JP3802956B2 - 引き裂き容易な包装袋の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易引き裂き性包装袋及びその製造法に関するもので、より詳細には、少なくとも外表面層及び/または中間層が分子配向された熱可塑性樹脂から成る積層体を重ね合わせて製袋することにより形成された包装袋において、包材の損耗等を実質上生じることなしに、更にはシール部のシール強度や耐衝撃強度等を低下させることなしに、易引き裂き性乃至易開封性を付与した包装袋及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品類やその他の小型の製品類を収納する包装袋として、プラスチックフィルム同士、或いは更に紙、金属箔等積層して成る積層体の袋が広く使用されており、これらの積層袋は内容物を充填後、ヒートシールによる密封を容易に行うことができると共に、気密性や破袋強度にも優れているという利点がある。
【0003】
しかしながら、プラスチックフィルムは引き裂き強度が大きく、内容物の取り出し時に手による引き裂きがしばしば困難になるという問題がある。また、引き裂きが袋の表裏で異なった方向に分かれてしまい、いわゆる又裂き状になり、最後まで引き裂き切ることができない。あるいは、又裂きが大きくなると中身がはみだすという問題がある。
【0004】
このため、手による引き裂き性を付与した包装袋、所謂易引き裂き性包装袋も古くから使用されている。易引き裂き性包装袋の最も代表的なものは、分子配向を付与した一軸延伸フィルムを、分子配向方向と袋の引き裂き方向とが合致するように貼り合わせた積層シートを使用するものであり、一軸延伸フィルムが延伸方向に引き裂きやすいという性質を利用するものである。
【0005】
上記積層シートを用いた易開封性包装袋は、破袋強度や易引き裂き性の点では問題ないとしても、単に線状引き裂き予定部に易引き裂き性を付与するために、製袋用シートの全面に一軸配向フィルムを貼り合わせる必要があり、そのため、易開封性包装袋のコストが高くなり、また貴重な資源を浪費するなど、決して好ましいものではなかった。また、引き裂きは直線状のものに限られた。
【0006】
レトルト食品用易開封性包装袋は、今日ではごく一般的なものであるが、その普及と共に、材料の節約、コストの低減が厳しく要求されている。
【0007】
袋の切り裂き予定部に開口線をレーザ等により形成させることも既に知られており、特開昭62−222835号公報には、液体用紙容器のブランク成形後、外部ランクの垂直部上端辺付近に、表層側から全周にわたって略水平方向に炭酸ガスレーザを照射し、幅1mm乃至それ以下の薄肉溝から成る開口線を形成することを特徴とする液体用紙容器の開口線形成方法が記載されている。
【0008】
また、特開平4−327139号公報には、両端縁に熱融着部を有する包装袋であって、包装袋の表裏両面の、相互に対応する位置に形成した引き裂き誘導溝の夫々の端縁を、前記熱融着部の側端縁より約1mm以上の間隔を置いて位置させて成る易開封性包装袋が記載されており、上記誘導溝はレーザにより形成されることも記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、引き裂き予定部に弱化部を形成させる従来の手段では、包材の強度と易引き裂き性とをバランスよく両立させることがしばしば困難であるという事実に直面する。即ち、易引き裂き性包装袋に要求される特性は、引き裂きを線状引き裂き予定部に沿って正しく案内するすることであるが、前述したレーザにより溝等を形成する手段では、引き裂き性は向上しても、これと同時に弱化部に応力が集中して、落下やその他の衝撃に対する強度も同時に低下してしまうという問題がある。
【0010】
また、レーザによる加工方法では、レーザ光を、プラノコンベックスレンズ等により、包材表面に0.2mm程度のスポットに集光して、包材表面のプラスチックを揮散させ、これにより溝或いは線を形成させるが、包材位置が上下に僅かに変動した場合にも、包材が全て或いは過度に切断されてしまう場合があり、加工状態を一定にするためには、加工機の精度を非常に高める必要があり、生産性が低下したり、装置コストが高くなるという問題もある。さらに、包材の一部が高温で昇華し、ヒュームが発生し、包材に付着するという問題もあり、これを防止するために、ヒュームの排気が必要である。
さらに、袋の表裏における細溝がわずかでもずれると引き裂きが困難になったり、引き裂きが細溝からはずれてしまうなどの支障を生じる。
また、金属箔を用いた積層体の場合には、箔が露出し外面側の耐食性を著しく損なうという問題点がある。更に、細くスコア状の溝を設けたものでは、この部分が局部的に屈曲し易くなり、流通の際などに箔が疲労し線状に破断するという問題を生ずる。
【0011】
本発明者らは、包装袋として、少なくとも外表面層及び/または中間層が分子配向された熱可塑性樹脂から成る積層体を使用し、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の強度のレーザビームを、線状引き裂き予定部に沿って連続的に照射し、これにより照射部に溶融弱化樹脂層を形成させることにより、前述した従来法の欠陥のない易引き裂き性弱化部を形成しうることを見いだした。
【0012】
即ち、本発明の目的は、易引き裂き性付与のための格別の材料を用いることなく、また包材の損耗等を実質上生じることなしに、更にはシール部のシール強度や耐衝撃強度等を低下させることなしに、易引き裂き性、即ち易開封性を付与した包装袋及びその製造法を提供するにある。
【0013】
本発明の他の目的は、易引き裂き性の付与を、格別の面倒な制御をを必要とすることなしに容易にしかも高生産性を以て行うことが可能な易引き裂き性包装袋の製造法を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、少なくとも外表面層及び/または中間層が分子配向された熱可塑性樹脂から成る積層体を重ね合わせて製袋することにより形成され且つ上方シート及び下方シートの線状引き裂き予定部が少なくとも部分的に弱化されている易引き裂き性包装袋において、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層が、引き裂き方向を横断する方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、前記横断方向に連続的に或いは前記横断方向に断続的に溶融弱化樹脂層を形成したことを特徴とする易引き裂き性包装袋が提供される。
【0015】
本発明によればまた、少なくとも外表面層及び/または中間層が分子配向された熱可塑性樹脂から成る積層体を重ねて製袋し、袋製造の任意の段階で線状引き裂き予定部に弱化部を形成させる方法において、袋製造の任意の段階で、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層に、引き裂き予定方向を横断する方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の強度のレーザビームを、前記横断方向に沿って連続的に或いは断続的に照射すると共に引き裂き予定方向に走査し、これにより照射部に線状の溶融弱化樹脂層を形成させることを特徴とする易引き裂き性包装の製造法が提供される。
