JP3801041B2 - 水噴射式スクリュー圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気等のガスを圧縮するスクリュー圧縮機に係り、特に1対のロータとケーシング間に形成される圧縮作動室に水を噴射する水噴射式スクリュー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子関連、食品、化学などの油分の混入を嫌う産業分野においては、吐出ガスに油分が混入しないオイルフリー圧縮機が多用される。このオイルフリー圧縮機では、ロータ同士またはロータとケーシングとの接触を防止するために油冷式圧縮機で用いる潤滑油を使用できない。したがって、ロータ同士またはロータとケーシング間の隙間が増大し、圧縮機の効率が低下する。この不具合を解消するために、作動ガスに混入されてもプロセスがほとんど影響を受けない水を油の代わりに圧縮作動室に噴射し、ロータ間やロータとケーシング間のシールと潤滑を兼用させる方法が各種提案されている。
【0003】
この水噴射式スクリュー圧縮機の例が、特開平10−141262号公報に記載されている。この公報では、水潤滑式スクリュー圧縮機の密封性を高めるためと、タイミングギアを不用にするために、雄スクリューロータは、金属製中心軸の外周に熱硬化性合成樹脂のロータ歯部を一体に設けている。雄スクリューロータの中心軸に原動機から動力が伝達される。これにより、雄側のロータ歯部とメス側のロータ歯部およびシリンダとの密封性が向上し、粘度が低く密封性に劣る水を潤滑液に使用して、密封性を向上させている。
【0004】
水噴射式スクリュー圧縮機の他の例が、特表平10-512938号公報に開示されている。この公報では、気体媒体の環境的に許容できる圧縮を可能にするために、コンプレッサ設備は添加剤の無いオイルレス冷却水で冷却されている。そして、コンプレッサ内への冷却水の噴射は、圧縮が略等温になるように容量決定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
圧縮作動室内に水を噴射する水噴射式スクリュー圧縮機では、水の粘性が低いので十分なシール効果を高めるために、圧縮作動室内に多量の水を注入する。圧縮作動室内に多量の水を注入すると、圧縮作動室内における水の攪拌損失が増大してエネルギー効率が低下する。また、スクリューロータが高速回転する圧縮機では、噴射された微粒子の水と圧縮空気とが熱交換するのに必要な時間を圧縮行程において十分には確保できず、所期の冷却効果を得ることが困難である。
【0006】
つまり、特開平10−141262号公報においては、圧縮機の圧縮過程で発熱して合成樹脂製のロータの歯部が変形するのを、水噴射により低減できるという効果がある。また、これによりロータ同士またはロータとシリンダ間のシール性能を向上できる。しかしながら、この公報に記載のものでは、樹脂製のロータを用いているので圧縮熱による変形量は金属製に比べて大となり、ロータ間やロータとシリンダ間に熱変形を考慮して組み立てるために形成される隙間も大きくならざるを得ない。
【0007】
また、特表平10-512938号公報においては、冷却水分配装置を用いて冷却水を取り込みダクトとコンプレッサハウジングに噴射して、コンプレッサ内空気を100%飽和させて作動ガスの圧縮過程を等温変化に近づけている。しかしながらこの公報に記載のものでは、等温変化を生じるためには圧縮過程に作動ガスが留まる時間を長時間必要とし、圧縮機を高速化して小型化するというニーズを満足することが困難である。
【0008】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、オイルフリースクリュー圧縮機を高速小型化することにある。本発明の他の目的は水噴射式スクリュー圧縮機において、圧縮機の性能を向上させることにある。本発明のさらに他の目的は、安価で高効率のオイルフリースクリュー圧縮機を実現することにある。そして、本発明はこれら目的の少なくとも1つを達成することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、1対の雄スクリューロータと雌スクリューロータと、これらロータを収容するケーシングとを有し、ケーシングに1対のロータとケーシングにより形成される圧縮作動室に水を注入する第1の給水部を形成し、圧縮作動室に連通し作動ガスを外部から吸入する吸入部に水を注入する第2の給水部を形成し、この第2の給水部に注入される水を微粒化させる微粒化手段を設け、微粒化手段で微粒化した水を第2の給水部から吸入空気に噴霧させるものであって、第2の給水部から注入される水の平均粒径を、第1の給水部から噴霧される水の平均粒径よりも小にしたことにある。