JP3778303B2 - 伸縮性横編地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セーター等に用いられる横編地に関し、さらに詳しくは吸湿性架橋アクリル系繊維をその構成素材として混用することにより、該繊維が保有するPH緩衝性、抗菌性、消臭性、抗ピル性、制電性、吸水性、保温性、乾燥のし易さの調和機能を横編地に保持させ、かつ横編地の地組織に伸縮性を持たせたことを特徴とし、ストレッチ性がありソフトフィットタイプの横編セーターの提供であり、さらには寸法不良等の品質を改善することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、ストレッチ性のある横編セーターとして、アクリル繊維と伸縮弾性糸を組み合わせた製品はあった。しかしアクリル繊維の熱に対する不安定な特性例えば高温セットにおける黄変性、寸法変化等のため、寸法不良、変色等のトラブルの発生が多く安定生産が出来ないのが現状であった。
黄変性、寸法不良等の原因としては、主として相手素材に使われる伸縮弾性糸がエーテル系ポリウレタンウレア系弾性糸であるため、180℃以上の乾熱処理でないとセット性に劣ることがあげられる。
【0003】
またアクリル繊維は、羊毛に似た特徴、風合の良さ等からセーターを始めとしたアウター、インナー等ニット製品に多く使われている。ただし最近の消費者の要求として、抗菌性、消臭性、保温性、抗ピル性、制電性、吸水性また乾燥のし易ささらには健康に良いと言われるPH緩衝性等機能の付加要望が強くなりつつある。
【0004】
このような要求に答えるため、従来は生地化した後、後加工でそれぞれの特性に合った加工剤を活用して処理し機能性付与をしてきたが、機能の洗濯耐久性等に課題があること、多くの機能を並立して保有する加工の難しさ等種々問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の課題を改善し、加えて使用者の要望の高い抗菌性、消臭性、抗ピル性、制電性、pH緩衝性等の特性を調和機能として合わせ有するセーター用に好適な横編地を提供しようとするものである。また、アクリル繊維の黄変性、寸法不良等の問題を改善するため、さらには抗菌性、消臭性、抗ピル性、制電性、pH緩衝性等の特性の耐洗濯性を高めるため、ポリウレタン弾性糸及びアクリル系原糸の検討を進め本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非伸縮性糸条とポリウレタン弾性複合糸条で地組織を形成する横編地において、非伸縮性糸条が吸湿性架橋アクリレート系繊維を20%以上含む糸条であり、ポリウレタン弾性複合糸条が合成繊維マルチフィラメントを鞘部に、芯部にポリウレタン弾性繊維を配した複合糸条であり、該複合糸条のポリウレタン弾性繊維が高分子ジオール、有機ジイソシアネート、低分子ジオールからなるウレタン基濃度が1500以上の熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィラメントで、かつ100%伸長状態での140℃×1分間の乾熱処理後の熱セット率が75%以上であることを特徴とする伸縮性横編地である。
【0007】
該吸湿性架橋アクリレート系繊維は、アクリル繊維にヒドラジン処理により架橋構造を導入して窒素含有量の増加を1.0〜8.0重量%の範囲内に調整し、加水分解により残存しているニトリル基量の1.0〜5.0meq/gにカルボキシル基を、残部にアミド基を導入し、次いで該カルボキシル基の50〜90mol%をMg,Ca,Cu,Zn,Al、Ag,Feより選ばれる1種あるいは2種以上の金属塩型とし、最終熱処理の乾熱温度100〜230℃で行うことにより得られる。
上述の方法で得られた繊維は、20℃65%RHにおける飽和吸湿率が15〜35重量%であり、抗菌性、消臭性、抗ピル性、制電性、PH緩衝性等を調和機能として合わせ有する。
【0008】
該繊維を横編地の構成素材として用いる場合、短繊維として紡績し糸条とするのが好ましい。該繊維単独すなわち100wt%の紡績糸も考えられるが、コスト的な面、紡績性等後加工通過性、また該繊維の特性を保持する最低混用率からみて、20wt%以上、好ましくは30wt%以上がよい。上限は特に限定はないが前述の理由で70wt%程度が好ましい。また該吸湿性架橋アクリレート系繊維の混用相手素材には通常アクリル繊維が適し、可紡性も向上する。
【0009】
本発明に用いる低温での熱セット性(寸法安定性)のよいポリウレタン弾性繊維は、高分子ジオール、有機ジイソシアネート、低分子ジオールからなるポリウレタンエラストマーを紡糸することにより得られるウレタン基濃度が1500以上のポリウレタンフィラメント糸条である。