【0016】
本発明の易引き裂き性包装袋においては、
1.線状引き裂き開始部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層が分子配向の緩和乃至消失により弱化樹脂層となっていること、
2.場合によってはそれに加えて、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層がJIS K0068による水分含有量が0.1重量%以上の熱可塑性樹脂であり、発泡により弱化樹脂層となっていること、
3.線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層がほぼ規則的に配列された微細なストライプ状の弱化樹脂層から成ること、
4.前記ストライプ状の弱化樹脂層が20乃至5000μmのピッチを有すること、
5.前記積層体の外表面層或いは中間層が、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステル、ポリアミド或いはオレフィン系樹脂のフィルムから成ること、
6.前記積層体が、表面から順に、熱可塑性ポリエステル/金属箔/オレフィン系樹脂の層構成を有する積層体であること、
7.前記積層体が、表面から順に、熱可塑性ポリエステル/ナイロン/金属箔/オレフィン系樹脂の層構成を有する積層体であること、
8.前記弱化部は、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の強度のレーザビームを、面に沿って連続的に或いは不連続的に照射することにより形成されていること、
が好ましい。
【0017】
また、本発明の易引き裂き性包装袋の製造法では、
1.レーザビームの照射をカライドスコープを通して行うか、
或いは
2.レーザビームの照射をシリンドリカルレンズを通して行う
ことが好ましく、特にカライドスコープを通して行うことが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、製袋に使用する積層体の外表面層及び/または中間層に、分子配向された熱可塑性樹脂を用いるのは、熱可塑性樹脂の分子配向が、積層体の機械的強度や耐衝撃性、ガスバリアー性、耐熱性、透明性等を高めるからである。更に、熱可塑性樹脂の一軸配向は、配向方向への引き裂き性を向上させる作用もある。
【0019】
本発明では、積層体の外表面層及び/または中間層が有する分子配向を利用して、弱化層を形成させる。熱可塑性樹脂層が分子配向、特に二軸配向された状態では、樹脂層の引き裂き強度も当然向上しているが、本発明では、積層体の外表面層及び/または中間層を溶融し、この分子配向を緩和乃至消失せしめることにより、この溶融部分に対して選択的に引き裂きに対して弱化された部分を形成させることが可能となるのである。
【0020】
また、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層がJIS K0068による水分含有量が0.1重量%以上の熱可塑性樹脂である場合には、溶融による配向緩和とともに、樹脂中水分の発泡による弱化も生じ、樹脂層の弱化が一層効果的に生じるようになる。
【0021】
本発明における線状引き裂き予定部の溶融弱化は、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって連続的に分布して行われていることも重要である。即ち、溶融のための熱を1mmよりも広い範囲にわたって分散させることにより、局部的な加熱による樹脂層の溶断や樹脂の蒸発揮散を回避することが可能となるのみならず、円滑な引き裂きを可能にして易引き裂き性を向上させることができる。更に溶融弱化樹脂層に加わる応力を分散させて衝撃等による偶発的な破袋を防止することも可能となる。また、表側の積層体に設けた溶融樹脂弱化層位置と、裏側に設けた溶融樹脂弱化層の位置との間に多少のズレがあったとしても、幅が1mmよりも大きいため、両者の重なり合いを確保し、円滑且つ確実な引き裂きによる引き裂きが可能となる。
【0022】
本発明においては、少なくとも線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層が、ほぼ規則的に配列された微細なストライプ状の弱化樹脂層から成ることが特に好ましい。このような樹脂溶融弱化層では、熱可塑性樹脂の分子配向部と溶融部とが混在し、両者の利点が組み合わせで達成されるからである。尚、この場合の引き裂きは、ストライプ状の溶融部を通る形で行われることになる。また、前記ストライプ状の弱化樹脂層が20乃至5000μmのピッチを有することが、袋の破袋強度を低下させずに、易引き裂き性を付与するために好ましい。
【0023】
更に、積層体の外表面層或いは中間層が、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステル、ポリアミド或いはオレフィン系樹脂のフィルムから成ることが好ましい。これらの樹脂は、一軸配向或いは二軸配向が容易であると共に、配向による物性の向上が大であり、更に溶融による配向の緩和乃至消失も容易であるからである。また、ポリアミドやポリエステルでは、溶融時に発泡による弱化の促進も期待できる。
【0024】
本発明の方法においては、溶融弱化部をレーザ照射により形成させることが重要である。即ち、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層に対するレーザ照射を、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって行うことにより、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の加熱を行うことが可能となり、これにより樹脂材料の損失を防止しつつ、またこの部分の強度の損失を過度に生じることなしに、易引き裂き性の溶融弱化樹脂層を形成させることが可能となる。
本発明における引き裂き予定部には、開封のために引き裂かれる部分に限らず、例えば複数の小袋をヒートシールにより形成した連結袋を個々の小袋に分割するために引き裂く部分なども含まれる。
【0025】
[積層体]
本発明において、包装袋の器壁を構成する可撓性積層体としては、機械的強度や耐熱性等を付与するための延伸プラスチックフィルム、ヒートシール性を与えるためのオレフィン樹脂、或いは更に酸素等に対するガスバリアー性を付与するための金属箔乃至ガスバリアー性樹脂等が複数の組み合わせで、ラミネートの形で使用される。
【0026】
延伸プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステルフィルム:ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、芳香族ナイロン等のポリアミド(Ny)フィルム:プロピレン系重合体フィルム(PP):ポリ塩化ビニルフィルム:ポリ塩化ビニリデンフィルム:エチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)等を挙げることができる。これらのフィルムは、ブレンド物でもよいし、多層体でもよく、一軸延伸或いは二軸延伸のものでもよい。その厚みは、一般に3乃至50μm、特に5乃至40μmの範囲にあることが望ましい。