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の他の特徴は、1対の雄スクリューロータと雌スクリューロータと、これらロータを収容するケーシングとを有し、1対のロータ間に形成される圧縮作動室に水を注入する第1の給水部と、作動ガスを外部から吸入してこの圧縮機に導くための吸入部に水を注入する第2の給水部とをそれぞれ形成し、この第2の給水部にノズルを設け、このノズルは微粒化した水を吸入空気に噴霧させるものであって、第2の給水部から注入される水の平均粒径を、第1の給水部から噴霧される水の平均粒径よりも小としたことにある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水噴射式スクリュー圧縮機の一実施例を図面を用いて説明する。図1は、水噴射式スクリュー圧縮機の模式図であり、図2はそのA−A断面図である。図1では、圧縮機本体11を縦断面図で示してあり、ガスおよび潤滑水の流れ系統をも同時に示している。なお、作動ガスには空気を用いている。
【0015】
水噴射式スクリュー圧縮機12は圧縮機本体11と圧縮機本体11で圧縮された空気から水を分離し、分離した水を貯えるレシーバタンク14とを備えている。レシーバタンク14の上部には、圧縮空気供給配管17が接続されている。レシーバタンク14の底面近くの側壁部に、詳細を後述する潤滑およびシールのための水を圧縮機本体11に供給する給水配管18が接続されている。給水配管18の途中には、バルブ27が設けられている。バルブ27の下流側には切換え弁30が設けられ、この切換え弁30の一方は圧縮機本体11に給水する配管20に、他方はバルブ28を介在させた配管19に接続されている。配管19の端部は、外部給水源13に接続されている。
【0016】
圧縮機本体11に給水する配管20は、さらに分岐部29で2系統に分けられる。一系統はバルブ25を介在させた配管24を経て圧縮機本体11の吸込み側に給水する。他方は、配管21、バルブ22および配管23を経て圧縮機本体11のスクリューロータ部に給水する。圧縮機本体11に給水された水は、圧縮空気に混じって圧縮空気吐出配管16からレシーバタンク14に導かれる。レシーバタンク14の下部には、レシーバタンク14内で圧縮空気と分離した水が溜められる。溜まった水は、圧縮機本体11から吐出される圧縮空気により加圧され、給水配管18へと導かれる。
【0017】
圧縮機本体11は、図2にその詳細を示すように、1対の噛み合わされた雄スクリューロータ1と雌スクリューロータとを備えており、ケーシング3にこれら両ロータ1、2は収容されている。雄ロータ1の両軸端部は、軸受7、8で支持されている。同様に、雌ロータ2の両軸端部も軸受で支持されている。雄ロータ1の外周部には4枚の歯1aがネジ状に形成されている。軸受7と雄ロータ歯1a部の間にはシール9が、軸受8と雄ロータ歯1a部の間にはシール10がそれぞれ設けられており、軸受7、8部と圧縮作動室11aとの間の漏れを防止する。シール9及び軸受7は、吸入側ケーシング4に保持されている。吸入側ケーシング4とケーシング3とは、フランジ部でボルト締結されている。
【0018】
ケーシング3には、ボアと呼ばれる一部重複する円筒状の穴が2本形成されている。この穴に雄雌両ロータ1、2を収容することにより、ロータ歯溝間とケーシング3の壁面間に圧縮作動室11aが形成される。吸入側ケーシング4の側部には、ケーシングカバー6がボルト締結されている。軸受7の側部は軸受押え板34で押えられており、軸受押え板34はケーシング4に取り付けられている。軸受押え板34の中央部に形成された穴を貫通して、雄ロータ1の駆動軸1bが機外に延びている。駆動軸1bは図示しないカップリングを介して電動機に接続される。軸受8の側部も軸受押え板35で押さえられており、軸受押え板35はケーシング3に取り付けられている。
【0019】
図3に、雄ロータ1および雌ロータ2の展開図を示す。この展開図は、各ロータ1、2の外周円筒面を横軸に展開した図である。吸入側ケーシング4のケーシング3との接続面側には、各ロータ1、2の回転軸部の外周の大部分にわたって吸入口31が形成されている。この吸入口31には、図示しないフィルターを経た空気が本体空気吸入配管15を介して吸入される。一方、ケーシング3のシール10側には、雄ロータ1と雌ロータ2との接触部付近に吐出口32が設けられている。圧縮機本体11の圧縮作動室11aで圧縮された空気は、水と混合してこの吐出口32から本体空気吐出配管16を経て、レシーバタンク14に吐出される。