本発明に使用される高分子ジオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリε−カプロラクトン、あるいはポリブチレンアジペートが挙げられる。有機ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネ−ト、4、4 ’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、4、4 ’−ジイソシアネートジシクロヘキサン、4、4 ’−ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上で併用してもよい。
低分子ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシベンゼン)等が挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物で使用できる。
【0010】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維の原料であるポリウレタンエラストマーを製造するに際しては公知の方法が用いられる。例えば高分子ジオール、低分子ジオール、および有機ジイソシアネートを一括して溶媒下または無溶媒下反応させるワンショット法、または高分子ジオールと有機ジイソシアネートをあらかじめ反応させプレポリマーを作り、次いで低分子ジオールを溶媒下または無溶媒下で反応させるプレポリマー法等である。
コスト面を考えると無溶媒下で製造する溶融重合法が望ましい。
【0011】
本発明における熱可塑性ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度は1500以上であることが必要である。ウレタン基濃度が1500未満の場合、得られた糸条の伸縮性機能が十分発現しない。
なお、ここで言うウレタン基濃度は例えば、有機ジイソシアネートとして4、4 ’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと略す)を用いた場合、次式で表わされる。
【0012】
さらに本発明のポリウレタン系繊維糸条は、140℃×1分、100%伸長状態での乾熱処理での熱セット率が75%以上であることが必要である。熱セット率が75%より低い場合には、染色前のプレセット工程で幅不良等の寸法安定性に問題を生じやすい。
ここで言う乾熱セット性とは以下の方法で測定した値を言う。ポリウレタン系弾性繊維のデニール当り1mgの荷重を掛けL0を試料長とする。次いで、試料を2倍に伸長し伸長状態のまま乾熱処理(140℃×1分)を行い、1時間常温にて弛緩後、1mg/dの荷重下で長さL1を測定し、下記式で算出する。
熱セット率(%)=(L1 −L0 )/L0×100
【0013】
該ポリウレタン系繊維を横編地の地組織を形成する伸縮性複合糸条として使用する場合、単独で使うことも考えられるが、編成時および後工程での取扱性、工程通過性等を考慮すると、非伸縮性繊維と複合化するのが望ましい。複合化する方法には、該ポリウレタン系繊維を芯部に配置し非伸縮性繊維糸条を巻き付けるカバリング方式、精紡機を用いたコアヤーン方式、精紡交撚方式または混繊方法等がある。
種々検討した結果、精紡機を用いたコアヤーン方式、精紡交撚方式では被覆する繊維が短繊維のため、比較的細い太さの伸縮性糸条が作りにくい。このため得られる横編地の厚みの増加、柔らかさの変化など交編する相手素材の特徴を打ち消してしまうことがわかった。好ましい複合方法は、合繊フィラメントを用いたカバリング方式、エアーを用いた混繊方式であるが、その中でもカバリング方式が均一性、工程通過性等に優れている。
【0014】
使用する合繊フィラメントには種々の物が考えられるが、ポリエステル、ナイロン等が多様な銘柄を有する面からも使いやすい。中でもナイロンはその柔らかさから相手素材に馴染みやすい。本発明に使用される合繊フィラメントの太さは、20〜100d好ましくは30〜70dである。ポリウレタン系繊維の太さも20〜100d、好ましくは30〜70dである。
【0015】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこの実施例に拘束されるものではない。
【実施例】