【0027】
一方、ヒートシール性樹脂フィルムとしては、一般に、低−、中−、高−密度ポリエチレン(PE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、アイソタクティックポリプロピレン(i−PP)、シンジオタクティックポリプロピレン(s−PP)、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン系不飽和カルボン酸乃至その無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等の変性オレフィン系樹脂;比較的低融点乃至低軟化点のポリアミド乃至コポリアミド樹脂;比較的低融点乃至低軟化点のポリエステル乃至コポリエステル樹脂;の1種或いは2種以上の組み合わせからなるものが使用される。これらのフィルムは15乃至100μmの厚みを有するのがよい。
【0028】
一方、ガスバリアー性を付与するために使用される金属箔としては、各種表面処理鋼箔やアルミニウム(Al)等の軽金属箔が使用される。表面処理鋼箔としては、冷圧延鋼箔に、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種叉は二種以上行なったものや、最終圧延に先立って前記メッキ処理を行い、次いで冷間圧延処理を行って得られる表面処理鋼箔を用いることができる。軽金属箔としては、所謂純アルミニウムの他にアルミニウム合金箔が使用される。これらの金属箔は、厚さが150μm以下、特に5乃至120μmのものを使用する。
【0029】
ガスバリヤー性樹脂としては、低い酸素透過係数を有し且つ熱成形可能な熱可塑性樹脂が使用される。ガスバリヤー性樹脂の最も適当な例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができ、例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このエチレン−ビニルアルコール共重合体ケン化物は、フイルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して 0.01dL/g 以上、特に0.05 dL/g 以上の粘度を有することが望ましい。
【0030】
また、前記特性を有するガスバリヤー性樹脂の他の例としては、炭素数100個当りのアミド基の数が5乃至50個、特に6乃至20個の範囲にあるポリアミド類;例えばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6/6,6共重合体、メタキシリレンアジパミド、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ヘキサメチレンテレフタラミド/イソフタラミド共重合体、或いはこれらのブレンド物等が使用される。これらのポリアミドもフイルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、濃硫酸中1.0g/dl の濃度で且つ30℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.1 以上、 特に1.5 以上であることが望ましい。
【0031】
これらのガスバリアー性樹脂は、3乃至50μm、特に5乃至 30μmの厚さで使用される。
【0032】
積層体の適当な例は、内側から外側にかけての層構成で、オレフィン系樹脂ヒートシール層/一軸延伸ポリプロピレンフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/二軸延伸ナイロンフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/アルミニウム箔/二軸延伸ポリプロピレンフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/アルミニウム箔/二軸延伸ナイロンフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/アルミニウム箔/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/エチレンビニルアルコール共重合体/二軸延伸ポリエステルフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/非晶質芳香族ポリアミド/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、オレフィン系樹脂ヒートシール層/金属蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等であるが、この例に限定されない。例えば、最外層、或いは最外層より下の層として、紙の層を設けることができる。
【0033】
本発明に好適に使用される積層体の一例を示す図1において、この積層体1は、表面から順に、熱可塑性ポリエステル(PET)から成る外層2/金属箔から成る中間層3/オレフィン系樹脂のヒートシール用内層4の層構成を有する。好適な積層体の他の例を示す図2において、この積層体1は、熱可塑性ポリエステルから成る外層2/ナイロンから成る第二の中間層5/金属箔から成る第一の中間層3/オレフィン系樹脂のヒートシール用内層4の層構成を有する。
【0034】
積層体1の全体の厚みは、20乃至200μm、特に30乃至150μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲より薄いと、破袋強度が低下すると共に、厚さ方向に対する積層体の外表面層及び/または中間層の選択的な溶融弱化層の形成が困難となり、一方、上記範囲よりも厚いと、袋としての可撓性が失われると共に、引き裂き性の付与が困難となる。
【0035】
積層体の製造は、ドライラミネーション、サンドイッチラミネーション、押出コート、共押出等のそれ自体公知の任意の手段で行うことができる。各層の間に十分な接着性が得られない場合には、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性オレフィン系樹脂接着剤等の接着剤樹脂を用いることができる。
【0036】
また、サンドイッチラミネーションに際しては、任意の樹脂をフィルム間或いはフィルムと樹脂被覆金属箔の間に押し出すことにより行われ、また、押出コートに際しては、任意の樹脂をフィルム或いは金属箔の上に押し出すことにより行われる。押し出す樹脂としては、一般に、低−、中−、高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン系不飽和カルボン酸乃至その無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等の変性オレフィン樹脂;比較的低融点乃至低軟化点のポリアミド乃至コポリアミド樹脂;比較的低融点乃至低軟化点のポリエステル乃至コポリエステル樹脂;前記した樹脂の1種乃至2種以上とおよびまたは公知の充填剤とからなるブレンド樹脂;などが単層押出乃至共押出されて使用される。押出樹脂層を施す表面には、ウレタン系、チタネート系等のアンカー剤を施しておくことができる。
