JP3777546B2

JP3777546B2 - マルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱

Info

Publication number: JP3777546B2
Application number: JP2002008491A
Authority: JP
Inventors: 俊行手塚; 裕隆大友
Original assignee: 株式会社キャッツ
Priority date: 2002-01-17
Filing date: 2002-01-17
Publication date: 2006-05-24
Anticipated expiration: 2022-01-17
Also published as: JP2003210063A

Description

【０００１】
【発明が属する技術分野】
この発明は、マルハナバチ類等の送粉昆虫の巣箱の温度管理をする恒温箱に関する。
【０００２】
【従来の技術】
トマト、ナスなどの花蜜を生産しない花にも訪花することから、ハウス栽培のトマト、ナスなどの受粉に利用されている。このマルハナバチは、巣箱内の温度が２０度を下回る場合には筋肉をふるわせることで発熱行動を行い、巣箱内の温上を上昇させ、また３１度を上回る場合には送風行動を行うことで巣箱内部の気温を下げようとし、該巣箱内の温度調節行動を行っている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
このような、２０度を下回り、３１度を超える温度状況となると、本来ならば巣の外で受粉活動を行うはずの個体まで巣の中に止まり発熱または送風行動を行うことになり、巣箱内の温度が前記した温度に該当しない範囲となるハウス内の温度が１０℃から２８℃の範囲内でしか活動できなくなっていた。したがって、マルハナバチの活動が巣箱内の温度により制限されてしまっていた。ちなみに、自然状態では、巣内の温度が安定していれば、外気温が５℃から３７℃ぐらいまでの間で受粉活動できるものである。
【０００４】
この対策として、当出願人は特開平９−２７１２９６号を提出した。これには、送粉昆虫の巣箱を箱体１に収納し、この箱体１０内の温度を温度調節手段１０にて制御して送粉昆虫の最適生育環境温度帯に保つ作用効果を行わせるものである。
【０００５】
しかしながら、この従来例でも、何回も使用することを前提としており、巣箱の交換時に、内部の清掃等しなければならないが、温度制御機器が箱体の内部に収納されていて、メンテナンス性が悪い。また、巣箱内部の観察や餌入れのために蓋を開閉作業をしなければならず、開閉作業の容易化の要請のみならず、蓋の開閉の動作時に温度制御機器も露出して、該機器を壊すおそれもあった。さらに、冷房時には、空気中に含まれる水蒸気が結露して、電子冷凍素子のフィン、壁面や底面に結露水が溜まる不都合があるが、特別の排水手段を有していない。したがって、巣箱ひいてはマルハナバチの育成や、温度制御機器にも悪い影響を与えていた。
【０００６】
そこで、この発明は、メンテナンス性の向上、巣箱内部の観察や餌入れの容易性、安全性のみならず、冷房時に生じる結露水が巣箱に悪影響を与えないようにした送粉昆虫用の恒温箱を提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱は、マルハナバチ類等の送粉昆虫の巣箱を収納する恒温室内に、収納の巣箱と接触する蓄熱剤が入った容器を配すると共に、該蓄熱剤を電子冷凍素子にて加熱又は冷却するようにしたことにある（請求項１）。
【０００８】
これにより、巣箱は潜熱を有する蓄熱剤で冷やし又は暖められるから、潜熱の利用により、冷暖房コストを下げることが可能である。蓄熱剤の融点が２５℃前後としているので、結露を防止また軽減することが可能で、巣箱を結露水から守ることができる。
【０００９】
蓄熱剤が入った容器は巣箱の少なくとも三面と接触するようにしたことにある（請求項２）。これにより、巣箱との接触面積の拡大を図り、巣箱を均一に冷やし又は暖めることができる。
【００１０】
恒温室は、その周囲を断熱材で囲まれたことにある（請求項３）。これにより、温調効率の向上がはかられる。
【００１１】
恒温室の立壁面に送風昆虫が出入する開口が形成されると共に、この開口が内部に収納される巣箱に連通されるようにしたことにある（請求項４）。これにより、巣箱内の送粉昆虫が外部に自由に出入りすることができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【００１３】
図１，図２において、マルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱１の外形の斜視図と、その分解斜視図が示され、前方に恒温室２、後方に温度制御機器収納室３が設けられ、さらに、その上から蓋４が被せられて構成されている。なお、蓋４はベルト１２にて押さえられている。
【００１４】
恒温箱１は、図３，図４にも示され、樹脂をコーティングした紙素材より成る上方開口５の箱体で、該開口５は蓋４にて閉じられる。この恒温箱１の恒温室２の内側には、ウレタン、発泡樹脂等の断熱材７が添着され、また、前記蓋４にも内側に断熱材８が添着されている。そして、その内側に添って下記するプレート２１が上方から見てコ字型に配され、さらにその内側に密着して蓄熱剤が入った容器１５が同じく上面から見てコ字型に設置されている。したがって、蓄熱剤の入った容器１５の内側は、巣箱収納空間１６となっていて、巣箱１３が密着して収納されている。
【００１５】
また、恒温室２の一つの立壁面９ａに、ハチ出入開口１０が形成され、該ハチ出入開口１０が内部に収納される巣箱１３の出入口（図示せず）に連通路１４を介して連通されている。
【００１６】
容器１５内に収容される蓄熱剤として融点が２５℃前後となる液体で、例えば硫酸ナトリウム１０水塩を主成分としており、蓄熱性を有した液体で、潜熱の利用ができ冷暖房コストを引き下げることや、融点が２５℃前後となることから結露を防止又は軽減することができる。
【００１７】
