JP3813434B2 - 基板剥離装置および基板剥離方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子などに用いられる柔軟性薄板状基板を、物体上に貼着された状態から剥離する基板剥離装置および基板剥離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
柔軟性薄板状基板が使用される例として液晶表示素子が挙げられる。液晶表示素子の基板としては、元来、ガラスが用いられるのが一般的であったが、液晶表示素子の薄型化や軽量化が図られる中で、新たにプラスチック基板などの柔軟性薄板状基板の使用が実用化されている。しかし、柔軟性薄板状基板は剛性が低いため、加工の内容によっては単体での処理に耐え難いという問題点がある。そこで、その解決策の一例として、本件出願人は先に特開平8−086993号公報において、柔軟性薄板状基板を補助治具上に粘着シートにより貼着した状態で加工工程を通過させ、その後、この柔軟性薄板状基板を補助治具から剥離することを開示している。
【0003】
また、上記補助治具上に貼着した柔軟性薄板状基板を剥離する装置として、本件出願人は先に特開平8−108966号公報において、補助治具と柔軟性薄板状基板との間に剥離力付与手段を配し、該剥離力付与手段を補助治具と基板との貼着面に沿って移動させて剥離する基板剥離装置を開示している。その剥離力付与手段の具体的構成として、圧縮流体を噴射するエアナイフ、片刃くさび、および回転ローラを明示している。図7に、剥離力付与手段を回転ローラとした場合の剥離動作を説明する模式図を示す。回転ローラ71は、柔軟性薄板状基板11と補助治具72上に貼着された粘着シートなどの貼着手段73との間に配されて、矢印A方向に回転しながら矢印B方向に進行して、柔軟性薄板状基板11を貼着手段73から捲くり上げて引き剥がすものである。
【0004】
また、上記公報では柔軟性薄板状基板11の一端を挟んで斜め上方に引き上げるクランプ機構によって剥離する構成についても開示しているが、このクランプ機構については、上記公報の他にも各種の提案がなされている。例えば特開平7−315682号公報にはクランプを行うチャッキング部の爪形状に特徴を持たせたフィルム剥離装置が開示されている。図8に、該フィルム剥離装置の構成および動作説明図を示す。同図(a)に示すようにチャッキング部は爪84、ガイド85、シャフト86、および押さえ板87で構成され、被着体82上に接着剤層83により貼着された剥離フィルム81を接着剤層83から剥離する際、同図(b)に示すように剥離フィルム81の端部に押さえ板87の端部が合致する位置で押さえ板87を剥離フィルム81に当接させる。
【0005】
次いで、同図(c)に示すように図示しない駆動機器によりシャフト86をガイド85内でスライド移動させ、シャフト86に連結された爪84と押さえ板87とで剥離フィルム81の一端を挟む。そして、同図(d)に示すように挟んだ部分を他端側へ引っ張り、剥離フィルム81を剥離して、被着体82上に接着剤層83を残す。上記構成において、爪84および押さえ板87のそれぞれを、フィルム挟持部分で互いに嵌合するようにテーパーまたは曲線部を有する先端形状としていることに特徴がある。また、上記動作において、挟んだ部分を押さえ板87の当接面に対して10°〜45°の方向に引っ張ることに特徴がある。
【0006】
また、クランプ機構を用いる別の従来技術として、図9に特開平9−309664号公報に開示されている保護シート剥離装置の構成および動作説明図を示す。該保護シート剥離装置は突き当て部材93、エアノズル94、およびチャック爪95・96を備え、被保護部材91の表面に貼られた保護シート92の一端を突き当て部材93とエアノズル94とで捲くり起こし、チャック爪95・96で挟持して保護シート92を剥離するものである。
【0007】
剥離動作は6つのステップで行われる。ステップ1では同図(a)に示すように、保護シート92の一端に対して上方から突き当て部材93を移動させてその先端部を押し付ける。ステップ2では同図(b)に示すように、突き当て部材93を、先端部を保護シート92に押し付けた状態で保護シート92の表面内側に移動させることにより、保護シート92に部分的に剥離された箇所を作る。この後、突き当て部材93を保護シート92から離す。
【0008】
ステップ3では同図(c)に示すように、突き当て部材93に代えてエアノズル94およびチャック爪95・96を配置し、ステップ4では同図(d)に示すように、エアノズル94から噴出する圧縮空気により、保護シート92の部分的に剥離された箇所を一方のチャック爪95の内面側に捲くり起こす。ステップ5では同図(e)に示すようにチャック爪96をチャック爪95側に移動させて、保護シート92の捲くり起こした端部を挟持し、ステップ6では同図(f)に示すように、保護シート92を挟持したままチャック爪95・96を矢印Cで示すように上方または斜め上方に移動させて保護シート92を剥離する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
治具から剥離する柔軟性薄板状基板が液晶表示素子の基板であるというような場合には、剥離力を充分に加えてただ単に治具から剥離しさえすればよいというものではなく、下記の要件を満足するように剥離を行わなければならない。
(1)基板上に形成された配向膜などの薄膜は極めて表面硬度が低いため、剥離の際に、薄膜が形成されている、貼着面と反対側の面に、極力接触しないこと。(2)治具に貼着されていた側の面に極力傷を付けないこと。
(3)基板上に形成された透明電極にはITOなどの金属酸化膜が用いられるが、膜の柔軟性に乏しく、基板が一定量以上湾曲すると膜が破断するため、生産工程中の基板の湾曲を一定量以下に制限すること。
(4)柔軟性薄板状基板は一定量以上の張力が加わると基板自体が伸び、電極パターンなどの変形を誘発するため、生産工程中に加わる基板への負荷重を一定量以下に制限すること。
【0010】
前述した従来の基板剥離装置のうち、クランプ機構以外を用いるものはいずれも上記(1)および(2)の要件を満足している。また、クランプ機構を用いるものは、クランプを行う柔軟性薄板状基板の端部を除いて、基板の貼着面と反対側の面への接触および貼着されていた面での傷の発生が防止されるので、これらは(1)および(2)の要件を満足していると言える。しかしながら、上記のいずれの基板剥離装置も基板の湾曲および基板への負荷重の量を制御する構成とはなっていないので、剥離工程において(3)および(4)の要件を満足していない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた側の面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離装置および基板剥離方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の基板剥離装置は、上記課題を解決するために、物体上に貼着された柔軟性薄板状基板を上記物体から剥離する基板剥離装置において、上記柔軟性薄板状基板の端部を保持するとともに上記物体の位置に対して保持位置を変化させることが可能な保持手段と、上記保持手段が上記保持位置を変化させることによって上記端部付近が所定の剥離進行方向に剥離された上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触して上記柔軟性薄板状基板の剥離を進行させる剥離進行手段とを有し、上記剥離進行手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記剥離進行手段との接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように剥離を進行させ、上記保持手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させることを特徴としている。
【0013】
上記の発明によれば、保持手段が柔軟性薄板状基板の端部を保持し、保持位置を変化させることにより端部付近を所定の剥離進行方向に剥離する。剥離進行手段はこれを剥離開始とし、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触して上記柔軟性薄板状基板の剥離を進行させる。剥離進行に際しては、柔軟性薄板状基板の剥離進行手段との接触箇所が受ける合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるようにする。また、剥離進行中には保持手段によって、上記接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように保持位置を変化させる。すなわち、上記接触箇所から端部までを弛ませ過ぎないように、かつ、引っ張り過ぎないように適度な張力を与える。
