JP3803913B2 - 基板乾燥装置、基板乾燥方法および基板のシリコン酸化膜除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、その上面に純水やリンス液などの処理液が液膜状に付着する基板を乾燥させる基板乾燥装置、基板乾燥方法および基板のシリコン酸化膜除去方法に関するものである。なお、この明細書における「基板」には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置(LCD)用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板が含まれる。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、純水やリンス液などの処理液による洗浄処理やリンス処理が行われた後、基板上面に液膜状に付着する処理液を除去すべく、いわゆるスピン乾燥処理が行われることがある。このスピン乾燥処理を実行する基板乾燥装置としては、例えば特許第2922754号の特許掲載公報に記載された装置が知られている。
【0003】
この基板乾燥装置は、基板を水平姿勢で上面に載置して保持するチャックを有している。このチャックは、鉛直軸回りに回転自在に支持され、回転駆動機構によって回転駆動されるようになっている。また、チャックの上方側には、上側ブローノズルが配設されている。この上側ブローノズルの先端の吹出し口は、チャックに保持された基板の上面中心部に近接して対向しており、基板の上面中心部に向けて真上から乾燥用空気を吹き付けることができるようになっている。
【0004】
そして、洗浄処理を終えて上面全体が処理液(純水など)の液膜で被覆された状態の基板が、チャックの上面に水平姿勢で載置保持されると、この状態で、まず、上側ブローノズルが作動し、その先端の吹出し口から真下の基板の上面中心部に向けて乾燥用空気が吹き付けられる。これにより、基板の上面中心部に円形状の液切れ部(ホール)が形成され、その部分が乾燥される。また、それに続いて、回転駆動機構によってチャックが始動し、所定回転数まで基板が加速回転されて低速回転中に基板上の液体の大半が除去された後、さらに回転数が上げられて高速回転して残りの処理液を振り切って基板を完全に乾燥させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来装置では、基板の上面に形成された液膜の中心部に円形状の液切れ部(ホール)を形成した後、基板を回転させて液切れ部を基板端縁方向に広げているが、その際の回転数は低速といっても200rpmであり、その回転により処理液に与えられる遠心力は基板端縁部における処理液の表面張力よりも大きく、遠心力の作用によって処理液が基板端縁部から振り切られている。このため、基板の上面中央部からその周囲にかけて液滴が残り、乾燥処理の後半で高速回転させた際に液滴が基板上面を走り、この液滴の移動跡にウォータマークが形成されてしまい、これが大きな問題を引き起こすことがあった。
【0006】
例えば、液晶表示用ガラス基板上に低温ポリシリコン薄膜トランジスタを形成する場合、ガラス基板上にアモルファスシリコン層を形成し、そのアモルファスシリコン層の表面の自然酸化膜を除去した後にレーザービームによりアニールして溶融再結晶化するレーザーアニール法が近年多用されている。このように基板上面に形成されるアモルファスシリコン層は、その表面をライトエッチング処理して酸化膜除去を行った後には、強い撥水性を有しているために、上記200rpm程度の回転数であっても、乾燥処理中に処理液の液滴が疎らに形成されてしまい、ウォータマークが形成されてしまう。その結果、これが原因で形成したトランジスタ素子の特性が局所的に変化するなどの不具合が発生し、製品品質が低下し、歩留りの低下を招いてしまうという問題があった。
【0007】
なお、このような問題は、ガラス基板上にアモルファスシリコン層が形成された場合にのみ発生するものではなく、例えば液晶表示装置の製造過程でガラス基板にポリイミド系材料等よりなる配向膜を形成した場合にも生じるものであり、撥水性材料よりなる膜が形成された基板に対して洗浄・乾燥処理を実行する際に生じる一般的な問題である。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その上面に純水やリンス液などの処理液が液膜状に付着する基板を乾燥させる基板乾燥装置、基板乾燥方法および基板のシリコン酸化膜除去方法において、その乾燥処理中にウォータマークが発生するのを防止することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、その上面に処理液が液膜状に付着する基板を乾燥させる基板乾燥装置および基板乾燥方法である。