【0037】
[包装袋及びその製法]
本発明の易引き裂き性包装袋は、上記積層体を、ヒートシール性樹脂層同士が対面するように重ね合わせ、これをヒートシール等により製袋することにより形成される。
【0038】
本発明の包装袋の一例(三方ヒートシールパウチ)を示す図3において、この易引き裂き性包装袋10は、一方に折り返し部11と、三方に端縁ヒートシール部12a、12b、12cとを有している。、これらの折り返し部11、或いは三方の端縁ヒートシール部12a、12b、12cの何れかに沿って、幅が少なくとも1mm幅の溶融弱化部から成る線状引き裂き予定部13が形成される。この線状引き裂き予定部13の一端には、一般に必要でないが、それ自体公知のノッチ或いはその他の引き裂き開始部14が設けられていてもよい。線状引き裂き予定部13上面シートのもののみが示されているが、下面シートにも同様の線状引き裂き予定部14が形成されていることが理解されるべきである。線状引き裂き予定部13の一端から引き裂きを開始することにより、線状引き裂き予定部13に案内される状態で、安定に引き裂きが進行するわけである。このタイプの包装袋は、一枚の積層体を重ね合わせ、三方をヒートシールすることにより製造される。ヒートシールは、ヒートシール性樹脂は溶融するが、外表面層及び/または中間層の分子配向された樹脂層が実質的に溶融しない温度条件で行われ、これは、以下の例でも同様である。溶融弱化部13の形成は、後述する方法で行われる。
【0039】
本発明の包装袋の他の例(四方ヒートシールパウチ)を示す図4において、この易開封性包装袋10は、四方に端縁ヒートシール部12a、12b、12c、12dを有し、四方の端縁ヒートシール部12a、12b、12c、12dの何れかの内方端縁から小間隔をおいて、且つこれにこれに沿って、幅が少なくとも1mm幅の溶融弱化部から成る線状引き裂き予定部13が形成される。引き裂きの開始及び進行は図3の場合と同様である。
【0040】
本発明の包装袋の更に他の例(ピロー包装パウチ)を示す図5において、この易開封性包装袋10は、ヒートシールによる中央に延びる合掌貼り15と、合掌貼りと平行な両側の折り返し部11a、11bと、合掌貼りに直角な方向の端縁ヒートシール部12a、12bとを有する。これらの折り返し部11、合掌貼り15或いは二方の端縁ヒートシール部12a、12bの何れかから小間隔をおいて且つこれに沿って、はば1mm以上の溶融弱化部から成る線状引き裂き予定部13が設けられる。
【0041】
本発明の包装袋においては、端縁ヒートシール部及び合掌貼りにおけるヒートシール幅は、破袋防止と使用材料の低減の見地から3乃至15mmの範囲にあることが好ましい。本発明においては、これらのヒートシール部の積層体の外表面層及び/または中間層が分子配向を実質上そのまま維持していることを利用して、溶融弱化樹脂層の形成、即ち線状引き裂き予定部の形成を可能にするものである。
【0042】
本発明のピロー包装パウチにおいて、合掌貼り14の付け根に沿って一対の線状引き裂き予定部13、13を設けると、合掌貼り15を把持部とし、合掌貼り15に沿って引裂きが案内され、合掌貼り14に沿った開封が可能となるので好都合である。
【0043】
[溶融弱化樹脂層及びその形成]
本発明における線状引き裂き予定部の溶融弱化は、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲、好適には2乃至10mmの範囲ににわたって行われていることが重要である。
【0044】
即ち、この幅が1mm以下である場合には、局部的な加熱による積層体の溶断や樹脂の蒸発揮散が生じやすく、引き裂き開始位置の多少のずれによって、円滑な引き裂きが困難となる傾向があり、更に溶融弱化樹脂層に応力集中が生じやすくなり、衝撃等による偶発的な破袋を生じる傾向が増大する。
【0045】
溶融弱化部の引き裂き方向への寸法は、引き裂き方向の全長にわたって設けるのが通常であるが、引き裂きによる引き裂きが実質的に行われる範囲、例えば全長の10分の1以上程度にわたって部分的に設けてもよい。
【0046】
更に、溶融弱化部を形成すべき深さは、積層体の外表面層及び/または中間層の全体にわたっていてもよく、少なくとも積層体の外表面層及び/または中間層の厚みの30%以上、特に50%以上にわたっていることが好ましい。
【0047】
積層体の外表面層及び/または中間層の溶融弱化部において、分子配向が消失乃至緩和しているという事実は、それ自体公知の測定手段、例えば複屈折法、X線回折法、蛍光複屈折法等により確認することができる。
【0048】
本発明においては、溶融弱化部は面方向に連続した所謂ベタの状態で設けることもできるし、また、ほぼ規則的に配列された微細なストライプの形状で設けることもできる。また、ほぼ規則的に配列された微小なドット形状で設けることもできる。
【0049】
溶融弱化による線状引き裂き予定部の断面(幅方向断面)を示す図6において、Aは線状引き裂き予定部13がベタの溶融弱化樹脂層20で形成されている例を示すものであり、Bは線状引き裂き予定部13が多数の微細なストライプ状の溶融弱化樹脂層20aで形成されている例を示すものである。溶融した際樹脂にかかっていた応力が緩和して表面は歪む。
【0050】
図6のAの例では、ベタの溶融弱化樹脂層20の外部には配向樹脂層21が存在するが、線状引き裂き予定部13の内部には溶融弱化樹脂層20が存在するのみで配向樹脂層は存在しない。図6のBの例では、線状引き裂き予定部13の外部には配向樹脂層21が存在すると共に、線状引き裂き予定部13の内部にも、ストライプ状の溶融弱化樹脂層20aとストライプ状の配向樹脂層21とが交互に繰り返して存在する。
【0051】
本発明においては、線状引き裂き予定部13に、溶融弱化樹脂層20が多数のストライプとして存在していることが好ましい。このような樹脂溶融弱化層では、熱可塑性樹脂の分子配向部と溶融部とが混在し、両者の利点が組み合わせで達成されることは既に指摘したとおりである。また、この場合、引き裂きが仮にひとつのストライプからはずれても隣のストライプに移って行われるので、引き裂きの誘導性に優れるというメリットが得られる。
【0052】
また、前記ストライプ状の溶融弱化樹脂層が溶融弱化樹脂層と未溶融部との比にかかわらず20乃至5000μm、特に50乃至2000μmのピッチを有することが、袋の破袋強度を低下させずに、易引き裂き性を付与するために好ましい。また、ストライプの幅は10乃至5000μm、特に30乃至2000μmの範囲にあることが好ましい。
【0053】
本発明では、溶融弱化部の形成は、レーザ照射により形成させることが好ましい。即ち、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層に対するレーザ照射を、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって行うことにより、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の加熱を行うことが可能となり、これにより樹脂材料の損失を防止しつつ、またこの部分の強度の損失を過度に生じることなしに、易引き裂き性の溶融弱化樹脂層を形成させることが可能となる。
