JP3794680B2 - ハイドロフォーミング加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイドロフォーミング加工方法、とくに、自動車車体用のアルミニウム構造部材を得るのに好適なハイドロフォーミング加工方法に関する。なお、本発明において、アルミニウムは工業用純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。
【0002】
【従来の技術】
ハイドロフォーミングは、液圧バルジ成形、静水圧バルジ成形ともいわれ、金属管、中空形材などの中空材を素材として、この中空材を上下の金型にセットし、中空材内部に低圧で液体、例えば油や水を送り込み、中空材の両端部から中空材内部の空気を排除しながらシリンダーを装入して両端部をシールし、中空材内部に附加される圧力とシリンダーの押し込み圧を相互に調整しながら中空材を所定形状に成形する成形方法である。
【0003】
ハイドロフォーミングによれば、中空素材の断面形状を自由に変形することができ、種々の形状への一体成形が可能となるから、部品数削減によるコストダウンが期待でき、成形された部材の強度についての信頼性が向上する。このため、自動車車体用のパイプ状構造部材の成形方法として広く使用され始めている。
【0004】
近年、自動車産業においては、地球環境保護やエネルギー消費削減に対処して、燃費の向上を実現するために、アルミニウム材の使用による車体の軽量化が進行しているが、従来の車体の剛性を維持するために、自動車車体用のアルミニウム構造部材の素材としてのアルミニウム中空押出材についてもハイドロフォーミングが試みられている。
【0005】
しかしながら、アルミニウム中空押出材の内部に液圧を附加し、中空材の周長を拡大しながら成形(以下、拡管成形)して得たハイドロフォーミング部材は、等分布荷重に対しては強度面で十分な信頼性を有しているが、中空材であるために、ねじれ荷重や衝突などの局部的な荷重に対して断面形状の維持が困難であり、信頼性に欠けるという問題点がある。
【0006】
強度改善のために、アルミニウムの中空押出材で、この中空押出材の中空部を周壁から径方向に横切る仕切り壁をそなえたものが提案されているが、この仕切り壁付きアルミニウム中空材について通常のハイドロフォーミング加工を行うと、仕切り壁の変形が周壁の拡大変形について行くことができず、10%未満の拡管成形で仕切り壁に破断が生じる。
【0007】
この問題を解決するために、仕切り壁を、ハイドロフォーミング加工により中空部が所定の形状となったとき、平坦化されるよう余長をもたせて形成したハイドロフォーミング用アルミニウム中空押出材が提案されている(特願2001−268426号)が、ハイドロフォーミング加工度を考慮して余長を決定し、余長を有し中空部内で曲がった仕切り壁をそなえたアルミニウム中空材を押出成形することは簡単ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルミニウムの中空押出材で、この中空押出材の中空部内に周壁から径方向に横切る仕切り壁をそなえたものにハイドロフォーミング加工を施す方法の改良に関するもので、その目的は、余長の無い平坦な仕切り壁を有するアルミニウムの中空押出材を素材として、10%以上の拡管成形を可能とするハイドロフォーミング加工方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1によるハイドロフォーミング加工方法は、アルミニウム中空押出材で、該押出材の中空部内に周壁から径方向に横切る仕切り壁をそなえたものを、軸方向に圧縮しながら中空部に内圧を加えてハイドロフォーミング加工を施す方法において、前記仕切り壁の軸方向圧縮量を周壁の軸方向圧縮量より5mm以上大きくして加工することを特徴とする。
【0010】
請求項2によるハイドロフォーミング加工方法は、請求項1において、アルミニウムの中空押出材の端部から所定長さにわたって仕切り壁を除去し、該押出材の端部に段付き軸押工具を装入して中空部内に押し込み、段付き軸押工具の先端部で仕切り壁を軸方向に圧縮するとともに、段付き軸押工具の段部で周壁を軸方向に圧縮して加工することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3によるハイドロフォーミング加工方法は、請求項1において、アルミニウムの中空押出材の端部に、中央部軸押ポンチに外周部軸押ポンチを摺動可能に被嵌してなる軸押ポンチを装入し、該軸押ポンチの中央部軸押ポンチで仕切り壁を軸方向に圧縮するとともに、外周部軸押ポンチで周壁を軸方向に圧縮して加工することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においては、アルミニウムの中空押出材で、図1〜4に示すように、押出材1の中空部2内に周壁3から径方向に横切る仕切り壁4をそなえたものを素材として適用する。なお、素材において、仕切り壁4の肉厚は周壁3の肉厚の0.5〜1.5倍とするのが好ましく、0.5倍未満ではハイドロフォーミングによる拡管成形において仕切り壁が破断し易くなり、破断せずに成形できたとしても強度の点で不十分となる。1.5倍を越えて大きくすると、軽量化の目的が達成され難くなる。