【0010】
この基板乾燥装置は、上記目的を達成するために、前記基板を略水平状態で保持する基板保持手段と、前記基板保持手段を回転駆動する回転駆動手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部に向けて気体を吹き付ける気体供給手段と、前記回転駆動手段および前記気体供給手段を制御する制御手段とを備え、前記基板保持手段に保持された基板を回転させた際に該基板に付着する処理液に作用する遠心力と、該基板の端縁部における処理液の表面張力とがほぼ同一となる該基板の回転数を臨界回転数としたとき、前記制御手段によって前記回転駆動手段および前記気体供給手段を制御することによって、乾燥処理の前半で前記基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成するとともに、前記基板保持手段を前記臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を吹き付けて前記ホールを前記基板の端縁方向に拡大させた後、乾燥処理の後半で前記基板保持手段を前記臨界回転数よりも大きな回転数で回転させて処理液を前記基板から振り切って乾燥させている(請求項1)。
【0011】
また、この基板乾燥方法は、基板を回転させた際に該基板に付着する処理液に作用する遠心力と、該基板の端縁部における処理液の表面張力とがほぼ同一となる該基板の回転数を臨界回転数としたとき、略水平状態で保持された基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成する工程と、前記基板を前記臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を吹き付けて前記ホールを前記基板の端縁方向に拡大させる工程と、前記基板保持手段を前記臨界回転数よりも大きな回転数で回転させて処理液を前記基板から振り切って乾燥させる工程とを備えている(請求項6)。
【0012】
このように構成された発明(基板乾燥装置および基板乾燥方法)では、基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成している。そして、基板を臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を基板の上面中央部に吹き付けている。このように回転数を臨界回転数以下に設定することにより、基板回転に伴う遠心力のみによって基板端縁部から処理液が流れ落ちるのが防止されている。また、その状態で気体が基板の上面中央部に吹き付けられることによってホールが基板の端縁方向に拡大していき、液膜の中央側の処理液が中央側から基板端縁側に徐々に押し遣られて乾燥領域が広がっていくとともに、それに伴って基板端縁側の処理液が基板から徐々に落とされていく。したがって、基板の上面中央部に液滴が残るのが効果的に防止され、乾燥処理の後半で基板を高速回転させたとしても、ウォータマークの発生は認められない。また、気体として窒素ガスなどの不活性ガスを用いることで基板上面の酸素濃度を低下させてウォータマークの発生をより効果的に防止することができる。
【0013】
ここで、乾燥処理の前半のみならず、後半においても気体を基板の上面中央部に供給し続けるように構成してもよい。これによって処理液を確実に、しかも迅速に基板上面から除去することができる(請求項2および5)。
【0014】
また、基板の上面中央部に向けて気体を吐出するために、気体供給手段にノズルを設けるようにしてもよいが、その場合のノズル本数は特に限定されるものではないが、基板の上面中央部に気体をスポット的に吐出する小径ノズルと、小径ノズルを取り囲むように配置されて基板の上面中央部に気体を吐出する大径ノズルとを設けるようにしてもよい。このように2種類のノズルを設けた場合、小径ノズルおよび大径ノズルから気体を同時に、あるいは選択的に吐出するように構成するとともに、乾燥処理の前半で、小径ノズルから気体を吐出させて液膜の中央部にホールを形成し、また基板保持手段を臨界回転数以下の回転数で回転させながら大径ノズルから気体を吐出させてホールを基板の端縁方向に拡大させるようにすれば、ホール拡大のために要する時間が、単一のノズルでホールを拡大させる場合よりも短縮することができ、乾燥処理に要する時間、つまりタクトタイムを短縮することができ、好適である(請求項3)。
【0015】
また、上記のように2種類のノズルを設けた場合、大径ノズルからの気体吐出を開始するのとほぼ同時に、小径ノズルからの気体吐出を停止させると、気体の消費量を抑えることができる(請求項4)。
【0016】
