JP3797103B2 - 顔料組成物および顔料分散体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用適性、特に非集合性、流動性に優れた顔料組成物および顔料分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、顔料の微細な粒子をオフセットインキ、グラビアインキおよび塗料のようなビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得ることが難しく、製造作業上および得られる製品の価値に種々の問題を引き起こすことが知られている。
【0003】
例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出し、輸送が困難となるばかりでなく、更に悪い場合は貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。さらに展色物の塗膜表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じることがある。また異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0004】
以上のような種々の問題点を解決するために、有機顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を分散剤として混合する方法が、特公昭41−2466、USP2855403、特開昭63−305173、特開平1−247468、特開平3−26767等に提案されている。これらの発明では、顔料誘導体とワニス中の樹脂成分が相互作用して分散安定化に寄与する機構が考えられているが、塗料、インキ等には非常に多くのワニス系が存在するため、顔料誘導体とワニス中の樹脂が常に有効に作用するとは限らず、一部のワニス系を除いては満足な効果が得られていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オフッセトインキ、グラビアインキ、塗料、インキジェットインキ等に適する非集合性、流動性に優れた安定な顔料組成物および顔料分散体を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体から選ばれる少なくとも一種、リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、メタクリル酸と、他のリン酸基を有しないエチレン性不飽和単量体とを共重合してなるリン酸基を有する樹脂、および顔料を含んでなることを特徴とする顔料組成物に関する。
【0007】
本発明のリン酸基を有する樹脂に含まれるリン酸基は、式(7)で示される11価のリン酸基であっても式(8)で示される2価のリン酸基であってもよく、ン酸基はナトリウム、カリウム等の金属またはエチルアミン、ジブチルアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミン等の有機アミンと塩を形成していてもよい。
式(7)
【0008】
【化7】
式(8)
【0009】
【化8】
リン酸基を有する樹脂としては、例えば、エチレングリコールメタクリレートフォスフェート、プロピレングリコールメタクリレートフォスフェート、エチレングリコールアクリレートフォスフェート、プロピレングリコールアクリレートフォスフェートに代表されるような下記一般式(9)で示されるエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含むビニル系重合体が挙げられる。
式(9)
【0010】
【化9】
R10:水素またはメチル基を表す。
R11:アルキレン基を表す。
m:1〜20の整数を表す。
【0011】
リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体の具体例を以下に示すが、これに限るものではない。
【0012】
【化10】
【0013】
【化11】
【0014】
【化12】
【0015】
【化13】
【0016】
【化14】
これらのリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体は、特公昭50−22536、特開昭58−128393に記載の方法で製造することができる。市販品としては、ホスマーM、ホスマーCL、ホスマーPE、ホスマーMH(以上ユニケミカル社製)、ライトエステルP−1M(以上共栄社化学社製)、JAMP−514(以上城北化学工業社製)、KAYAMER PM−2、KAYAMER PM−21(以上日本化薬社製)等がある。
【0017】
これらのリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体は、単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。また、共重合体におけるリン酸基を有するモノマーの共重合比は、全モノマー100重量部に対して0.1〜30重量部以下であることが好ましく、0.1〜5重量部以下であることが更に好ましい。
【0018】
本発明のリン酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは1000〜50000であり、更に好ましくは2000〜20000である。
【0019】
このようなリン酸基を有する樹脂は、リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、メタクリル酸と、他のリン酸基を有しないエチレン性不飽和単量とをラジカル重合することにより得ることができる。
【0020】
他のリン酸基を有しないエチレン性不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルアクリル酸、アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(n=2〜50)、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(n=1〜6)、エポキシ(メタ)アクリレート、水酸基末端ウレタン (メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
リン酸基を有する樹脂は、開始剤の存在下、不活性ガス気流下、50〜150℃で2〜10時間かけて行われる。必要に応じて溶剤の存在下で行っても差し支えない。
【0022】
開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。開始剤はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して好ましくは1〜20重量部使用される。
【0023】
溶剤としては、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;キシレン、エチルベンゼンなどを用いることができる。
【0024】
本発明において塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(1)、(2)、(3)および(4)で示される群よりなる少なくとも1つの置換基を有するものである。
式(1)
【0025】
【化15】
式(2)
【0026】
【化16】
式(3)
【0027】
【化17】
式(4)
【0028】
【化18】
X:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。
n:1〜10の整数を表す。
R1、R2:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR1 とR2 とで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
R3:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
R4、R5、R6、R7:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
Y:−NR8−Z−NR9−または直接結合を表す。
R8、R9:それぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基または置換されていてもよいフェニレン基を表す。アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜8が好ましい。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