【0020】
図2、3に示すように、ケーシング3の中間部であって複数箇所A,B,C,Dに、圧縮作動室11aに給水する給水部36が形成されている。この給水部36は、圧縮作動室11aが密閉空間を形成する位置に形成される。つまり、圧縮作動室11aの端部が吸入口31にも吐出口32にもかからず、ケーシング3、4により密封される場所にあるときの、圧縮作動室に対応するケーシング3の壁面部に給水部36を形成する。
【0021】
給水部36の詳細を図4に示す。中央部に先止まり穴36bが形成された給水部材36aの底部に、角度θだけ傾斜させて外部と連通する複数の小孔36cを形成する。吸水部材36aの外側の底面中央部には窪み部36dが形成さている。これにより、先止まり穴36bに導かれた水は、小孔36cから圧縮作動室11aに広範囲にわたって噴射され(36e)る。
【0022】
このケーシング3の中間部に設けた給水部36から噴射される水は、圧縮機本体11内の1対のスクリューロータ1、2間及びスクリューロータ1、2とケーシング3間の空気の漏れをシールする。また、1対のスクリューロータ1、2とケーシング3との金属接触をも防止し、さらに、両ロータ1、2の円滑な回転を促進する潤滑剤の役目も果たす。給水部36に供給された水は、圧縮作動室11a内のボア部側面から粒化状態で噴射される。圧縮空気の漏れをシールすることにより、体積効率が向上し漏れによる動力の損失が低減される。
【0023】
なお、圧縮作動室11aに水を噴射するタイミングは、噴射する水の温度まで作動空気温度が上昇した後とする。雌雄両ロータ1、2により作動空気が圧縮されると、圧縮作動室11a内の空気は吸込口31から吐出口32へ向けて温度上昇する。そこで、例えば吸込口31での空気温度が40℃であって、給水路36から給水される水の温度が50℃のときは、圧縮作動室11a内の圧縮空気の温度が50℃になるタイミングで圧縮作動室11aに水を噴射する。これにより、吸入空気温度より低い温度の物質の注入による圧縮性能の低下を防止できる。
【0024】
給水配管24には、熱交換器41が取付けられており、圧縮機本体11の吸入口31部に供給される水の温度を所定温度以下にしている。具体的には、圧縮機本体11の吸入口31に吸込まれる作動空気の温度以下にする。そのため、図示しない吸込み温度センサの出力に基づいて、熱交換器41の熱交換量を制御する。熱交換して温度が低下した水は、バルブ25及び給水配管26を経て超音波を用いた微粒化装置40に導かれる。
【0025】
微粒化装置40は、作動空気と水とが熱交換して冷却効果が促進されるよう、水の平均粒子径を50μm以下にする。微粒子化された水は、ノズル33から空気吸入配管15内に噴霧されて吸入空気と混合される。吸入空気と混合した水の一部は圧縮行程中に気化して発生熱を奪い、理論的には断熱圧縮とされるスクリュー圧縮機の圧縮行程を等温圧縮に近づける。この結果、圧縮動力が低減される。なお、上記実施例では微粒化装置40をノズル33と別体化しているが、ノズルと微粒化装置とを一体化、またはノズル33が微粒化機能を有するようにしてもよい。さらに、微粒化手段は超音波に限るものではない。
【0026】
このように構成した本実施例の動作を説明する。図示しない電動機により雄スクリューロータ1が起動されると、この雄ロータ1の歯と雌ロータ2の歯が噛み合い、雄ロータ1と雌ロータ2とが同期回転する。両ロータ1、2が回転すると、吸入口31から吸込まれた空気は両ロータ1、2とケーシング3の壁面により形成される圧縮作動室11aに導かれる。吸入空気には吸入口31直前で微粒化した水を噴霧させる。この微粒化した水は圧縮作動室内で圧縮行程中に空気と熱交換する。微粒化した水の一部は気化し、圧縮空気から圧縮熱を奪う。
【0027】
これは、以下の原理による。水の粒子径をd(mm)、圧縮空気と水の温度差をΔT(℃)、熱伝達可能時間をΔt(sec)、水粒子の熱交換量をQ(J)とすると、
Q=k・(πd2)・ΔT・Δt
で表される。この式から、熱伝達可能時間である圧縮時間(おおよそ5msec)を考慮し、熱交換量を水粒子の気化熱に等しいとすると、最適な粒子径が求まる。本実施例では最適な粒子径の値は1μm以下であるが、現実に1μm以下の粒子の発生が困難であるから、できるだけ小さな粒径とすることが望ましい。吸入口から供給する水の粒径が大ならば、水を除く作動ガス量が減少して性能が低下する。そこで水の粒径を小さくして圧縮機に供給するが、粒径を小さくすると噴射のために、噴射粒子が飛散して壁にぶつからないような広い空間を必要とする。圧縮過程にある流路ではそのような広い空間を確保できないが、吸込み側であればそのような空間を形成できるので、吸込み側に微粒子の水を供給している。