さらに、この発明は、上記目的を達成するため、基板の上面にエッチング液を供給して、基板上のシリコン層の表面の酸化膜を除去する工程と、基板の上面に純水を供給して基板上のエッチング液を除去する工程と、基板の上面に純水を供給して基板上に純水の液膜を形成する工程と、請求項6に記載の基板乾燥方法を用いて基板を乾燥させる工程と、を備えている(請求項7)。
【0017】
このように構成された発明(基板のシリコン酸化膜除去方法)では、基板上のシリコン層の表面の酸化膜を除去するのに続いて、純水により基板上のエッチング液を除去し、さらに基板上に純水の液膜を形成した後、請求項6に記載の基板乾燥方法を用いて基板を乾燥させている。そのため、上記したように基板の上面中央部に液滴が残るのが効果的に防止され、乾燥処理の後半で基板を高速回転させたとしても、ウォータマークの発生は認められない。また、気体として窒素ガスなどの不活性ガスを用いることで基板上面の酸素濃度を低下させてウォータマークの発生をより効果的に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる基板乾燥装置の第1実施形態を示す図である。この基板乾燥装置は、LCD用ガラス基板W(以下、単に「基板W」という)に対して乾燥処理を行う装置である。この装置は、図1に示すように、基板Wを保持する基板保持部1と、その基板保持部1を回転駆動する回転駆動部2と、基板保持部1に保持される基板Wに向けて窒素ガスを供給する気体供給部3と、装置全体を制御する制御部4とを備えている。
【0019】
この基板保持部1は、基板Wと同程度の平面サイズを有する基板支持板11と、この基板支持板11の上面に固着されて基板Wの周縁部を支持する周縁支持ピン12とを備えている。なお、必要に応じて基板Wの下面中央部を支持する中央支持ピンを基板支持板11の上面から立設してもよい。また、この実施形態では基板Wを機械的に保持しているが、基板保持方式はこれに限定されるものではなく、例えば基板Wの下面を真空吸着して保持してもよい。
【0020】
この基板支持板11は、回転駆動部2を構成する可変速モータ21の出力回転軸22に連結されており、モータ21の作動に伴って回転する。これによって、基板保持部1に保持されている基板Wは後述する加減速パターンで回転駆動される。
【0021】
また、基板保持部1の上方位置には、気体供給部3を構成するノズル31が配置されている。このノズル31の基端は、同図に示すように、昇降回転機構32に連結されており、昇降回転機構32によって回転中心AX周りで水平揺動および昇降可能となっている。また、ノズル31の後端部は電磁バルブ33を介して窒素ガス供給源34と接続されており、制御部4からの開閉指令に応じて電磁バルブ33が開くことでノズル31から窒素ガスが吐出される一方、電磁バルブ33を閉じることで窒素ガスの吐出が停止される。このため、昇降回転機構32によりノズル31の先端部を基板Wの上面中央部の直上位置に移動させた後、電磁バルブ33を開くと、基板Wの上面中央部に向けて窒素ガスが供給され、後述するようにして基板Wに対する乾燥処理を実行することができる。また、乾燥処理が終了すると、昇降回転機構32によりノズル31を基板Wから退避させることができる。
【0022】
なお、この装置では、次に説明するように乾燥処理において基板Wを回転させるが、このとき処理液が装置周辺に飛散するのを防止すべく、基板保持部1の周囲に、飛散防止用の処理カップ5が設けられている。なお、この処理カップ5は昇降可能に構成され、その底部には排液口51(52)や排気口52(51)が設けられている。
【0023】
次に、上記のように構成された基板乾燥装置の動作について、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0024】
この基板乾燥装置では、洗浄処理やリンス処理を受け、その上面に純水やリンス液などの処理液が液膜状に付着する基板Wが搬送ロボット(図示省略)によって装置内部に搬入され、基板保持部1に載置されると、基板保持部1の周縁支持ピン12で基板Wを保持する。なお、このとき、ノズル31は所定の退避位置に退避しており、基板搬入動作との干渉を避けている。
【0025】
こうして基板保持が完了するとともに、搬送ロボットが装置から退避すると、制御部4のメモリ(図示省略)に予め記憶されているプログラムにしたがって制御部4が装置各部を制御することによって、装置各部が以下のように動作して基板Wに対する乾燥処理を実行する。
【0026】
まず、昇降回転機構32がノズル31を回転中心AX周りで水平揺動および昇降させて図1に示すようにノズル31の先端部を基板Wの上面中央部の直上位置に移動させる。なお、このとき、電磁バルブ33は閉じており、ノズル31からの窒素ガスの供給は停止されている。
