JP3837658B2 - 建物の構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば高層ないし超高層集合住宅に適用して好適な建物の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、RC造やS造、SRC造の建物の構造としては、柱と梁とを剛接合するラーメン構造が最も一般的であるが、ラーメン構造では柱形や梁形が室内に大きく突出することが通常であるし、構造計画上の制約も多く設計の自由度は必ずしも高いものではない。特に、ラーメン構造により超高層集合住宅を計画する場合には、柱断面や梁断面が必然的に大きくなるので室内空間の有効率や使用勝手を大きく損なう場合が多いし、スパン割りや開口部の位置、大きさ等にも制約があり、快適な住環境を創出することは容易ではない。
【0003】
そのため、近年、筒状の構造体であるチューブ架構を主架構とするチューブ構造の提案がなされている。これはたとえば図3に示すように、建物の外周に位置する外周チューブ架構1と、その内側に実質的に同軸的に設けられた内周チューブ架構2と、さらにその内側に設けられたコアチューブ架構3とによる三重のチューブ架構を有するものであり、このような構造によれば各階のスラブを無梁のスラブ構造として梁を無くすことが可能であるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようなチューブ構造においても梁を完全に無くすことは困難であって、従来においては図3に示しているように少なくとも隅部においては梁4を残すようにしている。そのため、隅部も含めて梁を完全に無くすことの可能なより有効な構造が模索されているのが実情である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記事情に鑑み、本発明は、筒状の構造体であるチューブ架構を主架構として構築される建物の構造であって、当該建物の外周に位置する外周チューブ架構と、その内側に実質的に同軸的に設けられた内周チューブ架構と、さらにその内側に設けられたコアチューブ架構とによる三重のチューブ架構からなり、各階のスラブとして無梁のスラブ構造を採用するとともに、外周チューブ架構と内周チューブ架構との間に設ける外周スラブの配筋を、外周チューブ架構および内周チューブ架構に添う連続した帯状の領域をそれぞれ柱列帯配筋領域として設定しかつそれら柱列帯配筋領域の間の連続した帯状の領域を柱間帯配筋領域として設定して行って、前記柱列帯配筋領域における配筋を前記柱間帯配筋領域よりも増強し、しかも外周スラブの隅部の領域における配筋を前記柱列帯配筋領域よりもさらに増強して、外周スラブを完全無梁スラブとしてなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1および図2に示す。本実施形態の構造は、図3に示した従来のチューブ構造においては設けられていた隅部の梁4を省略したものとなっている。すなわち、本実施形態の構造は、図1に示すように、外周チューブ架構1と、内周チューブ架構2と、コアチューブ架構3のみによる三重のチューブ架構からなり、各階のスラブは完全に無梁のフラットスラブとして梁が一切省略されたものとなっている。
【0007】
但し、単に梁を省略しただけでは建物全体の剛性が低下し、スラブの長期撓みが過大となる懸念があるので、本実施形態ではそれを補償するように、図2に示すように外周チューブ架構1と内周チューブ架構2との間に設けられる外周スラブ5の配筋を従来よりも増強するものとしている。なお、図1では外周チューブ架構1と内周チューブ架構2のスパン割りが異なり、外周チューブ架構1は隅柱を有していないが、図2では双方のスパン割りが揃えられ、外周チューブ架構1は隅柱を有しているが、両者に実質的な差はない。
【0008】
図2は外周スラブ5におけるX方向の配筋の概要を示すもので、外周チューブ架構1および内周チューブ架構2のX方向の架構に添う帯状の領域(図示の▲2▼▲4▼の範囲)をそれぞれ柱列帯配筋領域6として設定し、それらの間の領域(図示の▲3▼▲5▼の範囲)を柱間帯配筋領域7として設定し、その他の領域(図示の▲1▼の範囲)は通常の配筋領域8として設定している。また、隅部のスパン(図示の▲2▼▲3▼の範囲)における配筋を他のスパン(図示の▲1▼▲4▼▲5▼の範囲)よりも増強するようにしている。
【0009】