式(5)
【0029】
【化19】
式(6)
【0030】
【化20】
式(1)〜式(6)を形成するために使用されるアミン成分は、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジーsec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等である。
【0031】
塩基性基を有する顔料誘導体を構成する有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。
【0032】
また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0033】
また、塩基性基を有するトリアジン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基またはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、塩素等のハロゲンまたはメチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニル基またはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ニトロ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニルアミノ基等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0034】
本発明の塩基性基を有する顔料誘導体もしくは塩基性基を有するアントラキノン誘導体は種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素もしくはアントラキノンに式(10)〜式(13)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して式(1)〜式(4)を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
式(10)
【0035】
【化21】
式(11)
【0036】
【化22】
式(12)
【0037】
【化23】
式(13)
【0038】
【化24】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(1)〜式(4)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0039】
本発明の塩基性基を有するトリアジン誘導体は種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(5)または式(6)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0040】
本発明を構成する顔料は、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等の有機顔料、または、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機顔料、または、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックである。
【0041】
本発明の顔料組成物においてリン酸基を有する樹脂の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは40重量部以下、更に好ましくは10〜30重量部である。また、顔料誘導体の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。
【0042】
本発明の顔料分散体は本発明の顔料組成物を含み、他に各種ワニスに含有されるような樹脂を含むことができる。樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。また、本発明の顔料分散体は、有機溶剤、水、市販の分散剤、各種添加剤を含有することができる。
【0043】
本発明の顔料分散体は本発明の顔料組成物に、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤、市販分散剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより製造することができる。リン酸基を有する樹脂、塩基性基を有する、顔料誘導体、アントラキノン誘導体もしくはトリアジン誘導体(以下、塩基性基を有する顔料誘導体等という。)、顔料、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めにリン酸基を有する樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等と顔料のみ、あるいは、リン酸基を有する樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等のみを分散し、次いで、順次他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル、2本ロールミル等の練肉混合機を使用して前分散、または、顔料へのリン酸基を有する樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の分散体を製造するために利用できる。
【0044】
本発明の顔料分散体は、非水系または水系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、プラスチック着色等に利用できる。
【0045】
以下に、本発明に関わるリン酸基を有する樹脂、塩基性基を有する顔料誘導体等の製造例、および、本発明の実施例を示す。以下の「部」とは「重量部」を表す。樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
樹脂製造例
[製造例1]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けてシクロヘキサノン610部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりメチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート220部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート80部、メタクリル酸60部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート1部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8部から成る混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分40%、重量平均分子量34000の樹脂▲1▼を得た。
[製造例2]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けてシクロヘキサノン610部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりメチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート220部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート80部、メタクリル酸60部、3クロロ2アシッドホスホキシプロピルメタクリレート1部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8部から成る混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分40%、重量平均分子量32000の樹脂▲2▼を得た。