【0027】
そして、ノズル位置決めが完了すると、図2のタイミングT11で電磁バルブ33を開き、基板Wの上面中央部に向けて窒素ガスが供給されて基板Wに対する乾燥処理が開始される。このように窒素ガスを基板Wの上面に向けて吐出させると、図3(a)に示すように、ノズル31から基板Wの上面に吹き付けられる窒素ガスによって液膜61の中央部の処理液が押し退けられて液膜中央部にホール62が形成され、その基板表面が乾燥される。なお、押し退けられた処理液はホール62の外周部で盛り上がり、その外周部分でのみ液膜61の膜厚が厚みt1から厚みt2となっている。
【0028】
こうしてホール62を形成するのに続いて、タイミングT12でモータ21が回転し始め、基板Wの回転数が臨界回転数PTと同一値となるまで所定の加速度で加速し、回転数P1(=PT)となった時点で等速回転に移行する。ここで、「臨界回転数PT」とは、基板保持部1に保持された基板Wを回転させた際に基板Wに付着する処理液に作用する遠心力と、基板Wの端縁部における処理液の表面張力とがほぼ同一となる基板Wの回転数を意味している。なお、臨界回転数PTについては、基板Wの大きさや形状、基板Wに形成されている最上膜の種類および処理液の種類などの要因により相互に異なるものであるが、これらの要因に基づく数値解析、あるいは実験によって求めることができる。
【0029】
このように臨界回転数PT以下で基板Wを回転させている間、基板Wの回転に伴う遠心力のみによって基板端縁部から処理液が流れ落ちるのが防止することができる。すなわち、この時点では、処理液の基板上からの流れ落ちはほとんどない程度に抑制されている。そして、この実施形態では、この状態でタイミングT11から引き続き窒素ガスを基板Wの上面中央部に吹き付けているので、図3(b)に示すように、先に形成されたホール62が基板Wの端縁方向(同図の左右方向)に拡大していき、液膜61の中央側の処理液が中央側から基板端縁側に徐々に押し遣られて乾燥領域が広がっていくとともに、それに伴ってついには基板端縁側の処理液64が基板Wから流れ落ちはじめ、徐々に落とされていく。そして、図3(c)に示すように基板Wの上面に付着する処理液の大半が除去されて乾燥処理の前半が完了する(タイミングT13)と、乾燥処理の後半に移る。
【0030】
この後半においては、窒素ガスの吹き付けを継続したまま基板Wの回転を加速して臨界回転数PTよりも高い回転数P2、さらには回転数P3まで加速し、高速回転によって、図3(d)に示すように基板Wの上面端縁部に残存している処理液65を振り切る。その後、基板Wの回転数をゼロまでに減速するとともに、電磁バルブ33を閉じて窒素ガスの供給を停止して乾燥処理を完了する(タイミングT15)。
【0031】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの回転数P1を臨界回転数PT以下に設定することにより、基板回転に伴う遠心力のみによって基板端縁部から処理液が流れ落ちるのを防止しながら、その状態で窒素ガスを基板Wの上面中央部に吹き付けてホール62を基板Wの端縁方向に拡大させていき、液膜61の中央側の処理液を基板端縁側に徐々に押し遣り乾燥領域を拡大している。したがって、基板Wの上面中央部に液滴が残るのを効果的に防止することができ、乾燥処理の後半で基板Wを高速回転させたとしても、ウォータマークの発生を阻止することができる。
【0032】
また、この実施形態では、乾燥処理の間(T11〜T15)、ノズル31から窒素ガスを継続して供給しているので、処理液を確実に、しかも迅速に基板Wの上面から除去することができる。また、窒素ガスを供給し続けることにより基板Wの上面近傍の酸素濃度を減少させることができ、ウォータマークの発生をより効果的に防止することができる。このように窒素ガスの連続供給によって、より良好な乾燥処理を行うことができる。
【0033】
図4は、この発明にかかる基板乾燥装置の第2実施形態を示す図である。この基板乾燥装置が先の第1実施形態と大きく相違する点は、第1実施形態では単一ノズル31であったのに対し、第2実施形態では二重管構造のノズル31、つまり小径ノズル311と大径ノズル312からなるノズルが用いられており、各ノズル311,312から独立して窒素ガスを吐出可能となっている点である。すなわち、この第2実施形態では小径ノズル311を取り囲むように大径ノズル312が配置されており、小径ノズル311は電磁バルブ35を介して窒素ガス供給源34と接続されており、制御部4からの開閉指令に応じて電磁バルブ35を開閉制御することで小径ノズル311からの窒素ガスの供給・停止が制御される一方、大径ノズル312は電磁バルブ33を介して窒素ガス供給源34と接続されており、制御部4からの開閉指令に応じて電磁バルブ33を開閉制御することで大径ノズル312からの窒素ガスの供給・停止が制御される。なお、その他の構成については第1実施形態と同一であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