【0054】
本発明において、溶融樹脂層は、非晶質化乃至低結晶化された状態にあっても、或いは熱結晶化された状態にあってもよい。配向結晶化された樹脂が表面から厚み方向の途中へのごく限られた部分が短時間の内に急激に融点以上の温度に加熱され且つ加熱中止と共に結晶化温度よりも低い温度に急速に冷却されるようにすると、溶融樹脂層は、非晶質化乃至低結晶化された状態と成る。このように非晶質化され或いは低結晶化されたものでは、加工部の耐衝撃性が高いレベルに保持されている。一方、溶融樹脂層が結晶化温度領域を通過する時間が長いと、溶融樹脂層は熱結晶化する傾向が大となる。溶融樹脂層の熱結晶化はまた、熱間充填やレトルト殺菌等の場合のように、包装袋の熱処理温度域と外層乃至中間層樹脂の結晶化温度域とが重なる場合にも生じる。溶融樹脂が熱結晶化すると、性質としていく分か脆くなり、引き裂き性が向上する利点をもたらす。
【0055】
このような限定された急速加熱及び急速冷却には、例えば炭酸ガスレーザビームの直線状乃至曲線状の走査照射を用いることができ、この場合には、レーザビームの出力及び走査速度を変えることにより、溶融層の厚みと温度とを制御することができる。また、レーザビーム径を変えることによりその幅を制御することが可能となる。
【0056】
レーザー出力は、また、構成基材の種類やインキ層の材質により適宜選択される。また、逆に加工度を強くする場合、赤外線吸収の大きな材料が選択される。
【0057】
本発明の一つの態様では、レーザビームを、プラノコンベックスレンズ(片面がフラットで他方の面が凸となったレンズ)で集光し、積層体にデフォーカスされた状態で照射する。勿論、所定の線状引き裂き予定部の長さを確保するために、走査照射を行う。
【0058】
この態様を説明するための図7において、レーザビーム30を、プラノコンベックスレンズ31(フラット面32、凸面33)で集光し、積層体1に、デフォーカスされた状態、即ち、フォーカス距離fよりも更にデフォーカス距離f0 だけ離された状態で、照射する。
【0059】
普通にレーザビームを照射する場合を考えると、積層体の位置に焦点を合わせる(f)のが通常であるが、その場合のレーザビームの強度分布は図8の曲線aの様な急峻なガウシャン分布となる。したがって、幅が狭く(半値幅H0 )、中心部の強度が高くて、積層体の表面温度は高温となる。これに対して、本発明では、図7に示すように、焦点位置をずらして(デフォーカスして)、積層体に照射する。こうすることにより、図8の曲線bに示すように、レーザビームの強度分布は滑らかなガウシャン分布(半値幅H1 、H1 >>H0 )になる。したがって、中心部は高温にならず、ヒュームの発生はなく、また、幅広い弱化部が加工される。集光レンズとしてはプラノコンベックスレンズの他、メニカスレンズ、非曲面レンズ、両面凸レンズなど、公知のレンズを必要に応じて用いることができる。
【0060】
本発明の他の好適な態様では、レーザビームを、シリンドリカルレンズ(かまぼこ型で、片面がフラットで他方の面が凸となり長手方向に延びているレンズ)で集光し、加工方向に走査しながら照射を行う。
【0061】
この態様を説明するための図9において、レーザビーム30を、シリンドリカルレンズ34(フラット面32、凸面35)で集光し、積層体1に、加工方向Xに走査しながら、照射する。この場合、レーザビームは線上に集光され、曲面と平行な方向の幅広い集光ビームはほぼ均一な強度分布となるが、この集光ビームを、線ビームに対して直角方向に走査することにより、幅が1mm以上でしかもベタ状の弱化部13を加工できる。もちろん、走査方向に平行な1本乃至数本のマスキング用スケットを介して照射すれば数本からなるストライプ状の弱化部も加工できる。
【0062】
本発明の最も好適な態様では、レーザビームを、カライドスコープ(管状光学干渉系)を通して、積層体にレーザの干渉パターンを照射する。勿論、必要な線状引き裂き予定部の長さを確保するために、走査照射を行う。
【0063】
カライドスコープを説明するための図10において、このカライドスコープ36は金属製の直方体筒であり、中心付近に種々の形状をした断面の穴37が開いており、内面38は反射率の高い金メッキなどが施されているものである。内面38で反射されたレーザ光の波長が整数倍ずれた部分では光が重なり合い、半波長ずれた部分では光が打ち消しあって、微細な干渉パターン40が形成される。
【0064】
カライドスコープ36の空洞部入り口37に、プラノコンベックス31でレーザビーム30を集光させると、カライドスコープ36の出口のレーザビームは空洞部の断面が四角形であると、図11に示されるような点状集合ビームとなる。このビームを走査させることにより、図12に示すような多数本のストライプ状の走査ビームが形成される。これにより、包材の強度低下がなくなる上に、引き裂き性は低下しない。
【0065】
即ち、実施例および比較例で示すようにナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)の積層フィルムに、通常のスリット露光により、スコアに直角方向の降伏点強度が2.5乃至3.1kgfとなるような加工を行った場合、伸び(歪み)が10%以下に低下し、加工部の強靱性(テナシティー)が大きく低下するが、カライドスコープによる干渉パターン加工では、同様の降伏点強度となる加工で、20%以上となる伸びを維持でき、加工部の強靱性を2倍以上に保持することができる。なお、この効果はこの積層フィルムに限らず種々のもので同様に得られる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム箔(7μm)/ポリプロピレン(25μm)では、スコア加工に比較して、降伏点強度で1.5〜2倍、降伏点ひずみで約2倍の強靱性が得られる。
【0066】
カライドスコープからの点状集合ビームにおいて、それぞれの点の間隔と大きさは、カライドスコープ出口からの積層体への距離(離すほど間隔は広がり大きくなるが、強度は低下する)や、断面の寸法、カライドスコープの長さにより変化する。
【0067】
カライドスコープの空洞部の入り口の大きさと出口の大きさを変えることも可能であり、これにより非常に幅の大きな弱化部が加工できる利点がある。例えば、図13のAに示すように、入り口が5mm×3mmの大きさで、出口が18mm×3mmの大きさであると、点状集合ビームの大きさは約20mm×5mmの大きさになる。また、点状集合ビームのパターンは図13のBの様になる。
【0068】
また、カライドスコープを、プラノコンベックスレンズの光軸から、図14のAに示すように傾けると、図14のBに示すように、傾けた方向に点状ビームの点間間隔が広がる。
【0069】
さらに、図15に示すように、カライドスコープの空洞部の入り口37の形状は、四角形以外に、三角形、六角形などの形状でも可能である。この場合、空洞部が三角柱乃至六角柱ならば、多数のドット状樹脂溶融弱化部が得られる。