より具体的な配筋設計例を挙げれば、図2(a)に示すような架構において、図2(b)に示すように外周スラブ5のスラブ厚を250mmとし、鉄筋間隔を全て150mmとして、X方向配筋を、領域(1)においては一方向版として算定して上筋をD16、下筋をD13としている。同様に、領域(2)では柱列帯配筋として長期撓み量により断面を算定して上筋、下筋ともにD13およびD16(交互配筋)とし、領域(3)では柱間帯配筋として長期撓み量により断面を算定して上筋、下筋ともにD13およびD16とし、領域(4)では柱列帯配筋として上筋をD13、下筋をD10とし、領域(5)では柱間帯配筋として上筋、下筋ともにD10としている。つまり、柱列帯配筋領域である領域 (4) は柱間帯配筋領域 (5) よりも配筋が増強され、隅部の領域 (2) および領域 (3) では領域 (4) よりもさらに配筋が増強されている。また、Y方向配筋は、上記のX方向配筋をそのまま図2中の軸線Oに対して対称的な配筋とし、それをX方向配筋に重ねることとする。
【0010】
本実施形態の構造によれば、上記のように外周スラブ5を柱列帯配筋領域6と柱間帯配筋領域7およびその他の配筋領域8に区分してそれぞれ適正な配筋を行い、かつ隅部のスパンにおける配筋を他のスパンよりも増強したことにより、建物全体の剛性を確保し、かつ外周スラブ5の長期撓み量を許容限度内(ひび割れ、クリープ、乾燥収縮を考慮した場合における基準値であるスパン長の1/400以下かつ20mm以下)に抑制しつつ、従来においては必要とされていた梁4(図3参照)を省略することが可能である。したがって、本実施形態の構造によれば、梁を完全に無くすことにより建築計画上および設備計画上の自由度が高まり、特に高層集合住宅に適用することでより快適な室内環境が得られる。また、梁を完全に無くすことで躯体形状が単純化されて施工性が向上するばかりでなく、試算によれば図3に示した梁4を設ける場合に比較して鉄筋量は若干増大するものの、梁施工に要する型枠工事を削減できることから総合的にはコストダウンを図ることも可能である。
【0011】
なお、上記実施形態はあくまで一例であって、本発明は上記実施形態に限定されることなく、建物の規模、形態、配筋その他の具体的構成は適宜の変更、応用が可能であることはいうまでもない。
【0012】
【発明の効果】
本発明の構造は、外周チューブ架構と内周チューブ架構との間に設ける外周スラブとして無梁のスラブ構造を採用し、その外周スラブに柱列帯配筋領域と柱間帯配筋領域を設定して各領域に適正な配筋を行い、かつ隅部のスパンにおける配筋を他のスパンよりも増強したので、建物全体の剛性を確保しかつ外周スラブの長期撓み量を許容限度内に抑制しつつ梁を完全に無くすことが可能となり、その結果、計画上の自由度が高まり、躯体形状が単純化されることで施工性が向上し、コストダウンを図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構造の実施形態を示す図である。
【図2】 同、外周スラブの配筋設計例(X方向)を示す図である。
【図3】 チューブ構造の例を示す図である。
【符号の説明】
1 外周チューブ架構
2 内周チューブ架構
3 コアチューブ架構
5 外周スラブ
6 柱列帯配筋領域
7 柱間帯配筋領域
Claims (1)
- 筒状の構造体であるチューブ架構を主架構として構築される建物の構造であって、
当該建物の外周に位置する外周チューブ架構と、その内側に実質的に同軸的に設けられた内周チューブ架構と、さらにその内側に設けられたコアチューブ架構とによる三重のチューブ架構からなり、
各階のスラブとして無梁のスラブ構造を採用するとともに、
外周チューブ架構と内周チューブ架構との間に設ける外周スラブの配筋を、外周チューブ架構および内周チューブ架構に添う連続した帯状の領域をそれぞれ柱列帯配筋領域として設定しかつそれら柱列帯配筋領域の間の連続した帯状の領域を柱間帯配筋領域として設定して行って、前記柱列帯配筋領域における配筋を前記柱間帯配筋領域よりも増強し、
しかも外周スラブの隅部の領域における配筋を前記柱列帯配筋領域よりもさらに増強して、外周スラブを完全無梁スラブとしてなることを特徴とする建物の構造。
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- 2002-01-10 JP JP2002003682A patent/JP3837658B2/ja not_active Expired - Fee Related
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