【0014】
以上により、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離装置を提供することができる。
【0015】
さらに本発明の基板剥離装置は、上記課題を解決するために、上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記剥離進行手段は、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることを特徴としている。
【0016】
上記の発明によれば、柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、柔軟性薄板状基板の剥離進行手段との接触箇所が受ける合力の貼着面に垂直な成分が剥離力として作用するので、剥離進行手段によって上記合力が上記接触箇所を貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることで、柔軟性薄板状基板を効率よく剥離することができる。
【0017】
さらに本発明の基板剥離装置は、上記課題を解決するために、上記保持手段は、上記端部を表裏両側から挟持するチャック爪、上記チャック爪を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行に支持するチャック爪支持軸、および上記チャック爪の挟持動作を制御するチャック爪制御部を備えるチャッキング手段と、上記チャック爪支持軸を、上記チャック爪支持軸を法線とする平面上の一直線方向に往復移動させる第1移動手段と、上記チャック爪支持軸を上記平面上で上記第1移動手段の往復移動方向と直交する方向に往復移動させる第2移動手段と、上記チャック爪支持軸を回転軸として上記チャック爪を回転させるチャック爪回転手段と、を有していることを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、保持手段にチャッキング手段、第1移動手段、第2移動手段、および回転手段を備える。チャッキング手段はチャック爪によって柔軟性薄板状基板の端部を表裏両側から挟持することにより上記端部を保持し、チャック爪をチャック爪支持軸によって、上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行な方向に支持するとともに、チャック爪制御部によってチャック爪の挟持動作を制御する。そして、第1移動手段および第2移動手段によるチャック爪支持軸の直線往復移動により、チャック爪の位置、すなわち保持位置をチャック爪支持軸を法線とする平面上で2次元的に移動させる。さらに、チャック爪回転手段によってチャック爪支持軸を回転軸とするチャック爪の回転を行い、チャック爪の挟持面の貼着面に対する角度を変化させ、これによっても保持位置を変化させる。
【0019】
このように3軸制御によって2次元的な移動と回転移動とを行うことにより、柔軟性薄板状基板の接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるような保持位置の移動軌跡を、容易に実現することができる。
【0020】
さらに本発明の基板剥離装置は、上記課題を解決するために、上記剥離進行手段は、上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸が上記剥離進行方向に移動するとともに、上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転しながら周面が上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させるローラを有しており、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度が設定されていることを特徴としている。
【0021】
上記の発明によれば、剥離進行手段に、剥離進行方向と垂直で柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸が剥離進行方向に移動するとともに、柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転しながら周面が柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させるローラ、すなわち柔軟性薄板状基板を周面で捲くり上げながら進行するローラを備える。
【0022】
この場合、柔軟性薄板状基板のローラとの接触箇所が受ける合力は、ローラが剥離進行方向に加える力と、ローラが回転方向に加える力と、柔軟性薄板状基板が捲くり上げられて湾曲している状態から元の形状に復元しようとする反発力との合成力となる。従って、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、ローラの半径、回転軸の剥離進行方向への移動速度、およびローラの回転速度を設定する。
【0023】
これにより、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を許容範囲内とする剥離進行手段を、少ないパラメータの設定により容易に実現することができる。
【0024】
さらに本発明の基板剥離装置は、上記課題を解決するために、上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定が行われていることを特徴としている。
【0025】
上記の発明によれば、ローラの回転軸の剥離進行方向への移動速度と、ローラの周面の回転線速度とが略等しい状態で剥離を進行させるので、柔軟性薄板状基板とローラとの接触箇所において柔軟性薄板状基板に余分な張力を与えずにすむ。また、上記接触箇所において余分な滑りが発生しないので、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に傷および汚れが発生する虞を非常に小さくすることができる。
【0026】
また、本発明の基板剥離方法は、上記課題を解決するために、物体上に貼着された柔軟性薄板状基板を上記物体から剥離する基板剥離方法において、上記柔軟性薄板状基板の端部を保持し、保持位置を変化させることによって上記端部付近を所定の剥離進行方向に剥離開始し、上記端部付近が剥離された上記柔軟性薄板状基板の裏面に滑らかに接触力を加えるとともに、上記柔軟性薄板状基板の接触力を受ける接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように上記接触箇所と剥離進行の速度とを設定した状態で剥離を進行させ、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させることを特徴としている。
【0027】
上記の発明によれば、柔軟性薄板状基板の端部を保持し、保持位置を変化させることにより端部付近を所定の剥離進行方向に剥離する。これを剥離開始とし、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触力を加えて上記柔軟性薄板状基板の剥離を進行させる。剥離進行に際して柔軟性薄板状基板の接触箇所が受ける合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、上記接触箇所と剥離進行の速度とを設定する。また、剥離進行中には上記接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように端部の保持位置を変化させる。すなわち、上記接触箇所から端部までを弛ませ過ぎないように、かつ、引っ張り過ぎないように適度な張力を与える。
【0028】
以上により、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離方法を提供することができる。
【0029】
さらに本発明の基板剥離方法は、上記課題を解決するために、上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることを特徴としている。