アクリロニトリル90%およびアクリル酸メチル10%のアクリルニトリル系重合体を48%のロダンソーダ水溶液で溶解した紡糸原液を常法に従って、紡糸、水洗、延伸、捲縮、熱処理をして、0.8デニール×70mmの原料繊維を得た。
この原料繊維1kgに30重量%の加水ヒドラジン5kgを加え、98℃で3時間架橋処理した。窒素増加量は5.0%であった。該架橋繊維を水洗後、3重量%の水酸化ナトリュウム5kgを加え、90℃で2時間加水分解した。次いで、1規定HNO3水溶液で処理して、カルボキシル基をH型に変換し、水洗後、1規定NaOHでpHを6.5に調整し、塩化カルシュウム50gを添加して、60℃で2時間金属塩処理した。
十分水洗した後、脱水、油剤処理および熱処理(150℃)架橋アクリル系繊維を得た。得られた繊維の特性を表1に示す。
【0016】
このような条件で編成される編地において、非伸縮性糸条の太さはポリウレタン弾性複合糸条の太さに対して2.5倍以上更に好ましくは3倍〜6倍太いことが好ましい。これはポリウレタン弾性複合糸条の主組成物であるポリウレタンが他の素材に比べて耐光性に劣る性質を持つため、伸縮性糸条を極力生地内部に偏在させ非伸縮性糸条で覆い直接光に晒させない目的と、ポリウレタンの持つゴム状のぬめり風合を生地表面に出さない目的もある。
また該編地において、伸縮性糸条の混率は要求性能による伸縮力の強さによって設定されるが、5〜20%の範囲にあるのがよい。5%未満では伸縮力が弱すぎて効果を出せない。また20%より多くなると生地のドレープ性が低下するとともにコスト面でも高くなってしまうので好ましくない。
【0017】
該架橋アクリレート系繊維の吸湿率は27%で木綿の約3.8倍と高い。
また該繊維の保水率は木綿並みの高い値を示している。さらにアンモニア消臭率も99%以上と高く、アンモニアに対して高度の消臭機能を有することがわかる。
【0018】
得られた架橋アクリレート系繊維(1.8d×37mm)をアクリル繊維(エクスラン:1.5d×38mm)およびコーマ綿と混紡率を変化して常法に従って、混紡、カード、練篠、祖紡、精紡を行い、20番手単糸を紡出した。撚係数は3.5とした。
比較例として、アクリル繊維、カットウール、コーマ綿およびポリエステル繊維(1.5d×38mm)について同様に糸を作り、20ゲージの両面編機でスムース編地を編成後、常法で染色仕上加工をした。これら編地の特性値を表2に示す。
架橋アクリレート系繊維を100%使った編地は、表1で示した原綿繊維と同レベルの特性を再現していることがわかる。特に水吸上げ長は木綿の約1.2倍であり、かつ吸湿率が木綿の約3.8倍と大きいにもかかわらず、触感における乾燥時間は木綿の3倍以上速く、親水性でしかも乾きが速く湿潤感が少ないことがわかる。
架橋アクリレート系繊維と他繊維とを混紡したものにおいても、混紡率換算値と同等以上の性能を保持していることがわかる。
【0019】
これらの結果および紡績工程での紡績性、操業性等を考慮して架橋アクリレート系繊維、アクリル繊維の混紡率をそれぞれ30、70%とし非伸縮性糸条用として2/52番糸(メートル番手)を作った。
該糸条を染色し先染め糸とするため、プレワインデイング(捲密度0.3g/cm3 )後、高圧密閉式パッケージ染色機を用い、常法で精練(60℃×10分)、染色(100℃×30分)した。染色処方はカチオン染料、カチオン緩染剤、均染剤を使用し、酢酸、酢酸ソーダを用いてPH=4とした。流量は0.5 l/kg/秒、液流方向はin→out(一方向)とした。染色後、徐冷、脱水、乾燥、リワインデイングし非伸縮性糸条として用いた。
【0020】
一方、高分子ジオールにポリブチレンアジペートを、有機ジイソシアネートに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、低分子ジオールに1,4−ブタンジオールを用いて重合したポリウレタンエラストマーを紡糸し、40デニールのフィラメントを作製した。ウレタン基濃度は1650であった。これを伸縮性複合糸条の芯糸として用いる。鞘糸としてナイロン仮撚加工糸(Z→S)70デニール24フィラメントを用い、芯糸のドラフトを3.0、鞘糸の撚数S500回/メートルの条件で伸縮性複合糸条を作った。
【0021】
該非伸縮性複合糸条と伸縮性複合糸条を横編機(12ゲージ)に仕掛け、非伸縮性複合糸条は5×4のワイドリブ組織で、伸縮性複合糸条はプレーテイング組織でかつ積極給糸装置をを用いて編成した。編成後セーターに縫製し、寸法安定化、型付けのため、型枠を使用して120℃×10秒スチーム処理をした。
使用した伸縮性糸条の熱セット率、仕上げ生地の性量、その他特性を表3に示す。
【0022】
(比較例1)
