除去されているので、図13図示の従来品と比べて、冷却風R入り口側の開口面積が広く、冷却性能が向上するのは勿論のことである。
【0066】
(第3実施形態)
図5は、請求項3及び4記載の両発明を併せて実施した実施の形態の一例である第3実施形態を示す説明図である。なお、以下に行う第3実施形態の説明では、第1及び第2の両実施形態と同一の構成部材には同一の符号を付し、両実施形態の説明と重複する説明は省略する。
【0067】
図5に示すように、第3実施形態に係るブレーキロータ20では、短フィン3dは、隣接する長フィン3a側に増肉部21が付加されて、ディスク2の周方向Xの幅T2が長フィン3aの幅T1より幅広に形成されている。
【0068】
このブレーキロータ20では、ブレーキロータ10と同様、ディスク2の剛性がブレーキロータ1と比べて大きくなるので、重根が分離する直径6節モードは、分離した重根の一対の波W1,W2の周波数が何れも、ブレーキロータ1と比べて高周波数側へシフトする。
【0069】
しかも、ブレーキロータ20では、ディスク2の剛性向上部位による作用が、分離した重根の一対の波W1,W2に均等に働くため、重根の一対の波W1,W2は、離間周波数がブレーキロータ1とほぼ同等のまま、周波数が何れも、ブレーキロータ1と比べて高周波数側へシフトする。従って、ブレーキロータ10と比べて重根の離間周波数を大きくとることができる。
【0070】
以上説明したブレーキロータ20では、ブレーキロータ10と同様、ディスク2の摺動面2aに発生する粗密波W3と、分離した重根の一対の波W1,W2の一方とがブレーキロータ1では周波数接近して連成する場合であっても、前記一対の波W1,W2の周波数を高周波数側へシフトさせることによって、前記連成を防止することができ、その結果、粗密波W3に起因するブレーキ鳴きを抑制することができる。
【0071】
しかも、ブレーキロータ20では、ブレーキロータ10と比べて重根の離間周波数を大きくとれるので、ブレーキロータ10と比べて、重根に起因する制動時の連成振動が起こりにくくなり、空間固定モードが発生しにくくなって、重根に起因するブレーキ鳴きの抑制効果が大きくなる。
【0072】
なお、ブレーキロータ20でも、ブレーキロータ1,10と同様、各組3枚のフィン3a,3dのうち連続する2枚の短フィン3dが、通風上流側の先端部を除去されているので、図13図示の従来品と比べて、冷却風R入り口側の開口面積が広く、冷却性能が向上するのは勿論のことである。
【0073】
図6は、以上説明したブレーキロータ1,10,20における直径6節モードの重根分離の相違を示す説明図である。図6に示すように、従来品では、重根は分離されていない。このため、従来品では、制動時におけるブレーキパッドの剛性による重根分離によって、分離した重根の連成振動が起こり易く、空間固定モードが発生してブレーキ鳴きが生じ易い。
【0074】
第1実施形態のブレーキロータ1では、短フィン3bを周期的に設けたことによるディスク2の周期的な低剛性化により、直径6節モードの重根は分離されている。そして、制動時には、ブレーキパッドの剛性によって、分離した重根は何れも高周波数側へシフトする。
【0075】
第2実施形態のブレーキロータ10では、ブレーキロータ1と比べて、分離した重根が何れも高周波数側へシフトしており、第3実施形態のブレーキロータ20では、分離した重根は、ブレーキロータ1とほぼ同じ離間周波数のまま、ブレーキロータ1と比べて高周波数側へ何れもシフトしている。
【0076】
なお、図7に示すように、3枚一組のフィン3a,3bの配列を長フィン3a,長フィン3a,短フィン3bとする場合も考えられ、この場合は、図6に示すようにブレーキロータ20と比べて重根の離間周波数が拡大するものの、長フィン3a間の冷却風Rの流速が遅くなるため、冷却性能上好ましくない。
【0077】
ところで、直径6節モードの重根における一対の波W1,W2は、制動時には、ブレーキパッドの剛性によって高周波数側へシフトするが、粗密波W3は、ブレーキパッドの押圧方向と直交する方向の波動であるため、制動による周波数変化はない。従って、ブレーキロータ1,10,20の何れを採用するかは、制動時のブレーキパッドの剛性による前記一対の波W1,W2の周波数の移動量に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0078】
なお、以上説明したブレーキロータ1,10,20では、長フィン3a,短フィン2b(2c,2d),短フィン2b(2c,2d)の3枚を一組として、12組36枚のフィン3a,2b(2c,2d)を設けたため、直径6節モードにおける重根の一方の波W1の腹と、他方の波W2の節とが、従来品と比べて剛性が小さい低剛性部位に位置することになり、前記一方の波W1の周波数が低周波数側へシフトして、直径6節モードの重根が分離し、その結果、直径6節モードに起因するブレーキ鳴きを抑制している。