【0030】
上記の発明によれば、柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、柔軟性薄板状基板の接触箇所が受ける合力の貼着面に垂直な成分が剥離力として作用するので、上記合力が上記接触箇所を貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることで、柔軟性薄板状基板を効率よく剥離することができる。
【0031】
さらに本発明の基板剥離方法は、上記課題を解決するために、上記端部を表裏両側から挟持することによって保持し、保持箇所を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行な方向に軸で支持しながら上記保持箇所の挟持動作を制御し、上記保持位置を、上記保持箇所の上記軸を法線とする平面上の一直線方向への往復移動と、上記平面上の上記一直線方向と直交する方向への往復移動と、上記保持箇所の上記軸を回転軸とする回転とによって変化させることを特徴としている。
【0032】
上記の発明によれば、柔軟性薄板状基板の端部を表裏両側から挟持することにより上記端部を保持し、保持箇所を剥離進行方向と垂直で挟持面に平行な方向に軸で支持しながら挟持動作を制御する。そして、上記保持箇所の軸を法線とする平面上で2つの直交する方向に往復移動させることにより、保持位置を2次元的に移動させる。さらに、上記軸を回転軸として保持箇所を回転させ、保持箇所の挟持面の貼着面に対する角度を変化させ、これによっても保持位置を変化させる。
【0033】
このように3軸制御によって2次元的な移動と回転移動とを行うことにより、柔軟性薄板状基板の接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるような保持位置の移動軌跡を、容易に実現することができる。
【0034】
さらに本発明の基板剥離方法は、上記課題を解決するために、上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸を有するローラの上記回転軸を上記剥離進行方向に移動させるとともに、上記ローラを上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転させながら周面を上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触させることにより剥離を進行させ、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度を設定することを特徴としている。
【0035】
上記の発明によれば、剥離進行方向と垂直で柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸を有するローラを剥離進行方向に移動させるとともに、柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転させながら周面が柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させる。
【0036】
この場合、柔軟性薄板状基板のローラとの接触箇所が受ける合力は、ローラが剥離進行方向に加える力と、ローラが回転方向に加える力と、柔軟性薄板状基板が捲くり上げられて湾曲している状態から元の形状に復元しようとする反発力との合成力となる。従って、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、ローラの半径、回転軸の剥離進行方向への移動速度、およびローラの回転速度を設定する。
【0037】
これにより、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を、少ないパラメータの設定により容易に許容範囲内とすることができる。
【0038】
さらに本発明の基板剥離方法は、上記課題を解決するために、上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定を行うことを特徴としている。
【0039】
上記の発明によれば、ローラの回転軸の剥離進行方向への移動速度と、ローラの周面の回転線速度とが略等しい状態で剥離を進行させるので、柔軟性薄板状基板とローラとの接触箇所において柔軟性薄板状基板に余分な張力を与えずにすむ。また、上記接触箇所において余分な滑りが発生しないので、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に傷および汚れが発生する虞を非常に小さくすることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明の基板剥離装置および基板剥離方法を具現する一実施の形態について、図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0041】
図1に本実施の形態に係る基板剥離装置1の構成を示す。基板剥離装置1は、基台部2、基板保持部3、および剥離進行部4を備えており、補助治具12上に貼着され、所定の加工工程を経た柔軟性薄板状基板11を基台部2に固定し、基板保持部3で柔軟性薄板状基板11の端部を保持しながら剥離進行部4で剥離を進行させる。
【0042】
基台部2は基板ステージ18、位置決め部品19、およびステージベース部20を備えている。基板ステージ18は上面に、補助治具12上に柔軟性薄板状基板11が貼着されたもの(以下、ワークと称する)を載置するステージである。位置決め部品19は、基板ステージ18を移動可能に支持する矩形で平坦なステージベース板20aから上方に突出する複数の部材であり、ワークの載置された基板ステージ18が押し当てられることによりワークの位置決めを行う。ステージベース部20は、上記ステージベース板20aと、ステージベース板20aを基板剥離装置1の載置台上で中空に支持する複数の支持部材20b…とを備えている。また、ワークは真空吸着により基板ステージ18に固定されるようになっている。図1では、平板状で矩形板状のワーク、さらに詳細には矩形平板状の補助治具12の面上に矩形平板状の柔軟性薄板状基板11が貼着されたもの、すなわち貼着面が平面状であるワークが、基板ステージ18に固定され、端辺がステージベース板20の端辺に対して45°旋回した位置でセットされた状態が示されている。
【0043】
基板保持部3は、チャック部13、チャッキング機構部14、チャック回転機構部15、チャック昇降機構部16、およびチャック前進後退機構部17を備えている。チャック部13は図2に示すようにチャック爪24・25の2個の部品からなり、該チャック爪24・25でワークの柔軟性薄板状基板11の端部を表裏両面から挟持する。このうちチャック爪24は、挟持する位置で上記端部の面と垂直になる平板状部分24aと、該平板状部分24aの下面側に設けられ上記端部への当接面を有する突起部分24bとからなり、柔軟性薄板状基板11の上面との当接および離間を行う。また、チャック爪25は、チャック爪24と平行な平板状部分25aと、該平板状部分25aからチャック爪24側に直角に折れ曲がるように設けられ内面側が上記突起部分24bの当接面と平行となる屈曲部分25bとからなる略L字板状をなし、柔軟性薄板状基板11の下面との当接および離間を行う。同図(a)では、チャック爪25の位置が固定されたままチャック爪24が図示しないチャック爪制御部によって、柔軟性薄板状基板11面に垂直な矢印D方向に往復移動されることにより、チャック部13が柔軟性薄板状基板11の端部の挟持動作を行うようになっている。
【0044】
ここでは、ワークの補助治具12が、同図(b)に示すように補助治具基材27上に粘着シートなどの貼着部材28が形成され、かつ、同図(a)に示すように一つの角部にコーナーカット26が施されていて、該コーナーカット26から柔軟性薄板状基板11の角部がチャック部13に挟持される端部として突き出ている状態である。上記チャック部13は、このようなワークに対して、丁度人の手の親指と人指し指とで上方から柔軟性薄板状基板11の角部を摘むことができるような構成である。この構成は、チャック部13の後述する動作には都合のよいものであるが、別の形状であっても構わない。
【0045】