伸縮性複合糸条の芯糸として、ポリテトラメチレングリコール、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレンジアミンより乾式紡糸した20デニール2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を用いたこと以外は実施例と同一方法、同一条件にて加工し、セーター用編地およびセーターを得た。
使用した伸縮性糸条の熱セット率、仕上げ生地の性量、その他特性を表3に示す。
【0023】
(比較例2)
伸縮性複合糸条の芯糸として、ポリテトラメチレングリコール、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレンジアミンより乾式紡糸した20デニール2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を用い、型枠を使用して130℃×10秒スチーム処理をしたこと以外は実施例と同一方法、同一条件にて加工し、セーター用編地およびセーターを得た。
使用した伸縮性糸条の熱セット率、仕上げ生地の性量、その他特性を表3に示す。
【0024】
比較例1は熱セット性が低いため、洗濯収縮率が大きく寸法安定性に極めて劣り、かつ目付も重い。
比較例2は、セット温度を高くした割にはセット率の改善が見られず、逆にアクリレート繊維の熱黄変が若干ながら出てきているとともに同繊維の熱による伸度増加があるため“へたり”となって編地外観を悪くし、かつ手触りも硬くなっている。
実施例は、各種の機能をバランスよく保持するとともに寸法安定性、伸長性、風合等に優れ、熱黄変もない。
【0025】
以下、本発明の詳細な説明、実施例等で用いた測定法について記す。
(1)PH緩衝能力(μeq/g)
十分乾燥した供試繊維約0.4gを精秤し(X)g、これに200mlの水を加えた後、0.1N塩酸水溶液あるいは0.1N苛性ソーダ水溶液を滴下し、塩酸水溶液の場合はPH5.0になるまでに、また苛性ソーダ水溶液の場合はPH7.0になるまでに消費された塩酸水溶液または苛性ソーダ水溶液消費量(Y)ccを求め、次式によって、酸またはアルカリに対する緩衝能力を算出した。
PH緩衝能力(μeq/g)=1000Y/X
【0026】
(2)吸湿率(%)
試料繊維約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量(W1)gを測定する。次に試料を温度20℃で相対湿度65%に調整された恒温恒湿機に24時間入れておく。このようにして吸湿した試料の重量(W2)gを測定する。以上の結果から、吸湿率を次式に従って算出した。
吸湿率(%)=(W2−W1)/W1×100
【0027】
(3)抗菌性
試験菌株:黄色葡萄状球菌 Stapylococcus aureus IFO 12732
試験方法:繊維製品衛生加工協議会(SEK)で定める方法により、減菌試料布に試験菌のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器中で、37℃、18時間培養後の生菌数を計測し植菌数Aに対する標準布の菌数Bと試料の菌数Cの増減値差で求める。
増減値=logC−logA
増減値差=(logB−logA)−(logC−logA)
【0028】
(4)抗ピル性
JIS L 1076 織物及び編物のピリング試験方法A法のICI型試験機を用いる方法に従って行なった。
【0029】
(5)制電性
JIS L 1094 織物及び編物の帯電性試験方法に従って行なった。
【0030】
JIS L 1018メリヤス生地試験方法、吸水速度B法(バイレック法)に基づき、測定開始30分経過後の吸上げ長(cm)を求めた。
【0031】
(6)乾燥時間
試料編地10×10cmを純水中に1時間浸漬後、遠心脱水機を用いて300Gの回転で2分間の脱水処理後、雰囲気20℃ 65%RH内に設置したテンシロン/UTM−11−20型に取り付け、試料の重量変化と時間を測定し、触感における乾燥時間を求めた。
【0032】
(7)保水率(%)
試料繊維5gを純水中に浸漬し、30±5℃で3時間放置後、遠心脱水機を用いて1000Gの回転で3分間脱水処理を行なう。脱水した試料の重量(W3)gを測定する。次に該試料を90℃の熱風乾燥機内で、絶乾まで乾燥した試料の重量(W4)gを求め、次式によって保水率(%)を算出した。
保水率(%)=(W3−W4)/W4×100
【0033】
(8)アンモニア消臭性