【0070】
図16には、カライドスコープの空洞入り口の形状及び寸法が5mm×3mmの場合、レーザビームを走査照射したときの加工パターンを示す。被加工物の表面は溶融して細かい凹凸のパターンになっている。また、図16のBに示すようにレーザ出力を上げると溶融部の幅が広がり逆に未溶融部は狭くなる。ストライプ間のピッチは約0.3mmであった。
【0071】
本発明において、レーザビームとしては、炭酸ガスレーザーが使用されるが、一般にその出力は、10W乃至1.2KWの範囲にあるものが好適であるが、勿論これに限定されない。
【0072】
本発明において、樹脂溶融による弱化層の形成は、製袋前、製袋中或いは製袋後の任意の段階で施すことができる。例えば、積層体を製造するための任意の段階、即ち、ラミネート前、ラミネート中、或いはラミネート後の表面層、或いは中間層となるべき分子配向フィルムに、レーザビームを走査照射して、線状引き裂き予定部となる所定の長さの溶融弱化部を形成させることができる。
【0073】
製袋に付するべき積層体の一例を示す図17において、この積層体1は、対向するシート部分17a、17bに折り返されるべき部分18と、ヒートシールされるべき三方の部分19a、19b及び19cとを備えており、溶融弱化による線状引き裂き予定部13は両方のシート部分17a、17bのシール用部分19cの内方端縁から小間隔をおいて且つこれに沿って形成されている。この場合、溶融弱化層13は1mm以上の幅にわたって形成されているので、折り返されるべき部分18から一方のシート17aの溶融弱化層13への距離L1 と、折り返されるべき部分18から他方のシート17bの溶融弱化層13への距離 L2 とが厳密に一致せず、両者の間に多少のズレがあっても、包装袋の手による引き裂き引き裂きを円滑に行うことができる。
【0074】
また、本発明の包装袋には、積層体の引き裂き開始部となる引き裂き開始部等をそれ自体公知の手段で設ける場合もあるが、この引き裂き開始部の形成の後で或いは引き裂き開始部の検査工程で、引き裂き案内部となる溶融弱化層の形成を行ってもよい。更に、製袋工程における積層体の巻き出し工程で、或いは製袋後、包装袋の所定位置に溶融弱化層の形成を行うことができ、また、包装袋への内容物の充填前或いは充填後に溶融弱化層の形成を行うことができる。
【0075】
【実施例】
本発明を次の例で更に具体的に説明する。
表1に示す5種類の積層体を準備した。
【0076】
【表1】
また、カライドスコープとして次の2種類を、さらに焦点距離2.5インチのプラノコンベックスレンズおよび3.5インチのシリンドリカルレンズを準備した。
カライドスコープA:長さ138mm、空洞部の入り口寸法3mm×6mmの矩形、出口寸法6mm×6mmの矩形。
カライドスコープB:長さ138mm、空洞部の入り口寸法5mm×3mmの矩形、出口寸法18mm×3mmの矩形。(図13のA参照)
また、落下試験、引裂強度測定、引張試験は以下の方法で行った。
【0077】
[落下試験]
5℃下で、120cmの高さから、パウチを正立および倒立にした状態と横にした状態の3通りで、それぞれ10回ずつコンクリート面に落下させ、破袋の有無を評価した。
【0078】
[引裂強度測定]
レーザ加工部を僅かに引き裂いた後、二つになった部分をそれぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機を用いて引き裂いた。なお、引裂速度は300mm/分で、引き裂いてない部分については水平になるように手で押さえて行った。
【0079】
[レーザ加工部における材料強度測定]
レーザ加工部に垂直に幅15mmの短冊を切り出し、レーザ加工部を延伸する部分の中央に配置し、引張試験機を用いて延伸した。延伸部分の初期試料長は20mm、引張速度は50mm/分で行った。
【0080】
実施例1〜4
図10のように炭酸ガスレーザビームをプラノコンベックスレンズで点状集合ビームにしカライドスコープAを介して、積層体5のナイロン面にロール方向に沿って速度13m/分で弱化帯を加工した。なお、カライドスコープ出口面と積層体との距離は8mmに調整した。また、レーザ出力は160Wから220Wまで20Wおきに変化させた(実施例1〜4)。
このようにして得られた積層体の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察した。160Wと180Wの条件では、弱化帯の全体の幅は約6mmであり、幅約150μmの溶融弱化線部とやはり幅約150μmの未溶融線部が交互に存在していた。断面を観察するとナイロン層の各々の溶融弱化線部の中央部は元の厚さより僅かに薄くなっており、端では盛り上った状態となっていた。また、200Wと220Wの条件では、溶融弱化線の幅が広がるとともに、ナイロン層の溶融弱化線部の一部に発泡がみられたが、貫通に至るものではなかった。
この2層からなる積層体を用いて、ドイパック式のスタンディングパウチを作成し、液体洗剤を500ml充填し密封した。なお、レーザ加工部はパウチの充填口側のヒートシール部に平行に、かつ、パウチ頂部より15mm下にパウチの表裏にそれぞれ位置させた。また、引き裂き開始部となる端縁ヒートシール部にはVノッチを刻切した。
これらのパウチについて落下試験を行ったところ、いずれの条件のものでも未加工のパウチと同じに破袋したものはなかった。また、レーザ加工部から引き裂いたところ、いずれも弱化帯に沿って直線的に引き裂かれ、最後まで引き裂き切ることができた。引き裂き性はレーザ出力が大きい程優れていたが、これはナイロン層の分子配向の緩和の促進あるいは発泡によるものと考えられる。また、引き裂いた部分は目視では直線的であるが、走査型電子顕微鏡で観察すると、主には一本の溶融弱化線部に沿って引き裂かれ、途中で引き裂きがずれ隣接する溶融弱化線部に移っている部分も見られた。このように、直進引き裂き性は複数の溶融弱化線部を微少間隔おいて平行に配置していることにより安定的に保持されていた。なお、表裏の溶融弱化線部のずれはほとんどが1mm以内であったが1.5mm程度のものもあった。また、引裂強度はいずれの条件のものでも、およそ0.7kgfであった。
なお、この積層体のナイロンフィルム層を引き剥がし、JIS K 0068により規定されている方法で測定した水分含有量は1.5重量%であった。
【0081】
比較例1〜5
図7のように炭酸ガスレーザビームをプラノコンベックスレンズで集光し、実施例1で用いた積層体5のナイロン面に、積層体のロール方向に速度13m/分で弱化線を加工した。このとき、レンズと積層体との距離が焦点距離と一致するように調整した。また、レーザ出力を5Wから25Wまで5Wおきに変化させた。(比較例1〜5)なお、出力10W以上では、加工時にナイロン層が昇華して、ヒュームが多量に発生し、レンズが汚れた。
このようにして得られた積層体の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、5Wの条件のものでは、レーザ加工により形成した凹部でのナイロン層の残厚は、薄いところで元厚の80%と、弱化線はほとんど形成されていなかった。また、15W以上の条件のものでは弱化線の幅は1mm以下であり、外面のナイロン層が完全に消失し破断していた。10Wの条件のものは5Wと15Wの条件のものとの中間的な状態で、一部では5Wと同様に弱化線の形成は不十分で、一部では15Wのように破断し、残りの部分はナイロン層がわずかに残っていた。