図1においてチャッキング機構部14は、チャック爪24・25の挟持側と反対側の端部を、柔軟性薄板状基板11の剥離を進行させようとする方向(以下、剥離進行方向と称する)と垂直、例えば同図では直線方向である剥離進行方向E(図中y軸方向)と垂直でチャック爪24・25の挟持面と平行な方向(図中x軸方向)に伸びるチャック爪支持軸15aに接続している。これによりチャッキング機構部14は、チャック部13をこれを駆動する側と連結しており、前述の図示しないチャック爪制御部からのチャック爪24・25の挟持動作、後述するチャック回転機構部15からのチャック部13の回転動作、チャック昇降機構部16からのチャック部13の昇降動作、およびチャック前進後退機構部17からのチャック部13の前進後退動作が与えられる。
【0046】
上記チャック爪支持軸15aはチャック回転機構部15の一部であって、チャック回転機構部15は図示しない駆動源によりチャック爪支持軸15aを回転軸としてチャック爪24・25を自在に回転させる機構である。また、チャック回転機構部15は、これに固定的に設けられるとともにチャック爪支持軸15aのチャック部13と反対側の向き(同図ではx軸の正の向き)に伸びる支持部材16aによって、チャック昇降機構部16に接続されている。チャック昇降機構部16は上記支持部材16aと、上下の直線方向(図中z軸方向)に沿って2つのガイド溝が形成されたガイド部16bと、ガイド部16bを駆動する駆動源16cとを有していて、ガイド部16bが支持部材16aの一端をガイド溝を通して保持している。このチャック昇降機構部16は、駆動源16cからの駆動力でガイド部16bにより支持部材16aをガイド溝に沿って昇降させることにより、チャック回転機構部15を上下方向(z軸方向)に自在に往復移動させる、すなわちチャック部13を該方向に自在に往復移動させる機構である。
【0047】
さらに、チャック昇降機構部16は、ガイド部16bのガイド溝が設けられている面と反対側の面に固定的に設けられた支持部材17aによって、チャック前進後退機構部17に接続されている。チャック前進後退機構部17は上記支持部材17aと、剥離進行方向E(y軸方向)に沿って2つのガイド溝が形成されたガイド部17bと、ガイド部17bを駆動する駆動源17cとを備えていて、ガイド部17bが支持部材17aの一端をガイド溝を通して保持している。さらにチャック前進後退機構部17は基板剥離装置1の載置台上でガイド部17bを中空に支持する複数の支持部材17d…を備えている。このチャック前進後退機構部17は、駆動源17cからの駆動力でガイド部17bにより支持部材17aをガイド溝に沿って剥離進行方向Eと平行に前進後退させることにより、チャック昇降機構部16を剥離進行方向E(y軸方向)と平行に自在に往復移動させる、すなわちチャック部13を該方向に自在に往復移動させる機構である。
【0048】
このように、基板保持部3はx軸、y軸、およびz軸の3軸でチャック部13の移動制御を行う3軸制御ロボットであり、チャック回転機構部15によるチャック部13の回転動作、チャック昇降機構部16によるチャック部13の昇降動作、およびチャック前進後退機構部17によるチャック部13の前進後退動作、さらにはチャック爪24・25の挟持動作をそれぞれ独立なプログラムで実行するものである。なお、機械上の干渉を避ける目的でチャック前進後退機構部17を基体として、それにチャック昇降機構部16を取り付ける配置としたが、機械上の干渉さえなければ、その配置は別のものであってもよい。
【0049】
次に、図1において剥離進行部4は、剥離用ローラ21、回転機構部22、およびローラ前進後退機構部23を備えている。剥離用ローラ21は、x軸方向に伸びる回転軸、すなわち剥離進行方向Eと垂直で柔軟性薄板状基板11の貼着面に平行な回転軸を有し、後述する所定の半径でステージベース板20aの上方をx軸方向にまたがる長さに形成されている。回転機構部22は剥離用ローラ21を回転駆動する機構であり、剥離用ローラ21の回転軸の一端、同図ではx軸の負方向側の端部を保持するとともに該端部から回転駆動力を与え、剥離用ローラ21の他端、同図ではx軸の正方向側の端部を回転軸受けで保持している。またこの保持高さを、剥離用ローラ21の下端が補助治具12の上面よりも上方で、かつ、周面が剥離進行する柔軟性薄板状基板11の貼着されていた面と接触する所定高さとしている。さらに、回転機構部22の剥離用ローラ21の両端を保持している箇所は、ステージベース板20aの下方の空間で剥離用ローラ21の回転軸と平行なブラケット22aにより連結されている。
【0050】
ローラ前進後退機構部23はステージベース板20aの下面に設けられている。回転機構部22のブラケット22aはこのローラ前進後退機構部23に取り付けられており、ローラ前進後退機構部23は、上記ブラケット22aをチャック部13の前進後退軸と平行(y軸と平行)に、すなわち基板ステージ18に対して45°の相対角で一軸移動させることにより、剥離用ローラ21全体を回転とは別に一軸移動させる。なお、ローラ前進後退機構部23の配置は機械上の干渉さえなければ上述のものと別のものであってもよい。さらに、基板ステージ18の角度をチャック部13の前進後退軸および剥離用ローラ21の前進後退軸に対して45°の角度としたが、厳密に守られる必要はない。この角度は矩形の柔軟性薄板状基板11の角部を挟持して捲くり上げ始める際に、その荷重が略左右均等に加わるようにするためのものであるから、およそ45°であれば好ましいことになる。
【0051】
次に、上記構成の基板剥離装置1によって柔軟性薄板状基板11を補助治具12から剥離する方法について説明する。図3は基板剥離装置1をx軸の負方向側から正方向側に向かって見た簡略断面図である。まず図3(a)に示すように、ローラ前進後退機構部23によって剥離用ローラ21をワークよりもy軸の負方向側に十分離れた位置に待避させておく。次いで、チャック回転機構部15、チャック昇降機構部16、およびチャック前進後退機構部17により、チャック部13をチャック爪24・25の挟持面が柔軟性薄板状基板11の延長面と略一致するように、柔軟性薄板状基板11のy軸の負方向側の角部と剥離用ローラ21との間に移動させる。そして、チャック部13のチャック爪24を上方に移動させた状態で、チャック前進後退機構部17によってチャック部13をy軸の正方向側に前進させ、チャック部13のチャック爪25が柔軟性薄板状基板11の角部の下面に当接した後、チャック爪24を下方に移動させてチャック部13で上記角部を挟持する。
【0052】
続いて、チャック回転機構部15、チャック昇降機構部16、およびチャック前進後退機構部17を同時に駆動し、同図(b)に示すように、チャック部13を前進方向に、後述する規定の距離lだけ離れた位置に回転中心を持つように円弧移動させる。このとき、図示したように角部から柔軟性薄板状基板11の剥離が開始される。チャック部13に回転を加えた円弧動作を行わせることで、チャック部13の移動軌跡が、剥離箇所から挟持位置までの連続的に変化する基板剥離寸法に適応するので、柔軟性薄板状基板11には剥離力以外の力、例えば柔軟性薄板状基板11を引っ張る力や挟持箇所近傍で柔軟性薄板状基板11を折り曲げる力がほとんど加わらない。
【0053】
次に、同図(c)に示すように、ローラ前進後退機構部23によって剥離用ローラ21を一定速度でy軸の正方向側へ前進させ、チャック部13により挟持されて捲くり上げられた柔軟性薄板状基板11の貼着されていた側の面に接触させる、すなわち接する状態とする。これと並行して、回転機構部22によって剥離用ローラ21を一定速度で図中時計回りに回転させ、接触箇所に柔軟性薄板状基板11を捲くり上げるような力を加える。このとき、上記接触箇所に加わる合力による、柔軟性薄板状基板11の貼着部分と剥離済み部分との境界となる剥離箇所から、剥離用ローラ21との接触箇所までの湾曲量が許容範囲内となるように、剥離用ローラ21の半径、剥離用ローラ21の回転軸の前進方向(剥離進行方向E、y軸の正方向)への移動速度、および剥離用ローラ21の回転速度が設定されている。この設定の詳細については後述する。さらに、剥離が進行するにつれて、柔軟性薄板状基板11の剥離用ローラ21との接触箇所から挟持されている角部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように、チャック部13を斜め上方に移動させる。
【0054】
さらに、同図(d)に示すように、同様に剥離用ローラ21を一定速度で回転させながら柔軟性薄板状基板11の剥離進行方向Eにあるもう一方の角部に向かって一定速度で前進させ、柔軟性薄板状基板11の剥離を進めていく。これにつれて、同図に示すようにチャック13を、前進速度をやや低下させて方向をより上方へと変えて移動させることにより、柔軟性薄板状基板11の剥離用ローラ21との接触箇所から挟持されている角部までの状態を同図(c)と同様に保つようにする。