【0013】
上記アルミニウム中空押出材を、図5に示すように、定盤上の下金型7にセットし、上金型6を降下させて下金型7に押し付けるように金型5を固定し、アルミニウム中空押出材1の内部に低圧で液体、例えば油や水を送り込み、空気を排除しながら軸押シリンダ(図示せず)を介して左右の軸押工具8、9を前進させ、アルミニウム中空押出材1の端部に僅かに押し込んでアルミニウム中空押出材1の両端部をシールする。
【0014】
ついで、アルミニウム中空押出材1の内部の圧力と軸押込シリンダの圧力を相互に調整しながら軸押工具8、9を押し込み、図5の右半分(成形後)に示すように、アルミニウム中空押出材1を金型に沿わせるよう拡管成形するハイドロフォーミングを行い製品10とする。
【0015】
本発明においては、この場合、中空押出材の仕切り壁の軸方向圧縮量を中空押出材の周壁の軸方向圧縮量より5mm以上大きくしてハイドロフォーミング加工を行うことを特徴とし、これにより拡管率10%以上のハイドロフォーミング加工を行うことが可能となる。以下、その具体的な実施形態について説明する。
【0016】
第1の実施形態においては、図6に示すように、予めアルミニウム中空押出材1の端部から所定長さL0 の部分で仕切り壁4を除去しておき、つぎに、所定長さL0 の仕切り壁が除去されたアルミニウム中空押出材1の端部に、段付き軸押工具11を装入して中空部2内に押し込む(図6(A))。
【0017】
段付き軸押工具11は先端部12の後方L1 の距離のところに段部13を形成してなるものであり、これをアルミニウム中空形材1の中空部2に押し込むと、まず、段付き軸押工具11の先端部12が仕切り壁4に当たり、仕切り壁4を軸方向に圧縮し(図6(B))、ついで、段付き軸押工具11の段部13が周壁3を軸方向に圧縮する(図6(C))。
【0018】
すなわち、段付き軸押工具11を用いることによって、アルミニウム中空押出材1の仕切り壁4が周壁3に比べて優先的に圧縮され、仕切り壁4の軸方向圧縮量を周壁3の軸方向圧縮量より大きくすることができる。この状態でハイドロフォーミング加工を行うことにより、仕切り壁は破断することなく拡管率10%以上の成形を行うことができる。
【0019】
軸方向押し込み量は、(仕切り壁の軸方向押し込み量−周壁の軸方向押し込み量)を5mm以上、従って、L1 −L0 ≧5mmとすることが好ましく、仕切り壁の軸方向押し込み量は10mm以上、周壁の軸方向押し込み量は5mm以上とするのが好ましい。これらの限界値未満では、仕切り壁の拡管変形能が不十分となり易い。仕切り壁の軸方向押し込み量は15mm以上、周壁の軸方向押し込み量は10mm以上とするのがさらに好ましい。
【0020】
第2の実施形態においては、図7に示すように、アルミニウム中空押出材1の端部に、中央部軸押ポンチ15に外周部軸押ポンチ16を摺動可能に被嵌してなる軸押ポンチ14を装入し(図7(A)(B))、まず、中央部軸押ポンチ15を突出させて仕切り壁4を軸方向に圧縮し(図7(B))、ついで、外周部軸押ポンチ16で周壁3を軸方向に圧縮する(図7(C))。
【0021】
上記の工程により、アルミニウム中空押出材1の仕切り壁4が周壁3に比べて優先的に圧縮され、仕切り壁4の軸方向圧縮量を周壁3の軸方向圧縮量より大きくすることができる。この状態でハイドロフォーミング加工を行うことによって、仕切り壁は破断することなく拡管率10%以上の成形を行うことができる。
【0022】
第2の実施形態においても、軸方向押し込み量は、(仕切り壁の軸方向押し込み量−周壁の軸方向押し込み量)を5mm以上、従って、L2 ≧5mmとすることが好ましく、仕切り壁の軸方向押し込み量は10mm以上、周壁の軸方向押し込み量は5mm以上とするのが好ましい。これらの限界値未満では、仕切り壁の拡管変形能が不十分となり易い。仕切り壁の軸方向押し込み量は15mm以上、周壁の軸方向押し込み量は10mm以上とするのがさらに好ましい。
【0023】
なお、上記第1の実施形態においても、第2の実施形態においても、軸方向押し込みにおいて、段付き軸押工具11あるいは軸押ポンチ14と接する仕切り壁および周壁は座屈するため、この部分は除去して製品10とする。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。なお、これらの実施例は、いずれも断面が円形の中空押出材の拡管成形についてのものであるが、本発明は断面円形の押出材を素材とするものに限定されるものではなく、種々の形状の断面を有する押出材を素材として適用することができる。