この2層からなる積層体を用いて、実施例1と同様に、スタンディングパウチを作成し、液体洗剤を500ml充填し密封した。なお、レーザ加工部をパウチの表裏の同じ位置に位置させることは加工部の幅が狭いため、実施例1に比較し、かなり困難であった。更に、引き裂き開始用のVノッチを適正な位置に刻切することも困難であった。
実施例1と同様に、落下試験を行ったところ、5Wと10Wの条件のものでは破袋したものはなかったが、15W以上では破袋するものが50袋中3乃至4袋あった。また、レーザ加工部から引き裂いたところ、5Wと10Wの条件では、引き裂きは加工部から大きくはずれてしまった。15W以上の条件のものでは注意して引き裂けば、弱化線に沿って直線的に引き裂かれたが、希に弱化線からはずれるものがあった。
15W以上の条件(比較例3〜5)のパウチについて、詳細に調べたところ、引き裂きが弱化線からはずれなかったものは、表裏の弱化線のずれは0.2mm以内であったが、はずれたものは0.5mm程度あった。また、引裂強度を測定したところ、弱化線のずれが0.2mm以内のものはおよそ0.7kgfであったのに対し、ずれが0.5mmのものは1.3kgf以上の値を示し、弱化線からはずれると4kgf以上の値を示した。このように比較例1のパウチの引裂性は表裏の弱化線の位置関係に極めて強い依存性を示し、良好に引き裂かれるための表裏におけるずれの許容範囲は0.2mm程度であった。
【0082】
実施例1〜4と比較例1〜5で作成した積層体のそれぞれについて、レーザ加工部の材料強度を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
表2のように、実施例1〜4は比較例1〜5よりも、降伏点強度では僅かに高い値を示し、降伏点ひずみでは3倍程度大きい値を示した。これは、比較例ではレーザ加工部の深さに関係なく、一本しかない溶融弱化線部に応力が集中し局所的に変形したのに対し、実施例では多数の溶融弱化線部に応力が分散し、蛇腹状に大変形したことによる。
【0083】
実施例5
カライドスコープBを用い、レーザ出力300W、走査速度60m/分とした以外は、実施例1と同条件でスタンディングパウチを作成した。なお、走査方向はカライドスコープ出口の長手方向と一致させた。
このように作成したパウチのレーザ加工部には、幅約50μmの溶融弱化線部と幅約300μmの未溶融線部が交互にストライプ状に、幅3mmで存在していた。
このパウチは、レーザ加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
【0084】
実施例6
レンズと積層体との距離を12mmデフォ−カスした距離にし、レーザ出力を35Wにした以外は、比較例1と同条件でスタンディングパウチを作成した。なお、加工時にはヒュームは発生しなかった。
このように作成したパウチのレーザ加工部には、幅約1.1mmの溶融弱化線1本からなる弱化帯が形成していた。
このパウチは、レーザ加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
【0085】
実施例7
図9に示すようにシリンドリカルレンズを用い、レーザ出力120Wとした以外は、実施例1と同条件でスタンディングパウチを作成した。なお、積層体は焦点距離3.5インチに位置させ、加工部が広幅となる方向に走査させた。
このように作成したパウチのレーザ加工部には、幅約6mmの溶融弱化線1本からなる弱化帯が形成していた。
このパウチは、レーザ加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
【0086】
実施例8
積層体1のPET面に実施例1と同じ光学系を用いてレーザ加工を施し、図4に示す4方ヒートシールパウチを作成した。また、引き裂き開始部となる端縁ヒートシール部にはVノッチを刻切した。
レーザ加工は、レーザビームを走査させて、出力210W、速度13m/minで行った。
このように作成したパウチのレーザ加工部には、幅約150μmの溶融弱化線部とやはり幅約150μmの未溶融線部が交互にストライプ状に、幅6mmで存在していた。この部分から切片を切り出し、偏光顕微鏡で観察したところ、溶融弱化線部ではレーザ加工により外面PET層が溶融し、配向が緩和乃至消失していた。また、溶融部の一部には発泡がみられた。
このパウチは、引き裂き用ノッチから容易に、しかも、加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。なお、この積層体のPETフィルム層を引き剥がし、JIS K 0068により規定されている方法で測定した水分含有量は0.1重量%であった。
【0087】
実施例9
積層体を真空乾燥機を用いて2日間調整した以外は、実施例8と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。
レーザ加工部は実施例8とほぼ同様であったが、溶融弱化線部には発泡はみられなかった。この積層体のPETフィルム層を引き剥がし、JIS K 0068により規定されている方法で測定したときの水分含有量は0.05重量%であった。
【0088】
実施例10
積層体4を用い、レーザ出力を190Wした以外は、実施例8と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。
レーザ加工部は実施例8とほぼ同様で、一部に発泡がみられた。この積層体のPETフィルム層を引き剥がし、JIS K 0068により規定されている方法で測定したときの水分含有量は0.12重量%であった。
このパウチは、引き裂き用ノッチから容易に、しかも、加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
また、このパウチ10袋にミートソース160gを充填密封し、121℃−20分のレトルト殺菌を施した。この後、35℃−1ヶ月間の保存試験を実施した。保存後、内容物を調べたが異常はみられなかった。
【0089】
比較例6
比較例1と同じ光学系を用い、レーザ出力を20Wとした以外は、実施例10と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。なお、加工時にはPET層が昇華して、ヒュームが多量に発生し、レンズが汚れた。
このようにして得られた積層体の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、弱化線の幅は0.4mmであり、外面のPET層が完全に消失し破断していた。
このパウチ10袋に、実施例10と同様の保存試験を実施したところ、保存後、内容物は赤茶色から茶色乃至焦げ茶色に変色し、すべて変質していた。パウチの周縁ヒートシール部を切り取り、内容物を洗い落とした後、パウチ側壁を光に透か溝してみたところ、レーザ加工部においてアルミ箔が破断していた。
【0090】
実施例11