【0055】
以上が剥離方法の説明であり、一連の動作を一括して図4に示す。なお、全て回転駆動とした人の手に似た形状である多関節ロボットなどで代用し、同等のチャック部13の軌跡を描いても構わない。
【0056】
このように、基板保持部3は、柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の端部(角部)を保持するとともに柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)が貼着された物体(補助治具12)の位置に対して保持位置(挟持位置)を変化させることが可能であり、柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の後述する剥離進行手段(剥離進行部4)との接触箇所から上記端部(角部)までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように保持位置(挟持位置)を変化させる、すなわち、上記接触箇所から上記端部(角部)までを弛ませ過ぎないように、かつ、引っ張り過ぎないように適度な張力を与える保持手段の一例として機能する。基板保持部3では、3軸移動制御をより細やかに行うことにより、柔軟性薄板状基板11に、より適度な張力を与えることができる。
【0057】
また、剥離進行部4は、上記保持手段(基板保持部3)が上記保持位置(挟持位置)を変化させることによって上記端部(角部)付近が所定の剥離進行方向に剥離された柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の貼着されていた側の面に滑らかに接触して、柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の上記接触箇所が受ける合力による柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の湾曲量が許容範囲内となるように剥離を進行させる剥離進行手段の一例として機能する。
【0058】
なお、剥離進行手段が柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触開始するのに、保持手段が上記保持位置を変化させることによって上記端部付近が所定の剥離進行方向に剥離されることが前提となっているが、本実施の形態ではこの保持手段の動作を、基板保持部3に、図3(b)に示すようにチャック部13を前進方向(剥離進行方向E)に距離lだけ離れた位置に回転中心を持つように円弧移動させることで実現している。この距離lは、剥離進行部4の剥離用ローラ21が柔軟性薄板状基板11と補助治具12との間隙に進入することができ、かつ基板保持部3の挟持位置が剥離用ローラ21と干渉しない位置となるまでに最低限必要な柔軟性薄板状基板11の捲くり上げ量に対応していればよい。従って、一般には、保持手段は剥離進行手段が柔軟性薄板状基板と物体との間隙に進入することができ、かつ保持手段の保持位置が剥離進行手段と干渉しない位置となるのに最低限必要なだけ柔軟性薄板状基板を捲くり上げる。
【0059】
以上に述べた基板剥離装置1の構成および動作により、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離装置および基板剥離方法を提供することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、貼着面が平面状である柔軟性薄板状基板を剥離する場合について説明しているが、貼着面の形状はこれに限らない。例えば、図1のような直交座標としてのx軸、y軸、およびz軸を想定した場合、x軸方向には平坦で、y軸およびz軸で形成される平面に垂直に湾曲している形状、例えば円筒面のような貼着面の柔軟性薄板状基板であっても構わない。この場合の剥離進行方向は、上記湾曲の方向に沿っている、すなわちy軸およびz軸で形成される平面に平行な平面上にある。換言すると、剥離進行方向に垂直な断面が直線状であって、各断面の上記直線が平行となる貼着面(このとき、剥離進行方向は一直線か一平面内にある)の柔軟性薄板状基板には、本発明を好適に使用することができる。
【0061】
また、チャック回転機構部15はチャック爪支持軸(チャック爪支持軸15a)を回転軸としてチャック爪(チャック爪24・25)を回転させるチャック爪回転手段の一例として、チャック昇降機構部16はチャック爪支持軸(チャック爪支持軸15a)を法線とする平面上の一直線方向に往復移動させる第1移動手段(あるいは第2移動手段)の一例として、またチャック前進後退機構部17はチャック爪支持軸(チャック爪支持軸15a)を上記平面上で上記第1移動手段の往復移動方向と直交する方向に往復移動させる第2移動手段(チャック前進後退機構部17が第2移動手段である場合は第1移動手段)の一例として機能する。
【0062】
従って、基板保持部3は、柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の端部を表裏両側から挟持するチャック爪(チャック爪24・25)、上記チャック爪(チャック爪24・25)を上記剥離進行方向(剥離進行方向E)と垂直で挟持面に平行に支持するチャック爪支持軸(チャック爪支持軸15a)、および上記チャック爪(チャック爪24・25)の挟持動作を制御するチャック爪制御部(図示せず)を備えるチャッキング手段と、第1移動手段と、第2移動手段と、チャック爪回転手段とを有している保持手段の一例として機能する。
【0063】
このように本実施の形態では、保持手段にチャッキング手段、第1移動手段、第2移動手段、および回転手段を備えている。チャッキング手段はチャック爪によって柔軟性薄板状基板の端部を表裏両側から挟持することにより上記端部を保持し、チャック爪をチャック爪支持軸によって、チャック爪を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行に支持するとともに、チャック爪制御部によってチャック爪の挟持動作を制御する。そして、第1移動手段および第2移動手段によるチャック爪支持軸の直線往復移動により、チャック爪の位置、すなわち保持位置をチャック爪支持軸を法線とする平面上で2次元的に移動させる。さらに、チャック爪回転手段によってチャック爪支持軸を回転軸とするチャック爪の回転を行い、チャック爪の挟持面の貼着面に対する角度を変化させ、これによっても保持位置を変化させる。
【0064】
このように、3軸制御によって2次元的な移動と回転移動とを行う基板剥離装置、さらにはその動作部分を実行する基板剥離方法により、柔軟性薄板状基板の接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるような保持位置の移動軌跡を、容易に実現することができる。
【0065】
さらに、剥離用ローラ21は、剥離進行方向(剥離進行方向E)と垂直で柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の貼着面に平行な回転軸が剥離進行方向(剥離進行方向E)に移動するとともに、柔軟性薄板上基板(柔軟性薄板状基板11)を捲くり上げる向きに回転しながら周面が柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させるローラの一例として機能する。従って、剥離進行部4は、上記ローラ(剥離用ローラ21)を有しており、柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の上記ローラ(剥離用ローラ21)との接触箇所が柔軟性薄板状基板(柔軟性薄板状基板11)の湾曲量が許容範囲内となるような合力を受けるように上記ローラ(剥離用ローラ21)の半径、上記回転軸の上記剥離進行方向(剥離進行方向E)への移動速度、および上記ローラ(剥離用ローラ21)の回転速度が設定されている剥離進行手段の一例として機能する。
【0066】
このように、本実施の形態では、剥離進行手段に、剥離進行方向と垂直で柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸が剥離進行方向に移動するとともに、柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転しながら周面が柔軟性薄板状基板の貼着されていた面に接触することにより剥離を進行させるローラ、すなわち柔軟性薄板状基板を周面で捲くり上げながら進行するローラを備える。