【0079】
従って、14組42枚のフィン3a,2b(2c,2d)を設けることにより、直径7節モードにおける重根の一方の波W1の腹と、他方の波W2の節とを、従来品と比べて剛性が小さい低剛性部位に位置させ、前記一方の波W1の周波数を低周波数側へシフトさせて、直径7節モードの重根を分離し、その結果、直径7節モードに起因するブレーキ鳴きを抑制することは勿論可能である。
【0080】
同様に、16組48枚のフィン3a,2b(2c,2d)を設けることにより、直径8節モードの重根を分離して、直径8節モードに起因するブレーキ鳴きを抑制することも勿論可能であり、3枚一組のフィン3a,2b(2c,2d)を更に偶数組設けることにより、直径9節モード以上のモードの重根を分離して、直径9節モード以上のモードに起因するブレーキ鳴きを抑制することも勿論可能である。
【0081】
しかし、直径9節モード以上のモードの重根を分離する場合には、フィン3a,2b(2c,2d)間の幅が極端に狭くなって冷却性能の悪化が生じるので、直径8節モードの重根を分離するための16組48枚程度までのフィン3a,2b(2c,2d)数が現実的であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の一例を示す説明図である。
【図2】図1に示すものの一部を展開した説明図である。
【図3】第2実施形態の一例を示す説明図である。
【図4】ブレーキロータの摺動面に発生する粗密波を示す説明図である。
【図5】第3実施形態の一例を示す説明図である。
【図6】第1〜第3の各実施形態における直径6節モードの重根分離の相違を示す説明図である。
【図7】本発明で採用しなかった実施形態の一例を示す説明図である。
【図8】従来品の一例を示す断面図である。
【図9】図8中のブレーキパッドを示す正面図である。
【図10】図8中のブレーキロータを示す斜視図である。
【図11】ブレーキロータの振動固有モードの一例を示す説明図である。
【図12】ブレーキロータの振動固有モードの他の一例を示す説明図である。
【図13】従来品の一例を示す説明図である。
【図14】直径節モードの次数と制動時における重根の離間周波数との関係を示すグラフである。
【図15】低次の直径節モードに対するブレーキパッドの影響を示す説明図である。
【図16】高次の直径節モードに対するブレーキパッドの影響を示す説明図である。
【符号の説明】
1,10,20 ブレーキロータ
2 ディスク
3a 長フィン
3b,3c,3d 短フィン
4 ベンチホール
T1 長フィンの幅
T2 短フィンの幅
R 冷却風(通風)
X ディスク周方向
Claims (7)
- ブレーキパッド用の摺動面を形成して互いに対向する2枚のディスク間に、ディスク径方向へ沿って放射状に延びる複数のフィンをディスク周方向へ均等に配設して、隣接するフィン間に通風用のベンチホールを形成したブレーキロータにおいて、前記フィンは、ディスク周方向へ連続する3枚を一組として偶数組が設けられ、各組3枚中の連続する2枚が通風上流側の先端部を除去された短フィンであって、残り1枚がディスク径方向へ相対的に長い長フィンであり、各組における前記長フィンと短フィンの配列が同一とされており、かつ、これらの長フィン及び短フィンは共に、前記2枚のディスクが対面する部位内に配設されていることを特徴とするブレーキロータ。
- 請求項1記載のブレーキロータであって、
前記短フィンは、前記長フィンよりディスク周方向へ幅広に形成されていることを特徴とするブレーキロータ。 - 請求項1記載のブレーキロータであって、
前記短フィンは、隣接する前記長フィン側が増肉されて、前記長フィンよりディスク周方向へ幅広に形成されていることを特徴とするブレーキロータ。 - 請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、
前記フィンは、総数が36枚であることを特徴とするブレーキロータ。 - 請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、
前記フィンは、総数が42枚であることを特徴とするブレーキロータ。 - 請求項1〜3の何れかに記載のブレーキロータであって、
前記フィンは、総数が48枚であることを特徴とするブレーキロータ。 - 請求項1〜6の何れかに記載のブレーキロータであって、
前記長フィン及び短フィンのディスク径方向の一端を前記ディスクの外周端に一致させ、前記長フィンのディスク径方向の他端側で冷却用の前記通風をガイドすることを特徴とするブレーキロータ。
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