次に、上記のように構成された基板乾燥装置の動作について図5および図6を参照しつつ説明する。
【0035】
この基板乾燥装置では、第1実施形態と同様に、洗浄処理やリンス処理後の基板Wが搬送ロボット(図示省略)によって装置内部に搬入され、基板保持部1に載置されると、基板保持部1の周縁支持ピン12で基板Wを保持する。そして、搬送ロボットが装置から退避すると、制御部4のメモリ(図示省略)に予め記憶されているプログラムにしたがって制御部4が装置各部を制御することによって、装置各部が以下のように動作して基板Wに対する乾燥処理を実行する。
【0036】
まず、昇降回転機構32がノズル31を回転中心AX周りで水平揺動および昇降させて図4に示すように小径ノズル311および大径ノズル312の先端部を基板Wの上面中央部の直上位置に移動させる。なお、このとき、両電磁バルブ33,35は閉じており、ノズル311,312からの窒素ガスの供給は停止されている。
【0037】
そして、ノズル位置決めが完了すると、図5のタイミングT21で電磁バルブ35のみを開き、小径ノズル311から基板Wの上面中央部に向けて窒素ガスが供給されて基板Wに対する乾燥処理が開始される。このように窒素ガスを小径ノズル311から基板Wの上面に向けて吐出させると、図6(a)に示すように、小径ノズル311から基板Wの上面に吹き付けられる窒素ガスによって液膜61の中央部の処理液が押し退けられて液膜中央部にホール62がスポット的に形成され、その基板表面が乾燥される。なお、押し退けられた処理液はホール62の外周部で盛り上がり、その外周部分でのみ液膜61の膜厚が厚みt1から厚みt2となっている。
【0038】
こうしてホール62を形成するのに続いて、タイミングT22でモータ21が回転し始め、基板Wの回転数が臨界回転数PTと同一値となるまで所定の加速度で加速する。こうして、基板Wの回転に伴う遠心力のみによって基板端縁部から処理液が流れ落ちるのが防止された状態のままタイミングT21から引き続き小径ノズル311から窒素ガスを基板Wの上面中央部に吹き付けているので、図6(b)に示すように、先に形成されたホール62が基板Wの端縁方向(同図の左右方向)に拡大していき、液膜61の中央側の処理液が中央側から基板端縁側に徐々に押し遣られて乾燥領域が広がっていくとともに、それに伴って基板端縁側の処理液64が基板Wから徐々に落とされていく。
【0039】
そして、基板Wの回転数が所定の回転数P1(=PT)に達したタイミングT23で、等速回転動作に移行する一方、電磁バルブ35を閉じて小径ノズル311からの窒素ガスの吐出を停止すると同時に、電磁バルブ33を開いて大径ノズル312から窒素ガスを基板Wの上面中央部に向けて吹き付ける。このタイミングT23では、図6(c)に示すようにホール62が基板Wの端縁方向(同図の左右方向)にさらに拡大していき、液膜61の中央側の処理液が中央側から基板端縁側に徐々に押し遣られて乾燥領域が広がっていくとともに、それに伴って基板端縁側の処理液64が基板Wから徐々に落とされていく。やがて、基板Wの上面に付着する処理液の大半が除去されて乾燥処理の前半が完了する(タイミングT24)。
【0040】
そして、タイミングT24より乾燥処理の後半に入り、大径ノズル312からの窒素ガスの吹き付けを継続したまま基板Wの回転を加速して臨界回転数PTよりも高い回転数P3まで加速し、高速回転によって、図6(d)に示すように基板Wの上面端縁部に残存している処理液65を振り切る。その後、基板Wの回転数をゼロまでに減速するとともに、電磁バルブ33を閉じて窒素ガスの供給を停止して乾燥処理を完了する(タイミングT25)。なお、第2実施形態における乾燥処理の後半における動作パターン(図5の実線)を第1実施形態と対比すべく、図5中に第1実施形態における動作パターンを2点鎖線で示している。
【0041】
以上のように、この実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、基板Wの回転数P1を臨界回転数PT以下に設定することにより、基板回転に伴う遠心力のみによって基板端縁部から処理液が流れ落ちるのを防止しながら、その状態で窒素ガスを基板Wの上面中央部に吹き付けてホール62を基板Wの端縁方向に拡大させていき、液膜61の中央側の処理液を基板端縁側に徐々に押し遣り乾燥領域を拡大しているので、基板Wの上面中央部に液滴が残るのを効果的に防止し、ウォータマークの発生を効果的に阻止することができる。また、乾燥処理の間(T21〜T25)、小径ノズル311または大径ノズル312から基板Wの上面に窒素ガスを継続して供給することによって、処理液を確実に、しかも迅速に基板Wの上面から除去するとともに、ウォータマークの発生をより効果的に防止している。