積層体3を用いた以外は、実施例8と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。
レーザ加工部は実施例8とほぼ同様であったが、PET層の下に位置するナイロン層に多くの発泡がみられた。
このパウチは、引き裂き用ノッチから容易に、しかも、加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
また、このパウチ10袋に、実施例10と同様の保存試験を実施したところ、すべて異常はみられなかった。
【0091】
比較例7
積層体3を用いた以外は、比較例6と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。なお、加工時にはPET層乃至はナイロン層が昇華して、ヒュームが多量に発生し、レンズが汚れた。
レーザ加工部は、比較例6とほぼ同様に、弱化線の幅は0.4mmであり、外面のPET層からナイロン層までが完全に消失し破断していた。
このパウチ10袋に、実施例10と同様の保存試験を実施したところ、やはり比較例6と同様に、内容物が変色しすべて変質していた。原因はアルミ箔の破断に起因するものであった。
【0092】
実施例12
積層体2を用い、出力を230Wとした以外は、実施例8と同条件で4方ヒートシールパウチを作成した。
レーザ加工部は実施例8とほぼ同様であったが、溶融弱化線部には発泡はみられなかった。この積層体の延伸PPフィルム層を引き剥がし、JIS K 0068により規定されている方法で測定したときの水分含有量は0.01重量%以下であった。
このパウチは、引き裂き用ノッチから容易に、しかも、加工部に沿って直線的に引き裂かれ、容易にパウチを二つに最後まで引き裂き切ることができた。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、積層体の外表面層及び/または中間層が有する分子配向を利用して、溶融樹脂弱化層を形成させることにより、熱可塑性樹脂層が分子配向されていることの利点を保全しながら、この溶融部分に対して選択的に引き裂きに対して弱化された部分を形成させることが可能となる。
【0094】
また、線状引き裂き予定部乃至その近傍の溶融弱化を、引き裂き方向を横切る方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、連続的に或いは不連続的に面方向に分布するように行うことにより、溶融のための熱を1mmよりも広い範囲にわたって分散させることが可能となり、これにより、局部的な加熱による溶断や樹脂の蒸発揮散を回避することが可能となる。のみならず、引き裂き開始位置のずれに対する許容度を増大させて、円滑な引き裂きを可能にして易引き裂き性を向上させ、更に溶融弱化樹脂層に加わる応力を分散させて衝撃等による偶発的な破袋を防止することも可能となる。また、表側の積層体に設けた溶融樹脂弱化層位置と、裏側に設けた溶融樹脂弱化層の位置との間に多少のズレがあったとしても、幅が1mmよりも大きいため、両者の重なり合いを確保し、円滑且つ確実な引き裂きによる引き裂きが可能となる。
【0095】
更に、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層がJIS K 0068による水分含有量が0.1重量%以上の熱可塑性樹脂である場合には、溶融による配向緩和とともに、樹脂中水分の発泡による弱化も生じ、樹脂層の弱化が一層効果的に生じるようになる。
【0096】
本発明の好適態様に従い、少なくとも線状引き裂き予定部乃至その近傍の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層に、ほぼ規則的に配列された微細なドット状或いはストライプ状の弱化樹脂層を形成させると、このような樹脂溶融弱化層では、熱可塑性樹脂の分子配向部と溶融部とが混在し、両者の利点が組み合わせで達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に好適に使用される積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に好適に使用される積層体の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の包装袋の一例(三方ヒートシールパウチ)を示す平面図である。
【図4】本発明の包装袋の他の例(四方ヒートシールパウチ)を示す平面図である。
【図5】本発明の包装袋の更に他の例(ピロー包装パウチ)を示す平面図である。
【図6】溶融弱化による線状引き裂き予定部の表面状態を示す説明図であって、Aは線状引き裂き予定部がベタの溶融弱化樹脂層で形成されている例、Bは線状引き裂き予定部がストライプ状の溶融弱化樹脂層で形成されている例、Cは線状引き裂き予定部がドット状の溶融弱化樹脂層で形成されている例を示す。
【図7】本発明の一つの態様に従い、レーザビームをプラノコンベックスレンズで集光し、積層体にデフォーカスされた状態で照射する例を示す説明図である。
【図8】図7の例におけるレーザビームの強度分布を示すグラフである。
【図9】本発明の他の態様に従い、レーザビームをシリンドリカルレンズで集光し、積層体に走査下に照射する例を示す説明図である。
【図10】本発明の更に他の好適態様に従い、レーザビームをカライドスコープに導き、積層体に照射する例を示す説明図である。
【図11】正方形の入口と出口とを有するカライドスコープを使用した場合の点状集合ビームを説明するための説明図である。
【図12】図11のカライドスコープを使用して走査を行った場合の線状ビームを示す説明図である。
【図13】カライドスコープの入口及び出口の寸法関係及び形成される線状ビームを示す説明図である。
【図14】カライドスコープを光軸からずらして配置する態様と、これにより形成される点状集合ビームとの関係を示す説明図である。
【図15】カライドスコープの入口の形状と、形成される点状集合ビームとの関係の数例を示す説明図である。
【図16】図10の方法により形成される溶融樹脂弱化部の組織の一例を示す正面図である。
【図17】本発明の別の態様に従い、赤外線ランプとカライドスコープを使用して、積層体に赤外線を照射する例を示す説明図である。
Claims (3)
- 少なくとも外表面層及び/または中間層が分子配向された熱可塑性樹脂から成る積層体を重ねて製袋し、袋製造の任意の段階で線状引き裂き予定部に弱化部を形成させる方法において、袋製造の任意の段階で、線状引き裂き予定部の外表面樹脂層及び/または中間樹脂層に、引き裂き予定方向を横断する方向の幅が1mmよりも大きい範囲にわたって、外表面樹脂層及び/または中間樹脂層の溶融を生じるがその飛散を実質的に生じない程度の強度のレーザビームを、前記横断方向に沿って連続的に或いは断続的に照射すると共に引き裂き予定方向に走査し、これにより照射部に線状の溶融弱化樹脂層を形成させることを特徴とする易引き裂き性包装袋の製造法。
- レーザビームの照射をカライドスコープを通して行う請求項1記載の製造法。
- レーザビームの照射をシリンドリカルレンズを通して行う請求項1記載の製造法。
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