この恒温室２内に収納される巣箱１３は、外側を紙素材、内側を合成樹脂にて構成された箱体で、その内部に給餌器などが配され、図示しないが出入口を持っており、女王バチ１頭と、働きバチ数１０頭が入れられている。この巣箱１３は載台１７を介して該恒温室２内に固定されている。
【００１８】
温度制御機器収納室３は、内部に冷暖房機器やそれらを制御する電子機器が収納されている。この温度制御機器は、具体的には電子冷凍素子であるペルチェ素子２０を用いており、公知のペルチェ素子２０は通電により熱を吸収する吸熱部と熱を放出する放熱部とを持ち、通電方向を切換えることで、一方が吸熱部に他方が放熱部となるもので、該ペルチェ素子２０の一方にプレート２１，他方にフィン２２がそれぞれ接触されている。
【００１９】
プレート２１は、前述したごとく、恒温室２の周囲に配され、上方から見てコ字型に配され、蓄熱剤の入った容器１５に外側から密着している。
【００２０】
フィン２２は、外部に開放された部屋２５内に露出し、該フィン２２の周囲に外気を環流させるファン２９を有している。
【００２１】
３６は冷・暖の切換スイッチで、恒温箱１の立壁面に設けられ、例えば１４℃以下の場合には暖方に切換られ、それ以上の場合には冷房に切換られる。３７は電源スイッチ３８を有する商用電源取入用プラグである。
【００２２】
図５において、前記温度制御機器を作動させるための電気回路が示され、サーミスタなどの温度センサー３４にて内部温度を検出し、その温度情報をマイクロコンピュータ等の制御回路４０に入力している。また、ペルチェ素子２０の通電回路には、制御回路４０からの出力にて切換られる通電方向を変えるリレー４１が、そして、温度コントロール用リレー４２がそれぞれ設けられている。
【００２３】
また、制御回路４０には、前述した冷暖切換スイッチ２６の制御信号が入力され、そして、電源供給用のプラグ３７が接続されている。また、ファン２９にも電子冷凍素子が作動されると同時に駆動信号が出力されるものである。この制御回路４０の働きにより、恒温室２内は、外気の温度と無関係に２５℃から３０℃に保たれた状態となる。したがって、巣箱１３内では、常にマルハナバチ類の快適な温度条件が保たれるものである。このために、高温下での送風行動が見られなくなるし、また低温下での筋肉をふるわせて行なう発熱行動が見られなくなり、不必要なエネルギーの消費が抑制され、延命となると共に、外部の温度が５℃から３７℃まで受粉活動できることが判明した。
【００２４】
上述の構成において、スイッチ３８を入れると、ペルチェ素子２０が働き、冷房時では、プレート２１が冷やされ、蓄熱剤を冷却する。そして、蓄熱剤入りの容器１５に密着の巣箱１３が冷やされる。暖房時では、逆にプレート２１が暖められ、蓄熱剤を加熱する。そして、蓄熱剤入りの容器１５に密着の巣箱１３が暖められる。蓄熱剤は２５℃前後に融点を有していることから結露がほとんど起こらないし、潜熱が利用できるので、冷暖効果のコストを下げることができる。
【００２５】
なお、恒温箱本体２内の巣箱１３の観察や餌入れや、交換は、ベルト１２を外し、そして蓋４を取り外すことで、恒温箱本体２の開口５が露出して、容易に行うことができる。
【００２６】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、巣箱は潜熱を有する蓄熱剤で冷やし又は暖められるから、潜熱の利用ができ、冷暖房コストを下げることができる。また蓄熱剤の融点を２５℃前後とすることで、結露を防止または軽減することができ、巣箱を結露水から守ることができる。当然ながら、恒温箱からの巣箱の出し入れや、巣箱の観察や餌入れが容易であるし、巣箱を最適生育環境温度帯に保つことができる（請求項１，５）。
【００２７】
また、蓄熱剤が入った容器は、巣箱の３つの面と接触するから、充分に熱の伝達が行われ、巣箱に温度むらを作らない。さらに恒温箱は断熱材で囲まれたことにあり、温調効率の向上がはかられる（請求項３）し、恒温箱の立壁面に送風昆虫が出入する開口が形成されると共に、この開口が巣箱に連通され、巣箱内の送粉昆虫が外部に自由に出入りすることができる（請求項４）。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明に係るマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱の斜視図である。
【図２】同上の蓋を開けた状態の斜視図である。
【図３】図１のＡ−Ａ線断面図である。
【図４】図１のＢ−Ｂ線断面図である。
【図５】この発明に用いられる制御用の電気回路である。
【符号の説明】
１恒温箱
２恒温室
３温度制御機器収納室
４蓋
７断熱材
８断熱材
１０ハチ出入開口
１３巣箱
１５蓄熱剤を入れた容器
２０電子冷凍素子
２１プレート
２２フィン
２９ファン
３４温度センサ
３６切換スイッチ
４０制御回路

Claims

マルハナバチ類等の送粉昆虫の巣箱を収納する恒温室内に、収納の巣箱と接触する蓄熱剤が入った容器を配すると共に、該蓄熱剤を電子冷凍素子にて加熱又は冷却するようにしたことを特徴とするマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱。
蓄熱剤が入った容器は巣箱の少なくとも三つの立壁面と接触するようにしたことを特徴とする請求項１記載のマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱。
恒温室は、その周囲を断熱材で囲まれたことを特徴とする請求項１記載のマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱。
恒温室の立壁面に送粉昆虫が出入りする開口が形成されると共に、この開口が内部に収納の巣箱に連通されるようにしたことを特徴とする請求項１記載のマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱。
蓄熱剤として硫酸ナトリウム１０水塩を主成分とし、融点を２５℃前後とした溶液であることを特徴とする請求項１記載のマルハナバチ類等の送粉昆虫用の恒温箱。