【0042】
また、この第2実施形態では、まず最初に小径ノズル311から窒素ガスを供給して液膜61にスポット的にホール62を形成し、ある程度ホール62が広がった段階で大径ノズル312から窒素ガスを基板Wの上面に吹き付けてホール62をさらに広げている。このため、単一のノズル31を用いた第1実施形態に比べてホール62を確実に形成し、そのホール62を効率よく広げることができ、乾燥処理の前半を第1実施形態よりも確実に実行することができる。また、タイミングT23で窒素ガスの吐出元を小径ノズル311から大径ノズル312に切り替えており、これによって窒素ガスの消費量を抑制することができる。ただし、窒素ガスの吐出元をこのように完全に切り替えることは本発明の必須構成要件ではなく、例えば図7および図8に示す第3実施形態の如く小径ノズル311からの窒素ガス吐出と大径ノズル312からの窒素ガス吐出とを一部オーバーラップさせるようにしてもよい。
【0043】
図7は、この発明にかかる基板乾燥装置の第3実施形態の動作を示す図である。また、図8は第3実施形態での乾燥処理を模式的に示す図である。なお、第3実施形態にかかる基板乾燥装置の装置構成は第2実施形態と同一である。
【0044】
この第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、洗浄処理やリンス処理後の基板Wが搬送ロボット(図示省略)によって装置内部に搬入され、基板保持部1に載置されると、基板保持部1の周縁支持ピン12で基板Wを保持する。そして、搬送ロボットが装置から退避すると、制御部4のメモリ(図示省略)に予め記憶されているプログラムにしたがって制御部4が装置各部を制御することによって、装置各部が以下のように動作して基板Wに対する乾燥処理を実行する。
【0045】
まず、昇降回転機構32がノズル31を回転中心AX周りで水平揺動および昇降させて図4に示すように小径ノズル311および大径ノズル312の先端部を基板Wの上面中央部の直上位置に移動させる。なお、このとき、両電磁バルブ33,35は閉じており、ノズル311,312からの窒素ガスの供給は停止されている。
【0046】
そして、ノズル位置決めが完了すると、図7のタイミングT31で電磁バルブ35のみを開き、小径ノズル311から基板Wの上面中央部に向けて窒素ガスが供給されて基板Wに対する乾燥処理が開始される。このように窒素ガスを小径ノズル311から基板Wの上面に向けて吐出させると、図8(a)に示すように、ノズル31から基板Wの上面に吹き付けられる窒素ガスによって液膜61の中央部の処理液が押し退けられて液膜中央部にホール62がスポット的に形成され、その基板表面が乾燥される。
【0047】
そして、この第3実施形態では、モータ21の回転開始前のタイミングT32で電磁バルブ33も開いて小径ノズル311と大径ノズル312の両方から基板Wの上面中央部に向けて窒素ガスが吹き付けられる(図8(b))。したがって、この第3実施形態では、基板Wに供給される単位時間当りの窒素ガス量が第2実施形態に比べて多くなっており、先に形成されたホール62が基板Wの端縁方向(同図の左右方向)に拡大していく速度が大きくなっている。
【0048】
また、このように単位時間当りの窒素ガス量を増大させた状態のままモータ21が回転し始め、基板Wの回転数が臨界回転数PTと同一値となるまで所定の加速度で加速し、回転数P1(=PT)となった時点で等速回転に移行する。このタイミングT33で電磁バルブ35を閉じて小径ノズル311からの窒素ガスの吐出を停止する。このタイミングT33では、図8(c)に示すようにホール62が基板Wの端縁方向(同図の左右方向)にさらに拡大していき、液膜61の中央側の処理液が中央側から基板端縁側に徐々に押し遣られて乾燥領域が広がっていくとともに、それに伴って基板端縁側の処理液64が基板Wから徐々に落とされていく。やがて、基板Wの上面に付着する処理液の大半が除去されて乾燥処理の前半が完了する(タイミングT34)。
【0049】
そして、タイミングT34より乾燥処理の後半に入り、大径ノズル312からの窒素ガスの吹き付けを継続したまま基板Wの回転を加速して臨界回転数PTよりも高い回転数P3まで加速し、高速回転によって、図8(d)に示すように基板Wの上面端縁部に残存している処理液65を振り切る。その後、基板Wの回転数をゼロまでに減速するとともに、電磁バルブ33を閉じて窒素ガスの供給を停止して乾燥処理を完了する(タイミングT35)。なお、第3実施形態における乾燥処理の後半における動作パターン(図7の実線)を第2実施形態と対比すべく、図7中に第2実施形態における動作パターンを2点鎖線で示している。