【0067】
この場合、柔軟性薄板状基板のローラとの接触箇所が受ける合力は、ローラが剥離進行方向に加える力と、ローラが回転方向に加える力と、柔軟性薄板状基板が捲くり上げられて湾曲している状態から元の形状に復元しようとする反発力との合成力となる。従って、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、ローラの半径、回転軸の剥離進行方向への移動速度、およびローラの回転速度を設定する。
【0068】
これにより、基板剥離装置において合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を許容範囲内とする剥離進行手段を、少ないパラメータの設定により容易に実現することができる。さらには、上記基板剥離装置の動作部分を実行する基板剥離方法において、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を、少ないパラメータの設定により容易に許容範囲内とすることができる。
【0069】
次に、柔軟性薄板状基板11の剥離用ローラ21との接触箇所が受ける力について詳述する。図5に示すように、柔軟性薄板状基板11と補助治具12との間隙を前進する剥離用ローラ21は、柔軟性薄板状基板11に当接しており、柔軟性薄板状基板11の剥離箇所から接触箇所までの部分は曲率半径Rで湾曲している。この接触箇所に作用する力は3方向あり、剥離用ローラ21が前進することで柔軟性薄板状基板11に与えられる力P1、剥離用ローラ21が回転することで柔軟性薄板状基板11に与えられる力P2、および柔軟性薄板状基板11の湾曲により柔軟性薄板状基板11が平板に戻ろうとする反発力P3である。この3力の合成ベクトルPが接触箇所に作用する合力となり、剥離箇所には合成ベクトルPの上方成分、すなわち貼着面に対して柔軟性薄板状基板11を垂直に押し上げる成分が剥離力として作用する。それ以外の方向の成分は剥離には寄与しない。
【0070】
従って、本実施の形態のように柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合には、合成ベクトルPは、図5に示すように上方成分のみのベクトルであることが理想である。つまり、一般に、剥離進行手段は、柔軟性薄板状基板の接触箇所を合力が貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させるのが理想である。これにより、前記基板剥離装置および基板剥離方法において、剥離力のベクトルも接触箇所の合力と同じ大きさとなり、柔軟性薄板状基板を効率よく剥離することができる。合成ベクトルPが図中で左右のいずれかに傾いている場合、柔軟性薄板状基板11を引っ張ったり、押したりする力となり、前述した柔軟性薄板状基板11のパターン変形や、湾曲の曲率半径の低下を引き起こす。湾曲の曲率半径が一定値を下回ると、柔軟性薄板状基板11の表面に形成された金属酸化膜などからなる透明電極に割れ(クラック)が生じたり、さらには柔軟性薄板状基板11自体の折れや割れに至る確率が高くなる。また、柔軟性薄板状基板11の下面(貼着されていた側の面)と剥離用ローラ21の周面との間で滑りが生じ、柔軟性薄板状基板11の下面に傷が発生したり、汚れが付着したりするなどの悪影響も与えることとなる。このような理由で、剥離用ローラ21の半径、前進速度、および回転速度は、柔軟性薄板状基板11の弾性力を加味して、これらの条件を満足するように選定されることが望ましい。
【0071】
また、図6に、剥離用ローラ21の半径と柔軟性薄板状基板11の湾曲との関係を示す。同図(a)に示すように、補助治具12の上方に距離tを隔てて剥離用ローラ21の下面が位置するように、3種類の半径の剥離用ローラ21を配置した場合、半径がr1からr2、r3へと大きくなるにつれて柔軟性薄板状基板11の剥離箇所から剥離用ローラ21との接触箇所までの距離が大きくなり、より上方で柔軟性薄板状基板11と剥離用ローラ21とが当接するようになる。従って、剥離用ローラ21の半径が大きくなると、柔軟性薄板状基板11に与える合成ベクトルPは上方ではなく、図中左に(剥離用ローラ21の前進方向に)傾いたベクトルとなり、柔軟性薄板状基板11の湾曲を増大させることとなる。
【0072】
これに伴って柔軟性薄板状基板11の反発力P3(図5参照)も増大し、図6(b)に示すように前記3つの力P1・P2・P3の合成ベクトルPが上方成分だけとなるS1、S2、S3の状態になる。剥離用ローラ21の半径が大きくても柔軟性薄板状基板11の曲率を一定値以下とするためには、合成ベクトルPが上方成分だけとなる程度まで剥離用ローラ21の前進速度および回転速度(周面の回転線速度)を極端に落とすことが必要となる。このことから、剥離用ローラ21にたわみなどを生じさせないような機械強度の許容範囲内で剥離用ローラ21の半径を小さくすることが望ましい。
【0073】
ところで、前進速度に比して回転線速度が小さい場合、剥離用ローラ21は回転による剥離よりも柔軟性薄板状基板11を前に押していく力のベクトルが大きくなり、柔軟性薄板状基板11の湾曲を増大させることとなる。これにより、前述の問題が起こりやすくなる。他方、前進速度に比して回転線速度が大きい場合、柔軟性薄板状基板11の下面で剥離用ローラ21が空滑りすることとなり、柔軟性薄板状基板11の下面に傷を発生させたり、汚れを付着させたりする。また、剥離用ローラ21の回転が継続的な張力となり、柔軟性薄板状基板11の材質によっては柔軟性薄板状基板11が剥離用ローラ21の回転方向に引き伸ばされ、形成したパターンに変形が生じ、不良となる場合もある。
【0074】
従って、柔軟性薄板状基板11の剥離を行う際には、剥離用ローラ21の前進速度と剥離用ローラ21の周面の回転線速度とを略等しくすることが望ましい。周面の回転線速度は、剥離用ローラ21の半径と回転速度とにより決まるので、前述のように剥離用ローラ21の半径の設定を考慮した上で、剥離用ローラ21の前進速度および回転速度を設定すればよい。前進速度と回転線速度とが等しい場合には、柔軟性薄板状基板11と、剥離用ローラ21の接触点との移動速度が一致するため、柔軟性薄板状基板11と剥離用ローラ21との接触箇所において柔軟性薄板状基板11に余分な張力を与えずにすむ。また、上記接触箇所において余分な滑りが発生しないので、柔軟性薄板状基板11の下面(貼着されていた側の面)に傷および汚れが発生する虞を非常に小さくすることができる。
【0075】
また、前述したように図3(b)の距離lは、剥離進行部4の剥離用ローラ21が柔軟性薄板状基板11と補助治具12との間隙に進入することができ、かつ基板保持部3の挟持位置が剥離用ローラ21と干渉しない位置となるまでに最低限必要な柔軟性薄板状基板11の捲くり上げ量に対応していればよいことから、基板剥離装置1の各部品の寸法や、剥離の際の柔軟性薄板状基板11の曲率半径Rにより決定されることになる。従って、例えば剥離用ローラ21の半径が5mm、図6の距離tが1mm、チャック爪24・25の厚みが5mm、柔軟性薄板状基板11の曲率半径Rが50mmであるとすると、距離lは多少のマージンを加えて50mm程度となる。
【0076】
一方、距離lは捲くり上げの張力の制限からも限定されることとなるが、ゆっくり捲くれば柔軟性薄板状基板11の挟持されている部位にかかる張力は小さく抑えられるように、補助治具12の粘着力と剥離速度との兼ね合いから一義的には決定されない。従って、上述のように各部品の寸法や曲率半径Rから決まる距離lに対して、チャック部13の移動速度を合わせることになる。
【0077】
【発明の効果】
本発明の基板剥離装置は、以上のように、上記柔軟性薄板状基板の端部を保持するとともに上記物体の位置に対して保持位置を変化させることが可能な保持手段と、上記保持手段が上記保持位置を変化させることによって上記端部付近が所定の剥離進行方向に剥離された上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触して上記柔軟性薄板状基板の剥離を進行させる剥離進行手段とを有し、上記剥離進行手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記剥離進行手段との接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように剥離を進行させ、上記保持手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させる構成である。