[製造例3]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けてシクロヘキサノン610部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりメチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート220部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート80部、メタクリル酸60部、アシッドホスホキシポリ(n=4〜5)オキシエチレングリコールモノメタクリレート1部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル8部から成る混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分40%、重量平均分子量32000の樹脂▲3▼を得た。
[製造例4](比較例)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けてシクロヘキサノン467部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりメチルメタクリレート20部、n−ブチルメタクリレート110部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40部、メタクリル酸30部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部から成る混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分20%、重量平均分子量22000の樹脂▲4▼を得た。
基性基を有する顔料誘導体の製造
[製造例5]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロスルホン化した後、アミン成分であるN,N−ジメチルアミノプロピルアミン14部と反応させて顔料誘導体▲1▼62部を得た。
顔料誘導体▲1▼
【0046】
【化25】
CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
[製造例6]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロメチル化した後、アミン成分であるジブチルアミン40部と反応させて顔料誘導体▲2▼95部を得た。
顔料誘導体▲2▼
【0047】
【化26】
CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
[製造例7]
色素成分であるキナクリドン50部をクロロアセトアミドメチル化した後、アミン成分であるN−メチルピペラジン40部と反応させて顔料誘導体▲3▼103部を得た。
顔料誘導体▲3▼
【0048】
【化27】
[製造例8]
色素成分としてジフェニルジケトピロロピロールを、アミン成分としてN−アミノプロピルモルホリンを使用し、製造例1と同様の方法により、顔料誘導体▲4▼を得た。
顔料誘導体▲4▼
【0049】
【化28】
[製造例9]
アントラキノン−β−カルボン酸クロリド50部と、アミン成分N,N−ジエチルアミノプロピルアミン36部を反応させて、顔料誘導体▲5▼66部を得た。
顔料誘導体▲5▼
【0050】
【化29】
[製造例10]
色素成分としてジオキサジンバイオレット(Pigment Violet23)を、アミン成分として式(14)で示される化合物を使用し、製造例1と同様の方法により、顔料誘導体▲6▼を得た。
式(14)
【0051】
【化30】
顔料誘導体▲6▼
【0052】
【化31】
[製造例11]
色素成分であるジアミノジアントラキノン(Pigment Red177)50部に、アミン成分を形成する塩化シアヌル42部、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン28部を反応させ、顔料誘導体▲7▼108部を得た。
顔料誘導体▲7▼
【0053】
【化32】
[製造例12]
ジアゾ成分p−ニトロアニリン50部と、式(15)で表されるアミン成分を有するカップラー109部をジアゾカップリング反応させることにより、顔料誘導体▲8▼160部を得た。
式(15)
【0054】
【化33】
顔料誘導体▲8▼
【0055】
【化34】
[製造例13]
テトラゾ成分ジクロロベンジジン50部と、式(16)で表されるアミン成分を有するカップラー212部をジアゾカップリング反応させることにより、顔料誘導体▲9▼263部を得た。
式(16)
【0056】
【化35】
顔料誘導体▲9▼
【0057】
【化36】
[製造例14]
式(17)で表されるアミン成分を有するジアゾ成分50部と、カップラー成分5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン30部をジアゾカップリング反応させることにより、顔料誘導体(10)79部を得た。
式(17)
【0058】
【化37】
顔料誘導体(10)
【0059】
【化38】
[製造例15]
アニリン50部、塩化シアヌル99部、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン55部をメタノール中で反応させることにより、顔料誘導体(11)168部を得た。
顔料誘導体(11)
【0060】
【化39】
製造例1〜15と同様の方法で、色素成分、アントラキノンまたはトリアジンと、アミン成分を反応することにより、または、アミン成分を有する化合物をカップリング反応して色素を合成することにより、本発明を構成する種々の顔料誘導体を製造することができる。
分散体の製造と評価
本発明の顔料分散体の性能を評価するために下記塗料を作成した。分散はスチールボールを使用し、ペイントシェイカーにて行った。得られた塗料の粘度をB型粘度計で測定し、粘度およびTI値で分散体の性能を評価した(粘度は低いほど良好。TI値は1に近いほど良好)。
【0061】
表1に示すように本発明の分散体は、比較例に比べ、良好な粘度、TI値を示した。
(塗料成分)
顔料
顔料誘導体
リン酸基を有する樹脂
アルキド樹脂
メラミン樹脂
シンナー(シクロヘキサノン/キシレン/n−ブタノール=6/2/2)
【0062】
【表1】
【0063】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、非集合性、流動性に優れた安定な顔料分散物である顔料組成物が得られ、この顔料組成物はオフッセトインキ、グラビアインキ、塗料、インキジェットインキ等の用途において優れた性能を有する。
Claims (4)
- 塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体から選ばれる少なくとも一種、リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、メタクリル酸と、他のリン酸基を有しないエチレン性不飽和単量体とを共重合してなるリン酸基を有する樹脂、および顔料を含んでなることを特徴とする顔料組成物。
- リン酸基が、金属塩またはアミン塩を形成している請求項1記載の顔料組成物。
- 塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体または塩基性基を有するトリアジン誘導体が、下記式(1)、式(2)、式(3)および式(4)で示される群よりなる少なくとも1つの置換基を有するものである請求項1または2記載の顔料組成物。
n:1〜10の整数を表す。
R1、R2:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR1とR2とで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。
R3:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
R4、R5、R6、R7:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Y:−NR8−Z−NR9−または直接結合を表す。
R8、R9:それぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、または置換されていてもよいフェニレン基を表す。
P:式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、式(5)で示される置換基または式(6)で示される置換基を表す。
式(5)
- 請求項1〜3いずれか記載の顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体。
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