【0050】
以上のように、第3実施形態では、乾燥処理の前半の一部において小径ノズル311と大径ノズル312の両方から窒素ガスを基板Wの上面に吹き付けてホール62を基板Wの端縁方向(図8の左右方向)に拡大しているので、第3実施形態にかかる基盤乾燥装置は第1実施形態と同一の作用効果に加え、第3実施形態に特有の作用効果を有している。すなわち、この基板乾燥装置によれば、常に小径ノズル311および大径ノズル312のいずれか一方からしか窒素ガスを吐出しないように構成した第2実施形態に比べて乾燥処理の前半に要する時間を短縮することができ、装置のタクトタイムを短縮することができ、スループットを向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、基板Wの上面に本発明の「気体」として窒素ガスを供給しているが、基板Wに対して悪影響を与えない気体成分なら窒素ガスの代わりに該気体成分を本発明の「気体」として供給してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、乾燥処理の前半における基板Wの回転数P1を臨界回転数PTと一致させているが、この臨界回転数PTよりも小さい回転数(>0)に設定するようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、第2実施形態では基板Wの回転数が所定の回転数P1に達したタイミングT23で窒素ガスの供給元を切り替えているが、この切替タイミングはこれに限定されるものではなく、乾燥処理の前半中に切り替えるようにすればよい。また、第3実施形態では基板Wの回転数が所定の回転数P1に達したタイミングT33で小径ノズル311からの窒素ガスの吐出を停止しているが、この吐出停止タイミングはこれに限定されるものではなく、乾燥処理を終了時点(タイミングT35)までの任意のタイミングで吐出停止を行うようにすればよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、基板乾燥を専門的に行う装置に対して本発明を適用した場合について説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、基板乾燥機能を備えた基板処理装置、例えば同一装置内で洗浄処理やエッチング処理、剥離処理などを実行した後、基板乾燥処理を実行する基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。具体的には、液晶表示装置用ガラス基板に低温ポリシリコン薄膜トランジスタを形成する工程において、ガラス基板上にアモルファスシリコン層を形成し、その表面の自然酸化膜を除去するためにライトエッチングする装置があげられる。
【0055】
この場合、基板処理装置の構成としては、上記実施形態の装置に、さらにエッチング液を供給するエッチング液ノズルと、純水を供給する純水ノズルとが備えられる。そして、アモルファスシリコン層が上面に形成されたガラス基板を基板保持部に保持させると、まず、基板を回転させながらエッチング液ノズルからエッチング液を供給して、アモルファスシリコン層の表面にできている自然酸化膜をエッチング処理して除去する。そして、このエッチング処理の進行により自然酸化膜が除去されると、基板を回転させたままの状態で、エッチング液の供給を停止し、純水の供給を開始してエッチング液を除去する洗浄処理を行う。この洗浄処理でエッチング液が除去されると、次に、基板上に純水を供給して基板上面に純水の液膜を形成する。すなわち、純水の供給を継続したままで基板の回転速度を臨界回転数PTよりも低速度まで低下させるか、あるいは回転停止させる。これにより、基板の表面には純水の液膜が形成された状態となり、その液膜は純水の表面張力により保たれる。十分な液膜が形成されると、純水の供給は停止する。この状態で、上記実施形態と同様の基板乾燥方法を適用する。液膜の形成工程において基板の回転を停止させた場合には、引き続いて第1実施形態におけるT11からの処理を行えばよい。液膜の形成工程において基板を臨界回転数PTよりも低速度で回転させ続けている場合は、基板を回転させたままの状態で窒素ガスを吐出しはじめることで乾燥処理の前半の工程に入る。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成した後、基板を臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を基板の上面中央部に吹き付けているので、基板の上面中央部に液滴が残るのを防止してウォータマークの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる基板乾燥装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す基板乾燥装置の動作を示す図である。