試料繊維2gをテドラーバックに入れ密封し、空気を3l注入する。次に400ppmのアンモニア(W5)をテドラーバック内に注入し、室温で120分放置後にテドラーバック内のアンモニア濃度(W6)を北川式検知管を用いて測定した。また、試料を入れないテドラーバックに400ppmのアンモニアを注入し、120分後にアンモニア濃度(W7)を測定し空試験とした。以上の結果から、次式に従って、アンモニア消臭率を算出した。
アンモニア消臭率(%)=(W5−W6)/W7×100
【0034】
(9)吸湿速度定数(k1)
5×20cmの編地を105℃熱風乾燥機で絶乾後、デシケーター内で20℃に冷却する。20℃ 65%RHに調整した恒温恒湿器内に編地を置き、120分間経過時間に対する吸出率(W1)を連続的に測定する。該編地を更に24時間恒温恒湿器内にいれて置き、飽和吸湿率(We)を測定する。下記速度式の吸湿速度定数(k1)を算出する。
W1=We(1−e−k1t)
W1:絶乾から時間tにおける吸湿率
We:20℃ 65%RH飽和吸湿率
k1:吸湿速度定数
【0035】
(10)放湿速度定数(k2)
5×20cmの編地を20℃ 80%RHに調整した恒温恒湿器に24時間入れておき、同温湿度における飽和吸湿率(Wb)を測定する。該編地を20℃ 30%RHに調整した恒温恒湿器内に置き、120分間経過時間に対する吸湿率(W2)を測定する。更に、編地を20℃ 30%RHに調整した恒温恒湿器内に24時間入れておき、20℃ 30%RHにおける飽和吸湿率(Wa)を測定する。下記速度式の放湿速度定数(k2)を算出する。
W2=(Wa−Wb)(1−e−k2t)
W2:Wbから時間tにおける吸湿率
Wa:20℃ 30%RHにおける飽和吸湿率
Wb:20℃ 80%RHにおける飽和吸湿率
k2:放湿速度定数
t :0〜30分
【0036】
(11)編物の伸長率、伸長回復率
JIS L 1018一メリヤス生地試験方法に従って行なった。 JIS−L1018法の定荷重時伸び率(荷重1kg)測定法を用い、伸長率を測定した。
JIS−L1018法の伸長弾性率A法(定伸長法)を用い、伸長回復率とした。
一定伸長率はタテ方向50%、ヨコ方向100%とした。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
本発明のセーター用横編地は、PH緩衝性、抗菌性、消臭性、抗ピル性、制電性、吸水性、乾燥のし易さの調和機能をセーターに保持させ、かつセーター地組織に伸縮性を持たせたことを特徴としており、さらに極細アクリル繊維を混用すればソフトフィットタイプの横編セーターも提供できる。
Claims (5)
- 非伸縮性糸条とポリウレタン弾性複合糸条で地組織を形成する横編地において、非伸縮性糸条が吸湿性架橋アクリレート系繊維を20%以上含む糸条であり、ポリウレタン弾性複合糸条が合成繊維マルチフィラメントを鞘部に、芯部にポリウレタン弾性繊維を配した複合糸条であり、該複合糸条のポリウレタン弾性繊維が高分子ジオール、有機ジイソシアネート、低分子ジオールからなるウレタン基濃度が1500以上の熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィラメントで、かつ100%伸長状態での140℃×1分間の乾熱処理後の熱セット率が75%以上であることを特徴とする伸縮性横編地。
- 非伸縮性糸条が吸湿性架橋アクリレート系繊維とアクリル系繊維からなる紡績糸であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性横編地。
- ポリウレタン弾性複合糸条が合成繊維マルチフィラメントを鞘部に、芯部にポリウレタン弾性繊維を配したカバリング糸条であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性横編地。
- 吸湿性架橋アクリレート系繊維がアクリル繊維にヒドラジン処理により架橋構造を導入して窒素含有量の増加を1.0〜8.0重量%の範囲内とし、加水分解により残存しているニトリル基量の1.0〜5.0meq/gにカルボキシル基を導入し、次いで該カルボキシル基の50〜90mol%を金属塩型とするアクリレート系繊維であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性横編地。
- 非伸縮性糸条の太さがポリウレタン弾性複合糸条の太さの2.5倍以上であり、且つポリウレタン弾性複合糸条の占める割合が編地中で5〜20%であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性横編地。
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