【0078】
それゆえ、剥離進行に際しては、柔軟性薄板状基板の剥離進行手段との接触箇所が受ける合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるようにする。また、剥離進行中には保持手段によって、上記接触箇所から端部までを弛ませ過ぎないように、かつ、引っ張り過ぎないように適度な張力を与える。
【0079】
以上により、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離装置を提供することができるという効果を奏する。
【0080】
さらに本発明の基板剥離装置は、以上のように、上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記剥離進行手段は、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させる構成である。
【0081】
それゆえ、柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、柔軟性薄板状基板の剥離進行手段との接触箇所が受ける合力の貼着面に垂直な成分が剥離力として作用するので、柔軟性薄板状基板を効率よく剥離することができるという効果を奏する。
【0082】
さらに本発明の基板剥離装置は、以上のように、上記保持手段は、上記端部を表裏両側から挟持するチャック爪、上記チャック爪を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行に支持するチャック爪支持軸、および上記チャック爪の挟持動作を制御するチャック爪制御部を備えるチャッキング手段と、上記チャック爪支持軸を、上記チャック爪支持軸を法線とする平面上の一直線方向に往復移動させる第1移動手段と、上記チャック爪支持軸を上記平面上で上記第1移動手段の往復移動方向と直交する方向に往復移動させる第2移動手段と、上記チャック爪支持軸を回転軸として上記チャック爪を回転させるチャック爪回転手段と、を有している構成である。
【0083】
それゆえ、3軸制御によって2次元的な移動と回転移動とを行うことにより、柔軟性薄板状基板の接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるような保持位置の移動軌跡を、容易に実現することができるという効果を奏する。
【0084】
さらに本発明の基板剥離装置は、以上のように、上記剥離進行手段は、上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸が上記剥離進行方向に移動するとともに、上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転しながら周面が上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させるローラを有しており、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度が設定されている構成である。
【0085】
それゆえ、柔軟性薄板状基板のローラとの接触箇所が受ける合力は、ローラが剥離進行方向に加える力と、ローラが回転方向に加える力と、柔軟性薄板状基板が捲くり上げられて湾曲している状態から元の形状に復元しようとする反発力との合成力となる。従って、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、ローラの半径、回転軸の剥離進行方向への移動速度、およびローラの回転速度を設定する。
【0086】
これにより、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を許容範囲内とする剥離進行手段を、少ないパラメータの設定により容易に実現することができるという効果を奏する。
【0087】
さらに本発明の基板剥離装置は、以上のように、上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定が行われている構成である。
【0088】
それゆえ、柔軟性薄板状基板とローラとの接触箇所において柔軟性薄板状基板に余分な張力を与えずにすむという効果を奏する。また、上記接触箇所において余分な滑りが発生しないので、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に傷および汚れが発生する虞を非常に小さくすることができるという効果を奏する。
【0089】
また、本発明の基板剥離方法は、以上のように、物体上に貼着された柔軟性薄板状基板を上記物体から剥離する基板剥離方法において、上記柔軟性薄板状基板の端部を保持し、保持位置を変化させることによって上記端部付近を所定の剥離進行方向に剥離開始し、上記端部付近が剥離された上記柔軟性薄板状基板の裏面に滑らかに接触力を加えるとともに、上記柔軟性薄板状基板の接触力を受ける接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように上記接触箇所と剥離進行の速度とを設定した状態で剥離を進行させ、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させる構成である。
【0090】
それゆえ、剥離進行に際して柔軟性薄板状基板の接触箇所が受ける合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、上記接触箇所と剥離進行の速度とを設定する。また、剥離進行中には上記接触箇所から端部までを弛ませ過ぎないように、かつ、引っ張り過ぎないように適度な張力を与える。
【0091】
以上により、剥離の際に、柔軟性薄板状基板の貼着面と反対側の面に極力接触しないこと、および貼着されていた側の面に極力傷を付けないことに加えて、柔軟性薄板状基板の湾曲量および柔軟性薄板状基板に加わる負荷重を、柔軟性薄板状基板に悪影響を与えないように制御することができる基板剥離方法を提供することができるという効果を奏する。
【0092】
さらに本発明の基板剥離方法は、以上のように、上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させる構成である。
【0093】
それゆえ、柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、柔軟性薄板状基板の接触箇所が受ける合力の貼着面に垂直な成分が剥離力として作用するので、柔軟性薄板状基板を効率よく剥離することができるという効果を奏する。
【0094】
さらに本発明の基板剥離方法は、以上のように、上記端部を表裏両側から挟持することによって保持し、保持箇所を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行な方向に軸で支持しながら上記保持箇所の挟持動作を制御し、上記保持位置を、上記保持箇所の上記軸を法線とする平面上の一直線方向への往復移動と、上記平面上の上記一直線方向と直交する方向への往復移動と、上記保持箇所の上記軸を回転軸とする回転とによって変化させる構成である。
【0095】
それゆえ、3軸制御によって2次元的な移動と回転移動とを行うことにより、柔軟性薄板状基板の接触箇所から端部までが接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるような保持位置の移動軌跡を、容易に実現することができるという効果を奏する。
【0096】
さらに本発明の基板剥離方法は、以上のように、上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸を有するローラの上記回転軸を上記剥離進行方向に移動させるとともに、上記ローラを上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転させながら周面を上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触させることにより剥離を進行させ、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度を設定する構成である。
【0097】