【図3】図1に示す基板乾燥装置での乾燥処理を模式的に示す図である。
【図4】この発明にかかる基板乾燥装置の第2実施形態を示す図である。
【図5】図4に示す基板乾燥装置の動作を示す図である。
【図6】図4に示す基板乾燥装置での乾燥処理を模式的に示す図である。
【図7】この発明にかかる基板乾燥装置の第3実施形態の動作を示す図である。
【図8】第3実施形態での乾燥処理を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…基板保持部
2…回転駆動部
3…気体供給部
4…制御部
31…ノズル
61…液膜
62…ホール
64,65…処理液
311…小径ノズル
312…大径ノズル
PT…臨界回転数
W…基板
Claims (7)
- その上面に処理液が液膜状に付着する基板を乾燥させる基板乾燥装置において、
前記基板を略水平状態で保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の上面中央部に向けて気体を吹き付ける気体供給手段と、
前記回転駆動手段および前記気体供給手段を制御する制御手段とを備え、
前記基板保持手段に保持された基板を回転させた際に該基板に付着する処理液に作用する遠心力と、該基板の端縁部における処理液の表面張力とがほぼ同一となる該基板の回転数を臨界回転数としたとき、
前記制御手段は、乾燥処理の前半で前記基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成するとともに、前記基板保持手段を前記臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を吹き付けて前記ホールを前記基板の端縁方向に拡大させた後、乾燥処理の後半で前記基板保持手段を前記臨界回転数よりも大きな回転数で回転させて処理液を前記基板から振り切って乾燥させることを特徴とする基板乾燥装置。 - 前記気体供給手段は前記基板の上面中央部に向けて気体を吐出するノズルを有しており、しかも、
前記制御手段は、前記乾燥処理の間、前記ノズルから前記基板の上面中央部に向けて継続して吐出する請求項1記載の基板乾燥装置。 - 前記気体供給手段は、前記基板の上面中央部に気体をスポット的に吐出する小径ノズルと、前記小径ノズルを取り囲むように配置されて前記基板の上面中央部に気体を吐出する大径ノズルとを有し、前記小径ノズルおよび前記大径ノズルから気体を同時に、あるいは選択的に吐出可能となっており、しかも、
前記制御手段は、乾燥処理の前半で、前記小径ノズルから気体を吐出させて液膜の中央部にホールを形成し、また前記基板保持手段を前記臨界回転数以下の回転数で回転させながら前記大径ノズルから気体を吐出させて前記ホールを前記基板の端縁方向に拡大させる請求項1記載の基板乾燥装置。 - 前記制御手段は、前記大径ノズルからの気体吐出を開始するのとほぼ同時に、前記小径ノズルからの気体吐出を停止する請求項3記載の基板乾燥装置。
- 前記制御手段は、前記乾燥処理の間、前記小径ノズルおよび前記大径ノズルのうち少なくとも一方から前記基板の上面中央部に向けて気体を継続して吐出する請求項3または4記載の基板乾燥装置。
- その上面に処理液が液膜状に付着する基板を乾燥させる基板乾燥方法において、
基板を回転させた際に該基板に付着する処理液に作用する遠心力と、該基板の端縁部における処理液の表面張力とがほぼ同一となる該基板の回転数を臨界回転数としたとき、
略水平状態で保持された基板の上面中央部に気体を吹き付けて液膜の中央部にホールを形成する工程と、
前記基板を前記臨界回転数以下の回転数で回転させながら気体を吹き付けて前記ホールを前記基板の端縁方向に拡大させる工程と、
前記基板保持手段を前記臨界回転数よりも大きな回転数で回転させて処理液を前記基板から振り切って乾燥させる工程と
を備えたことを特徴とする基板乾燥方法。 - 基板の上面にエッチング液を供給して、前記基板上のシリコン層の表面の酸化膜を除去する工程と、
前記基板の上面に純水を供給して前記基板上のエッチング液を除去する工程と、
前記基板の上面に純水を供給して前記基板上に純水の液膜を形成する工程と、
請求項6に記載の基板乾燥方法を用いて前記基板を乾燥させる工程と、
を備えたことを特徴とする基板のシリコン酸化膜除去方法。
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