【0028】
圧縮作動室11aはスクリューロータ1、2の回転と共に体積を減少するが、その際、圧縮作動室11aに給水部36から加圧水が供給され、ロータ1、2を冷却する。この加圧水はロータ1、2間やロータ1、2とケーシング3間の隙間をシールもする。さらに、ロータ1、2間を潤滑して、ロータ1、2同士やロータ1、2とケーシング3壁面との焼き付けも防止する。
【0029】
ところで、圧縮機本体11に形成される圧縮作動室11aの中間部に供給される水は、圧縮機が高速小型の場合、圧縮作動室11a内の熱交換にほとんど寄与しないことが本発明者らの実験的研究により明らかになった。例えば、ロータ径が75mm程度で、回転速度が1万回転/分を超えるような圧縮機では、噴射された水が圧縮作動室内に留まる時間が、6ms程度となるため、熱交換に必要な時間を確保できない。このため、従来の水噴射圧縮機では、回転速度を低くして噴射された水が圧縮作動室内に留まる時間を長くするか、圧縮作動室をでた後に熱交換して温度低下させるかしていた。前者の場合には、圧縮機を高速小型化できないし、後者の場合には圧縮ガスの温度は下がるものの圧縮過程は断熱過程に非常に近いものになり、圧縮機の効率を向上できない。
【0030】
本発明では、この矛盾する課題を解決するために、圧縮機本体の吸入側と中間部とに2系統の水注入系を設け、吸入側に注入する水は熱交換を促進するため微粒化し、中間部に注入する水はシール効果を高めるために比較的大粒系の水としている。つまり、圧縮機本体の吸入側に注入する水の平均粒径は50μm程度以下とし、中間部に注入する水の平均粒径は200μm程度とする。また、注入する水の流量も圧縮機本体の吸入側を少なく、中間部側を多量にする。
【0031】
上述した実施例は例示的なものであり、本発明を限定的に解釈するためのものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲に示されており、その請求項の意味の中に入る全ての変形例は本発明に含まれる。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、水噴射式スクリュー圧縮機において、吸込み側から注入する水の粒子と、ロータ部にある作動ガスに注入する水の粒子径とを変えて圧縮機に水を注入したので作動ガスの水との熱交換が促進され、圧縮機の高速小型化が可能になる。また、圧縮機の効率を向上でき、オイルフリー圧縮機の性能を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水噴射式スクリュー圧縮機の一実施例の系統図である。
【図2】スクリュー圧縮機本体の横断面図である。
【図3】水の注入位置を説明する図である。
【図4】水を注入する水注入部形状を示す断面図である。
【符号の説明】
1…雄スクリューロータ、2…雌スクリューロータ、3、4…ケーシング、7、8…軸受、9、10…レシーバタンク、11…圧縮機本体、11a…圧縮作動室、12…水噴射式スクリュー圧縮機、31…吸入口、32…吐出口、33…第2給水部、36…第1給水部、40…微粒化装置。
Claims (2)
- 1対の雄スクリューロータと雌スクリューロータと、これらロータを収容するケーシングとを有し、前記ケーシングに前記1対のロータとケーシングにより形成される圧縮作動室に水を注入する第1の給水部を形成し、前記圧縮作動室に連通し作動ガスを外部から吸入する吸入部に水を注入する第2の給水部を形成し、この第2の給水部に注入される水を微粒化させる微粒化手段を設け、前記微粒化手段で微粒化した水を第2の給水部から吸入空気に噴霧させるものであって、前記第1の給水部から注入される水の平均粒径は、第2の給水部から噴霧される水の平均粒径よりも大であることを特徴とする水噴射式スクリュー圧縮機。
- 1対の雄スクリューロータと雌スクリューロータと、これらロータを収容するケーシングとを有し、前記1対のロータ間に形成される圧縮作動室に水を注入する第1の給水部と、作動ガスを外部から吸入してこの圧縮機に導くための吸入部に水を注入する第2の給水部とをそれぞれ形成し、この第2の給水部にノズルを設け、このノズルは微粒化した水を吸入空気に噴霧させるものであり、前記第2の給水部から注入される水の平均粒径が、前記第1の給水部から噴霧される水の平均粒径よりも小であることを特徴とする水噴射式スクリュー圧縮機。
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