それゆえ、柔軟性薄板状基板のローラとの接触箇所が受ける合力は、ローラが剥離進行方向に加える力と、ローラが回転方向に加える力と、柔軟性薄板状基板が捲くり上げられて湾曲している状態から元の形状に復元しようとする反発力との合成力となる。従って、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように、ローラの半径、回転軸の剥離進行方向への移動速度、およびローラの回転速度を設定する。
【0098】
これにより、合力による柔軟性薄板状基板の湾曲量を、少ないパラメータの設定により容易に許容範囲内とすることができるという効果を奏する。
【0099】
さらに本発明の基板剥離方法は、以上のように、上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定を行う構成である。
【0100】
それゆえ、柔軟性薄板状基板とローラとの接触箇所において柔軟性薄板状基板に余分な張力を与えずにすむという効果を奏する。また、上記接触箇所において余分な滑りが発生しないので、柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に傷および汚れが発生する虞を非常に小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態における基板剥離装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ図1の基板剥離装置のチャック部の構成を示す斜視図、断面図である。
【図3】(a)ないし(d)は、図1の基板剥離装置による剥離動作、および本発明の実施の一形態における基板剥離方法を説明する説明図である。
【図4】図3の各説明図を一括して示した説明図である。
【図5】柔軟性薄板状基板と剥離用ローラとの接触による力の作用状態を説明する説明図である。
【図6】(a)および(b)は、剥離用ローラの半径と柔軟性薄板状基板の湾曲との関係を説明する説明図である。
【図7】従来の基板剥離装置の第1の例の構成を示す断面図である。
【図8】(a)ないし(d)は、従来の基板剥離装置の第2の例の構成およびその動作を示す断面図である。
【図9】(a)ないし(f)は、従来の基板剥離装置の第3の例の構成およびその動作を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板剥離装置
3 基板保持部(保持手段)
4 剥離進行部(剥離進行手段)
11 柔軟性薄板状基板
12 補助治具(物体)
13 チャック部
15a チャック爪支持軸
15 チャック回転機構部(チャック爪回転手段)
16 チャック昇降機構部(第1移動手段あるいは第2移動手段)
17 チャック前進後退機構部(第2移動手段あるいは第1移動手段)
21 剥離用ローラ(ローラ)
24・25 チャック爪
E 剥離進行方向
P 合成ベクトル(合力)
r1・r2・r3半径
Claims (10)
- 物体上に貼着された柔軟性薄板状基板を上記物体から剥離する基板剥離装置において、
上記柔軟性薄板状基板の端部を保持するとともに上記物体の位置に対して保持位置を変化させることが可能な保持手段と、上記保持手段が上記保持位置を変化させることによって上記端部付近が所定の剥離進行方向に剥離された上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に滑らかに接触して上記柔軟性薄板状基板の剥離を進行させる剥離進行手段とを有し、
上記剥離進行手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記剥離進行手段との接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように剥離を進行させ、上記保持手段は、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させることを特徴とする基板剥離装置。 - 上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記剥離進行手段は、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることを特徴とする請求項1に記載の基板剥離装置。
- 上記保持手段は、上記端部を表裏両側から挟持するチャック爪、上記チャック爪を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行に支持するチャック爪支持軸、および上記チャック爪の挟持動作を制御するチャック爪制御部を備えるチャッキング手段と、
上記チャック爪支持軸を、上記チャック爪支持軸を法線とする平面上の一直線方向に往復移動させる第1移動手段と、
上記チャック爪支持軸を上記平面上で上記第1移動手段の往復移動方向と直交する方向に往復移動させる第2移動手段と、
上記チャック爪支持軸を回転軸として上記チャック爪を回転させるチャック爪回転手段と、
を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の基板剥離装置。 - 上記剥離進行手段は、上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸が上記剥離進行方向に移動するとともに、上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転しながら周面が上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触することにより剥離を進行させるローラを有しており、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度が設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板剥離装置。
- 上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定が行われていることを特徴とする請求項4に記載の基板剥離装置。
- 物体上に貼着された柔軟性薄板状基板を上記物体から剥離する基板剥離方法において、
上記柔軟性薄板状基板の端部を保持し、保持位置を変化させることによって上記端部付近を所定の剥離進行方向に剥離開始し、上記端部付近が剥離された上記柔軟性薄板状基板の裏面に滑らかに接触力を加えるとともに、上記柔軟性薄板状基板の接触力を受ける接触箇所が受ける合力による上記柔軟性薄板状基板の湾曲量が許容範囲内となるように上記接触箇所と剥離進行の速度とを設定した状態で剥離を進行させ、上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所から上記端部までが上記接触箇所からの滑らかな延長面上で平坦に近いやや弛んだ状態となるように上記保持位置を変化させることを特徴とする基板剥離方法。 - 上記柔軟性薄板状基板の貼着面が平面状である場合に、上記合力が上記柔軟性薄板状基板の上記接触箇所を上記貼着面に対して略垂直に押し上げる向きとなるように剥離を進行させることを特徴とする請求項6に記載の基板剥離方法。
- 上記端部を表裏両側から挟持することによって保持し、保持箇所を上記剥離進行方向と垂直で挟持面に平行な方向に軸で支持しながら上記保持箇所の挟持動作を制御し、
上記保持位置を、上記保持箇所の上記軸を法線とする平面上の一直線方向への往復移動と、上記平面上の上記一直線方向と直交する方向への往復移動と、上記保持箇所の上記軸を回転軸とする回転とによって変化させることを特徴とする請求項6または7に記載の基板剥離方法。 - 上記剥離進行方向と垂直で上記柔軟性薄板状基板の貼着面に平行な回転軸を有するローラの上記回転軸を上記剥離進行方向に移動させるとともに、上記ローラを上記柔軟性薄板上基板を捲くり上げる向きに回転させながら周面を上記柔軟性薄板状基板の貼着されていた側の面に接触させることにより剥離を進行させ、上記接触箇所が上記合力を受けるように上記ローラの半径、上記回転軸の上記剥離進行方向への移動速度、および上記ローラの回転速度を設定することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の基板剥離方法。
- 上記移動速度と上記ローラの周面の回転線速度とが略等しくなるように設定を行うことを特徴とする請求項9に記載の基板剥離方法。
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