【0025】
実施例1
ポートホール押出により、常法に従って、図3の形状を有する6063合金の中空押出材(外径:60.5mm、周壁肉厚:3mm、仕切り壁肉厚:3mm)を作製し、焼鈍処理を行ってO材とした。
【0026】
これらの中空形材を素材(試験材)として、図6に示す段付き軸押工具11および図7に示す軸押ポンチ14を用いて、表1に示す条件により、拡管率15%の金型を使用するハイドロフォーミング加工を行い、成形後の断面形状、各部の寸法を調査するとともに、成形の可否を評価した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003794680
【0028】
表1にみられるように、本発明による軸方向押し込み方式に従う試験材No.1〜6はいずれも、仕切り壁の破断がなく、所定形状に拡管成形され、仕切り壁、周壁の肉厚も均一であった。
【0029】
比較例1
ポートホール押出により、常法に従って、図3の形状を有する6063合金の中空押出材(外径:60.5mm、周壁肉厚:3mm、仕切り壁肉厚:3mm)を作製し、焼鈍処理を行ってO材とした。
【0030】
これらの中空形材を素材(試験材)として、端部の仕切り壁を除去することなく、通常の軸押工具を用い、仕切り壁の軸方向圧縮量と周壁の軸方向圧縮量を同一として、表2に示す条件により、拡管率15%の金型を使用するハイドロフォーミング加工を行い、成形後の断面形状、各部の寸法を調査するとともに、成形の可否を評価した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
Figure 0003794680
【0032】
表2に示すように、試験材No.7〜10を素材とし、仕切り壁と周壁の軸方向押し込み量を同一としたものは、いずれも仕切り壁の伸びが十分でなく、周壁が金型内面形状に沿う前に、仕切り壁間の周壁が周方向に局部的に張り出し、破断した。
【0033】
【発明の効果】
平坦な仕切り壁を有するアルミニウムの中空押出材を素材として、10%以上の拡管成形を可能とするハイドロフォーミング加工方法が提供される。軟質なアルミニウム材を用いた場合にも、ハイドロフォーミングによる加工硬化で高強度のものを得ることができ、押出材を用いるため、コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハイドロフォーミング加工方法に用いる仕切り壁を有するアルミニウム中空形材の略式断面図である。
【図2】本発明のハイドロフォーミング加工方法に用いる仕切り壁を有するアルミニウム中空形材の略式断面図である。
【図3】本発明のハイドロフォーミング加工方法に用いる仕切り壁を有するアルミニウム中空形材の略式断面図である。
【図4】本発明のハイドロフォーミング加工方法に用いる仕切り壁を有するアルミニウム中空形材の略式断面図である。
【図5】本発明におけるハイドロフォーミングの工程を示す概略図である。
【図6】本発明のハイドロフォーミング加工方法の実施例を示す説明図である。
【図7】本発明のハイドロフォーミング加工方法の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム中空押出材
2 中空部
3 周壁
4 仕切り壁
5 金型
6 上金型
7 下金型
8 軸押工具
9 軸押工具
10 製品
11 段付き軸押工具
12 先端部
13 段部
14 軸押ポンチ
15 中央部軸押ポンチ
16 外周部軸押ポンチ

Claims (3)

  1. アルミニウム中空押出材で、該押出材の中空部内に周壁から径方向に横切る仕切り壁をそなえたものを、軸方向に圧縮しながら中空部に内圧を加えてハイドロフォーミング加工を施す方法において、前記仕切り壁の軸方向圧縮量を周壁の軸方向圧縮量より5mm以上大きくして加工することを特徴とするハイドロフォーミング加工方法。
  2. アルミニウムの中空押出材の端部から所定長さにわたって仕切り壁を除去し、該押出材の端部に段付き軸押工具を装入して中空部内に押し込み、段付き軸押工具の先端部で仕切り壁を軸方向に圧縮するとともに、段付き軸押工具の段部で周壁を軸方向に圧縮して加工することを特徴とする請求項1記載のハイドロフォーミング加工方法。
  3. アルミニウムの中空押出材の端部に、中央部軸押ポンチに外周部軸押ポンチを摺動可能に被嵌してなる軸押ポンチを装入し、該軸押ポンチの中央部軸押ポンチで仕切り壁を軸方向に圧縮するとともに、外周部軸押ポンチで周壁を軸方向に圧縮して加工することを特徴とする請求項1記載のハイドロフォーミング加工方法。
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